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研究開発投資と企業の年齢の関係 : 景気循環と結びついた効果の研究

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― 景気循環と結びついた効果の研究 ―

      馬 場 正 弘

1 はじめに

 企業を取り巻く経済環境の循環的変化は企業の技術革新活動に複雑な影 響を及ぼす。景気拡大は新製品の販売や新工程の利用に資源を投入するこ とによって技術革新の成果を市場から回収するチャンスを増大させるが、 一方でこれは同時期にあえて技術革新への資源投入を行うことに伴う機会 費用を上昇させる。このため景気拡大は企業の技術革新への諸投入を減少 させる可能性を持つ。一方、景気拡大による業績の改善はリスクを伴う技 術革新への資源投入に対する制約を緩め、研究開発投資などへの予算を増 大させる可能性を持つ。これらの結果、技術革新活動は、景気循環に対し て反対方向に動くcounter-cyclical(逆サイクル)な性質と、同じ方向に動 くpro-cyclicalな性質を併せ持つと考えられる。本稿ではこの関係の検討に 際して、企業の設立あるいはその市場への参入以降に経過した時間の長さ (その産業での企業の年齢)に注目する。すなわち、参入後の経過年数が 小さい企業の比率が高い(若い企業が多い)という年齢構造を持つ産業と、 長期にわたって存続してきた企業の比率が高い(成熟した企業が多い)産 業とでは、景気循環という需要側の要因がその技術革新活動に関する意思 決定に対して持つ意味が異なるという仮説の検討を試みる。同時にこれは、 市場への参入をめぐる状況がもたらす技術革新への効果もまた産業の年齢 構造しだいで異なるという仮説とも関連する。

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2 技術および産業の特性がもたらす影響

2.1 機会費用と需要成長が及ぼす影響  長期的には利益をもたらすが短期的にはそれを直ちに回収できないとい う特徴をもつ技術革新活動については、景気拡大期にはその機会費用が上 昇し後退期には低下すると考えられる。このため、企業の合理的な行動を 仮定すると、景気拡大期においては研究開発への投資は設備投資など市場 の拡大からの収益を得るための活動に比べて不活発になり、景気後退期に は設備投資が落ち込む一方で、機会費用が低下した研究開発投資が相対的 に活発になるという関係があるという仮説が、Aghion and Saint-Paul [1998]、Barlevy[2007]、Francois and Lloyd-Ellis[2003]などによって提 起、検証されている。これについては、企業が直面する市場や技術の特徴 が、機会費用が低下するまで研究開発投資を待つことや、市場が収益的に なるまで技術的優位性の潜在能力の実用化を待つことが可能なものであれ ば、実際にcounter-cyclicalな動きが観察できると考えられる。しかし現 実には、企業の研究開発投資はこの関係から予想される以上に景気拡大に よる予想収益の増加や景気後退による落ち込みに反応する、pro-cyclicalな ものであることが知られている1 )。この理由として Fabrizio and Tsolmon

[2014]は、技術革新が急速で、何らかの技術を開発してもそれを速やか に市場に投入しなければライバルに追いつかれて独占的な利益を得る機会 を失うという特徴を持った市場や、特許による新技術の保護が弱く技術の 模倣が容易でその結果独占利潤を得る期間が短い市場においては、企業が 研究開発のペースを市場の景気の変動に合わせざるを得ないという点を挙 げている2 )

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2.2 企業の設立ないし参入からの時間が及ぼす影響  一方、こうした技術革新への態度をめぐっては、当該企業がその市場に 参入してから日が浅い若い企業であるか、それともその市場での活動実績 を持つ成熟した企業であるかという要素も影響することが指摘される。こ の要因は、当該市場における活動の経験や資金調達をめぐる信用の状態を 通じて、前述の需要要因や市場の競争性と密接に関連すると考えられ、実 証研究が行われている。そして、そこではこれらの関係は単純な一方向性 のものではないことが重視されている。例えばHuergo and Jaumandreu [2004]は、景気の拡大期と後退期を含む1990年代のスペインにおける製 造業、非製造業、および公益事業にまたがるおよそ2,300社のパネルデータ を用い、企業規模や企業活動に関する要因をコントロールしたうえで、技 術革新の収益性が参入企業の参入後の年数や既存企業の年齢しだいでどの ように異なるかを検討している。そして彼らは、①参入企業の技術革新の 収益性は高く、参入後の期間の経過とともに徐々に低下すること、②企業 規模の小ささが技術革新の少なさと明確な結びつきを持つことを考慮する と、小規模な参入企業には規模の不利さを上回る特別の要素があると考え られること、③古くから活動してきた企業ほどイノベーションを導入する 確率がより低いこと、などを明らかにした。一方で彼らは、この関係には 産業部門ごとに特有のパターンがあり、したがって産業部門の違いが重要 であることや、参入後の年数の効果については市場で生き残れた企業のパ フォーマンスの高さに関係していることも指摘している3 ) 。また、同じく スペインの1990年~ 2008年という長期間にわたる製造業に属する企業の パネルデータに基づいて行われた、企業の技術革新への投資の決断やその 金額の決定と需要側の要因との関係に関するGarcía-Quevedo et al.[2014] の分析においては、研究開発活動を行う可能性を刺激しその投資の集約度

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を決める要因に関して、若い企業と成熟した企業との間に違いが存在する 可能性が検討されている。彼らは、研究開発活動を実行するという意思決 定およびそのための投資を拡大するという行動において企業の年齢が何ら かの役割を果たしていることを示す研究は少ないとしながらも、需要側の 要因に注目した接近法を、企業の経験の長さに比例した過去の累積が現在 の意思決定に影響を及ぼすとする接近法と結合させた枠組みを用いて、企 業の年齢に関する仮説を提示し、検証している。 2.3 企業の年齢と研究開発の意思決定に関する仮説 (1)企業の年齢と技術的機会および需要要因の関係  シュンペーターは著書『資本主義・社会主義・民主主義』(1942)にお いて、独占による市場支配に対して完全競争が持つ優位は静学的な条件下 においてのみ成り立つ仮想的なものであり、絶えず変化する動態的な現実 経済にとって、独占的な市場において大規模組織または大規模支配単位が 操業するという戦略は「経済進歩、とりわけ総生産量の長期的増大のもっ とも強力なエンジンとなってきた」と述べた4 ) 。そして今日に至るまで、長 期的な創造的破壊のプロセスにおいて企業の資金調達と市場集中の状況が 技術革新をめぐる様々な活動の直接の決定要因となっているとする、シュ ンペーター仮説と呼ばれるこの予測を検証する様々な理論、実証研究が行 われてきた。そこでは、大企業ほど外部資金の獲得の容易さと利潤の蓄積 による豊富な内部資金を有することから、企業の資金上のパフォーマンス を表すものとして企業規模がしばしば注目された。これは、多くの研究に あるように大企業ほど流動性制約にさらされない傾向があることによる。 ここから、シュンペーター仮説の議論においては、企業の研究開発投資へ の積極性は企業規模と正の相関をするとされる。また、研究開発投資から の収益をより占有しやすい市場支配力を持つ大規模企業ほど技術革新への

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より強い誘因を持つという仮説や、事業や製品の多角化を伴う大企業ほど 内部知識のスピルオーバーの利益を受けやすく、また新しいアイデアの利 用方法を理解するより良い位置にあるため、技術革新において有利な位置 にあるという仮説も提起され、実証分析が行われてきた5 )  こうした見方に関しては、技術革新に関して企業が持つ技術的機会の拡 大という面に着目するテクノロジー・プッシュ仮説と並んで、Schmookler [1966]をはじめとして、Scherer[1982]、Geroski and Walters[1995]

などにおいて、規模に関する収穫逓増、楽観的期待、資金制約の低下など を通じた需要と市場の成長が技術革新活動を加速する基本的な要因である とみる、ディマンド・プル仮説が提起、検証されている6 )。これらの仮説 については、Dosi[1988]などが指摘するように、現実の技術変化のパター ンは様々なタイプの市場のインセンティブと技術的機会の相互作用の結果 であると考えられており、最近の実証研究の傾向は、技術的機会と需要側 の要因を強調する 2 つの仮説を結合させて分析の枠組みをつくるというも のとなっている7 ) 。以下ではGarcía-Quevedo et al.[2014]に従ってこの 2 つについて要約するとともに、彼らが提起した実証分析上の仮説について 考えてみる。 ①テクノロジー・プッシュ仮説からの接近法 ~ 技術革新の経験と累積の 効果  企業の技術革新活動の規模と方向に対しては、単純に売上高が大きけれ ば支出が増えたり、売上高が大きな分野へシフトしたりするとは限らない。 現在の技術革新活動は、過去のその企業の技術革新活動の決断および大き さと密接に関連する部分を持つ。例えばCaballero and Jaffe[1993]は、 発明上の新しいアイデアが生み出される源としての技術に注目し、民間の 研究支出とならんで、既存のアイデアの公的ストック、知識の蓄積の過程、 新しい知識の生産を条件づける要因に焦点を当てている8 )。このように、

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また累積的であるという一面を有する9 ) 。ここからは、過去の技術革新活 動においてより経験を積んだ成熟した既存企業は、その経験が少ない競争 相手に比べてより強い経路依存性を持ち、過去の活動の結果の累積によっ て左右される面が大きく、その結果、両者の間では現在の研究開発活動に 対する意思決定に違いが生まれる可能性がある。これについて、García-Quevedo et al.[2014]は以下の仮説を提示した10 )  仮説 1 「研究開発を実行するという決定と、これまでの決定に基づいて 行われる支出は、若い企業の方が成熟した企業よりも持続的でな い。」  これによれば、過去の研究開発活動の活発さが現在の研究開発活動への 態度に影響を及ぼす結果として、当該産業におけるこれまでの研究開発投 資の実績が多い成熟した企業の方が、現在の研究開発投資への積極性は強 まり、支出は多くなる。反対に、当該産業の分野での研究開発の経験が浅 い若い企業ほど、新たな研究開発投資を行うという決断に踏み切りにくく、 投資額や新規の着手件数が少なくなると考えられる。 ②ディマンド・プル仮説からの接近法 ~ 需要変動および資金制約の影響  一方、企業の年齢に関する相違は需要側からも企業の活動に影響を及ぼ す。すなわち、異なった年齢の企業は需要の変化に対して異なった研究開 発の敏感さを有する可能性がある。とりわけ、若い企業ほど、資金調達や 流動性の制約が研究開発投資の決定に及ぼす影響をより強く受けると考え られる。これには様々な理由が挙げられるが、García-Quevedo et al. [2014]は特に以下の点を指摘している11 )   ・若い企業は自身に関する市場での良い評判をまだ形成できず、資本 市場の不完全性を緩和させる重要な要因である、担保とすることの できる資産もわずかであることが一般である。   ・若い企業はその定義により過去の利潤の蓄積がわずかであり、した がって内部資金にあまり頼れない。

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  ・成熟した企業と対照的に、新興の企業は確立した、長期的な関係を 銀行と結ぶことに頼れない。すなわち彼らの研究開発プロジェクト への銀行の融資は、より高い破たんリスクがあるとして限定される かもしれない。  結果として、企業の年齢と流動性制約の間に負の関係があるとの前提に 立つと、不確実で高コストとみなされやすい若い企業の研究開発活動は、 キャッシュフローの供給源としての需要の拡大にいっそう敏感になると考 えられる。その結果、経営環境や売上高といった需要側の諸要因は、若い 企業の研究開発活動に対して、より強い正の影響をもたらすと考えられる。 ここからGarcía-Quevedo et al.[2014]は以下の仮説を提起する12 )  仮説 2 「若い企業の研究開発活動は、正の需要変動、売り上げの増加、 輸出の拡大に関して、そうでない企業よりもより高い弾力性を有 する。」

 この仮説に関しては、Fabrizio and Tsolmon[2014]やAghion et al. [2012]のモデルの文脈においては、García-Quevedo et al.[2014]が挙げ たものと同様の理由から、参入から時期が浅い若い企業ほど信用や資金の 制約が強いことが原因で研究開発投資を戦略的すなわち counter-cyclical に実施することが困難である一方で、それまでの成果の蓄積と事業の成功 の実績をアピールできる既存企業の場合は、資金調達が容易であることや 関係者に対して強気に出て短期的な利益を捨てて長期的な戦略をとること を説得しやすい、と解釈することができる。この方向から仮説 2 をとらえ る場合も、やはり同様の結果が予想される。すなわち参入が遅く若い企業 ほどpro-cyclicalな研究開発投資にならざるを得ず、反対に成熟した既存企 業ほどcounter-cyclicalな行動が容易になる。 (2)企業の年齢と市場集中の関係  一方、ある産業分野における企業の年齢は、その市場に対する参入の容

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易さとも深く関連する。すなわち、参入障壁が低く新規参入が容易な成長 産業の場合、積極的な参入が発生する結果年齢の若い企業の比率が上がる と考えられ、これは前述の企業の年齢と技術革新との間の関係に影響を及 ぼす。Fabrizio and Tsolmon[2014]の議論を拡張すると、この市場の競 争性が研究開発投資のタイミングに影響を及ぼすという経路については、 競争的な市場ほど技術革新の速度も大きく、代替的な技術の開発によって 既存技術の優位性が失われるまでの時間も短く、さらに短期的な利益を生 み出しにくい活動への予算上の制約が大きいと考えられる。そして、当該 市場における実績が少ない若い企業ほどその分野での技術的な経験からの 優位性が低く、かつ予算上の制約にも直面しやすいことから、新規参入が 容易な産業ほど技術革新が短期的な景気循環による需要の変動に振り回さ れる可能性が高まる、という仮説を立てることができる。  さらに、研究開発投資の決定に対して市場構造が影響を及ぼすとき、 シュンペーターが指摘したような市場支配力と専有可能性の高さという要 因に関しては、既存の大規模な企業の方が若い小規模な新規参入者よりも 優位な立場にいると考えられる。すなわち、最近参入した若い企業は、よ り高い集中度から得られる利点を活用するその産業の中核的な企業ではな い。また、より大規模で、経験と吸収能力に富む古くからの企業は、範囲 の経済を利用するうえでもより優位な立場にある。したがって、製品の多 角化もまた若い企業よりも成熟した革新的企業にとっての研究開発の推進 要因と予想される13 ) 。  García-Quevedo et al.[2014]は、このような参入障壁や集中度、多角 化の程度などの要因は時間の経過とともに安定して推移すると考える。そ の場合、研究開発投資の額の大小を決める以前の問題として「研究開発を するかしないか」を決める際に、企業が市場集中の状況を考慮する可能性 がある。ここから彼らは次の仮説を検証している14 )  仮説 3 「研究開発支出を行うという決定を促すにあたって、集中度と多

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角化は、若い企業の場合よりも成熟した既存の企業の場合の方が より重要である。」  本稿では、産業組織論などの分野において市場構造および行動の競争性 を測定する尺度として広く用いられる指標として高額な固定費用の存在や 実際の新規参入の実績などにも注目し、市場の競争性という要因を直接表 す指標を用いて検討を試みる。 2.4 各仮説と本稿の枠組みの関係  企業の年齢や経験に関する上記の仮説について、García-Quevedo et al. [2014]は製造業に関する個別企業の大規模なパネルデータを用い、研究 を行っているか否かおよびその投資額に注目したモデルを検討しているが、 本稿ではFabrizio and Tsolmon[2014]が採用したモデルの中にこれらの 要因を位置づけ、下記の方法を用いてこれらの仮説を景気循環とそれを表 す需要の変動と関連付けて検討することを試みる。

 なお、本稿で用いるデータはFabrizio and Tsolmon[2014]やGarcía-Quevedo et al.[2014]をはじめ多くの実証研究が使用している企業の個 票データではなく、ある程度集計された産業別集計データに基づくパネル 分析である。したがって検討される関係も、個々の企業が各種の技術革新 に関する決定要因にどのように反応するかではなく、技術革新への意思決 定に関する産業全体での傾向が、その産業を構成する企業の参入時期でみ た平均的な新しさやその産業が直面する市場支配の状況によってどのよう に影響されるか、という視点からのものとなる。同様に、元の仮説におけ る研究開発活動を行うか否かに関する意思決定についても、その産業の中 でどのくらいの企業が研究開発活動を新たに行うという決断をしたかとい う視点からの検討となる15 )  まず仮説 1 については、若い企業ほど研究開発への意思決定に消極的と

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予想されるが、これは研究開発支出への需要変動の効果とは独立した、過 去の研究開発の経験が影響を及ぼすメカニズムの存在に相当する。すなわ ち年齢や経験年数は過去の研究開発の蓄積の代理変数として、モデルにお いては他のコントロール変数とは別個の独立した変数として考察される。 この仮説によれば、企業の平均年齢が若い産業ほど、研究開発投資に新た に参加しようという傾向は小さく、また平均的な研究開発投資額は小さく なると考えられる。  仮説 2 については、需要変動の研究開発への意思決定に対する効果は、 外部資金の調達にかかわる信用制約や内部の資金制約が強いすなわち信用 と蓄積が少ない若い企業ほど深刻に作用し、そのような企業では需要側の 要因がより強く生じると考えられる。このモデルにおいては、企業の平均 年齢が若い産業ほど、需要側の要因の変化に対して研究開発活動はより強 く影響されると考えられ、その結果景気循環とともに増減する売上高で代 理した需要要因とクロスさせた積の項の係数が有意に正の値をとることが 明らかになれば、この仮説が支持されることになる。  仮説 3 については 2 通りの方法を検討する。ひとつは、企業の年齢が市 場支配力を通じて研究開発の意思決定に及ぼす影響を見るもので、その産 業における市場支配力の指標とその産業を構成する企業の年齢の積の項に 注目する。この場合、企業の年齢は研究開発への投資額そのものというよ りも、もっぱら研究開発活動を行うか否かに関する決定に対して影響を及 ぼし、年齢が若い産業ほどそれが属する市場の集中の程度と研究開発を新 たに行おうとする決定との間にはマイナスの関係が見いだされると考えら れる。もうひとつは、直接企業の年齢を見るのではなく、市場の支配力が その市場における企業の年齢を高める市場の安定性をもたらすと考え、こ れが需要要因の効果を通じて影響を及ぼすというものである。そこでは、 市場支配力の強さしだいで需要要因を通じた研究開発活動への影響が異な るかを検討するために、産業の市場支配力と市場の需要要因との積の項の

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係数に注目する。そして市場が安定的な産業ほど、その市場の需要要因が 研究開発活動を行うか否かに関する決定に及ぼす影響が弱まるという仮説 を検討する。

3 モデルと計測結果

3.1 モデルと変数の選択 (1)利用するモデル

 本稿でのモデルはFabrizio and Tsolmon[2014]を基本とする。すなわ ち研究開発投資額の成長率を、当該産業の財務状況などのコントロール変 数の下で、景気循環とともに変動する需要要因としての売上高成長率、属 する産業が有する企業の研究開発への意思決定に影響を及ぼす技術革新上 の特性に関する変数、ならびに両者の積へ回帰させる。そしてこのとき、 売上高成長率の係数が正であれば技術革新はpro-cyclicalであるが、積の 項の係数が有意に負であれば、そのような特性を持つ産業はcounter-cyclicalな側面を持ち、技術革新への戦略的な意思決定を行いやすい環境 にあることがわかる。特に、参入後日が浅くその分野での実績を持たない 企業が多い産業ほどpro-cyclicalityが強く、反対にその分野での実績に富 み、市場支配力が強い産業ほどcounter-cyclicalityが強いという仮説を検 証する。計測においては、上記の要因を想定しつつ、Fabrizio and Tsolmon [2014]と同じく次のような定式化を行う16 )。これは、 年の 企業の研究

開発投資の自然対数値の 1 階階差を変数 、 1 階の階差をとるコン トロール変数を 、当該 産業の産出の変化を として、

と書かれる。すなわち、今期の研究開発投資額の変化率は、今期の産出額 の変化率だけでなく、それに産出の変化を通じて研究開発活動に影響を及

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ぼすと考えられる要因を乗じた変数の動きにも依存し、さらに今期ならび に前期のコントロール変数の変化率によって左右される。このとき が企業の年数に関する変数で、これと産出変化の積の項の係数 を計測 することによって、企業の参入後の年齢が持つ、景気循環に伴う産出の変 動を経由した技術革新の意思決定への影響を測る。 (2)技術革新とその決定要因に関する変数  被説明変数としては、支出額については 1 社あたり研究開発投資支出の 変化率GRD および研究開発投資支出の対設備投資比率の変化率GRDI を 用いる。出所は経済産業省『企業活動基本調査』における産業別集計額で ある。また、本稿では研究開発活動を行うか否かの意思決定に関して、同 じく産業別の集計量に基づいて次の方法で扱う。すなわち、「研究開発を 行う企業数の多寡」をもってその産業の研究開発活動の有無の状況を測る こととし、これが上昇するということをもって新たに研究開発活動に参入 する傾向が高まったとみる。すなわち、各産業について企業活動基本調査 における研究開発を行っている企業の割合を計算し、その前年に対する変 化(%ポイント)DNOTRD をデータとした。  一方、説明変数として注目する要素については、需要要因としての売上 高成長率GSALES との積をとる変数として、その産業がどの程度新しい 企業の参入によって構成されているかを表すための「当該産業に参入後20 年以上経過している企業が全体に占める割合」(文部科学省科学技術・学 術政策局『民間企業の研究活動に関する調査報告』による、企業に対する アンケートの集計値)AGE20 を、市場への参入の容易さに関する企業の 認識を測ったものとしての「過去 3 年間における当該市場への新規参入企 業数」(同調査における企業に対するアンケートの回答平均)ENTRY を用 いる。また、高い参入障壁を形成する一因として高額な事業用の固定資産 の存在に注目し、各産業の 1 社あたりの(土地を除く)固定資産(単位10

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億円、『企業活動基本調査』による)の大きさASSET も用いる。 (3)コントロール変数  説明変数のうち、企業業績および活動などに関するコントロール変数は 以下の通りとした。まず、当該産業が市場において直面する需要の大きさ を表すものとして、各産業の 1 社当たり売上高変化率GSALES を用いる。 また、企業規模を表すものとして 1 社当たり従業員数変化率GEMPL 、収 益性を表すものとして総資産経常利益率変化率GPROF、その他長期およ び短期的に調達可能な資金を示すものとして負債比率(負債/資産)変化 率GDEBT と流動比率(流動資産/負債)変化率GLIQ を用いる。なお、 これ以外の計測結果に影響を及ぼしうる産業ごとの違いを表す要因につい ては、各産業特有の要因としてパネルデータによる分析の定数項に一括し た。対象とした産業は製造業、情報通信業、電力・ガス業内の業種に絞り、 企業活動基本調査の 3 桁分類による集計とした17 ) 3.2 計測結果  以下では、上述のモデルと変数について、2010~ 2013年の 4 年間分の パネルデータを用いて行った回帰分析の結果を示す18 ) 。 (1)産業を構成する企業の年齢自身が及ぼす影響  まず、説明変数は「企業の年齢」を独立した変数として組み込む一方で、 これと売上高の成長率との積を変数とし、 3 つの被説明変数についてこれ を適用した結果を示す。 ①研究開発投資の伸び率への作用  まず、当該産業における年齢構成で見た産業の若さが直接および需要要 因への作用を通じて研究開発投資の大きさに及ぼす効果に関する計測結果

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を表 1 に示す。  ここで注目するのは、参入経過年数20年以上の企業の比率AGE20 自体 の係数の符号(仮説 1 )および、これと売上高成長率との積GSALES × AGE20 の係数の符号(仮説 2 )である。計測結果(1-1)式および(1-2) 式からは参入経過年数自体は有意ではなく、必ずしも若い企業から構成さ れる産業ほど研究開発に消極的あるいは蓄積の大きい成熟した産業ほど研 究開発に積極的という関係は認められなかった。すなわち産業を集計した レベルでの計測からは仮説 1 は支持されなかった。これに対して、同じ計 測において売上高成長率との積の項について有意な負の係数、売上高成長 率そのものについて有意な正の係数が得られた。ここから、研究開発投資 の成長率および研究開発投資比率の成長率は需要側の要因が好調であるほ

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ど高く、全体では pro-cyclical な関係があるが、これらの効果は参入経過 年数が長い成熟した企業が多い産業では一部が打ち消され、短期的な需要 の変動に左右されない研究開発への意思決定が行われていることが明らか となった。すなわちこれは、参入後の経験が長いほど需要の動きに左右さ れずに戦略的に研究開発に関する決断を下す余地が大きいという仮説 2 お よび、これと結びつけた Fabrizio and Tsolmon[2014]の仮説と合致する。 ②研究を行うか否かへの作用  次に、支出額ではなく研究開発を行うかどうかという選択に対する同様 の作用を検討した計測結果を同じく表 1 で見てみる。  ここで被説明変数は研究を行っていない企業の比率の変化であるから、 これがマイナスで大きな値であれば研究を行う企業の比率がより高まって いることになる。すなわち産業の参入経過年数との関係は、これを被説明 変数とした計測では研究開発投資成長率を用いた場合と反対の符号条件を 持つ。(1-3)式においてもやはり参入経過年数自体は有意な符号を持た なかったが、売上高成長率とは有意な負の関係、売上高成長率と参入経過 年数の積については有意な正の関係が見られた。すなわち、売上高成長率 が高い産業ほどその産業において研究を行わない企業の比率は低下(研究 への取り組みが積極化)するが、その産業での実績が長い企業が多くを占 める産業ほど売上高の変動に依存せずに研究開発活動への意思決定を行っ ていることがわかり、やはり仮説 2 を支持する結果となっている。 (2)市場の競争状況が及ぼす影響  次に、その産業における市場支配力ないし競争の状況に関する仮説 3 に 関する計測結果を示す。ただし、本来の仮説 3 の検討により近い、市場の 競争性の状況と企業の年齢の積をとった項を変数として考慮した場合には、 本稿のデータによる計測結果からは有意な関係は見いだせなかった19 )。そこ で、本稿ではこれに代えて需要状況との関係を通じた影響を以下の方法で

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計測した。すなわち市場の競争性を表す指標として最近の参入状況および 土地を除く 1 社当たりの固定資産水準を用い、売上高成長率との積をとっ た場合について上記と同様の検討を行った。そこでは被説明変数の候補の うち、 2 種類の研究開発投資成長率変数については符号条件のいかんにか かわらずまったく有意ではない結果しか得られなかったため、本稿では研 究を行わなかった企業の比率を被説明変数とした結果のみを示す。ただし、 このような状況は、属する産業における市場支配力に関する要因は、どれ だけの大きさの研究開発投資を行うかという決定の前の段階である、研究 活動に着手するか否かにもっぱら影響を及ぼす、というGarcía-Quevedo et al.[2014]においても認められた関係と一致している。ある産業にお ける研究を行っていない企業比率の変化への過去 3 年間におけるその産業 への参入企業数および固定資産額の影響を、直接変数とした場合と売上高 成長率との積を変数とした場合とで計測した結果を表 2 に示す。  まず直近の 3 年間の当該産業への新規参入件数(回答企業の認識に基づ く)を用いて参入の容易さを考慮した(2-1)式の場合は、参入への障壁 が小さい競争的な産業ほど counter-cyclicality が弱まるという結果となり、 そのような産業では需要要因が重要であるというモデル本来の関係が認め られる。なおこの新規参入件数を産業の若さの指標とみると、この計測結 果は前項の結果とも整合する。すなわち、 3 年間に参入した企業数が多い と自身が感じている産業の企業ほど、長期的な戦略よりも短期的な需要要 因の増減を意識した研究開発に関する決断をしていることになる。  さらに、 1 社当たりの土地を除く有形固定資産額を変数に用いた場合も これと同様な結果となった。すなわち、(2-2)式において固定資産その ものの係数は有意ではないが、売上高成長率との積を取った変数の係数は 有意な負の値であり、事業に際して多額の固定資産を必要とする産業とい う面からみた場合も、参入による競争にさらされにくい産業において、景 気循環に左右されにくい研究開発に関する意思決定が行われていることを

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示す。  これらは、参入に高い固定費用を要し、新規参入企業が多く活発な競争 にさらされる程度が小さいという、構成する企業が安定した産業ほど、技 術革新活動が短期的な景気の変動に影響されず、戦略的に行われがちであ るという関係を示しているといえる。

4 結論

 シュンペーター仮説は企業の規模、多角化の程度、市場支配力の程度が その技術革新活動を左右する原動力になるという仮説であり、また景気循 環に伴って変化する市場の需要要因と技術革新活動の間に同様な関係を見 出そうとする仮説もあった。これらについては数多くの実証分析が行われ

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てきたが、本稿で検討した関係は、これらの仮説が成立するかどうかおよ びその効果の大小がその企業の年齢によって異なる、というものであった。 そしてそこからは、この企業の年齢という要因は産業部門の技術革新活動 が景気循環に左右される程度に影響を及ぼしており、経験の古い企業が多 く、また参入が少ない安定した構造を持つ産業ほど、足元の景気循環に左 右されない研究開発投資が行われているということが明らかになった。  少子高齢社会を迎えた日本において、産業における技術革新がもたらす 生産性上昇の加速は、付加価値創出の担い手である労働力の減少への対処 としても注目される。そこでは、物的生産量の拡大を目指す製造業におけ る生産性上昇だけでなく、非製造業を含めたより効率的な財サービスの提 供を可能にする各種のアイデアの実用化や、各産業でのその活用を可能に する産業および社会自体の構造の変革も含めた、シュンペーター本来の意 味でのイノベーションのいっそうの追求が必要となる。そのための手段と して公的部門によるこれらへの各種の助成や優遇措置が行われるが、これ らの措置を政策が意図する通りに産業自身が積極的に革新に取り組むこと を促す誘因とするためには、各産業の中でも特にどのような特徴を持った 企業を対象として支援策を講じるのが効果的であるかを見極める必要があ る。すなわち、個別の企業への支援における対象の選択という意味で、企 業の個票データを用いた分析には技術革新活動が効果的に刺激されうる条 件をみたす企業とは何かを明らかにするという意味もある。  これに対して、本稿で検討した産業別データを用いた分析では、明確に 特定の企業のタイプに焦点を絞った分析結果を提示することはできないが、 どのような特徴を持った産業が技術革新活動への支援策に反応しやすいか という点から、政策効果の大小を検討することはできると考えられる。本 稿の結果は、新規参入が活発で若い企業から構成された産業ほど景気循環 に伴う需要動向の制約に遭遇しやすく、したがって研究開発のコスト、技 術革新のタイミング、および市場化のタイミングを考慮した戦略的な研究

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開発活動が阻まれ、その長期的な促進が阻まれていると解釈することがで きる。そしてこれは、そのような産業への積極的な支援を通じて短期的な 収益の追求にとどまらない長期的視野に立った技術革新を促すという政策 を行う根拠の一つとなると考えられる。 注 1)Barlevy[2007], p.1131.

2)この関係について馬場[2015]では、Fabrizio and Tsolmon[2014]や Aghion et al.[2012]のモデルに依拠しつつ、日本の製造業を中心とした産 業集計量のパネルデータ分析によって検討を試み、両者の間のpro-cyclicalな 関係の優位さが当該産業の属する市場の技術的特性および競争上の特徴しだ いで強まる場合と弱まる場合があることを見いだした。すなわち、特許の保 護の強さやそこへの依存の程度および競争性の指標に注目し、研究開発投資 額ならびに能力開発投資額の対設備投資額と企業業績の関係に影響を及ぼす 要因として、当該産業における技術の成長速度、特許による保護の状況、お よび直面する市場の競争性の程度という観点から指標を選んだ。その結果、 技術革新に積極的で進歩のスピードが大きい産業、技術開発をめぐる競争が 激しい産業、競争性が高く市場に競合者が多いと各企業が考えている産業に おいて特に、技術革新への投入が企業業績に左右されやすいことが明らかと なった。

3)Huergo and Jaumandreu[2004], pp.205-206. 4)Schumpeter[1942], 邦訳 p.164.

5)例えばKamien and Schwartz[1982]やScherer[1984]などは、研究開 発および生産性で見た技術革新と市場集中、多角化、企業規模の間の関係に 関する包括的な分析である。 6)シュンペーター仮説においては、技術革新にとって重要な要素として、こ うした技術的機会、需要要因に加えて、技術的成果の専有可能性の大小があ る。積極的な研究開発活動を通じて技術的成果を獲得するためには、成果と しての新技術の専有可能性の高さを通じてそこからの収益を確保し、費用を 回収することが可能であることが重要である。一般には特許制度の充実によ る成果の保護がそのための政策とされるが、その一方で特許制度が新しい技 術的成果を過剰に保護することによるその分野でのいっそうの技術革新の障 害や競争の阻害要因になりうるという側面も持っており、その効果は単純で はない。また企業が成果の公表を伴う特許による保護よりもあえて特許を取

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得しないことによる知識の秘匿を重視する場合、特許制度は必ずしも技術革 新と関連を持たないこともありうる。これらについては、馬場[2015]にお いて本稿と同様のモデルによって需要側の要因との結びつきという観点から 検討を行った。

7)García-Quevedo et al.[2014], p.1545.

8)Caballero and Jaffe[1993]は、今日の発明家はより高くなり続け、陳腐 化したり衰えたりすることのない巨人たちの肩の上に立っているという ニュートンの暗喩でいうところの、この肩の高さがこれまでの発明の経路に 依存して内生的に決定される様子を明らかにすることを試みた。Caballero and Jaffe[1993], p.18. 9)さらに研究開発への投資は学習、構造的慣性と累積的補完性によっても特 徴づけられる。García-Quevedo et al.[2014], pp.1545-1546. 10)García-Quevedo et al.[2014], p.1546. これについては、彼らのモデルでは 研究開発投資に関する 1 階の自己回帰過程として想定されている。 11)García-Quevedo et al.[2014], p.1546. 12)García-Quevedo et al.[2014], p.1546. 13)García-Quevedo et al.[2014], p.1546. 14)García-Quevedo et al.[2014], pp.1546-7. 15)この産業別集計データによる検討という方法をとることによって、García-Quevedo et al.[2014]における仮説の分析と密接に関連しつつも、それと は異なった視点からの解釈と限定を必要とする場合も生じる。

16)Fabrizio and Tsolmon[2014], pp.665-666.

17)いずれも経済産業省ホームページで公表されている『企業活動基本調査』 の産業分類および計数値による。なお、各産業内で「その他」産業として括 られた分類は除く。また重複を避けるために各分類における最下位の産業区 分のみを用いた。 18)推定にはTSP5.0によるパネルデータ分析を用い、各々について固定効果 モデルと変量効果モデルの選択に関するHausman検定の結果を付記した。 また、推定結果はTSPによる不均一分散に対して頑健性のある標準誤差に基 づいて評価した。回答企業数が少ない場合に未公表値が存在するため、これ はアンバランスパネルデータになっている。また各計測ではFabrizio and Tsolmon[2014]に従ってコントロール変数についてラグなし、 1 期ラグの 双方を同時に変数としている。 19)本稿の計測において、企業の年齢との積をとった市場の競争性の状況が技 術革新活動の活発さに対して有意な関係を有さなかった点については、もち ろん計測方法やデータの問題による分析の失敗とも考えられるが、見方に よってはシュンペーター仮説のもうひとつの側面とむしろ整合していると考 えることも出来る。すなわち、動態的経済に注目したとき市場の集中や支配

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が完全競争に比較して技術革新活動により好ましい影響を及ぼす一方で、 シュンペーター的な意味でのイノベーションは企業間の動態的な競い合いの 中から生まれることを考慮すると、市場支配力の強さが企業の年齢の高さを もたらす市場の構造の安定性と組み合わせられたとき、イノベーションへの 動機はむしろ強まらないという関係である。シュンペーターは「独占者」の 定義そのものを問題とする際に、静態的な完全競争の効率性の根拠となる独 占の弊害を認める条件である長期的独占について「純粋なる長期的独占の場 合はもっとも稀な現象たるに相違ない」といい、「公共当局によって支持さ れるのでなければ」持続しないと述べた(Schumpeter[1942]邦訳、p.154)。 今回検討したような、企業の平均年齢が高いだけでなく、同時に競争が阻害 されるような構造が安定した産業は、いわゆる「そこに安眠すべきベッドの ごときもの」(同書、p.157)に近い傾向があることを示唆しており、したがっ て独占がイノベーションを支持しないというこの結果はシュンペーター仮説 と矛盾するとも言い切れない面を持つ。 参考文献

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参照

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