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社会科公民的分野学習における消費生活の位置づけ

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(1)Title. 社会科公民的分野学習における消費生活の位置づけ. Author(s). 遠藤, 芳信. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 43(2): 163-174. Issue Date. 1993-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5259. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第43巻 第2号 lof Hokkaido Universi ion(Sec ionIC) Vol Jouma ty ofEducat t .43 .2 , No. 平成5年3月 Mar ch ,1993. 社会科公民的分 野学習における消費生活の位置づけ. 遠. 1. 藤. 芳. 信. 経済学習における消費者保護・消費者運動の位置づけ. 本稿は, 中学校社会科公民的分 野と高等学校公民 (現代社会と政治・経済の科目) の経済学習に おける消費者保護・消費者運動 (特に消費生活協同組合) の位置づけを考察するもの でる . 今日, マスコミ等で 「バブル経済」 の崩壊が云々されているが, 大衆消費・大量消費はつ づいて いる‐ この中で, 青少年に消費生活や具体的な販売活動をめ ぐる消費者保護の意義を適切に教える ことは重要である. この十年間においても, 「豊田商事事件」を代表として, 販売活動をめ ぐる消費 者側のトラブルは増加している. 以上のトラブルについては, たとえば, 中学校社会科公民的分 野 198 教科書( 8年, 大阪書籍)は「訪問販売等に関する法律」 ( 1 976年制定, 1 988年一部改正)によっ 「 て規制される いろいろな訪問販売」 としてイラスト入り で説明している すなわち ① 「キャッ . , チセールス」 (駅前や街頭で「アンケートをお願いします」 などと言っ て, 販売目的を明らかにしな 「 いで近づき, 営業所などにつれていっ て契約させる商法) , ② 催眠商法」 (集会所などに人を集め て, 最初は安い商品を無料でわたし, 会場の熱気がもりあがっ たころに, 高い商品を販売する商法) , ③ 「アポイントメントセールス」 (電話などで 「抽選に当っ たから記念品をわたしたい」 と言っ て呼 「 「 び出し, 契約させる商法) , ④ 霊感商法」 (訪問した家で無料 で手相を見て あなたは悪い霊がつ いています. このままでは不幸になる」 などと言っ て, 高価な印鑑やっぼなどを売りつける商法) である‐ その他, 他社の教科書でも, 有害・薬害食品, 欠陥商品, 誇大広告, クレジッ トカー ドや ローンによる消費者信用トラブル問題等が事例として紹介されている‐ この中で, カー ド破産申告 件数は,1991年には約2万3千件にのぼり,1 992年には4万件にのぼると予想されている‐ 教科書 は, 以上の消費生活をめ ぐるトラブル発生 の増加の中で, いずれも, 消費者が権利の自覚と知識を 高める努力をすることと, 消費者主権の確立や 「かしこい消費者」 になることの重要性を記述 して い る.. ところ で, 社会科における消 費生活問題は, 小学校 では地理的分 野における地域学習に位 置づけ られている. すなわち, 市町村地域レベ ルの生産活動との関連において当該 の地域の特色 (他地域 とのかかわりも含めて) を学ばせること である. この学習は小学校三年生の内容 であるが 198 8年 ,. 小学校学習指導要領社会では, 消費生活問題は, 四, 五, 六年生の学習内容には明確に位置づけら れていない. しかし, 実践的には, 消費生活問題は, 本稿の主題として後述するが 環境保全問題 ,. 1 } 等の人類的なグローバル的課題解決の学習に十分 に位置づけられる内容を含ん でいる.(. 中学校では, 消費生活問題は, 三年生の公民的分 野の経済学習の内容として位置づけられている . すなわち, 1988年中学校学習指導要領社会においては, 「 ( 2 )国民生活の向上と経済」の中の「イ 国 民生活と福祉」 において, 「国民生活の向上や福祉の増大を図るため には, 雇用と労働条件の改善 ,. 消費者の保護, 社会保障の充実, 社会資本の整備, 公害の防止など環境の保全, 資源やエネルギー. 163.

(3) . 遠 藤 芳 信. の有効な開発・利用などが必要であることを理解させる」 と記述されている (傍点は遠藤) . つまり, 高度に発達した資本 主義社会が, 公害・環境・資源・エネルギー問題とならんで克服・改善すべき 内容として位置づけられている‐ この学習内容の位置づけは,1978年中学校学習指導要領をほぼ継 8年中学校学習指導要領社会は特に 「消費者の保護」 に関する内容の取扱いの留 承しているが, 198 「 意点として, 現代社会における取引の多様化や契約の 重要性を取り上げ, 消費者として主体的に判 断し行動することが大切であることを考えさせるよう留意すること」 と記述している‐ これはこれ までの消費生活をめ ぐるトラ ブル発生の増加をふまえたものである. ( 1 )現代社会の 高等学校では,1 97 8年高校学習指導要領社会の現代社会における消費生活問題は,「 「 基本的な問題」 の内容にお ける 「現代の経済社会と国民福祉」 の中の 経済の調和ある発展と福祉 の実現」 として, 環境・資源・エネルギー問題が別項として立てられつつも, 上記の中学校社会科 988年高校学習指導公民の現代社会では, 公民的分野に近いかたちで位置づけられていた. 他方, 1 「 2 ) ( )環境と人間生活」 環境・公害・資源・エネルギー問題が特に独立した内容として位置づけられ ( , ( 3 )現代の政治・経済と人間」 という内容における 「国民福祉と政府の経済活動」 消費者生活問題は 「 の中に, 国民所得の動き, 産業構造の変化, 雇用問題と労働関係, 社会保障の充実, 社会資本の整 備な どに並ぶものとして, 「消費者保護と契約」 が位置づけられた. 筆者としては, 消費生活問題・ 消費者保護は グロー バ ル的な課題と関連するので, 中学校学習指導要領社会のような配列が適切と 考えているが, 高校では, 今後は教 科書記述として どのように編集さ れるかが問題になるだろう. 1 ( )日本の経済 78年高校学習指導要領上は 「 他方, 高校公民の政治・経済では, 消費者保護は, 19 「 づけられ 1 9 と国民福祉」 における 日本経済の現状と国民福祉」 の中に位置 , 88年高校学習指導要 領もほぼ同様である. 特に, 消費者保護と並ぶ他の課題としては, 「環境の保全と公害防止」が規定 され, 環境保全問題が現代経済と関連づけられている.. 1 1 中学校社会科公民的分野教科書における消費生活協同組合の記述 中学校社会科公民的分野教科書における消費生活協同組合の記述は二つに分かれている (以下, 2 ( } 生協と略記) . 第一は, 経済学習における 「商品の流通と金融」 に位置づけられたものである (大阪書籍, 第2 ) 編 「わたしたちの生活と経済」 第1章 「消費生活と経済の しくみ」 . すなわち, 商品流通における 「 商業の仕事の内容として, 卸売業と小売業を説明した後に, 消費者がお金を出し合っ て, 生産者や 卸売商から直接商品を買い入れて 組合員に販売する, 消費者協同組合もありま す.」と記述されてい る. 同社の教科書では, 消費者保護は, ①政治学習の中の地方自治の 学習内容として, 「住民運動と 住民自治」 の小見出 しのもとに, 地域の住民が, 公害反対や消費者保護などを求めて, 署名 運動や 請願運動を展開し, 地方政治に積極的にはたらきかけているという記述, ②同じく政治学習の中の 民主政治と世論の学習 内容として, 「世論と政治」の小見出しのもとに, 住民の参加によっ て, 公害 被害地域に公害防止条例がつくられたり, 生活環境が破壊されたり, 消費者保護が進められたりし た例も少なくないという記述, ③経済学習の中の価格と物価の学習内容として,「物価の安定と消費 者保護」の小見出しのもとに, 「物価の安定とともに, 誇大な広告や宣伝の取り締まり, 不良商品や 有害食品の排除, 商品の安全性の確保など, 消費者を守らなければならない問題があります. 政府 も, 構成取引委員会による監視を強化するとともに, 消費者保護基本法を定めて, 消費者保護に努 めています. 消費者も, 消費者の権利と自覚と知識を高めていく必要があります.」という記述であ 164.

(4) . 社会科公民的分野学習における消費生活 る-. 大阪書籍の場合, 生協が商品流通機構のみに記述されることによっ て, 生協がたんなる大型スー パー マーケッ ト店と大差のない小売業としてのイメージが与えられる可能性がある すなわち 消 , . 3 ) 費者保護・消費者運動からの位置づけがなされていない問題 点が あ る. ( 第二は, 生協を経済学習における消費者保護と消費者運動から位置づけている三社の教科書であ る (教育出版, 中教出版, 東京書籍) ‐ まず, 中教出版は, 口絵カラー写真による 「共同購入をする主婦たち」 という表題で, 「消費者の 手でつく っ た生活協同組合をとおして, グループ で品物を買い入れている」 埼玉県の事例を掲載し ている. 本文では, ①経済学習における消費生活と経済のしく みという主題のもとに,「消費者が決 める経済活動」 という学習内容として 「流通機構と消費者」 の小見出しをかかげ, 商品の流通経路 に 「生協」 も含ませたイラストを掲載し, 消費者主権 (消費者のための経済をつくりだす) を築く 必要性を説明している‐ ②経済学習の中の国民生活の安定と福祉の増大という主題のもとに, 消費 生活の向上という学習内容 として, 「消費者運動と企業の努力」 の小見出しをかかげ, 「消費者は自 衛の手段として, たがいに協力 し, 消費者運動を展開するよう になっ た‐ この中には, 生協運動の ように消費者が生活協同組合を組織し, 共同仕入れによっ て品物を買う運動を進めたり, 消費者セ ンターなどを通して商品テ ストや消費者教育にとり組み, 『賢い消費者』の運動を広げているものが ある」 と記述し, さらに, 消費者保護基本法 ( 1968年) や都道府県の消費者保護条例制定を説明し ている‐ 中教出版は, 生協を流通機構と消 費者保護の二つに位置づけているが, 後者の消費者保護 からの位置づけはやや説明不足 である. すなわち,「共同仕入れによっ て品物を安く買う運動を進め たり一という記述は平板 で世俗的な説明 である‐ 生協は安く売るというこ とのみが目的でなく, 「安 全」 な品質の高い商品を売るという 目的があることを脱落させている. 次に, 東京書籍は, 生協を含む消 費者運動や消費生活を, 経済学習の中の 「今日の社会と生活」 というやや抽象的な主題のもとに,「わたしたちのくらしと 家庭」という学習内容に位置づけている . すなわち, 家族関係や家族をめ ぐる法律関係を説明したのちに, 今後の家庭生活の安定をめ ざすた めに, 「消費生活の安定」 という小見出しをかかげて, 次のように説明している. 「今日の消費生活 の問題のなかには, 個々の家族の努力だけ では解決できないものもある. そこで, 消費者が手をつ なぎ, その要求を生産者や販売業者に反映させようとする試みも数多く行われている‐ 消費生活協 同組合に加わっ たり, 消費者が産地と直接提携するなどして, 家庭の経済を改善しようと努力する のもその一例 である.」 と記述されている‐ ここでは, 説明記述が家庭・家族レベ ルの経済安定から 出発していることが特徴 であるが, 消費生活が個々の家庭・家族レベ ルのものとしてとどまらせる 可能性がでてくる. もちろん, 経済活動の源は個々の家庭経済から出発したものであるが, 高度に 発達した資本主義 経済では, 消費生活は生産活動 (再生産過程) と密接不可分であるので 生協を , 含む消費者保護・消 費者運動を, 中教出版のように, 国民生活の安定と福祉の増大のように広く位 置づけることが適切 であろう‐ なお, 五社の教科書では, 東京書籍の みが, 家計を含む家族・家庭. 生活の学習内容をすべて経済学習に位置づけ, 他社は家計の部分を除いて政治学習に位置づけてい る.. ところで, 教育出版は国民生活と経済という主題のもとに 「消費と家計」 という学習内容を位置 づけ, 「消費者の権利と保護」 という小見出しをかかげ, 消費者主権・消費者保護・消 費者運動・消 費者保護基本法を説明している. そして, その説明記述の後に, 見開き 2 ペ ー ジ に わ た っ て (イ ラ 「 ストと写真掲載) , 消費者の考えを, 生産・流通に大きく反映させることを目的にしている生活協 同組合の活動をみてみよう」 と学習課題を提示し, 解説していることは注目される すなわち 生 . , 165.

(5) . 遠 藤 芳 信. 協活動の内容として(東京都内にある, 店舗を持たない共同購入の生協の事例) , ①中央卸売市場を 通さずに, 商品生産者と直接結びついた商品流通, ②安全で品質の高い品物購入のために生産 者に 働きかけること, ③注文した品物が配達されるまでのイラスト説明における, 消費者・組合員にお ける予約注文制と計画消費, 生産者における予約分の生産の保障の解説, ④ 「班会議」 の写真 (班 は近所の人々 が集まっ て組織され, 定期的に会議を行っ ている. この班の活動が, 組合の中心にお 「 各班に配達されてくる. 品物の かれている) , 注文品の配達」 の写真 (注文した品物は, 支部から 「 分配は, 組合員自身によっ て行う.) , 産地生産者たちとの 提携」 の写真(安全で品質の高い品物を 生産してもらい, それを, 産地から直接購入できるように全国各地の生産者と提携している.)~北 海道上士幌農協 (馬鈴薯・豆類の生産契約)・山形県遊佐農協 (米・プリンスメロンなどの生産 契約) , を説明している. すなわち, 生協の共同購入活動の全体像を多角 的に記述していることが特徴であ る‐ 換言すれば, 一家庭・一家族内の家計や消費生活にとどま らず, 流通過程や生協 (共同購入) の運営・組織形態および商品のオリジン (生産原点) に踏み込んだ考察を加えているこ とが注目さ れ る.. m 高校現代社会教科書における消費生活の記述 高校現代社会七社の教科書において, 消費者保護・消費者運動の学習内容 で, まっ たく生協に触 4 )ただし 帝国書院は消費者運動の 説明本文中に「○○ れていないのは中教出版と 帝国書院である.( , 生協連」 のハチマキを した主婦たちのデモ行進の写真を掲載しているので, 生協組合員 が消費者運 動に参加 していることを理解させることは可能である. また, 帝国書院は 「各種の消費者団体が商 品テス トや誇大広告の 点検を行っ たり, 環境・物価・税制などの行政上の諸政策に消費者の立場か ら発言を行うなど, 団結して消費者の利益の侵害に対抗しようという 消費者運動が高まってきてい 9年の滋賀県議会における 「琵琶湖富栄養化防止条例」 可決の土台になっ たもの る」 と説明し, 197 が滋賀県の主婦の消費者運動であっ たことを紹介している. これによれば, 同教科書本文では記述 されていないが, 消費生活・消費者保護・消費者運動は, 今日す ぐれて, 環境保全・公害防止問題 に関連するテーマになってきていること が意味される. すなわち, 消費生活問題は, その出発点は -家庭・一家族の問題でありつつも, 全国民的あるいは地球 的規模の グローバルな人類的課題とし ての環境・開発・資源・エネルギー問題等に発展する性格をもっ ている. このよう な視点から, さ らに, 高校現代社会の五社の教科書における消費者問題・生協の位置づけを検討してみよう. 第一に, 消費者問題・消費者運動・消費者保護に関して, 多面的な視角 から説明しているのが- 橋出版である. すなわち, 消費者問題の発生 (欠陥商品, 有害食品, 薬物事件, 住宅ローン, サラ 9世紀以降のイ ギリスの生活協同組 1 リーマン金融, クーリン グオフ制度等) , 消費者運動の広がり( 合運動, アメリカのケネディ ー大統領の消費者の四つの権利, 戦後日本の生活協同組合運動, 日本. 1 9 6 8年消費者保護 生活協同組合連合会を含む主な消費者団体~欄外注記) , 消費者保護行政の展開( 基本法を含む 「消費者問題と消費者保護立法のあ ゆみ」 の年表, 地方公共団体の消費者保護条例, 1 97 0年国民生活センター設立, 企業の社会的責任) を記述している. そして, その後の項目では公 害問題を扱っ ている. 生協に関しては, 他に清水書院, 第一学習社, 三省堂が消費者保護(行政)・ 消費者運動・消費者主権の視 点から記述している. 第二に, 生産過程に対応した消費過程・消費生 活問題がす ぐれて全国民的あるいは グロー バ ル的な 人類的課題に発展するという視点からみると, 教科書編集上から東京 書籍, 第一学習社, 清水書院 166.

(6) . 社会科公民的分野学習における消費生活. がやや特筆される. すなわち, 上記三社は消費者問題・消費者生活問題の学習内容配列をグローバ ル的な環境問題と結びつけているわけ ではないが, これらの学習内容の配列につづいて, 環境保全 問題・公害防止問題の学習内容を配列 している. 特に東京書籍 は,「消費者の保護と企業の責任」(消 費者問題, 消費者保護, 自立する消費者, の小見出し)の学習内容につづいて, 「環境の保全と公害 の防止」 の学習内容を配列している. すなわち, そこでは, 人間と環境(生態系破壊問題) , 環境問 「 題(地球的規模の環境破壊) 97 2年国連 人間環境宣言」 98 5年ウィ ーン条約(フ ,1 , 国連環境計画, 1 ロンガス製造規制, オ ゾン層保護,) , 工業化と公害, 四大公害裁判, 公害の防止 (環境アセスメン 「 ト, 汚染者負担の原則) , 等を説明している. 第一学習社も, やや, 東京書籍に近い. すなわち, 生 活環境の保全と公害の防止」の学習内容を配列し, 日本の公害問題(四大公害裁判を含む) , 環境権, 「 公害行政を説明し, さらに, 地球規模の環境問題 ( 1972年国連 人間環境宣言」 , 国連環境計画) を 記述している(清水書院も第一学習社に近い) . その他, 一橋出 版と三省堂は日本国内の公害問題の 説 明 に と どま っ て い る.. もっ とも, 高校現代社会の教科書における環境問題の学習内容の配列は, ①教科書冒頭の第一章 に位置づけ, 現代社会の基本的な課題提起として生徒になげかけるという意味をもっ ているもの, ②教科書の中間部分に 「現代の世界と人類の課題」 として, いわば, 政治・経済学習の中間的まと めとして記述し, 倫理的学習への橋わたし的な課題提起として位置づけているもの, に大別される. ①②はそれぞれ意義があるが, 上述したように, 大量消費・大衆消費時代において, 足もとからグ ロー バ ル的な人類的課題の解決をさ ぐるという点からは, 東京書籍のように, 消費者問題・消費者. 運動・消費者教育の記述の後に, 地球的規模の環境保全と公害防止の学習内容配列が適切と考えら れ, 教師は消費生活と グローバ ル的な人類的課題を容易に結びつけ, 関連・発展させることができ る. 他方, ①②の場合には, 教師は消費生活の学習において再び教科書冒頭にたち得ることに留意 するような学習指導方法が重視されなければならないだろう.. W. 高校政治・経済教科書における消費生活・生協の記述. 高校政治・経済教科書における消費生活・消費者問題は, 日本経済が国民福祉との関係 でどのよ な課題をもっ ているかということに位置づけられている. そして, 四社ともに, 生協を消費者保護・ 消費者運動に位置づけているが, 消費生活問題の学習の発展としての, グローバル的な環境問題と 5 }特に の関連性という点では, 四社ともに第一学習社や清水書院の現代社会の教科書記述に近い‐( , 自由書房は, 消費者問題・消費者運動を歴史的に説明し (年表が掲載され, 1951年生協結成も記述 「 され, 生協 の共同購入が写真入り で説明されている) , その後につづく 公害防止と人間尊重」 の学. 習内容では, 高度経済成長による生態系破壊と公害発生, 四大公害裁判, 産業公害 (産業廃棄物処 理法) , 都市公害, 公害行政, 公害防止(汚染者負担原則, 無過失責任制, 総量規制, 環境アセスメ ント, 住民運動の役割) を記述している. そして, さらに, グロー バ ル的な 「公害の国際化」 に触 ・漠化, 酸性雨, 197 れ, 地球の砂 2年国連 「人間環境宣言」 982年国連ナイロビ環境会議を説明し ,1 ている‐ その他, 実教出版と数研出版は 「公害の国際化」 に触れているが, 一橋出版はやや国内の 公害・環境問題に傾斜した記述になっ ている. 今日, 高度に発達した資本主義国になり, 経済活動の国際化が進展するなかで消費生活はたんな る消費でなく, あるいはたんなる自己の生活と生命の再生産にと どまることなく, グロー バ ル的な 生産過程に直結していることが自覚化されつつある. そういう点では, 消費生活問題は, グローバ 167.

(7) . 遠 藤 芳 信. ル的な持続可能な開発・発展, そして, 環境保全問題, さらに人権・民族・非核・軍縮の課題に発 展 さ せ ら れ る テ ー マ に な っ て い る.. ‐に記述された消費生活問題と生協 の位置づけを検討してきたが, 以上, 中学校・高等学校の教科書 以上の検討を補足する意味で, 今日の学問世界における生協への注目を考察しておこう.. V. 今日における協同組合運動. ( 1 ) 世界の協同組合運動 5条に, 生協を含む協同組 協同組合の発祥と発展は各国で異なるが, まず, イタリアでは憲法第4 5条は, 「共和国は, 相互性の 合が規定されていること が注目される. すなわち, イタリア憲法第4 性格を有し, 私的投機の目的を有しない協同 組合の社会的機能を承認する. 法律は, 最も有効な方 法により, その増加を推進し, 助成し, およ び適当な監督により, その性格と目的とを確保する.」 と, 協同組合の保護・育成を規定している. イタリアの労働者協同組合(労働者の協同所有と管理・ 経営の企業体) は1980年代初めには1万1千を越えているとされている. ヨーロッ パの労働者協同組合で目立つのが,スペイ ンの バスク地方に設立されたモン ドラ ゴン(労 働者協同組合複合体) である. モン ドラ ゴン (創設準備者はホセ・マリア・アリスメンディ アリエ 0を越す労働者協同組 3人) から出発し, 今日, 10 956年に一つの協同組合 (労働者2 タ神父) は, 1 合と援助機関をもち, 労働者約2万人を雇用 している. モン ドラ ゴンは生産協同組合 (家具, 台所. 用品, 工作機械, 電子部品, 印刷, 造船, 金属製錬等) を中心に, 社会的保健協同組合や協同組合 銀行, サービス (消費) 協同組合, 農業関連事業協同組合から構成されて いる. モン ドラ ゴンにつ いては, アメリカ社会学会会長・産業関係研究学会会長・応用人類学会会長などを歴任したウイリ アム・フッ ト・ホワイ トが詳細に実地調査研究し, 特に協同組合の組織・運営をめ ぐる民主主義性 と文化性の視点から教訓化している (統治への参加, 労働の組織および管理への参加, 地域との関 6 ( } ズ ゴ 係等) . ホワイ トによれば, モン ドラ ンの経験はアメリカの労働者生産協同組合(ワーカー コ k o h i P S 1 t P E l ) の法制化にも影響を wners p an s レクティ ブ) や従業員持株計画 (ESO ~ mpoee oc 与えているとされる. ( 2 ) アメリカのカリフォ ルニア州の生協運動 アメリカの協同組合運動が進んでいるのはカリフォ ルニア州とされている. カリフォ ルニア州 で lopment i ve Deve は 1976 年 に, 州 政 府 の 消 費 者 問 題 行 政 部 門 に コ ー プ 発 展 プ ロ グラ ム (Cooperat. Program)が創設された. 1 980年当時, カリフォ ルニア州全人口は2367万人であったが, なんらか 0万人を越えた. また, 協同組合の年間取引額 の協同組合 (コー プ) に組織されている人々は約63 20 0億円) とされ, カリフォ ルニア経済の消費部門で無視できないものとさ は117 0億 ドル (2兆7 れている. 同洲における協同組合の種類は, ①芸術・工芸 (芸術労働者の製作・販売) , ②ケー ブル TV (有線テレビ, 60チャネル) ③保育, ④信用組合, ⑤エネルギー⑥食品, ⑦葬儀, ⑧健康, ⑨ 住宅, ⑩保険, ⑪学生, ⑫公益利用 (電気・水・電話などの基礎的サービス部門の共同所有と管理 プ プ の組合) , ⑬労働者(生産協同組合~産業労働者コー プ, 農業労働者コー , サービス労働者コー , 手仕事・工芸労働者コー プ) , がある. , ⑭その他 (有機農園組合など) 以上のカリフォ ルニア州の協同 組合運動に対しては,1985年9月にカリフォ ルニア州知事によっ て, 「数多くのコー プが地域のコミュ ニティ の中で活動をつづけており, 消費者教育, 民主主義的な 意思決定 プロセスの実践 などについて, 実地の教育 (実物宣伝) の役割をはたしている. カリフォ 168.

(8) . 社会科公民的分野学習における消費生活. ルニアのコープの活動を強力に押しすすめているそう した人々は, カリフォ ルニア住民のために奉 仕しているのであり, そうした努力は大いに推奨されるべきものである.」 という宣言が採択され , 8 ) 同 年 10 月 は コー プ月 間 と 定 め ら れ た ( . しか し, 今 日, カ リ フ ォ ル ニ ア 州 で は, 消 費 生 活 協 同 組 合 の コ ー プ よ り も ワ ー カ ー ズ コ レ ク テ ィ ,. ブ (労働者生産協同組合) の時代に進むべ きであるとする議論もある すなわち 後述するように , . , 生協が巨大化することによっ て, 組合員にとっ ては大型スーパーマーケッ トと同様な存在になる面 があるからである‐ また, ワーカーズコレクティ ブを含むアメリカの労働者所有企業は 全米で約 , 7000 を数え, 労働者数は約1 000万人に達し, 全産業労働者の一割を占めている. アメリカ では, 企 業倒産を契機にして, 当該企業の株を労働者が所有し, 企業を再建させ る, いわゆる倒産・自主管 理企業のタイ プが多い. ( 3 ) バークレー生協の倒 産をめ ぐっ て バー クレー生協 ( 937年設立) はアメリカ最大の生協であり. 最多時組合員数は1 1 984年に11万 6千人を越え, 最多時事業高は1 980年に8 357万 ドルに達した‐ しかし, 1988年に破産申告し, 倒 産に至っ た. 倒産の原因は一言 ではいえず(一般企業も倒 産はある) , 種々の要因が複合的に結びつ 9 } いている.日本でも,バークレー生協の倒 産原因が種々語られようとしている { . この中で特に, ポー ル・ロー バー ( 198 5~1 988年におけるバークレー生協 の組合員向け週刊機関誌 『コー プ・ニュー ス』 の 編 集 者)が 七 点 に ま と め て い る 倒 産 原 因 が 注 目 さ れ る ま た, 同 じ『コ ー プ・ニ ュ ー ス』(1978~1985 .. 年) の編集者であっ たロ バート・シルジゲンの指摘も注目される. 1 0 } 第一に, 両者の指摘に共通しているのは,協同組合民主主義の原則 の無視・弱体化・放棄 である ( . たとえば, 組合員がほとん ど空白の地域に生協が進出し, 店舗を設立することを 日本では 「落下 , 傘方式」 と称されることがあるが, バー クレー生協 でもいくつかの同事例がある すなわち バー . , クレー生協は1974年に低所得者層が住む地域に進出 しているが, シルジゲンは 「宗教的‐福音的動 機によ る進出は, 協同組合原則を明白に無視している 外部から協同が持ち込まれ 地域社会に与 ‐ , えられるという点で, 基本的には非民主的な考え方と言える.」と述べられている 生協を必要とし . , 生協を受け入れるための組合員拡大や社会的準備がないところに生協が進出するのは 一般 の大型 , スー パー マ ー ケ ッ ト の 進 出 と 同 じ で あ る. ま た, バ ー ク レ ー 生 協 は 1985 年 に ア メ リ カ で も 最 も 多 ,. く高額所得者層 が住む地域に当該地域 の組合員からの出店要請がないにもかかわらず高級店 「セイ ボリー ズ」 (日本語で, 良いものという意味. フロアーの一部を個人経営者にリースしている)を出 店している. 1 986年3月に同地を訪れた日本の 生協関係者の一人は 「セイ ボリー ズ」 の店舗を見学 し て い る が, 「毒々 し い 色 の ケ ー キ や キ ャ ン ディ ー, ア イ ス クリ ー ム デ リ カ テ ッ セ ン が あ り 肉 売 , , 1 1 )同 店 の お よ そ の 性 格 は 推 測 さ れる 場 も あ っ た」 と 紹 介 して い る の で, ( .. 第二は, 生協がもつ文化性・教育性が無視・弱体化されたことである すなわち 協同組合員の . , 教育の衰退である‐ アメリカの一般企業の宣伝は広く普及し, かつ, 極めて強力 であり アメリカ , の文化の本質的な部分を形成しているとされている‐ アメリカの平均的な子どもは物心がついてか ら八歳までの間に, ほぼ通算一年間はテレ ビを見て過 ごしていると計算されており 大企業や大手 , スー パーマーケッ トのテレビコ マーシャ ルがアメリカ 人の脳細胞に固く刻 み込まれていく した . がっ て, アメリカ人は本能のように大手スー パーマーケッ トに足を向け 協同組合は必然的に念頭 , から消えてしまう‐ それ故, バークレー生協が多少の宣伝を行っ たとしても 市民への影響力は期 , 待できないわけである. そう だとすれば, マスコミ利用の宣伝 でないアプローチが考えられるべき であり, 人と人との結びつきと組合員相互の交流を基本にした消費生活活動が重視されるべ きだっ た. それが支配的な消費生活文化 に対する反撃になるわけだが, 大手スー パーマーケッ ト (セイフ 169.

(9) . 遠 藤 芳 信. ウェィ)は「隣人だもの, 仲良く しよう」という有名なコマーシャ ルを流したためにさらに大手スー 1 2 )さ ら に バ ー ク レ ー 生 協 は 1978 年 夏 に 経 費 節 パー マ ー ケ ッ トに 水 を あ げ ら れ た こ と に な っ た‐( , ,. 減の一環として, 組合員教育に従事する教育アシスタン トを解雇するに至っ た. 本来, バー クレー という町は, 世界屈指とされるカリフォ ルニア大学 バークレー校をかかえた知的な町であり, バー クレー 生協もそのような知的環境に養われていたのである. しかし, 生協が知的活動や文化性を消 失させるならば, 生協が新しい消費生活文化を生み出すためのエネルギーや創造的能力も喪失させ るだろう. 4 ( ) 日本の協同組合 1 3ば た 戦前の 日本の協同組合の歴史については, 近年では, 石見尚や樋口兼次の論述がある.{ , 4 1 ) 『 1 937年, 筆名は立田信夫)がある‐( 協同組合の研究の到達点としては, 井上晴丸著 産業組合論』( さて, 戦前の産業組合法にもとづいて設立されていた購売組合や消費組合は戦時中の配給統制に 45年11月に, 戦前の生協運動 よっ て業務縮小や解散を余儀なくされていたが, 終戦後まもなく19 のリー ダーの一人の賀川豊彦を会長にして, 日本協同組合同盟が発足し, 生協運動が再建された‐ 1 5 )当時 G 361になり, 加入者数は267万人を越えていた.{ そして,1 947年5月には, 生協の数は2 , HQは隣組や町内会などの戦時協力 組織の解散を指示したが, 警視庁が解散指示の対象になる類似 団体として生協の名を挙 げたことによっ て,生協関係者とGHQとの接触が始まっ たとされている. また, GHQは隣組や町内会に代わる新しい民主的な協同組織の育成を考え, その法律を研究して いた. 同時に, 上記の生協側も 生協法案の試案を準備していたので, 生協法案起草には, GHQの グラシュ ダンツエフ担当官と日本協同組合同盟からの代表者が参画したわけである. 947年農業 以上のような戦後初期の環境のもとに, 一連の協同組合法が制定された. すなわち, 1 協同組合法,1948年水産業協同組合法, 同消費生活協同組合法,1949年中小企業協同組合法である‐ この中で, 消費生活協同組合法(生協法)は, 「国民の自発的な生活協同組織の発達を図り, もっ て 「 国民生活の安定と生活文化の向上を期すること」 を目的とし (第一条) , 生活文化」 の用語を登場 させることによっ て, 新しいライフスタイ ルを模索しようとする意図がうかがわれる. 以上の一連 の協同組合は,1947年制定の「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(私的独占禁止法) 第24条の適用をう けないという特徴をもっ ている‐ そして, ①小規模の事業者又は消費者の相互扶 助を目的とすること, ②任意に設立され, かつ, 組合員 が任意に加入し, 又は脱退することができ ること, ③各組合員 が平等の議決権を有すること, ④組合員に対して利益配分を行う場合に は, そ の限度が法令又は定款に 定められていること, という要件をそなえさせられている. また, 各協同 組合法による協同組合はいずれも法人性と非商人性の法的性質をもっ ている. 0万世帯を 500万人, 50 (日生協)の組合員数は1991年時点では1 現在, 日本生活協同組合連合会, 越える班組織がある. ヨーロ ッ パの生協運動がやや低調になっ ているなかで, 日本の生協運動は国 際的にもその活動 内容が注目され, 特に, 「班」 (HAN)という用語は国際語化 している. 日生協の 総事業高は1991年時点で2兆7千億円であり, その中に占める共同購入額は1兆円とされている. 共同購入は各地で差異があるが, 北海道の場合, コー プ札幌に 「協同購入運営部」 があり, 全道に 12支部がある (白石, 菊水, 大谷地, 桑園, 雁来, 南空知, 北空知, 小樽, 旭川, 函館, 名寄, 倶 グ A グラビア・カラー印刷. 食品・雑貨・衣料・ 知安) . 共同購入は予約制であり, 毎週, カタロ ( 3 趣味・その他 で合計30~40 ページ‐ その他, 時々, 特別企画のカタロ グがくる) にもとづいて予約 する. 以上の生協の共同購入事 業に対して, もともと, 共同購入活動から出発して生協 組織を取り入れ 965年に東京の世田ヶ谷区の主婦たちの牛乳の購 た「生活クラ ブ生協」 がある. 生活クラ ブ生協は1 170.

(10) . 社会科公民的分野学習における消費生活. 入活動から生まれたものだが,19 90年3月 現在, 1都1道9県にて20万人に及ぶ組合員を擁し, 年 間供給高51 0億円に達する事業体に成長した. 生活クラブ生協 の活動は国際的に評価され, 1 98 9年 1 6 }受賞理由とし に 「もうひとつのノーベ ル賞」 といわれるライ ト・ライ ブリ フッ ド賞を受賞した ( . ては, ①生協活動を通して, ただ物質的に豊かになるだけでなく, 石鹸運動やリサイ クル運動の例 が示すように, 社会と環境を考えながら活動してきた, ②生産・消費・経営ま で 共同購入活動な , どを通して組合員一人ひとりが責任を持つ, 新しい経済の仕組みを創っ てきた, ③大企業中心で市 民が経済活動に参加 しにくい中で, 班組織による共同購入やその他の活動を通して, 民主的な経済 参加の仕組みを創っ てきた, ④子どもや年寄りなど弱い者の立場に立つ活動, 農業を守る共同購入 などを通して, 人間のための経済をめ ざし, 助け合いの仕組みづくり をしてきた, ⑤運動が成功し ている, 人間のための経済活動をしながら事業をして成功し, 組合員 の拡大活動や増資運動にみら れるように, 共感をもつひとびとが増えている, ⑥活動主体が普通の主婦 であること, 運動が排他 主義に陥らず, エキセントリッ クでもなく, それ故にこそ他のひとびとにも先例 となっ て運動が拡 1 7 )すなわち 高度に発達した資本主義国で大企業による支配と収 大している, と紹介されている‐( , 奪が進み, 醜悪な経済活動が展開されているなかで, オルタナティ ブな生活と文化を模索・創造し ようとしている活動が評価されている‐. W. 生協に対する学問的関心の増加. 以上のような生協運動に対 して, 今日まで, 経済学を中心にして, 多様な学問的関心が注がれて きた. その中で, 1980年代前半までの生協に対する総括的研 究の到達点を示すものとしては 野村 , 秀和・生田靖・川口清史編 『転換期の生活協同組合』 ( 19 86年, 大月書店) 浜岡正好・ 中川順子. , 川口清史編『生活革命の旗手たち』 ( 1988年, かもがわ出版)がある. これらは経済学と社会学の原 理論を基礎にして生協を分析したものである. 他方, 生協関係者 自身の著作として 大島茂男著『生 , 協の挑戦』 ( 1 986年, 労働旬報社) 198 6 , 生協労連/生協研究運営委員会編『地域社会と生協運動』 ( 年大月書店) がある. その他, 生協運動を描いた ルポルタージュ としての今崎暁巳著 『暮らしのル ネ ッ サンス』( 1984年, 労働旬報社) , 戦後40年にわたる生協運動実践者の記録としての竹井二三子 『 著 生協運動はなぜ広がっ たか』 ( 1989年, 家の光協会) がある‐ 特徴的なのは, 1 980年代後半以 降, 生協研究の出版物が続出したことである. その意味については, 筆者は, 1980年代前半の 「行 1 8 } 政改革」 との関係における 「生活の共同化」 の視点から言及しておいた.( 生協に対す 今日, る学問的関心はおよそ二つに分けられる. 一つは, 経済学・経営学を基本にし た伝統的な 「生活の社会化」 論にもとづくアプローチ である. これは, 宮本憲一らの消費生活をめ ぐる 「社会資本論」 をベースにしている. その二つは, 1 980年代後半からのエコロジー経済学やエ ントロピー生命科学およびオルタナティ ブなライフスタイ ルと社会運動の新しい形態を模索する研 究から生協に注目したもの である‐ 前者と後者は戴然と区別されるものでなく, 一部重複す る面も あるが, 本稿 では, 後者に視点を置き, 佐藤慶幸の主張を中心にして 生協に対する新しい学問的 , 1 9 ) 関心を考察してみよう.( 佐藤は, 第一に, 生協はボランタリズムと相互扶助の 思想 に も と づ き, ワ ー カ ー ズ コ レ ク テ ィ ブ と提携しつつ, 「共」としての非市場的経済圏に もとずく市民の自律的な協同関係としての生活世 界 を形成しつつ あるとした. この場合の生活世界とは, イリイチの「ヴァナキユラーな世 界一 (生活の あらゆる局面に埋め 込められている互酬性の型に由来する人間の暮らし 官僚的な管理から免かれ . , 171.

(11) . 遠 藤 芳 信. 自立的で非市場的行為によってつらぬかれる) や, ユルゲン・ハー バー マスの 「レーペ ンスヴェ ル l ト」(Lebens We t~貨幣や権力によっ て操作されることのない生活領域で, 強制力の働かない自発 的集団として, 理想的な発話状況の討論によって合意を形成する世界) に近い概念であるが, テン ニースが示したようなゲゼルシャ フト (利益社会) に対置されるゲマイ ンシャフト (共同体社会) の世界ではない. すなわち, 共同体社会から分化した市民社会の地平 で, 各人が平等・独立の人格 として相互に合意する世界と称してよい. 第二に, 佐藤によれば, 以上の生活世界は市場経済システムや官僚制システムにとって代わるも のでないにせよ, これらのシステムのあり方に反省を迫ることによっ て, 地域社会の人と人との関 係を脱物象化し, 人間化することができるとした. そして, 生活世界としての共的セクター (市民 的 公 共 空 間)が コ ミ ュ ニ テ ィ ー を つ く り, そ の コ ミ ュ ニ ティ ー の ネ ッ ト ワ ー ク が 地 球 コ ミ ュ ニ ブィ ー. を形成し, 民衆レベ ルでの 「草の根」 ネッ トワークのグローバリゼーショ ンが意味されることにな るとした. その場合, 生活世界としての共的セクターは, 玉野井芳郎や多辺田政弘らのエコロジー・ 2 0 )すなわち 生活世 生命系の経済学 (社会経済学) における 「コモン ズ」 概念の主張と結びつく.( , 界としての共的セクターが比較的に狭い非市場経済システムをつくり, 各々の地域毎の非市場経済 システム (いわば, 自給自足的な非商品化部門) が 「共」 (コモン ズ) の世界になるということだろ う. そして, そう した各地域のいわば自給自足的な非商品化部門を中心にした非市場的経済システ ムを基礎にした「共」(コモン ズ)の世界は, 他方では, 生態環境保全, 持続可能な発展という グロー バ ル的な人類的課題解決に結びつくということだろう. ここで, いわば, 自給自足的な非商品化部門を中心にした非市場的経済システムのイメージであ るが, それは, 江戸時代以前の経済社会にまで後もどりするのではなく, 室田武らが述べるような, エネルギーとしての石油消費上は1960年代前半ま での経済社会の水準があてはまる だろう‐ 他方, 玉野井芳郎や多辺田政弘らは, 地域共同体が当該の土地や自然・資源の共同管理・共同利用によっ 2 1 ( ) て(入会的資源利用と管理) , 自然環境と共存してきたことに注目してきた. その場合, 旧来の伝 「 統的な農本主義者らの 共同体(復活)」のイ デオロギーとは異ならせる必要があるだろう. そして, 佐藤慶幸らの主張とリンクさせつつ, 非市場的経済システムを核にした新しい地域共同体の概念を 浮上させる必要があろう. ) の拡大と保護運 もともと, 「共 (コモン ズ)」 概念は, イ ギリスにおいては, 共有地 (Common 9世紀末に広く, 国民から拠金を募集して土地を買い取り, 動から成熟したものである. すなわち,1 自然環境・自然景観を保護・管理するという ナショナルトラスト運動から成熟してきた概念である. それは, 自然と人間との共生と, 都市と農村との共存を志向するコモン原理によっ て支えられてい 2 2 )すなわち 「共」 「共同J には 自然環境・生態系との共存の意味が含まれている る.( ‐ , , 以上のようにみると, 消費者運動としての生協は, 商品の安全と品質向上へのとりくみ内容がす ぐれて グロー バ ル的な人類的課題解決に結びついているとともに, 非市場的経済システムを部分的 にもベー スにした消費生活システム自体やライフスタイ ル自体がすぐれて グローバル的な人類的課 題解決に結びついているといわなければならない‐ したがっ て, 今後, 社会科公民的分野の消費生 活問題の学習において, 生協を位置づける場合には, 消費者運動としてのとりくみ内容と消費生活 システムやライフスタイ ル自体の側面から意義づ けることが必要だろう.. 172.

(12) . 社会科公民的分野学習における消費生活. (注) ( 1 )拙稿 「子ども世界の変貌と教科教育学の課題--人類的‐グローバル的課題解決と社会科教育--」 北海道教育大 99 2年, 東京書籍, 参照‐ なお, 今日, 消費生活問題の 学教科教育学研究図書編集委員会編 『教科教育学の創造』1 トラブルで増加しているのは, 物品販売・購入をめぐるものだけでなく, 宗教的色彩を濃くした 「自己啓発講座」 「能力開発講座」「人格形成講座一 等と称されている人間改造講座‐精神修養講座の受講に関するものである これ ‐ は, 「心の迷いを取り除く」「性格改造で仕事や対人関係がスムー ズになる」等々のキャッチフレーズで20代の若年 層の受講者を集めているが, あらかじめ講座の具体的内容を説明していないことが多い‐ そして, 段階別のコース 毎に前払いで受講料を納付するが(段階が高度になればなるほど受識料が高くなる) , 講座内容が自分にあわないと 気づいて中途退会しても, 未受講分の返金は断られることが多い. このような種類の講座やセミナーに関する相談 は国民生活センターや各地の消費者センターに寄せられているが, その相談件数は逐年増加している (柿田睦夫・ 9 1年, 新日本新書. 札幌市消費者センター 「消費者相談の窓口から」 北海道新 藤田文 『霊・超能力と自己啓発』1 9 聞1991 年 9月 3 日, 同1992 年 8月 7 日, 参照) , ( 2 )伊東光晴他 『中学校の社会科 現代の社会 [公民]』 中教出版, 菊地勇他 『中学社会 [公民的分野]』 大阪書籍, 河 野重男他 『改訂 中学社会 公民』 教育出版, 辰野千寿他 『中学校 社会 公民的分野』 学校図書, 川田侃他 『新 98 8年改訂検定済‐ 以下, 出版社名を記載する. 訂 新しい社会 公民』 東京書籍, 以上, 1 ( 3 )学校図書は「消費者保護の必要」という小見出しのもとに, 「最近では一般市民や公共機関によって, 欠陥商品から 消費者を守る運動がおこなわれるようになった」と記述されるのみで, 生協は位置づけられていない‐ また, 「最近 では」 という記述による説明は, 歴史的にも不適切あるいは誤りであり, 消費者 (保護) 運動に対する教科書執筆 者の無知を示している. 4 )岩田慶治他 『高校の現代社会 初訂版』19 84年検定済, 帝国書院‐ 平田嘉三他 『新訂 現代社会』 第一学習社, 勝 ( 部真長他 『改訂新版 現代社会』 中教出版, 梶哲夫他 『現代社会 三訂版』 満水書院, 二谷貞夫他 『高校現代社会 9 87年検定済. 宇沢弘文他 『改訂 現代社 改訂版』 -橋出版, 竹内常-他 『新現代社会 三訂版』 三省堂, 以上, 1 会』1 988年検定済, 東京書籍. 以下, 出版社名を記載‐ 98 5年検定済, 奥 ( 5 )辻清明他 『新政治経済』 自由書房, 田中浩他 『改訂版高等学校 政治・経済』 数研出版, 以上, 1 8年検定済, 実教出版, 以下, 出 87年検定済. 都留重人他 『政治・経済』198 平康弘他 『政治・経済』 -橋出版, 19 版社名を記載‐ 99 1 ( 6 )ウイリアム・ホワイト/キャサン・ホワイト著 『モンドラ ゴンの創造と展開』 佐藤誠・中川一郎・石塚秀雄訳, 1 年, 日本経済評論社‐ 987年, 協同図書サービス株式会社‐ 9 32ページ, 1 8 ( 7 ) ( )宇津木朋子他『もうひとつの暮らし‐働き方をあなたに』22 ,2 ( ( 9 ) 1 0 )ポール・ローバーの七点のまとめは, ①組合員の組織基盤が固まっていない地域へ急速に出店したことと, 非組 合員への依存度が高まったこと, ②組織の能力の限界を越えて, 大手スーパー・マーケット・チェーンに張り合お うとしたこと, ③理事会内部の政治的衝突が店舗経営を混乱させたこと, ④バークレー中心部の人口構成が変化し たこと, ⑤人件費を供給高の一定比率に抑えられなかったこと, ⑥協同組合間協同というロッチデール原則が見事 に 破られたこと, ⑦運が悪かったこと, である (日本生活協同組合連合会国際部訳 『バークレー生協はなぜ倒産し たか』3 3 2年, コープ出版株式会社) 2~85ページ, 199 ,7 ‐ ( 1 1 )注( 7 )の 45 ペー ジ.. 回注( 9 )の78ページ‐ 「 『 1 3 ( )石見尚 「たいまつをかかげた人びと」 , 樋口兼次 日本における労働者生産協同組合の源流と特質」 石見尚編著 日 本のワーカーズ.コレクティ ブ』198 6年, 学陽書房. ( 1 7 2年雄揮社, に収録. の戦後, 井上晴丸著作選集第6巻 『協同組合論』19 ( 98 賜日本放送出版協会編 『日本の消費者運動』 30ページ, 1 0年, 日本放送出版協会‐ 6 9 ( 1 ) ( 1 9 1年文具堂. の佐藤慶幸 『生活世界と対話の理論』26~27ページ, 1 ( 1 め拙稿 「公共性・共同性に関する認識と能力の形成」 日本教育方法学会編 『教育方法21 99 2年, 明治図書. なお, 』1 筆者自身の生協に関する言及は拙稿「現代社会における公共性と共同」『生活指導』198 6年7月号, 明治図書, 参照‐ 肥 り注( 1 6 0の佐藤慶幸の著書, 佐藤慶幸 『ウェーバーからハバーマスヘ』198 6年, 世界書院, 佐藤慶幸編 『女性たちの生 活ネットワーク』198 8年文具堂, 参照‐ その他, 教育学分野では特に19 70年代以降, 社会教育研究関係者による生 協研究がすすめられている‐ 回 縫 1 )鶴見和子‐新崎盛嘩編玉野井芳郎著作集第3巻 『地域主義からの出発』2 2~2 0年, 学陽書房, 多辺 り 3ページ, 199 173.

(13) . 遠 藤 芳 信 田政弘 『コモンズの経済学』6 8ページ, 199 0年, 学陽書房‐ 回佐藤誠 『リゾート列島』5 6~5 8ページ, 199 0年, 岩波新書‐ (本学教授 函館分校). 174.

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