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蒙漢字典 : 資料編・原本影印

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Academic year: 2021

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全文

(1)

蒙漢字典 : 資料編・原本影印

著者

栗林 均

雑誌名

東北アジア研究センター報告

14

ページ

1-548

発行年

2014-11-20

URL

http://hdl.handle.net/10097/57714

(2)

Center

for

Northeast

Asian

Studies

栗 

林 

東 北 ア ジ ア 研 究 セ ン タ ー 報 告  第 14 号 ISBN 978–4–901449–95–3

蒙 漢 字 典

─資料編・原本影印─

東北アジア研究センター報告 第14号

東北大学東北アジア研究センター

CNEAS

CNEAS

栗 林 均 編

栗 林 均 編

(3)

CNEAS

蒙 漢 字 典

─資料編・原本影印─

栗林 均 編

東北アジア研究センター報告 第 14 号

東北大学東北アジア研究センター

(4)

Meng-Han Zidian

Mongolian-Chinese Dictionary of 1928

(CNEAS Report No.14) Reproduced by Hitoshi Kuribayashi

ISBN 978-4-901449-95-3

Copyright©2014 by Center for Northeast Asian Studies, Tohoku University Kawauchi 41, Aoba-ku, Sendai City, Japan 980-8576 http://www.cneas.tohoku.ac.jp/

(5)

Meng-Han Zidian

Mongolian-Chinese Dictionary

of 1928

Reproduced by

Hitoshi Kuribayashi

Center for Northeast Asian Studies

Tohoku University

(6)

1

『蒙漢字典』について

1.書誌情報

本書は、民国 17(1928)年に北京の蒙文書社から出版された『蒙漢字典

ᠮᠣᠩᠭᠣᠯ ᠨᠠᠩᠭᠢᠶᠠᠳ

ᠦᠰᠦᠭ ᠤᠨ ᠲᠣᠯᠢ ᠪᠢᠴᠢᠭ

(mongGul nanggiyad UsUg-Un toli bicig)』の影印復刻本である。 同書は活版印刷で、縦25.5cm×横 16.2cm、「上」「下」の 2 冊からなる線装本で、1 函 に収められている。各頁の小口には、書名(「蒙漢字典」)、出版社名(「蒙文書社出版」)、 字母表の見出し(モンゴル文字と漢字)、および漢数字で丁付けの番号が付されている。表 と裏の2 頁を合わせて 1 丁とし、上冊の本体は目録(2 丁 4 頁)、勘誤表(3 丁 6 頁)、蒙 文十二字頭(1 丁 2 頁)、本文(1-120 丁 240 頁)からなり、下冊は本文(121-256 丁 272 頁)からなっている。 上冊の内扉(本書 17 頁)には縦に 3 つに区切られた赤枠の中に、赤字でモンゴル語が 記されている。中央の枠内は書名である:

ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠨᠠᠩᠭᠢᠶᠠᠳ ᠦᠰᠦᠭ ᠤᠨ ᠲᠣᠯᠢ ᠪᠢᠴᠢᠭ᠂,

mongGul nanggiyad UsUg-Un toli bicig.(蒙漢字典) 左枠内には出版年:

ᠳᠤᠮᠳᠠᠳᠤ ᠠᠷᠠᠳ ᠤᠯᠤᠰ ᠤᠨ ᠰᠢᠷᠠ ᠯᠤᠤ ᠣᠨ ᠳᠤ

dumdadu arad ulus-un sira luu on-du(民国戊辰年に) 右枠内には出版地と出版社:

ᠨᠡᠶᠢᠰᠯᠡᠯ ᠤᠨ ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠪᠢᠴᠢᠭ ᠤᠨ ᠬᠣᠷᠢᠢ ᠠ ᠳᠤ ᠳᠠᠷᠤᠮᠠᠯᠯᠠᠪᠠᠢ᠂,

neyislel-Un mongGul bicig-Un qoriy_a-du darumalla=bai.(首都の蒙文書社にて印刷した) 左右の枠内のモンゴル語はひと続きの文となっている。 同書に編著者名の記載は無いが、内扉裏(本書 18 頁)に掲げられている写真がこれを 出版した汪ワンルイチャン睿 昌(モンゴル名

ᠲᠡᠮᠭᠡᠲᠦ

temgetU テムゲト、漢字表記 特睦格図)である。中 国で出版された次のモンゴル図書目録では、汪睿昌を『蒙漢字典』の著者としている: 『全国蒙文古旧图书资料联合目录』(内蒙古人民出版社,1979)219 頁 『中国蒙古文古籍总目 下』(北京图书馆出版社,1999)1154-1155 頁 『北京地区蒙古文古籍总目(一)』(内蒙古出版集团内蒙古出版社,2011)60 頁 汪睿昌(1888-1939)は、喀喇沁右旗王府の生まれで、1906 年に日本に留学した最初 のモンゴル人留学生たちの内の一人である。1922 年には最初のモンゴル文字鉛版活字の製 作に成功し翌1923 年に北京にモンゴル語の出版社「蒙文書社」を設立したことで名高い。

目  次

『蒙漢字典』について

原本影印

上巻

目 録

 勘誤表

蒙文十二字頭

本文(1~120)

下巻

本文(121~256)

···  1

···  15

···  19

···  23

···  29

···  31

··· 273

··· 275

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1

『蒙漢字典』について

1.書誌情報

本書は、民国 17(1928)年に北京の蒙文書社から出版された『蒙漢字典

ᠮᠣᠩᠭᠣᠯ ᠨᠠᠩᠭᠢᠶᠠᠳ

ᠦᠰᠦᠭ ᠤᠨ ᠲᠣᠯᠢ ᠪᠢᠴᠢᠭ

(mongGul nanggiyad UsUg-Un toli bicig)』の影印復刻本である。 同書は活版印刷で、縦25.5cm×横 16.2cm、「上」「下」の 2 冊からなる線装本で、1 函 に収められている。各頁の小口には、書名(「蒙漢字典」)、出版社名(「蒙文書社出版」)、 字母表の見出し(モンゴル文字と漢字)、および漢数字で丁付けの番号が付されている。表 と裏の2 頁を合わせて 1 丁とし、上冊の本体は目録(2 丁 4 頁)、勘誤表(3 丁 6 頁)、蒙 文十二字頭(1 丁 2 頁)、本文(1-120 丁 240 頁)からなり、下冊は本文(121-256 丁 272 頁)からなっている。 上冊の内扉(本書 17 頁)には縦に 3 つに区切られた赤枠の中に、赤字でモンゴル語が 記されている。中央の枠内は書名である:

ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠨᠠᠩᠭᠢᠶᠠᠳ ᠦᠰᠦᠭ ᠤᠨ ᠲᠣᠯᠢ ᠪᠢᠴᠢᠭ᠂,

mongGul nanggiyad UsUg-Un toli bicig.(蒙漢字典) 左枠内には出版年:

ᠳᠤᠮᠳᠠᠳᠤ ᠠᠷᠠᠳ ᠤᠯᠤᠰ ᠤᠨ ᠰᠢᠷᠠ ᠯᠤᠤ ᠣᠨ ᠳᠤ

dumdadu arad ulus-un sira luu on-du(民国戊辰年に) 右枠内には出版地と出版社:

ᠨᠡᠶᠢᠰᠯᠡᠯ ᠤᠨ ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠪᠢᠴᠢᠭ ᠤᠨ ᠬᠣᠷᠢᠢ ᠠ ᠳᠤ ᠳᠠᠷᠤᠮᠠᠯᠯᠠᠪᠠᠢ᠂,

neyislel-Un mongGul bicig-Un qoriy_a-du darumalla=bai.(首都の蒙文書社にて印刷した) 左右の枠内のモンゴル語はひと続きの文となっている。 同書に編著者名の記載は無いが、内扉裏(本書 18 頁)に掲げられている写真がこれを 出版した汪ワンルイチャン睿 昌(モンゴル名

ᠲᠡᠮᠭᠡᠲᠦ

temgetU テムゲト、漢字表記 特睦格図)である。中 国で出版された次のモンゴル図書目録では、汪睿昌を『蒙漢字典』の著者としている: 『全国蒙文古旧图书资料联合目录』(内蒙古人民出版社,1979)219 頁 『中国蒙古文古籍总目 下』(北京图书馆出版社,1999)1154-1155 頁 『北京地区蒙古文古籍总目(一)』(内蒙古出版集团内蒙古出版社,2011)60 頁 汪睿昌(1888-1939)は、喀喇沁右旗王府の生まれで、1906 年に日本に留学した最初 のモンゴル人留学生たちの内の一人である。1922 年には最初のモンゴル文字鉛版活字の製 作に成功し翌1923 年に北京にモンゴル語の出版社「蒙文書社」を設立したことで名高い。 1

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3 図1.『欽定蒙文彙書』(1891) 16 冊が、モンゴル語を見出し語とした字母順配列辞書となっている(図1.)。これは、賽 尚阿による咸豊元(1851)年の序をもつモンゴル語・漢語・満洲語の 3 言語対照辞典『蒙 文彙書』(別名『蒙文倒綱』、全16 冊)をもとに印刻・刊行されたもので、題名に「欽定」 の2 字を戴いた『蒙文彙書』であることを示している。両者の違いは、『蒙文彙書』(1851) が私家版の写本であるのに対し、『欽定蒙文彙書』(1891)は官製の木版刷りの大型(縦 34cm×横 21.4cm)線装本であり、後者には前者に収録されていない単語を集めて「増補」 として追加した部分があることである。 前掲拙論で論じたように、『欽定蒙文彙書』(1891)の元になった『蒙文彙書』(1851) の基本的な構成部分は、18 世紀後半に編纂された『御製四体清文鑑』に他ならない(上掲 拙論134-137 頁)。『御製四体清文鑑』(正編 32 巻、補編 4 巻)は、満洲語・チベット語・ モンゴル語・漢語の 4 言語対照の分類辞典であり、そこに収録されている語彙項目は全 18,667 に及ぶ。『蒙文彙書』(1851)は、『御製四体清文鑑』の中から、(チベット語を除 く)満洲語・モンゴル語・漢語の対訳語を取り、モンゴル語を見出し語として字母順に並 べたものを基本的な部分として成っている。 『蒙漢字典』(1928)に収録されている語彙項目は、『欽定蒙文彙書』(1891)の中から 2 以後、主に 1920 年代に活発な出版活動を行い、モンゴル語の教科書、歴史書、辞書、翻 訳書等、多くの出版物を世に送った。 『蒙漢字典』の上冊・下冊いずれも、表紙の見返し(本書 16 頁・274 頁)に蒙文書社 から発行された図書9 点の書名と価格が、また裏表紙の見返し(本書 271 頁・547 頁)に は奥付のほか、出版予定の図書2 点の書名が掲げられ、最後に 5 行のモンゴル語で次のよ うな出版社の方針が記されている(上冊と下冊の記載内容は全く同じ): わが社ではとりわけモンゴル文のあらゆる種類の教本、および社会に有益な歴史物語 などを編集・出版・販売するとともに、モンゴル語、チベット語、中国語、英語、フ ランス語などの図書、各種の記録、雑誌、さらにモンゴル、チベットの典籍、大小の 名簿などの印刷をすべからく受託し出版する。四方の多くの師がご案内でないことを 思い、ここに特に記してお知らせする次第である。 蒙文書社総理記す man-u qoriy_a-du tusqayila=n mongGul udq_a-yin el_e jUil-Un surGa=qu bicig ba, kUmUn orcilang-dur asiG tusatai, teUke Uliger jerge-i[!] jokiya=ju darumala=Gad, tarqaGa=n qudaldu=qu bOged basa mongGul, tObed, kitad, yinggiliSi, furanzi jerge-yin kelen-U bicig qar_a eldeb jUil-Un temdeglel sedkUl ba, mongGul tObed-Un nom sudur, yeke baG_a ner_e-yin qaGudasu jerge-yin darumal-i cOm-iyer kUliye=n ab=cu darumalla=mui. dOrben jUg-Un olan bagSi-nar ese mede=kU-ece emiye=jU, ende oncuGai temdegle=n sanaGul=ba. mongGul bicig-Un qoriy_a-u[!] yerUngkeile=n sidke=gci duradGa=bai[!]. 本書は、『蒙漢字典』上下 2 冊をそれぞれの表紙から裏表紙まで、版面の実物大の複写 で収録している。複写の原本は編者の所蔵本である。 上掲のモンゴル語図書の目録によれば、『蒙漢字典』は民国27 年(1938)と民国 33 年1944)にそれぞれ石版刷りで再版されている(筆者未見)。 2.字典の内容 『蒙漢字典』に載録されているモンゴル語の見出し語と漢語の訳語は、拙論「近代モン ゴル語辞典の成立過程 -清文鑑から『蒙漢字典』へ」(東北大学東北アジア研究センター 『東北アジア研究』第16 号、2012 年、127-147 頁)で指摘したように、『欽定蒙文彙書』 (全17 冊)の内容をほとんどそのまま継承したものである(拙論 142-143 頁)。 『欽定蒙文彙書』は、清朝理藩院の建議により光緒 17 年(1891)に木版で出版された モンゴル語・漢語・満洲語の3 言語対訳辞書で、最初の 1 冊は「原奏・官銜」で、残りの 2

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3 図1.『欽定蒙文彙書』(1891) 16 冊が、モンゴル語を見出し語とした字母順配列辞書となっている(図1.)。これは、賽 尚阿による咸豊元(1851)年の序をもつモンゴル語・漢語・満洲語の 3 言語対照辞典『蒙 文彙書』(別名『蒙文倒綱』、全16 冊)をもとに印刻・刊行されたもので、題名に「欽定」 の2 字を戴いた『蒙文彙書』であることを示している。両者の違いは、『蒙文彙書』(1851) が私家版の写本であるのに対し、『欽定蒙文彙書』(1891)は官製の木版刷りの大型(縦 34cm×横 21.4cm)線装本であり、後者には前者に収録されていない単語を集めて「増補」 として追加した部分があることである。 前掲拙論で論じたように、『欽定蒙文彙書』(1891)の元になった『蒙文彙書』(1851) の基本的な構成部分は、18 世紀後半に編纂された『御製四体清文鑑』に他ならない(上掲 拙論134-137 頁)。『御製四体清文鑑』(正編 32 巻、補編 4 巻)は、満洲語・チベット語・ モンゴル語・漢語の 4 言語対照の分類辞典であり、そこに収録されている語彙項目は全 18,667 に及ぶ。『蒙文彙書』(1851)は、『御製四体清文鑑』の中から、(チベット語を除 く)満洲語・モンゴル語・漢語の対訳語を取り、モンゴル語を見出し語として字母順に並 べたものを基本的な部分として成っている。 『蒙漢字典』(1928)に収録されている語彙項目は、『欽定蒙文彙書』(1891)の中から 3

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5 3.モンゴル語の字母順配列辞書について 18 世紀の清朝では「清文鑑」と呼ばれる官製の大部の満洲語辞典が相次いで編纂・出版 された(主要な「清文鑑」とそれらの特徴については、拙論「モンゴル語資料としての『清 文鑑』」東北大学東北アジア研究センター『東北アジア研究』第12 号、2008 年、1-34 頁 を参照されたい)。それら一連の「清文鑑」は、いずれも収録している語彙項目(単語)を 意味によって分類・配列しているという点で共通している。つまり、収録されている単語 は、天文類、時令類、地輿類、君類、諭旨類...といった分類項目によってまとめられ、 配列されている。「清文鑑」に代表される、こうした「分類辞典」と並んで、満洲語の辞書 としてはつとに康煕 22 年(1683)の序をもつ『大清全書』のように、満洲語を字母順に 配列した辞書が編纂・公刊されてきた。ここでいう字母順は、満洲語の伝統的な字母表(音 節表)である十二字頭に準じた配列である。 翻って、モンゴル語の辞書をみると、各種「清文鑑」では満洲語の対訳としてモンゴル 語が付されているが、モンゴル語が見出し語になった辞書は極めて少ない。モンゴル語を 見出し語とした辞書は、『蒙古托忒ト ド彙集(

ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠲᠣᠳ ᠦᠰᠦᠭ ᠢᠶᠡᠷ ᠨᠡᠶᠢᠯᠡᠯᠳᠦᠭᠦᠯᠦᠭᠰᠡᠨ ᠴᠤᠭᠯᠠᠯᠭ ᠠ

mongGul tod UsUg-iyer neyileldUgUl=U=gsen cuGlalG_a)』をもって嚆矢となす。『蒙古托忒彙集』 は、富俊による嘉慶丁巳(1797 年)の序をもつ 8 冊の手書き写本で、中国故宮博物院図 書館に蔵される孤本である。これは、モンゴル文語形(モンゴル文字)、モンゴル語口語 形(満洲文字表記)、オイラート文語形(トド文字)、満洲語(満洲文字)、漢語(漢字) の5 種類の単語を縦に 1 行に並べて対照させた対訳辞典である。各行の最上段に置かれて いる見出し語のモンゴル文語形は字母(十二字頭)順に配列されている。 『蒙古托忒彙集』は、同じ富俊による満洲語・漢語・モンゴル語3 言語対照辞典『三合 便覧(

ᠭᠤᠷᠪᠠᠨ ᠵᠦᠢᠯ ᠤᠨ ᠦᠭᠡ ᠬᠠᠳᠠᠮᠠᠯ ᠦᠵᠡᠬᠦᠢ ᠳᠤᠷ ᠬᠢᠯᠪᠠᠷ ᠪᠣᠯᠭᠠᠭᠰᠠᠨ ᠪᠢᠴᠢᠭ

Gurban jUil-Un Uge qadamal Uje=kUi-dUr kilbar bolGa=Gsan bicig)』(12 巻、1780 年序)をもとに編纂されたもので、 『三合便覧』の語彙項目はそのまま引き継がれている。『蒙古托忒彙集』が採用している 「モンゴル語の字母(十二字頭)順配列」がどのようなものであるかについては、『三合 便覧』の第1 巻に含まれる「蒙文指要」によって知ることができる。 次頁の図3.は、『三合便覧』第 1 巻所収の「蒙文指要」の最初に掲げられているモン ゴル語十二字頭のうちの「a 字頭」の一覧である。一見して、現代のモンゴル語の字母表 (チャガン・トルゴイ)とは、かなり異なっており、図4.の満洲語十二字頭の「a 字頭」 と合致している点が多いことが見て取れる。 4 図2.『御製四体清文鑑』第 1 巻冒頭 満洲語を捨てて、モンゴル語と漢語を対訳の形で並べたものである。このように、辞書本 体の内容から見れば、『蒙漢字典』は18 世紀清朝時代の「清文鑑」の語彙をそのまま引き 継いでいると言うことができる。したがって、この辞書には、20 世紀になってモンゴル語 の世界に大量に生じた「近代語彙」は含まれていない。たとえば、上に引用した蒙文書社 の経営方針を示したモンゴル語の中に見られる bicig-Un qoriy_a(出版社)、yinggiliSi (イギリス)、furanzi(フランス)、darumal(印刷)、yerUngkeile=n sidke=gci(総理) などの語と意味は、この字典の中に見い出すことはできない。 ちなみに、同じ蒙文書社から民国15(1926)年に出版された『蒙文分類辞典

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(mongGul udq_a-yin jUil qubiya=Gsan toli bicig)』(上・下) は、『御製四体清文鑑』の正編(第1~32 巻)の分類項目と配列順をそのままに、4 言語(満 洲語、チベット語、モンゴル語、漢語)の中からモンゴル語と漢語を取り出して対訳の形 で並べたものである(上掲拙論143-144 頁を参照)。 このように、『蒙文分類辞典』(1926)と『蒙漢字典』(1928)は、清朝時代に「清文鑑」 の編纂・出版を通して蓄積された豊かなモンゴル語の言語文化遺産を汪睿昌が蒙文書社の 出版活動の中で新しい活版印刷技術に乗せてよみがえらせたものということができる。 4

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5 3.モンゴル語の字母順配列辞書について 18 世紀の清朝では「清文鑑」と呼ばれる官製の大部の満洲語辞典が相次いで編纂・出版 された(主要な「清文鑑」とそれらの特徴については、拙論「モンゴル語資料としての『清 文鑑』」東北大学東北アジア研究センター『東北アジア研究』第12 号、2008 年、1-34 頁 を参照されたい)。それら一連の「清文鑑」は、いずれも収録している語彙項目(単語)を 意味によって分類・配列しているという点で共通している。つまり、収録されている単語 は、天文類、時令類、地輿類、君類、諭旨類...といった分類項目によってまとめられ、 配列されている。「清文鑑」に代表される、こうした「分類辞典」と並んで、満洲語の辞書 としてはつとに康煕 22 年(1683)の序をもつ『大清全書』のように、満洲語を字母順に 配列した辞書が編纂・公刊されてきた。ここでいう字母順は、満洲語の伝統的な字母表(音 節表)である十二字頭に準じた配列である。 翻って、モンゴル語の辞書をみると、各種「清文鑑」では満洲語の対訳としてモンゴル 語が付されているが、モンゴル語が見出し語になった辞書は極めて少ない。モンゴル語を 見出し語とした辞書は、『蒙古托忒ト ド彙集(

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mongGul tod UsUg-iyer neyileldUgUl=U=gsen cuGlalG_a)』をもって嚆矢となす。『蒙古托忒彙集』 は、富俊による嘉慶丁巳(1797 年)の序をもつ 8 冊の手書き写本で、中国故宮博物院図 書館に蔵される孤本である。これは、モンゴル文語形(モンゴル文字)、モンゴル語口語 形(満洲文字表記)、オイラート文語形(トド文字)、満洲語(満洲文字)、漢語(漢字) の5 種類の単語を縦に 1 行に並べて対照させた対訳辞典である。各行の最上段に置かれて いる見出し語のモンゴル文語形は字母(十二字頭)順に配列されている。 『蒙古托忒彙集』は、同じ富俊による満洲語・漢語・モンゴル語3 言語対照辞典『三合 便覧(

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Gurban jUil-Un Uge qadamal Uje=kUi-dUr kilbar bolGa=Gsan bicig)』(12 巻、1780 年序)をもとに編纂されたもので、 『三合便覧』の語彙項目はそのまま引き継がれている。『蒙古托忒彙集』が採用している 「モンゴル語の字母(十二字頭)順配列」がどのようなものであるかについては、『三合 便覧』の第1 巻に含まれる「蒙文指要」によって知ることができる。 次頁の図3.は、『三合便覧』第 1 巻所収の「蒙文指要」の最初に掲げられているモン ゴル語十二字頭のうちの「a 字頭」の一覧である。一見して、現代のモンゴル語の字母表 (チャガン・トルゴイ)とは、かなり異なっており、図4.の満洲語十二字頭の「a 字頭」 と合致している点が多いことが見て取れる。 5

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第 1 に、母音字の種類が 5 種類である。(これらは満洲語に対応して並べられているの で、ローマ字転写も満洲語のローマ字転写に合わせて、仮に a e i o @ としておく。) 2 に、母音字の 2 つ目がアリガリ文字の字形(

)である。

第3 に、2 行目では満洲字に合わせて、ka ga ha, ko go ho, k@ g@ h@ という並びにな っている。

第4 に、4-5 行目も満洲語と同様 ta da, te de, ti di, to do, t@ d@ となっている等々、 図4.の満洲語の十二字頭に合わせて作られていることが分かる。 『蒙古托忒彙集』は、手書き写本として内府に保管され、長らく世に知られることはな かったため、その後のモンゴル語辞書の編纂に影響を与えることもなかったと考えられる。 モンゴル語 を見出し語 とした辞書 として最初 に世に通行 したのは、 賽尚阿によ る咸豊元 (1851)年の序をもつ『蒙文彙書』(別名『蒙文倒綱』)であろう。『蒙文彙書』はモンゴ ル語・漢語・満洲語を1 行に並べ、最上段のモンゴル語(見出し語)を字母順(十二字頭 順)に配列している。写本として通行した『蒙文彙書』を改定・増補して、官製の刻本と したのが『欽定蒙文彙書』(1891)であることは、既に述べたとおりである。 『欽定蒙文彙書』と同じ年に、民間でもグシラマ李鋐(字は品三)の編による木版の『蒙 文総彙』(12 冊)が刊行された。刊行年を同じくする両書は、書名も体裁も類似しており、 図書目録や書誌でも混同されがちである。ちなみに『(欽定)蒙文彙書』のモンゴル語の表 題は

ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠤᠨ ᠦᠰᠦᠭ ᠤᠨ ᠬᠤᠷᠢᠶᠠᠭᠰᠠᠨ ᠪᠢᠴᠢᠭ

mongGul-un UsUg-Un quriya=Gsan bicig であり、『蒙 文総彙』のそれは

ᠮᠣᠩᠬᠤᠯ ᠦᠭᠡᠨ ᠤ ᠪᠦᠭᠦᠳᠡ ᠬᠤᠷᠠᠬᠠᠭᠰᠠᠨ ᠪᠢᠴᠢᠭ

mongGul Ugen-U bUgUde quraGa=Gsan[!] bicig である(いずれも表紙に書かれているモンゴル文字をそのまま写した)。『蒙文総彙』 も、モンゴル語・漢語・満洲語を1 行に並べ、最上段のモンゴル語(見出し語)を字母順 (十二字頭順)に配列している。『蒙文総彙』は民国 2 年(1913)に北京の正蒙印書局か ら『蒙漢満文三合』として石版刷りで再版されている。 『(欽定)蒙文彙書』と『蒙文総彙』は、19 世紀清朝におけるモンゴル語の字母順配列 辞書の代表格とみなされるものである。清朝末期から民国初期の時代に作られた数種類の モンゴル語辞書が知られているが、ほとんどは両書の類書とみなされる。それらの辞書で 採用されている見出し語の配列は、「字母順(十二字頭)」に拠るというものの、字母(モ ンゴル文字)の種類と配列方法は、すべての辞書で同じというわけではない。たとえば、 『(欽定)蒙文彙書』では、母音字の前に位置する子音字 <G> に一貫して点を付けず、子 音字 <q>( )と区別せずに同じ文字として扱っているのに対して、『蒙文総彙』では 6 図3.『三合便覧』所収「蒙文指要」のモンゴル語の a 字頭 図4.『三合便覧』所収「清文指要」の満洲語十二字頭(a 字頭) 6

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第 1 に、母音字の種類が 5 種類である。(これらは満洲語に対応して並べられているの で、ローマ字転写も満洲語のローマ字転写に合わせて、仮に a e i o @ としておく。) 2 に、母音字の 2 つ目がアリガリ文字の字形(

)である。

第3 に、2 行目では満洲字に合わせて、ka ga ha, ko go ho, k@ g@ h@ という並びにな っている。

第4 に、4-5 行目も満洲語と同様 ta da, te de, ti di, to do, t@ d@ となっている等々、 図4.の満洲語の十二字頭に合わせて作られていることが分かる。 『蒙古托忒彙集』は、手書き写本として内府に保管され、長らく世に知られることはな かったため、その後のモンゴル語辞書の編纂に影響を与えることもなかったと考えられる。 モンゴル語 を見出し語 とした辞書 として最初 に世に通行 したのは、 賽尚阿によ る咸豊元 (1851)年の序をもつ『蒙文彙書』(別名『蒙文倒綱』)であろう。『蒙文彙書』はモンゴ ル語・漢語・満洲語を1 行に並べ、最上段のモンゴル語(見出し語)を字母順(十二字頭 順)に配列している。写本として通行した『蒙文彙書』を改定・増補して、官製の刻本と したのが『欽定蒙文彙書』(1891)であることは、既に述べたとおりである。 『欽定蒙文彙書』と同じ年に、民間でもグシラマ李鋐(字は品三)の編による木版の『蒙 文総彙』(12 冊)が刊行された。刊行年を同じくする両書は、書名も体裁も類似しており、 図書目録や書誌でも混同されがちである。ちなみに『(欽定)蒙文彙書』のモンゴル語の表 題は

ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠤᠨ ᠦᠰᠦᠭ ᠤᠨ ᠬᠤᠷᠢᠶᠠᠭᠰᠠᠨ ᠪᠢᠴᠢᠭ

mongGul-un UsUg-Un quriya=Gsan bicig であり、『蒙 文総彙』のそれは

ᠮᠣᠩᠬᠤᠯ ᠦᠭᠡᠨ ᠤ ᠪᠦᠭᠦᠳᠡ ᠬᠤᠷᠠᠬᠠᠭᠰᠠᠨ ᠪᠢᠴᠢᠭ

mongGul Ugen-U bUgUde quraGa=Gsan[!] bicig である(いずれも表紙に書かれているモンゴル文字をそのまま写した)。『蒙文総彙』 も、モンゴル語・漢語・満洲語を1 行に並べ、最上段のモンゴル語(見出し語)を字母順 (十二字頭順)に配列している。『蒙文総彙』は民国 2 年(1913)に北京の正蒙印書局か ら『蒙漢満文三合』として石版刷りで再版されている。 『(欽定)蒙文彙書』と『蒙文総彙』は、19 世紀清朝におけるモンゴル語の字母順配列 辞書の代表格とみなされるものである。清朝末期から民国初期の時代に作られた数種類の モンゴル語辞書が知られているが、ほとんどは両書の類書とみなされる。それらの辞書で 採用されている見出し語の配列は、「字母順(十二字頭)」に拠るというものの、字母(モ ンゴル文字)の種類と配列方法は、すべての辞書で同じというわけではない。たとえば、 『(欽定)蒙文彙書』では、母音字の前に位置する子音字 <G> に一貫して点を付けず、子 音字 <q>( )と区別せずに同じ文字として扱っているのに対して、『蒙文総彙』では 7

(14)

9 図5.『蒙漢字典』(1928)所収「蒙文十二字頭」のうちの「第一阿字頭」 図6.『蒙语正音正字词典』(1977)の字母表(チャガン・トルゴイ) 8 母音字の前の <G> に点を付して(  )、点のない子音字 <q>と区別して、それぞれを 別の文字として扱っている。『蒙漢字典』は、『欽定蒙文彙書』の語彙項目と訳語を継承し ているが、この点に関しては、『欽定蒙文彙書』と異なり、<G>(点あり    )と <q> (点なし   )を別の文字として区別している。それぞれの辞書におけるモンゴル語 (見出し語)の配列順序は、字母表(十二字頭)を見るだけでは判断できない点が多く、 辞書の実際の配列によって確認する必要がある。 4.『蒙漢字典』における見出し語の配列順序 『蒙漢字典』(1928)には、巻頭に 2 丁 4 頁の「目録」、つまり目次が掲げられている。 そこにあるのは、見出し語のモンゴル語の語頭の「字母」とそれで始まる頁である。この 場合の「字母」は、(1)母音字で始まる「母音字」だけからなるものと、(2)子音字で始まる 「子音字+母音字」からなるものの 2 種類である。これは、すなわち開音節(母音で終わ る音節)の一覧であり、モンゴル語の「十二字頭」のうちの最初の字頭にあたる「a 字頭」 と呼ばれるものに相当する。 図5.は、『蒙漢字典』(1928)に収録されている「蒙文十二字頭」の第 1 頁であり、こ こには「第一阿字頭」の見出しのもとに「a 字頭」の一覧が示されている。上・中・下の 3 つの欄には、縦に 5 つずつの字母(音節)が並べられて 1 行となっている。上段(8 行) と中段(9 行)が本来のモンゴル語を表記する字母であり、下段(6 行)は外来語を表記 するために用いられる。モンゴル文字の下の漢字は、その発音を表している。 一方、図6.は、布林特古斯编《蒙语正音正字词典

ᠮᠣᠩᠭᠤᠯ ᠬᠡᠯᠡᠨ ᠤ ᠵᠥᠪ ᠳᠠᠭᠤᠳᠠᠯᠭ ᠠ ᠵᠥᠪ ᠪᠢᠴᠢᠯᠭᠡ ᠶᠢᠨ

ᠲᠣᠯᠢ

mongGul kelen-ü jöb daGudalG_a jöb bicilge-yin toli)》(内蒙古教育出版社, 1977) の巻頭に置かれている目次である。見出しに

ᠴᠠᠭᠠᠨ ᠲᠣᠯᠣᠭᠠᠢ

(caGan toluGai チャガン・トル ゴイ)とあるように、これが現在内モンゴルを中心に中国のモンゴル族が用いているモン ゴル語の字母表に相当する。ここでは、横1 列が 1 行となっており、左の欄の最上段が 1 行目で、以下2 行目、3 行目,...と順に下に進む。(モンゴル文字の下の数字はこの辞書 の掲載頁を示している。) 図5.の上・中段(元来のモンゴル語を表記する字母)を図6.と較べてみると、もっ とも大きな違いは1 行目の母音字の数が、図5.では 5 種類なのに対して、図6.では 7 種類あることと、それぞれの行の順序が異なっていることである。それ以外には、図5. の2 行目以降で母音字の 2 つ目がアリガリ文字の字形(

)である点を除けば、行を構成 8

(15)

9

図5.『蒙漢字典』(1928)所収「蒙文十二字頭」のうちの「第一阿字頭」

図6.『蒙语正音正字词典』(1977)の字母表(チャガン・トルゴイ)

(16)

11 図7.『蒙漢字典』(1928)の目録(目次)最初の 2 頁 3.図7.の目録の右頁下段に



(塔字頭)、



(達字頭)、



(提字頭)、



(第字頭) とある。これは図5.(9 頁上)の中段 1 行目(



の行)と 2 行目(



の行)をまとめた 形になっているが、これもむしろ図3.(6 頁上)の 3~4 行目に近い。



(塔字頭)の見 出しのもとには、男性母音字の

(a)だけでなく、女性母音字の

(e)を含む単語も 一緒に並べられているのは、上の1.に記したとおりである。しかし、この見出しのもと には、<t> で始まる単語だけでなく、<d> で始まる単語も含まれていることは注意を要す る。そこには、たとえば



(tan_a 東珠)、



(teneg 愚)といった <t> で始まる単 語だけでなく、



(daG_a 二歳馬)、



(debel 衣 袍)等の <d> で始まる単語も含ま れているのである。これに対して、



(達字頭)の見出しのもとにあるのは、



(次)、



(副 次)といった、語頭の字形が

で始まる単語だけである。このことは、それに続く



(拖字頭)と



(圖字頭)に関しても同様で、そこには <t> で始まる単語も、<d> で 始まる単語も含まれている。



(多字頭)と

 

(都字頭)の見出しのもとにあるのは、語 頭の字形が

である単語である。 10 する要素(字母)はほとんど共通しているように見える。 このように見ると、『蒙漢字典』(1928)の見出し語の配列は、図6.にある第 4 番と第 5 番(男性の円唇母音)、および第 6 番と第 7 番(女性の円唇母音)を区別しない点を別と して、行の順序を入れ換えれれば現代の配列方法(チャガン・トルゴイ)と大差ないよう に思われる。 ところが、『蒙漢字典』(1928)によって、モンゴル語の見出し語の実際の配列をみると、 図5.(9 頁上)の「蒙文十二字頭」とは相容れない点が多々あることが明らかになる。 図7.は『蒙漢字典』(1928)の目録の最初の 2 頁である。この項目と配列を、図5. の「蒙文十二字頭」と比較すると、その違いは決して小さなものではない。 1.最初に母音字が5 個並べられており、これは図5.と同じである。しかし、目録のそ れ以降の行では 1 番目の母音字

(a)と 2 番目の母音字

(e)は区別されない。たと えば、5 種類の母音字に続くのは



(那字頭)



(尼字頭)



(諾字頭)



(努字頭)の 4 種類の文字であって、図5.の



(訥)にあたる見出しは、ない。実際、辞書の中では



(那字頭)の見出しのもとに母音字

(a)を含む男性語の



(舅)や



(秋) も母音字

(e)を含む女性語の



(加 益)も



(炭)も混在しているのである。 これは、それに続く行に関しても同様であり、



(巴,伯字頭)、



(帕字頭)、



(薩字 頭)、



(沙字頭)、



(塔字頭)、



(瑪字頭)、



(察字頭)、



(扎字頭)等の見出しの 下には

(a)を含む男性語も、

(e)を含む女性語も、一緒に並べられている。 図7.の目録の中には



(頗字頭)、



(色字頭)、



(社字頭)といった見出しが立 てられているのを見ることができる。しかし、これらの見出しのもとに置かれているのは、 アリガリの母音字(

)を含む語であって、少数の外来語や擬音語・擬態語である。女性 母音字

(e)を含む単語はそこにはなく、



(帕字頭)、



(薩字頭)、



(沙字頭)の もとに置かれているのである。 2.図7.の目録の左頁下段に



(哈字頭)



(噶字頭)



(霍字頭)



(呼字頭)



(郭字頭)



(固字頭)と並んでいるものは、図5.(9 頁上)の 3 行目と 4 行目の中から 男性母音字を含む



(哈)



(噶)



(霍)



(郭)を抜き出して並べた形になってお り、むしろ図3.(6 頁上)の 2 行目に近い。 これらのうち、



(呼字頭)と



(固字頭)は、満洲語にあって本来のモンゴル語にな い母音字

(@)を含む字母を表しており、



(呼字頭)の見出しの下には



で始まる 語が12 語、また



(固字頭)の見出しの下には



で始まる語が2 語置かれている。 10

(17)

11 図7.『蒙漢字典』(1928)の目録(目次)最初の 2 頁 3.図7.の目録の右頁下段に



(塔字頭)、



(達字頭)、



(提字頭)、



(第字頭) とある。これは図5.(9 頁上)の中段 1 行目(



の行)と 2 行目(



の行)をまとめた 形になっているが、これもむしろ図3.(6 頁上)の 3~4 行目に近い。



(塔字頭)の見 出しのもとには、男性母音字の

(a)だけでなく、女性母音字の

(e)を含む単語も 一緒に並べられているのは、上の1.に記したとおりである。しかし、この見出しのもと には、<t> で始まる単語だけでなく、<d> で始まる単語も含まれていることは注意を要す る。そこには、たとえば



(tan_a 東珠)、



(teneg 愚)といった <t> で始まる単 語だけでなく、



(daG_a 二歳馬)、



(debel 衣 袍)等の <d> で始まる単語も含ま れているのである。これに対して、



(達字頭)の見出しのもとにあるのは、



(次)、



(副 次)といった、語頭の字形が

で始まる単語だけである。このことは、それに続く



(拖字頭)と



(圖字頭)に関しても同様で、そこには <t> で始まる単語も、<d> で 始まる単語も含まれている。



(多字頭)と

 

(都字頭)の見出しのもとにあるのは、語 頭の字形が

である単語である。 11

(18)

13

図8.『蒙漢字典』(1928)所収「蒙文十二字頭」

2.



(ai 愛字頭)3.



(ar 阿爾字頭)4.



(an 安字頭)5.



(ang 昻字頭) 6.



aG/eg 阿克字頭)7.



as 阿斯字頭)8.



ad 阿特字頭)

9.



(ab 阿布字頭)10.



(au 敖字頭)11.



(al 阿勒字頭)12.



(am 阿木字頭) これらのうち、2.



(ai 愛字頭)と 10.



(au 敖字頭)は、ローマ字転写では、母音字 (i と u)で表記しているが、モンゴル文字の伝統ではこれを音節末の子音に準じた扱いを している。 具体的な配列順序は、まず、

(阿字頭)の見出しのもとに語頭に

(a)で始まる開音 節を持つ語がすべて列挙される。「目録」(図7.)ではそれに続いて、小字で字下げして次 のような項目が立てられている。

ᠠᠢ ᠠᠴᠠ ᠠᠮ ᠬᠦᠷᠲᠡᠯ ᠡ᠂,

(ai-aca am kürtel_e) 愛起阿木字頭 九…一五 これがすなわち、語頭に閉音節を持つ語を示している。閉音節の種類と順番は、先に示し た第二から第十二までであり、以下に列挙する「

(a)を含む閉音節で始まる語」が順に 配列されることになる: 12 4.図7.の目録に続くページには



(賀,格字頭)がある。漢字による発音表記が「賀」 「格」と2 つあることからも分かるように、これらは図5.(9 頁上)の 3 行目と 4 行目の 2 段目の



(和)と



(格)をひとつにしたものである。



(和)と



(格)は、字形 は同じであるが、前者は無声子音字で始まり、後者は有声子音字で始まる。



(賀,格字 頭)の見出しのもとには、



(kebeli 肚)も



(gedesU 腸)も含まれている。 それに続く



(吉,希字頭)も同様に、図5.の 3 行目と 4 行目の 3 段目の



(黒) と



(給)をひとつにしたもので、この見出しのもとには



kina=mui 詳察)も



(gilbalja=mui 放光)も含まれている。 また、



(胡字頭)も、図5.の3 行目と 4 行目の 5 段目の



(呼)と



(固)をひ とつにしたもので、この見出しのもとには、



(kOlUsU 汗)も



(gOlUge 狗崽) も含まれている。 要するに



(賀,格字頭)



(吉,希字頭)



(胡字頭)の見出しのもとには、無声の 子音字 <k> で始まる語と、有声の子音字 <g> で始まる語が一緒に置かれているのである。 このように、『蒙漢字典』(1928)におけるモンゴル語の配列方法は、同字典が掲げてい る「蒙文十二字頭」の字母配列とは著しく異なるものである。その配列方法に一貫してい るのは、「字形の同じものは(発音が違っても)配列の上で区別しない」という原則である。 1 行目で 1 番目の母音字

(a)と 2 番目の母音字

(e)を区別しているのは、語頭で 両者の字形が異なるからである。それに対して、それ以降の行で男性母音字

(a)と女 性母音字

(e)を区別しないのは、これらの文字が語頭以外で字形の区別がなくなり、 全く同じ字形になるからである。



(塔字頭)に <ta te da de> がすべて含まれるのも、 それらがすべて同じ字形だからである。現代モンゴル語のチャガン・トルゴイ(図4.)は 字形が同じでも発音が違えば別の文字として扱う「音に基づいた配列」であるのに対し、 『蒙漢字典』のモンゴル語の配列に使われているのは「字形による配列」である。 * * * 図7.の「目録」に並べられているのはすべて開音節(母音で終わる音節)であり、語 頭に現れるすべての開音節を列挙したものである。これに対して、音節末が子音字で終わ る閉音節を表しているのは、図8.の左頁下段の「第二愛字頭」から右頁下段の「第十二 阿木字頭」までがそれにあたる。具体的には次の 11 種類である(番号は、第二、第三、 等で示されている元の数字を表す): 12

(19)

13

図8.『蒙漢字典』(1928)所収「蒙文十二字頭」

2.



(ai 愛字頭)3.



(ar 阿爾字頭)4.



(an 安字頭)5.



(ang 昻字頭) 6.



aG/eg 阿克字頭)7.



as 阿斯字頭)8.



ad 阿特字頭)

9.



(ab 阿布字頭)10.



(au 敖字頭)11.



(al 阿勒字頭)12.



(am 阿木字頭) これらのうち、2.



(ai 愛字頭)と 10.



(au 敖字頭)は、ローマ字転写では、母音字 (i と u)で表記しているが、モンゴル文字の伝統ではこれを音節末の子音に準じた扱いを している。 具体的な配列順序は、まず、

(阿字頭)の見出しのもとに語頭に

(a)で始まる開音 節を持つ語がすべて列挙される。「目録」(図7.)ではそれに続いて、小字で字下げして次 のような項目が立てられている。

ᠠᠢ ᠠᠴᠠ ᠠᠮ ᠬᠦᠷᠲᠡᠯ ᠡ᠂,

(ai-aca am kürtel_e) 愛起阿木字頭 九…一五 これがすなわち、語頭に閉音節を持つ語を示している。閉音節の種類と順番は、先に示し た第二から第十二までであり、以下に列挙する「

(a)を含む閉音節で始まる語」が順に 配列されることになる: 13

(20)

14

2.



(ai)、3.



(ar)4.



(an)、5.



(ang)、6.



(aG)、7.



(as)、 8.



(ad)、9.



(ab)、10.



(au)、11.



(al)、12.



(am)

「目録」では、

(阿字頭)にだけこのような副見出しが付されているが、実際には、 それに続く

(額字頭)も全く同じやり方で、

e)で始まる開音節(すなわち e だけ からなる音節)がすべて列挙された後、以下の「

(e)を含む閉音節で始まる語」が順に 配列される:

2.



(ei)、3.



(er)、4.



en)、5.



eng)、6.



(eg)、7.



es)、 8.



ed)、9.



eb)、10.



eU)、11.



(el)、12.



em)

それに続く

(伊字頭)でも

(鄂字頭)でも、さらに子音字で始まる



(那字頭) でも



(尼字頭)でも、



(哈字頭)でも



(噶字頭)でも、すべての見出し語の後に これら11 種類の閉音節で始まる語が配列されている。実際には、「目録」に「~字頭」と して列挙されているひとつひとつの見出しの後に、すべて上の 11 種類の閉音節で始まる 語が配列されている。 これが単語の第 1 音節の配列順序であり、第 2 音節も、第 3 音節もこれと全く同様に、 図7.(11 頁)の「目録」の順番で配列されることになる。ただし、第 2 音節以降ではす べての音節が子音で始まるので、現れるのは



(那字頭)以降の字母である。 * * * 『蒙漢字典』(1928)における単語の配列方式は、『蒙文彙書』(1851、別名『蒙文倒綱』) および『欽定蒙文彙書』(1891)の配列方式を継承している。その字母と配列順序は、『三 合便覧』(1780)所収のモンゴル語の十二字頭(図3.)に遡るものであり、『蒙漢字典』(1928) が掲げている「蒙文十二字頭・第一阿字頭」はこの字書の実態を反映するものではない。 これに加えて、ひとつの文字が複数の発音を持つ場合、同じ字形は発音にかかわらず同じ ものとして扱う「字形配列方式」がこれらの辞書独自の配列方式となっている。 2014 年 10 月吉日 編者識 14

(21)
(22)
(23)
(24)
(25)

目録 1a

(26)

目録 1b

(27)

目録 2a

(28)

目録 2b

(29)

勘誤表 1a

(30)

勘誤表 1b

(31)

勘誤表 2a

(32)

勘誤表 2b

(33)

勘誤表 3a

(34)

勘誤表 3b

(35)

蒙文十二字頭 1a

(36)

蒙文十二字頭 1b

(37)

1a

(38)

1b

(39)

2a

(40)

2b

(41)

3a

(42)

3b

(43)

4a

(44)

4b

(45)

5a

(46)

5b

(47)

6a

(48)

6b

(49)

7a

(50)

7b

(51)

8a

(52)

8b

(53)

9a

(54)

9b

(55)

10a

(56)

10b

(57)

11a

(58)

11b

(59)

12a

(60)

12b

(61)

13a

(62)

13b

(63)

14a

(64)

14b

(65)

15a

(66)

15b

(67)

16a

(68)

16b

(69)

17a

(70)

17b

(71)

18a

(72)

18b

(73)

19a

(74)

19b

(75)

20a

(76)

20b

(77)

21a

(78)

21b

(79)

22a

(80)

22b

(81)

23a

(82)

23b

(83)

24a

(84)

24b

(85)

25a

(86)

25b

(87)

26a

(88)

26b

(89)

27a

(90)

27b

(91)

28a

(92)

28b

(93)

29a

(94)

29b

(95)

30a

(96)

30b

(97)

31a

(98)

31b

(99)

32a

(100)

32b

(101)

33a

(102)

33b

(103)

34a

(104)

34b

(105)

35a

(106)

35b

(107)

36a

(108)

36b

(109)

37a

(110)

37b

(111)

38a

(112)

38b

(113)

39a

(114)

39b

(115)

40a

(116)

40b

(117)

41a

(118)

41b

(119)

42a

(120)

42b

(121)

43a

(122)

43b

(123)

44a

(124)

44b

(125)

45a

(126)

45b

(127)

46a

(128)

46b

(129)

47a

(130)

47b

(131)

48a

(132)

48b

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参照

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