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<原著>壮年期2型糖尿病患者の健康行動のレディネスと生活状況との関係 : 血糖コントロール非良好者の食事摂取状況を中心に 利用統計を見る

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(1)

壮年期 2 型糖尿病患者の健康行動のレディネスと

生活状況との関係

̶血糖コントロール非良好者の食事摂取状況を中心に̶

The Correlation between Health Behavior Readiness and Lifestyle in

Middle-Aged Patients with Type 2 Diabetes Mellitus

– A focuses on Dietary Intake in Patients with High HbA1c Level –

瀧本まどか

1)

,中村美知子

2)

TAKIMOTO Madoka, NAKAMURA Michiko

要 旨

本研究の目的は,外来通院中の壮年期 2 型糖尿病非インスリン療法患者の健康行動のレディネスと食事摂取状 況の特徴,ならびに関係を明らかにすることである。対象患者 48 名に自記式質問紙調査と面接調査を行い, HbA1c6.5%以上患者(以下 非良好群)と HbA1c6.5%未満患者(以下 良好群),男女の 4 群で比較検討した。 その結果,非良好群男女の健康行動のレディネスは,良好群との有意な差はなかった。非良好群男女の食事摂 取状況は,良好群との男性同士間,女性同士間に有意な差はなかった。良好群男性では非良好群男性に比べ,レディ ネスと食事摂取に多くの負相関がみられ,食事療法へのレディネスに沿った介入は効果がある可能性が示された。 一方,非良好群女性ではレディネスと食事摂取に多くの負相関が認められたが血糖・体重コントロール状況との 間に乖離が見られた。これは女性の特徴を示すとも考えられ,今後の糖尿病指導において念頭に置く必要がある。

The purpose of this study is to clarify the correlation between health behavior readiness and dietary intake in Middle-Aged Patients with type 2 diabetes mellitus. The data on Health behavior readiness and dietar y intake of 48 subjects were collected respectively through Index of Readiness and through a questionnaire on eating using the 24-hour recall method. We defi ned 4 groups of the man and woman of subjects as “over 6.5 of HbA1c level (HH group)” and “below 6.5 of HbA1c level (NH group)”

The results indicate that the scores of health behavior readiness were not signifi cantly different between HH group and NH group. The dietary intakes were not signifi cantly different between HH male group and NH male group, between HH female group and NH female group. A signifi cant negative correlation of NH male group of readiness and the meal intake situation was more than that of the HH male group. This shows that the male is more effective intervention tailored to a patient's readiness. Although a signifi cant negative correlation of HH female group of readiness and the meal intake situation was more than that of the NH female group, lose touch with the blood sugar and the weight control situation. This result shows the feature of female. The nurse should be keeping in mind these results in diabetic dietary intervention.

キーワード 壮年期 2 型糖尿病患者,HbA1c 値,健康行動のレディネス,食事摂取状況

Key Words Middle-Aged Patients with Type 2 Diabetes Mellitus, HbA1c Level, Health Behavior Readiness, Dietary Intake

受理日:2010 年 1 月 26 日

1) 元山梨大学大学院医学工学総合教育部:

Ex-Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering(a master’s course),University of Yamanashi 2) 山梨大学大学院医学工学総合研究部(臨床看護学講座):

Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering(Clinical Nursing),University of Yamanashi

Ⅰ . はじめに

糖尿病は厚生労働省の平成 19 年度国民健康・栄養調 査によって,「糖尿病が強く疑われる人」は約 890 万人, 「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせると約 2,210 万人と推計され,この割合は,40 歳以上では,全 体の 29.0%を占めている1)。糖尿病は,慢性疾患であり,

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生涯にわたって合併症予防のため血糖コントロールをす ることが重要である2)。食事療法は,糖尿病管理や糖尿 病自己管理教育において,不可欠な構成要素であり,有 効性についてはすでに広く認められている3)。保健医療 者は,本人の保健行動の動機付けを助け,負担を軽減す るのを助ける役割を担っている4)。 しかし,糖尿病や栄養について多くの誤解が存在し5) HbA1c(hemoglobin A1c, グリコヘモグロビン A1c:%) が高い患者は,食べ過ぎや運動不足を指摘され,「意思 が弱い」「やる気がない」と思われがちである。糖尿病教 育の効果は時間とともに低下することが指摘されている6)。 また,食事療法の必要性を理解していても実行できない 人の存在も明らかにされている7)。ライフスタイルを変 えることを受け入れる準備が出来ていない患者に繰り返 し教育することは,患者と医療者両方にとって,ストレ スとなることが指摘されており8),患者が行動を変える ことのできる準備性(以下:レディネス)に合わせた個別 の指導が必要である。 近年,欧米では患者が行動を変えるレディネスを理解 するために行動理論の枠組みを用いて介入していく研究 が行われている9)10)。糖尿病の療養行動とレディネスの 関係については,主に米国を中心に研究されている。食 事療法や運動療法を含む療養行動のレディネスを把握す ることが,行動を変える動機付けの指標になり11)レディ ネスに沿った介入をすることで血糖や HbA1c が改善す ることが報告されている12)∼ 14)。 我が国の糖尿病患者教育においては,HbA1c や体重 などの身体的指標だけで生活状況を判断されやすく,男 女の区別,準備状態に関係なく,一律に知識提供型の指 導をされていることが多い現状である。糖尿病の発症は, 仕事,家庭において様々な役割を求められる壮年期に多 い。そのため,糖尿病患者のレディネスや,レディネス と生活状況との関係について調査の必要があると思われ る。

Ⅱ . 目的

本研究は,壮年期 2 型糖尿病非インスリン療法患者, 特に血糖コントロール非良好患者の健康行動のレディネ スと生活状態(主に食生活)の特徴を明らかにし,血糖コ ントロール非良好患者の生活状態に応じた指導に活用す ることを目的とした。

Ⅲ . 用語の操作的定義

1.  健康行動のレディネス:健康行動に影響する自己の 心理的準備状態のことである。主な要素として「行動の 再評価」「目標戦略」「目標への決意」を含む10)。段階 的に高めていくことで,行動が変化していくとされる。 2. 血糖コントロール非良好者:調査日当日の HbA1c6.5% 以上 8.0%以下の非インスリン療法者とする。

Ⅳ . 方法

1. 調査対象 中規模民間病院,糖尿病外来通院中の 40 歳以上 65 歳 未満,2 型糖尿病非インスリン療法者で,食事療法に関 わる重篤な疾患,認知障害,精神障害,糖尿病性腎症第 4 期以上を除く。本研究の調査協力の同意が得られた対 象は,52 名であったが,そのうち 4 名は,境界型 2 型 糖尿病だったため,48 名(92.3%)を有効対象とした。 2. 調査期間 2007 年 6 月∼ 10 月 3. 測定用具とデータ収集方法 1) 基本的属性:性別,年齢,教育歴,職業,家族形態, 調理者,既往歴,罹患年数,合併症,治療内容,薬 剤,身長,体重,調査日当日の血液生化学データ (HbA1c:hemoglobin A1c,BG:blood glucose,

TP:total protein, Alb:albumin,T-cho:total cholesterol, TG:triglyceride,HDL-C:high-density lipoprotein- cholesterol,LDL-C: low-density lipoprotein-cholesterol)。 2) レディネス: (1) 行動変容の変化のステージ9)の無関心期,関心期, 準備期,実行期,維持期の 5 段階で測定した。 (2) Index of Readiness10),3 下位尺度・9 項目から成る。 各項目は VAS(0 ∼ 100)で測定した。値が高いほど, レディネスが高いことを示す。 3) 食事摂取状況:24 時間思い出し法による調査日前 日の食事摂取量を面接にて調査した。摂取量(g)は, 料理や食品の画像を示し確認した。エクセル栄養君 ver.4.0(栄養価計算ソフト,建帛社) を使用し摂取 エネルギー,栄養素別摂取量,食品群別摂取量,栄 養素別摂取構成比を算出した。 4) 測 定 用 具 の 信 頼 性・ 妥 当 性 の 検 討:Index of Readiness の 英 文 献 に お け る 下 位 尺 度 毎 の Cronbach のα係数は 0.74 ∼ 0.84。妥当性は,心疾 患患者を対象に,Health Locus of Control Scale15), Health Value Scale16)との相関10)や肝疾患,糖尿病 患者対象の研究14)17)で検証されている。本尺度は開 発者から尺度使用,翻訳の許可を得て,専門の翻訳 家による翻訳を実施し,調査者に判読可能かプレテ ストを実施した上で使用した。

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4. 分析方法

有効対象者 48 名を日本糖尿病学会による血糖コント ロール指標18)をもとに調査日当日の HbA1c6.5%以上を 血 糖 コ ン ト ロ ー ル 非 良 好 群( 以 下, 男 性 high level HbA1c male:HH-M,女性 female:HH-F),HbA1c 6.5%未満を血糖コントロール良好群(以下,男性 non high level HbA1c male:NH-M,女性 female:NH-F) の 4 群に分けた。4 群間の差をみるために,一元配置の 分散分析を行った。4 群の Index of Readiness 得点(0 ∼ 100)と食事摂取量(g)との関係には,Spearman の積率 相関係数を用いた。これらの統計解析には SPSS 11.0J for Windows を使用し,有意水準を 5%未満とした。 5. 倫理的配慮 本研究は,山梨大学倫理委員会の承認を得た上で実施 した。調査対象者には,研究者が口頭と書面にて研究目 的と方法,権利の保障,匿名性,任意性について説明を 行った。その際,調査の参加を拒否しても不利益を被ら ないこと,同意した場合であっても随時これを撤回でき ること,を説明し,調査への協力・同意が再確認できた 者については署名を得た。

Ⅴ . 結果

1. 対象者の特徴(表 1) 対 象 者 の 性 別 は, 男 性 26 名(54.2 %), 女 性 22 名 (45.8%),平均年齢は男性 54.4 ± 6.3 歳,女性 55.5 ± 5.7 歳で有意差はなく,有病期間は,HH-M 群 5.0 ± 3.1 年, NH-F 群 1.7 ± 1.7 年間で有意差が認められた。

BMI(body mass index:㎏ /m2)の平均は,4 群とも 22 以上であり有意差はなかった。BG(blood glucose, 随時血糖:mg/dl)は,4 群間で有意差はなかった。TG (triglyceride, 中 性 脂 肪 ),HDL-C(high density

lipoprotein cholesterol, 善玉コレステロール),LDL-C (low density lipoprotein cholesterol, 悪玉コレステロー

ル)は,4 群間で有意差はなかった。 本 人 が 調 理 し て い た 割 合 は,HH-F 群 が 100 % で, HH-M 群は 15.4%であった。対象者の行動変容の変化の ステージでは,4 群ともに 6 割以上が,「自分なりにやっ ている」の準備期だった。「指示通りにするつもりはない」 「指示通りにやっている。始めて 6 ヶ月以内である。」と いうステージはいなかった。 有職者 11(84.6) 5(62.5) 12(92.3) 8(57.1) 独居 1(7.7) 2(25.0) 2(15.4) 0(0.0) 本人調理 2(15.4) 8(100.0) 3(23.1) 13(92.9) 変化のステージ7):食事療法 0 2(15.4) 1(12.5) 0(0.0) 2(14.3) 1 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 2 1(7.7) 0(0.0) 1(7.7) 0(0.0) 3 9(69.2) 7(87.5) 9(69.2) 9(64.3) 4 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 5 1(7.7) 0(0.0) 3(23.1) 3(21.4) 1)HH 群:血糖コントロール非良好群,M: 男性,F: 女性 NH 群:血糖コントロール良好群,M: 男性,F: 女性 2)*p<0.05

3)BMI:body mass index: 体重(kg)/(身長 m)2

,HbA1c は安定型 HbA1c ,BG は随時血糖,TP は総蛋白,T-cho は総コレステロール,TG は中性脂肪, HDL-C は HDL コレステロール,LDL-C は LDL コレステロールである。TP,HbAlc,T-cho は,HH-F 群は(n = 7)である。 4)HH-M 群と NH-F 群との比較 5)HH-M 群と NH-M 群との比較 6)NH-M 群と NH-F 群との比較 7)変化のステージ 0:医師からの指示なし。1:指示通りにするつもりはない。 2:指示通りに始めようかとは考えている。 3:自分なりにやって いる。 4:指示通りにやっている。始めて 6 ヶ月以内である。 5:指示通りにやっている。6 ヶ月を超えて続けている。 表 1 対象者の特徴−非良好群・良好群と男性・女性の比較− HH 群1) NH 群1) P2) M(n = 13) F(n = 8) M(n = 13) F(n = 14)

項目3) Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD

年齢(歳) 53.2 ± 5.6 57.9 ± 3.2 55.6 ± 7.0 54.2 ± 6.4 有病期間(年) 5.0 ± 3.1 6.3 ± 4.8 4.4 ± 4.5 1.7 ± 1.7 *4) BMI(kg/m2 ) 27.2 ± 6.0 26.7 ± 3.4 26.3 ± 3.7 23.4 ± 3.2 HbA1c(%) 6.8 ± 0.3 7.1 ± 0.4 6.1 ± 0.3 6.0 ± 0.4 BG(㎎ /dl) 166.1 ± 40.8 148.4 ± 16.3 150.1 ± 27.5 132.2 ± 30.4 TP(g/dl)4) 7.2 ± 0.2 7.2 ± 0.3 6.8 ± 0.4 7.3 ± 0.4 *5)6) T-cho(㎎ /dl) 194.7 ± 23.4 194.9 ± 42.8 182.5 ± 31.3 184.4 ± 31.7 TG(㎎ /dl) 171.2 ± 89.9 152.0 ± 87.6 130.2 ± 43.9 121.6 ± 86.5 HDL-C(㎎ /dl) 54.6 ± 10.1 57.2 ± 15.8 55.1 ± 12.5 58.4 ± 14.9 LDL-C(㎎ /dl) 111.8 ± 25.7 115.4 ± 27.7 105.6 ± 26.1 104.9 ± 28.1 n(%) n(%) n(%) n(%)

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2. 対象者のレディネスの特徴(表 2) レディネス尺度では,すべての項目において,4 群間 に有意差はなかった。『行動の再評価』の「健康管理をし なければ病気になるかもしれない」「生活態度を変える 必要がある」の平均得点は,4 群ともに 70 点を超えてい た。また,『目標戦略』の「生活にあった健康管理法を考 えた」の平均得点は,4 群ともに 55 点以下であった。 3. 対象者の食事摂取の特徴(表 3) 対象者の食事摂取状況の特徴は,摂取エネルギーは, HH-M 群(2082.2 ± 346.5kcal) と HH-F 群(1403.4 ± 451.9kcal)間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た が,NH-M 群 と 表 2-2 対象者の準備性(レディネス尺度)の特徴−非良好群・良好群と男性・女性の比較− HH 群1) NH 群1) P2) M(n = 13) F(n = 8) M(n = 13) F(n = 14)

項目 Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD n.s

行 動 の 再 評 価 健康管理をしなければ病気になるかもしれない 74.2 ± 33.2 89.0 ± 19.2 72.0 ± 18.4 84.6 ± 18.1 健康管理に自信がある3) 40.7 ± 28.7 54.0 ± 19.7 51.8 ± 23.8 53.0 ± 25.6 生活態度を変える必要がある 74.9 ± 20.0 79.9 ± 17.6 76.4 ± 15.9 82.4 ± 15.8 目 標 戦 略 健康管理のため新しい生活設計をした 34.6 ± 30.4 52.5 ± 14.9 51.5 ± 31.8 62.1 ± 25.8 生活にあった健康管理法を考えた 34.8 ± 22.9 46.8 ± 19.4 52.1 ± 21.5 52.1 ± 28.1 健康管理の障害を克服するつもり 66.8 ± 26.9 76.8 ± 22.8 65.4 ± 13.1 65.0 ± 26.3 目 標 へ の 決 意 健康管理のためならどんな我慢もできる 41.5 ± 24.4 48.8 ± 26.4 59.2 ± 20.6 55.0 ± 16.1 健康管理を実現させたい 69.2 ± 19.8 75.0 ± 23.3 73.9 ± 18.0 65.7 ± 19.5 健康管理の習慣化を誓う 43.9 ± 29.9 66.3 ± 22.6 62.3 ± 21.3 63.6 ± 20.2 IR 得点合計(0 ∼ 900 点) 480.3 ± 111.4 588.5 ± 118.8 566.8 ± 101.2 583.1 ± 111.6 1)HH 群:血糖コントロール非良好群,M: 男性,F: 女性 NH 群:血糖コントロール良好群,M: 男性,F: 女性 2)*p<0.05 3)逆転項目 数値は逆転に再計算した 表 3 対象者の 1 日栄養摂取量・食品群別摂取量の特徴−非良好群・良好群と男性・女性の比較ー HH 群1) NH 群1) P2) M(n = 13) F(n = 8) M(n = 13) F(n = 14)

栄養素(単位) Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD Mean ± SD

エネルギー(kcal) 2,082.2 ± 346.5 1,403.4 ± 451.9 1,787.6 ± 421.0 1,562.1 ± 400.6 *4)5) たんぱく質(g) 77.7 ± 17.7 48.8 ± 15.5 62.2 ± 18.9 60.2 ± 13.7 *4)5) 脂質(g) 52.1 ± 19.3 38.5 ± 27.5 41.7 ± 19.2 43.0 ± 19.2 炭水化物(g) 291.1 ± 49.7 210.7 ± 41.9 255.3 ± 45.7 228.8 ± 79.0 *4)5) P:F:C 比(エネルギー%)3) 15:22:63 14:23:63 14:21:65 16:24:60 食塩相当量(g) 12.1 ± 5.6 11.5 ± 5.5 10.0 ± 5.1 8.5 ± 3.9 コレステロール(㎎) 335.4 ± 154.5 248.0 ± 285.9 217.7 ± 124.6 239.9 ± 138.8 食物繊維総量(g) 15.0 ± 5.4 12.5 ± 2.7 14.1 ± 6.4 14.2 ± 7.5 穀類 556.8 ± 194.0 359.3 ± 97.9 489.4 ± 122.2 349.3 ± 110.7 *4)5) 砂糖類 8.1 ± 13.0 7.6 ± 7.8 6.2 ± 9.2 7.5 ± 8.1 緑黄色野菜 90.7 ± 157.7 124.1 ± 61.2 81.6 ± 101.0 111.8 ± 172.8 その他の野菜 281.7 ± 204.8 197.5 ± 95.6 223.1 ± 141.1 245.7 ± 157.5 果実類 44.8 ± 137.2 32.0 ± 52.3 64.8 ± 111.9 107.6 ± 143.0 魚介類 84.0 ± 61.1 26.8 ± 37.1 81.4 ± 81.1 72.5 ± 62.4 肉類 80.5 ± 48.6 45.6 ± 49.7 43.5 ± 34.0 57.4 ± 59.1 卵類 32.0 ± 42.5 40.0 ± 59.3 23.4 ± 31.5 14.1 ± 14.8 乳類 46.3 ± 77.7 70.3 ± 97.8 56.5 ± 82.6 85.2 ± 87.6 1)HH 群:血糖コントロール非良好群,M: 男性,F: 女性 NH 群:血糖コントロール良好群,M: 男性,F: 女性 2)*p<0.05 3)P:F:C 比:タンパク質:脂質:炭水化物のエネルギーに対する割合 4)HH-M 群と NH-F 群との比較 5)HH-M 群と HH-F 群との比較

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NH-F 群 間 で は 有 意 差 は な か っ た。 穀 類 摂 取 量 は, HH-M 群(556.8 ± 194.0g)と HH-F 群(359.3 ± 97.9g)間 で有意な差が認められたが,NH-M 群と NH-F 群間での 有意差はなかった。 また,すべての項目において,HH-M 群と NH-M 群 間に有意差はなかった。HH-F 群と NH-F 群間において も,すべての項目において有意差がなかった。 4. レディネスと食事摂取状況との関係(表 4) 対 象 者 の レ デ ィ ネ ス と 食 事 摂 取 状 況 と の 関 係 は, HH-M 群は,「生活にあった健康管理法を考えた」とエネ ルギー,炭水化物,その他の野菜と負の相関,肉類と正 の相関があった。「健康管理の習慣化を誓う」と魚介類が 負の相関があった。 HH-F 群は,「健康管理をしなければ病気になるかも しれない」とエネルギー,脂質,穀類と強い負の相関が あり,緑黄色野菜と強い正の相関があった。「健康管理 のため新しい生活設計をした」「生活にあった健康管理 法を考えた」とエネルギー,脂質,炭水化物,肉類に負 の相関,その他の野菜に正の相関があった。「健康管理 のためならどんな我慢もできる」と肉類に負の相関が あった。 NH-M 群は,「健康管理をしなければ病気になるかも しれない」と穀類に負の相関,果実類に正の相関があっ た。「健康管理の障害を克服するつもり」とエネルギー, たんぱく質と正の相関があった。「健康管理のためなら どんな我慢もできる」とエネルギー,脂質,炭水化物, 穀類に負の相関があった。「健康管理を実現させたい」と その他の野菜,「健康管理の習慣化を誓う」と緑黄色野菜, その他の野菜に正の相関があった。 NH-F 群は,「健康管理をしなければ病気になるかも しれない」とたんぱく質,魚介類に負の相関があった。「健 康管理のために新しい生活設計をした」「生活にあった 健康管理法を考えた」「健康管理の障害を克服するつも り」と緑黄色野菜,その他野菜に負の相関があった。 表 4 対象者のレディネスと栄養素別・食品群別摂取量の関係 −非良好群・良好群と男性・女性の比較ー 栄養素別・食品群別摂取量 エネルギー たんぱく質 脂質 炭水化物 穀類 緑黄色野菜その他の野菜 果実類 魚介類 肉類 H H │ M 群 目標戦略 健康管理のため新しい生活設計をした 生活にあった健康管理法を考えた -0.725** -0.751** -0.637* 0.580* 健康管理の障害を克服するつもり 目標への決意 健康管理の習慣化を誓う -0.663* H H │ F 群 行動の再評価 健康管理をしなければ病気になるかもしれない -0.865 ** -0.921** -0.877** 0.835** 健康管理に自信がある -0.756* 0.717* 生活態度を変える必要がある -0.804* 目標戦略 健康管理のため新しい生活設計をした -0.886** -0.855** -0.824* 0.826* -0.743* 生活にあった健康管理法を考えた -0.890* -0.914** -0.788* -0.838** 0.899** -0.908** 健康管理の障害を克服するつもり 目標への決意 健康管理のためならどんな我慢もできる -0.763* N H │ M 群 行動の再評価 健康管理をしなければ病気になるかもしれない -0.568* 0.590* 健康管理に自信がある -0.573* 目標戦略 健康管理の障害を克服するつもり 0.591* 0.615* 目標への決意 健康管理のためならどんな我慢もできる -0.903* -0.644* -0.758* -0.597* -0.556* 健康管理を実現させたい -0.601* -0.608* 0.563* 健康管理の習慣化を誓う 0.601* 0.675* N H │ F 群 行動の再評価 健康管理をしなければ病気になるかもしれない -0.609* -0.903* 健康管理に自信がある 生活態度を変える必要がある -0.753* 目標戦略 健康管理のため新しい生活設計をした -0.658* -0.690* -0.558* 生活にあった健康管理法を考えた -0.588* -0.556* -0.590* 健康管理の障害を克服するつもり -0.785* -0.821* *p<0.05 **p<0.01 HH 群:血糖コントロール非良好群,M: 男性,F: 女性 NH 群:血糖コントロール良好群,M: 男性,F: 女性

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Ⅵ . 考察

本研究では,壮年期 2 型糖尿病患者の健康行動のレ ディネスと食事摂取状況との関係を明らかにするため に,1 施 設 に お い て 外 来 通 院 非 イ ン ス リ ン 療 法 患 者 (HbA1c5.3 ∼ 7.7)48 名について検討した。 対象患者の健康行動に影響する自己の心理的準備状態 (レディネス)に関する質問紙の回答を検討した結果,血 糖コントロール非良好群と良好群との間にレディネス得 点に有意差は認められなかった。この結果は,本研究で 行ったレディネス調査が血糖コントロールに影響する要 因でないことを示している。今回の検討は,対象を非イ ンスリン療法者とし,血糖コントロールが比較的良い患 者を選択したため,レディネスにおいて差がみられな かった可能性があるので,今後,血糖コントロール不良 例を含めた糖尿病患者でレディネス調査を行う必要があ ると考える。さらに,対象が 1 施設であったことから, 対象施設では食事療法に対する動機付けが十分に行われ ており,レディネスが良好であった可能性もある。また 一方で,比較的血糖コントロールが良好で,非インスリ ン療法を維持している患者では,レディネスが良好であ ることを示唆しているとも考えられる。 今回使用したレディネス尺度は,日本で初めて使用し た尺度であり,日本人の食習慣,心理的準備状態を反映 するには適しているか否かを検討していく必要がある。 今後,複数施設で対象数を増やし,血糖コントロール不 良患者との比較や一般健康男女との比較・検討をするこ とにより,糖尿病患者のレディネスの特徴が明らかにな ると考えられる。 対象患者の食事摂取量は,エネルギー,たんぱく質, 脂質,炭水化物の摂取量において血糖コントロール良好 群の男女間では,有意差がなかったのに対し,血糖コン トロール非良好群の男女間では,エネルギー,たんぱく 質,炭水化物の摂取量において有意差が認められた。 血 糖 非 良 好 群 の 女 性 の 摂 取 エ ネ ル ギ ー の 平 均 は 1403kcal で糖尿病治療における適正なエネルギー摂取 量(男性:1400 ∼ 1800kcal,女性:1200 ∼ 1600kcal)19) の範囲内で,良好群女性との間に有意差がなかった。一 方,非良好群男性の摂取エネルギーの平均は,2082kcal で適正なエネルギー摂取量を超えており,一般 50 歳代 男性の食事摂取量の平均に近い値1)ではあったが,すべ ての項目において,良好群男性との間に有意差はなかっ た。以上のことから,今回,男女別に非良好群と良好群 の食事摂取量に違いがないにもかかわらず,血糖コント ロールに差がでている結果となった。今回の調査では興 味深いことに,非良好群女性は適正摂取量の範囲内であ り,「食べすぎ」ではなかったにもかかわらず HbA1c は 高値であった。しかし,非良好群女性は BMI が 25 以上 の肥満体型であり,体重コントロールは良好とは言えな い状態で,摂取カロリーとの間に矛盾があると考えられ る。今回の食事摂取量の調査は 1 日のみの調査あり,対 象の日常の食事摂取状況を十分反映していない可能性も ある。身体活動レベル,運動習慣の有無といった消費エ ネルギーの違い,間食,1 回の食事量等,生活習慣のさ らに詳細な検討が必要である。 対象患者のレディネスと食事摂取との関連では,非良 好群男性は,非良好群女性よりレディネスと食事摂取と の相関は少なく,「生活にあった健康管理法を考えた」と 思う患者ほどエネルギー,炭水化物の摂取量が減るが, その他の野菜の摂取も少なくなり,肉類の摂取が増えて いた。肉類の摂取は女性とは逆の結果であった。非良好 群男性は,生活に合わせた食事療法として,ご飯など主 食を減らすことは実施しやすいが,副食の肉類には意識 が向かず,かえって増えてしまう現状が推測される。一 方,良好群男性は,「健康管理のためならどんな我慢も できる」と思う患者ほどエネルギー,脂質,炭水化物, 穀類,肉類の摂取量が減り,「健康管理を実現させたい」 「健康管理の習慣化を誓う」と思う患者ほど緑黄色野菜や その他の野菜の摂取が増えていた。今回使用したレディ ネス尺度は,健康行動の準備状態は,『行動の再評価』『目 標戦略』『目標への決意』の順に段階的に高まるとされる。 レディネス得点の平均や食事摂取量に非良好群,良好群 男性間に有意な差はなかったものの,今回,良好群男性 が『目標への決意』と食事摂取量に相関がみられたことか ら,レディネスを『目標への決意』まで高めることで,食 事摂取に変化があり,血糖コントロールを改善している 可能性も考えられる。 非良好群女性は「健康管理をしなければ病気になるか もしれない」「新しい生活設計をした」と思う患者ほどエ ネルギー,脂質,炭水化物の摂取量が減り,緑黄色野菜 やその他の野菜の摂取量が増える傾向があった。また「生 活にあった健康管理法を考えた」と思う患者ほどエネル ギー,たんぱく質,脂質,炭水化物,肉類の摂取量が減 り,その他の野菜を摂取量が増える傾向がみられた。 一方,良好群女性は「健康管理をしなければ病気にな るかもしれない」と思う患者ほどたんぱく質と魚介類の 摂取量が減り,「新しい生活設計をした」「生活にあった 健康管理法を考えた」「健康管理の障害を克服するつも り」と思う患者ほど緑黄色野菜とその他の野菜の摂取が 減っていた。このことから,非良好群女性は,レディネ スが高いほど食事摂取量を抑えたり,野菜を多く摂取す るといった行動がみられているが,それが体重コント ロールと血糖コントロールに反映されていない現状があ る。コントロール非良好群の男女でレディネスと食事摂 取の相関に違いが見られることは,糖尿病指導に際して 考慮する必要がある。すなわち,糖尿病患者の男性は従 来の摂取量を抑える食事指導やレディネスを高める介入

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が効果的である可能性があるが,女性は従来通りの食 事指導やレディネスを高める指導が血糖コントロール 改善に反映しない可能性が示唆された。 先行研究では,食事療法や運動療法を含む療養行動 のレディネスを把握することが,行動を変える動機付 けの指標になり11),レディネスに沿った介入をすることで 血糖や HbA1c が改善することが報告されている12)13)14) 本研究においては,血糖コントロール良好群男性の方 が,非良好群男性よりレディネスと食事摂取状況との 相関が多く示されたことから,男性では食事療法への レディネスに沿った介入は効果がある可能性が示され た。今後食事療法へのレディネスに沿った介入を行う ためには,食事や調理に関心を示して,自己管理がで きるような指導が必要であると考える。しかし,男性 では調理を行っているのは 15%であり,配偶者等調理 を実際に行っている人への指導も重要と考える。 一方,女性では,非良好群女性の方がレディネスと 食事摂取状況との相関が強いにもかかわらず,血糖コ ントロールに反映されていない結果がみられたことか ら,レディネスに沿った介入の有用性は得られなかっ た。しかし前述したレディネスの結果と体重コントロー ルの乖離は,女性の糖尿病指導効果の指標に BMI を示 すことの有用性を示唆するとも考えられる。 食事療法は,血糖コントロールや糖尿病自己管理教 育において,不可欠な構成要素であり3),生涯にわたっ て続ける必要がある。今回の結果から,糖尿病の自己 管理教育においては,従来の一律の指導ではなく,性 差による行動の特徴や生活状況を把握する必要性が示 唆された。 看護師は,常に患者の食事摂取状況を把握し,食事 療法に対する負担がストレスとならないように援助す る必要がある。そのためには,患者が困ったときにい つでも話しを聴いてもらえる外来窓口の開設や,何で も話せる面接室の整備,継続指導のできる外来看護記 録の整備などが課題である。

Ⅶ . 結論

外来通院中の壮年期 2 型糖尿病非インスリン療法患 者のうち,血糖コントロール非良好者の特徴は次の通 りである。 1. 健康行動のレディネスでは,血糖コントロール非 良好群と良好群との間に有意な差がなかった。 2. 食事摂取状況は,すべての項目において,男性な らびに女性の血糖コントロール非良好群と良好群 間に有意な差はなかった。 3. コントロール非良好群男性に比べ,非良好群女性 ではレディネスと食事摂取に多くの負相関が明ら かとなり,血糖・体重コントロール状況との間に 乖離が見られた。これは女性の特徴を示すとも考 えられ,今後の糖尿病指導において念頭に置く必 要がある。 謝辞 本研究の調査にご協力いただきました対象者の皆様, ならびにデータ収集に際し,ご尽力いただきました病 院関係者の皆様に心より感謝いたします。本論文の作 成に際し,ご助言いただきました福井里美元講師,西 田文子准教授に深謝いたします。 引用文献 1) 厚生労働省(2008)平成 19 年度国民健康・栄養調査結果の概要 .  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/h1225-5.html 2) American Diabetes Association(2006)Standards of Medical

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参照

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