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具体物モデルによる教授が後続の課題解決に及ぼす影響―課題解決に対する妨害的作用とその制御条件―

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(1)

具体物モデルによる教授が後続の課題解決に及ぼす

影響―課題解決に対する妨害的作用とその制御条件

著者

佐藤 誠子

雑誌名

東北教育心理学研究

13

ページ

43-53

発行年

2013-10-31

URL

http://hdl.handle.net/10097/00120650

(2)

具体物モデルによる教授が後続の課題解決に及ぼす影響

一課題解決に対する妨害的作用とその抑制条件

佐 藤 誠 子

(東北大学大学院教育学研究科)

問題と目的

教科学習の中でも,特に算数・数学学習は数式や記号 を扱う点で抽象的世界を扱う領域である。そこでは,抽 象的概念を学習者に理解可能な形で提示するために,教 材の加工を必要とする場合が多い。その際,特に多く用 いられるのは具体物モデルである。具体物モデルとは, 公式や数式などの記号操作について具体物を用いて表し たものであり,例えばそれを用いた学習活動としては加 減算の学習における演算棒やタイルの操作,因数分解の 学習におけるタイルの並べ替え活動 (Bruner,1966a) などが挙げられる。このように,算数・数学学習におい て具体物モデルがよく利用されるのは, Ball (1992)が 指摘するように,具体物を用いた教授が学習者の数学学 習を改善するという期待が教師側に根強くあるためであ ろう。そして,具体物を用いた学習を通して教科内容の 理解が進むことによって,転移が起こると想定されてい る (Bruner,1966b)。こうした点で,具体物による教授 の有効性は広く信じられてきた。 ところがその反而,それは必ずしもその後の課題解 決 を 保 証 す る も の で は な い こ と が 近 年 指 摘 さ れ て き て い る (McNeil& Uttal, 2009; Kaminski, Sloutsky, & Heckler, 2008, 2009など)。例えば, Kaminski, Sloutsky, & Heckler (2008)は,大学生を対象に,数学の3元の可 換群に成立するルール1について,抽象的シンボルによっ て学習させた場合と,具体物例示によって学習させた場 合とで学習効果の比較検討を行った。その結果,学習状 況と伺じシンボルが用いられた事後課題では成績に群間 差がみられなかったが,一方,転移課題では,具体物例 示により学習した群は抽象的シンボルにより学習した群 よりも遂行成績が低かったのである。この結果は,具体 物例示の教授によりもたらされた,課題解決における転 1 具体的には,集合 Gの任意の元x,y, zと定義された 演算(*と表記)について,結合法則 ((x*y)ネz=x*(y*z)), 交換法則 (x*y=y*x)が成り立つこと,単位元(任意の 元xに対してがI=xとなるI)および逆元(任意の元Xに 対してずy=Iとなる y)が存在することである。 43 移の失敗を示すものである。しかし, Kaminski et al.の 研究では,具体物例示のどのような側面が課題解決に影 響を及ぼしたのかについては具体的に明らかになってい ない。具体物モデルは多くの授業場面で用いられている 以上,その有効性を保証する教授学習条件を明らかにし なければならないだろう。 なぜ,具体物を用いた教綬は,学習を促進する効果 が期待される反面,課題解決に対して妨害的作用を及 ぼしてしまうことがあるのだろうか。これに関して示 唆を与えるのが, Uttal, 0' Doherty, Newland, Hand, & DeLoache (2009), Utta,lScudder, & DeLoache (1997) の論である。そこでは,具体物はそれ自体で「物体」で あると同時に「何らかの指示対象」であるというこ重表 象 (DeLoache,1987)の観点から具体物による教授の 効果を捉えている。 DeLoacheは具体物の二重表象性に 伴う課題解決の困難を幼児期の子どもを対象に明らかに したが, Uttal et al.(1997, 2009)は,それは幼児期に 限らず学校で行われる算数・数学学習でも同様に起りう ると想定している。例えば,演算棒やタイルを用いた加 減算の学習についていえば,演算棒やタイルそのものは 物体であるが,それらが指し示すのは1や10という数で ある。具体物を用いた教授において教師が意図するのは, それが示すところの数学的概念を理解させることなので あるが, Uttal et al.(2009)によると,具体物の操作が 具体物そのものの特性に焦点化させるようなものである 場合,学習者は,それが示す数学的概念を理解すること が困難になるという。算数・数学学習において用いられ る具体物や教具は二重表象性をもっ。具体物は,抽象的 概念を具体化して示すため初学者にとって理解の助けと なり,またそれ自体魅力的で興味を引きつけるものでは あるが,この特性がむしろ後の課題解決の阻害要因に なっているといえるのである。 このような具体物モデルの利用とそれに伴う問題につ いて,現実の教授学習場面において明らかにした例とし て佐藤 (2008)がある。佐藤が扱った具体物モデルとは, 「等周長変形に伴う面積変化」を具現化した面積変化モ デル (Figurel)である。それは,辺の長さが等しい可

(3)

亡令 Figure 1 等周長変形に伴う面積変化を表す具体物モデル 変性のある四角形を連続的に変形させた際 (等周長変形) の面積変化を表すものであり,具体的には,流動性のあ る物質を平らに敷き詰めた立体的な長方形の枠を,その 周長を保ったまま平行四辺形に変形させると,その物質 が盛り上がるというものである。この具体物モデルによ る教授に期待された効果とそこで顕在化した問題とは, 以下のようなことであった。「等周長変形に伴う面積変 化」を紙上で問う問題は「等周長問題J(工藤,2005など; Figure2.b参照)と呼ばれているが,この問題は平行四 辺形の求積公式の適用により解決可能であるにもかかわ らず,面積学習後の学習者でも公式を適用できず「而積 同じ」と判断してしまう者が少なくない(西林, 1988; 工藤・白井,1991など)。この問題の難しさは,工藤(2005) によれば,その解決において平行四辺形の求積公式をそ のままの形では適用できず公式の変数(底辺,高さ)を 変動させる内的な「操作J2を必要とする点にある。この ことから,公式を適用した課題解決を促すには,面積学 習において公式の操作可能性を高める学習援助が求めら れることになるが,公式レベルの操作は抽象的な記号操 作であるため,学習者にとっては操作された命題の意味 を理解することが困難であると予想された。そこで,こ の等周長変形に伴う面積変化を具体的な容積量の変化と して具現化したFigure1のような面積変化モデルが提案 されたのである。佐藤 (2008)は,この具体物モデルを 提示すれば,学習者にとって面積変化 (高さを小さくす ると面積は減少すること)の直観的理解が可能になるた め,複数の図形の面積比較課題に対して公式を適用した 適切な判断が促進されると想定した。ところが,実際に 小学6年生を対象に実験授業を行ったところ,具体物モ デルの提示は積極的効果だけをもたらすものではなかっ たことが明らかになったのである。学習後のテストの結 果,学習場面と同型の諜題(図形の周長が等しい図形の 面積比較課題, Figure2参照)では正答率が上昇した一 方,公式適用により同様に解決可能であるはずの別の課 題(底辺と高さがそれぞれ同じ長方形と平行四辺形の面 2 等周長問題の解決においては,平行四辺形の求積公 式「平行凶辺形の面積=底辺×高さjについて, ["底 辺を固定し,高さを小さくすると,面積は小さくなるj というように,変数を変動させる操作が求められる。 44 積比較課題, Figure3参照)では,面積は 「長方形>平 行四辺形」とする誤判断が増加したのである。これは具 体物モデルによりもたらされた妨害的作用である。この 授業での教師の意図は,面積変化モデルを通して底辺・ 高さと面積との共変関係について理解させることであっ たのだが,学習者は「平行凶辺形に変わると面積が変わ る」というような,現象的な物の形の変化に基づいた理 解を行っていたことが推察された。 では,上記のような妨害的作用を回避し,具体物モデ ルによる教授が効果的であるためにはいかなる条例が求 められるのか。このことを検討するにあたって着目した のが, Uttalet al.(2009)の指摘する,具体物に対する 学習者の理解の問題である。Uttalet al.は,具体物に関 する二重表象性 (DeLoach,巴1987)の問題から,具体物 を効果的に用いるには,具体物が示すところの概念によ り多くの焦点を当てそれ以外の物理的特性には焦点を当 てないようにすべきであると主張している。すなわちそ れは,具体物を用いた学習を通して学習者が形成する知 識の問題,すなわち数学的概念のレベルでの知識表象化 と,物理的物体である具体物そのものの特性に着目した 知識表象化の問題として捉えられよう。これは, Bruner (1966c)の表象形式論からすれば,前者は象徴的表象に あたり後者は映像的表象ないし動作的表象にあたるもの である。そして,具体物による学習効果は,この学習者 の形成する知識表象の内容により左右されると考えられ る。つまり,問題解決の際,具体物の特性に焦点化され た知識が用いられるとすれば,課題が学習場面と同様の 場合にしか解決に至らないのに対し, 抽象化された数学 的概念の知識が用いられるとすれば,課題場面にかかわ らず解決可能であろうことが予想されるのである。 以上の議論を踏まえれば,具体物を用いた教授の効果 は,単にどのような具体物を用いるかという外的な教授 条件の設定だけではなく,その学習の結果として学習者 自身が形成する知識表象という観点からも検討する必要 がある。先述の佐藤 (2008)の結果については,事後の 課題解決に失敗した学習者は,"[“長方形から平行四辺形 に変わると"面積は小さくなる」という知識を作り上げ ていた可能性が指摘できる。これは,公式ではなく 「形 の変化」に着目している点で,具体物の特性に焦点化し た知識表象といえよう。しかし佐藤 (2008)では,前│述 の面積変化モデルを用いた学習直後に学習者がどのよう な表象化を行っていたのか, また, それをもとにどのよ うな面積判断を行っていたのかについては具体的に検討 されなかった。また, Uttaletal.(1997, 2009)では具 体物を用いた学習の効果に関して,具体物に対する学習

(4)

者の理解の様相に着目することの重要性について言及さ れているものの,実際の授業場面を対象にした実証的検 討はなされていない。そこで本研究では,具体物モデル を用いた教授の効果に関して,佐藤 (2008) で用いた面 積変化モデルを取り上げ,授業において学習者が形成す る知識表象と後の課題解決との関連について検討するこ ととする。その際,特に,学習者の授業中の反応および 課題に対する反応等から検討を行う。 なお,この実証的検討にあたっては, Uttal巴tal.の論 にあるように,具体物を用いた授業においては,学習者 の理解を具体物そのものの特徴ではなくそれが指し示す 適切な数学的概念に焦点化させることが重要であること から,授業プランはそれを促すよう設計する必要がある。 面積変化モデルを用いた学習の場合, I長方形から平行 四辺形に変わるJという枠そのもの(具体物)の変化で はなく, I高さJ(公式変数)の変化に着目した知識の形 成が望まれる。このため授業では,①面積変化モデルを 提示する前に,学習者に実際に枠変形操作をさせること, ②その上で枠変形が微小の場合の面積変化をモデルで提 示することとした。①の自由な枠変形操作の中で,学習 者に面積が極小の図形を構成させる。ここで学習者が「高 さjも極小になることに気づくことができれば,枠変形 における平行四辺形の「高さJの違いと面積変化との関 連が明瞭になり,②において,具体物により示された面 積変化を「高さ」の変化から解釈することが容易になる。 そして,数学的概念である「高さJへの焦点化をより促 すために,②において面積変化モデルを提示する際,モ デル上の平行四辺形の「高さ」に印をつけその変化に着 目させ,さらに教師によって「高さjの変化と「面積」 の変化の関係についてまとめを行うこととする。 本研究では,このような具体物モデルを用いた授業に おいて学習者が形成する知識表象の様相について検討 し,さらに,その違いが後の課題解決にどのような影響 を及ぼすかを実証的に検討することを目的とする。 方 法 1 .対象児童 と高さの関係について確認した。 A3'1"Uのプリントに平 行四辺形の求積公式を記入させ,次に黒板に平行四辺形 を提示して「平行四辺形の高さは,底辺から向かい側の 辺に垂直にひいた直線である」ことを説明した上で,プ リント土の平行四辺形(底辺lOcm (太線で指定),斜辺 10cm,高さ 8cm。長さは明記せず)に高さを描かせた。 なお,三角定規で高さを適切に取ることができない学習 者に対しては個別に対応し,平行四辺形の「高さjを正 しく取れるように指導した。 ②等周長変形枠を用いた活動 学習者による枠変形操 作を通して,面積が極小になる場合の高さの変化に着目 させ面積変化と高さの変化との関連づけを行った。厚紙 で作製した等周長変形枠 (10cmx 10cm) と12cmの直 定規 (10cmまで lcm刻みの目盛り付)を配付し,枠を どう動かしても周長は変わらないことを全体で確認した 上で,プリント上の平行四辺形(底辺10cm,斜辺 10cm, 高さ8cm,Iはじめの平行四辺形」と呼んだ)に枠を合 わせるよう指示し, I枠で固まれたところの平行四辺形 の面積がなるべく小さくなるように,枠を動かして形を 作ってみよう」と問いかけ自由に形を作らせた。その後, 「同じ枠で作った形なのに面積が小さくなるのはなぜかj をたずねた。「高さが小さくなったから面積が小さくなっ た」ことに気づかせた後,各個人が枠で作った平行四辺 形の底辺,高さの長さを測らせ面積を求めさせた。さら に, I面積がなるべく大きくなるように枠を動かして形 を作ってみよう」と教示し,同様の活動を行わせた。そ して, I周りの長さは変わらないが面積が小さくなった り大きくなったりしたのは,高さが変わったからだJと まとめた。 ③面積変化モデルによる面積変化の提示 「では,平 行四辺形の枠を少しだけおしつぶしてみたら,面積は変 わるだろうか,それとも変わらないだ、ろうか」と発問し, 3択(面積は変わらない/面積は大きくなる/面積は小 さくなる)で予想させた。予想の分布を全体で確認した 後, Figure1の面積変化モデルを提示した。この際,実 物投影機を用いて50インチのテレビ画面にモデルを真上 から映すこととした。なお,面積変化モデルの受け皿に 公立A小学校6年生31名が本研究の対象児童となった。 方眼紙 (lcm四方, 5mm幅の点線補助線付)を貼りつけ 平行四辺形の「高さjや求積公式については第5学年で ておき,学習者が高さの変化を読み取れるように配慮し 学習済みである。 た。モデルの提示は複数回行い, 1回目は中に敷きつめ 2.授業の概要 たビーズの変化について, 2回目は枠の右隣に直定規を 筆者による一斉授業(約50分)を行った。授業の概要 配置し,高さの変化について印をつけて着目させた。 3 は以下の通りである。 回目は教室前方に学習者らを集め,面積変化モデルを白 ①平行四辺形の求積公式,底辺と高さの確認 まず第 由に操作させた。 5学年の復習として,平行四辺形の求積公式および底辺 ④まとめ 教師によるまとめを行った。底辺は同じま 45

(5)

まで変わらないが,面積が小さくなるときは高さも小さ (横4本,縦3本)と平行四辺形 (底辺4本, 斜辺3本) くなること,面積が大きくなるときは高さも大きくなる の面積を比較させた。3択(面積は次郎くんの形(長方形) ことについて言及した。 の方が大きい/花子さんの形(平行四辺形)の方が大き 3.評価課題 い/面積はどちらも同じ)でたずねた。 3. 1 授業直後の確認課題 連続性課題 角を留めた正方形の木枠を,正方形から 授業において学習者が形成した知識表象の様相を探る 平行四辺形にア,イ,ウと3段階で連続的に変形させた ため,授業終了直後に等周長変形諜題と等積変形課題(い ときの,枠内の面積を比較させた。4択 (面積が大きい ずれも対提示)に解答してもらい,その判断理由を求め 順にア, イ,ウ/面積が大きい順にウ,イ,ア/面積は た(自由記述)。解答はいずれも,長方形 (ア)と平行 どれもみんな同じ/その他)でたずねた。 四辺形(イ)の面積についてどちらが大きいかを3択(面 発展課題(事後のみ) 5mの様2本,3mの棒2本で作っ 積はアの方が大きい/面積はイの方が大きい/面積は た平行四辺形の花坦(左傾,上・下辺5mの棒,斜辺3m ア,イどちらも同じ)で問うものであった。 の棒)と長方形の花壇 (横5mの棒,縦3mの棒)の面積 3.2 事前・事後テスト課題 を比較させた。3択(面積は太郎くんのクラスの花だん(平 事前・事後テストの課題は以下の通りである。 行四辺形)の方が大きい/次郎くんのクラスの花だん(長 高さ課題(事前のみ) 方形)の方が大きい/面積はどちらも同じ)でたずねた。 求積に関する基本的概念が定着しているかどうかを確 この問題は,比較図形のうち平行四辺形が左傾となって 認するために設けた。底辺が指定された次の5つの図形: いる点で, 学習時の課題図形の変形方向と異なる。 ( 1 )図形の内側に高さが取れる平行四辺形, (2)図形 等積変形課題 (Figure3) の外側に高さを取る平行四辺形,(3)鋭角三角形, (4) 底辺と高さがそれぞれ等しい長方形と平行四辺形の而 底辺が水平でない平行四辺形,(5)鈍角三角形について, 積を比較させる課題である。この課題は学習場面では直 それぞれ高さを描かせた。 接扱ってはいないが, 平行四辺形の求積公式を適用する 等周長変形課題 (Figure2) ことにより解決可能である。 周長が等しい長方形と平行四辺形の面積を比較させる 対 提 示 課 題 等積 の 長 方 形 ( ア ) と平行 四辺 形 ものであり,学習場面と同型の課題である。 (イ)の 面積 を比 較 させた。3択 (アの方が大きい 対提示課題 14本のマッチ俸を使って作った長方形 /イの方が大きい/どちらも同じ)でたずねた。な 〉史郎〈んの帆 花子きんの柑 a 対拠不('"刑 事 韓 共 通 ) 日 訓 /1マ~可町 令官午、 Q

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時 b 連続性(事前本能共通) 太郎《ιaヲうえのtr,t~.i.. ;'1.師イんのクラえの花r,~ん c 転移(事挫のみ) Figure 2 等周長変形課題(事前・事後テスト)

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対提示 ( 左 事 前, 布 事 後 )

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b 連 続 性 ( 事 前ー事後共通)

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c 転 移 ( 事後のみ) Figure 3 等積変形課題(事前・事後テスト) -46一

(6)

お, 2つの図形は平行な2直線開(距離は平行四辺形の 高さと等しい)に配置された。 連 続 性 課 題 上 ・ 下 辺 が 木 の 棒 , 縦 二 辺 が ゴ ム で 作 ら れた長方形の枠で,下辺を固定したまま高さを変えずに (下辺と上辺が平行になるように)上辺のみを右に困(長 方形)→固(平行四辺形)→固(大きく傾いた平行四辺形) と3段階で連続的に移動させたときの,枠内の面積を比 較させた。 4択 ( 面 積 が 大 き い 順 に 回 , 匝 , 固 / 面 積 が 大 き い 順 に 固 , 国 , 回 / 面 積 は ど れ も み ん な 同 じ / その他)でたずねた。 発展課題(事後のみ) 底面が等面積で(底面の図形 の上・下辺と高さがそれぞれ等しい),深さも等しい長 方形(①)と平行四辺形(②)の容器について,それぞ れに入るゼリーの量を比較させた。 3択(①の方が多い /②の方が多い/どちらも同じ)でたずねた。この問題 は,面積を容積に変換している点では授業での学習課題 の文脈と同様であるが,底面の図形の「高さjが等しい(不 変化)ことから容積も変化しないことを導出する必要が ある。 4.手続き 事前テスト(授業の10日前),授業,授業直後の確認 課題,事後テスト(授業終了5日後)の順に行った。授 業は筆者による一斉授業(約50分)であった。事前・事 後テストの課題冊子は当該学級の担任が配付し,一斉に 行った。なお,事後テスト終了後,問題の解答と解説を 記載したプリント冊子を配付し学習者へのフィードパッ Tab!e 1 等周長変形枠を用いた活動場面においてみられた 学習者のつぶやき(佐藤, 2011) (中略) C1(f口ω:(j宇をたたんだ形を見て)だめじゃん?くつつけ たら。 C2(臼5)これだと高さなくならない由。(高さがなくなる のではないか,と同意を求める) ・・(※聞き取れず) C3(m14) だって,だって,平行四辺形って亘室。で求 められるから・.(※聞きとれず) C4(f13):あ,そうか,違うからか! C5(m05) :あ,底辺なのね C6(皿14):だって,だって・・・(※聞きとれず) C7(皿05) あ,そうか C倒的2) :あー,底辺は変わんないけど一-C9(m14) 直主主室主ゑ血からー C10(flO)だから例えばこれがー.1c皿くらいだと・・・ 匙且ギ立二二二s (※聞きとれず)・・ Cll(fl5) : (枠をつぶした形を提示して)ことが10で,直 立且が0だから,ない? C12(f13) : (Cllの発言を受けて,隣(m14)に聞く) C13(皿14):それはもう,面積ない・・(※聞き取れず) C14(fl3) : (Cllに対して)ない,ない,ナッシング。 Tは授業者. Cは学習者, Csは複数の学習者, ( )内の 記号は学習者の番号を表すロ -47 クを行った。 結果と考察

O

.学習者の事前状態

本研究で扱った学習課題(平行四辺形の面積)は,第 5学年の既習事項である。そこで,面積の基礎的概念と なる「高さ」の理解について確認するため,事前テスト の高さ課題(内部に高さが取れる平行四辺形)3の解答を みたところ,正答者は31名中15名 (48.4%)にとどまっ た。この点については,後の分析の際に学習者の内因(事 前達成度の違い)として考慮する。 1 .授業における学習者の反応 はじめに,実際の授業場面においてみられた,特徴的 な学習者の発言・挙動等について取り上げる4。まず変形 枠を動かして「面積がなるべく小さくなるように形を作 3 小学校第5学年の平行四辺形の求積の学習では,まず, 内部に高さが取れる平行四辺形をもとにして「底辺に 垂直な直線の長さを高さという

Jと説明される(例え

ば,藤井・飯高他, 2012)。ここでは,基本的な高さ の理解を確認する目的で,内部に高さが取れる平行四 辺形の解答に着目した。 4 この授業過程の詳細については佐藤 (2011) を参照 されたい。なお,佐藤 (2011) での目的は,面積学習 の改善を企図した授業プランの成果検討にあったのに 対し,本研究の目的は,具体物を用いた授業を通して 作り上げた学習者の知識表象と課題解決との関連につ いて検討することにある。そのため,分析にあたって は,佐藤 (2011) で示した逐語録の中から必要な箇所 を取り上げることとする。 Tab!e 2 枠内の面積が小さくなる理由を問いかけた場面 (佐藤, 2011) (中略) T1:はじめ, rはじめの平行四辺形」がこれだったけど, これさ,考えて欲しいんだけど,まわりの長さ変わっ てないんだよ? Cs1 :うんロ T2 なのに,みんな,こうやったらさ(極端に枠をつぶ した形を提示する),面積小さくなるって言ったよね。 なんで? Cs2 ・長さが~/高さが~(※複数の子どもが同時に 各々に発言しているため,聞き取れない) T3 :なんかいろんな考えが出てきたな。 (つぶやき) (C3(皿14):高さが縮まるからの d (C4ω2) :底辺は変わんないけど高さが変わるの

d

(C5(m14)長さでなくて 高さだから伺底辺は長さだ けど.高さはちつちゃくなってるの②} (C6(f02):高きが変わる!-~底辺が同じでも・..②※ 聞きとれず) Tは授業者, Cは学習者, Csは複数の学習者, ( )内 の記号は学習者の番号を表す。

(7)

Table 3 面積変化モデルを学習者に提示した場面 (佐藤, 2011) (中略)(T,ピーズが敷きつめられた枠を少しだけおしつ ぶす。ビーズがこぼれる) Tl:どうなった? Csl: あ,出てきた~/こぼれた。/こぼれてる。(平静 である) T2 :ってことは面積は? Cs2 :小さくなったロ(ぼそぼそ) T3 :小さくなった。・-もうちょっとやる?・-こうや ったら・・(ビーズがかなりあふれでくる) Cs3 :おおっ/すっげ。 T4 :ビーズどうなった? Cs4 :こぼれた。/あふれた。 T5:ってことは面積は? Cs5:小さくなった。 T6で,何回もいったけどさあ,周りの長さおんなじな んだよ。なのに,何で面積小さくなったの? Cs6 :高きが変わったから内/高きが小さい0 /高きが 企室三主ヱ主レ③ (後略) Tは授業者, Cは学習者, Csは複数の学習者を表す。 るjという課題では (Table1),ほとんどの学習者がす ぐに枠を極端につぶしていた。中にはこの時点で,枠変 形に伴って高さが減少し,そのために面積が小さくなる ことを理解していた者もいた (Table1の下線部①:学習 者f15,m14, f10)。ここで,具体物の操作と「高さ」の 変化との対応づけに成功していたといえる。これは, 1枠 (周りの長さ)は同じであるのに,なぜ面積が小さくな るのか」を問いかけた場面 (Table2) でも,その理由と して「枠をつぶしたから」という「枠の変形」を根拠に した解釈は出されず, 1高さ」への言及がはっきりとみ られたこと (Table2の下線部②:学習者 m14,f02) から も明らかである。さらに,面積変化モデルを学習者に提 示した際にも (Table3),多くの学習者が面積変化の理由 として高さの減少を指摘していた (Table3の下線部③)。 このように,授業過程では「高さ」に着目した発言が 目立ち,学習者は面積変化の要因を「高さ」の変動に求 めることができたように思われた。ところが,後述する ように,授業を経て結果的に形成された知識は学習者個 人によって異なり,それは「高さ」に着目したものばか りではなかった。

2

.

学習者の形成した知識表象の様相 授業を経て学習者が形成した知識表象の様相について 検討するため,授業直後の確認課題(等周長変形課題, 等積変形課題)の判断理由の記述内容を分析する5。学習 者にとって求積公式や図形の高さは第5学年で学習済で あるため,面積変化モデルにより示された物理的現象を 公式に基づいて説明するための必要条件は有している といえる。しかし各課題の判断理由をみると (Table4), 数学的概念としての適切な「高さ」のみならず,具体物 の特徴,すなわち「おしつぶす」という動作や「見た目J などにも着目していた者がいることがうかがえた。そこ で,面積判断の正誤にかかわらず,理由として等周長変 形・等積変形ともに「高さ」のみに言及した学習者(1高さJ の表象化)と,それ以外の,具体物の動作や形など (1お しつぶすJ1見た目J)にも言及した学習者(動作や形な どにも着目した表象化)とに分類した。その結果,1高さ」 の表象化は31名中 18名 (58.1%) にとどまったことが 明らかになった。授業では「高さ」を強調し,さらに「高 さ」が変化すると面積も変化するとまとめていたにもか かわらず,学轡者の形成した知識は必ずしも数学的概念 としての「高さ」のみに着目したものとは限らなかった。

3

.

事後課題解決との関連 では,このような表象化の違いは後の課題解決にどの ような影響を及ぼしていたか。ここで焦点を当てる事後 課題は,等積変形課題 (Figure3参照)である。それは, 5 学習者のもつ知識が課題解決に影響を及ぼしている ことを踏まえれば,面積判断の理由として記述された 内容がその学習者の知識の内容を表していると考えら れる。そのため,ここでは,学習者が本授業を通して 学習した内容を明らかにするために,授業直後の確認 課題の判断理由を,学習者の形成した知識表象の指標 として用いることとする。 Table 4 授業終了後の確認課題における面積判断の理由づけ(例) 「高さ」のみに言及 等周長変形 (22名) -高さが小さいと面積も小さくなるので,高さが大きいアの方が大きい (f02) ・アよりもイの方が高さが小さくなったから面積もせまくなる(f15) 等 積 変 形 (23名) -底辺の長さも高さも同じだから (f04) -高さが高いから(※面積判断では長方形>平行四辺形の誤答) (f10) 動作や形の変化にも言及 等 周 長 変 形 (9名) ・イ(平行四辺形)はア(長方形)を盆ム2壬

L

左形だからアの方が大きい (m02) ・かたちを変えたらちがうから (mll) 等 積 変 形 (8名) ・イ(平行四辺形)は高さは同じだけどおLつ ぶdiLでb

d;d'6,イが大きい(皿06) ・高さは低いけど,金主主Eはイ(平行四辺形)の方が大きく感じるから (f01) .ピーズみたいにこぼれるからほ12) ( )内の記号は学習者の番号を表す。 48

(8)

等積変形課題は授業では取り上げていない課題であるこ と,等積変形は変形に伴い周長が大きくなる点で等周長 変形とは異なるが,いずれも平行四辺形の求積公式を適 用することで解決可能であることぺ加えて,面積変化モ デルの効果を検討した佐藤 (2008)において事後の等 積変形課題で誤判断の増加がみられたことによる。ただ し,知識表象の様相と等積変形課題の解決との関連を検 討するにあたり,本研究では事前テストの段階で平行四 辺形の「高さ」を正しく取れた者が約半数(31名中15名) にとどまっていたことに注意しなければならない。そも そも面積学習では「底辺Jと「高さ」が互いに直交して いることの理解が肝要であり,

i

高さ」の誤りは面積学 習における組害要因となる(小野寺,1989)。したがって, 「高さ」の誤りは面積変化モデルを用いた学習にも影響 を及ぼしていると予想されるため,本研究の目的である 学習者の知識表象化と課題解決との関連を検討するにあ たっては,事前テストの「高さ」正答者と「高さ」誤答 者とを区別する必要がある。 3.1

r

高さ」正答者 (15名)の分析 「高さ」正答者における事前・事後テストの結果は Table5の通りであった。等積変形の連続性課題では正答 6 等積変形課題の解決においては,平行四辺形の求積 公式について「底辺が同じで(固定し),高さも同じ であれば(変えなければ),面積も同じである(変わ らない)Jとする内的操作が求められる。等周長変形, 等積変形のいずれも,底辺を固定した場合の「高さJ の変化(不変化)から面積の変化(不変化)を導出す るというプロセスにより解決可能である。 率が低下しており,その誤答内容をみると,事後では「長 方形>平行四辺形jが増加していることがうかがえる。 先行研究(工藤・白井, 1991)や本研究の学習前におけ る典型的な誤答が「長方形<平行四辺形」であることを 踏まえると,この,事後テストにおける等積変形課題の 誤答の多くは,学習者が具体物モデルによる形の変化(長 方形から平行四辺形への変化)に着目してしまったため に引き起こされたと考えられる。 そこで,これらの学習者が形成した知識表象の様相に ついて検討すると,

i

高さ」の表象化は15名中10名,

i

動 作や形」などにも着目した表象化は 5名であった。「高さ」 正答者の事前・事後テストにおける等積変形課題の正答 者数をTable6に示す。特に正答率が低下した等積(連続 性)の課題に着目すると, i動作や形」の表象化グルー プでは事前正答者5名のうち3名が事後に「長方形>平 行四辺形」とする誤答に転じていた。一方「高さ」表象 化グループでは,誤答への転化は事前正答者9名中2名 にとどまった7。各課題の結果をみると,i高さ」表象化グ ループの方が相対的に正答者数の割合が高いことがうか がえる。そこで,一貫して公式適用による適切判断がな されたか否かを検討するため,これらのグループ問で事 後等積変形課題 3問に一貫正答した人数の割合を比較し た (Table6)。その結果, i高さ」表象化グループの方が, 事後の等積変形課題3問に完答する割合が高い傾向にあ 7 i高さj表象化グループにおける等積(連続性)の事 後正答者8名のうち, 1名は誤答から正答に変容した 者である。 T冶ble5 事前・事後テストにおける解答分布 等周長(対提示) 等周長(連続性) 等周長(発展) 選 択 肢 事 前 事後 事前 事後 事後のみ 互主~ 2 1呈 2 1韮 1呈 RくP 1 0 0 0 0 R=P 12 2 13 1 2 E三~ 2 l! 呈 主韮 Z RくP 1 1 2 0 0 R=P 13 6 9 2 9 等積(対提示) 等積G車続性) 等積(発展) 選 択 肢 事 前 事後 事前 事後 事後のみ 高さ正答 (15名) 高さ誤答 (16名) 高さ正答 (15名) R>P RくP R=P nυoon

11 0 2

5 4 2 11 1 14 0 10 R>P 2 6 0 7 5 高さ誤答 R<P 11 5 8 5 6 (16名) 亙三E 皇 昼 皇 垂 畳 選択肢のRは長方形, Pは平行四辺形。数字は人数,下線部は正答を表す。 Table 6 事前「高さ」正答者における学習者の知識表象化と等積変形課題解決との関連 表象化 「高さJのみ(10名) 動作や形など(5名) 等積{対提示) 等積(連続性) 等積(発展) 事前 事後 事 前 事 後 事後のみ 6 9 9 8 8 2 5 2 2 数字は正答者数。 等積完答 (事後) 8 49

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ることが示された (Fisherの直接確率p= .09)。 ④そのような「高さ」の表象化に基づく適切な課題解決 以上より,公式に基づいた表象化が成立すれば,授業 は,面積の基礎的概念である「高さj概念が定着してい では扱わなかった等積変形課題に対しても一貫して適切 た学習者 (1高さjは底辺に対して垂直であることを理 な面積判断がなされうること,しかし一方で,具体物に 解していた学習者)に限られることが明らかになった。 よりもたらされる特徴,すなわち学習者自身が行った枠 ちなみに,授業過程においてみられた学習者の発言等 変形操作や面積変化モデルにおいて示された形の変化な と知識表象化との関連について検討すると,授業におい どにも着目した表象化が成立してしまうと,後の課題解 て「高さ」に着目した発言をした者 (Table,l Table2の 決が妨害されてしまうことが示唆される。 fl5,m14, flO,ω2)は,いずれも「高さjの表象化を行っ 3.2

r

高さj誤答者 (16名)の分析 ており,そのうちflOを除く3名は事後等積変形課題に完 他方, 1高さ」誤答者の事後テストの正答率は,等周 答していた。一方で,具体物の特性(動作や見た目など) 長変形の連続性課題で8割を超えたがそれ以外の問題で に着目した知識表象化は,授業中の発言には明瞭に表れ は低く,等周長変形の対提示課題でさえ正答率は6割に なかった。 も

i

前たなかった (Table5)。これら「高さ」誤答者のうち, 「高さ」の表象化は16名中 8名, 1動作や形」に着目した 討 論 表象化は8名であった。これらのグループ間で事後等積 本研究の目的は,具体物モデルによる教授は必ずしも 変形課題の正答者数の割合を比較すると, 1高さj表象 その後の課題解決を保証しないという問題に鑑み,具体 化グループでも正答率が低く (Table7),事後等積変形 物モデルの効果について,学習者が形成する知識表象の 課題3聞に A貫正答した者は皆無であった。「高さ」誤答 様相とその後の課題解決との関連から検討することで 者は,授業前の段階で適切な「高さ」概念が定着してい あった。本研究の結果,①具体物モデルによる妨害的作 なかった学習者である。そのような学習者は,授業にお 用は,学習者の知識が具体物の特性に焦点化された場合 いて底辺と高さと面積の変数間関係が示され面積変化の に露呈すること,そして,その作用を抑制し課題解決が 要因について「高さJと言語化できたとしても,それを 可能になるには,公式等の数学的概念への焦点化が求め 実際の図形と対応づけることができなかったために,適 られること,②ただし,そのためには学習内容に関する 切な判断が困難であったと考えられる。 基礎的概念が学習者側に定着していることが必要である 4.結果の要約 ことが明らかになった。 以上の結果より,次のことが明らかになった。まず① 具体物モデルによる妨害的作用は,まさに学習援助に 授業過程の分析から,面積変化モデルを用いた学習にお おいて用いる教材が具体物であるがゆえに生じる。すな いて,具体物により示された面積変化を「高さjの変化 わち,具体物のもつ二重表象性 (DeLoache,1987) のた から説明する発言が多くみられた。しかしながら,②授 めに,教師が意図する数学的概念に基づく表象化と,具 業終了後の確認課題の分析から,学習者の形成した知識 体物そのものの特徴に着目した表象化とが可能なのであ 表象には,数学的概念としての「高さ」のみならず,学 る。本研究の面積変化モデルに即していえば,それは, 習者自身が行った外的操作 (1おしつぶす」という動作) 公式に基づく「高さが小さくなると面積が小さくなる」 や具体物により示された現象 (1形の変化」など見た目) という表象化の他に,授業において学習者自身が行った にも着目したものが少なからずあることが明らかになっ 具体物の操作あるいは提示された具体物の物理的特徴に た。そして,③この表象化の違いは事後の課題解決にも 基づく「枠をおしつぶすと/形が変わると面積が小さく 影響を及ぼしており, 1高さ」の表象化を行った学習者 なる」という表象化をゆるす。例えば,本授業では学習 は等積変形課題に対して一貫正答できるのに対し,動作 者に実際に枠変形操作を行わせたが,それは学習者に や形などにも着目した表象化を行った学習者は,その課 とって平行四辺形の「高さ」の減少に気づく機会となっ 題解決に失敗する傾向にあることが示された。ただし, た一方で,学習者自身が行った外的操作(枠を「おしつ Table 7 事前「高さ」誤答者における学習者の知識表象化と等積変形課題解決との関連 表 象 化 「高さjのみ(8名) 動作や形など (8名) 等積(対提示) 等積(連続性) 等積(発展) 事前 事後 事前 事後 事後のみ 2 1 6 1 1 4 2 3 4 数字は正答者数。 一50一 等積完答 (事後)

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ぶす」という操作)が面積変化の要因として選択される 原因ともなったと考えられる。学習者の表象化が,後者 のような具体物操作やその視覚的特徴にとどまった場 合,教師の意図する学習のねらいとは異なる知識が構成 され課題解決が妨害されてしまうのである。このような 問題に関してMcNeil& Uttal (2009) は,学習者が形成 する表象と抽象的概念とをつなげる積極的介入の必要性 を指摘しているが,本授業のプロセスを振り返ってみる と,教師は等周長変形枠を変形した際に「高さの減少」 に何度も触れ,また面積変化モデルを提示した後にも「高 さjの変動による面積の変動についてまとめを行ってい た。それにもかかわらず,学習者の形成した知識は必ず しも「高さ」に依拠したものとは限らなかったのである。 このような教授介入にもかかわらず,なぜ学習者の形成 した知識は教師の意図した適切な数学的概念に焦点化し たものだけではなかったのか。 ここで注目すべきは,授業過程においては,具体物の 特徴に着目した表象化が顕在化しなかったことである。 これは,教師が学習者から「高さが小さくなると面積も 小さくなる」という答えを引き出そうとしていたためと も解釈できるが,それだけではない。これはまさに具体 物のもつ二重表象性のために生じた問題であると考えら れる。それは次のように説明できる。授業では,等周長 変Jf,*に伴う面積変化が具体物モデルにより提示されるが, その面積変化の説明としては, I高さが呉なるjことと, 枠を「つぶすこと」や「形の変化」とは互いに矛盾せず 代替可能である。つまり,教師側にとっては実際の枠を 「つぶすこと」や「形の変化」は, I高さの変化jを意味 していたのに対し,学習者にとっては,教師側の言う「高 さの変化」が,枠を「おしつぶすjことや「形の変化」 を意味していたと考えられるのである。このような二重 表象性に基づくそれぞれの解釈は互いに矛盾しないため, 学習者がこれらの意味するところの違いに自ら気づくこ とは難しいのではないだろうか。そのため,授業場面に おいて,教師が具体物の特徴に着目した表象化を意図的 に取り上げない限りは,数学的概念に焦点化した知識表 象化は学習者にとって困難であると考えられる。 そして,このような具体物モデルによる妨害的作用は, 学習内容に関する基礎的概念の不十分な学習者において 顕著であった。本研究の「高さj誤答者について検討す ると, I高さが変わると面積も変わる」という言語的ま とめは可能でも,それが実際の問題場面において適用で きるかどうかは別問題であったことがうかがえる。それ は,まさに学習者の言う「高さ」が,教師の意味する「高さj とは異なっていたためであろう。「高さ」概念が定着し 51 ていた学習者は,実際の図形上の高さと関連づけて高さ の変化と面積変化との関係を理解したが, I高さ」概念 が不十分な学習者は,言語的まとめとしての「高さ」と 実際の図形上の「高さ」との関連づけが不十分であった ために,学習者にとって「高さの変化」という言葉はま さに枠を「おしつぶすJことや「形の変化」と同じ意味 であったのではないか。そのため,学習者が「高さ」の 変化と面積変化の関係について言語的にまとめられたと しても,それは実際の図形上の「高さ」として捉えられ なかったために,有意味化がなされず生産的解決をもた らさない知識にとどまってしまったと思われる。 以上,具体物モデルを用いた教授の効果について検討 してきたが,本研究では対象人数が少ないため,結論の 早急な一般化については慎重にならざるをえない。しか し授業過程をみると授業自体はうまく進行しているよ うに見受けられたものの,形成された知識表象の様相は 学習者により異なっていたこと,そしてそれは事後の課 題解決にも影響を及ぼしていたことを,授業中の学習者 の反応や記述と併せてその後の課題解決から明らかにし た点で,本研究により得られた成果は授業実践に寄与し うる。授業で現れる学習者の言葉は,教師が意図する概 念を示すとは限らないのである。 最後に,本研究から得られる教育的示唆について触れ ておきたい。平成20年度学習指導要領の算数科における 改善の基本方針の一つに, I算数的活動」の充実がある。 その活動には,作業的・体験的な活動や具体物を用いた りする活動の他,算数に関する課題について思考する内 的な活動が含まれる(文部科学省, 2008)。しかし,こ こでもし外的な具体物の操作活動と内的な操作とのつな がりについての配慮を欠き,前者に大きな注意資源が払 われた場合,教師の意図するねらいの達成は期待できな いことが本研究の結果より推察される。具体物を用いた 学習が効果的であるには,学習者白身がそれを通して数 学的概念に基づく知識表象化を行うこと,そして,教師 側は学習者の理解をモニターし,教授法を調整すること が必要となる。以上の点を考慮しながら,具体物モデル を効果的に使用し,算数・数学における抽象的概念の理 解を促進することが学習援助においては肝要となるだろ う。そのための教授条件の設定に関する具体的検討は, 今後の課題である。 引用文献 BaU, D. (1992). Magical hopes: Manipulatives and the reform of math education.American Educator, 16, 14-16.

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具体物モデルによる教授が後続の課題解決に及ぼす影響 一課題解決に対する妨害的作用とその抑制条件一 教科学習の中でも,特に算数・数学の領域ではその抽象的世界を表すために具体物が利用されることが多い。しかし ながら,それは必ず、しも教科の理解を促進するものではないことが近年の研究により明らかにされている。そこで本研 究では,具体物モデルを用いた教授の効果を左右する条件として学習者の形成する知識表象に着目し,それと課題解決 との関連について,実際の授業を対象に検討することを目的とした。学習課題として「等周長変形に伴う面積変化J(長 方形枠を周長を等しく保ったまま平行四辺形に変形させた場合の面積変化)を取り上げ,小学6年生31名を対象に具体 物モデル(流動性のある物質を敷きつめた立体の長方形枠を平行四辺形に変形させると,その物質が盛り上がる)の操 作と提示による実験授業を行った。その結果,①具体物により学習者がその特性に着目した知識表象を形成してしまう と転移に失敗すること,②具体物による妨害的作用を回避するには,学習者自身が数学的概念に焦点化した知識表象化 を行う必要があること,③さらに,そのためには学習内容に関する基本的概念が学習者に定着していることが重要であ ることが示唆された。 キーワード 具体物モデル,知識表象,面積学習

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key words: concrete manipulatives, knowledge representation, learning of the area

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