1 平成24年4月23日 独立行政法人 物質・材料研究機構
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燃
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池
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極
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触
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媒
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成
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功
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独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)環境再生材料ユニット 阿部 英樹主幹 研究員、極限計測ユニット/高輝度放射光ステーション 吉川 英樹主幹研究員および表界面構造・ 物性ユニット 原 徹主幹研究員の研究チームは、新開発の金属ナノ粒子可溶化技術によって、燃料 電池電極材料の触媒活性を 15 倍高めることに成功した。電極触媒活性の大幅向上により、燃料電 池材料におけるレアメタル消費量の削減に道が開かれた。本研究成果は、英国王立化学会誌 Chemical Communications オンライン版(3月9日号)に掲載された。 研究の背景 燃料電池1)や自動車排気ガス清浄化2)に代表される環境・エネルギー技術は、エネルギー供給 と環境保全を両立する上で、21 世紀の人間社会に必要不可欠である。環境・エネルギー技術におい て最も重要な要素材料の1つが、直径 10 nm 以下の貴金属ナノ粒子を活性点とする「金属触媒」で ある。 金属ナノ粒子は多くの場合、溶媒中の化学反応によって合成されるが、合成されたままの金属ナ ノ粒子は容易に凝集して直径数百 nm のクラスターを形成し、比表面積と触媒活性が大幅に低下す るという課題を抱えている。溶媒中に分散した直径数百 nm~数 m 程度の「担持材料3)」表面に 金属ナノ粒子をごく薄く析出させることによってナ ノ粒子間の距離を確保する方法が広く用いられてい るが、金属ナノ粒子の凝集を完全に抑制することに は成功していない。現行技術では、金属ナノ粒子の 凝集による触媒活性低下を補うため、触媒中に過剰 の活性点を導入する他に方法がなく、レアメタルの 大量消費が避けられなかった。 成果の内容 本研究では、凝集した金属ナノ粒子を水溶液中に 分散・溶解し、担持材料表面に再分散・固定する新 しい技術を開発した(図 1)。 まず、クラスター状に凝集した金属ナノ粒子(Pt3Ti ナノ粒子)を、樹枝状構造を持つ巨大有機分子「水酸基 終端型第 5 世代デンドリマー4):G5OH」水溶液に投入 し、常温常圧で 1 週間撹拌する。撹拌に伴い、クラスタ ーが分解され、徐々に水に溶けてゆく。 これは、金属ナノ粒子が G5OH 分子内部に取り込まれ、 同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布)2 水溶性の金属・有機複合分子を形成することによって水に溶けるようになった(可溶化された)た めである。 金属ナノ粒子水溶液中にカーボン担持体(GC)を挿入し、Ag/AgCl 標準電極に対して 0~+1.0 V の交流電圧を印加することにより、金属ナノ粒子を、G5OH 内部に取り込まれた形のまま、GC 表 面に再分散・固定することができる。金属ナノ粒子を包む G5OH の終端基層(厚さ<1 nm)には、 単にナノ粒子同士の会合・再凝集を抑制するだけではなく、GC 表面とナノ粒子との間の電荷のや り取りを媒介する働きがある。実際、GC 表面に固定された金属ナノ粒子は、燃料電池触媒反応の 1つである酸素還元反応に対し、凝集した金属ナノ粒子に比べ、白金当量比で 15 倍もの活性を発 揮する(図 2)。 図 3 の左右の画像は、G5OH による金属ナノ粒子可溶化を実証する透過電子顕微鏡像である。合 成されたままの金属ナノ粒子(直径 1~4 nm, 図中輝点)は、凝集して 200 nm2程度のクラスターを 形成している(図 3 右図)。一方 G5OH(直径 6 nm)によって可溶化された金属ナノ粒子の場合、 ナノ粒子の間隙は常に、G5OH 分子の終端基の厚みに相当する 1 nm 以上に保たれている(図 3 左 図)。図 3 中央図は、可溶化された金属ナノ粒子のナノ構造を決定するために行われた、大型放射 光施設 SPring-8・BL15XU 高輝度放射光ステーションにおける硬 X 線光電子分光5)(HX-PES)測 定の結果である。金属ナノ粒子のPt 3d5/2光電子ピークは、バルク試料とほぼ等しい2122.7 eV に 現れるが、G5OH によって可溶化された金属ナノ粒子の Pt 3d5/2光電子ピークは、これより2.2 eV 高エネルギー側の2124.9 eV に現れる。可溶化された金属ナノ粒子の Pt 3d5/2光電子ピークが示す 高エネルギーシフトは、金属ナノ粒子上にⅩ線励起されたホールがナノ粒子を覆う絶縁性のデンド リマー分子によって補足され、光電子に静電引力を及ぼした結果(終状態効果)と解釈される。本 結果は、金属ナノ粒子が実際に G5OH 分子の内部に取り込まれ、水溶性の金属・有機複合分子を形 成したことを実証している。 波及効果と今後の展開 原子力発電や化石燃料機関など、環境負荷の高い従来技術に代わる新エネルギー源の開発が急が れる現在、燃料電池技術への期待が高まっている。しかし現行の燃料電池は、電極触媒活性の凝集 による低下を補うため、白金などの貴金属を大量消費せざるを得ないという課題を抱えている。 G5OH によって可溶化された金属ナノ粒子は、複雑なナノ構造材料の深部にまで浸透・分散させる
3 ことができるため、高比表面積メソポーラス材料(比表面積>1000 m2 g-1)を担持体として利用す れば、燃料電池電極における貴金属使用量を 1/100 以下に抑えることも不可能ではない。G5OH に よる金属ナノ粒子の可溶化処理・担持材料表面への再分散処理はいずれも単純・簡単であり、今回 の Pt3Ti ナノ粒子に限定されることなく、純白金ナノ粒子など、異なった金属ナノ粒子に幅広く適 用することが可能である。本技術は将来的に、環境保護・エネルギー確保・レアメタル消費量削減 という3つの課題に応えることができるものと期待される。 用語解説 注 1 燃料電池:水素やメタノールなど小型の分子を電気化学的に燃焼させ、これに伴って生ずる 電荷移動を、反応系外部に電流の形で取り出す装置。次世代エネルギー源として注目を集める 新技術である。 注 2 自動車排気ガス清浄化:自動車エンジンからは、一酸化炭素や酸化窒素(NOx)を初め、人体に 有害な有毒ガスが高濃度に排出される。エンジンからの排気ガスを環境に放出する際には、何 らかの方法で、有毒ガスを除去・清浄化しなくてはならない。金属触媒を使った排気ガス清浄 化は代表的な方法である。 注3 担持材料:金属ナノ粒子を表面に分散・固定して凝集を防ぎ、触媒材料の活性を保持する材 料の総称。燃料電池電極用の担持材料としてはカーボン粉末が、自動車排気ガス清浄化のため にはアルミナやセリアが利用される場合が多い。 注 4 デンドリマー:直鎖型の分子団が、原子数個から成る「コア」と呼ばれる分子団を起点に、 アミン基などを分枝点として分枝を繰り返すことにより構築された樹枝状(デンドロン)構造 を持つ球状分子の総称(図1を参照)。デンドリマーは、樹枝状分子団と終端基によって構成 された直径 1 nm~1.7 nm 程度の「ポア」と呼ばれる中空の空間に、終端基の隙間を介してイオ ンや分子を受け入れる能力を持っているため、標的腫瘍細胞に薬剤分子を集中投与する「ドラ ッグ・デリバリー」技術への応用が検討されている。従来、終端基の隙間を縫ってデンドリマ ーポア内部に入り込むことができるのは、原子数個から成る小型のイオンまたは分子 ( < 1 nm) に限られると考えられてきたが、今回我々は、水酸基終端型の G5OH 分子が、ポア内径と同等 のサイズ ( 1 nm~1.7 nm) を持った金属ナノ粒子を取り込む能力を持つことを初めて見出した。 注 5 硬 X 線光電子分光:シンクロトロン放射光源から発せられる 5 keV 以上の硬Ⅹ線(今回 5.95 keV)を励起光源として利用する光電子分光法。硬 X 線を利用することにより、約 20 nm 以上 の観察深さと、結合エネルギー2 keV 以上の深い内殻の電子状態の直接観測が実現できる。従 来、有機分子包摂金属ナノ粒子などの有機・金属複合材料の立体構造決定は、専ら1H-NMR やFTIR を用いた有機官能基の化学状態分析に依拠してきた。今回我々は、HX-PES によるナ ノ粒子の内殻電子状態の直接観測結果に基づいて金属・有機複合材料の立体構造決定を行うこ とに初めて成功した。 <謝辞> 本研究成果は、独立行政法人科学技術振興機講の戦略的創造研究推進事業(さきがけ) 「新物質科 学と元素戦略(研究統括:細野 秀雄(国立大学法人 東京工業大学))」の研究課題「金属間化合物を 活性点とする貴金属フリー排ガス清浄化触媒の開発(研究者:阿部 英樹)」の支援を受けて行われ
4 たものである。 本件に関するお問い合わせ先 (研究内容に関すること) 独立行政法人物質・材料研究機構 環境再生材料ユニット 阿部 英樹(あべ ひでき) E-mail: [email protected] TEL: 029-859-2732
極限計測ユニット/高輝度放射光ステーション 吉川 英樹(よしかわ ひでき) E-mail: [email protected] TEL: 0791-58-0223
表界面構造・物性ユニット 原 徹(はら とおる) E-mail: [email protected] TEL: 029-860-4599 (報道担当)
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