「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス ― 大学生の居場所に関するエピソードから ―
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(2) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス ― 大学生の居場所に関するエピソードから ― 菅原 夏海*・浅井 継悟**. Transformation process from “Lack of Ibasho” to “Ibasho” ― “Ibasho” episodes of university students ―. 要 約 本研究では, 「居場所がない」状態が「居場所がある」状態になるために必要な条件について検討した. まず,研究Ⅰで大学生が居場所をどのように捉えているかを調査し, 「居場所のなさ」を扱う妥当性に ついて検討した.次に,研究Ⅱにおいて質問紙を用いて居場所のなさの強さと居場所がないと感じた時 に用いるストレスコーピングの強さから分析対象者を4つに分類し,それぞれの分類の特徴について明 らかにした.研究Ⅲでは面接調査により, 「居場所がない」状態がどのようにして「居場所がある」状 態に至るのかを検討した.これらの結果から, 「居場所のなさ」を解消するには【環境の変化】 , 【行動 の変化(行動的) 】 , 【行動の変化(非行動的) 】 , 【思考の変化】,【他者関係】の5つの条件があることが 明らかになった.また, 〔解消のために必要だったこと〕というカテゴリーもあげられ,これらの条件 を満たさなかった場合, 「居場所がない」感覚が解消されないことも明らかになった.. 問題と目的. る概念である.例えば,居場所の定義について益 川(2012)は『一定の定義が存在するわけではな. 1992年,文部省学校不適応対策調査研究協力者. く,扱われている「居場所」の種類も様々である』. 会議が『登校拒否(不登校)問題について―児童. としている.さらに,藤原(2010)は,居場所の. 生徒の「心の居場所」づくりを目指して―』とい. 定義が確立していないことに対し, 『居場所づく. う報告書を出したことにより,学校内での「心の. りを行い「場」を創った時,そこが居場所となっ. 居場所」づくりの必要性が指摘された(文部科学. ているか判断する明確な基準は現在のところな. 省,1992) .そうしたために,本来物理的な場を. い』また,「ある場所が居場所として十分な機能. 示していた居場所は現在, 「心の居場所」といっ. を果たしていたとしても,定義が明確でないため,. た心理的な意味合いを含む言葉に認識されるよう. 研究者等がその場所を他の場所と比較しようとし. になった.そして,現在に至るまでに居場所につ. た場合,それを比較することすらできない.」とし,. いては様々な視点から研究がされている.しかし, 問題視している.そのため,居場所と判断する明 確な基準や他の場所と比較できる指標が今後必要. この居場所という概念は,課題も多く残されてい *. Natsumi SUGAWARA:北海道教育大学大学院学校臨床心理専攻・院生. **. Keigo ASAI:北海道教育大学大学院学校臨床心理専攻 キーワード:居場所,対人ストレスコーピング,青年期. 73.
(3) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). になると考えられる.. 所のなさ」が解消される過程について研究を進め. こうした定義についての問題点から,居場所と. ていくことで,居場所ができるための条件を明ら. いう概念を分類するという試みがされている.そ. かにすることができると考えられる.また,高橋・. の中でも特に居場所は他者との関係性から社会的. 米川(2008)が, 『日常生活では特に「居場所」. 居場所と個人的居場所に分類できるとされている. は意識されず,環境に対して違和感や疎外感を. (住田,2003;中島・廣出・小長井,2007等) .. 持った時初めて人は「居場所がない」と感じる.』. 社会的居場所とは,他者からの自己支持的な反応. と述べているように, 「居場所はありますか」と. を得ることで自己を確認していくことによって,. 尋ねるのではなく, 「居場所がない」という感覚. 自己像や自己概念を確かなものとしていくもので. を感じたことがあるのか逆説的に尋ねることで,. あり,他者とのかかわりのある居場所である.こ. 居場所を意識したことのある人にもない人にも居. れに対して,個人的居場所とは,安心できる空間. 場所について具体的に研究を進めることができる. で自分を取り戻していくことを求めて,居られな. 可能性が考えられる.居場所には定義のあいまい. い場から逃げ出して休息とエネルギーを得ること. さやそこからくる居場所の明確な判断基準,他の. で,自己を安定させるものであり,他者とのかか. 場との比較材料について問題があると考えられる. 「居場所のなさ」が解消される過程を可視化 わりのない自分だけの居場所である(原田・滝脇, が, 2014) .. することにより,そこがその人にとって居場所に. このように居場所を分類して捉える研究が近年. なっているのかという判断が可能になる点や,図. 多くみられているが, 杉本・庄司(2006a)は『 「居. 示することにより他の場との比較をすることがで. 場所」研究は,個々の「居場所」が持つ固有性の. きるため,居場所研究において「居場所のなさ」. 面からの分析と,それらを組み合わせて個人が. 解消の過程を可視化するという作業は有効的であ. 持っている複数の「居場所」を包括的に捉えて分. ると考えられる.. 析することも必要』としている.そのため,今回. 以上のことから,本研究では大学生を調査対象. の調査ではあえて分類は行わずに調査を進めてい. とし「居場所のなさ」を感じたことのある人が「居. く.. 場所のなさ」の解消に至った場合の過程とその条. さらに,居場所についてまた別の視点から問題. 件,また,「居場所のなさ」を感じたことのある. 視している先行研究がある.堤(2002)は, 「居. 人が, 「居場所のなさ」を解消できていない場合. 場所がない」という言葉が持つ心理学的意味に着. の原因を可視化し,明らかにすることを目的とし. 目し,居場所がない感覚と自我同一性混乱の関係. て調査を行う.研究Ⅰでは,大学生が捉える居場. を研究した.その結果,同一性混乱の度合いが高. 所概念について調査を行い「居場所のなさ」を扱. いものほど対他的疎外感としても,自己疎外感と. う妥当性について検証を行う.研究Ⅱでは,「居. しても居場所がないという感覚が高いという結果. 場所のなさ」を感じている強さと, 「居場所のなさ」. が得られ,「居場所がない」という経験は,青年. を感じた時に対処するコーピングという2つの観. 期の発達課題であるアイデンティティの形成に影. 点から,分析対象者を4つに分類し,その特徴を. 響があることが明らかとなった. また, 清水 (2012). 明らかにする.また,現代の大学生は「居場所が. は,『 「居場所のなさ」の感覚が個人にとってどの. ない」状態をどのようにとらえているのかを調査. ような意味を持ち,どのような要因によって生起. する.次に研究Ⅲでは,「居場所がない」と感じ. されているのかといった研究はなされていない』. たことのある人に対して,どのように解消してき. という問題を挙げ, 「居場所のなさ」がどのよう. たのか調査し,研究Ⅱと研究Ⅲの内容から,「居. に生じ消失していくのかといった変容過程を詳し. 場所がない」状態が「ある」状態に変わるプロセ. く調査する必要性についても述べている. その. スを可視化する.. ため,居場所について研究を進めていくにあたっ. 大学生を対象とする根拠としては,小畑・伊藤. て「居場所がない」という感覚に焦点を当てるこ. (2001)が『青年期は自分自身について深く考え. とは有効的であると考えられる.さらに, 「居場. る時期であり,そしてまた,自分とつながってい 74.
(4) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス. 言も具体的であり,反対に居場所を意識したこと. る周りの人間や環境についても考える.特に,自. 己形成という深刻で重要な仕事を支える意味でも, がない人は「居場所とは何か」と聞いた際に困惑 青年期において「居場所」が重要になってくる』. したり,深く考えたりする姿が見受けられた.そ. と述べていることや,青年期の発達課題であるア. のため,居場所を意識したことの有無が居場所に. イデンティティの形成と,居場所には関係性があ. 対するイメージに影響があることが考えられる.. ること(小沢,2002,2003等) .また,自分の過. これらの結果から, 「居場所のなさ」について調. 去を回想し話をしてもらうため ,ある程度自分. 査を進めることが妥当であると考えられた.. の過去を整理して話すことのできる力を有してい. 研究Ⅱ. るという点があげられる.. 研究Ⅰ. 目 的 「居場所のなさ」を感じている強さと,「居場. 目 的. 所のなさ」を感じた時に対処するコーピングとい. 大学生が居場所についてどのように感じ,どの. う2つの観点から,分析対象者を4つに分類し,. ように定義をしているのかを明らかにする.. その特徴を明らかにする.. 方 法. 方 法. 1.調査対象者. 1.調査対象者. A大学に在籍する1年生3名(男性2名,女性. A大学に在籍する1~4年生の大学生250名を. 1名)と4年生3名(男性1名と女性2名)の6. 分析対象とした(男性120名,女性127名,性別不. 名(M=20.83,SD=1.72) .. 明3名).. 2.実施方法. 2.実施方法. 大学に進学したばかりの1年生と卒業間近の4. 大学の講義での集合調査と,各研究室への配布. 年生を比較することで大学在学中の変化に焦点を. を行った.回答は無記名であり,面接調査への協. 当てた.居住形態や,サークルやゼミといった所. 力が得られる場合のみ氏名と連絡先の記入を求め. 属団体の数がばらつくように面接者を選び,面接. た.. 協力を得られた者にのみ実施した.面接内容の取 扱いなどを十分に説明した上で面接を行った.. 3.質問紙の構成 ⑴ フェイス・シート. 3.分析方法. 学年,専攻,性別,居住形態(実家,一人暮ら. 半構造化面接を行った.分析は面接内容を文字. し,学生寮,その他) ,自室の有無(有,兄弟姉. 化したものを使用し,協力を得られた学生と共に. 妹と同室,無)を尋ねた.なお,学生寮や下宿な. 合計5名でKJ法を用いて行った.. どで4人部屋,3人部屋という場合には自室は無 に回答してもらった.. 結果と考察. ⑵ 居場所のなさ. 分析の結果,個人の居場所の捉え方の違いが浮. 大学入学時から現時点までに絞り,居場所のな. き彫りになり,居場所概念の定義の難しさが再確. さをどれほど感じていたか尋ねた.尺度について. 認された.また,居場所を意識したことの有無に. は,対他的疎外感因子,自己疎外感因子の2因子. 差があり,特に居場所を意識したことがある者は. からなる堤(2002)の「居場所がない」感覚尺度. 居場所がないと感じた時に意識したとの回答が. を利用し,「まったくない⑴~よくある⑷」の4. あった.居場所がないと感じたことのある者は,. 件法で求めた.. 居場所がないという経験から居場所についての発 75.
(5) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度) Table 1 「居場所がない」感覚尺度因子分析結果 「居場所がない」感覚尺度(22項目) 第1因子 「喪失感」 (16項目) α=.91. f1. h2. f2. 15 一人でいてさびしいと感じること. .69. -.20. .32. 18 自分の思い通りにできないと感じること. .65. .05. .48. 14 落ち込んでいて精神的につらいと感じること. .63. .12. .52. 21 親しい人とケンカしたとき自分の居場所がないと感じること. .62. -.05. .35. 20 周囲の人に冷たくされるとき自分の居場所がないと感じること. .61. .12. .49. 17 自分で自分を見つめることができないと感じること. .57. -.01. .32. 19 自分がなぜそこにいるのかわからずとまどっていると感じること. .54. .14. .42. 22 自分らしさが出せないと感じること. .54. .10. .37. 10 グループの中にいて自分が何かしなければならないのに何をしていいかわからないと感じること. .52. .20. .45. 12 慣れない場所にいて居心地が悪いと感じること. .52. .08. .34. 16 自分の考えや悩みを誰にも分ってもらえないと感じること. .50. .23. .45. 23 自分のプライバシーが守られていないと感じること. .47. -.05. .19. 8 周囲が何かやっているとき自分は何もすることがないと感じること. .44. .18. .33. 7 一人でいるとき自分の居場所がないと感じること. .42. .15. .30. 13 周囲の人の意見や考えに自分が共感できないと感じること. .40. .12. .24. 11 自分にとって得るものがないと感じること. .38. .27. 第2因子 「孤立感」 (6項目) α=.90. f1. .36 h2. f2. 3 周りが親しそうにしている中で自分だけが孤立していると感じること. -.09. .99. .87. 1 自分が周りの人の輪に入れないと感じること. -.10. .95. .78. 2 自分が周囲に受け入れられていないと感じること. -.09. .95. .79. 4 自分が周りの人に必要とされていないと感じること. .16. .67. .64. 6 あまり知らない人の中にひとりでいると感じること. .10. .49. .31. 5 みんなの中で自分だけが無視されていると感じること. .22. .44. .37. 因子負荷量が.30に満たない項目と複数の因子に. ⑶ 居場所のなさを感じる場面に対する対処行動. 同程度に負荷する項目を削除し,因子負荷量.40. に関する質問 ポジティブ関係コーピング因子,ネガティブ関. 以上を基準とした. 「居場所がない」感覚尺度は,. 係コーピング因子,解決先送りコーピング因子の. 因子負荷量が.30に満たない1項目を削除した結. 3因子からなる加藤(2000)の大学生用対人スト. 果,2因子での解釈が妥当であると判断できた. レスコーピング尺度を用い, 「居場所のなさ」を. (Table 1).第1因子は,“喪失感因子”,第2因. 感じた際にどのような行動をとるのか,またどう. 子は, “孤立感因子”と命名した.対人ストレスコー. いった行動をとればよいと思うか尋ねた.回答は. ピング尺度は加藤(2000)と同様の3因子を抽出. 「あてはまらない⑴~よくあてはまる⑷」の4件. し,第1因子を“ポジティブ関係コーピング因子”,. 法で求めた.. 第2因子を“ネガティブ関係コーピング因子” ,. 上記以外にも「居場所がない」ことについて調. 第3因子を“解決先送りコーピング因子”とした.. 査を行ったが,紙面の都合上,本研究では報告し. 各尺度のα係数は, 「居場所がない」感覚尺度では,. ないこととする.. “喪失感”が.91, “孤立感”が.90であった.対人 ストレスコーピング尺度では, “ポジティブ関係. 結果と考察. コーピング”が.91, “ネガティブ関係コーピング”. 1.因子分析による尺度項目の検討. が.88, “解決先送りコーピング”が.89であり,十. 本研究で用いた「居場所がない」感覚尺度と対. 分な内的整合性が確認された.. 人ストレスコーピング尺度のそれぞれに対して,. 次に,それぞれの下位尺度の下位尺度間相関を. 最尤法・Promax回転による因子分析を行った.. 算出した(Table 2).ポジティブ関係コーピング 76.
(6) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス Table 2 記述統計量と相関係数 尺 度 「居場所がない」感覚. 因 子. 最小値. 最大値. 平均値. SD. 1 喪失感. 6. 24. 13.70. 3.93. 2 孤立感. 16. 57. 36.24. 8.37. 対人ストレスコーピング 3 ポジティブ関係コーピング. 17. 64. 39.53. 9.61. 4 ネガティブ関係コーピング. 10. 40. 20.21. 6.27. 5 解決先送りコーピング. 8. 32. 20.90. 5.56. 相関係数 1. 2. 3. 4. 5. -. .72**. -.15*. .40**. .00. -. -.27**. .38**. .01. -. -.12. .16**. -. .16** -. *p<.05,**p<.01. と喪失感,孤立感には弱い負の相関が得られた.. ところ,ネガティブ関係コーピングではすべての. また,ネガティブ関係コーピングと喪失感,孤立. 組み合わせの間に有意な差がみられた(他力居場. 感には中程度の正の相関がみられたのに対し,解. 所形成群M=1.55,SD=0.41;自力居場所形成群. 決先送りコーピングと孤立感,喪失感は有意な相. M=2.18,SD=0.71;不適応群M=1.97,SD=0.52;. 関が得られなかった.これらの結果から, 「居場. 環境不適応群M=2.47,SD=0.48).ポジティブ. 所がない」感覚を減少させるにはポジティブ関係. 関係コーピングに関しては,自力居場所形成群(M. コーピングを行うことが効果的な可能性が示唆さ. =2.87,SD=0.55)と他力居場所形成群(M=2.39,. れた.このことは,居場所のない状況を乗り切る. SD=0.53),不適応群(M=2.11,SD=0.54)の間,. ためには,なるべく周りの人と話し,彼らとの関. 環境不適応群(M=2.63,SD=0.52)と不適応群. 係を築くことが重要だと述べる飯田・甲村・舟. との間に有意な差がみられた.. 橋・長谷川・竹澤・幡垣(2011)の指摘とも一致. 解決先送りコーピングに関しては,自力居場所. する.. 形成群(M=3.20,SD=0.48)と他力居場所形成 群(M=2.23,SD=0.58),環境不適応群(M=2.96, SD=0.57),不適応群(M=2.20,SD=0.54)の間,. 2.「居場所がない」感覚の類型化と対人ストレ. 不適応群と環境不適応群との間に有意な差がみら. スコーピングの特徴. れた.. 「居場所がない」感覚得点および対人ストレス. コーピング得点の平均値でそれぞれ2群に分割し, これらの結果から,対人ストレスコーピングの 値が高い群は全体的に用いている対人ストレス. 4つの居場所のなさ関係を作成した.居場所のな. さ感,コーピング共に低い群を他力居場所形成群, コーピングの値が高いが,自力居場所形成群はポ 居場所のなさ感が低く,コーピングが高い群を自. ジティブ関係コーピングと解決先送りコーピング. 力居場所形成群,居場所のなさ感が高く,コーピ. が高いのに対して,環境不適応群はネガティブ関. ングが低い群を不適応群,居場所のなさ感,コー. 係コーピングが高いという差が明らかになった.. ピング共に高い群を環境不適応群とした.. さらに, 「居場所がない」感覚が低い他力居場所. 次に,どの対人ストレスコーピングを用いるか. 形成群と不適応群では,全体的にコーピングが低. により,分類に影響はあるのかを調べるために4. いものの,2つとも特にネガティブ関係コーピン. つの分類を独立変数,ポジティブ関係コーピング, グの値が低い結果であった.そのため,「居場所 ネガティブ関係コーピング,解決先送りコーピン. がない」感覚を解消するには,ネガティブ関係コー. グを従属変数として1要因分散分析を行った.そ. ピングは有効的ではないが,ネガティブ関係コー. の結果,対人ストレスコーピングは3つとも有意. ピングを用いていたとしてもポジティブ関係コー. な群間差がみられた(ポジティブ関係コーピン. ピングや解決先送りコーピングも用いていること. グ:F(3,246)=21.861,ネガティブ関係コーピン. によって「居場所がない」感覚が低くなる可能性. グ:F=(3,246)=35.246, 解決先送りコーピング:. が考えられる.. F=(3,246)=52.071,すべてp<.001) .次にTukey のHSD法(5%水準)による多重比較を行った 77.
(7) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 研究Ⅲ. 所のなさ」を感じている時と感じていない時の大 きな違いは何なのか,昔と今で居場所に対する考. 目 的. えや行動は変わったか, 「居場所がない」経験か. 「居場所がない」状態がどのようにして「居場. ら学んだこと,自分自身が変わったと思うことは. 所がある」状態になるのか,可視化することで明. あるのかを尋ねた.また,最後に感想を求めた.. らかにする.また, 「居場所がない」感覚が解消 4.分析方法. されない場合の原因を明らかにする.. 面接調査の分析方法として,グラウンデッド・ 方 法. セオリー・アプローチの改訂版である,修正版グ. 1.調査対象者. ラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下,. 研究Ⅱで協力を得られた者のうち,分類した4. M-GTA)を用いた.分析方法としてM-GTAを. グループから各2名ずつ選出した(男性3名,女. 選んだ根拠としては,M-GTAは,ある状況や経. 性5名,M=20.9,SD=0.83) .. 過に生じている変化やプロセスに関する分析およ. 他力居場所形成群の面接協力者をAさん,Bさ. び説明に適しており(杉原,2016) ,本研究の目. ん,自力居場所形成群の面接協力者をCさん,D. 的に合致すると考えられるためである.分析の詳. さん,不適応群の面接協力者をEさん,Fさん,. 細については,木下(2007)に基づいて分析テー. 環境不適応群の面接協力者をGさん,Hさんとし. マを「『居場所がない』から『ある』へと変わる. た.男性がAさん,Cさん,Dさん,女性がBさん, プロセス」と設定し,分析焦点者を「居場所がな Eさん,Fさん,Gさん,Hさんである.面接時間. いと感じたことがある者」とした.次に,①デー. は平均29.5分であった.. タの収集と分析ワークシートの作成,②概念の生 成,③概念と概念の個別検討からカテゴリーの生. 2.手続き. 成,④カテゴリーの相互の関連の検討の順で分析. 「居場所のなさ」の解消に至った過程を山田. 作業を行った.. (2004)のライフヒストリーグラフをもとに作成. ①データの収集と分析ワークシートの作成. したグラフに表し,記入したグラフを用いて居場. データ化した面接調査の中から分析テーマと関. 所が形成されていくプロセスについて面接を行っ. 連していると判断できる箇所に着目し,分析焦点. た.なお, このグラフは過去から現在における 「時. 者にとってどのような意味を持つのかという観点. 間軸(横軸) 」と0から100における「居場所がな. からその部分を解釈した.その後,概念名,その. い感覚(縦軸) 」から構成されている. 「居場所が. 定義,具体例,理論的メモからなる分析ワークシー. ない感覚」に関しては,大きな変動があった時期. トを概念ずつに作成した.. のきっかけや印象に残っているエピソードを記入. ②概念の生成. してもらい, 「居場所がない感覚」の変動を線で. その後新たな概念の生成のための分析ワーク. 表してもらった.. シートを作成しつつ,それぞれの概念の具体例や 概念の名称,定義の精査,対極例の確認を繰り返 し,個々の概念の完成に向けた作業を進めた.. 3.面接項目. 作成してもらったグラフの内容について尋ねた. ③概念と概念の個別検討からカテゴリーの生成 まず,書いてもらったグラフについての説明を求. 個別の概念が完成し,概念のまとまりをつくっ. めた.さらに「居場所がない」感覚が強かった時. ていくことで,カテゴリーの生成を行った.単独. 期,弱かった時期について詳しく尋ねた.続けて, の概念で存在することに意味があると判断された どのように「居場所がない」感覚を解消していっ. ものについては,概念のまとまりをつくらず,単. たのか,その際自分自身の行動や考えで変化はな. 一の概念から形成されるカテゴリーとした.. かったのか,一人だけの空間が「居場所がない」. ④カテゴリー相互の関連の検討. 感覚に影響を及ぼしたことはあったのか, 「居場. 「居場所がない」から「ある」へと変わるプロ 78.
(8) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス. セスに対し,生成したカテゴリーがどのような意. と〔問題の先送り〕は因果関係にあり,〔自身の. 味を持つのかを検討しながら,カテゴリー相互の. 思考の整理〕と〔周りを理解する〕は相互関係に. 関連の検討を行った.また,類似のカテゴリーが. あると考えられる.次に, 【行動の変化(行動的)】. 生成された場合,大カテゴリーとして新たなまと. は〔他者と関わりを持つ〕,〔意識した取り組み〕. まりを生成した.すべてのカテゴリーの関連を検. からなり,他者と関わりをもつことや,自ら行動. 討後,結果を図でまとめた.. をおこすことを表す.これに対し【行動の変化(非. また,居場所が形成されていくプロセスを可視. 行動的)】は,〔他者と関わりを持たない〕からな. 化するにあたって, 「居場所のなさ」が解消され. り,他者と関わりをもつことや所属集団の活動に. る条件を居場所からのアプローチと個人のアプ. 参加することを拒否することを表す.この【行動. ローチの側面から捉えることができると考えた.. の変化(行動的)】と【行動の変化(非行動的)】. 居場所からのアプローチに関しては,所属集団内. は対比関係であると考えられる.最後に【他者関. の成員の変化や,居場所内での他者関係の変化が. 係】は,〔話し相手,相談相手がいる〕からなり,. あげられる.個人のアプローチは,居場所への考. 話し相手,相談相手の存在が自身に影響を与える. えの変化や,自ら所属集団を変える,新しく居場. ことを表す.この場合,他者の存在という観点か. 所を形成する,思春期から青年期の発達などがあ. ら【環境の変化】に属すことも考えられるが, 【環. げられる.このように居場所形成の過程を見てい. 境の変化】は, 〈ライフイベントによる環境の変化〉,. くことで,田村(2016)や尾崎(2013)のような. 〈周りから認められる〉からなる大カテゴリーで. 居場所を第三者が作り出すという居場所づくりの. あり,これは過ごしてきた環境や,自分を取り囲. 視点だけではなく,居場所を自ら調整する個人の. む他者からの自分に対する認識が変わることを表. アプローチという新しい視点が生まれると考えら. している.それに対し,【他者関係】は,話し相. れる.. 手や相談相手がいることが自身の考えに影響を及 ぼしたことを表しており,環境の変化とは言い難. 結果と考察. い.そのため,別の大カテゴリーとした.大カテ ゴリーの中でも, 【環境の変化】, 【思考の変化】, 【行 動の変化(行動的)】, 【行動の変化(非行動的)】, 【他. 1. 「居場所がない」から「居場所がある」への. 者関係】は「居場所がない」が「ある」へと変化. プロセス 分析の結果,6個の大カテゴリー,14個のカテ. するプロセスに関連すると考えられる大カテゴ. ゴリー,23個の概念が生成された.各カテゴリー. リーであり,それぞれに影響をしあっていること. と概念の定義,具体例を示す(Table 3) .なお,. が考えられる.特に,【環境の変化】,【行動の変. 本文中において大カテゴリーを【 】 , カテゴリー. 化(行動的)】,【行動の変化(非行動的)】,【思考. を〔 〕 ,概念を〈 〉で示す.. の変化】は密接に関連しあっていることが考えら. 大カテゴリーは, 【居場所がないと思う原因】 ,. れ,環境,行動,思考の変化が「居場所がない」. 【環境の変化】 , 【思考の変化】 , 【行動の変化(行. 感覚の解消に大きな影響を与えていることが明ら. 動的) 】 , 【行動の変化(非行動的) 】 , 【他者関係】. かになった.. からなり, 【居場所がないと思う原因】は, 「居場. 生成されたカテゴリーの相互の関係を検討し,. 所がない」感覚をもつきっかけの出来事に関する. 大カテゴリー,カテゴリー,概念の相関を表した. 大カテゴリーである. 【環境の変化】は, 〔環境内. のがFigure 1,大カテゴリーのみで表したものが. の関係性の変化〕からなり,自分が過ごしている. Figure 2である.居場所がない状態では, 〔いざ. 環境や他者からの認識の変化に関する大カテゴ. こざ〕,〔環境からの疎外感〕からなる【居場所が. リーである. 【思考の変化】は, 〔自身の思考の整. ないと思う原因】が「居場所がない」感覚を想起. 理〕, 〔問題の先送り〕 , 〔周りを理解する〕からな. させており, 「居場所がない」感覚が継続されると,. り,自身の考えが様々なきっかけにより,変化す. 〔居場所がない状態の結果〕として, 〈気分が沈む〉,. ることを表している. さらに, 〔自身の思考の整理〕. 〈過去を引きずる〉という感覚になることが考え. 79.
(9) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度) Table 3 各カテゴリーの分類および概念の定義,具体例 大カテゴリー名. カテゴリー名. 概念名. 定 義. 具 体 例. 仲が良かった友人や家族と距 離を置いたり,もめたりする こと. 大学1年のときに仲良かった人ともめまして, (中略)なんかああ,私 孤立したんだなみたいなのを感じてて, (G). 受け入れら れない. 自分が周りから受け入れても らえていないように感じるこ と. チームプレーなんですけど,このチームには必要ないんじゃないか,み たいな.いない方がいいんじゃないかみたいなので,大会とかも自分い なくてもいいんじゃないかなっていう感じ(E). 自分がいて もいいのか. 自分がそこに存在しててもい いのか考えてしまう環境に身 を置くこと. 周りがやっぱり勉強しているとかだとあんまり感じないんですけど,そ ういうなんだろう.がやがやしているっていうか騒いでるっていうか集 まっている時に一人でいるなって思ったらすごいなんかいやここにいな い方がいいかなって感じたりはするかなって思いますね. (F). ライフイベ ントによる 環境の変化. 進学や卒業,部活の引退等に よって過ごす環境や,一緒に いる友人が変わること. 転校して中学校新しく入って,まあみんな小学校あがりで知り合いが多 い中最初誰も知り合いがいない状態から始まって,そこがまず居場所が ないなと思った一番感じた場面です. (D). 周りから認 められる. 自分の立場や考え,性格につ いて周りの人から理解を得 て,受け入れてもらえること. ぼっち感がない時.なんか人に求められてるな,自分.とかがあるとき はやっぱり居場所があるなって. (H). 内省による 考えの変化. 自分の言動を振り返ることに よって問題を明確化しようと すること,自身の考えを整理 すること. 家に一人でいるときとかは結構いやなんか今日もうこうすればよかった とかその特に入学直後とかなんですけど,いやあの話のしかた失敗した なとかちょっといろいろ考えて改善っていうかいや今度こういうこと話 してみようかなとかそういうこと考えたりする時間はありました. (B). 時間による 認知の変化. 自身の成長や時間の経過によ り考えに変化が生じること. 中学3年生は子どもだったのかなっていうか(F). 妥協・我慢. その場にいるために,自分の 中で妥協したりある程度の我 慢が必要であると考えること. 自分を捨てて入っていくっていうかさ,なんかちょっと我慢してそのと ころに入っていくみたいな (中略) ちょっと自分を消すっていうか. (C). 気にしない. 抱えている問題に対して気に しないようになる認知の変化. まあそんなに気にしなくてもいいかなっていう感じになって(E). 所属している団体や周りにい る人について理解が深まった り,考え方が変わること. やっぱりどんどん1年生の時からに比べていろんなことを知って,研究 室の現状だったりとか,部活の現状とかいろんなのを知っていく中で, なんだろう. (居場所がない感覚が) 下がっていくのかなって思った (F). 積極的に他 者と関わる. 関係をつくろうとしたり,問 題を解決するために自ら行動 すること. そのグループで嫌われてもそれは自分と合わなかっただけだからたまた ま合わなかっただけだから,他に合う人もっといるんだからもっと視野 を広げたほうがいいっていうのが結構わかって(G). 友人をつく る. 問題を解決するために友人を つくろうとすること. 積極的にちょっと話しかけてみたり,あとはまあ地元の友達とかと電話 して励まして,励まし合ったりとかそういうことしながらやってました (B). 実践してい ること. 居心地の良い場をつくるため に実践していること. 自分が一番上の立場で全体とそういう環境をつくれる,自分なりにそう いう意見いいやすい環境を整えているっていうか,まあ裏で. (A). 気分転換. 趣味や好きなこと,スポーツ などで気分転換すること. 部活をやってると結構ストレス解消になるんだよね. (中略)イライラ してても部活終わったらそんなでもなくなってるっていうのは結構多 かったね. (C). 他者と関わ らない. 自ら問題の解決をしようとし ないこと,他者との関わりを 持とうとしないこと. 結構小学校まではクラスの中心って感じだったんですけど,中学生くら いからあまり中心になりたくないし,結構はしっこでなんか一匹狼じゃ ないんですけど,結構盛り上がってるみんなを見ているっていうスタン スになったのはここら辺かな…です. (H). 所属団体か らの逃避. 所属している集団と関わりを もとうとしないこと. バイトとかやめれる系はまあやめてもいいかなっていう考えに変わっ てって, (中略)大学生の研究室とかもまあ行かなければいいみたいな (笑)完全に拒否できる,やめてしまえばいいっていう考え(E). 話をする相手や,悩みを相談 する相手を重視すること. 話し相手,です,かね. (中略)友達とか家族とかその信頼して話せる 人が支えとなってくれると思います. (D). 気分が沈む. 行きたくないこと,やりたく ないことに直面し気分が沈む こと. 居場所がない時は自分を出せなくて, そのネガティブな思考が大きくて, (中略)全然楽しいことが頭に思い浮かばなくて,暇だなとか早く帰り たいなっていう. (D). 過去を引き ずる. 過去に起こった出来事を引き ずっていること,また,トラ ウマを抱えていること. またこれしたら同じこと起こるんじゃないかとか,ちょっと前よりは閉 鎖的になったっていうか, (中略)人と関わるのが怖くなった時期があっ たな(G). 自分らしく いる. 自分らしくいられること,あ りのままの自分でいること. 自分を隠さないっていうかありのままの自分らしくいるっていうことが 居場所をつくる上でなんか大切なことなのかなって思います. (B). 必要な関係 を求める. 自分が必要であったり,求め ている存在のこと. 向こうから声かけてくれるような友達できればいいのになとか思いなが ら, (H). 楽しさ. 何も問題を抱えておらず,楽 しいという気持ちをもって 日々を過ごせること. ざっくり言えば,楽しいか楽しくないかだね(C). 環境づくり. 居場所と思える場所,居心地 の良い場所をつくろうとする こと,そのために必要な要素 について. 上のそのなんかグループでも所属している団体の上の立場の人がほんと にこう全体を見れる人というか(中略)気兼ねなく意見を言えるような 環境をつくるのが大事だと思って(A). いざこざ. 居場所がない と思う原因. 環境の変化. 環境からの 疎外感. 環境内の関 係性の変化. 自身の思考 の整理. 思考の変化 問題の先送 り. 周りを理解 する. 他者と関わ りをもつ 行動の変化 (行動的) 意識した取 り組み. 行動の変化 (非行動的). 他者関係. 他者と関わ りを持たな い. 話し相手, 相談相手が いる 居場所がな い状態の結 果. 解消のため に必要だっ たこと. 80.
(10) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス 居場所からのアプローチ. 環境内の関係性の変化. 居場所がない状態. いざこざ. 居場所がある状態 解消のために 必要だったこと. 他者と関わりをもつ 他者と関わりをもたない. 意識した取り組み. 楽しさ. 環境からの疎外感. 自身の思考の整理 周りを理解する. 問題の先送り 環境づくり. 居場所がない 状態の結果 個人のアプローチ. 話し相手、相談相手がいる. 他者からのアプローチ. Figure 1 大カテゴリー,カテゴリー,概念の相関 居場所からのアプローチ. 環境の変化. 居場所がある状態. 居場所がない状態. 解消のために 必要だったこと. 居場所がないと 思う原因. 行動の変化(非行動的). 行動の変化(行動的). 楽しさ. 思考の変化 環境づくり. 居場所がない 状態の結果 個人のアプローチ. 他者関係 他者からのアプローチ. Figure 2 大カテゴリーの相関図. られる.そして,この「居場所がない」状態が解. つかが作用されることで, 「居場所がない」感覚. 消されるプロセスとして, 【環境の変化】 , 【行動. は解消され, 「居場所がある」状態になると考え. の変化(行動的) 】 , 【行動の変化(非行動的) 】 【思 ,. られる.「居場所がある」状態では,〔楽しさ〕を. 考の変化】,【他者関係】があげられた. 【環境の. 感じており,その結果〔環境づくり〕への視野が. 変化】 , 【行動の変化(行動的) 】 , 【行動の変化(非. 広がる.また, 「居場所がある」状態から振り返っ. 行動的) 】, 【思考の変化】は相互に関連しあって. てみると,〔解消のために必要だったこと〕も想. おり, 【行動の変化(行動的) 】と【行動の変化(非. 起され, 〔解消のために必要だったこと〕がない. 行動的)】の対比関係以外はそれぞれが因果の関. 状態が「居場所がない」状態であると捉えること. 係になりうると考えられる. 【他者関係】は, 【行. もできると考えられる.. 動の変化 (行動的) 】 , 【環境の変化】 【思考の変化】 ,. また, 「居場所がない」感覚が解消される過程. と関連があると考えられるが, 【行動の変化(非. において, 【環境の変化】は居場所からのアプロー. 行動的) 】とは関連がないものと捉えた.そして,. チと捉えることができ,【行動の変化(行動的)】,. これら5つの大カテゴリーのどれか,またはいく. 【行動の変化(非行動的)】,【思考の変化】は個 81.
(11) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 人のアプローチと捉えることができる.そのため, Fさん,環境不適応群であるGさん,Hさんは, 【環境の変化】という居場所からのアプローチに. 他力居場所成群であるAさん,Bさん,自力居場. より,所属集団内の成員の変化や,居場所内での. 所形成群であるCさん,Dさんと比べると「居場. 他者関係の変化が起きることで「居場所がない」. 所がない」感覚が高かった.そのために,グラフ. 感覚が解消されるに至ること,さらには, 【行動. の山が大きくなっている.また,Aさん,Bさん,. の変化(行動的) 】や【行動の変化(非行動的) 】. Cさん,Dさんの4人は,Dさんは多少なりとも. により自ら所属集団を変える,新しく居場所を形. 変動はあるものの,Eさん,Fさん,Gさん,Hさ. 成する,または【思考の変化】により,居場所へ. んと比べると波が穏やかであるか,波の幅も狭い. の考えの変化や,思春期から青年期の発達が起き. グラフになっていると考えることができる.また,. ることで「居場所がない」感覚が解消されるに至. 他力居場所形成群であるAさん,Bさんと,自力. ることが明らかになったといえよう.. 居場所形成群であるCさんDさんを比べると,他. 先行研究では居場所を分類する試みがなされて. 力居場所形成群より自力居場所形成群の方が「居. いる.こころの居場所としての個人的居場所と社. 場所がない」感覚を局所的に強く感じており,さ. 会的居場所の調査をした石本(2010)の研究では, らに,他力居場所形成群は,「居場所がない」感 個人的居場所を確保することは精神的健康を高め. 覚自体が弱く,一度感じた「居場所がない」感覚. ることはできず,社会的居場所を確保することに. は継続的に続く傾向があることがグラフを通して. よってのみ精神的健康が高められることが明らか. 明らかになった.「居場所がない」感覚が低いA. になった.また,個人的居場所については,若山. さんからDさんのグラフをまとめたものをFigure. (2001)が安心感を得られるという意義が大きい. 3, 「居場所がない」感覚が高いEさんからHさん. ことは間違いないが,それは「ひきこもり」の舞. のグラフをまとめたものをFigure 4とした.. 台になると指摘しており,居場所として否定的な. さらに,対人ストレスコーピングの高低で比較. 考えを示している.これに対し, 泊・吉田 (1999). した場合では,対人ストレスコーピングが高い環. では,プライベート空間の研究において専有でき. 境不適応群,自力居場所形成群と対人ストレス. る空間には緊張解消や課題への集中,自己内省の. コーピングが低い不適応群,他力居場所形成群と. 機能があるともしており,個人的居場所がもつ肯. では特徴的な差は見られなかった.さらに,「居. 定的な影響についても今後検討していく必要があ. 場所がない」感覚が高い不適応群と環境不適応群. ると考えられる.今回の研究対象である「居場所. のグラフでも特徴的な差は見られず,用いている. がない」という感覚は他者との関わりの中から感. コーピングを絞って再度検討する必要があると考. じられることであり,つまりは社会的居場所の中. えられる.. で感じるものである.また本研究で考える居場所. 次に特徴が表れた群について整理する.他力居. からのアプローチも社会的居場所の観点から考え. 場所形成群は「居場所がない」感覚を解消しよう. られるものであると推測される.しかし,本研究. と自ら行動しないため, 「居場所がない」感覚は. において個人的居場所にも役割があり,Table 3. 弱いものの,継続して「居場所がない」感覚を持. における〈内省による考えの変化〉では,自分一. ち続けてしまうと考えられる.これに対し,自力. 人の空間で考えること,行動に対して反省をする. 居場所形成群は「居場所がない」感覚を強く感じ. 「居 ことといった内容の発言が抽出された.そのため, るものの,自ら対処しようと行動するために, 「居場所のなさ」の解消に個人的居場所が関与し. 場所がない」感覚は一時的であり,一度「居場所. ている可能性があると考えられ,今後さらなる検. がない」感覚が解消されると, 「居場所がある」. 討が必要であると考えられる.. 状態を保つと考えられる.不適応群と環境不適応 群については今回の研究では大きな差は現れず,. 2.グラフと発言からみる各グループの特徴. 全体的に変動が大きいが,最終的には解消に向か. 面接を行うにあたって,記入してもらったグラ. うという傾向がグラフからみられた.しかし,H. フのみを観察した結果,不適応群であるEさん,. さんにおいては唯一,現在に向かうにつれて「居 82.
(12) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス. Figure 3 AさんからDさんまでのグラフの変動. Figure 4 EさんからHさんまでのグラフの変動. 場所がない」感覚は解消されていなかった.原因. にはネガティブ関係コーピングは有効でないこと. としては,Hさんの発言から,概念の〈必要な関. が考えられる.しかし,今回の研究では「居場所. 係を求める〉においてHさん自身が必要な他者と. がない」感覚が解消されていないのは1人のみで. の関係が築けていないことや, 〔居場所がない状. あり, 「居場所がない」感覚が解消されていない. 態の結果〕における〈過去を引きずる〉があげら. 原因については,更なる研究が必要なことが考え. れる.そのため, 「居場所がない」感覚が「ある」. られる.. へ変わるために, 〔解消のために必要だったこと〕. さらに,考えられるコーピングの特徴だが,研. をHさん自身が経験できる環境をつくることや,. 究Ⅱの結果と類似したといえる.他力居場所形成. 「居場所がない」感覚が解消される過程における. 群のAさんとBさんはネガティブ関係コーピング. 5つの大カテゴリーをHさんに提供する,または,. に関する発言はなく,現在用いているコーピング. Hさん自身が取得できるよう支援する必要がある. はポジティブ関係コーピングである発言があった.. と考えられる.また,Hさんは「他者と関わらな. 自力居場所形成群のCさん,DさんにおいてCさ. いようにする」といったネガティブ関係コーピン. んは解決先送りコーピングに関する発言が多く. グを用いている発言も多くみられ,研究Ⅱの結果. (発言例:最近はもうどうでもいいわって感じだ. も考慮するとやはり「居場所がない」感覚の解消. よね) ,Dさんはポジティブ関係コーピングの発 83.
(13) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 2. 「居場所がない」感覚が解消されるに至った. 言が多かった(発言例:明日は友達をつくってま. 過程と要因. あ徐々に増やしていこうっていう) .不適応群で あるEさん,環境不適応群であるHさんはネガティ. 本研究では, 「居場所がない」状態が解消され. ブ関係コーピングを用いている発言があった.こ. るプロセスとして, 【環境の変化】, 【行動の変化(行. れらの結果からもやはり「居場所がない」感覚の. 動的)】, 【行動の変化(非行動的)】, 【思考の変化】,. 解消にはポジティブ関係コーピングが有効であり, 【他者関係】5つがあげられた.また,【行動の ネガティブ解決コーピングは適していないことが. 変化(行動的)】と【行動の変化(非行動的)】は. 考えられる.. 対比の関係であると考えられ,行動が変化した場 合,行動的か非行動的のどちらかの行動をとるこ. 総合考察. とがあげられる.それ以外の【環境の変化】,【行 動の変化(行動的)】, 【行動の変化(非行動的)】, 【思. 本研究では,大学生を調査対象とし「居場所の. 考の変化】は相互に関連しあっており,それぞれ. なさ」を感じたことのある人が「居場所のなさ」. が因果の関係になりうると考えられ,この環境,. の解消に至った場合の過程とその条件,また, 「居. 行動,思考の3つの変化が「居場所がない」感覚. 場所のなさ」を感じたことのある人が, 「居場所. が解消されるために必要な要因であるということ. のなさ」を解消できていない場合の原因を可視化. ができる.今回想定外だった【他者関係】は, 【行. 【思考の変化】, 【環境の変化】 し,明らかにすることを目的として調査を行った. 動の変化(行動的)】, と関連があると考えられるが,【行動の変化(非 行動的)】とは関連がないものであり,環境,行動,. 1.居場所のなさと対人ストレスコーピングとの. 思考の3つの変化の補助的な役割として存在して. 関係. いると考えられる.そして,これら5つの大カテ. 今回は 「居場所がない」 感覚と対人ストレスコー. ピングの関係から調査対象者を他力居場所形成群, ゴリーのどれか,またはいくつかが作用されるこ 自力居場所形成群,不適応群,環境不適応群の4. とで,「居場所がない」感覚は解消され,「居場所. つに分類した.他力居場所形成群はネガティブ関. がある」状態になることが明らかになった.さら. 係コーピングの値が低く, 「居場所がない」感覚. に, 〈自分らしくいる〉や〈必要な関係を求める〉. は弱いものの継続して「居場所がない」感覚を持. といった「居場所がない」感覚の解消に必要な要. ち続けてしまうと考えられる.自力居場所形成群. 素があることも明らかにすることができた.. は「居場所がない」感覚を強く感じるものの,ポ. Bronfenbrenner(1979 磯貝・福富訳,1996). ジティブ関係コーピングの高さから,自ら対処し. は,人間発達という観点から,生活(環境)をマ. ようと行動するために「居場所がない」感覚は一. イクロシステム,メゾシステム,エクソシステム,. 時的であり,一度「居場所がない」感覚が解消さ. マクロシステムに構造化した.マイクロシステム. れると, 「居場所がある」状態を保つと考えられる. とは,直接的に関わりを持つなじみのある場であ しかし,解決先送りコーピングの値も高く,問題. り,具体的には学校や家庭における活動,役割,. を先送りにしている可能性も考えられる.不適応. 対人関係があげられる.そして,メゾシステム,. 群と環境不適応群については今回の研究では大き. エクソシステム,マクロシステムは,メゾ,エク. な差は現れなかったが,不適応群においてはポジ. ソ,マクロの順により全体的なレベルに変化し,. ティブ関係コーピングの低さが際立った.また,. マイクロシステムを中心に同心円状に広がってい. 両群ともに全体的に「居場所がない」から「居場. ると考えられている.そのため,発達にはマイク. 所がある」や「居場所がある」から「居場所がな. ロシステムだけでなくそれらを包含するシステム. い」への変動が大きいことや,用いているコーピ. も影響を与えているとしている.この視点から,. ングが「居場所がない」感覚の解消に適していな. 居場所も居場所以外の生活空間との関係の中で存. いことがあげられた.. 在していると捉えることができる.居場所をマイ クロシステムと考えると,今回の研究で居場所を 84.
(14) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス. 形成するために,また, 「居場所のなさ」を解消. プローチの両方を確認することができた.そのた. するために必要であると明らかになった5つの条. め,居場所からのアプローチと個人のアプローチ. 件のうち, 【環境の変化】 【行動の変化(行動的) , 】. の両方の有効性を確認することができたと考えら. はメゾシステム, 【思考の変化】はマクロシステ. れる.さらに,居場所からのアプローチと個人の. ムとも捉えることができるものである.今回はエ. アプローチは関わりをもっており,単独で存在し. クソシステムだと捉えられるような結果はなかっ. ていないことも明らかになった.. たが,居場所だと思えない場についての発言から, しかし,居場所からのアプローチと個人のアプ 居場所ではない場が間接的に居場所にも影響を与. ローチのほかに【他者関係】も存在することが考. えていることが考えられた.そのため,居場所研. えられ,新しい視点として他者からのアプローチ. 究には居場所だけでなく,居場所の周辺的な文脈. もあげられた.【他者関係】は〔話し相手,相談. に関する検討も行う必要性があることを明確にす. 相手がいる〕からなり,これは話をする相手や悩. ることができたと考えられる.. みを相談する相手を重視することを定義としてい る.そのため,学校現場や家庭において「居場所 がない」と感じている者に対して話をきくことや. 3.「居場所がない」感覚が解消されるに至って. 相談にのることも「居場所がない」感覚の解消に. いない原因. 役立つことが明らかになったと考えられる.. 「居場所がない」感覚が解消されていない原因 については, 〔解消のために必要だったこと〕を. 5. 「居場所がない」感覚が解消される条件と対. 有していない点,解消に必要なプロセスを経てい. 人ストレスコーピング. ない点があげられた. 〔解消のために必要だった こと〕には〈自分らしくいる〉 , 〈必要な関係を求. 本研究で明らかになった「居場所がない」感覚. める〉があり,ありのままの自分でいられないこ. が解消される要因において,対人ストレスコーピ. と,自身が必要な他者との関係が築けていないこ. ングと同じようなカテゴリーが生成された.ポジ. とが「居場所がない」感覚の解消に至らない原因. ティブ関係コーピングは, 【行動の変化(行動的)】,. として考えられる.また,解消に必要なプロセス. ネガティブ関係コーピングは【行動の変化(非行. である【環境の変化】 【行動の変化(行動的) , 】 【行 ,. 動的)】,解決先送りコーピングは【思考の変化】. 動の変化 (非行動的) 】 【思考の変化】 , 【他者関係】 ,. の〔問題の先送り〕であると捉えることができる.. の5つの大カテゴリーを経ていないために,それ. しかし,ネガティブ関係コーピングは「居場所が. らを提供する,または,自身が取得できるように. ない」感覚の解消に効果的でない可能性が示唆さ. 支援する必要があると考えられる.. れており,ここに矛盾が生じる.今回の研究にお. さらに,本研究では「居場所がない」状態に居. いて【行動の変化(非行動的) 】を行っていたの. 続けると〔居場所がない状態の結果〕である〈気. は多くが不適応群のEさん,環境不適応群のHさ. 分が沈む〉や〈過去を引きずる〉状態に陥ること. んであった.しかし,Eさんは【行動の変化(行. が明らかになっており,特に今回は〈過去を引き. 動的) 】も多く行っており,Hさんはあまり【行. ずる〉の発言が多く見られた.そのため, 「居場. 動の変化(行動的)】を行っておらず,さらにE. 所がない」状態を継続し続けるとより一層「居場. さんは「居場所がない」感覚が解消に向かってい. 所がない」感覚の解消から遠ざかってしまう可能. るが,Hさんは「居場所がない」感覚の解消に至っ. 性が示唆されたといえよう.. ていない.そのために, 【行動の変化(非行動的)】 は,単体で行うと「居場所がない」感覚の解消に. 4.居場所からのアプローチと個人のアプロ―チ. は効果的ではないが,【行動の変化(行動的)】と. 本研究において, 「居場所がない」感覚の解消. 合わせて行うことで「居場所がない」感覚の解消. 過程におけるアプローチには居場所からのアプ. に至ると考えることができ,研究Ⅱの対人ストレ. ローチと個人からのアプローチがあることを想定. スコーピングの結果と同じ結果になったと考えら. していたが,居場所からのアプローチと個人のア. れる. 85.
(15) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 引用文献. 6.本研究の課題 本研究の結果から,課題がいくつか見つかった. まずあげられるのが, 「居場所がない」感覚の. Bronfenbrenner, U. (1979). The ecology of human. 解消に必要な条件の数が明らかにできなかったこ. development : experiments by nature and. とである.本研究で明らかになった5つの条件が,. design.. すべて起きた際に「居場所がない」感覚が解消さ. (ブロンフェンブレンナー,U.磯貝芳郎・福. れるのか,それともひとつでも起きた際に「居場. 富譲(監修)(1996).人間発達の生態学(エコ. 所がない」感覚が解消されるのかといった必要な. ロジー)―発達心理学への挑戦―.川島書籍.). 条件数について,また,今回抽出した5つの条件. 原田克巳・滝脇裕哉.(2014).居場所概念の再構. 以外にも「居場所がない」感覚の解消に影響があ. 成と居場所尺度の作成.金沢大学人間社会学域. るものはないのか今後さらなる調査が必要である.. 学校教育学類紀要,(6),119-134.. また,先行研究では,居場所として否定的な考. 飯田沙依亜・甲村和三・舟橋厚・長谷川桜子・竹. えであった個人的居場所だが,今回の結果から肯. 澤大史・幡垣加恵.(2011).大学生の居場所に. 定的な側面を見ることができた.本研究における. 関する研究―居場所のなさに着目して―.愛知. 〈内省による考えの変化〉では,自分一人の空間. 工業大学研究報告,46,49-55.. で考えること, 行動に対して反省をすることが 「居. 藤原靖浩.(2010).居場所の定義についての研究.. 場所がない」感覚の解消に役立ったといった内容. 教育学論究,(2),169-177.. の発言が抽出された.そのため, 「居場所のなさ」. 石本雄真.(2010).こころの居場所としての個人. の解消に【思考の変化】のひとつとして,個人的. 的居場所と社会的居場所―精神的健康及び本来. 居場所が関与している可能性があると考えられる.. 感.自己有用感との関連から―.カウンセリン. しかし,一人でいることで考えすぎてしまうこと. グ研究,43(1),72-78.. や,一人でいる時間を避けるといった内容の発言. 加藤司.(2000).大学生用ストレスコーピング尺. もあった.そのために,個人的居場所には肯定的. 度の作成.教育心理学研究,48,225-234.. な側面と否定的な側面の両方が存在し,なおかつ. 木下康仁.(2007).修正版グラウンデッド・セオ. 個人差があることが明らかになったとはいえ,更. リー・アプローチ(M-GTA)の分析技法.富. なる検討が必要である.. 山大学看護学会誌,6(2).. 最後に,「居場所がある」状態についてである.. 文部科学省.(1992).登校拒否(不登校)問題に. 今回の研究では「居場所がある」状態では〔楽し. ついて―児童生徒の「心の居場所」づくりを目. さ〕のカテゴリーしか生成されなかった.先行研. 指して(学校不適応対策調査研究協力者会議報. 究では杉本・庄司(2006b)が居場所の心理的機. 告).教育委員会会報,44,25-29.. 能として「被受容感」 , 「精神的安定」 , 「行動の自. 中島喜代子・廣出円・小長井明美.(2007).「居. 由」, 「思考・内省」 , 「自己肯定感」 , 「他者からの. 場所」概念の検討.三重大学教育学部研究紀要,. 自由」の6因子があることを明らかにしており,. 58,77-97.. 今回の研究では生成されたカテゴリーが少なかっ. 益川優子.(2012).大学生の「人間的居場所」と. たと考えられる.今回は「居場所がない」状態か. 学生生活満足感との関連.人間文化研究科年報. ら「居場所がある」状態への過程に着目して研究. (奈良女子大学大学院研究科),27,169-179.. を進めたが, 「居場所がある」状態のみに着目し. 小畑豊美・伊藤義美.(2001).青年期の心の居場. て調査することで「居場所がある」状態でのカテ. 所の研究―自由記述に現れた心の居場所の分類. ゴリーもさらに抽出することができると考えられ. ―.情報文化研究,14.. る.. 小沢一仁.(2002).居場所とアイデンティティを 現象学的アプローチによって捉える試み.東京 工芸大学工学部紀要(人文・社会編),25,3040. 86.
(16) 「居場所がない」から「居場所がある」への変容プロセス. 謝 辞. 小沢一仁. (2003) .居場所を得ることから自らの アイデンティティをもつこと.東京工芸大学工 学部紀要(人文・社会編) ,26,64-75.. 本研究は,多くの方々からご協力いただき完成. 尾崎菜々子. (2013) .中高生専用児童館「ゆう杉. することができました.この場を借りて,御礼申. 並」における中高生運営委員会の機能.早稲田. し上げます.. 大学大学院教育学研究科紀要 別冊,1(21),. 特に,半澤礼之先生,小渕隆司先生には多くの. 1-11.. ご指導をいただきました.ご多忙の中,お時間を. 清水寛子. (2012) .中学生の「居場所のなさ」に. 割き親身になって丁寧な指導をしてくださいまし. 関する研究.佛教大学院紀要 教育学研究科篇, たこと,深く感謝申し上げます.本当にありがと 40,71-88.. うございました.. 杉原努. (2016) .精神科病院長期入院者の退院に. 付 記. 至る変化に関する研究―精神科病院長期入院者 が退院支援者からの働きかけによって退院して いくプロセス―.臨床心理学部研究報告,9,. 本研究は北海道教育大学研究倫理委員会の承認. 3-16.. を得て実施された(北教大研倫2017104003).. 杉本希映・庄司一子(2006a) .中学校の「居場所 環境」と学校適応との関連に関する研究.学校 心理学研究,6,31-39. 杉本希映・庄司一子. (2006b) .「居場所」の心 理的機能の構造とその発達的変化.教育心理学 研究,54,289-299. 住田正樹.(2003).「子どもたちの「居場所」と 対人的世界」 住田正樹・南博文編『子どもた ちの居場所と対人的世界の現在』 ,3-14,九州 大学出版会. 高橋晶子・米川勉. (2008) .青年期における「居 場所」の研究.福岡女学院大学大学院紀要:臨 床心理学,5,57-66. 泊真児・吉田富二雄. (1999) .プライベート空間 の機能と感情及び場所利用との関係.社会心理 学研究,15(2),77-89. 田村光子. (2016) .子どもの居場所の機能の検討. 植草学園短期大学紀要,17,31-42. 堤雅雄. (2002) . 「居場所」感覚と青年期の同一 性の混乱.島根大学教育学部紀要(人文・社会 科学) ,36,1-7. 山田剛史. (2004) .過去-現在-未来にみられる青 年の自己形成と可視化によるリフレクション効 果―ライフヒストリーグラフによる青年理解の 試み―.青年心理学研究,16,15-35. 若山隆. (2001) .こころとからだの在るところ― 私たちの居場所の問題―.日本福祉大学研究紀 要(現代と文化) ,105,67-82. 87.
(17) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). SUMMARY Transformation process from “Lack of Ibasho” to “Ibasho” ― “Ibasho” episodes of university students ―. Natsumi SUGAWARA*, Keigo ASAI** (*Graduate Student, Hokkaido University of Education) (**Hokkaido University of Education). Requirements for changing from “lack of ibasho” to ibasho (sense of interpersonal rootedness) was investigated. In Study 1, we examined how university students thought about ibasho and analyzed the validity of “lack of ibasho”. In Study 2, participants were classified into four groups using the scale of the sense of “ibasho”, and were analyzed interpersonal stress-coping when feeling “lack of ibasho”. In Study 3 that used interviews, participants were inquired about how to transform “lack of ibasho” to “ibasho”. The result indicated five conditions: environmental changes, behavioral changes, non-behavioral changes, changes in thinking and relationships with others. It was also indicated that “the lack of ibasho” was not resolved when these conditions were not fulfilled. These results are discussed in relation to the characteristic of ibasho.. Key words : Ibasho, Interpersonal Stress-Coping, Adolescence. 88.
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