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「コミュニケーション演習」「メンタルヘルス実習」の 教育実践(2015年度)

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宇都宮大学教育学部教育実践紀要 第2号 2016年8月1日

「コミュニケーション演習」「メンタルヘルス実習」の

教育実践(2015年度)

川原 誠司

宇都宮大学教育学部

* 概要  本稿で取り上げる「コミュニケーション演習」「メンタルヘルス実習」という授業は,教育学部総合人間 形成課程の課程必修授科目である。これらの授業は学生自身の人間力向上を意図して設定した科目であり, 文部科学省の提唱する「学士力」や経済産業省の提唱する「社会人基礎力」とも大きく関連するものである。 本稿は,昨年度に比しての今年度の変更点をまとめ,さらに今年度行ったアンケート調査結果からこれらの 授業設定の意義をまとめる。それらを踏まえてこれからの課題等について考察するものである。  キーワード:コミュニケーション,メンタルヘルス,コアカリキュラム

  Seishi KAWAHARA*: Educational Practice in Seminar in Communication and Practice in mental health (in the Academic Year 2015). Keywords : communication, mental health, core curriculum

 * Faculty of Education,Utsunomiya University (連絡先:[email protected]) 1.昨年度に比しての本年度の2授業の変更点  「コミュニケーション演習」「メンタルヘルス実 習」の2授業の設立経緯や内容については,昨年詳 細に論じた(川原,2015)。同等の内容を毎年度開 講しているわけだが,実施にあたって多少変更され たものがあるので(意図的な変更や仕方のない変更 など),ここでその点を説明する。  「コミュニケーション演習」については,授業の 最後に公開のプレゼンテーションコンテストを行っ てきた。この授業前期開講授業ということもあり, 前期授業期間末の頃に行われる大学オープンキャン パスを活用してこれまで行ってきた。しかし,教育 学部総合人間形成課程は平成28年度より募集停止と なり,課程の説明会や催事を行いにくくなった。  オープンキャンパスが利用できないとなると,学 生の負担を考えて平日の開催を模索するのだが,そ うなると学外からの審査員選出に影響を与えること となった。例年お願いしていた審査員の方の都合が 合わず,そこについても一からの依頼となった。  結果的に,プレゼンテーションコンテストは7月 21日(火)に開催できる運びとなったが,オープン キャンパスの翌日ということもあり,学外からの参 加者はないという結果にもなった。  「メンタルヘルス実習」の方は,授業クラスを「内 省中心」と「実践力向上」の2つに分けて希望する 形をとっている。これまでは実践力向上のクラスを 1クラス分設定していたが,本年度は実践力向上の 希望が圧倒的に多く,実践力向上のクラスを2クラ ス分開講することとなった。筆者は従前通り内省中 心の1クラス担当なので,その点には変更はなかっ た。ただし,これまでは導入の合宿引率を2クラ ス分担当していたが,実践力向上クラスが増えたこ とにより(このクラスは合宿形式ではなく学内での 集中授業形式になる),1クラス分の引率に減じた。 その意味では負担減となった。 2.質問紙調査結果から見た2授業の意義  2授業については,4年次の「卒業研究B」の発 表において学生からよく取り上げられることは昨年 数値としても示した(川原,2015)。本年度の同発 表での同様の傾向が見られていた。  それとは別に,本年度については翌年度の法人評 価のために,総合人間形成課程の授業の意義につい てのエビデンスを収集する目的もあり,「卒業研究 B」の発表時に課程独自の授業に関する質問紙調査

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を実施した。調査対象は「卒業研究B」を発表する 4年次生60名である。前記の理由なので,本稿のた めに2授業のみを特別視するような操作はなく,ま た,無記名方式でもあることを一言添えておく。  調査内容については,本稿に関連する部分だけ述 べる。総合人間形成課程独自のカリキュラムである 「自己開発科目」(「カリキュラム設計科目」「基礎力 養成科目」「実践力養成科目」の3本柱から成る; 表1参照)の13科目の中から自分で特に印象に残る 3つの授業を挙げてもらい,それがどのような点で 印象に残るか10項目の質問を用意し,挙げた3科目 それぞれを評定してもらった(5段階評定)。また, 総合人間形成課程の授業について印象に残ることを 自由記述してもらう欄も設けた。 (1)定量的分析  表2に「コミュニケーション演習」の結果を,表 3に「メンタルヘルス実習」の結果を示した。13科 目の多様性ある科目の中から3科目を選んでもらう という制約の中,60名の回答者のうち「コミュニケー 表1 総合人間形成課程独自のカリキュラム体系(自己開発科目)   表2 「コミュニケーション演習」を印象深かった授業の1つとして選んだ人の評定結果( =31)

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ション演習」については31名(52%)の学生が,「メ ンタルヘルス実習」については42名(70%)の学生 が選んでおり,印象が強い授業の部類に入っている と言えよう。「卒業研究B」での取り上げ方との整 合性がうかがえる。  どのような点で印象に残っているかの質問につい ても全体的に高い傾向で,評定段階が5や4になっ ているものがかなり多い。自ら挙げた授業なので, 選好していることは推測されるが,それでも高い。  肯定的評定の中でも,項目1や項目2の「後で 役立つ」「苦手な部分に取り組む」といったことへ の段階5の評定がが6 ∼7割と非常に高くなってい る。楽な内容ではないが後々役立った,というのは 教育機関で行う意義を感じさせるものである。 (2)自由記述より  表4に示した。本稿の授業名に直接触れた記述が 10ほど見られた。ア∼ウの記述にあるように,「コ ミュニケーション演習」では人前での発表について 触れており,中でもプレゼンテーションコンテスト の催事を挙げてくれている学生がいた。  「メンタルヘルス実習」では,自分自身を見つめ る機会と捉えたり(ウ,エ),そのことが就職活動 にも益したと感じてくれた人もいたようだ(エ∼ カ)。また,実習方法での少人数体制の安心感(キ) やクラス編制の多様性から来る関係性の拡がり(ク, ケ)に触れてくれた人もいた。中でも,合宿の催事 について触れた記述もあった(ケ,コ)。2種類の クラスがあるため,筆者が担当する内省中心のクラ スだけの結果ではないことに留意する必要がある。 それでも各クラスに通底する部分や内省中心のクラ スの特徴的な部分を学生たちにより一層実感しても らうことが重要であると言えよう。 3.今後の課題 (1)総合人間形成課程の募集停止の影響による教 育機会喪失の懸念  冒頭の今年度の変更点での記述でも触れたが,総 合人間形成課程は平成28(2016)年度より新入生を 募集停止することとなり,これまでの教育体制がど の程度確保できるか定かでない。表4で何人かの学 生が触れてくれた「コミュニケーション演習」での   表3 「メンタルヘルス実習」を印象深かった授業の1つとして選んだ人の評定結果( =42)

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プレゼンテーションコンテストのような催事も,従 前のような確保が難しくなってきている。  「メンタルヘルス実習」についても合宿や集中授 業の際は特に経費(謝金や旅費等)が必要となる。 これまでは課程があることで全学的予算での配慮も なされてきたが,募集停止が決まった後で同様の配 慮がなされるかの保障はない。  しかし,受講学生にとってはその年度一度きりで 受講しているわけであるので,最後の実施年度まで 学生の成長にとってよいアクティブラーニングの機 会を提供できる配慮を主張する必要があるだろう。 (2)初期段階でのさらなる意識づけ  表2と表3とを比べると,「コミュニケーション 演習」の方が相対的に評価が低い(高い評価を得て いるが)。これは授業内容や宿題の差などもあるだ ろうが,実施学年の差も一因ではないかと思う。  コミュニケーションに関して言えば,就職活動の 際にはより痛感するはずだが,2年次前期の段階で は意義を感じにくいし,その中でのトレーニングは より苦痛になりやすい。とはいえ,早期に行うこと で大学での学修においても活かせるようにしたいと いう意味合いがある。  就職活動との時間差が繋がるように就活体験談な どをプレゼンテーションコンテストの際に盛り込ん できたが,今後も「先を見据えた生のメッセージ」 を2年次学生に届ける取り組みが必要だろう。 (3)個人差への対応  受講生に様々な状態の者がいることは昨年も述べ たことであるし(川原,2015),必修授業の宿命で もある。全員に平等に教育の効果を及ぼすことは難 しいが,相対的に行いやすい教育評価の中で,でき る限り個人内評価ができるような,つまり個人内進 歩を意識させられるような観点は必修授業の中では 重要である。教員側が行う工夫もあるし,仲間との やりとりの中で本人自身が感じられるような工夫も 検討課題である。 引用文献 川原 誠司 (2015).「コミュニケーション演習」「メ ンタルヘルス実習」の教育実践(2014年度)  宇都宮大学教育学部教育実践紀要, ,187-191. 付記  2015年度の「メンタルヘルス実習」の実施に関し ては,宇都宮大学教育プログラム支援経費の支援を 受けており,また,2015年度の「コミュニケーショ ン演習」の実施に関しては,学部から総合人間形成 課程に配分された予算の一部を活用している。 平成28年 3月31日 受理  表4 アンケートの自由記述より(当該授業に関連したもののみの抜粋)

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