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テレビ用ブラウン管ガラスの廃材に高い放射線遮蔽能力

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布)

テレビ用ブラウン管ガラスの廃材に高い放射線遮蔽能力

-地デジ化で大量廃棄が予想されるブラウン管テレビが原発事故対策に有効-

平成23年7月25日 独立行政法人物質・材料研究機構 概要 1. 独立行政法人物質・材料研究機構(潮田資勝理事長)の元素戦略材料センター(センタ ー長:津崎兼彰)資源循環設計グループ(原田幸明グループリーダー)は、原子力発電保守管 理・放射性物質関連業務の(株)ATOX(アトックス)社(社長:矢口 敏和)と協力して、家 電リサイクルで集められた使用済テレビのブラウン管ガラスから得られるガラスカレット(ガ ラス破砕くず)が放射線の遮蔽に有効であることを確認した。 2.試験は照射試験実験室内で、0. 8 ペタベクレル(ペタベクレル=1015ベクレル)のコバル ト線源と、放射線の強さを測る線量計との間に、ブラウン管ガラスのカレットを置いて、放射 線の遮蔽能力を測定した。カレットは厚みを変えて箱詰めし、ガラスカレットの厚さと空間線 量率の減少から遮蔽能力を調べた。 3.その結果、何も手を加えないブラウン管ガラス粉砕カレットでも、厚さ約 55cm で放射線 を約 100 分の 1 まで遮蔽する能力があることがわかった。これはおよそ 9cm の鉛の厚板の遮 蔽能力に相当する能力である。また、粉砕時に生じるガラス粉(ビリガラス)と粉砕カレット をブレンドして密度を上げると、約40cm の厚みで放射線を 100 分の1まで遮蔽する能力を発 揮した。 4.また、ビリガラス粉を重量で66%の配合でシリコン樹脂にねりこんだ材料は 28.5 cm の厚 さで、放射線を10 分の 1 に減らす遮蔽能力を持つこともわかった。これは鉛の厚板 4.4cm に 相当する遮蔽能力に相当する。 5.これらの遮蔽能力は50cm 厚のコンクリートにガラスカレットを半量配合できれば、コン クリートだけの場合と比べ放射線量を約半分にする減弱効果をもつ計算になる。 6.これらの結果は、7 月 24 日のアナログテレビ放送終了によって大量の使用済みブラウン 管ガラスが発生するという予測を踏まえ、今年4 月に未踏科学技術協会・エコマテリアルフォ ーラムより出されていた「使用済ブラウン管を原発事故対策へ」という提案の有効性を裏づけ るものである。

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2 背景 原発事故に対処していくには様々なところで放射線の遮蔽が必要とされる。通常よく用 いられる放射線(特にガンマ線)の遮蔽材料は鉛である。多量の放射性物質が作業環境下 に存在している福島原発の事故対策には、大量の遮蔽材料が必要となる。 一方で鉛は中国などでの国際的鉛バッテリー需用の急騰などで品薄感が強く、価格もリ ーマンショック前の2006 年の水準に戻ってきている。代替としてタングステンやバリウム も候補とされるが、価格面でも中国依存度の面でも、厳しい状況と言ってよい。 このような中で、鉛を含んだ資源が都市鉱山として我が国の中に集められている。家電リ サイクル法に基づいてリサイクルされているテレビのブラウン管ガラスである。テレビの ブラウン管には視聴者を放射線から守るために鉛が10 数%から 25%入ったガラスが用い られている。現在はブラウン管テレビを製造している国々に輸出しているが、この緊急時 に当たって、遮蔽材としての積極利用を推進すべきである。 ましてや、この7 月 24 日でアナログ放送が終了し、それによって大量のアナログテレビ がその役目を終えてリサイクルに廻ってくるものと予想される。図1 は電子情報機器連合 会による使用済テレビの排出量予測である。1550 万台のブラウン管テレビがリサイクル対 象となり、ブラウン管で20 万トン、鉛分だけでも2 万 トン近くにおよび、これは、 現在の国内の鉛需用(27 万トン)で鉛バッテリー用 途(23 万 2 千トン)以外 のものの50%を凌ぐ量に なる。 このような事実は、すで に4 月に未踏科学技術協 会・エコマテリアルフオー ラムから提案されていた が、実際の遮蔽効果の有効性は確認されておらず、今回は、物質・材料研究機構とATOX が協力してその実験的検証にあたったものである。 図1 アナログテレビの排出予測 「地上アナログ放送終了に伴うテレビの排出台数予測」電子情報産業技術協会2010 年 5 月 24 日より

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3 技術内容 1.測定方法 遮蔽能力の測定は、ATOX 社技術開発センターの照射試験実験室内で行ない、0. 8 ペタベク レル(PBq)のコバルト線源から空間線量約 40Gy/h(グレイ毎時)の位置に線量計を設置 し、その前方に試験体として、様々な厚みで箱詰めしたガラスカレットを置いた。そのと きの空間線量率の減少から遮蔽能力を調べた。 2.供試材 a) 破砕カレット粒径 20mm-50mm b) 粗篩分カレット粒径 5- 20mm c) 細篩分カレット粒径 5mm 以下 d) ビリガラス粉 e) a+b+c 混合 1:1:1 f) b+ d 混合 1:1 g) a+d 混合 1:1 h) d+シリコン樹脂 2:1 および対照としての鉛ブロック( Pb)である。 3.結果 試料の厚みを変えて測定した結果を図2 に示す。同一試料の場合には厚みが増えるに従 って指数関数的に空間線量が減少する。この関係は厚みをt (cm)の時の空間線量率を F と すると。試料の違いに応じて F= exp(-μxt ) の関係で表 れされる。 このμX(単位:cm-1)は遮蔽体 x の線 減弱係数とも呼ばれ、表 1 にそれぞれ の試料の線減弱係数を見掛け密度と ともに示す。見掛け密度が高いほど線 減弱係数が大きくなり、粒径の異なる ものを混合して緻密にして使用する ほど効果がでる。 この関係を用いると鉛板を用いた 場合の遮蔽効果と比較できる。 表2 はその典型的なものを示した。 図2 各試験体の厚みと遮蔽能力 y = e-0.083x y = e-0.089x y = e-0.096x y = ey = e-0.104x -0.097x y = e-0.115x y = e-0.519x 0.01 0.1 1 0 10 20 30 40 a b c d e f g h Pb 厚み(cm) 空間 線量 率

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4 表1 試験体の見かけ密度と線減弱係数 見掛け密度(g/cm3) 線減弱係数(cm-1) A 破砕カレット粒径 20mm-50mm 2.2 0.083 B 粗篩分カレット粒径 5- 20mm 2.3 0.089 C 細篩分カレット粒径 5mm 以下 2.4 0.094 D ビリガラス粉 2.4 0.096 E ABC混合 1: 1: 1 2.8 0.104 F B・ D 混合 1: 1 2.6 0.097 G A・ D 混合 1: 1 3.1 0.115 H びりガラス粉2: シリコン樹脂 1 0.08 P 鉛厚板 11.3 0.519 表2 遮蔽効果の例 減弱率 鉛厚板 破砕カレット A+d 混合カレット 樹脂練り込み 1/10 4.4cm 28.5cm 1/100 9 cm 55 cm 40 cm 表2 に基づくとブラウン管ガラス粉砕カレット(a)をそのまま積みあげても約 55cm で約 9cm の鉛の厚板と同等に放射線を約 100 分の 1 まで遮蔽する能力がある。粉砕時に生じる ビリガラスと呼ばれるガラス粉と粉砕カレットをブレンドして密度を上げると(g)、約 40cm の厚みでも100 分の 1 までの遮蔽能力を発揮することができる。 また、ビリガラス粉を重量で66%の配合でシリコン樹脂に練り混んだ材料も 28.5 cm の厚 さで、鉛4.4cm 厚に相当する 10 分の 1 の遮蔽能力を持つ。 これらの特性を知ることにより、このガラスカレットをコンクリートの骨材に用いた場 合の遮蔽効果も推定できる。たとえば、コンクリート全体の半分の重量の骨材をこの鉛ガ ラスカレットで置き換えた場合の厚さt (cm)での遮蔽効果は、 F=exp(- μc・t/2)・exp(-μg・t/2) となる。ここでμcとμgはコンクリートと鉛ガラスカレットの線減弱係数で、μcを 0.093cm-1と仮定し、μgを今回の結果から0.115cm-1とすると、ふつうコンクリートの20cm の厚みの場合の遮蔽効果 F=exp(-0.093×50)=0.096 に対し、鉛ガラスカレット代替の場合 はF=exp(- 0.093・50/2)・exp(-0.115・50/2)=0.0045 と放射線量を半分に減弱できることが 期待される。

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5 今後の方向性 今回の結果は、地デジ化に伴って大量に発生すると予測されるアナログブラウン管テレ ビなどの鉛ガラスカレットが、そのまま袋詰めなどの形で用いても放射線遮蔽効果を持つ ことを示した。たとえば、袋に詰めてマット状にして土嚢のようにして瓦礫を覆うだけで も、鉛板を敷き詰めるのに匹敵するような効果も期待される。また、ここでは手近にあっ たシリコン樹脂で練り混ぜたが、他の安価な樹脂を使っても同じ効果が得られるものと期 待できる。さらには、プレキャストコンクリートの遮蔽効率改善などへの応用も考えられ る。ここで確認された放射線遮蔽特性に合わせて原発事故現場の厳しい作業環境を緩和さ せるための多様な適用を図っていきたい。 謝辞とお願い 今回の取り組みを進めるにあたって、最初の提案者であるエコマテリアルフォーラムは もとより、知恵を出し合ってくださった建設会社、プラント会社、セメント会社、そのよ うな知恵を集める機会を与えてくださった経済産業省の放射線対策室や経済産業政策局の 方々、さらに試験に向けての資材提供を支えてくださった同リサイクル課、情機課の方々、 使用後の鉛ガラスの再リサイクルについてご指導いただいた環境省リサイクル推進室の 方々、実際の試験資材を提供してくださった家電リサイクルおよびパソコンリサイクル関 係の皆様に感謝の意を表すとともに、それらの仲立ちを務めてくださった(財)原子力研 究バックエンド推進センター(RANDEC)の皆様に感謝の意を表するものです。 また、国民の皆様方には、地デジ化にともなって不要となったテレビをきちんとリサイ クルすることが原発事故対策にもささやかな貢献になることを理解し、使用済みテレビを 必ず家電リサイクル制度に基づいたリサイクルに廻すようにお願いするものです。 連絡先 原田幸明 元素戦略材料センター 資源循環設計グループ グループリーダー TEL 029-859-2668 E-mail: [email protected] (報道担当) 企画部門 広報室 独立行政法人物質・材料研究機構 〒305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1 TEL: 029-859-2026 FAX: 029-859-2017

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6 用語等説明 ブラウン管鉛ガラスカレット ガラスを砕いたものをカレットと言いう。ブラウン管に使用されている鉛ガラスを砕い たものが鉛ガラスカレット。ブラウン管からは微弱な放射線が出ているために視聴者に悪 影響を与えないように鉛やバリウムなどγ線遮蔽性の高い元素が加えられている。ブラウ ン管の前面のパネル部と後ろのファンネル部では鉛の含有率は異なるが、特に後部のファ ンネル部では25%近くの鉛が含まれ、平均でも 10%近くになる。 ビリガラス ブラウン管ガラスどうしを擦り合わせて破砕する行程で生じるガラスの粉末。 シリコン樹脂 有機ケイ素化合物の樹脂。一般に市販され日曜大工などにも用いられる代表的樹脂の一 つ。粉末状では運搬や飛散の問題が出るので、その対策の一つとして今回は身近なシリコ ン樹脂を用いガラス粉末を練り固めた状態を作った。 空間線量率 対象とする空間の単位時間当たりの放射線量を空間線量率という。放射線の量を物質が 放射線から吸収したエネルギー量で測定する場合、線量率の単位は、Gy/h(グレイ/時)。な おガンマ線の場合には、1Gy は被曝線量から見るとほぼ 1Sv(シーベルト)に当たる。

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参考

) 廃ブラウン管処理の流れの例

shipping

ビリガラス

含金属部位

(目視分離)

粉体

(15%)

粗カレット

細カレット

Hummer crusher

パネル

/ファンネル切離(ニクロム加熱)

Dram Shaker (共摺破砕)

貼り付け物削り取り

参照

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