小学校教員養成課程における音楽技能習得の実践
-コード付け伴奏学習の授業を通して育まれる指導者としての資質-
明 和 史 佳,望 月 たけ美
Acquirement of Musical Skills in Education for Elementary School Teachers
―The Qualifications as a Teacher Cultivated Through Learning Piano
Accompaniment With Music Chords―
Ayaka MEIWA, Takemi MOCHIZUKI
2016 年 11 月 18 日受理 抄 録 小学校では授業はもちろんのこと、学校行事等で各クラス担任が音楽指導を行わな ければならない場面があり、教員には音楽の基礎知識のほか、ピアノ伴奏をはじめと した実技技能を身につけていることが求められている。子どもたちが楽しみながら音 楽に接し、それぞれの意思や表現力を引き出すことができる伴奏技能を学習すること は、豊かな人間性の重要性を認識した教員の育成につながると考えられる。本研究は 常葉大学におけるコード付け伴奏学習の取り組みと同学習者を対象に実施したアン ケート結果から、小学校の教育現場で音楽活動を行うのに必要な技能として有用な コード付け伴奏習得の実践方法を明らかにすることを目的とした。また、歌唱共通教 材のあり方を検証するため、認知度と人気度を調査すると共に楽曲分析を試みた結果、 楽曲の人気は認知度や難易度よりも、音楽的要素を感じ取っていることに起因してい ることが示された。 キーワード:小学校教員養成、音楽科教育、歌唱共通教材、コード付け伴奏、 教員の資質 はじめに 本来小学校教員には全ての教科を指導することが求められており、音楽教科に関し ても、授業を行うのに必要な知識技能を身につけていることが求められている。しか しながら音楽の授業を行うことを苦手としている教員は多く、山﨑正・望月たけ美著 「初等教育課程における音楽実技の現状と試み」常葉大学紀要(教育学)33 号でも記 されているように、音楽の授業を行うのに必要な能力がないことを理由に他の先生に 代わって音楽授業を行ってもらっている実態や、本来ならば担任を持っていて欲しい教員が、音楽専科として音楽を持たねばならない現状を耳にする。本学の卒業生から も、「音楽専科として配置されたため担任を持たせてもらえず、学級経営の中で児童 と接することができないのがもどかしい。」という声を聞いた。静岡県では教員採用 試験に音楽実技の試験が課せられておらず、学科試験も家庭、図工、体育、音楽の4 教科から2教科を選択する受験方式であるため、教員養成機関である大学での学習の 中で音楽科目の重要性を認識できずに必要な知識技能を習得しないままでは、いざ教 員になり音楽の授業を行う際に困難が生じてしまう可能性が容易に想像できる。授業 に関しては前述のようにやむを得ず他の先生に代わってもらうなどして対応すること ができたとしても、小学校では授業のみならず、学校行事や地域活動などで各クラス 担任が音楽指導を行わなければならない場面が存在し、楽譜を読む、お手本として歌 唱や楽器の演奏をする、合奏及び合唱の指導をする、といった音楽活動を避けて通る ことはできない。学級運営の面からも教員には音楽の知識技能を身につけていること が求められているのである。 では、教員が身につけなければならない音楽技能とは何か?楽譜を読み、音として 実現化できる(演奏できる)こと、また楽譜を見て、もしくは曲を聴いてイメージを 感じ取り、子どもたちにどのようなことを学んでほしいか考える力、そして音楽の授 業では「歌う」という活動が欠かせないため、児童の意思や表現力を引き出す「ピア ノ伴奏」の技能を習得することが必要である。ピアノ伴奏の技能は短時間の学習で身 につくものではなく、繰り返し反復学習することによって徐々に習得できるものであ る。また、ただ弾くことができるだけでは、子どもたちの表現しようとする心を育む ことはできず、音楽の授業目標を達成させることはできない。ひとつの曲を楽譜通り にミスなく弾く能力ではなく、臨機応変に状況を見ながら子どもたちが楽しんで音楽 に接することができるよう導くための演奏技能が教員には求められている。さらに、 「小学校学習指導要領」第2章 第5節「音楽」に示された音楽科目標「表現及び鑑 賞の活動を通して、音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育てるとともに、音楽 活動の基礎的な能力を培い、豊かな情操を養う。」を達成することは、児童の音楽的 感性を育てることにより、他人を思いやる心や優しさ、相手の立場になって考えたり、 共感したり、価値観の違いを認め合ったりすることのできる温かい心や、美しいもの や崇高なものに感動する心を育てることにつながっており、それらは学校教育の目標 である「豊かな人間性」の育成にもつながるものである。(「学習指導要領解説 音楽 編」第 2 章 第 1 節 音楽科の目標 平成 20 年 文部科学省)したがって、教員は 単なる知識の習得や、繰り返し練習することによって演奏ができるようになればよい のではなく、子どもたちが音楽に興味関心を持ち、音楽を学習する喜びを感じられる よう、教育への使命感や児童に対する理解や教育的愛情、教員自身が美しいものを尊 び感動する感性と自らの意思を伝えようとする豊かな表現力を有していること、すな わち高い「教員の資質」を身につけていることが必要である。 以上のことから、充実した音楽活動を行うことができる知識、技能、そして資質を 身につけた教員の育成を目指し、常葉大学教育学部初等教育課程では 2012 年より 40
台の電子ピアノを導入し、集団形態による授業と個人練習に伴う個人指導を取り入れ た、小学校教員免許、幼稚園教諭免許取得のための必修科目「音楽Ⅰ A」を開講し ている。本授業では教育現場で実際に使用される「小学校歌唱共通教材」を用い、コー ド付け伴奏の理論を習得することによって、音楽指導に必要なピアノ伴奏の技能を身 につけるほか、読譜や音楽理論などの基礎知識を学習する。本研究ではこの授業を通 して行ってきたこれまでの取り組み内容と現状を考察し、小学校教員に必要な技能を 習得するための実践方法を示すとともに、2015 年後期に実施したアンケート結果か ら学生の伴奏技能習得における課題や改善点、歌唱共通教材のあり方について明らか にする。 (明和史佳) Ⅰ .「音楽Ⅰ A」の授業におけるこれまでの取り組み 「音楽Ⅰ A」を開始した 2012 年前期授業については、山﨑正・望月たけ美「初等教 育課程における音楽実技の現状と試み」常葉大学紀要(教育学)33 号において先行 研究を実施した。ここでは、主に「音楽Ⅰ A」の2年目以降にあたる 2013 年~ 2015 年の3年間の取り組みとその課題について考察する。 1.1 2012 年と 2013 年以降の取り組みにおける変容 2013 年の大きな変容としては、「音楽Ⅰ A」で使用するテキスト「初等教育課程の ための鍵盤ハーモニー入門」(山崎正嗣、望月たけ美共著)の初版発行に伴い、H25 年度入学生から新テキストで授業実施となった。2012 年の先行研究を経て改善した 点は、テキスト記載課題曲の曲順の変更である。山﨑正・望月たけ美「初等教育課程 における音楽実技の現状と試み」常葉大学紀要(教育学)33 号 pp186【表 4】にある ように、授業では課題曲記載順ではなく学生の習熟度の流れに沿って課題曲を選択し て実施していた。2013 年からの新テキストでは、課題曲 No に従って学習できるよ う課題曲の記載順を変更した。
[表1]2012 年と 2013 年のテキスト記載課題曲の曲順の変更と変更理由 1.2 集団授業に対する取り組みの工夫と受講学生の様子 「音楽Ⅰ A」の授業では、歌唱共通教材 24 曲のメロディーを見て、楽曲の特性を 捉えたコード付け伴奏が出来るようになること、教育現場で子どもたちの学習に幅広 く関わるための音楽実践スキルとして歌唱共通教材の枠を離れてもコード付け伴奏が 同じアルベルティ伴奏で、2曲セ ットでの学習がスムーズなため コ ー ド 奏 、 ベ ー ス コ ー ド 奏 、1 対 2 音の 3 つの基本伴奏形を 早々に習得できるため 複付点音符の登場により音符の 長さの再認識ができ、ふじ山と 同じ1 対 2 音の伴奏形なので復 習できる 伴 奏形 の 指 定 なし 。 曲 想 に あ っ た伴奏形を考える課題とする 8 小節の短曲なので、調性が変 わっても コード 付け の基本 ポジ ションが 応用で きる ことを 確認 しやすい ト長調教材の集大成になる曲 唯一のニ長調教材の登場 [表1]2012 年と 2013 年のテキスト記載課題曲の曲順の変更と変更理由 課題曲 No 調性 2012 年実施時の 課題曲曲順 2013 年実施時の 課題曲曲順 1 C かたつむり 1 かたつむり 2 C 春がきた 2 虫のこえ 3 C 虫のこえ 3 ふじ山 4 C 春の小川 4 夕やけこやけ 5 C ふじ山 5 春がきた 6 C とんび 6 春の小川 7 C まきばの朝 7 とんび 8 C おぼろ月夜 8 まきばの朝 9 C 夕やけこやけ 9 おぼろ月夜 10 F 日のまる 10 日のまる 11 F もみじ 11 ふるさと 12 F こいのぼり 12 冬げしき 13 F 冬げしき 13 もみじ 14 F ふるさと 14 こいのぼり 15 G うみ 15 うみ 16 G 茶つみ 16 茶つみ 17 G スキーの歌 17 スキーの歌 18 D われは海の子 18 われは海の子 19 ひらいたひらいた 19ひらいたひらいた 20 かくれんぼ 20 さくらさくら 21 うさぎ 21 かくれんぼ 22 さくらさくら 22 うさぎ 23 こもりうた 23 子もりうた 24 越天楽今様 24 越天楽今様 1.2 集団授業に対する取り組みの工夫と受講学生の様子 「音楽ⅠA」の授業では、歌唱共通教材 24 曲のメロディーを見て、楽曲の特性を捉 えたコード付け伴奏が出来るようになること、教育現場で子どもたちの学習に幅広く 学生の認 知度が 高く学 習し やす いため3 曲目、4 曲目に配置 ハ長調教材の難曲。弱起の曲で、 3 拍子の登場で伴奏形の応用を 学ぶ ヘ長調教材の集大成になる曲 わらべうた、日本古謡群
応用できるようになることを目指している。そのため、受講学生は、小学校教員免許 や幼稚園教諭免許取得を目指した、社会、国語、数学、理科、生涯スポーツ、教育カ ウンセリング、生涯学習、心理発達の専攻学生であり、音楽経験や鍵盤楽器経験は未 経験から経験者まで幅広い。このような学生に対し、半期 15 回の 40 名弱の集団授業 で目標達成を目指すためには、授業を担当する教員側にも様々な工夫と授業研究が課 される。 授業は 2012 年と同様で 2 名の教員が担当した。授業の実施方法は、一コマの授業 の中の前半で、その時間に学ぶ楽曲の解説と演奏上の注意事項、コード付け実践、目 指す指定伴奏形の説明を行った。教員 1 名が課題曲の解説を行っている際、受講学生 の音楽経験の違いから理解度にどうしても差が出てしまう。もう一人の教員は、巡回 しながら理解の遅い学生や、取り組みに手間取る学生を見出し積極的に声を掛けて いった。未経験者や初心者のピアノ技術の習得には努力と根気に加え効率的な学習が 必要である。巡回指導教員の声掛けによって不安が解消されたり、やる気を取り戻し たりしていく学生が見られた。また、中には読譜が困難な学生や、楽譜と手元の動き がうまく連動していかない学生も多いが、巡回教員の運指のポイント指導によってピ アノ技術の習得を順調に進めていく様子も見受けられた。 課題曲の説明を受けた後半では、各学生が各自1台の電子ピアノを使いイヤフォン を用いて実技個人練習を行う。その際は2名の教員が巡回し、各学生の練習状況を確 認しながら、個々の状況に合わせた個別指導を実施した。この学習形式でコード伴奏 を習得した学生は、授業内の申請および授業外のビデオ録画によって教員による演奏 チェックを受け、演奏内容に応じたポイント点を手に入れていく。演奏チェックにお いては、第4回~第5回目の授業において([表2]参照)、個々の演奏をチェックす る際、まだポイントは与えずにより質の高い演奏に向けてアドバイスを行った。集団 授業の利点として、他の学生が受けた注意事項を自分の演奏にも反映できる点がある。 また、たった一つのアドバイスによって演奏に変化が現れ、質の高い演奏を模索して いこうとする学生もあった。その反面で、授業開始当初は「なぜこのような授業を受 講しなければならないのか」、「CD などの活用で充分なのではないか」「ピアノ未経 験者にとってきつい」などの声も聞かれた。しかし、教員が個々の学生の得手不得手 な部分に気づき、根気よく指導を繰り返し、質問しやすい関係性を作ることで学生側 に確実に変化があった。 この授業では、課題曲習得状況によるポイント点が成績評価となる。ポイントは1 ポイント、1.25 ポイント、1.5 ポイントの3種で、ポイント1はコード奏による伴奏 付けの習得、1.25 は指定伴奏形による演奏の習得、1.5 は表現性を持った演奏に対し 与えられる。いずれも停まらずに最後まで演奏できることがポイントを得る必須条件 になる。教員側は巡回時の演奏チェックの際、その評価の理由を明らかにして学生に 伝えるようにした。なぜその評価ポイントであったのか納得させることは、次の課題 曲への取り組みに反映していくため、めまぐるしい巡回の中であっても手を抜けない 指導ポイントである。ビデオの録画による演奏チェックにおいても同様であり、チェッ
クの結果を伝える際もその点を明らかにした。 1.3 15 回の授業における授業展開の工夫 次に、2013 年~ 2015 年のコード付け伴奏習得の授業計画と内容を示す。 [表 2]2013 年~ 2015 年における授業計画と内容 授業回数 授業計画と内容 第1回 ガイダンスと課題曲説明及び目標の個人設定。練習曲1による音楽 知識の解説 第2回 音符の読譜とピアノポジションとの関係について。練習曲1による 実践 第3回 コードネームの理解と主要三和音(Ⅰ、Ⅳ、Ⅴ)及び主要七の和音(Ⅴ 7)コードによる伴奏ポジションの理解。練習曲2による実践 第4回 基本パターン6種による伴奏形態の理解と実践。練習曲3による実践 第5回 課題曲1 楽曲説明と演奏の留意事項&実践 第6回 課題曲2 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第7回 課題曲 3 ~4 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第8回 課題曲5~6 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第9回 課題曲7~8 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第 10 回 課題曲9~ 10 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第 11 回 課題曲 11 ~ 12 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第 12 回 課題曲 13 ~ 14 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第 13 回 課題曲 15 ~ 16 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第 14 回 課題曲 17 ~ 18 楽曲説明と演奏上の留意点及び実践 第 15 回 課題曲1~ 18 のまとめ 定期試験 学生個人の既習曲の中から、当日、教員による指定で簡易伴奏によ る公開演奏 この授業では、ピアノ等の鍵盤楽器による伴奏づけの修得を目指す事から、授業第 1回~第4回目までは、練習曲1「ちょうちょ」、練習曲2「ドイツ民謡」、練習曲3 「きらきら星」を用いながら、読譜の方法、拍子、音名、コードネーム、音域、楽曲 形式、強弱記号、速度記号等の音楽基礎知識に加え、主要三和音や属七の和音機能や 働き、和音の転回形の考え方、ピアノ鍵盤上でのポジションについて解説を行った。 また、実際の課題曲に入る前に、伴奏形として実用的である6種の伴奏形を先に提示 し、その特性および演奏上の留意点について、3曲の練習曲による実践を行った。 また、6種の伴奏形については、歌唱共通教材 24 曲中9曲にあたる([表 1]参照)
ハ長調による実践により、伴奏形の基本となる主要3和音と属7によるコード C、F、 G、G7 の各コードの特性や機能およびポジションの理解を徹底して行った。下記に 授業で用いた 6 種の伴奏形と応用型について挙げる。 ハ長調による実践により、伴奏形の基本となる主要3 和音と属 7 によるコード C、F、 G、G7 の各コードの特性や機能およびポジションの理解を徹底して行った。下記に授 業で用いた6 種の伴奏形と応用型について挙げる。 コード伴奏づけ実践における6 種の基本伴奏形と指定伴奏形 <譜例1> < <譜例2> 伴奏形①は、コードの根音のみを使用した単音による伴奏形。課題曲2「虫のこえ」、 課題曲15「うみ」の終止部分での指定伴奏形とした。単音による伴奏の楽曲への効果 を理解する事を試みた。 伴奏形②は、和音コードによる伴奏形である。授業ではこの伴奏形を基本スタイル とし、前述のようにどの課題曲においても、この伴奏形で停まらずに演奏出来た場合 には1 ポイントが与えられる。この基本ポジションの考え方は、調性が変わった場合 にも応用されるため、コードをつかむための指使いについては毎時の授業で指導を徹 底した。 <譜例3> <譜例4> 伴奏形③は、伴奏形②のコード構成音を根音+第3 音、第 5 音に分けた伴奏型で、 伴奏形②同様で指使いを守ることを指導する。課題曲1「かたつむり」、課題曲10「日 のまる」の指定伴奏形とした。 <譜例 5> ※伴 奏形 ④の 2 倍型 伴奏形① ベ ー ス コ ー ド 奏奏 伴奏形② コード奏 伴奏形③ コ ー ド 奏 の 応 用 1 対 2 型 伴奏形④ コー ド奏 の応 用 2 対 1 型 伴奏形①は、コードの根音のみを使用した単音による伴奏形。課題曲2「虫のこえ」、 課題曲 15「うみ」の終止部分での指定伴奏形とした。単音による伴奏の楽曲への効 果を理解する事を試みた。 伴奏形②は、和音コードによる伴奏形である。授業ではこの伴奏形を基本スタイル とし、前述のようにどの課題曲においても、この伴奏形で停まらずに演奏出来た場合 には 1 ポイントが与えられる。この基本ポジションの考え方は、調性が変わった場合 にも応用されるため、コードをつかむための指使いについては毎時の授業で指導を徹 底した。 ハ長調による実践により、伴奏形の基本となる主要3 和音と属 7 によるコード C、F、 G、G7 の各コードの特性や機能およびポジションの理解を徹底して行った。下記に授 業で用いた6 種の伴奏形と応用型について挙げる。 コード伴奏づけ実践における6 種の基本伴奏形と指定伴奏形 <譜例1> < <譜例2> 伴奏形①は、コードの根音のみを使用した単音による伴奏形。課題曲2「虫のこえ」、 課題曲15「うみ」の終止部分での指定伴奏形とした。単音による伴奏の楽曲への効果 を理解する事を試みた。 伴奏形②は、和音コードによる伴奏形である。授業ではこの伴奏形を基本スタイル とし、前述のようにどの課題曲においても、この伴奏形で停まらずに演奏出来た場合 には1 ポイントが与えられる。この基本ポジションの考え方は、調性が変わった場合 にも応用されるため、コードをつかむための指使いについては毎時の授業で指導を徹 底した。 <譜例3> <譜例4> 伴奏形③は、伴奏形②のコード構成音を根音+第3 音、第 5 音に分けた伴奏型で、 伴奏形②同様で指使いを守ることを指導する。課題曲1「かたつむり」、課題曲10「日 のまる」の指定伴奏形とした。 <譜例 5> ※伴 奏形 ④の 2 倍型 伴奏形① ベ ー ス コ ー ド 奏奏 伴奏形② コード奏 伴奏形③ コ ー ド 奏 の 応 用 1 対 2 型 伴奏形④ コー ド奏 の応 用 2 対 1 型 伴奏形③は、伴奏形②のコード構成音を根音+第3音、第5音に分けた伴奏型で、 伴奏形②同様で指使いを守ることを指導する。課題曲1「かたつむり」、課題曲 10「日 のまる」の指定伴奏形とした。 ハ長調による実践により、伴奏形の基本となる主要3 和音と属 7 によるコード C、F、 G、G7 の各コードの特性や機能およびポジションの理解を徹底して行った。下記に授 業で用いた6 種の伴奏形と応用型について挙げる。 コード伴奏づけ実践における6 種の基本伴奏形と指定伴奏形 <譜例1> < <譜例2> 伴奏形①は、コードの根音のみを使用した単音による伴奏形。課題曲2「虫のこえ」、 課題曲15「うみ」の終止部分での指定伴奏形とした。単音による伴奏の楽曲への効果 を理解する事を試みた。 伴奏形②は、和音コードによる伴奏形である。授業ではこの伴奏形を基本スタイル とし、前述のようにどの課題曲においても、この伴奏形で停まらずに演奏出来た場合 には1 ポイントが与えられる。この基本ポジションの考え方は、調性が変わった場合 にも応用されるため、コードをつかむための指使いについては毎時の授業で指導を徹 底した。 <譜例3> <譜例4> 伴奏形③は、伴奏形②のコード構成音を根音+第3 音、第 5 音に分けた伴奏型で、 伴奏形②同様で指使いを守ることを指導する。課題曲1「かたつむり」、課題曲10「日 のまる」の指定伴奏形とした。 <譜例 5> ※伴 奏形 ④の 2 倍型 伴奏形① ベ ー ス コ ー ド 奏奏 伴奏形② コード奏 伴奏形③ コ ー ド 奏 の 応 用 1 対 2 型 伴奏形④ コー ド奏 の応 用 2 対 1 型
※は、伴奏型④の 2 倍型であり、課題曲3「ふじ山」、課題曲4「夕やけこやけ」 の応用編、課題曲7「とんび」、課題曲8「まきばの朝」の中間部分、課題曲 14「こ いのぼり」、課題曲 16「茶つみ」、課題曲 18「われは海の子」の指定伴奏形とした。 伴奏形④は、伴奏形③の逆スタイルで、拍の重心を強拍部分で感じやすい伴奏型であ る。伴奏型②③同様で指使いを守るように指導した。 ✻伴奏形⑥ の2 倍型 ※は、伴奏型④の2 倍型であり、課題曲 3「ふじ山」、課題曲 4「夕やけこやけ」の 応用編、課題曲7「とんび」、課題曲 8「まきばの朝」の中間部分、課題曲 14「こいの ぼり」、課題曲16「茶つみ」、課題曲 18「われは海の子」の指定伴奏形とした。 伴奏形④は、伴奏形③の逆スタイルで、拍の重心を強拍部分で感じやすい伴奏型で ある。伴奏型②③同様で指使いを守るように指導した。 <譜例6> <譜例7> <譜例8> 伴奏型⑤は、伴奏型②のコード奏を分散した形で、学生には視覚的にも音の進行が わかるように指導する必要がある。黒板に伴奏型の楽譜を板書し、上記の譜例中の矢 印を書き入れ、音の進行型を視覚的に捉えられるよう試みた。3 拍子の楽曲である課 題曲9「おぼろ月夜」、課題曲 11「ふるさと」、課題曲 15「うみ」の指定伴奏として 4 分の3 拍子用に応用して使用した。 伴奏型⑥は、アルベルティバスと呼ばれる伴奏形である。 ✻伴奏形⑥の2 倍型は、チャレンジ伴奏としての位置づけでもあるが現場での実用 性が高い伴奏形である。課題曲4「夕やけこやけ」の中間部分、課題曲 5「春がきた」、 課題曲6「春の小川」、課題曲 8「まきばの朝」の中間部分以外、課題曲 13「もみじ」、 課題曲17「スキーの歌」での指定伴奏形とした。 上記①~⑥の6 種類のコード伴奏づけ実践による授業を、[表 2]の授業計画のもと 実施した。6 種類の伴奏形の音楽的特徴や伴奏形としての役割を知り、歌唱共通教材 以外の子どもの歌や歌謡曲などでも応用して伴奏付が出来るようにすることも目指し ている。また、授業で使用する「初等教育課程のための鍵盤ハーモニー入門」のテキ ストは、課題曲の掲載法において楽曲タイトル、作詞・作曲者欄は空欄になっており、 履修学生は自分で記入する形をとる。また、課題曲の楽譜はメロディーのみが書かれ た大譜表が掲載されており、楽譜としては云わばのっぺらぼうの状態である。履修学 伴奏形⑤ コー ド奏 の応 用 分散型 伴奏形⑥ コー ド奏 の応 用 アルべルティ型 伴奏型⑤は、伴奏型②のコード奏を分散した形で、学生には視覚的にも音の進行が わかるように指導する必要がある。黒板に伴奏型の楽譜を板書し、上記の譜例中の矢 印を書き入れ、音の進行型を視覚的に捉えられるよう試みた。3拍子の楽曲である課 題曲9「おぼろ月夜」、課題曲 11「ふるさと」、課題曲 15「うみ」の指定伴奏として 4分の3拍子用に応用して使用した。 伴奏型⑥は、アルベルティバスと呼ばれる伴奏形である。 *伴奏形⑥の2倍型は、チャレンジ伴奏としての位置づけでもあるが現場での実用 性が高い伴奏形である。課題曲4「夕やけこやけ」の中間部分、課題曲5「春がきた」、 課題曲6「春の小川」、課題曲8「まきばの朝」の中間部分以外、課題曲 13「もみじ」、 課題曲 17「スキーの歌」での指定伴奏形とした。 上記①~⑥の6種類のコード伴奏づけ実践による授業を、[表2]の授業計画のも と実施した。6種類の伴奏形の音楽的特徴や伴奏形としての役割を知り、歌唱共通教 材以外の子どもの歌や歌謡曲などでも応用して伴奏付が出来るようにすることも目指 している。また、授業で使用する「初等教育課程のための鍵盤ハーモニー入門」のテ キストは、課題曲の掲載法において楽曲タイトル、作詞・作曲者欄は空欄になってお り、履修学生は自分で記入する形をとる。また、課題曲の楽譜はメロディーのみが書 かれた大譜表が掲載されており、楽譜としては云わばのっぺらぼうの状態である。履 修学生は学習の過程で、楽譜内に楽曲形式、指使い、強弱記号、コードネーム、伴奏 形、フレーズ、ブレス記号、歌詞など演奏に必要な様々な音楽的要素を書き込み、演
奏に必要な事項が詰まった楽譜を自分で作成していくことになる。後に現場に出た時 に、振り返った時に役立つ楽譜の作成もこの授業の狙いの一つである。 授業展開の工夫としては、課題曲同士を関連性を持たせて説明したり、効率的に板 書をして課題曲説明を行い出来るだけ個人練習の時間が取れるように試みたり、運指 やポジションが難しい部分においてはテレビ映像における視覚的な学習を効果的に 行った。 Ⅱ .「音楽Ⅰ A」の受講学生の成績結果からの考察 2.1 授業計画における課題曲の進曲状況 授業計画([表2]参照)では、歌唱共通教材 24 曲のうち課題曲 18 曲の修得を目 指す事を提示している。残す課題曲 19 ~ 24 は、これまでの 18 曲の課題曲とは違い、 日本音階を使用したわらべ歌や日本古謡である。歌唱共通教材では、各学年4曲の教 材のうち必ず1曲は日本音階による楽曲が含まれている。小学校学習指導要領(音楽) 第3「指導計画の作成と内容の取扱い」の2の⑶のイでは、歌唱共通教材を含む長い 間親しまれてきた唱歌や各地方において伝承されているわらべ歌や民謡などを取り 上げるようにすることを明記している。「音楽Ⅰ A」の半期の授業では残す6曲のわ らべ歌等について十分に学習する時間がなかなか生み出せないのが現状であり、2013 年~ 2015 年の授業内で課題曲 19 ~ 24 について取り上げることはできなかった。 また、どのクラスの授業においても、課題曲 18 までの習得を目指して授業を行っ てきたが、そのクラスの受講学生の学習状況により、課題曲の進曲状況に多少の差が 見られた。 次の表は、各年度の前期・後期における課題曲の進曲状況を示したものである。 [表 3]「音楽Ⅰ A」第 15 回目の最終授業における課題曲の進曲状況 授業年度 学期 最終進曲状況 受講学生の専攻 2012 年度 前期 課題 16 で終了 数学、国語、心理発達・生涯学習 後期 課題 16 で終了 理科、生涯スポーツ、社会、心理発達 2013 年度 前期 課題 15 で終了 数学、生涯スポーツ、社会 後期 課題 15 で終了 課題 18 →1クラスのみ 生涯スポーツ、生涯学習、教育カウン セリング、国語、社会、理科 2014 年度 前期 課題 17 で終了 理科、数学、国語・生涯学習 後期 課題 16 で終了 心理発達、教育カウンセリング、 生涯学習、生涯スポーツ、社会 2015 年度 前期 課題 16 で終了 生涯スポーツ、教育カウンセリング、 国語、社会 後期 課題 17 で終了 数学、生涯学習、心理発達、理科 [表3]から、課題曲 16 までの進曲で終わった 2012 年度と比較すると、多少進曲
状況は改善されているといえる。しかし、目指す課題曲 18 まで到達できたのは 2013 年度後期の 1 クラスのみであった。受講学生の専攻と照らし合わせてみると、進曲状 況には特に学生の専攻による影響は見られない。 2.2 専攻別学生の成績結果および考察 ①「音楽Ⅰ A」のポイント評価の基準と成績評価法 「音楽Ⅰ A」では、前述のように演奏チェックによるポイントの合計によって評価 がなされる。([表 4]参照)また、15 回授業終了後の定期試験では、演奏チェック時 にすでに合格をもらっている既習曲の中から当日指定された 1 曲を演奏し、そこで得 た評価はこれまでのポイントに加算される。([表 5][表 6]参照)演奏曲は、当日の 演奏直前に教員から指定されるため、試験を受験するに当たって、これまで合格をも らっている全ての既習曲について練習しておく必要がある。 [表 4]「音楽Ⅰ A」の授業内の評価方法 技能・芸術段階 未完成 コード奏 指定伴奏による 表現性がある ポイント評価点 0 1 1.25 1.5 [表 5]「音楽Ⅰ A」の定期試験による評価方法 試験当日指定曲 技能・芸術段階 子どもたちと一緒に歌 うことができないよう な演奏内容である 停まらずに演奏出来る。 既習曲を自己のレパー トリーに出来ている 教育現場で学びを活か していくことができる 演奏内容である 試験による加算 加算ポイント 0 1 2 定期試験は、公開試験形式での実施で、試験中は全電子ピアノのふたを閉めるよう に指示した。学生は演奏する際、教員は、個々の学生の既習曲の中から 1 曲をその場 で指定し、「表5」の評価方法によって3段階で評価を行った。評価結果の傾向とし ては、授業内では 1.5 ポイントでの評価をもらっていたのにもかかわらず0ポイント 評価や 1 ポイント評価になる学生が全体的に多い。日頃使用の電子ピアノとは指の タッチが違うことも関係しているかもしれないが、一度合格した既習曲を自己のレ パートリーとする為の練習をしていない現状が浮かび上がった。 公開実技試験形式で集中してクラスメートの演奏を聴くことは、同じ課題曲の演奏 が演奏者によって様々であることや、緊張や準備不足によって停まってばかりいる演 奏や、音楽的要素を踏まえた表現性のある演奏を聴くことは、自己の演奏を見直し、 演奏の質を高めていく為に欠かせない学習である。試験中は、どのクラスでも演奏者 に対して温かい拍手が送られていた。また、演奏に合わせて身体を揺らす学生や、楽 譜を見ながら一心に聴く学生、日頃は見られないクラスメートのピアノを演奏する姿 に刺激を受けたり、演奏を楽しんだりしている姿も見受けられ、公開実技試験で実施
する意義を実感できた。しかし、公開実技試験時に獲得するポイントを当てにして「可」 の成績を狙う学生もあり、結果、思うような演奏ができずにポイントの加算が得られ ず「不可」となる学生も毎年見られる。([表 6]参照)「不可」となるケースは、他 にも授業の途中であきらめてリタイアしてしまう場合や、著しく公開演奏試験の臨む 態度に問題があった場合であった。 [表 6]「音楽Ⅰ A」取得ポイントによる成績評価ライン 取得ポイント数 7ポイント 以下 8~ 11 ポイント 12 ~ 15 ポイント 16 ~ 19 ポイント 20 ポイント 以上 成績評価 不可 可 良 優 秀 ② 2013 年度(H24 年度)~ 2015 年度(H26 年度)の専攻別学生の成績結果 [図 1] 獲得ポイントの最高点 H 27 = 24.25 H 26 = 23.25 H 25 = 20.75 [図 2] 獲得ポイントの最高点 H 27 = 23.5 H 26 = 25.5 H 25 = 22.25 [図 3] 獲得ポイントの最高点 H 27 = 23.5 H 26 = 20 H 25 = 23
[図 4] 獲得ポイントの最高点 H 27 = 23.5 H 26 = 20 H 25 = 23 [図 5] 獲得ポイントの最高点 H 27 = 23 H 26 = 21.75 H 25 = 21.75 [図 6] 獲得ポイントの最高点 H 27 = 22 H 26 = 22.75 H 25 = 22.5 [図 7] 獲得ポイントの最高点 H 27 = 23.5 H 26 = 20 H 25 = 23
③ 3 年間の成績結果の専攻別考察 ・社会専攻 3年間の成績推移において、全専攻の中で最も変化が少ないと言える。また、「秀」 を得た学生数も3年間において最も少ない。「可」の割合が突出している。ただし、 過去3年間の獲得ポイントは、H27 年度の 24.5 ポイントが全専攻の中で最高点である。 ・国語専攻 平成 27 年度においては、「可」が最も多く、次いで「不可」が多く、「優」や「良」 が他年度に比べ少ない結果となった。また、年度による差が大きいが「可」の割合が 高い。 ・数学専攻 平成 26 年度においては、「良」はゼロであった。平成 26 年度、25 年度においては 「不可」の割合は高いが、平成 27 年度ではゼロであったりと年度によって極端である。 全体では「可」の割合が高い。 ・理科専攻 平成 25 年度は 63.6%と「可」の割合が高いが、H27 年度では、「秀」の割合が過 去 3 年間の中で最も高い結果となった。 ・生涯スポーツ専攻 グラフ結果を視覚的に見ても、社会、国語、数学、理科専攻の結果とは一線を画し ている。平成 27 年度においては、「秀」の割合が 26.7%と全専攻の中でも最も高い。 量の割合が比較的高く、3 割から 4 割の学生が課題曲数 12 曲~ 15 曲を習得している 結果となった。授業においても、スポーツを愛好する学生が多い事から、根気よく努 力する学生や器用に運指できる学生が見られた。 ・教育カウンセリング 3年間の成績推移としては年度によってバラつきがあるが、平成 26 年度、27 年度 において連続して「不可」はゼロであった。 ・生涯学習・心理発達専攻 全専攻の中で、ある成績結果にムラがなく、課題曲習得に対する学生の取り組みの 様子が伺える。特に、平成 26 年度においては、「秀」が 30・8%と「優」が 11・6%と、 16 ポイント以上を獲得した学生は全体の 42% であった。 ④全体考察 全専攻を通した結果としては、やはり「可」の8ポイント以上 11 ポイント以下を 獲得した学生が多かった。「秀」の割合は、生涯スポーツ、生涯学習・心理発達、教 育カウンセリング専攻の学生が圧倒的に多い。主要教科の専攻学生においては特に 「可」の割合が突出している結果であった。各専攻における入学時のピアノや音楽経 験度が影響していることは否めないが、山﨑正・望月たけ美「初等教育課程における 音楽実技の現状と試み」常葉大学紀要(教育学)33 号における先行研究でも考察し たように、未経験者や初心者であってもポイント獲得数が高い学生もあり、課題曲習 得への意欲や取り組みが影響していると考えられる。年度によって受講クラスそれぞ
れに大なり小なり特性が見られるが、最近の傾向としては、「不可」を取らなければ よいとして授業に臨む学生も見られることから、今一度この授業の開講目的と、現場 で求められる教員の資質について理解と周知の必要性を感じる結果であった。 2012 年~ 2015 年の4年間におけるこの授業を履修した学生総数は、798 名となっ ている。常葉大学を卒業し、現場に立つ卒業生に「音楽Ⅰ A」でのコード伴奏づけ 学習の知識や技術の活用度について、追って継続的に調査を実施していきたいと考え る。 (望月たけ美) Ⅲ.アンケート調査結果からみる4年目授業の学生の実際 2015 年度後期授業最終日に、受講学生 73 名(数学専攻 25 名、理科専攻 23 名、生 涯学習学科9名、を対象に以下の内容のアンケートを行った。 [表 7] 2015 年度後期 アンケート内容 1 課題である音楽歌唱共通教材の 24 曲の中で、知っていた曲や今まで歌ったことが ある曲に をつけてください。 2 今回授業で取り組んだ課題で気に入った曲は何ですか?(複数可) 3 上記の選曲理由を具体的に書いてください。(例:歌詞が気に入ったから。メロディー が美しいから。子どものころから慣れ親しんでいるから。等) 4 ハ長調で学習した(C,F,G,G7)のコードの音の構成は理解できましたか? 5 ハ長調の楽譜に書かれている(C,F,G,G7)のコードを見ながら、コード付けが出 来そうですか? 6 ハ長調の楽譜にコードが書かれていない場合、(C,F,G,G7)でコード付けができそ うですか? 7 ハ長調(C,F,G,G7)、ヘ長調(F,B ♭ ,C,C7)、ト長調 (G,C,D,D7) のコードの仕組 みや関係性は理解できましたか? 8 この授業で得た知識、技術を実際の教育の場で生かすことができると思いますか? 3.1 コード付けの理解度 アンケートの結果、設問5「ハ長調の楽譜に書かれている(C,F,G,G7)のコード を見ながら、コード付けが出来そうですか?」の問いに 66%の学生が「できると思う」 「ほぼできると思う」と答えているのに対し、設問6「ハ長調の楽譜にコードが書か れていない場合、(C,F,G,G7)でコード付けができそうですか?」の問いに「できる と思う」「ほぼできると思う」と答えた学生は 43%にとどまっており、「あまりでき ないと思う」と答えた学生が 11%から 30%に増加していることからも、各コードの 種類や弾き方は理解していても、各コードが持つ役割を理解し、実際どんな時に何の コードを使用したらよいか自ら考えることに課題があることが明らかになった。([図 9,10]参照)
また、授業ではハ長調を基礎とし、同じ理論を用いて異なる調(ヘ長調、ト長調) でコード付けができるよう試みたが、設問4「ハ長調で学習した(C,F,G,G7)のコー ドの音の構成は理解できましたか?」の問に 89%の学生が「できると思う」「ほぼで きると思う」と答えているのに対し、設問 7「ハ長調(C,F,G,G7)、ヘ長調(F,B ♭ ,C,C7)、 ト長調 (G,C,D,D7) のコードの仕組みや関係性は理解できましたか?」の問いに「で きると思う」「ほぼできると思う」と答えた学生は 56%と減少しており、調が変化し てもポジション移動を行うことで、主要コードネームを使用しコード付けができると いう理論的な理解に課題があることが明らかになった。([図 8,11]参照)これに関し ては 2012 年より本授業を開始して以降、移調の理解がスムーズに行われるよう、課 題曲の取り組む順番を精査し、理論的な説明を増やすなどして取り組んできたため、 理解状況は年々良くなっていると考えるが、以前として学生にとっては難しい課題の 一つであるようだ。 [図 8]設問 4 回答結果 [図 9]設問 5 の回答結果 [図 10]設問 6 の回答結果 [図 11]設問 7 の回答結果
授業開始時は、実際の小学校現場ではピアノを弾くことができる先生が音楽の授業 を受け持つであろう、と他人事のように楽観視している学生もおり、本授業の必要性 を認識できない学生もいたが、設問8、「この授業で得た知識、技術を実際の教育の 場で生かすことができると思いますか?」の問いに 88%の学生が「そう思う、やや そう思う」と答えており、大多数の学生がこのコード付け伴奏の授業を通して実際の 教育現場で音楽の授業を指導するにあたりどのような知識技能を身につけるべきか理 解していると考えることができる。([図 12]参照) [図 12]設問 8 の回答結果 3.2 小学校歌唱共通教材について アンケート設問 1 により共通歌唱教材に関する学生の認知度を調査し、[図 13]の ような結果が得られた。 今回の調査で、低学年~中学年で取り扱われる楽曲の認知度が比較的高く、「子もりう た」、「冬げしき」、「スキーの歌」、「越天楽今様」など高学年で取り扱われる楽曲の認知度 が低い傾向にあることがわかった。これは低学年、中学年では「かたつむり」や「うみ」 に挙げられるように、動物や風景など身近にあるものを題材とした親しみやすい楽曲が 多く、旋律やリズムも発達段階に即していて取り組みやすいのに対し、高学年になると 鑑賞や表現活動の内容がより深いものとなり、様々な楽曲でハーモニーや旋律の美しさ など音楽的要素の素晴らしさを感じ取る経験をすることで、個々の音楽的好みが形成さ れつつあり、そんな発達段階の中で、歌唱共通教材のような斉唱でシンプルな楽曲はそ の良さを認識しづらいことが考えられる。また、同教材の最大の特徴である「歌詞を理 解し情景を思い浮かべて表現する」という音楽美学を追求した活動を行うためには、高 い音楽的感性が必要であり、難易度が高いゆえ歌唱共通教材を敬遠して他の教材に取り 組みがちになる「歌唱共通教材離れ」という現象が起こっているのではないかと推測する。 また、この調査結果でもう一つ注目すべき点は、「かくれんぼ」、「うさぎ」、「子も りうた」、「越天楽今様」といった各学年 1 曲設定されているわらべ歌や日本古謡の認 知度が非常に低かったことである。これは日本独自の音階や調性を持つ、古来より我 が国に伝承されている歌に対して親しみを持っている学生が少ないということであ
る。「学習指導要領解説 音楽編」 第 1 章総説 2. 音楽科改訂の趣旨では、「国際社 会に生きる日本人としての自覚の育成が求められる中、我が国や郷土の伝統音楽に対 する理解を基盤として、我が国の音楽文化に愛着をもつとともに…(中略)…学校や 学年の段階に応じ、我が国や郷土の伝統音楽の指導が一層充実して行われるようにす る。」と示されており、日本のうたの魅力を感じ、それらを伝え指導することができ る教員を育成する必要がある。 さらに、設問2「今回授業で取り組んだ課題で気に入った曲は何ですか?」の問い により学生から人気のある曲を調査した結果、[図 14]のような回答結果が得られた。 授業では、学生が今まで聴いたことがない楽曲に取り組む際に「知らないから、ど んなリズムがわからない。」「どう弾いたら良いかわからない。」と、躓きが見られる 場合もあった。しかし、まきばの朝は認知度が低いにもかかわらず、気に入った曲で も上位に入っていたり、気に入った曲の選曲理由に「スキーの歌のリズムが楽しいか ら」、「一生懸命練習したから」といった回答もあり、「知らない曲=好きではない」 ということではなく、単にその曲に接してこなかっただけで、楽曲に取り組むことで その魅力を十分に感じとることができると考えられる。また、「うみ」や「日のまる」 の人気が低いが、これらは第 1 学年の教材であり、ピアノ伴奏の難易度は高くない。 [図13]設問 1 の回答結果《学生による歌唱共通教材曲の認知度》 今回の調査で、低学年~中学年で取り扱われる楽曲の認知度が比較的高く、「子も りうた」、「冬げしき」、「スキーの歌」、「越天楽今様」など高学年で取り扱われる楽曲 の認知度が低い傾向にあることがわかった。これは低学年、中学年では「かたつむり」 や「うみ」に挙げられるように、動物や風景など身近にあるものを題材とした親しみ やすい楽曲が多く、旋律やリズムも発達段階に即していて取り組みやすいのに対し、 高学年になると鑑賞や表現活動の内容がより深いものとなり、様々な楽曲でハーモニ ーや旋律の美しさなど音楽的要素の素晴らしさを感じ取る経験をすることで、個々の 音楽的好みが形成されつつあり、そんな発達段階の中で、歌唱共通教材のような斉唱 でシンプルな楽曲はその良さを認識しづらいことや、同教材の最大の特徴である「歌 詞を理解し情景を思い浮かべて表現する」という音楽美学を追求した活動を行うため には、高い音楽的感性が必要であり、難易度が高いゆえ歌唱共通教材を敬遠して他の 教材に取り組みがちになる「歌唱共通教材離れ」という現象が起こっているのではな いかと推測する。 また、この調査結果でもう一つ注目すべき点は、「かくれんぼ」、「うさぎ」、「子も りうた」、「越天楽今様」といった各学年1 曲設定されているわらべ歌や日本古謡の認 知度が非常に低かったことである。これは日本独自の音階や調性を持つ、古来より我 13 17 1819 2225 3032 33 37 3841 4547 6061 65 6566 6770 7173 73 0 10 20 30 40 50 60 70 80 越天楽今様18% スキーの歌23% 冬げしき25% かくれんぼ26% うさぎ30% 子もりうた34% まきばの朝41% こいのぼり44% 日のまる45% おぼろ月夜51% われは海の子52% ひらいたひらいた56% とんび62% さくらさくら64% 春の小川82% 茶つみ84% ふるさと89% ふじ山89% もみじ90% うみ92% 春がきた96% むしのこえ97% 夕やけこやけ100% かたつむり100% 人数/(73人中) [図 13]設問 1 の回答結果《学生による歌唱共通教材曲の認知度》
小学校教員養成課程における音楽技能習得の実践 気に入った曲の選曲理由に「簡単だったから」という回答もあったが(回答全体数の 8%)、「メロディーが好きだから」、「ゆったりした感じが好きだから」、「盛り上がる ところが好きだから」、「リズムが気に入ったから」といった音楽的な好みに関する回 答が全体の 58%と多く、人気は難易度に左右されるのではなく、それぞれの楽曲の 特徴をとらえ、その音楽的要素を感じ取っていることに起因することがわかった。([表 8]参照) [表8]設問3の回答結果《気に入った楽曲として選択した理由》 メロディーが好きだから、美しいから 23 人 昔から知っていた曲だから 16 人 リズムが好きだから 14 人 曲想が好きだから(ゆったりとした感じが好き、盛り上がるところが好き、など) 10 人 一生懸命練習した曲だから、特に練習した曲だから 9 人 簡単だから、弾きやすかったから 8 人 上手に弾けるようになったから 6 人 コードのひびきや変化が好きだから、伴奏が好きだから 5 人 楽しい曲だから 3 人 歌詞が好きだから 1 人 (明和史佳) 生きる日本人としての自覚の育成が求められる中,我が国や郷土の伝統音楽に対する 理解を基盤として,我が国の音楽文化に愛着をもつとともに…(中略)…学校や学年 の段階に応じ,我が国や郷土の伝統音楽の指導が一層充実して行われるようにする。」 と示されており、日本のうたの魅力を感じ、それらを伝え指導することができる教員 を育成する必要がある。 さらに、設問 2「今回授業で取り組んだ課題で気に入った曲は何ですか?」の問い により学生から人気のある曲を調査した結果、以下のような回答結果が得られた。 [図14]設問 2 の回答結果《授業で取り組んだ歌唱共通教材の楽曲の人気度》 授業では、学生が今まで聴いたことがない楽曲に取り組む際に「知らないから、ど んなリズムがわからない。」「どう弾いたら良いかわからない。」と、躓きが見られる場 合もあった。しかし、まきばの朝は認知度が低いにもかかわらず、気に入った曲でも 上位に入っていたり、気に入った曲の選曲理由に「スキーの歌のリズムが楽しいから」、 「一生懸命練習したから」といった回答もあり、「知らない曲=好きではない」という ことではなく、単にその曲に接してこなかっただけで、楽曲に取り組むことでその魅 力を十分に感じとることができると考えられる。また、「うみ」や「日のまる」の人気 が低いが、これらは第 1 学年の教材であり、ピアノ伴奏の難易度は高くない。気に入 5 5 6 6 7 8 8 11 11 13 15 16 17 19 19 19 22 0 5 10 15 20 25 日のまる7% こいのぼり7% 冬げしき8% うみ8% 茶つみ10% おぼろ月夜11% スキーの歌11% かたつむり15% もみじ15% 春がきた18% 夕やけこやけ21% とんび22% ふるさと23% むしのこえ26% 春の小川26% まきばの朝26% ふじ山30% 人数/(73人中) [図 14]設問 2 の回答結果《授業で取り組んだ歌唱共通教材の楽曲の人気度》
3.3 受講学生がアンケートで「気に入った」と答えた課題曲の分析 アンケート調査による設問2の「今回授業で取り組んだ課題で気に入った曲は何で すか?」という問いに対し、「気に入った」と答えた課題曲の上位2曲までに視点を 当て、学生が「気に入った」と答える要因となった事項について、授業の展開を踏ま えた上で考察し、質の高い演奏に導くための今後に生かす。 学生が最も気に入ったと回答したのは、第2学年の教材である「ふじ山」であった。 この要因としては、静岡県内の学生にとっては心情的にも思い入れのある楽曲であ ることが言える。また、静岡市内の横断歩道では青信号時の歩行者へのサインとして 「ふじ山」を用いているところが多く、その点では日常の中で最も多く耳にする文部 省唱歌だと言えるかもしれない。授業内では、「ふじ山」での学習のポイントについ て次のように伝えていた。 <譜例 9 >「ふじ山」5 小節目~ 8 小節目 <譜例 10 >「ふじ山」13 小節目~ 16 小節目 付点四分音符十八分音符によって「ふじ山」の壮大を表現しているので、付点四分音符の 長さを良く感じて演奏する。付点四分音符と八分音符は3:1の長さの関係である。 F→G 7 の進行は、F音が共通音である事がポイントである。 楽曲の中で最も特徴ある部分。言葉の抑揚と連携しているフレーズである。 目指す伴奏形は④の2倍型(<譜例5>参照) 伴奏形は、弱拍部分をスタッカート気味に弾いたり、重く弾くと富士山の壮大さ を欠いてしまう。このニュアンスの違いを、教員の伴奏によって提示。
考察: 受講学生は知っている楽曲であったことから、メロディーを歌うことが出来、さら に歌詞とリズムを連動させて練習する学生も見られ、全体的に習得が速かった。また、 基本的に 1 小節に1つのコードで伴奏付が出来るため、学習しやすい傾向にあった。 伴奏形をコード奏で演奏する学生であっても、比較的自信を持ってコードを抑えてい くことが出来る課題曲であった。また、コード奏であっても<譜例 10 >の部分にお いては思いを乗せて演奏する学生が多く見られた。これらが「気に入った」と答えた 要因であろう。 学生が「気に入った」と答えた課題曲第 2 位は、第 4 学年の教材である「まきば の朝」であった。テキストにおいて「まきばの朝」はイントロを含めると全 24 小節 の楽曲であり、歌唱共通教材 24 曲の中では最も小節数が多い。また、楽曲形式にお いても通作的であり、4 小節のフレーズごとに Intro. → a → b → c →d→ e と一度も 同じ小楽節の登場はない。更に b、d、e のフレーズは弱拍から始まっており、各フ レーズの入りを意識しないと拍取りが乱れてしまう。また、メロディーで使われてい る音符の種類も四分音符、付点四分音符+八分音符を主体にして、基本的な音符がす べて登場するためハ長調の課題曲 9 曲の中では比較的難易度は高い。増して、演奏で 提示されているテンポは♩= 132 であり、動きを持った楽曲である。使用されている 音階構成音を見てみると、最も「気に入った」と答えた「ふじ山」は、ハ調長音階 CDEFGABC の全ての構成音が使用され、学生にとっては比較的なじみのある西洋の 音階によるメロディーである。しかし、「まきばの朝」では、intro、a 部分はハ調長 音階が主体となっているが、b、c、d、e 部分においては CDEGAC の四七抜き音階 が用いられており、楽曲全体が唱歌の色の濃いメロディーになっていると言える。そ れにもかかわらず学生が「気に入った」と回答したのはなぜなのか実に興味深い。 授業内で伝えた「まきばの朝」の学習ポイントを次に示す。 <譜例 11 >「まきばの朝」指定伴奏形による楽譜 イントロの音域が楽曲中で最も高く、8度の跳躍があるためエネルギーを感じる メロディーになっている。 アルベルティバスによる伴奏で開始。左右の音量のバランスに注意する。
考察: 24 小節の中で常に流動的な変化があり、通作的に次々に現れるメロディーは四七 抜き音階の特性を持っていて耳に残りやすい。弱起によって始まる3つのフレーズも こつを掴むと面白さがある。学生に、アルベルティと1対2伴奏形の2種類を使い分 けて使用することを伝えると、以外にも嬉しそうな反応を見せた。特に多くの学生か ら質問があったのは、終止感を持ったdフレーズが終了した後、eフレーズへ入る前 の1対2伴奏の処理の方法についてであった。どうやってアルベルティに復帰したら よいのか、どのように演奏すると効果的なのか、納得して弾きたくて仕方がない様子 歌詞とのタイアップによるブレス位置 音高線に伴いPから徐々に音量を増していく 1:2音による伴奏形の2倍型に変わることで曲想が変化する 20 小節目は一旦停止することを強調するように 3拍目の後を四分休符にしても良い 四七抜き音階の上行 アルベルティバスへの復帰によって、 楽曲全体に統一性が生まれる。 跳躍が多いメロディー。指使いの重要性。
が見受けられた。Coda 的な要素を兼ね備えたeフレーズの冒頭は、四七抜き音階の 上行形がそのままメロディーに使用されて表れることや、最後の3小節部分の二分音 符による1オクターブ内を下降するメロディー部分も、この部分まで到達できたこと を楽しんで演奏しているようであった。このことから、学生が「気に入った」と思え る要素が多々ある課題曲であったことが伺える。2種類の伴奏形の使用によって、各 伴奏形の特性が生かされ音楽的により豊かになると感じると、多少難易度が高い課題 であっても習得に意欲を見せる学生が見られるのは、音楽科授業の成せる価値である。 Ⅳ.今年度の新しい取り組みと今後の課題 「音楽ⅠA」における 2012 年~ 2015 年の4年間に渡る取り組みの中で、常に課題 として浮上していたのが、各期全 15 回の授業の中で歌唱共通教材 24 曲の課題量であっ た。「表2」の授業計画のもと実施してきたが、[ 表3] に示すように課題 18 曲の習 得まで到達できたのは1クラスのみであった。また、コード付け伴奏を実践する際、 メロディーと歌詞との連動性はあまりにも重要であり、この点においては改善の必要 があった。また、授業回数との兼ね合いからこれまで手付かずのまま終わっていた課 題 19 ~課題 24 にあるわらべ歌・日本古謡6曲の扱いについても課題であった。 そこで、2016 年度から新しい試みのもと授業を展開している。まず、「音楽Ⅰ A」 を前期と「音楽Ⅰ B」後期に開講し、「音楽Ⅰ B」は選択授業とし、歌唱共通教材 24 曲を学年ごとに分け、前期で第 1 学年、3学年、5学年の 12 曲、後期で第2学年、 第4学年、第6学年の 12 曲扱うことにした。また、授業は歌唱とコード付け実践に 分けられ、15 回授業の内5回を歌唱、10 回をコード付け実践授業と位置づけた。歌 唱担当の教員を1名、コード付け実践担当の教員を2名とし、両授業が連携をとる方 法で前期 15 回の授業が進められた。このことから、歌詞を理解したうえでコード付 けを実践することが可能になり、課題曲 12 曲を 10 回のコード付け授業で扱う際にも、 楽曲の特徴や雰囲気、メロディーを知った上でコード付けを行うことでスムーズな授 業展開が可能になっている。また、前期冒頭の授業で学習する、課題曲に入る前の導 入部分に当たる練習曲を用いた授業を見直し、効率的に授業を行うことで出来るだけ 課題曲に取り組める時間を確保できるように試みた。更に、最終定期試験で、弾き歌 い演奏による公開試験を実施することで、歌唱授業とコード付け授業での取り組みが 相互に活かされることを目指した。しかし、前期定期試験においては、弾き歌い演奏 ということで受講学生の到達度は様々であった。この点において、弾き歌い演奏を目 指すために必要な実技面での習得について課題が残った。 この授業を履修する学生が、より実用的で実践的な音楽技術を身に付け、教育の現 場に立った折、ほかの教員にはない特性を備えた人材として活躍することを強く望 む。後期の選択科目「音楽Ⅰ B」においても、「音楽Ⅰ A」受講者が履修を希望し現 在も熱心に取り組んでいる。2016 年度から始めたこの新体制での取り組みについて は、今後の研究としてより良い授業のあり方を模索し続けていきたい。 (望月たけ美)
Ⅴ.全体考察 研究の結果、小学校教員志望者のコード付け伴奏技能習得における効果的な実践方 法と、現在の学習者の現状、課題が明らかになった。 ピアノ演奏技能の習得には忍耐強く繰り返し練習を行う必要があり、担当教員が各 学生の進捗度や特徴を見極め、根気よく指導を行うことがなにより重要である。ピア ノ経験者に対しても個々にあった高いレベルでの音楽的指導を行い、音楽に関する知 識技能を深め、さらに高い音楽的素養と資質を身につけるためには個人指導が欠かせ ない。したがって集団形態の授業と個人指導の両方を取り入れた授業は非常に効果的 であるといえる。初回授業では自分の思うように指が動かなかった学生も、15 回の 授業で楽譜を読むことやピアノを弾くという行為に慣れ、最終的にほぼ全員が両手 で演奏をすることができるようになった。一方で様々な課題も明らかになった。ま ず、歌唱共通教材に関する課題であるが、学習する以前に、歌唱共通教材の楽曲を知 らないことにより、課題への導入がスムーズの行われない場合があった。しかし取り 組み始める際に躓きがあっても、楽曲に触れることでその魅力を感じ取っていること がアンケートの結果から明らかになり、この教材を通してコード付け伴奏によるハー モニーの豊かさを体験し、リズムや旋律の流れなどの音楽的特徴が音楽の美しさや面 白さを形づけていることを知ることで、児童に音楽の美しさや楽しさを感じてもらう ことの重要性を身をもって認識することができると考えられる。また、その楽曲の魅 力を知らないままでいることは将来教員になった際に、子ども達に我が国に昔から歌 い継がれてきた美しい伝統文化があることを引き継ぐことができないということであ る。したがって歌唱共通教材は全曲学習することが望ましい。さらに演習面における 課題として、楽曲をこなすために弾くことだけに一生懸命になり、コード付け伴奏が 効率的かつ応用力のある技能であることを認識できず、自分でコード付けを行う力や、 調が変わった際に基本のコードを応用して伴奏付けを行う力の習得にまで至らないこ とが挙げられる。これらは目先の目標ではなく、教員としてどのような能力を身につ ける必要があるか、小学校教員養成課程全体の学びを通した上での目標をしっかりと 意識させることが重要である。習得すべきは子どもたちが気持ちよく歌うことができ るための伴奏であり、ただ弾けるようになっただけでは、実際の現場での実践力とし ては弱く、目標を到達したとはいえない。自らが気持ちの良い演奏をし、表現するこ との楽しさや音楽の美しさを体験することによって音楽科教育の意義、目標を理解で きた時こそ、将来教員になった際に役立つ技能を身につけた、と言うことができるで あろう。それは同時に豊かな人間性を育成するために必要な「教員の資質」に大きく 関わることである。 (明和史佳)
引用・参考文献 ・山﨑正、望月たけ美「初等教育課程における音楽実技の現状と試み」 常葉学園大学研究紀要(教育学部)第 33 号 2013 年 163 頁~ 192 頁 ・小学校学習指導要領 平成 20 年 3 月 文部科学省 ・小学校学習指導要領解説 音楽編 平成 20 年 8 月 文部科学省 ・山﨑正、望月たけ美「初等教育課程のための鍵盤ハーモニー入門」 2013 年 篠原印刷 ・有本真紀、阪井恵、山下薫子「2011 年改訂版 教員養成課程 小学校音楽科教育法」 2011 年 教育芸術社 ・初等科音楽教育研究会(編)「最新 初等科音楽教育法[改訂版]小学校教員養成 課程用」2011 年 音楽之友社 ・小原光一 他「小学生の音楽 1 ~ 6」2015 年 教育芸術社 ・湯山昭 他「あたらしいおんがく 1 ~ 6」2011 年 東京書籍 ・新実徳英 他「小学音楽 おんがくのおくりもの 1 ~ 6」2015 年 教育出版 ・吉富功修(編集)「音楽科 重要用語 300 の基礎知識」2005 年 明治図書