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日本建築学会技術報告集第 26 巻第 62 号, ,2020 年 2 月 AIJ J. Technol. Des. Vol. 26, No.62, , Feb., 2020 DOI 平成 30 年 7

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日本建築学会技術報告集 第 26 巻 第 62 号,325-330,2020 年 2 月 AIJ J. Technol. Des. Vol. 26, No.62, 325-330, Feb., 2020 DOI https://doi.org/10.3130/aijt.26.325

平成 30 年 7 月豪雨の浸水エリ

アにおける過去の土地利用変遷

 -広島県呉市、三原市、福山市を対象に-

TRANSITION OF LAND USE IN THE

FLOOD AREA CAUSED BY THE HEAVY

RAIN EVENT OF JULY 2018

Case of Kure, Mihara and Fukuyama city in

Hiroshima Prefecture

田村将太ー ーーーー * 1 田中貴宏ー ーーーー * 2

キーワード:

平成 30 年 7 月豪雨,洪水,土地利用の変遷,地形図 Keywords:

The heavy rain event of July 2018, Flood, Transition of land use, Topographic map

Shota TAMURAー ーーーーー * 1 Takahiro TANAKAーーーー * 2 This study aims at examining the transition of land use in the flood area caused by the heavy rain event of July 2018 by using topographic maps and clarifying the increasing factor of flood damage. Findings are as follows; (1) most of land use in the flood area was originally farmland (2) it is likely that the farmland diversions conducted after 1968 may be the factor on increasing the damage caused by flood (3) there are also the areas which the land use in flood area has not almost changed from farmland since 1898.

*1 広島大学大学院工学研究科 博士課程後期・修士(工学) / 日本学術振興会

特別研究員(DC1)

(〒 739-8527 広島県東広島市鏡山 1-4-1)

*2 広島大学大学院工学研究科 教授・博士(工学)

*1 Graduate Student, Graduate School of Engineering, Hiroshima Univ. M. Eng. /

Research Fellow of Japan Society for the Promotion of Science (DC1)

*2 Prof., Graduate School of Engineering, Hiroshima Univ., Dr. Eng.

平成

30年7月豪雨の浸水エリア

における過去の土地利用変遷

-広島県呉市、三原市、福山市を対象に-

TRANSITION OF LAND USE IN THE

FLOOD AREA CAUSED BY THE HEAVY

RAIN EVENT OF JULY 2018.

Case of Kure, Mihara and Fukuyama city in

Hiroshima Prefecture.

田村将太 *1 田中貴宏 *2 キーワード: 平成 30 年 7 月豪雨,洪水,土地利用の変遷,地形図 Keywords:

The heavy rain event of July 2018, Flood, Transition of land use, Topographic Map

Shota TAMURA *1 Takahiro TANAKA *2 This study aims at examining the transition of land use in the flood area caused by the heavy rain event of July 2018 by using topographic maps and clarifying the increasing factor of flood damage. Findings are as follows; (1) most of land use in the flood area was originally farmland (2) it is likely that the farmland diversions conducted after 1968 may be the factor on increasing the damage caused by flood (3) there are also the areas which the land use in flood area has not almost changed from farmland since 1898. 1.はじめに 我が国では、洪水氾濫域(洪水時の河川水位より地盤面が低い区 域)に人口の約半分、資産の約4 分の 3 が集中しており、水害に対 して脆弱な国土環境にあるため、毎年、各地域で台風や前線よる豪 雨災害が発生している 1)。加えて、近年では台風や前線による降雨 が局地化、集中化、激甚化しており、その発生頻度が増加傾向にあ る2)。平成30 年 6 月 28 日から 7 月 8 日にかけて発生した平成 30 年 7 月豪雨では、集中的な豪雨により、西日本を中心に全国各地で甚 大な被害がもたらされた。近年、このような記録的大雨が増加傾向 にあるため、国土交通省は「温暖化により危惧されているような極 端な雨の降り方が現実に起きており、明らかに雨の降り方が変化し ている」という状況を「新たなステージ」とし、危機感をもって防 災・減災対策に取り組む必要性を指摘している3) このように記録的大雨が増加傾向にあり、水害に対して脆弱な国 土環境を有する日本では、水害を軽減するようなまちづくりが必要 と考えられる。水害の被害軽減・防止には、従来行われてきた河川 改修事業やダム建設などハード面の整備も重要であるが、適切な土 地利用コントロールを通じた水害リスクの軽減などの対策も重要と 考えられ、近年では立地適正化計画の中で、危険なエリアを居住誘 導区域から除外する動きもみられる。こうした状況の中、どのよう な市街地開発が結果として浸水被害拡大につながったかを把握でき れば、今後の水害リスクコントロールを意図した土地利用検討に資 する基礎的知見の蓄積になると考えられる。 そこで、本研究では平成30 年 7 月豪雨被災地である広島県呉市、 三原市、福山市の3 都市を対象に、各年代の国土地理院地形図と浸 水エリアを重ね合わせることで、浸水エリアにおける土地利用の変 遷を把握し、どのような市街地開発が浸水被害拡大の要因となった かを明らかにすることを目的とした。 土地利用や市街化の変遷と河川氾濫による浸水リスクとの関連を 分析した研究として、GIS を用いて土地利用の経年変化を把握し、 浸水想定区域と重ね合わせることで、浸水リスクの高い地域でも開 発が行われてきたことを明らかにしたもの 4)がある。しかし、この 分析では浸水想定区域データが用いられており、実際の浸水被害エ リアとの関連について分析を行ったものではない。平成30 年 7 月豪 雨では、浸水想定区域外でも浸水が確認されており、実際の浸水エ リアとの関連を分析することも重要と考えられる。実際の浸水被害 エリアと市街化の変遷との関連を扱った研究として、2004 年福井水 害被災地を対象にその地域防災力を土地利用、防災組織・活動の観 点から分析したもの5)や東京下町低地を対象に人為的な土地利用改 変が水害地域に与えた影響を明らかにしたもの6)がある。これら1 地域を対象に分析を行った既往研究に対して、本研究では3 都市を 対象に横並びに分析を行うことで、土地利用の変遷と浸水エリアの 関係について、その類似点や相違点について論じた点にも特徴があ ると考える。 2.平成30 年 7 月豪雨による浸水エリアの把握 対象地は平成30 年 7 月豪雨により甚大な浸水被害を受けた呉市の 野呂川流域、三原市の沼田川流域、福山市の芦田川流域とした(図 1)。平成 30 年 7 月豪雨による浸水エリアを把握するために、「平成 30 年 7 月豪雨災害を踏まえた今後の水害・土砂災害対策のあり方 検討会」の資料7)8)9)を用いて、対象地の浸水エリアをGIS 上でポリ ゴンデータとして作成した。なお、資料内の浸水範囲は、出水直後 の空撮写真及び現地調査により特定されている。各対象地の平成30 年7 月豪雨の浸水エリアを図 1 に、以下に各市の被害の概況を示す。 2.1 呉市 呉市では、野呂川の堤防越水・溢水による河川氾濫と中畑川の堤 防越水および破堤による河川氾濫が発生し、約60ha が浸水したこと が確認されている7)。また、浸水被害のあった安浦地区では、土砂 *1 広島大学大学院工学研究科 博士課程後期・修士(工学) 日本学術振興会特別研究員(DC1) (〒739-8527 広島県東広島市鏡山 1-4-1)

*1 Graduate Student, Graduate School of Engineering, Hiroshima Univ.

Research Fellow of Japan Society for the Promotion of Science (DC1)

*2 広島大学大学院工学研究科 教授・博士(工学) *2 Professor, Graduate School of Engineering, Hiroshima University

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流出も発生しており、河川氾濫と重なったことが被害拡大の要因の 1 つになったと考えられる。浸水エリアと建物データを重ね合わせ た結果、浸水エリア内に1028 棟の建物が立地していた。 2.2 三原市 三原市では、梨和川や菅川などの支川で破堤した箇所が9 箇所確 認されており、沼田川本川の越水氾濫や内水氾濫を含めた浸水面積 は約700ha であった8)。また、作成した浸水エリアデータと建物デ ータを重ね合わせた結果、浸水エリアには約4500 棟の建物が立地し ていた。特に船木地区での浸水エリア内建物棟数が多く、市街地の 大半が浸水エリアに含まれている。 2.3 福山市 福山市では、破堤による浸水は確認されておらず、福川流域、手 城川流域、天王前川流域、西谷川流域で溢水や内水氾濫による浸水 がみられ、浸水面積はそれぞれ約202ha、237ha、38.3ha、74.7ha で あった9)。浸水エリアと建物データをGIS 上で重ね合わせた結果、 浸水エリア内建物数は福川流域で約3870 棟、手城川流域で約 4850 棟、天王前川流域で約790 棟、西谷川流域で約 580 棟、合計約 10000 棟であった。また、浸水面積当たりの建物棟数を算出した結果、福 川流域、手城川流域、天王前川流域では1ha あたり約 20 棟であるの に対し、西谷川流域では1ha あたり約 8 棟とその値は小さい。西谷 川流域の浸水エリアは他の浸水エリアに比べて、開発が進行してお らず、土地利用が異なる可能性が考えられる。 3.浸水エリアの土地利用の変遷 国土地理院発行の地形図と作成した浸水エリアデータを用いて、 浸水エリアの土地利用の変遷を把握した。具体的には、基盤地図情 報の道路データを参照データとして用い、表1 に示す地形図のジオ リファレンスをGIS 上で行い、その後、浸水エリアのデータを重ね 合わせることで、各年代の浸水エリアの土地利用を把握した。なお、 本研究では、高度経済成長期(概ね1955~1973 年)前の地形図とし て1950 年の地形図(1/2.5 万)を選び、それ以降については可能な 図1 対象地と平成 30 年 7 月豪雨による浸水エリア 表1 使用した各年代の地形図 図名 縮尺 図名 縮尺 図名 縮尺 1897 小坂 1897 1898 竹原町 1897 1898 本郷村 1897 1898 三原 1897 1950 1950 垣内 1950 新市 1950 1950 河内 1950 神邊 1950 1950 竹原 1950 福山西部 1950 1950 三原 1950 福山東部 1965 垣内 1968 新市 1965 河内 1968 神邊 1968 竹原 1968 福山西部 1968 三原 1968 福山東部 1987 河内 1988 新市 1988 垣内 1988 神邊 1988 竹原 1988 福山西部 1988 三原 1988 福山東部 2007 河内 2000 新市 2007 垣内 2000 神邊 2007 竹原 2007 福山西部 2007 三原 2007 福山東部 1988年頃 1/2.5万 1988年 1/2.5万 2007 (最新) 1/2.5万 2007 年頃 (最新) 1/2.5万 1950年 1/2.5万 1950年 1/2.5万 1968年頃 1/2.5万 1968年 1/2.5万 三原市 福山市 年代 年代 1898年頃 (最古) 1/2万 (最古)1897年 高屋村 1/2万 福山町 呉市 年代 1898 内海町 1/2万 1950年 三津 1898年 (最古) 1/2.5万 安芸内海 1968年頃 1965 三津 1/2.5万 1968 安芸内海 1987年 1987 三津 1/2.5万 1/2.5万 1987 安芸内海 2014 安芸内海 2014年 (最新)

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流出も発生しており、河川氾濫と重なったことが被害拡大の要因の 1 つになったと考えられる。浸水エリアと建物データを重ね合わせ た結果、浸水エリア内に1028 棟の建物が立地していた。 2.2 三原市 三原市では、梨和川や菅川などの支川で破堤した箇所が9 箇所確 認されており、沼田川本川の越水氾濫や内水氾濫を含めた浸水面積 は約700ha であった8)。また、作成した浸水エリアデータと建物デ ータを重ね合わせた結果、浸水エリアには約4500 棟の建物が立地し ていた。特に船木地区での浸水エリア内建物棟数が多く、市街地の 大半が浸水エリアに含まれている。 2.3 福山市 福山市では、破堤による浸水は確認されておらず、福川流域、手 城川流域、天王前川流域、西谷川流域で溢水や内水氾濫による浸水 がみられ、浸水面積はそれぞれ約202ha、237ha、38.3ha、74.7ha で あった9)。浸水エリアと建物データをGIS 上で重ね合わせた結果、 浸水エリア内建物数は福川流域で約3870 棟、手城川流域で約 4850 棟、天王前川流域で約790 棟、西谷川流域で約 580 棟、合計約 10000 棟であった。また、浸水面積当たりの建物棟数を算出した結果、福 川流域、手城川流域、天王前川流域では1ha あたり約 20 棟であるの に対し、西谷川流域では1ha あたり約 8 棟とその値は小さい。西谷 川流域の浸水エリアは他の浸水エリアに比べて、開発が進行してお らず、土地利用が異なる可能性が考えられる。 3.浸水エリアの土地利用の変遷 国土地理院発行の地形図と作成した浸水エリアデータを用いて、 浸水エリアの土地利用の変遷を把握した。具体的には、基盤地図情 報の道路データを参照データとして用い、表1 に示す地形図のジオ リファレンスをGIS 上で行い、その後、浸水エリアのデータを重ね 合わせることで、各年代の浸水エリアの土地利用を把握した。なお、 本研究では、高度経済成長期(概ね1955~1973 年)前の地形図とし て1950 年の地形図(1/2.5 万)を選び、それ以降については可能な 図1 対象地と平成 30 年 7 月豪雨による浸水エリア 表1 使用した各年代の地形図 図名 縮尺 図名 縮尺 図名 縮尺 1897 小坂 1897 1898 竹原町 1897 1898 本郷村 1897 1898 三原 1897 1950 1950 垣内 1950 新市 1950 1950 河内 1950 神邊 1950 1950 竹原 1950 福山西部 1950 1950 三原 1950 福山東部 1965 垣内 1968 新市 1965 河内 1968 神邊 1968 竹原 1968 福山西部 1968 三原 1968 福山東部 1987 河内 1988 新市 1988 垣内 1988 神邊 1988 竹原 1988 福山西部 1988 三原 1988 福山東部 2007 河内 2000 新市 2007 垣内 2000 神邊 2007 竹原 2007 福山西部 2007 三原 2007 福山東部 1988年頃 1/2.5万 1988年 1/2.5万 2007 (最新) 1/2.5万 2007 年頃 (最新) 1/2.5万 1950年 1/2.5万 1950年 1/2.5万 1968年頃 1/2.5万 1968年 1/2.5万 三原市 福山市 年代 年代 1898年頃 (最古) 1/2万 (最古)1897年 高屋村 1/2万 福山町 呉市 年代 1898 内海町 1/2万 1950年 三津 1898年 (最古) 1/2.5万 安芸内海 1968年頃 1965 三津 1/2.5万 1968 安芸内海 1987年 1987 三津 1/2.5万 1/2.5万 1987 安芸内海 2014 安芸内海 2014年 (最新) 限り期間が等間隔となるように1968 年頃、1988 年頃の地形図をそ れぞれ用いることとした。また、これらに加えて最も古い地形図(1/2 万)と最新の地形図(1/2.5 万)も分析に使用した。対象区域の地形 図は表1 に示す地形図を組み合わせることで作成したが、地形図作 成年代の都合上、同時期に発行されていないものもあるため、その 場合、各時期を「~年頃」(例えば、1898 年頃)として扱うことと した。図2~4 に各年代の地形図と浸水エリアを重ねた図を示す。 3.1 呉市 1898 年をみると、浸水エリアの多くは田などの農地であるものの、 1898 年時点ですでに市街地化されたエリアの大半が浸水エリアに 含まれている。このエリアは高度経済成長期以降に拡大した市街地 ではなく、1898 以前に形成された市街地であることから、当時より 浸水リスクの高いと考えられるエリアに市街地が形成されていたと 考えられる。また、1950 年には、1898 年以前に形成された市街地の 図2 呉市の浸水エリアの土地利用変遷

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東側で駅や住宅、学校、工場、町村役場等が立地している。これは、 1935 年に安浦駅(当時は三津内海駅)が設置され、鉄道が建設され たことで、その周辺のエリアで農地が都市的土地利用に転用された ためと考えられる。1950 年以降(1968 頃年、1987 年)をみると、 このエリアで住宅が立地しており、農地転用による宅地開発が行わ れてきたことが分かる。このエリアは1898 年では農地であったこと から、このエリアの農地転用による開発によって浸水被害が増大し たと考えられる。また、2014 年をみると、安浦駅の北側のエリア一 帯で道路が整備されている。これは通勤圏の広がりに伴う住宅需要 の増加により、1990~2013 にかけて行われた土地区画整理事業によ るものであるが、そのエリアが浸水している。そのため、今後、土 地区画整理事業等により河川周辺の低平地で農地転用による住宅開 発を行う際には、浸水リスクの影響を考慮する必要があると考えら れる。 図3 三原市の浸水エリアの土地利用変遷

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東側で駅や住宅、学校、工場、町村役場等が立地している。これは、 1935 年に安浦駅(当時は三津内海駅)が設置され、鉄道が建設され たことで、その周辺のエリアで農地が都市的土地利用に転用された ためと考えられる。1950 年以降(1968 頃年、1987 年)をみると、 このエリアで住宅が立地しており、農地転用による宅地開発が行わ れてきたことが分かる。このエリアは1898 年では農地であったこと から、このエリアの農地転用による開発によって浸水被害が増大し たと考えられる。また、2014 年をみると、安浦駅の北側のエリア一 帯で道路が整備されている。これは通勤圏の広がりに伴う住宅需要 の増加により、1990~2013 にかけて行われた土地区画整理事業によ るものであるが、そのエリアが浸水している。そのため、今後、土 地区画整理事業等により河川周辺の低平地で農地転用による住宅開 発を行う際には、浸水リスクの影響を考慮する必要があると考えら れる。 図3 三原市の浸水エリアの土地利用変遷 3.2 三原市 1898 年頃は浸水エリアの多くが田や畑などの農地であるが、本郷 駅南側の市街地の一部が浸水エリアに含まれている。1950 年、1968 年頃には本郷駅周辺で工場や住宅がみられるが、これら建物の多く は浸水エリアの外側に位置している。また、1968 年頃から 1988 年 頃にかけて下北方1 丁目や南方 1 丁目で工場が建設され、1968 年頃 から2007 年にかけて本郷南地区で住宅が開発されている。1968 年 以前はこれらのエリアが農地であったことから、農地転用による住 宅地開発が浸水被害増大の要因の1 つになったと考えられる。本郷 南地区では、2000 年より施行されている土地区画整理事業により低 平地の農地が住宅地に転用され、そのエリアが浸水していることか ら、呉市安浦地区と同様、河川周辺で農地転用による開発を行う際 には浸水リスクの影響を考慮する必要があると考えられる。また、 船木地区では1988 年から 2007 年にかけて農地転用により開発され 図4 福山市の浸水エリアの土地利用変遷

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た建物が浸水エリア内に点在している。船木地区は市街地の大半が 浸水していることから、今後、農地転用による開発をコントロール していくべき地域と考えられる。本郷北地区や沼田東地区では、1898 年頃から 2007 年にかけて宅地開発があまり行われておらず、2007 年時点でも農地が多くみられる。文献10 によると、本郷北地区に流 れる仏通寺川は河川氾濫を繰り返していたことが推測されており、 沼田東地区には、河床が周辺の平面地より高い天井川が流れている。 これら両地域は河川氾濫による浸水リスクが高いと考えられること から、農地転用による開発が抑制された可能性が考えられる。 3.3 福山市 1897 年では手城川、福川、西谷川流域の浸水エリアは、田などの 農地が多い。これに対して、天王前川流域では既に市街地が形成さ れており、その市街地の約半分程度が浸水エリアに含まれている。 1968 年では、1897 年と同様、手城川、福川、西谷川流域の浸水エリ アは田などの農地が多くみられるが、1988 年をみると、これらの浸 水エリアで建物が多くみられ、特に手城川、福川流域で市街地化が 急速に進んでいる。これは、高度経済成長期に福山市が備後工業整 備特別地域に指定され(1964 年)、日本鋼管(現 JFE スチール)な どの企業や工場の誘致に伴い、人口が急激に増加し、手城川流域や 福川流域で市街地開発が行われたためと考えられる。また、西谷川 流域の浸水エリアでも1968 年以降、1898 年に農地だったエリアが 住宅地に転用されているものの、手城川や福川流域ほどの開発が行 われておらず、農住混在エリアとなっている。そのため、1ha あた りの浸水エリア内建物棟数も他の地域に比べて小さいと考えられる。 4.考察 平成30 年 7 月豪雨により浸水被害を受けた地域を対象に、浸水エ リアの過去の土地利用を把握した。得られた結果を以下に述べる。 呉市安浦町、三原市本郷駅周辺、福山市天王前川流域では、1898 年以前に形成された市街地が浸水エリアに含まれている。特に呉市 安浦町の浸水エリアでは、その市街地の大半が浸水していたことか ら、当時より浸水リスクの高いエリアに市街地が形成されていたと 考えられる。しかし、他の浸水エリアは、1898 年時点でその多くが 田など農地であり、その後、農地が住宅地や工場用地など都市的土 地利用に転用され、浸水リスクの高いと考えられるエリアで開発が 行われてきたと考えられる。特に、1968 年以降に開発された地区が 浸水エリアに多いことから、高度経済成長期以降の開発が浸水被害 拡大要因の1 つになった可能性が考えられる。加えて、三原市本郷 南地区や呉市安浦地区では、どちらも近年の土地区画整理事業によ り開発された地区が浸水した。この両地域では、ダム建設や河川整 備が行われていたにもかかわらず浸水したため、今後、土地区画整 理事業を行う際は、従来以上に河川氾濫による浸水リスクを考慮す る必要があると考えられる。一方で、三原市沼田東地区や本郷北地 区のように浸水エリア内の土地利用が農地から大きく変化しない地 区もみられた。これらの地区では、過去に河川氾濫が繰り返し発生 していた可能性があること、河床が低平地より高い天井川が流れて いること等により、浸水リスクが高いと考えられ、農地転用による 開発が行われなかった可能性が考えられる。 以上のことから、3 都市の類似点として 1) 多くの浸水エリアはも ともと農地であったこと、2) 高度経済成長以降の開発が浸水被害拡 大要因の1 つである可能性があることが挙げられる。また、呉市と 三原市の類似点として、近年の土地区画整理事業により開発された 地区も浸水エリアに含まれていたことが挙げられる。3 都市で異な る点としては、1) 呉市安浦町では、高度経済成長期以降に開発され た市街地ではなく、1898 年以前に形成された市街地も浸水エリアに 多く含まれていたこと、2) 三原市の本郷北地区や沼田東地区では、 1898 年と比べて 2007 年時点でも土地利用が農地から大きく変化し ていないことなどが挙げられる。 5.おわりに 本研究では、平成30 年 7 月豪雨被災地である呉市、三原市、福山 市の3 都市を対象に、浸水エリアの過去の土地利用について各年代 の国土地理院地形図を用いて把握した。都市計画基礎調査の2011~ 2015 年の農地転用状況(表 2)によれば、3 都市すべてで農地転用 による開発が現在でも行われていることから、今後も一定程度、農 地転用による開発が行われていく可能性が考えられる。本研究で得 られた知見から、河川周辺部の農地転用によって開発された建物が 結果として浸水エリア内に立地していたことが明らかになったため、 今後、このような地域で農地転用による開発を行う際には、浸水被 害の影響を考慮する必要があると考えられる。今後は、地形図上の 定性的な土地利用の変遷把握だけでなく、定量的な分析も合わせて 行い、水害被害軽減に向けた土地利用検討に資すると考えられる知 見の蓄積およびそれに基づく提案を行う予定である。 表2 対象地の農地転用状況(2011~2015) 参考文献 1) 大塚路子:最近の水害の状況と対策-中小河川の破堤水害と都市型水害 を中心に-, 調査と情報, Vol.544, pp1-10, 2006.6 2) 国土交通省水管理・国土保全局:水害レポート 2018,国土交通省,2018.12 3) 国土交通省:新たなステージに対応した防災・減災のあり方, 国土交通 省, 2015. 4) 酒井莉奈, 猪八重拓郎:土地利用の変遷からみた都市化の実態と浸水想 定区域の関係性の研究-佐賀低平地を対象として-, 都市計画論文集, Vol.51, No.3, pp401-408, 2016. 5) 春山成子, 水野智:2004 年福井水害にみる災害特性と地域防災力に関す る考察, 自然災害科学, Vol.26, No.3, pp307-322, 2007.11

6) Oya, M, Haruyama S:Flooding and urbanization in the lowlands of Tokyo and vicinity, Natural Disaster Science, Vol.9, No.2, pp1-12, 1987.

7) 広島県土木建築局河川課:平成 30 年 7 月豪雨災害を踏まえた今後の水 害・土砂災害対策のあり方検討会 河川ダム部会【野呂川流域】, 広島 県, 2018.10 8) 広島県土木建築局河川課:平成 30 年 7 月豪雨災害を踏まえた今後の水 害・土砂災害対策のあり方検討会 河川ダム部会【沼田川流域】, 広島 県, 2018.12 9) 広島県土木建築局河川課:平成 30 年 7 月豪雨災害を踏まえた今後の水 害・土砂災害対策のあり方検討会 河川ダム部会【福川流域】, 広島県, 2018.10 10) 佐藤崇徳:沼田川下流域平野の地形発達,地理科学,Vol.51, No.4 pp237-251, 1996. 件数(件) 面積(m2 件数(件) 面積(m2 件数(件) 面積(m2 2011 124 43178.4 75 24302.2 852 331990.5 2012 117 33576.0 146 46402.2 1014 398695.2 2013 141 46618.9 151 39185.6 1198 486976.1 2014 162 67847.1 178 64271.5 1282 581192.8 2015 143 56905.4 116 41744.5 1249 545854.2 合計 687 248125.8 666 215906.1 5595 2344709 三原市 福山市 呉市 [2019 年 6 月 5 日原稿受理 2019 年 7 月 26 日採用決定]

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関東総合通信局 東京電機大学 工学部電気電子工学科 電気通信システム 昭和62年3月以降

1991 年 10 月  桃山学院大学経営学部専任講師 1997 年  4 月  桃山学院大学経営学部助教授 2003 年  4 月  桃山学院大学経営学部教授(〜現在) 2008 年  4