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ボルダーと京都の比較研究(<シリーズ特集>世界のAI,日本のAI〔第23回〕)

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Academic year: 2021

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60 人 工 知 能  29 巻 1 号(2014 年 1 月) 1. は じ め に 著者は,京都大学の若手人材海外派遣事業・ジョン万 プログラム*1の支援により,2013 年 3 月下旬から 1 年 間の予定で,米国・コロラド州ボルダーにあるコロラド 大学ボルダー校にて在外研究をしている.コロラド大学 における身分は visiting scholar である. 著者の専門は自然言語処理であり,特に大規模テキス ト集合からの言語知識獲得や,獲得した知識に基づくテ キスト解析に取り組んでいる.コロラド大学における受 入研究者は,Martha Palmer 教授である.Martha は, テキストの意味理解・解析を中心に研究を進めており, 特に PropBank,VerbNet などの言語リソースを構築, 公開している.これらは世界中で広く使われている. 本稿では,ボルダーにおける生活・研究について,日 本と比べながら述べてみたいと思う.少しでも参考にな る点があれば幸いである. 2. 渡 航 ま で 渡航するにあたり,米国のビザの取得に時間がかかる ことが最初の問題となる.米国における visiting scholar は,J-1 ビザというカテゴリーになり,これを取得する ためには,DS-2019 という書類を滞在先大学で作成,郵 送してもらう必要がある.まず受入研究者にお願いして 申請してもらうが,事務手続きにはかなり時間がかかる. 渡航 3 か月前の 12 月下旬に必要書類を電子メールで送 り,余裕をもってお願いしたはずが,ぎりぎりになって しまった.コロラド大学の事務担当者に何度か催促をし てやっと 2 月下旬に DS-2019 を入手した.次に,米国領 事館で面接を受ける必要がある.面接は Web から予約す るシステムになっているが,近い日時は結構予約が取れ ない.結局,3 月上旬に面接を受け,3 月中旬にやっと ビザが手に入った.ビザの準備は 3 か月前からでもぎり ぎりだったので,これからビザを取得する予定の方は可 能な限りもっと前から準備することをお勧めしたい. 3. ボルダーでの日常生活 ボルダーは人口 97 000 人で,それほど大きな都市で はなく,のんびりしたところである.コロラド州の州都 であるデンバーから北西に 40 km ほどのところにある. また,標高 1 655 m という高地に位置しており,高地ト レーニングで有名である.ランニングや自転車が盛んで, 毎年,メモリアルデー(5 月最終月曜日・祝日)には「Bolder Boulder」という 10 km のマラソン大会があり,毎年 50 000人以上が参加しており,米国で最大のロードレー スとなっている. アパートは,大学が運営しているキャンパス内のア パートを借りることができた.家族で滞在しているため, 家具付きの 2 ベッドルームを借りたが,家賃は月々 1,250ドルであり,京都と同程度の家賃である.アパー トの家賃は,小切手(check)もしくは現金で払うのが 普通のようであったが,毎月クレジットカードで払うと いうオプションもあったのでそのようにした.留学する と,一般的に,小切手を発行するために銀行口座を開設 するらしいが,著者の場合は特にその必要はなかった. また,コロラド大学からは給料をもらわないため, Social Security Numberも不要であった.

ドルに関しては,基本的にどこでもクレジットカード で支払うことができるので,現金はあまり必要ない.現 金が必要になったのは,ランドリーと散髪屋くらいであ る.少額のドルを用意するために,クレジットカードで キャッシングした.為替レートは,昨年(2012 年)は 1 ドル= 80 円程度であったのに,著者の滞在中は 1 ドル= 100円くらいであった.物価は,1 ドル= 80 円なら日 本と同じくらいだが,現在は日本よりも結構高いと思う. ところで,コロラド州で車を運転するためには,日本 の国外運転免許をもっていても,住民になってから 90 日以内に州の免許を取る必要がある.筆記試験と実技試 験があり,実技試験では,試験官を隣に乗せて公道を自 分の車で走るのであるが,赤信号でも車が来ていなけれ ば右折できるなど交通規則が多少違うので緊張した.ま た,横断歩道で人が渡ろうとしていると,車はほぼ確実 世界の

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,日本の

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〔第 23 回〕 シリーズ特集

ボルダーと京都の比較研究

Study on Comparison between Boulder and Kyoto

河原 大輔

京都大学大学院情報学研究科

Daisuke Kawahara Graduate School of Informatics, Kyoto University.

[email protected], http://nlp.ist.i.kyoto-u.ac.jp/member/kawahara/ 著者紹介 ▼東京大学大学院情報理工学系研究科学術研究支援員,(独)情報通信研究機構主任研究員を経て,2010 年 10 月より京 都大学大学院情報学研究科准教授.2013 年 3 月から米国コロラド大学ボルダー校に滞在中.自然言語処理,Web 情報処理など の研究を行っている. *1 http://www.john-man.rp.kyoto-u.ac.jp/

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61 ボルダーと京都の比較研究 に止まる.このような思いやりは,日本と比べて素晴ら しいと思うことの一つである. 4. ボルダーでの研究生活 コロラド大学ボルダー校は,おそらく他の米国の大学 と同じく,広大なキャンパス内に緑がたくさんあり,環 境が非常に良い.大学内は誰でもどこでも無線 LAN に 接続できる.この「誰でも」というのが素晴らしく,こ のようなちょっとした大らかさが米国と日本では違うよ うな気がする.大学で特筆すべきは学食で,8 ドルで, アメリカ(つまりハンバーガー),イタリア,アジア(寿 司もある),アラビア料理などが食べ放題であり,味も 素晴らしい.このような学食が日本の大学にあれば,さ ぞ研究するモチベーションが上がるだろうと思う.1 回 8ドルを払えば朝から夜までいることも可能なので,こ こで 3 食を食べながら,ノートパソコンを無線 LAN に つないで仕事をしている人もいるそうである. 著者が大学内で日常的に過ごしているところは, CINC(Center for INnovation and Creativity, 図 1)と いう建物にある,CLEAR(Computational Language and EducAtion Research)という部署である.週 1 回定 例ミーティングがあり,言語学の学生と計算機科学の学 生が混ざって,活発な議論が行われている.よくいわれ ることかもしれないが,ミーティングにおける学生の元 気さや姿勢が日本の学生とは違う.ノートパソコンを開 いている学生はいないし,もちろん積極的に質問をする. また,CLEAR では言語リソースの構築(アノテーシ ョン)を活発に行っており,多人数の学生がアルバイト でアノテーションをしている.学部,修士課程の学生が 実際の作業をし,博士課程の学生がマネジメントをする ことによって,質の高いリソースを効率的に作成できる 仕組みになっている.学生がさまざまな国から来ている ことを利用して,アノテーションの対象言語も英語,中 国語,アラビア語と幅広く行われている. 研究力に関しては,日本と米国でどちらの学生が優れ ているということは特にないと思う.国際会議に論文を 提出する場合に,締切り間際に英文を書いたときに,ネ イティブの書く英語のほうが間違いが少ないというくら いであろう.これに関しては,松尾 豊先生の「英語論文 の採択確率を上げるためにできること」[松尾 08]*2に書 いてあるとおりのことを我々が実践するべきだと思う. 5. お わ り に まとめると,米国あるいは米国人が,日本・日本人と 比べて「余裕」,「仕組み」,「合理性」の点で優れている のではないかと考えている. これまでに述べたように,米国人は基本的に,日本人 よりも,他人に優しく,大らかで,元気である.また, オフィスは夕方 5 時には誰もいなくなるし,休日に仕事 をしている人は誰もいない.このような全体的な「余裕」 から,豊かな発想力が生まれているように思う. 次に「仕組み」であるが,自然言語処理という学問を 進めるうえで必要となる言語学と計算機科学の学生が混 ざりあって議論できるような「仕組み」やアノテーショ ンの「仕組み」が,研究を加速度的に進めている. 最後に,米国の交通規則,サマータイム,チップとい う慣習など生活のあらゆる面に「合理性」が見られる. この「合理性」が上記の「余裕」や「仕組み」を支えて いると考えている.日本に帰ったら,これらのことを念 頭に置きつつ,自然言語処理,さらには人工知能の研究 を進めていきたい. このように,在外研究は明らかに得るものが多いので, 所属組織には大きな迷惑をかけるかもしれないが,機会 があればぜひお勧めしたい.言語の面では苦労するかも しれないが,思っていたほど困難なことは特にないよう に思う.折しも,京都大学では,さらに滞在期間を長くす ることができ,応募対象者も広げたスーパージョン万プ ログラムなるものが昨秋始まった.このような若手人材 海外派遣支援の制度が日本中で広まることを期待したい.

◇ 参 考 文 献 ◇

[松尾 08] 松尾 豊:英語論文の採択確率を上げるためにできること, 人工知能学会誌,Vol. 23, No. 3, pp. 373-379(2008) *2 http://ymatsuo.com/japanese/ronbun_eng.html

図 1 Center for Innovation and Creativity

参照

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