自然に寄り添う生産現場からの学び 学部2年生の演習における実践と考察
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(2) 釧路論集 −北海道教育大学釧路校研究紀要−第46号(平成26年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.46(2014):45-52. 自然に寄り添う生産現場からの学び 学部2年生の演習における実践と考察 三 浦 和 樹*1・新 畑 結 香*2・倉賀野 志 郎*3 *1. 北海道自由が丘学園・共に人間教育をすすめる会・月寒スクール・子ども館・教育スタッフ *2. 帯広畜産大学・畜産学科課程・3年. *3. 北海道教育大学教育学部釧路校. Learn for producing district from nature cycle Practice and study of 2nd seminar on educational content and methods Kazuki MIURA1 / Yuka SHINPATA2 / Shiro KURAGANO3 Hokkaido Jiyuugaoka School1 Obihiro University of Agriculture & Veterinary Medicine2 Department of School Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education2. 要旨 北海道教育大学・釧路校・地域学校教育専攻は「子どもの発達を学校と地域の両方からとらえ、子ども・学校・家庭・ 地域を総合的に教育に生かす研究を行う専攻」である。その中の一つである授業開発コースは倉賀野志郎、元教授高嶋幸 男氏での教育方法学研究室などの前身から30年の歴史がある1)。その変遷の中でも「基本的な授業とその開発を巡って教 育内容・教育方法を実践的に検討するという視点は一貫している」 。更なる発展のために、地域学校教育専攻の目指す子 ども・学校・家庭・地域を総合的にどうとらえ、どう生かすのかといった内容の展開には課題は残されている。 2013年3月に計画があった「地域ってなんだろう:食べてつながる地域と学校」のシンポジウムが4月19日に開催され、 三友盛行(中標津町酪農家) 、椎久愼介(標津町漁師)の両氏を講師として迎えてのシンポジウムが開催された。今年度 の3及び4年の学生が中心となっての企画となり50名程の参加者があった。 「実際に海へ山へ川へ出かけ、見て聞いて実 感しながら私たちは学び続けてきた」ことを持続的に継続して地域とかかわってきたことの一つの成果である。シンポジ ウムのタイトルにある「地域」への問いも、二人の講師の「生き方や地域に対する思い」を踏まえてのものとなっている。 本稿は、それにつながる一つの、地域と学校教育を授業開発コースとしてどうとらえ、それを学生が伝え学んだのかを 2013年度の授業開発コースの2年演習での実践したものの一部をまとめたものである。. 必要であろう。. [1]授業開発コースとしての試み. そのことを踏まえたうえで、教育において、生産現場で. 子どもの発達を地域が支えている、先行事例は多々存在. ある第一次産業にかかわることはどういった意味を持つの. している。恵庭市は地域づくりと社会教育を連携させ、通. だろうか。第一次産業が私たちの生活を支えていることは. 学合宿や夏休み子ども教室を行っている。同市では、社会. 間違いない。生産現場には、その土壌、気象、風土、つま. 教育事業に参加する住民が多く、市内の地区ごとに住民と. り自然に働きかけることで人間が生きていけるように工夫. 1). 協力して事業を作り上げている 。. された技術が蓄積されている。それは先人によって積み重. では、地域学校教育専攻授業開発コースとして、地域と. ねられたものでもあり、先人の行動によって裏付けられた. どのようにかかわり、どのように見て、学んでいくことが. 工夫の履歴が残されている。それらの現状をまず知ること. できるのだろうか。まずは、①その地域にある何を児童に. は重要であろう。. 伝えられればいいのかを考察することから始まることにあ. 人類の歴史の中で、狩猟採集の時代は長い。そこでは、. ると考える2)。特に道東地域に根差す教育大学としては第. 生きていく上で最低限の狩猟・採集によって自然の供給量. 一次産業を主体とすることに着目したい。また、②教育大. を超えない範囲で生活をしてきた。その点では、人間と自. 学である以上、教員として道東地域に赴任することが多分. 然は共存して生きてきたと言える。しかし、膨大な化石燃. に考えられる。その赴任先の地域の産業を知ることもまた. 料の使用によるエネルギー注入によって、人間は自然その. − 45 −.
(3) 三 浦 和 樹・新 畑 結 香・倉賀野 志 郎 ものを淘汰しようとしてきている。その生活が長く持続す. 習うため、また炭素を視点とした教材化の検討、森林が化. るはずもないが、この膨れ上がった生活水準によって、自. 石燃料に代わるエネルギー源と考えるうえで森林管理に従. 然と共存していたころの人間の暮らしを忘れかけている課. 事している人々の現状を把握するために調査に入り、その. 題が現在突きつけられてきている。. 成果を「炭素を視点としての小学校6年生理科カリキュラ. このような“持続”という視点からの考察は、第一次産. ムの構成と授業実践」(三浦2013)5)にまとめている。. 業においても同様のことが言えるだろう。人間が自然と共. これらの研究を踏まえての理解があったため地域とのつ. 存し持続的に生活を送るためにも、道東という厳しい自然. ながりを学ぶ今回の実践を行うことができた。それぞれの. の中で培われてきた生産現場の知恵と技術を学ぶことは、. 研究内容について将来は教員になる学生に伝えることはも. 将来を考え生きていき行動する上で必要なことであろう。. ちろん、学生自身がその現場に行くことで現実を自分のこ. 産業の現実を理解していくためには、本に載っているもの. とと感じ、解決していけることも課題としての実践を行っ. だけでは、学生自身の課題として向き合うにはリアリティ. た。. に欠けるものとなる。実際にそこで生きている人たちの仕 事を見て、話を聞く機会が必要であると考えた。 高嶋氏は「繰り返し地域に行くこと」「リアルな現実に. [2]2013年度「授業開発演習Ⅰ」実践の概要. 相面させること」 「そこで働く人々の姿や労働を知ること」. 本実践は授業開発コースの2年生14名を対象として、地. 「自然の多面的で多様な姿に出会うこと」などを体験する. 域産業と大学院生のつながりをベースとしたフィールド研. ことを通して、次のことが期待されるとした3)。. 究を含めた教育内容研究を行った。. . 体験的な学び. 地域産業としては、漁業、農業、酪農および林業の4つ. . 多様な学び. の分野で展開し、それぞれの「地域」に赴いての実践となっ. . 疑問を発見する学び(五感を働かせること). ている。14名は4領域に分かれて学習・実践を行った。授. . 『知(知識)』と体験を結び付ける学び. 業開発コースでは毎年各学年で行っている研究内容の発表. . 現場主義に基づき、より深い地域理解・学校理解・こ. 会で、同コースの学部生に発表した。 (2013年6月) 4分野における実地の大まかな日程を以下に記す。. ども理解へ . 学生自らが学校や地域から信頼を勝ち取る活動:継続. する活動 ―地域に出向く活動:先輩から後輩へ引き継がれる活 動― これらのことを学んでいく最初の出発点として、2013年 度の学部2年生における「授業開発演習Ⅰ」(以下「演習」 と略)では地域産業とかかわることを課題とした。とりわ け、①漁業、②農業、③酪農、④林業の4つの分野につい ては地域授業開発コースと地域とのつながりを課題とし た。 ①漁業は高嶋氏が行っているサケ体験実習を「学校体 験・地域理解実習」(ⅤとⅥ)として実施してきている。そ の実習においてサケの産卵床や遡上の様子を観察するのは 主に標津の河川であり、そのほかにもサケの採卵や解剖実 習、荷捌きの見学などによって漁業従事者とのつながりが あった。 ②農業においては、授業開発コースで「弟子屈町を題材 にした地域教材の作成」 (宮西卒業論文2012)で弟子屈町 の地域教材として、そばを題材とした授業を開発してい る。宮西は論文の作成に当たり、弟子屈町の農家と関係を 築きながら内容研究を深めていた。 ③酪農においては、北海道教育大学元教授三宅信一氏が 「酪農の近代化と教育」(1974)4) にバター作りの巡回教 室をまとめている他、「酪農のうんちとおしっこ」 (丹羽卒 業論文2007)」という教材も開発されており、根釧地方の 酪農家らには30年近く学ぶ場を与えていただいている。 ④林業においては、三浦の研究に伴い、炭焼きの技術を. − 46 −.
(4) 自然に寄り添う生産現場からの学び この他に、4月に入ってから毎週金曜日の夕方から行っ. か言えない状況にあるということになる。しかし試みとし. た実地についてのレポートはもちろん、各学生が持った課. ては全く間違っていない。使用する炭素をいかに人間がか. 題をもとにしたレポートも提出し、それらの内容を学生間. かわる中で還元していくかという問題について林業という. と院生とで議論も行っている。. 産業は深いかかわりがあるといえよう6)。 こうした課題をとらえる試みとして、林業を選択した学 部2年生4名とともに実地を交えた調査をしつつ、林業の. [3]とりわけ林業に着目して、実践の内容. 現状を把握するための学校教育に生かす内容と方法を研究. 本稿では主に林業分野の実践内容を「炭素を視点として. するということを課題としての「演習」を行った。. の小学校6年生理科カリキュラムの構成と授業実践」 (2013. 林業分野の実地は浦幌木炭と北村林業の協力によって実. 三浦)をもとに紹介する。酪農については新畑の方は学会. 現したものである。. 等で報告を行っている。. ⑴ねらい . 人間が使用した炭素を人間社会が還元する方法を持って. どのように木炭になるかという知識をベースとして. いないが、それによって人間と自然との離れられない関係. オリジナルの炭窯を作り実験し、浦幌木炭への実地. を作ることとなっている。人間が育てた木を利用して文化. によって技術を自然科学的な視点から考察する。 . 的な生活を養うエネルギーとし、そこで発生した二酸化炭. 林業における教育とのつながりを意識したうえで実. 素を次世代の木が成長するために使うことができたら、一. 地・実験を通して、主体的に林業の課題を発見し学. 応の循環ができることになるだろう。. 校教育の立場でどのようにとらえていけばいいのか を考察する。. 今までの生活基盤がいかに持続できないものでできてい るかの問題から考え、人間は将来に対してどのように考. ⑵対象. え、行動するべきなのだろうかを検討し。人間が使ってき. 学部2年生4名:M.N、T.H、M.H、M.Y. た炭素燃料について現状と将来性から、人間がどのような. ⑶日程. 将来を描くべきなのかを、炭素の広い分野から炭に着目し. 日程については希望する学習内容の聞き取りを行い、以. て教育現場で実践し、検討した5)。. 下8項目の疑問に迫ることができるように演習内容を構成 した。 ア.身近なところの林業について調べたい。 (M.N) イ.木の用途は家しか思いつかない。 (M.N) ウ.木こりは昔どんな身分でどういう経緯で今の生活 になったのか。 (M.N) エ.炭を作りたい。(T.H) オ.林業はどこからどこまでを指すのか。 全体のイメー ジがない。紙は?家は?森林保全は?(M.H) カ.炭はどのように利用されているのか。(M.Y) キ.エネルギーの効率からみてどうして作り、なぜ炭 を作っているのか。 (M.Y) ク.何の利益があるのか。 (M.Y) また、炭を作るための場として、大学では金工室を使用 している。苦労した点も多かった。まず、そのような演習 の場で炭焼きを行った前例がないため、どのような量の煙 が出るのか、焚火の範囲はどのくらいの物なのか、これら の点は実際に感覚として持たない限り、安全かどうかの判. この考え方はカーボンニュートラルと呼ばれている。 「一. 断がされづらい。これが一番の障害となることとなった。. 応」の循環ができるというのは森林面積が約37%ある北海. 本校の学務グループの方に実際に使用する炉を見てもらっ. 道の安定森林供給量(約4200㎥)のすべてをエネルギー換. たり、行う場所を財務グループの方を交えて検討したり、. 算したとしても、北海道の1年間の灯油使用料(エネルギー. 苦労する点は山のようにあったが、なんとか実施すること. 消費量の約14%)を賄う分しか生み出せないためだ。現. ができている。. 存する森林からのエネルギーでは賄えないほど、現在の人. 学習会の日程と内容については表2のように行った。. 間の文化的生活水準は高いともいえる。だが、生活水準を 落とすことは望ましくない。そういった点では、カーボン ニュートラルは人間社会にとって延命策としかならず、根 本的解決とはなっていない。そういった点で「一応」とし. − 47 −.
(5) 三 浦 和 樹・新 畑 結 香・倉賀野 志 郎. 活動写真2 5/31発表会の様子 ⑷研究内容 研究内容については、林業から大きく外れない限り各自 の自由に思いつくテーマを設定した。それぞれの自分で テーマを決定し、課題を持ち、 解決していくことも「演習」 の中では重要になってくると考えてのことである。また、 今回の「演習」では、実地と実験があり、そこから各自の 課題も見つけるようにした。各学生の最終的なテーマは次 のようになった。 ア.無駄のない炭作り(T.H) イ.木と人とその歩み∼おじいさんはなぜ「山へしば 刈り」に行ったのか∼(M.H) ウ.林業という仕事を考える(M.Y) エ.き―木の気持ちが気になる―(M.N) 学習会については、各自知りたかった内容について発表 してもらい、その内容について討論を中心とした「演習」 も時間内に設定した。発表内容は調べてきたことが何を示 すのか、なぜそうなのか、なぜそうなったのか、など疑問 を挙げ、解決する内容にし、討論の場でその成否を考えて いくスタイルをとっている。最終的な林業班としての発表 内容の検討では各学生が今までの学習をまとめ、そこから 何を伝えたいのかの議論も行っている。林業班としてのタ イトルは「林業班 炭・里山・林業・植生∼森との共存を 考える∼」となり、5月31日の発表会において発表した。. 活動写真1 5/24全体学習会の様子. 活動写真3 伐採現場見学. − 48 −.
(6) 自然に寄り添う生産現場からの学び ⑵農業班 ここでは、畑作の実際のようすを見学し、農家の話を聞 くことを通して現実に対面させること、さらに農産物と言 われる植物の生態を知り、これからの農村のあり方を考え るきっかけとなることを目指した。タイトルは「なぜメロ ンを育てるのか…付加価値という経済の視点と、植物の生 態との折り合いをどうつけるか…小麦、ビート、じゃがい も、そば、メロンといった弟子屈町で育てられている作物 の原産地や戦略を学ぶ」となった。 活動写真4 大学内での炭焼き. [4]漁業、農業、酪農各班の実践の概要 他の3領域についても同様に実地・演習を行い、内容が 展開されている。しかし、紙面の関係上、本稿では概要だ けを記す。 ⑴漁業班 ここでは、漁業の実際のようすを見学し、漁師の話を聞 くことを通してリアルな現実に対面させること、さらに漁 業資源と言われる魚類の生態を知り、これからの漁村のあ りかたを考えるきっかけとなることを目指した。タイトル は「カニの生態に迫る∼カニも泳ぐのか?∼…カニの生態. 活動写真7 ジャガイモ選別作業見学. と標津沖の地理的、気候的特徴をつかむ」となった。. 活動写真5 カニ漁見学 活動写真8 ビートの育苗ハウス見学 ⑶酪農班6) 北海道酪農は行政主導ではじまった。近代化の流れとと もに酪農は機械化・大型化・効率化が進み、経営の規模拡 大が推進されてきた。しかし予想通りに農家の収益は上が らず、結果的に多くの負債と離農者を抱え、酪農郷と呼ば れた多くの町は過疎化が進んでいる。 新畑は、酪農村でのこれらの諸問題を解決する糸口とし て、根釧ではじまった「マイペース酪農」を実践する『酪 農適塾』(後述)に注目し、主に酪農家を訪問し、草地や 土壌を観察し聞き取り調査を行うフィールドワークを行っ 活動写真6 漁師との交流会. た。. − 49 −.
(7) 三 浦 和 樹・新 畑 結 香・倉賀野 志 郎 そうして見えてきたのが、草地型酪農およびそれを実践 する酪農家の暮らしを支える土・草・牛の存在である。酪 農における最大の仕事は、その土地で育つ生き物たちの生 活とその循環を助けることである。土壌中の微生物も、あ らゆる植物そして牛も、それぞれのペースがあり、役割 がある。 「適地・適作・適産=適正規模」をキーワードに 考えると、人間の経済活動のスピードと自然の循環するス ピードは異なることがわかってきた。 そのため自然の循環つまり土・草・牛の存在を教育内容 に取り入れることが必要だと感じ、教育大釧路校の学生と ともに、酪農教育カリキュラム試案づくりに取り組んだ。 はじめに、先行研究として道東地域でどのような酪農教育 が行われているかを調査した。 釧路市の社会科郷土読本「く 活動写真9 草地見学. しろ」では、牧草収穫に関する記述に誤りがあること、草 地型酪農で重要な土・草・牛づくりの視点が欠けているこ ともわかった。 次に、将来酪農教育を担うことになる大学生が描く「酪 農像」を調査した。教育大学釧路校の学生を対象に、酪農 に関する疑問調査と酪農の知識に関するアンケートを行っ た。 疑問調査では、酪農における土や草に関する疑問がほと んど挙げられないこと、アンケートでは土・草に関する知 識は牛ほど多くなく、疑問を持つこともないようだという ことがわかった。道東の酪農教育カリキュラムづくりにお いて、将来教育する立場にある学生が土・草・牛のつなが りを体験的に学び直す必要があるという課題が得られた。 そこで、草地型酪農で主役となる土・草・牛とそのつな. 活動写真10 土壌調査. がりを学ぶために、月1回の『酪農適塾』に参加した。酪 農適塾は後継者育成のための酪農研修会であり、塾長は酪 農家が務める。適正規模をテーマに、経済合理性だけを考 慮せず・草・牛の力を存分に発揮させ、先進的な草地酪農. [5]今回の「演習」を経ての学生の意識的な変化. 経営をしている。その土地で生産された草資源に依存し暮. 発表会では、全体で、最初の始めと、最後のまとめに相. らしていく、「風土に生かされた酪農」を提案している。. 当する終わりがあり、その間に各グループの発表を行って. 『酪農適塾』での学びをふまえて、釧路校授業開発コー. いる。始めと終わりの内容をもとに変化の一端をとらえて. スの学生を対象に、酪農教育試案として週1回の酪農学習. いくことができる。この内容は5月24日の全体学習会の中. 会(座学)と2か月間の酪農ゼミ (フィールドワーク) を行っ. で2年生として、ほかの学年に合宿でどのようなことを伝. た。さらに、道東の酪農を学ぶための副教材を作成した。. えたいのか。また、主に実地から何を学んだのか、を議論. 学生とともに学習会を重ね、土・草・牛のつながりを「微. し決定したものである。. 生物」という視点から深めることができた。加えてフィー. 以下、始めと終わりの内容を活字化したものである。活. ルドワークによって、土・草・牛が主役の草地型酪農をモ. 字化に伴い、読みやすくするために、文意を損なわない範. デルとした酪農教育カリキュラムができることを確信し. 囲で、文章を変更した。. た。また学生たちは酪農家を中心に地域の方々と関わり合 いながら、地域の魅力に惹かれ、地域の課題を肌で感じ、 自分の今の暮らしを見つめ直すことにもつながった。 いずれの内容も5月31日の発表会にて発表を行った。. − 50 −.
(8) 自然に寄り添う生産現場からの学び 課題の表れが、自然的要因、歴史的要因、社会的要因など の中に位置づけられており、その広がり、深まりの中にあ る。自然的背景はその土地、環境、風土を作り出している ここから、大学1年生の学びを通しても、産業に対する 視点や、それにかかわる機会は乏しいことがわかる。 また、 それを学生が自覚することができてきている。. し、社会的背景は、物流や人の流れなどを指している。そ れらが重なるところから「地域」の土台となっていく。自 然、社会的背景の広がりはそれぞれ他の「地域」とつながっ ているし、一つの「地域」課題解決のためにはさらに広げ て外とのつながりを意識する必要がある。また、 現在の「地 域」を知るために過去があり、過去を知ることで未来を見 定めていくこととなる。 「地域」という一つの視点からでも、その捉え方や考え 方の広がり、人間の生きざまを問うことができるだろう。 場合によっては、その「地域」の課題が世界の課題とつな がっているということもあるだろう。そういった広がりを 意識しての「地域」について、教師自身も考え、子どもた ちに伝えることができるようになることが、「地域」を理 解し、教育に携わる人間に必要な一つの資質であることは こと間違いないことであろう。. [6]今回の4領域の「演習」を踏まえて 今回の演習は、今までの地域とのつながりの経緯があっ てこそ成立するものであり、今回だけでまとめることは無 理であろうが、一区切りとして整理しておきたい。 教師を目指す人、地域学校教育専攻授業開発コースの学生 にとって「地域」とは将来の職場がある場所、子どもたち. 今回の「演習」は、そういった「地域」を見る一つの視. の生活基盤となるところである。教師は子どもたちが地域. 点として学生は学ぶことが出来たと考えている。. 社会を理解し、支える人になれるように支援し援助してい く。しかし、それだけでは尽きない地域学校教育専攻の 「総 合的に教育に生かす」とはどのようなことなのだろうかを. 注. 問い直す機会ともなった。「地域」という言葉の意味を再. ⑴北海道教育学会・日本教育学会北海道地区協賛シンポジ. 確認する必要があるのではないかということを今回の「演. ウムは2011年北海道教育大学釧路校で第1回が行われ. 習」だけではないか改めて考えさせられるものとなった。. た。恵庭市の内容については4回目(2014年3月)のシ. その「地域」での生活基盤を理解することはどのような意. ンポジウムとなっている。 ⑵授業開発研究室の活動は前身の段階からの報告書は次の. 味があるのだろうか。 地域産業という視点は、それ自体が周りの自然、歴史、. ようなものがある。. 社会によって人間の営みをとらえられる。. ①教育学入門期(1年次)における〔学校教育等現場訪. 図2は1つの「地域」を黒点としてその周りの内容を図. 問〕と〔体験に学ぶ〕とに基づく演習実践と課題1993. 示したものである。実際にその場で起こっている具体的な. 年(日本教師教育学会(第3回:法政大学) 、. − 51 −.
(9) 三 浦 和 樹・新 畑 結 香・倉賀野 志 郎 ②教師教育における体験をキーワードとするカリキュラ. 2011年度より三友農場(現酪農適塾)にて月1回実施さ. ム開発の総合的研究1995年(カリキュラム改革開発調. れている「公開酪農適塾」に3年間参加し聞き取り調査. 査報告書)、. を行った結果から、三友氏の実践が若い世代にどのよう に継承されつつあるかについて報告された。. ③教師の体験活動1998年(東洋館)、 ④北海道教育大学釧路校における総合的な体験学習の試 みと附属学校の役割:教師の体験活動を中心に1999年 (教員養成大学と地域とを結ぶ研究集会)、 ⑤北海道教育大学・釧路校: 「体験」 と「“なぜ”の疑問」 を中心とする研究室での試み2000年(愛媛大学) 、 ⑥地域の体験学習と教材づくり:釧路校・授業基礎開発 系:教育内容・方法研究室の活動を中心1999、 ⑦子ども達との触れ合い学習を重視した、1年次前期の 学生教育について2002年、 ⑧へき地学校での教育実習と学校訪問:地域との連携を 踏まえたへき地小中学校での開発型授業持ち込み型の 実践実習2002年(教育研究改革・改善プロジェクト経 費実施報告)、 ⑨教育内容・方法研究室における4年間のカリキュラム 構造2006年(新潟大学人間教育科学部附属教育実践セ ンター ) ⑶授業開発研究室は最終的に教育内容・教材という形で集 約していくことも行っている。地域教材としては、高嶋 幸男・倉賀野志郎「北海道とりわけ道東を中心とした“地 域教材”の開発:教育内容・授業プランの紹介を中心に」 (釧路論集2009年第41号) ⑶高嶋幸男「地域と学生と共に学んだ30年』(北海道教育 大学釧路校・教育内容・方法研究室)2012年2月18日:退 官記念資料集 ⑷三宅信一、「酪農をどう教えるか」 『授業を創る』授業を 創る社1983年 ⑸三浦和樹、修士論文「炭素を視点とし手の小学校6年間 カリキュラムの構成と授業実践:炭素から見える生命と 人間社会の変遷と将来に位置づけて」(北海道教育大学 大学院教育学研究科・学校教育専攻・学校教育専修2013 年度) ⑹カーボンニュートラルとは環境化学用語で、排出される 二酸化炭素と還元される二酸化炭素量が同じという概念 だ。山林を維持しなくてはカーボンニュートラルの持続 性がないため、林業とのつながりは深い。しかし、山林 から木材を切り、移動させる際に化石燃料を使用すると 排出量が上回ってしまうなどの課題も残されている。 ⑹新畑結香、修士論文「学校教育における道東地域の酪農 教育あり方を探る:風土に生かされる酪農を視点とし て」(北海道教育大学大学院教育学研究科・学校教育専 攻・学校教育専修2013年度) また日本草地学会宮崎大会(小集会1)で「酪農適塾 による永年草地に立脚した新たな酪農の可能性・月1回 の酪農適塾による若い世代に伝える酪農経営観、技術」 で発表している。他に高嶋幸男・奥山洌・瀬尾哲也(帯 広畜産大学)。2014.4.2. − 52 −.
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