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生活場面における子どもの速さの認識に関する調査

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Academic year: 2021

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(1)生活場面における子どもの速さの認識に関する調査. 生活場面における子どもの速さの認識に関する調査 . . 教育デザインコース 数学領域. 植松 敬太 1 はじめに 算数の授業では、生活場面の問題が数多く取り扱われ る。生活場面において算数は役立つという、算数の有用. 3 数学的モデリングとは まず、速さの指導に言及する前に、モデリングについ てどのようなものか述べていく。. 性を強調する上で重要なことである。しかし、算数の問. 社会の中で、我々はいろいろな問題に遭遇する。そし. 題を振り返ったとき、生活場面と関連した問題として充. て、問題の中には、数学の舞台に載せて考えることで適. 分であろうか。算数指導について再考し、より生活場面. 切な判断ができるものがある。それゆえ、数学教育では、. と関連させることで、子どもの学びがさらに深まってい. 数学的処理の方法を学ぶだけでなく、現実世界の問題が. くことが期待されている。近年では、生活場面との関連. 何の為に、どのような仮定を設定して、数学の舞台に載. を重視するため、小学校段階での数学的モデリング ( 以. せられたか、また、数学的に処理された結果が、現実世. 下、モデリング ) の研究が注目されている。. 界で何を意味し、それが妥当なものかどうかといった解. そこで、本研究では、モデリングの視点から第 6 学. 釈・検討に焦点を当てた指導が肝要となる。すなわち、. 年速さを取り上げる。速さは生活場面と密接に関わって. 現実世界の問題の解決を目標に、それを数学の舞台に載. おり、モデリングの視点からいかに生活場面と関連付け. せて数学的モデルをつくり、数学的に処理した結果を解. て指導していくことが可能であるかを探っていく必要が. 釈・検討して、妥当な結果が得られるまで数学的モデル. ある。そこで、モデリングの視点からどのような内容を. の修正を適宜繰り返していく活動 ( 数学的モデリング ). 現行の指導に加えていくべきかを特定すると共に、その. に焦点を当てた指導が必要である。( 池田 2010). 内容について調査研究を行うことにする。調査を通して、. モデリングの指導は、これまで、文字式、初等幾何学. 今後、速さの指導で強調していくべき点を考察していく。. を用いた数学的処理を伴うことから、主に中学・高等学 校の数学科においてその指導が考えられてきた。しかし、. 2 研究の目的・方法. 近年、国内外において小学校段階での指導に価値とその. 本研究では、速さと生活場面を関連させた問題を作成. 可能性が当てられている ( 例えば English 2006:池田 . し、それを既習の中学 1 年生に出題したときの実態を分. 2007:川上・松嵜 2012 など )。ここで問題となるのは、. 析・考察する。調査研究の目的として、子どもたちは速. 算数科でのモデリングの取り入れ方である。池田 (2015). さと生活場面をどの程度関連させて考えることができる. は、数学の実用性、有用性を主眼とした算数授業を具現. のか、ということを明らかにする。さらに、調査結果を. 化していくためには、二つの方向から授業実践していく. もとに今後、速さで強調していくべき指導の示唆を得る。. 必要があると述べている。一つは、モデリングに関わる. 研究の方法は、まず、現行の速さの指導についてまと. 思考の育成といった目的から算数授業を捉え直し、モデ. める。そして、現行の指導においてどのようにモデリン. リングにおける一連の活動を取り扱っていく方策であ. グの視点を取り入れるか、また、その意義を明らかに. る。もう一つは、日々の授業の中で、モデリングに関わ. し、その視点に応じた生活場面の速さに関する調査問題. る思考を部分的に加味していく授業実践を行っていくこ. を作成する。既習の中学 1 年生がどの程度速さと生活. とである。すなわち、生活場面と算数の中での解決を対. 場面を関連させて考えられるかを分析・考察し、さらに、. 比・検討していく活動を取り入れていくことが鍵となる。. 調査結果を受けて今後、どのような指導を現行に加えて. 今回は、第 6 学年速さに焦点を当て、後者の立場から. 行っていくべきかの示唆を得る。. 授業を考案するための実態調査を行うこととする。. 90.

(2) 4 速さの指導をモデリングの視点から捉えなおす (1) 速さの指導をモデリングの視点から捉える H23 年度算数教科書 ( 全6社 ) では、かけっこやソー. てからも計算方法の使い分けを強調する必要がある。 このように、モデリングの視点から速さの指導を振り 返って分析すると、新たな指導内容として下記の 3 点. ラーカーなどの速さ比べが教材として載せられており、. が見えてくる。. 全ての教科書で初めから時間と距離が数値で示されてい. ①速さを求める際になぜ時間と距離に着目して数値化し. る。つまり、教科書に従って授業を進めた場合、子ども に、なぜ速さを求める際に時間と距離が変数として選ば れるのかを注目させることは難しい。ここで、モデリン グの視点から考察すると、「変域の生成・選択」にさら. ているのかということ ②前提となる比例関係はどんな場合に考えられるのかと いうこと ③速さを公倍数で比べる方法と単位量あたりで比べる方. に焦点を当てていくことが考えられる。この点に関して、. 法を場面に応じて使い分けられること. 杉山 (2008) は、「大事なことは、速さが何に関係する. これらを、現行の速さの指導にどのように取り入れて. のか、その関係するものでとらえようということですか. いくのか記していく。. ら、できるだけ速さが何に関係するのかということを調 べることから始めるようにしたいと思います。」として. (2) 速さの指導におけるモデリングの視点の取り入れ. いる。また、川上 (2015) も同様なことを指摘しており、. 方とその意義. その点に関して現行の指導では速さと実際の場面とを十. 第 6 学年速さで、(1) で特定された①、②、③のモデ. 分に関連付けているとはいえないとしている。ここから、. リングにおける視点をどのように取り扱っていくのか. 子どもが 50m 走や 8 秒間走など学校での生活経験から、. を、具体的に示していく。. 速さは時間と距離によって決まることを認識できるよう. ① 数値化のよさを見出すこと. な授業展開を考案する必要があるといえる。. 速さを数値化する際、なぜ数値化する必要があるのか. また、時間と距離の比例関係に関しても、速さ比べを. を子どもが理解することで、算数のよさや、なぜその問. する際の前提となっている。つまり、時間が n 倍のとき、. 題を扱っているのかということが感得される。そこで、. 距離も n 倍であれば、速さは同じであると考える。こ. 生活経験から直接比較できる場面とできない場面がある. こで、モデリングの視点から考察すると、「仮定の明確. ことを見極め、数値化することが重要である。例えば、. 化」にさらに焦点を当てていくことが考えられる。山本. 子どもは学校生活の 50m 走や 8 秒間走などで直接比較. (2012) は「比例」の考えの重要性について触れており、. を経験済みである。このように、直接比較できれば速さ. 「速さは、「長さ÷時間」で表現される内包量の1つであ. を数値化する必要はない。しかし、例えば 50m 走で同. るが、結局、「なぜその式で表現できるのか」という意. 時に競争できない状況 ( 人数が多すぎる場合など ) のと. 味理解とともに、子どもが素朴に抱くイメージと算数の. き、時間で速さを数値化して捉えることが考えられる。. 世界との橋渡しをしっかりすることが重要なのである」 としている。 さらに、速さの計算方法に関して、導入の速さ比べで 公倍数と単位量あたりの方法が比較され、単位時間あた. さらに、数値化する必要のある場面を考えることで、 速さが何に関係するのかという変数にも着目でき、その 変数から速さを捉えられるということにも繋がる。 ②− 1 生活場面における速さを大局的に捉えること. りに進む距離として一般化されるが、それ以降は、公倍. モデリングにおいて、問題の本質を捉え定式化するた. 数で比べる方法はあまり重視されず、「き・は・じ」と. めには、生活場面での大まかなイメージが必要不可欠で. いうように公式に当てはめて解いている子どもの姿が目. ある。第 6 学年速さでは、速さがほぼ一定のものを扱. 立つように思う。ここで、モデリングの視点から考察す. うが、木を見て森を見ずということわざがあるように、. ると、「モデルの有効性と限界」にさらに焦点を当てて. 授業において速さがほぼ一定のものしか扱わないと、速. いくことが考えられる。速さの計算では特に、モデルの. さがほぼ一定でないものがあるにもかかわらず、速さの. 有効性に焦点を当てた指導が重要である。つまり、公倍. 変化を意識せず、計算してしまうことになりかねない。. 数で比べる方法と単位量あたりで比べる方法を、場面に. しかし、大局的に捉えてから定式化することで、様々な. 応じて柔軟に使い分けられることが望しく、公式を覚え. 変化の速さがある中の、速さがほぼ一定のものを扱って. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 91.

(3) 生活場面における子どもの速さの認識に関する調査. いるという理解ができる。速さを大局的に捉えるとは、. より深い意味理解を期待できるのではないかと考える。. 例えば速さが「A だんだん速くなるもの、遅くなるもの、 B 一定のもの、C 変則的、周期的に変化するもの」、以. 5 モデリングの視点に基づいた調査とその分析、考察. 上の 3 点で捉えることである。A は、飛行機が出発して. 4(2) で特定したモデリングの視点を取り入れた 4 つ. から飛び立つまでの速さや、赤信号を見て車が止まるま. の指導 ( ①、② ‐ 1、② ‐ 2、③ ) に対応した調査問題. での速さが例として挙げられる。B は、新幹線が駅と駅. をつくり、第 6 学年速さが既習の中学 1 年生がどれだ. の間を走行中の速さや、観覧車が一周まわるときの速さ. け生活場面と算数を関連させて解決できるのか分析・考. などが挙げられる。C は、各駅停車の電車の速さや、一. 察を行っていく。中学校第 1 学年「正負の数」の学習. 般道を走る車の速さなどが挙げられる。. を受けた後の実施であるが、速さの学習においてモデリ. このように、生活場面での様々なものの速さの変化に 着目し、仲間わけする。そうすることで、速さがほぼ一 定のものとそうでないものの区別ができ、算数では速さ. ングの視点から課題のある点を分析することを意図して いるため、支障ないと考えた。 今回実態調査として、神奈川県横浜市内公立中学校一. がほぼ一定のものを扱っているという理解ができる。. 校、中学 1 年生 187 名に解答してもらった。以下にモ. ②− 2 生活場面と算数の速さを比較検討すること. デリングの視点を取り入れた 4 つの指導に対応した①. 一般的に時間と距離の比例関係は、速さ比べの際の前 提とし、授業で取り扱うことはあまりないが、比例関係. 調査問題、②評価の規準とその結果、分析、③考察を順 に記していく。. が成り立つという仮定は、速さがほぼ一定の時であり、 算数の速さではどんな速さを扱っているのかということ. (1) 数値化のよさを見出すこと. を理解する上で重要な仮定である。そこで、速さがほぼ. 速さを数値化する際、なぜ数値化する必要があるのか. 一定でない速さも取り上げることによって、自分が計算. を子どもが理解することで、算数のよさや、なぜその問. している速さの仮定が明確化できる。例えば、意図的に. 題を扱っているのかといったことが感得される。そこで、. 比例関係が成り立たないような問題を取り上げ、速さの. 速さ比べをする際に時間を測る必要のない生活場面を提. 計算をする際の仮定を明確化することで、自分たちが学. 示し、生徒がどんな場面で時間を測る必要があるか、あ. 習している速さはどんなものかといった理解ができる。. るいはないかを理解しているのか調査した。. ③ 比較する方法を考えること 比較する方法は現行の指導でも中心的に行われるとこ. ①調査問題. ろで、時間か距離を公倍数でそろえる方法と、単位量あ. 問2. たりでそろえる方法が出てくる。一般的に、比べるもの. 次の A 君 B 君の会話を読んで、後の問いに答えてくだ. が 2 つのとき公倍数でそろえ、3 つ以上の時は単位量あ. さい。. たりでそろえる。公倍数でそろえることと単位量あたり. A「運動会で 50m 走などの徒競走で順位を決めるとき. でそろえることの共通点は、時間か距離のどちらかをそ. には、ゴールに到着した順番で判断するね。つまり、. ろえ、片方の数値の大小で速さが比べられることである。. 誰が速いかを決めるときには時間を測らなくても判断. 速さの公式を覚えてしまうと、どんな問題でも「き・は・. がつくってことだ。」. じ」というように公式に当てはめ、用いようとしがちで. B「じゃあ、速さ比べをするときには、時間を測る必要. あるが、生活場面では場面に応じて公倍数でそろえる方. はないってことか。」. 法と単位量あたりでそろえる方法を柔軟に使えるように. (1) あなたは B 君に賛成ですか。反対ですか。どちらか. したいものである。そこで、導入だけでなく、速さの指. を選んでください。. 導全体を通して、計算方法の使い分けを強調した指導を. ア,賛成 イ,反対. していくことが重要である。 このような、モデリングにおける視点を速さの指導で 取り入れていくことで、(1) の①②③が理解でき、算数で 取り扱っている速さとはどのようなものなのかという、. 92. (2) (1) の理由を説明してください。.

(4) ②評価の規準とその結果、分析. (2) 前提となる仮定を明確化すること. (a) 評価の規準. ②− 1 生活場面の速さを大局的に捉える. 速さ比べにおいて、数値化する必要な場面と必要でな. 第 6 学年速さを理解する上で、まず生活場面の速さ を大局的に捉えることで、速さがほぼ一定のものとそう. い場面を区別し説明できるか. でないものの区別がつき、その後、問題を定式化するこ 1 速さを比べるときに、時間を測る必要が あるかないかを、理由を明確にしながら 説明できる 2 速さを比べるときに、時間を測る必要が あるかないかを説明しているが、理由が 不明確である 0 無解答. 30 人 (16.0% ) 143 人. とによって、自分が算数で扱っている速さは、速さがほ ぼ一定のものであることを理解できる。そこで、生徒は 速さに関するいくつかのリストから、速さの変化に着目 して仲間わけするのかを調査した。. (76.5% ) 14 人 (7.5% ). 表 1 問 2 の評価の基準とその人数 (b) 分析 速さ比べをする際、時間を測る必要がないことに賛 成、反対にかかわらず、理由が明確なものと明確でない ものでわけた結果、30 人 (16.0% ) の生徒は明確にでき たが、143 人 (76.5% ) は不明確であった。賛成として、 理由を明確にできた生徒の解答例として、「同時に出発 し、同じ距離を走るから」といった説明や「その場限り の人と比べるなら測る必要はないから」といった説明が. ①調査問題 問1 次の表は、乗り物の速さに関するリストです。ア ~クの 8 つの速さを、2 通りの方法で、2 ~ 3 つ に仲間わけをしてください。また、そのように仲 間わけをした理由を書いてください。 ア,山の頂上から下まで下るときの、ジェットコー スターの速さ イ,飛行機が飛び立って数時間飛び続けるときの、 飛行機の速さ ウ,各駅停車で横浜駅から東京駅まで走る、電車の 速さ. 挙げられる。反対として、理由を明確にできた解答例と. エ,観覧車が一周まわるときの速さ. して、「他のチームの人と比べられないから」といった. オ,飛行機が動き出してから離陸するまでの、飛行. 説明や「一人一人、また、一回一回別々に行うとき、比. 機の速さ. べられないから」といった説明が挙げられる。また、理. カ,駅と駅の間を走行中の、新幹線の速さ. 由が明確でないものの解答例として、賛成では「時間を. キ,横浜駅から川崎駅まで車で走るときの、車の速. 測ればわかるから」とした説明や、反対では「同着の時 はっきりした結果で順位をきめることができないから」. さ ク,赤信号を見てから止まるまでの、車の速さ. といった説明が多かった。 ③考察 賛成、反対に関わらず理由を明確にできた生徒が 187 人中 30 人 (16.0%) であり、とても少ない結果になった。 ここから、ほとんどの生徒は速さ比べの際に時間を測る よさやその場面を理解していない可能性が出てきた。し たがって、今までの指導に加え、どんな場面において速. ②評価の規準とその結果、分析. さを数値化する必要があるのかを理解できる指導をして. (a) 評価の規準. いく必要がある。つまり、直接比較できる場面から扱い、. いくつかの速さに関する例を出し、その仲間わけをさ. どんな場面だと直接比較できないのか、また、そういっ. せたとき、それぞれの速さの変化を観点として仲間わけ. た場合速さを何で捉えるのかといった指導をすることに. をしているか. よって、時間と距離に着目できるのではないかと考える。. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 93.

(5) 生活場面における子どもの速さの認識に関する調査. 1 速さの変化を観点として仲間わけが 少なくとも一つされており、記号と 理由が適当である 2 速さの変化を観点として仲間わけが 少なくとも一つされているが、記号 と理由が不適当である 3 速さの変化に関する仲間わけが一つ もされていない 0 無解答. 9人 (4.8% ). つき、その上で算数の問題に定式化することで、算数で は速さがほぼ一定のものを扱っているという仮定を意識 することにつながるのではないかと考える。. 21 人 (11.2% ) 151 人 (80.7% ) 6 人 (3.2% ). 表 2 問 1 の評価の基準とその人数 (b) 分析 速さの変化を観点として仲間わけが少なくとも一つ. ② ‐ 2 生活場面と算数の速さを比較検討する 第 6 学年速さでは、速さがほぼ一定のものを取り扱う。 しかし、ほぼ一定という仮定は速さ比べをする際の前提 となっており、あまり強調されていない部分だと思われ る。そこで、速さがほぼ一定という仮定は成り立たない 場面の問題を出題したとき、生徒はどのような反応をす るのかを調査した。. でもされていた生徒は評価基準1、2をあわせて 30 人 (16.0% ) であった。その中で、仲間わけの記号と理由 が合っていた生徒は評価基準1の 9 人 (4.8% ) である。 評価基準1の例として、「ア、オ」をだんだん速くなる ものとし、また、 「イ、エ、カ」を速さがほぼ一定のも のとしている生徒が挙げられる。評価基準 2 の記号と 理由が不適当なものの例としては、 「ア、イ、エ、カ、キ」 が全て、ずっと一定の速さで進んでいる、としている生. ①調査問題 問4 (1) 中 学 1 年 生 の 植 松 君 は 50m を 8 秒 で 走 り ま す。 1500m を何分で走りますか? 計算式と答えを書いてください。 (2) (1) の問題を解いて思ったこと、感じたことをなん でも書いてください. 徒などである。一般的に、アのジェットコースターはだ んだん速くなり、キの自動車は信号で止まったり加速し たりするので、ほぼ一定とするのは不適当と判断し、評 価基準2の「速さの変化を観点として仲間わけが少なく とも一つされているが、記号と理由が不適当である」と して分類している。また、速さの変化に関する仲間わけ がないものとしては、「ア、ウ、エ、カ、キ、ク」を陸 を走るもの、「イ、オ」を空を飛ぶもので分けていたり、 「ア、エ」を遊園地にあるもの、 「イ、ウ、オ、カ、キ、ク」 をそうでないもので分けていたりしている生徒である。 ③考察 速さに関する仲間わけをしたときに、速さの変化に着 目する生徒が 187 人中 30 人 (16.0% ) であり、とても 少ないことがわかる。さらに、速さの変化に着目できて も、評価基準 2 のように、生徒によって速さが一定の ものとそうでないものの分け方が一致しないことが明ら かになった。このことから、まずは速さを大局的に捉 え、その中で速さの変化に着目させ、どんな変化をする ものがあるのかといった仲間わけの指導をしていくこと が重要だと考える。速さの変化に関する仲間わけをする ことで速さがほぼ一定のものとそうでないものの区別が. 94. ②評価の規準とその結果、分析 (a) 評価の規準 (1) 時間を求める問題を解けるか (2) 速さが一定であるという仮定をしては不適当な時間 を求める場面で、問題のおかしさを指摘できるか 問 4 は (1) と (2) の結果をクロス集計した。(2) の解 答類型は以下の通りである。 解 答 類 型 1 実 際 は 50m 走 の タ イ ム で そ の ま ま 1500m 走り続けることは難しい、あるいはそれと同様 なことを指摘しているもの 解答類型 2 50m 走のタイムでそのまま 1500m 走り 続けることは難しいことを直接は言っていないが、植松 君の 1500m のタイムに違和感を記されているもの 解 答 類 型 3 実 際 は 50m 走 の タ イ ム で そ の ま ま 1500m 走り続けることは難しい、あるいはそれと同様 なことを指摘できてないもの .

(6) 解答 類型1. らず、(2) で指摘できた生徒も 44 人中 5 人 (2.6% ) い. 正答. 問 4(1) 誤答 無解答. 合計. たことから、計算ができない子の中にも生活場面を想起. 30 人. 4人. 0人. 34 人. し、算数、数学の問題場面と比べて考えることができる. (0% ). (18.2%). (16.0% ) (2.1% ) 9人. 1人. 0人. 10 人. 類型2. (4.8% ). (0.5% ). (0% ). (5.3% ). 解答. 71 人. 33 人. 3人. 107 人. 問. 解答. 4 (2). 類型3 無解答. (38.0% ) (17.6% ) (1.6% ) (57.2% ) 9人 (4.8% ). 6人. 21 人. 子もいるということである。 ここで、これまでは前提とされることが多かった速さ の仮定である、速さがほぼ一定のとき時間と距離の比例 関係で捉えられるということを強調した指導が重要であ る。仮定を明確化することで、どのような速さを扱って いるのかということがわかり、速さの深い理解につなが るのではないかと考える。. 36 人. (3.2% ) (11.2% ) (19.3% ). (3) 比較する方法を考えること 速さの計算方法は、現行の指導でも中心的に行われて. 合計. 119 人. 44 人. 24 人. 187 人. (63.6% ) (23.5% ) (12.8% ) (100% ). 表 3 問 4(1) と (2) のクロス集計 (b) 分析. いる部分である。ここでは、公倍数で比べる方法と単位 量あたりで比べる方法を比較し、最終的に速さを単位時 間あたりに進む距離で一般化するのだが、生活場面では 公倍数で比べる方法と単位量あたりで比べる方法を場面. (1) では実際に問題を解いてもらい、119 人 (63.6% ). によって使い分けられることが望ましい。そこで、公倍. ができていた。(2) で問題のおかしさを指摘できたのは. 数で考えた方が容易な問題を出したとき、生徒はどのよ. 解答類型1、2を合わせて 44 人 (23.5% ) である。解. うに計算するのかを調査した。. 答類型1では、例えば、「1500m 走ったら、50m を 8 秒ずつ走れないと思う」といった解答などが挙げられる。. ①調査問題. 解答類型2では、例えば、「4 分で走ったら世界記録に. 問3. なるから中 1 の記録じゃない」などが挙げられる。特に、. 半澤君と鈴木君は今、自転車でサイクリングコースを. (1) で正答したにも関わらず (2) で問題のおかしさを指. 走っています。. 摘できていない解答類型3または無回答の生徒が 119. 半澤君は 2km を 8 分 30 秒かかり、鈴木君は 4km を. 人中 80 人 (67.2% ) にも及ぶ。つまり、問題を解けた. 18 分かかりました。. 生徒の中の 39 人 (32.8% ) しか問題場面のおかしさに. どちらが速いですか。計算式と答えを書いてください。. 気づいていない。解答類型3の例としては、「小学校で 習った復習になった」や「難しい問題だった」など、問. ②評価の規準とその結果、分析. 題の場面とは関係のない解答である。逆に、(1) で問題. (a) 評価の規準. を解けてないにも関わらず、(2) で指摘できた生徒も 44 人中 5 人 (2.6% ) いた。. 公倍数で速さ比べした方が、容易に答えが出る場面で、 距離÷時間という公式に当てはめず、公倍数で比べよう としているか. ③考察 問題場面のおかしさを指摘できていない生徒は、187 人中 143 人 (76.5% ) であり、約 4 人に 3 人は問題を現 実的に考えていない可能性がある。また、特に (1) で問 題が解けたにもかかわらず (2) で指摘できていない生徒 が 119 人中 80 人 (67.2% ) であることから、問題は解 けるが問題の仮定を考えず解いている生徒が多くいるこ とが考えられる。逆に (1) で問題を解けてないにも関わ. 1 正答で、なおかつ公倍数で計算されて. 84 人. いるもの (44.9% ) 2 正答であるが、単位量あたりで計算し 33 人 ているもの 3 誤答 0 無解答. (17.6% ) 46 人 (24.6% ) 24 人 (12.8% ). 表 4 問 3 の評価の基準とその人数. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 95.

(7) 生活場面における子どもの速さの認識に関する調査. 問 1 の評価基準 1、2 は速さの変化に着目した生徒、. (b) 分析 速さ比べの基本的な問題だが、誤答と無回答の生徒を. 評価基準 3、無解答は速さの変化に着目していない生徒. 合わせて 70 人 (37.4% ) である。誤答の鈴木君として. であり、また、問 4(2) の解答類型 1、2 は問題場面の. いる生徒 46 人 (24.6% ) の中には、計算方法は合って. おかしさを指摘している生徒、解答類型 3、無解答は問. いる生徒がいた。また、正答はしているが公式「距離÷. 題場面のおかしさを指摘できていない生徒である。. 時間」に当てはめて計算している生徒は単位量あたりで. ①分析. 計算している生徒 33 人 (17.6% ) のうち 19 人おり、全. 問 1 で速さの変化に着目し、さらに問 4 の (2) で問 題場面のおかしさを指摘できた生徒は 187 人中 10 人. 体の 10.2%である。. (5.3% ) である。逆に問 1 で速さの変化に着目しておら ず、問 4 でも問題のおかしさを指摘できていない生徒. ③考察 速さ比べの基本的な問題だが、誤答した生徒が多かっ. は 123 人 (65.8% ) であった。また、問 1 で速さの変化. た。また、誤答している生徒で計算は合っている生徒は、. に着目しているが、問 4(2) で問題のおかしさを指摘で. 計算結果が何を意味しているのかが理解していないので. きていない生徒が 20 人 (10.7% ) であり、逆に問 4(2). はないかと考えられる。また、公式「距離÷時間」に当. で問題のおかしさを指摘できているが問 1 で速さの変. てはめて計算している生徒は 19 人 (10.2% ) おり、問題. 化に着目していない生徒が 34 人 (18.2% ) であった。. に関わらず公式に当てはめてしまっている可能性がある。. ②考察. ここで、 「き・は・じ」のような公式に当てはめて問題. 問 1 で速さの変化に着目しており、問 4(2) でも問題. を解くだけではなく、場面に応じて計算方法を考えてい. のおかしさを指摘できたのはとても少なかった。逆に問. けるようにするために、時間か距離をそろえもう一方の. 1 で速さの変化に着目しておらず、問 4 でも問題のおか. 大小で速さ比べができるといったことを、導入だけでな. しさを指摘できていない生徒は 123 人 (65.8% ) であり、. く速さの単元全体を通して強調した指導が重要である。. とても多いことがわかる。さらに、問 1 で速さの変化 に着目しているが、問 4(2) で問題のおかしさを指摘で. (4) 仮定の明確化に関わる問 1 と問 4(2) の関連. きていない生徒が 20 人 (10.7% ) おり、逆に、問 4(2). 最 後 に、 問 1 速 さ に 関 す る 仲 間 わ け の 問 題 と、 問. で問題のおかしさを指摘できているが問 1 で速さの変. 4(2) 速さがほぼ一定という仮定を意識しては不適当な. 化に着目していない生徒が 34 人 (18.2% ) いる。この. 問題、相互の関係について述べる。つまり、問 1 で速. ことから、場面に応じて生徒は速さの変化に着目したり. さの変化に着目していることと、問 4(2) で問題のおか. しなかったりしていることがわかる。したがって、どの. しさを指摘できることはなんらかの相関があるのか、分. ような文脈で生徒は速さの変化に着目するのか、さらな. 析・考察するわけである。問 1 と問 4 の (2) をクロス集. る調査分析を進める必要がある。. 計した。 6 指導への示唆 問 4 (2) 解答類型 1 解答類型 3. 問 1. 合計. 解答類型 2. 無解答. 評価基準 1. 10 人. 20 人. 30 人. 評価基準 2. (5.3% ). (10.7% ). (16.0% ). 評価基準 3. 34 人. 123 人. 157 人. 無解答. (18.2% ). (65.8% ). (84.0% ). 44 人. 143 人. 187 人. (23.5% ). (76.5% ). (100% ). 合計. 表 5 問 1 と問 4(2) のクロス集計. 96. 今回の調査により、子どもが生活場面と算数の速さを より関連させて考えられるような授業を考案していくこ との重要性が見えてきた。 第 1 に、速さを数値化する必要がある場面を理解し ている生徒は少なかった。しかし、子どもが数値化する 必要感をもつことで、速さを数値で捉えるよさが感じら れると共に、時間と距離という変数に着目できる。そこ で、例えば、速さを直接比較できる場面とできない場面 を比較し、数値化のよさを感得できる指導が期待される。 第 2 に、速さの仲間わけを生徒にさせたとき、速さ の変化に着目する生徒が少なかった。しかし、速さの変.

(8) 化に着目し、速さがほぼ一定のものとそうでないものを. うな場面の問題を取り上げ、速さの仮定の明確化ができ. 取り上げることによって、算数で取り扱う速さが明確に. るような指導が期待される。. なる。そこで、例えば、いくつかの速さのリストを速さ. 第 4 に、導入の速さ比べだけでなく、速さの指導全. の変化を観点として仲間わけし、速さがほぼ一定のもの. 体を通して、距離か時間をそろえれば速さ比べができる. とそうでないものの区別が明確になるような指導が期待. ことを強調した指導が期待される。. される。. 今後の課題として、生徒は場面に応じて速さの変化に. 第 3 に、問題場面を現実的にみて計算している生徒. 着目したりしなかったりすることが明らかになったこと. が少なかった。つまり、多くの生徒が、速さがほぼ一定. から、どのような文脈で生徒は速さの変化に着目するの. という仮定を理解しないで計算している可能性が高い。. か、さらなる調査分析をしていく必要がある。. そこで、例えば、意図的に速さの比例関係が成り立たな. さらに、今回は、神奈川県横浜市内公立中学校一校、. いような場面の問題を取り上げることで、速さの問題の. 中学 1 年生 187 名が対象であったが、今後、他の中学. 仮定を明確化できるような指導が期待される。. 校にも同様の調査を依頼して人数を増やし、より一般的. 第 4 に、速さ比べの問題で正答しているが、公式に. な知見を言えるようにする必要がある。また、モデリン. 当てはめている生徒がいた。しかし、生活場面では常に. グの視点を取り入れた指導法をより具体的に考案し、実. 公式に当てはめるのではなく、問題によって柔軟に対処. 践することで、その有効性を示していく。. できることが望まれる。このことから、速さの導入での み、公倍数と単位量あたりで比べる方法を比較するのでは. 引用・参考文献. なく、速さの指導全体を通して、距離か時間のどちらか. English.L.D(2006).“Mathematical modelling in. をそろえれば速さ比べができるという指導が期待される。. the primary school : Children’s Construction of a consumer guide”.Educational Studies in. 7 主な知見と今後の課題 本研究では、まず、モデリングの視点からどのような 内容を現行の速さの指導に加えて行っていくべきかを特 定することが目的であった。その結果、以下の 3 点が. Mathematics .Vol.63.pp.303-323. 池田敏和 (2007).「数学的モデリングと算数教育」『日 本数学教育学会誌』第 89 巻第 4 号.pp.2-10. 池田敏和 (2010).『数学的活動のバランスを重視した中. 特定された。. 学校数学科のカリキュラムの開発』平成 18 年―21. ①速さを求める際になぜ時間と距離に着目して数値化し. 年度科学研究費補助金研究成果報告 基盤研究 (C).. ているのかということ ②前提となる比例関係はどんな場合に考えられるのかと いうこと ③速さを公倍数で比べる方法と単位量あたりで比べる方 法を場面に応じて使い分けられること. p.111. 池田敏和 (2015).「フロントライン教育研究 算数科に おける数学的モデリングの研究」.『初等教育資料』 (924).pp.68-71. 川上貴 (2015).「グラフ電卓と距離センサーを活用した. さらに、今回特定された 3 点に関連した生活場面の速. 速さの導入に関する検討―「速さ」未習の児童の「文. さの問題を作成し、既習の中学 1 年生が、どの程度解決. 脈化」に着目して―」.『数学教育学会春季年会発表. できるのか明らかにし、今後の指導への示唆を得ること. 論文集』.p.69.. が目的であった。その結果、以下の 4 点が示唆された。. 川上貴・松嵜昭雄 (2012).「小学校における数学的モデ. 第 1 に、速さを直接比較できる場面とできない場面. リングの指導の新たなアプローチ:現実世界の課題. を比較すると共に、時間と距離という変数に着目できる. 場面からの問題設定に焦点をあてて」.『日本数学教. ような指導が期待される。. 育学会誌』.第 94 巻第 6 号.pp.2-12.. 第 2 に、いくつかの速さに関するリストを速さの変 化を観点として仲間わけし、速さがほぼ一定のものとそ うでないものの区別ができるような指導が期待される。 第 3 に、意図的に速さの比例関係が成り立たないよ. 杉山吉茂 (2008).「異種の量の割合」『初等科数学科教 育学序説』.東洋館出版社.p.220. 山本良和 (2012).「「速さ」の表現を考える」.『算数授 業研究 論究Ⅲ』.東洋館出版社.P.52.. 教育デザイン研究 第7号(2016年1月) 97.

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