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文 献 紹 介
ス ズメバ チ ・パ ワー の秘 密 を説 き明 か す
一 幼 虫 の 唾液 成 分 の比 較 研
究-スズメバチ属 (Vespa)の昆虫 は,高度 な社会
生活 を発達 させ た真社会性昆虫 の 1グループ
と して生態系 の上位 に君 臨 して い る.働 き蜂
は,大形なが ら軽やかに飛 び回 って は昆虫類 を
狩 り,大顎で噛みほ ぐし肉 ダンゴとす るが,腹
部 の第 1節 と2節 の問が細 くくびれて いる上
に消化器系の構造 も簡単で,B]形物 を利用で き
ない構造 になっている (図 1).それでは,1日
何十km も飛 び,旺盛 に餌集 めを している彼 ら
の活動 を支えているエネルギー源 は何であろう
か.実 は,幼虫 の唾液腺か ら分泌 され る透明の
液状物質 (図2)が,それなのであ る.働 き蜂 は
野外で昆虫を捕 らえ,それを幼虫 に与 え,お返
しに高栄養の唾液を貰 って いるとい うことにな
る.見方 を変えれば,働 き蜂 は幼虫 の胃袋で消
化効率の悪 い餌 を消化 させ,唾液腺でよ り栄養
的に濃縮 された物質 に作 り替 えさせているとも
いえよう. この典型的なギ ブ ・ア ン ド・テイク
の関係 (栄養交換)が彼 らの社会 を支える基盤
にな っているといって も過言ではない.論文の
著者 らは,日本産の
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種 のスズメバチ(コガタ,
キイロ, オオ, モ ン, ヒメ)幼虫か らこの "ス
ズメバチ ・パ ワー"の源である唾液を集 め,生
体 ア ミノ酸,加水分解 ア ミノ酸および炭水化物
について定量 ・定性分析 を行 い比較検討 した.
その結果,D-グル コースが 5種すべてか ら見
出だされ, トレ- ロースが ヒメスズメバチを除
く4種か ら検 出 された.また,D-グルコースと
図1 オオスズメバチの働き蜂と肉ダンゴ
図2 唾液を分泌する幼虫
トレハ ロースの総 和 は全 炭水 化 物 量 の
11-12%であ った.一方,生体 ア ミノ酸 の組成 を見
ると
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種で共通 していた. シスチ ンとシステイ
ンはほとん ど含 まれていないか検出 されなか っ
た. グルタ ミン酸 とアスパ ラギ ン酸 も少 ない反
面, プロ リン, ス レオニ ン, グ リシンは多 く含
まれていた.唾液 に含 まれ る主要生体 ア ミノ酸
につ いて は種 の中 で大 きな変動 はな く, コガ
タ,キイロ,オオはプロ リンが, モ ンとヒメは
ス レオニ ンであ った.オオ, モ ン, ヒメの3種
ではグ リシンも多 く認 め られた.唾液を加水分
解後 に測定 したア ミノ酸 の総量 の76%以上が,
生体 ア ミノ酸 で占め られていたが, オオスズメ
バ チで はその割合 が低 く36%であ った。分析
結果 に基づ き調合 したア ミノ酸溶液 をスズメバ
チに与 え ると攻撃 行動 が緩和 された。 著者 ら
は,幼虫の唾液がスズメバチの生活 に無 くてほ
な らないものであ ると結論付 けている.
最近 の阿部博士 (理化学研究所) の研究 によ
れば,十数種のア ミノ酸 や炭水化物 を唾液の構
成比を再現 した "人工 スズメバチ唾液"をネズ
ミに与え ると筋肉疲労 が抑 え られス タ ミナも増
す という結果が得 られているという. スズメバ
チ幼虫の唾液が ヒン トとなったスポーツ ドリン
ク開発の日は近 いか もしれない. (小野正人)
Abe, T., Y, Tanaka, H. Miyazaki and Y.
Kawasaki,1991. Comparative study of the
compositionofhornetlarvalsaliva,itseffecton
behaviourandroleoftrophallaxis. Comp.Bi
o-chem,Physiol.99C:79-84.