短期心理療法論考 ; 1
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(2) 8 短期心理療法論考(1) “ それ へ の理論的裏 づ けが必 要 で あ る。そ して これ らの要件 を現在 の短 期療法 はすでにそなえ てい る。 JOhnSOn,P.H.&. Gdso,C.J.(1980)も , 過去 に発表 された心理 療法 の効果 に関す る研究を通覧 し,短 期療法 の効果 は長期 療 法 のそ れに損色 がないばか りか しば しばそれを上 まわ ってい ると結 論 して もヽる。 さて ,一 口に短 期 心理療法 とい って も,fOCal psychotherapy,short― term dynarnic psychotherapy, short― term anxiety provoking ・ time― limited. psychotherapy,brief psychotherapy等. psychotherapy,. 々の多様 な呼称 が示. す通 り,多 くの立場 がある。そ の拠 って 立 つ 理 論 に して も,精 神分析 ,ク ラ イエ ン ト中心 療法 ,行 動療法 ,認 知療法等 々が あ り,さ らに この 中 で も種 々 の 特徴 ある理論や技法 の分化 が見 られ る。また個人療法 もあれば集団療法 も あ る。治療 期間 も 1回 か ぎ りの ものか ら数十回 , 1年 くらいにわた る ものま で 含 まれ る。 しか しそ うは い って も,い くつ かの共通 の特徴 が見 られ ぬ わ け で はな い。Butcher,Jo Ne&Koss,MoP.(1978)に よれば ,そ れ は次 の通 り で ある。. (1)時. 間 の制限. 「 時間」 は短 期 心理療法を他 の療法 か ら区別 す る最 も重要 な要 因 で ある。 短 期療法 の期間 は多 くが 6∼ 10回 で ,25回 くらいが上 限 と考 え られ て い る。 最 近 で は患者 に初回 に「 期限」 を通告 す ることが多 い。それ は ,期 限を明示 す ることによ つて ,こ の期 限内 に問題 の解決 が出来 ると患者 に希望を もたせ. ,. 治 療 へ の動機 づ けを高 め る ことが 出来 るか らで あ る。また ,期 限 を設 け る こ とによ つて ,治 療 がよ リダ イナ ミックに展 開す るともいわ れ る。. (2)日. 標 の限定. 短期心理療法 で は治療時間 が制限 されてい るので ,少 数 の 目標 に焦点 を し ぼ ってその解決 を めざさね ばな らない。 このよ うな 目標 と して よ く選 ばれ る のが ,患 者 が最 も悩 み苦 しんで い る症状 の軽減 。除去 ,情 緒的平衡 の早急 な 回復 ,現 在 の障害 に対す る理解 を深 め将来 の対処能力 (COping abHity)を 高 め る こ と,等 で ある。.
(3) 辻. 平 治 郎. (3)現 在への焦点づけ 限 定 され た 目標 を短 期 に達 成 しよ う とす る と ,主 要 な 問題 領 域 ,そ れ も患 者 の「 現 在 」 の 問題 に 焦 点 を しぼ って 面 接 し,患 者 の 注 意 を こ こか らそ らさ せ な い よ うに しな けれ ば な らな い。 精 神 分析 な どで は ,幼 児 期 の記 憶 ,夢. ,. 転 移 の 解 釈 な どが重視 され るが ,短 期 療 法 で は精 神 分析 の 立 場 に立 つ 場合 で も,こ の 焦 点 と直 接 関係 がな いか ぎ り これ らは取 上 げ られ な い。. (4)治 療者の積極性と指示 焦 点 づ けを維 持 しよ う とす る と治 療 者 は ,長 期 の心 理 療 法 を 行 な う場 合 よ り も積 極 的 に ,治 療 過 程 に 関与 せ ざ るを え な くな る。短 期 療 法 の 治療 者 は一 般 に ,自 ら話 す 時 間 が 長 く,話 しの 方 向 づ けを して 特 定 領 域 の 探 究 を積 極 的 に 行 な い ,支 持 や 助 言 を与 え ,患 者 の 行 動計 画 を立 てた り もす る。暗示 や 説 得 をす る こ と もあ る。. (5)迅. 速 な 評 価. 治 療期 間 が短 か い ので ,短 期 心 理 療 法 で は初 回 に 出来 うるか ぎ りの 情 報 を 集 めて 評価 を下 す こ とが必 要 とな る。 こ こで の 評 価 は診 断分 類 の よ うな もの よ りむ しろ ,治 療 技 法 の選 択 に役 立 つ もので な けれ ばな らな い。 このた め に , 症 状 の 結 実 因子 ,発 症 の 経 過 ,症 状 の 意 味 ,自 我 強度 ,等 が探 られ ,評 価 さ れ る。. (6)柔. 軟. 性. 治 療 期 間 は短 か くて も,短 期 心 理 療 法 で 扱 わ れ る問題 は多様 か つ 広 範 で あ る。 そ の 中 に は ,不 安 ,抑 うつ ,自 殺 傾 向 ,興 奮 傾 向 ,恐 慌 状 態 ,せ ん 妄. ,. 精 神 病 的傾 向 ,暴 行 ,反 社 会 的傾 向等 々 が 含 まれ て い る。 これ らを解 決 しよ う と思 う と,特 定 の 学 派 や 特 定 の 技 法 の み に 固執 して い るわ け に は いか な い 種 々の 技 法 を必 要 に応 じて 使 い わ け る柔 軟性 が 求 め られ る。. (7)迅 速な治療開始 短 期 心 理 療 法 で は ,患 者 か ら求 め が あれ ば直 ちに治療 を 開始 しよ う とす る。 そ の た め に ,治 療 者 と受 理面 接 者 が異 な るよ うな状 況 は避 け られ る し;治 療 前 に長 々 とテ ス トを す るよ うな こ と も しな い。 危 機 介入 的傾 向 の 強 い療 法 で.
(4) 短期心理療法論考(1). 35θ. は特 に ,危 機 の只 中でのタ イ ミングを はず さな い介入 が有効 で あると考 え ら れ て い る。. (8)カ タルシス(浄 化) 治療者 は,患 者 が う っ積 した感情を 自然 に吐 き出 して カタ ル シスで きるよ うに ,受 容的 な環境 を つ くるが ,短 期 心理 療法 で は特 に これが重視 され る。. (9)速 やかな治療関係の形成 長期 の療法 で はあま り勧 め られ な い方法 で あるが ,短 期 心理 療法 で は ,治 療 者 は 自信 あ る態度 や熱意を 積極的 に患者 に示 す こ とが多 い。 これによ って 患者 の治癒 へ の期待 を高 め るとと もに ,治 療 関係 を迅速 につ くりあげ よ うと す るので あ る。. (10)患 者 の 選 択 短 期 心理 療法 は最近 では適 用範囲 も拡大 され殆 どどんな患者 に も適用 され るよ うに な って来 たが ,そ れで もなお ,こ れが最 も適 して い ると見 られ るタ イプの患者 は存す る。諸家 が一 致 して短 期療法 を勧 め るの は ,① 発症 が急 性 で その後 あま り時間 が経過 して いない もの ,② 発症 以 前 の適応 がよか った も の ,① 治療者 の働 きか けに敏感 に反応 し,よ い 関係を保 て る もの ,④ 治療 ヘ の 動機 づ けが高 い もの ,等 で ある。一 方短期療法 があま り適 さな い と考 え ら れ るのは ,① 人格 の深 い変容や再体 制化 を望んで いる もの ,② 教養 レベ ル が 極 端 に低 く洞察能 力 に欠 け る もの ,③ 器質的欠 陥や障害を有 す るもの ,④ 精 神病 ,等 があげ られ て いる。 以上. Butcher&Kossに. 従 っ て短 期療法 の特徴 を見 て きたが , このよ う. に 要領 よ くま とめ られ て しま うと,逆 にその 多様性 が見失われて しま うので はな いか と危惧 されな いで もな い。 実際 ,時 間 の問題 ひとつ を取上 げ てみて も, 1回 きりの ものか ら 1年 くらいにわた る もの まで含 まれ てい るとい う こ とは ,非 常 な差違 があ るとい う ことで あ る。当然 の ことな が らそ の理論的根 拠 も技法 も大 幅 に異 な る。また治療期間 が短 期 だ とい う点 で は共通 して いて も, 終結 の時期 が最初 か ら明示 され るもの (time― unlimited)と. (time―. limited)と されな い もの. で は, 治療 の構造や機 制に明 らか な差違 が生 じる。 治.
(5) 辻. 平 治郎. 351. 療 目標や焦点 とされ る問題 に して も「 何」 に焦点 づ けが行 なわれ るかは立場 に よ って大 いに異 な る。 この ため White,H.S.et al。. (1981)の よ うに患者. によ って療法を使 い分 け よ うと提案す る者 さえ 出て くる くらいで あ る。 そ こで本稿 で は このよ うな差違 に注 目 して ,対 照的な二つ の立場 ,す なわ ち , 時間 の意味を最 もラデ ィカルに 問 い , 共感を重視す る Mann,J。 と. ,. 厳 しい対 決的姿勢を とる Davanlooゃ Sifneosを と りあげ て , 短期療法 の 理解 を深 め る一 助 と した い。. Mann,J.の 時間制限心理療法 Mann,J。 (1973)お ょび. Mann,J.&Goldman,R.(1982)に. よれば. ,. 時間制限心理療法 (time― limited psychotherapy)の 特徴 は, 治療開始 に先 立 って 中心 問題 (Central issue)を 明確 に し,か つ週 1回 1時 間弱 のセ ッシ ョ ンを12回 に限定 してい る こと,そ して この原則 を どの患者 に も厳密 に適用 して い ることにあ る。 この よ うな時間制限を課す る こ との背景 に は,次 のよ うな. 1。. Mann独 自の考 え方 が ある。 大人 時間 と子 ども 時間. 時間 には絶対時間 (CategOrical time)と 実存 時間 (existential time)と が あ る。前者 は時計 や カ レンダ ー によ って測 られ る時 間 で あ り,後 者 は我 々 が体験 しその 中 で生 きる時間 で ある。実存 時間 は過 去 の記 憶 と未来 の期待 を 合 み ,大 人 時間 (adult time)と 子 ど も時間 (Child time)が 融合 した もの で ある。 大人 時間 とは現実時間 で あ り, 現実感覚 (reality Sense)の 発達 とともに 認識 され理 解 され るよ うにな る。大人時間 の感覚 には,時 間 が有 限 で あ る こ と,す なわ ち,時 間 に終焉を宣告 す る「 死」 な る もの が存在 す るとい う意識 が含 まれ る。 このよ うに有限 で現実的 な大人 時間 は絶対 時間 と同一 視 され る こ ともある。一 方子 ど も時間 は,絶 対時間 が意 識 され るよ うに な る以前 の時 間 ,永 遠で無 限 の 時間 で ある。 Freud,S.(1932)は ィ ドに は時間観念 に相.
(6) 352. 短期心理療法論考(J. 当す る ものがな く,時 間経過 の認識 もな い と述 べ てい るが ,子 ど も時間 の無 時間性 (timdeSSness)は ま さに この イ ドの無 時間性 に対応 して い る。 無 時 間性 とは,過 去 に存 在 した ものが現在 は存在 しな くな ってい る こ とを認 めよ うとせ ず ,幼 児 的 な 満足 を飽 む ことな く求 め続 けるよ うな と ころに認 め られ る もので あ る。 この よ うな意味 で 感情転移 な ど も無 時間性 を示 す現象 と考 え られ てい る。 我 々の現実生活 は ,現 在 の 中 に過 去 の記 憶 と未来 の期待 を含 んでお り,無 限 の子 ど も時間 と有 限 の大人 時間 とが融合 してい る。大人 時間 の有 限性 の ゆ えに ,我 々は現実生活 において 句束感や圧迫感を感 じるが ,も しこのよ うな ]‐. 圧迫 感を免 れ るために大人時間 を打消 そ うとす ると,そ れ と結 びつ いた現実 を も否定 せ ざるをえな くな る。逆 に現実を認 めよ うと しない と,大 人時間 の 感覚 を もな く して しまわね ばな らな くな る。我 々は時間 の圧迫 か ら逃 れ るた な どを服用 した り めに ,眠 りに逃避 し,ア ル コール ,マ リハ ナ,精 神安定斉」 す るが ,そ れ は同時 に現実逃避 に もな る。また ,反 復 的律 動的 で単調 な刺激 を利用す る瞑想 も,外 界 や 時間経過 の意識を低下 させ る こ とを狙 った ものだ と考 え られ て い る。 時間 の経験 が極度 にゆがめ られ て しま うと. ,. (1)時 間 が停止 して永遠 の感覚 が生 じる. ,. (2)時 間 がバ ラバ ラに分断 された と感 じる。 の いずれかが生 じる。(1)の 体験 は ,神 秘体験 や洸惚状 態 にお いて ,あ るいは 薬物 の影響や極度 に強 い感情状 態 の下 で生 じる。(2)は あ らゆ る経験 が断片化 されて意味を失な い ,過 去 ,現 在 ,未 来 の 関連 が崩壊 して 時間 が空虚 で意味 のな い もの とな る体験 なので あ るが ,こ のよ うな状態 は ,離 人症 やその他 の 急性 精神病 において見 られ る。 時間感覚 はまた感情 (affeCt)と 密接不可分 で あ る。極端 な例 を あげれば. ,. 強迫神経症患者 は時計 によ って生活 が支配 され ,時 間 の奴隷 と化 して い るが このよ うな奴 隷状 態 に耐えがた くな って くると感情 の切離 し (iSOlation)を はか る。 うつ病患者 の場合 には ,価 値 あ る ものがす べ て過去 の もの とな り. ,. ,.
(7) 辻. 平 治 郎. 353. 自分 に は現 在 も未 来 もな くな った と感 じて しま う。 そ して 身動 き出来 な くな って 抑 うつ 的 に な るの で あ る。. 2。. 時間と心理療 法. 次 に時間 力苅心理 療法 といかな る関係 を もつ かが問題 とな る。治療契約 が出 来 上 ると患者 は ,意 識的 には治療 の成否 に疑 いを もちなが ら,無 意識的 には 治癒 の魔 術的達成 を強 く願望す るよ うに な る。す なわ ち患者 には成 熟 した大 人 の部分 と未成熟 な子 ど もの部分 とが あるが ,大 人 の部分 は ,状 況 の不確実 さ,支 払 うべ き料金 ,各 セ ッシ ョンの長 さ,自 分 のな す べ き課題 ,治 療期間 等 々の評価 を あれ これ行 な う。 これに対 して子 ど もの部分 は ,魔 術的思考 を 現 実 と化 し,時 間 を無 限 だ った 時期 にまで逆 もど りさせ て ,母 親 の愛情 と慰 撫 によ つて バ ラ色 に色 ど られた幼児 の世界 を再現 で きると期待す る。 こ う し て 患者 は初期 の重要 な人 物 へ の感情的回帰 を無 意識裡 に行 な って ,治 療者 ヘ の感情転移を ひ きお こす。治療者 との このよ うな感 情的結 びつ きがで きると それ によ って ,患 者 の (分 離 )不 安 は一 時的 に低減す る。 この よ うな心 的過程 は,治 療 が長 期 で あれ短期 で あれ ,ま た精神分析 で あ れ行動療法 で あれ ,あ らゆ る心理 療法 に共通 に見 られ る過程で ある。ただ. ,. 長期療法 や短 期 で も時間制限 が明示 されて いな い場合 に は,す なわ ち治療期 間 が曖味 に されて い る場合 には ,患 者 は治療 時間 を無限だ と感 じて退 行 を深 めやす い。精神分析 な どで は さ らに忘却 の彼方 の幼児記憶 を掘 りお こ した り して このよ うな心 的過程を促進 しよ う とす る。 ともか くこのよ うな 時間感覚 の退 行 によ って子 ど も時間 が支配的 とな ると,患 者 は幼児期 の重要 な願 望 が 充足 され るに違 いない と,無 意識的幻想 を いだ くよ うに な る。 一 方治療期間 が最初か ら宣告 されてい る場合 には ,そ のよ うな現実 に直面 せ ざるをえな いために ,子 ど も時間 はそ の支配力 を弱 め る。当然大人 時間 の 重要性 がそれだ け増す 。 このよ うな意味 で 時間制限心理療法 は,患 者 を幼児 期 初期 の思考 や感 情 に没入 させ るほど退行 させ よ うとは しない。それ ほど深 い退 行 を起 させ な くて も青年期 の経験 を復活 させ る ことさえ 出来 れば ,幼 児.
(8) 354. 短期心理療法論考(1). 期 の主 要 な葛 藤 は ここに入 り込 んで い るので 治療 は可能 だ と考 え られ るか ら で あ る。 さ らに青年 期 は情緒面 で も大 きな可塑性 を もつ とい う利点 が ある。 この よ うに時間制限心理 療法 で は相 対的 に青年期 が重視 され る。. 3.中 心 問題 の決定 ここで 時間制限心理療法が具体 的 に どのよ うに進 め られ るかを 見 てみよ う。 それ は予備的面接 (通 常 1∼ 3回 )で 中心 問題 (Central issue)を 決定 す る と ころか ら始 ま る。 中心問題 は以後 の治療 で話 しあわれ るメ イ ンテ ー マ で あ る。それ はいわゆ る「 焦点」 と似 て いるが 同 じもので はない。焦点 には患者 の 切迫 した悩 みや症 状 が選 ばれ るのが普通 で あるが ,中 心 問題 は必 ず しもそ うで はないか ら。 中心 問題 には ,次 の密接 に 関わ りあう 3要 素 が必 ず含 まれていな ければ な らない。. (1)症 状 が発 現 してか ら今 日に到 るまで苦悩 に さいな まれ ,無 限 と感 じら れた「 時間」. (2)喜 び ,悲 しみ ,怒 り,恐 怖 ,罪 悪感な どの「 感情」 (3)不 確実 で ネガテ ィヴな「 自 己像」 特 に , 苦悩 が容易 には 取除 けな い と 思 うと, 患者 の 時間展望 (time― per_. spective)は 曇 らされて ネガテ ィヴな感情 が強め られ , 自己を ネガテ イヴに しか見 る こ とが出来 な くな るが ,こ のよ うな時 間 ,感 情 ,自 己像 の 関係 が中 心 問題 に は含 まれ ていな ければ な らな い。 このよ うな 中心 問題 は,患 者 の生 育歴 において繰返 し現 われて くる苦悩 にみちた 出来事 に注 目すれば ,お の ず か ら明 らか とな る。それ は例 えば次 のよ うな形 で 表現 され る。 「 あなたは ス ク ラ ップ業者 と して成功 し,自 分 の能力を意識 して もお られ る。 ところがそれに もかかわ らず 自分が ち っぽ けで劣 って お り出来 の悪 い人 間 だ とい う感 じに悩 ま されて きた とい うわ けで すね」 (38歳 の恐 怖症 の男性 ) 「 あなた は他 の人 とは違 ったふ うになろ うと してそれに成功 な さった。そ れ なのに あなた は自分 は劣 ってい る,普 通でない ,敗 北者 だ とず一 っ と感 じ.
(9) 辻. 平 治郎. 355. てお られ る」 (抑 うつ と上 司 との関係 に悩 む22才 の女性 ) 「 あなた は親切 そ うに見え る し,人 を喜 こばせ よ うと努力 も して こ られた。 と ころが 自分 は誰 か らも必要 とされていない とい う感 じを ど う して もぬ ぐい きれ ないので すね」 (抑 うつ と妻 との喧嘩 に悩 む25歳 の男性) 中心 問題 は これ らの例 か ら明 らかな よ うに ,患 者 の 中心的な問題で あるだ けでな く,治 療者 の患者 へ の「 メ ッセー ジ」 で あ る。それ は繰返 し次 の こと を伝 えて い る。. (1)認 めて もらお う,満 足 をえ よ う,苦 悩 を克服 しよ うと患者 が積極 的に 対処 し努力 して い るのを ,治 療者 が認 めてい る こ と。. (2)そ の努力に もかかわ らず苦悩 は続 き,自 分 は犠牲者 だ とい う感情 を拭 い去 れな いのが ,治 療者 に もわか って いること。. (3)ど う して 自分 の こ とを こんなふ うに感 じるよ うに な ったのかを治療者 と一緒 に探究す るのが ,治 療 の作業 にな るだ ろ う こと。 中心 問題 が適切 に選択 されて このよ うな形 で メ ッセー ジが伝 え られ ると. ,. 患者 は 自分 が理 解 された と感 じ,こ の治療者 な ら自分を救 って くれ ると希望 を もつ 。 こ う して 治療 同盟 (WOrking aHiance)が 早期 に形成 され , 治療 へ の 動機 づ け も高 ま るので ある。38歳 の恐 怖症患者 の場合 に も,中 心問題 が伝 え られ ると,く つ ろ いで椅子 に もたれ ,救 われた よ うに ため息を つ いて ,自 分 の 問題 はそれに尽 きると思 い ます と述 べ て い る。. 4。. 時間制 限心理療 法 の治療過程. 中心 問題 が患者 に受 けいれ られ ると,治 療者 は以後 12回 の治療 セ ッシ ョン を もつ ことを患者 に説明 して直 ちに治療 にはい る。 この12回 とい う長 さは. ,. 治療 同盟を結 び ,重 要 な 問題を検討 して ,徹 底操作 をす るのに十分 な長 さだ と,経 験 的に考 えて決定 された もので ある。 ともか く患者 は治療 開始前 に期 限 を宣告 され るため初 めか ら治療 に は初期 ,中 期 ,終 結期 の段階 のあること を知 らされ て い る こ とにな る。 ここで 患者 の 中 の大人 の部分 は このよ うな現 実 か ら逃 れ る ことが出来 な くな るが ,無 意識 の 中 にある子 ど もの部分 は現実.
(10) 短期心理療法論考(1). 35δ. を受 け いれ よ うとせ ず ,苦 悩 を免 れ無限の 時間を回復 で きる遠 い過去 へ の 回 帰 を夢 み る。 このよ うな ことか ら12回 は短か いよ うで長 い とい う矛盾 した感 覚 が生 じる。. (1)初. 期. 初期す なわ ち最初 の 3∼ 4回 には次 の二つ の特徴的 な 過程 が見 られ る。 ①. 患者 の無 意識的期待 によ って オプテ ィ ミズ ムがは ぐくまれ ,好 ま しい. 治療 関係 と陽性転移 が生 じる。 ②. 中心 問題 に対す る反応 と して , 苦悩 の感情 を吐 き出 して 除反応 (ab_. reaction)を 生 じ,そ れによ って う っ積 した不安・ 緊張 か ら解放 され る。 治 療者 を人生初 期 の重要 な人 物 の よ うに感情的に体験 し,転 移性 の治癒 も生 じ て症状 が消 失す る。 この段階 で は治 療者 は患者 を励 ま して ,中 心 問題 にかかわ りがあると思 わ れ る情報を探究 させ る。治療者 は中心問題 を指 針 と しなが ら質問を した り問 題 の 明確 化を求 めた りす る。 こ う して 集 め られた過去 か ら現在 にわた る情報 は ,後 の治療過程 で有効 に利用 され る。. (2)中. 期. 治療者 が 中心 問題 以 外 には注意を向 けないよ うに し続 けて い ると,患 者 の 初期 の熱狂 は次 第 に冷 めて くる。す なわ ち,幼 児 的な空想 が影響力を強めて くるにつ れて患者 の方 はあれ も これ も話 したい ,あ の 問題 もこの 問題 も解 決 した い と思 うよ うに な るのだが ,治 療者 の方 は一向に これにつ きあ って くれ な い。そ こで治療者 へ のア ンビヴ ァ レンス ,治 療 へ の失望 が生 じる。症状 や 悩 み も再発す る。 さ らに遅刻 ,欠 席 ,陰 性 感情転移な どの形 を とる抵 抗 も出 現 す る。 このよ うな患者 の反 応 は ,幼 児期 の主要 な人 物 に対 して体験 した ア ンビヴ ァ レンスの再現 で あ る。従 って治療者 は これに対 して 私的 な反 応 を返 した りせ ずに ,ま た患者 の失望を抑 えよ うな ど とは考 えずに ,繰 返 し出現 す る感情 を探究 させ 続 け るのがよい。 治療 が半 ばまで来 ると,後 は折返 し点 を こえて 1歩 1歩 終結 に向 って進 ん で い くだ けで あるが ,患 者 は この事実 に直面 した くな い。何 とか して直面 す.
(11) 辻. 平 治 郎. 357. るのを避 け よ うとす る。 しか しこれ こそが ,人 生 の初期 に患者 が苦 しめ られ た問題 ,未 解決 の ままにな って い るア ンビヴ ァ レンスの対象 か らの分離 の 間 題 なのだ。患者 の 中 の子 ど もの部分 は いつ まで も治療 関係 を続 けたが る。 し か し大人 の部分 は ここか ら出立 せ ね ばな らな い ことを知 ってい る。 ここで治 療者 がせ ねばな らな い ことは ,こ のよ うな 転移感情 を は っ きりと患者 に認知 させ る ことで ある。治療者 ,過 去 の重 要 な人 物 ,お よび現在 の重 要 な人 物 に 対す る患 者 の感情 の本質 につ いて積極的 に解釈 して行 かね ばな らない。 こ う す る ことによ って感情 的 な ものが理知的 な もの と結 びつ き,内 面化 された よ き治療者像 も加 わ って ,患 者 の 自己像 に も変化 を もた らす ことが 出来 るので あ る。. (3)終. 結. 期. 最後 の 3∼ 4セ ッシ ョンが終結 期 とな る。初期 には長 く感 じられた治療 の 残 り時間 が ,こ の ころにな るとひど く短 か く感 じられ る。治療者 との分離 は さ し迫 りもはやそれを無視す る こ とは出来 な い。 こ うな ると今 ま での分離・ 喪失時 に体験 したの と同 じ感 情 が患者 にわ きお こって くる。怒 り,悲 しみ. ,. 罪悪感 ,恐 怖 な どが生 じる。 終結期 には治療者 も分離 の 問題 に直面す ることにな る。治療者 もい くば く かの分離不安を も って お り,ま た患者 を 自分 に依存 させ てお きた い とい う要 求 を も ってい るか らで ある。患者 に12回 がすんで しま った らどうな るのか と 不 安 そ うに尋ね られた りす ると,治 療者 は もう少 し自分 が見 よ うといいた く な る。 しか しこれで は治療 者 も終結 に不 安を いだ いて い る ことを患者 に伝 え る ことにな って しま う。 このよ うな時 には ,患 者 の成長 へ の意志 と能 力を信 頼 して い る ことを明 瞭 に伝 え るのがよい。そ の上 で 中心 問題 に立 ちかえ り. ,. この枠組 の 中 で転移 の解釈 を進 め る。 こ う して終結 の問題 が適切 に処理 で き れ ば ,患 者 は初期 のア ンビヴ ァ レン トな対象 と治療者 を 置 きかえて ,治 療者 を内面化す る ことが 出来 るよ うにな る。 こ うなれば分離 は怒 りや 罪悪感 とは 比 較 的無縁 の ,純 粋 の成熟現象 とな る。患者 の独立 は達成 され ,自 己像 は ポ ジテ ィヴ にな り,自 我 も強化 され る。.
(12) 358 5。. 以上. 短期心理療法論考(1). 小. 考. 察. Mannの 時間制限心理 療法をやや詳 し く紹介 したが ,. その特徴 をま. とめてみ ると,技 法的 には ,(1)中 心 問題 の選 定 ・伝達 と(2)時 間制限。理論的 には ,(31独 自の 時間論 ,と い う こ とにな ろ う。 ここで は ,よ り包括 的 な議論 は後 に まわ して ,こ の 3つ に限定 して議論を進 めてみたい 。. (1)中 心問題をめぐって 中心 問題 は治療 の成否 を決定 す る最 も重要 な要 因 とされてい るが ,こ れが 治療過程 に どう関わ るかに 関 して は「 時間」お よび「 感情」 と結 びつ いて い るとい うのみで ,Mannは 多 くを語 らな い。そ こで , これにつ いて二 ・ 三 思 いつ くこ とを述 べ てみた い。 まず我 々は ,こ れが一定 の形式 で患者 に伝 え られ るメ ッセー ジで あ った こ とを思 いお こそ う。それ は,た だ患者 の苦悩 や症状 だ けでな く,こ れ らを克服 しよ うと して涙 ぐま しい努力を重ねてい る こ と,そ れに も拘 らず努力が実 ら ず焦燥感や 自己嫌 悪を強 め る結果 とな って い ること,等 の治療者側 の理解 を 患者 に伝 え る もので あ った。 このよ うな理解 の仕方 は ,患 者 の心 理や行動を 外側 か ら客観的に見 て行 な った もので はない。患者 の心 理 に一歩ふ み込 んで. ,. た とえば努力 の む くわれ な さまでを も理解 しよ うと して い る点 で共感的 とい い うる。Rogers,Co R.(1959)も 内的準拠枠 (internal frame of reference)か ら見た理解を共感的理解 と呼 んで い る。 この よ うな共感的理解 を示 され ると. ,. 患者 はそ こに 自己に対す る治療者 の並な らぬ 積 極 的 関 心 (positiVe regard) を感 じとる。 また治療者 の純粋 さ(genuineness)を も認 めや す い。 と ころで. ,. 、 共感的理解 ,積 極的関心 ,純 粋 さな どはいずれ も Rogersヵ 勧己 理療法 ,治 療 関係 を促進す る条 件 と して重視 した もので あ った。 この こ とに思 いを致 す と. ,. 中心 問題 の選定 とその伝達 が ,全 治療過程 に どれ ほど重 要 な意 味を もつ かが 理解 で きよ う。 このよ うな 共感的理解 が どう して 治療 や治 療 関係 を促進 す る かに関 してはス ペ キ ュ レー シ ョンの或を 出な いが ,次 のよ うに考 えてお きた い。 す なわ ち①理解 して もらえた と感 じることによ って喜 びな どの感情 がわ きあが り昂揚感 が生 じる こ と,治 療者 に も親愛感を もち治療 同盟 が深 ま るこ.
(13) 辻. 平治郎. 359. と,② 一般 に理 解可能 な ものに対 して は コ ン トロール も可能 だ とい う期待 が 生 れ るが (Rotter,J。 1966),こ の場合 に も治療者 が 自分 の 問題を理解 して く れた のだか ら必 ず治 して くれ るに ちが いな い とい う期待感 ,さ らには安堵 を 患者 は もつ だ ろ う こと,な どが媒介過程 と して考 え られ る。 ところで , 患者 が共感的 に理 解 された と 感 じるのは , 中心 問題 の 伝達 の 「 形 式」 にかな り依存 して い ると我 々 は考 えて きたが ,そ れ で は この形式 さ え踏 めば多少 的 はずれな 中心 問題 で も共感的 に感 じられ るのだ ろ うか ,我 々 は この 間 に答 え られ るだ けの経験 を もちあわせ ていないが ,あ る程度 までそ うだ と考 え る。 中心 問題 は もともと患者 の語 った ことを整理 し概 念化 した も ので あるか ら,全 く的 はずれで あ るとい う ことは考 え られ な い。そ れが心 の 内面 か らの理解 とい う形 で伝 え られ るので あ るか ら,患 者 には抵抗 しがた い 甘美 な響 きを もつ 。多少 のズ レが あ って もわか って もらえた とい う感 じの方 が強 く,反 撥 されに くい。 この こ とが この療法 の欠点 だ とい うわ けで はな い が ,中 心 問題 は受 け入 れ られやす いので伝達 の形式 が形 骸化 して しま うと. ,. 治療者 も患者 もその不適切 さに気 づ くのが遅 れ ,治 療 の方 向を あやま って し ま う危険性 がな いわ けで はな い。 この療法 が普及すれ ば こ うい う問題 も生 じ て くる可能性 があ る。いずれに して も中心 問題 の選 定 ・ 伝達 には十分慎 重で な ければ な らな い。. (2)時 間制限と節目の意識 Mannは 時間制限を設 ける ことが 治療 の段階的 変化過程 を 際立 たせ ると 述 べ てい るが ,そ の原 因や機制 につ いて は ,終 結 や分離を意識 させ るとい う だ けで ,説 明 ら しい説明を与 えて いな い。 しか しこの点 につ いて は分離を も ち出すだ けで は明 らかに不十分 で ある。我 々は次 のよ うに考 えてみた。 時間制限心理療法 で は治療 セ ッシ ョ ンは12回 と定 め られ て い る。 この こ と によ り患者 には最初 か ら初期 ,中 期 ,終 結期 の ある こ とを知 らされて い るこ とにな ると Mannは い う。 しか しそれ はど うい う こ となのだ ろ うか。 この 12回 の セ ッシ ョンはそれぞれが初 め と終 りによ り区切 られ分節 されてい るが. この過程全体 を流 れ と して見た時 には , 3∼ 4ブ ロ ック (段 階 )に 区切 られ. ,. ,.
(14) %θ. 短期心理療法論考(1). る リズ ミカ ルな構造 す なわ ち 3∼ 4セ ッシ ョン毎 に 4∼ 3つ の「 節 目」を感 じることが出来 る。それ は序 確急 で あ った り起承転結 で あ った りす る。 こ う い う リズム あ るいは節 目の意識 はかな リー般 的普遍的 と考 え られ るが (た と えば Fraisse,P.1963参 照), そ れ に して も 3∼ 4セ ッシ ョン毎 の 区切 りは ま とま りと して手 頃 で ある。それ は ,「 もう全過程 の1/3が 過 ぎて しま った」 「 折返 し点 に来 た」 とい うよ うな意 識 と して あ らわれ る。 このよ うな 節 目の 意識 は しば しば来 し方行 く末 の 回顧 と展望を生 じさせ る。その結果患者 は自 己中心 的 なパ ース ペ クテ ィヴか ら一 時的 にせ よ離脱 して ,他 者 の あるいは第 二 者 的 なパ ース ペ クテ ィヴを取得 す ることが出来 ,そ こか ら自己お よび 治療 の全 貌 を眺 めよ うとす るよ うに な る。た とえば初期 か ら中期 へ の節 目を意識 す ると,患 者 は「 今 まで 共感的理解 の甘 さに酔 い ,殆 ど問題 は解決 されたよ うな気 にな って いたが ,実 質的 には何 も解決 して いな い し,治 療者 は 自分 の こ とをわか って くれ て いな い… …」 とい った ことを考 え るよ うにな り,以 後 しば ら くの あいだ抵抗や陰性 感情転移を示 す よ うにな る。 しか しそれ も終結 期 へ の節 目を意識す ると,治 療者 による転移解釈 も与 って ,次 第 に転 移を客 観 的に認知 で きるよ うに な る,と い った具合 で あ る。 このよ うに「 節 目の意 識」 →「 回顧 と展望」 →「 パ ース ペ クテ ィヴ取得」 とい う心 的機制を考 えれ ば ,時 間制限心理療法 の治療過程 はかな りうま く説明 で きるので はなか ろ う か。 このよ うに ,治 療段階 もある程度 まで患者 の節 目の意 識 に従 ってい るのだ とすれ ば ,た とえば「 丁度半分過 ぎま したね 」 と指 摘す る こ とによ って 節 目 の意識 を明 瞭 化 し,変 化 の過程 を よ り鮮 明 に させ る こ とも可能 にな るか も し れな い。 このよ うな実験 も今後試 み る価値 はあ ると思 う。. (3)時 間 論 ここで Mannの 理論 の核心 にな って い る 「 大入 時間」 と「 子 ど も時間」 に つ いて簡単 にふれてお きた い。 これ らは文字通 り大人 と子 ど もに対応 して い るだ けでな く,有 限 と無 限 ,現 実 と幻想 ,意 識 と無 意識 ,分 離 と結合 ,独 立 と依存 ,能 動 と受動 とい ったダ イ コ トミー (二 極構造 )に 対応 づ け られ て.
(15) 辻. %ゴ. 平治郎. い る。そ して この ダ イ コ トミーによ って治療過程 は明瞭 か つ ダ イナ ミックに 分析 され る。 しか しこのよ うなダ イ コ トミーははた して成立 す るのだろ うか。. Mann iこ ょれば大人 時間 は何 よ りも有 限 な 時間 で ある。 事象 には必 ず始 め と終 りがあ る。生 に は死 があ り,出 会 いに は別 れが と もな う。 このよ うな 終 りの意 識を. Mannは 有限性 と呼 び ,有 限性 こそ大人 時間 の本質 的特徴 だ. と考 えた。 ここで 強調 されて い るのは ,事 象 が始 め と終 りによ って 分節 され て い るとい う感覚 で あ る。 ところで大人時間 があ る程 度 まで成熟 した大人 の 時間感覚 で あ るな らば ,こ のよ うな時間 の分節性 は必 ず連続性 や統 合性 で補 われて いな ければ な らな い。分節化 のみが進行 し時間 が断片化 して しま うと. ,. 離人症 のよ うな病理 が出現す ると考 え られ るか らで ある。 しか し. Mannは. このよ うな時間 の病理 に気 づ きなが ら,時 間 の連続性 や統合性 につ いて は全 くふ れな い。そ れ は連続性 や統 合性 が大人 時間 の 問題 で はな く,む しろ子 ど も時間 の 問題 だ と考 えて いたか らで あろ う。 これ らを分節以前 の未分化 な結 び つ きと同一視 して い る気配 が確 かに感 じられ る。 これに対 して子 ど も時間 は無 限時間 で あ る。それ は大人時間 の有限性 と対 照 され , 終 りな きもの (endleSS)と 考 え られ てい る。 しか し その本質 は無 時間性 (timdeSSness)に あ り, 始 め も終 りもは っ き り しな い , 分節以前 の 未分化 な 時間 で あ るとされ る。 ところが ここで も. Mannは 無 時間 と同 じ意. 味 で無 限を と らえ ,ひ いて は永遠 や永 続 の概念 まで も同一 視す る誤 りを おか して しま って い る。 あ らためて い うまで もな く,無 時間 はまだ分化分節 した 感覚 を もたな い時間感覚 で あるが ,永 遠や永続 の感覚 は既 に分化 した有 限 の 現実認知 を前提 と して ,変 化 の 中 に不変 な もの連続 した もの一 貫 した ものを 認 め る ことで あ るはずで ある。 このよ うな連続性 によ って ,分 節 した大人 時 間 は断片化 を免 れ うるのだ と考 え る ことが 出来 る。 このよ うに考 え ると時間 感覚 の発達 は ,子 ど も時間か ら大人時間 へ とい う 2段 階 の発達 で はな く,未 分化未分節 か ら分化分節 へ ,そ して更 に連続統合 へ とい う発達過程を考 えた 方 がよい とい う ことにな るので はなか ろ うか。 このよ うに. Mannの 場合 には技法 に くらべ て理 論面 の立 ち遅 れを指摘 せ.
(16) 362. 短期心理療法論考(1). ざ るをえな いが ,こ れによ って技法 上 の工 夫 や発見 が価値 を失 うもので はな い こ とは い うまで もなか ろ う。 (未 完 ,以 下次号 ). 献 (註 ). 文. Budman,So H。. (Ed。 )Fθ. λθraDッ 。 NY:Guilford,1981. γ πs 9/br″ ノ ι. % Koss, M.Po Research on brief and crisis― Butcher,Jo N. だ. pies.In S.L.Garfleld(&A.E.Bergin,(Eds。 bθ ttα. oriented psychothera¨. 乃θraDッ απご θ ttθ ′ ),Hα παbο ολa/pり ′. gθ . NY: Wiley, 1978。 ttα η υづ θr θ. Davanloo,H。. (Ed。. )Sλ θrι ―Jθ rπ. `ゎ. NY:Aronson,1980. λθι λθ中じ ηαπjθ pり θ 「 ・. JOhnSOn,P.H.&Gelso,C.J.The effectiveness of time limits in counseling and psychotherapy: A critical review. jθ γOノ M[alan,D.H.Tλ θ/raπ ι. Tλ. θCθ πηsθ 、 tPり θλθ gづ st,9, 70-83, 1980。 Zづ. Jθ. λθι λθraDッ 。N.Y:Plenum,1976. br″ ノタッθ. λθraセッ。Cambridge:Harvard Un市 。Press,1973. ttθ ι ′ θ′pり σ M[ann,J.Tjπ θJj解 づ. M[anno J.&Goldman,R.五 Hin, 1982.. sθ bθ. “. ― πづ θQDじ O λ「 づ ttθ ι ηι ι θごpり θ πθ たづ θ Jづ. NY:McGraw_. Rotter, J.B. Generalized expectancies for internal vs. external control of reinforce_. gr″ 乃S,1966,8θ (WhOle No.609). ment.Psyθ λο ノ Jル fθ πθ Jθ. “. λπグ ―ι θ づ θ o NY: λθι λθPaDじ :Eυ αJ%α ι θπ αηご ′ παπづ θ タソθ π め′ θγ αγθ SifneOS,P.E.Sλ θγι Plenum,1979。 (註. )詳. 細 な文献 リス トは続編 に付 す。.
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