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前田薬剤部のマンパワーはどのくらいですか 木村現在の薬剤師数は正職員が 74 名になりま す ほかにもレジデントや研修薬剤師 学生実 習が 60 名来ています 前田 大阪府立急性期 総合医療センター (768 床 ) 薬局長の室井先生 お願いします 室井 当センターは救命救急医療と循環器疾患 等の急

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病棟薬剤業務の質を高めながら

病棟加算を取得する

前田 薬剤師の病棟活動を診療報酬で評価する「病棟薬剤 業務実施加算(以下、病棟加算と略)」が導入されて 2 年ほ どが経過しました。これは「チーム医療において、薬剤の 専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加すること が有用である」とする厚生労働省医政局長通知(図 -1)が 引き金になったわけですが、こ の評価によってようやく薬剤師 が臨床分野において、一定の役 割を果たす環境が整ったと言っ てもよいと思います。そこで今 回、近畿圏の代表的な基幹病院 の薬剤部責任者お三方に集まっ ていただき、「病棟業務の意義、 薬剤師はこれから何をすればい いか」をテーマに率直な議論をし てみたいと思います。お三方の 病院ではすでにこの病棟加算の 施設基準を取得されていますが、 ま ず は 兵 庫 医 科 大 学 病 院(963 床)の木村先生から、病棟加算の 算定プロセスなどからお話しいただけますでしょうか。 木村 当院は 2013 年 7 月に病棟加算を導入しました。従 来からほぼ全病棟に担当薬剤師を配置していたので、無 理をすれば 2012 年 4 月からの算定も可能でしたが、病棟 加算を導入する以上、病棟薬剤業務の質をさらに高める べきと考えていたので、「2013 年 4 月に 11 名の薬剤師増 員を確保」という約束を取り付けて、先行モデルとして 2 病棟を展開しながら 1 年計画で準備を進めていきました。 「病棟薬剤業務実施加算」は導入から 2 年超を経過した。チーム医療の重要性がますます高まる 中で、この加算を、薬物療法の機能や質を表す指標として位置づけ、病棟薬剤業務に積極的に 取り組む病院の薬剤部長、薬局長のお三方に集まっていただき、これからの病棟薬剤業務はいか にあるべきかをお話しいただいた。司会は中国労災病院・前田頼伸薬剤部長にお願いした。

特集 座談会

病棟薬剤業務の意義と

これからの病院薬剤部、薬剤師を語る

司 会 中国労災病院 薬剤部長

前田頼伸

氏 兵庫医科大学病院 薬剤部長

木村 健

氏 大阪府立急性期・ 総合医療センター 薬局長

室井政子

氏 北野病院 薬剤部長

尾上雅英

図 -1 厚生労働省医政局長通知の内容(前田氏の資料より)2010 年 4 月 30 日付厚生労働省医政局長通知:医政発 0430 第 1 号

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前田 薬剤部のマンパワーはどのくらいですか。 木村 現在の薬剤師数は正職員が 74 名になりま す。ほかにもレジデントや研修薬剤師、学生実 習が 60 名来ています。 前田 大阪府立急性期・総合医療センター(768 床)薬局長の室井先生、お願いします。  室井 当センターは救命救急医療と循環器疾患 等の急性期医療、がん医療、難病医療等専門医 療を広域的に提供しています。現在、薬剤師は 常勤 32 名、非常勤 10 名の他、非常勤 CRC が 3 名います。これらに加えて調剤業務や事務等を サポートする非常勤職員が 6 名と、薬局専属の SPD スタッフがいます。病棟薬剤業務については、当セ ンターも薬剤師 7 名を増員して、2013 年 7 月から算定し ています。さらに、病棟薬剤業務の実施は、2013 年度の 病院の重点目標の一つである「安全・安心で信頼できる質 の高い医療の提供」を実現するための一つの方策となって いて、2014 年度は「病棟薬剤業務の充実」と名称を変えて 継続することになりました。このように薬剤師が病棟に 常駐することで、さらに質の高い医療に貢献できるよう になったことは、1992 年の第 2 次医療法改正で規定され た「薬剤師が医療の担い手である」ことを、これまで以上 に実現化できている状況であると考えています。 前田 お二人のお話を聞くと戦略的に、「マンパワーを十 分増やした上で、質を担保しながら」というお考えだった ようですね。北野病院(699 床)の尾上先生のところはい かがですか。 尾上 当院は医学研究所の機能を有する、京都大学医学 部とつながりが強い病院です。地域医療支援病院や大阪 府がん診療拠点病院の認定を受けており、「断らない医療」 をモットーにしていて、救急患者や救急車の受け入れ件 数も非常に増えています。私が着任したのは 2013 年 4 月 ですが、7 月からの病棟加算算定は既定路線で、4 名の増 員が認められていてスタートした経緯があります。 前田 そうすると、実際の稼動は着任してから尾上先生 が工夫されたわけですね。 尾上 そうです。まずやったのは体制の大幅な入れ替え です。対象病棟が 18 病棟あって、そのうち 13 病棟につ いては 1 日配置、残り 5 病棟は半日という形で、正確に は 1 日 15.5 人分を病棟に配置して、残りの 20 名弱で中央 業務をこなす形に持っていきました。5 月にこの配置で 機能するかどうかのシミュレーションを行い、そして 6 月には施設基準を本当にクリアしているかどうかを確認 して算定に漕ぎ着けた状況です。実際はマンパワー的に ギリギリだったので、5 月に 1 名の新規採用を行いました。 今年度は1名の増員、さらには非常勤職員3名を全て常 勤薬剤師にしてもらい、現在は常勤薬剤師 40 名と事務員 4.5 名で薬剤部を回している状況です。 前田 医師や看護師等現場の反応はどうでしたか。 尾上 私が着任する前も夕方の時間帯に病棟に行ってい て、薬剤師は概ね医師、看護師の顔も知っていたし、と くに問題はなかったですね。それと事前に病院トップか ら、危機管理、チーム医療充実の観点で「全病棟に薬剤師 を配置することの意義」を周知してもらえたのもよかった と思います。 前田 たしかに病棟加算を取るといっても薬剤師の数だ けの問題ではないですね。そこは薬剤部の「文化と歴史が どうだったか」が問われます。スムーズな導入経過をお聞 きすると、三病院ともこれまでの病棟活動で医師や看護 師との信頼関係が十分できていたのだと思います。ちな みに私の勤務する中国労災病院(410 床)では薬剤師 19 名 で、病棟加算は 2012 年 4 月から算定しています。以前か ら全入院患者を対象として薬剤管理指導業務を行い、ま た医師と抗 MRSA 薬の投与設計などいわゆるプロトコー ルに基づいた薬物治療を前向きに取り組んでいたことも あって、病棟薬剤業務もその延長線上で理解されています。

病棟薬剤業務の成果を

どう“見える化”していくか 

前田 病棟加算を算定する病院は、一方で従来の「薬剤管 理指導」をどう位置づけ、棲み分けして取り組むのか、要 件も含めてきちんと整理していくことも必要でしょう。 薬剤管理指導は病院収入的にも大きいし、おろそかには できません。当院では実際にカルテ上では明確に区分し て、週に 1 回以上記載しています。病棟加算は入院基本 料であり、薬剤管理指導は医学管理料と診療報酬上は異 なるものだからです。先生方の病院で病棟加算算定以降、 薬剤管理指導への対応への変化はありますか。 室井 薬剤師が病棟に常駐するようになって、薬剤管理 指導を行う機会が増えたので、指導件数が前年度の約 1.5 倍になりました。それは、病棟に常駐しているので効率 性がアップしたことと、看護師さんとの距離が縮まって 図 -2 病棟薬剤業務項目実施件数内訳(兵庫医科大学病院薬剤部) 2014 年 6月調査 n=3,875 22.0% 40.2% 10.8% 医薬品の投薬・注射状況の把握 医薬品安全性情報の周知・相談応需 持参薬の確認と服薬計画の提案 投与前の相互作用の確認 ハイリスク薬に係る投与前の説明 流量や投与量の計算 TDM(副作用状況・有効性の確認) 抗がん剤の無菌調製(レジメン数)

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依頼されやすくなったこと もあると分析しています。 木村 薬剤管理指導の質も 件数も伸びているという状 況で、現在は 2800 件を超え てもうすぐ月 3000 件に近づ きます。これで年間約 1 億 円の診療報酬収入がありま す。院内での薬剤師への期 待がますます高まりつつあ る中で、算定要件以外の病棟業務にも積極的に取り組ん でいます。 前田 それと病棟薬剤業務の質を高めるためのマンパ ワーの増員要求等病院トップや他の病棟関係者の理解を 得るには、それなりの収支データなど“見える化”も必要 だと思います。つまり薬剤師の活動が医療と経営の質の 向上に直結しているということのアピールですね。たと えば病院収入の面からは薬剤管理指導料等の収入以外に も、チーム医療、副作用防止と医療安全、看護師の負担 軽減などの訴求が可能です。当院でも、薬剤管理指導料、 病棟加算、後発医薬品指数(DPC 係数)のフィーを合算し て、「薬剤部では単純に見ても薬剤師 1 人当たり 1200 万 円の診療報酬収入があるのでそれに見合った増員がほし い」と要求を出しています。後発医薬品指数をはじめ、薬 剤師の病院経営貢献が数字で出せる時代です。 室井 当センターの場合は DPC 係数を基に計算して、病 棟加算や薬剤管理指導料と人件費を勘案した収支を出し ています。薬剤管理指導料が前年比約 1.5 倍になったので、 それが数字的な増員の説得材料になると考えています (図 -3)。これまで「救命救急入院料等算定 430 点がなぜ 取れないのか」と指摘されていたのですが、救急病棟にも 週 20 時間相当薬剤師を配置 することで少しずつクリア できたことも実績になると 思います。 前田 まだまだ薬剤師増員 はコスト増として捉えられ てしまう現実もありますね。 室井 確かに数字を出して も厳しいことは厳しいです が、増員することでたとえ ば救急病棟に 20 時間常駐しているのを 40 時間に拡大し て 430 点の取得件数を増加することとか、オペ室に 20 時 間相当配置して医師の負担軽減や医薬品に関する安全性 の確保を図ることなど戦略を明確にして人員要求中です。 それに伴い薬剤管理指導件数も年 1 万 8000 件程度に持っ ていけるといった予測もしています。 前田 尾上先生は薬剤部の実績をどうアピールして人員 増につなげているのですか。 尾上 私の場合は、まず医師や看護師など病棟周りから 「薬剤師を増やしたらどうか」という雰囲気をつくってい くことを考えています。そうすれば病院トップの理解も 得やすいわけです。それと同時に薬剤管理指導件数やジェ ネリック医薬品の導入など、薬剤師が病院経営にどこま で貢献しているかを、きちんデータで示すようにしてい ます。具体的には、毎月開催される院内全体会議において、 薬剤管理指導件数や現在薬剤部が取り組んでいる事項な どについて報告しています。 前田 病院トップの理解に繋げることはとても大事です ね。フィーが付くというのはすごく大きいことで、薬剤 師のモチベーションも上がるし、現場の期待も大きくなっ て業務はどんどん増えます。当院の場合もそれがなかな かトップに届かないというジレンマはあり ます。木村先生のところはいかがですか。 木村 当院の場合は教育機関でもあるので、 診療報酬で薬剤師の給与をペイしようとい う考え方でいくと絶対に無理です。実際、 全病棟に専任の薬剤師を置いた場合、人件 費と病棟加算等の診療報酬をてんびんにか けるとマイナスです。ですから増員要求す る場合は、「新たにこういう業務を増やす」 「抗がん剤の調製を 100%薬剤師がやるから これだけの人員が要る」「オペ室の常駐薬剤 師を 1 名から 2 名に増やすのだったら 1 名 追加してほしい」といった具合に、まさに具 体的な必要性を積み上げていくことで上層 部の決断を仰ぐというスタイルをとってい ます。 ①特定入院:430 点 救命救急入院料等算定の患者 ②ハイリスク:380 点 特に安全管理が必要 な医薬品使用の患者 ③通常指導:325 点 ①②以外の患者 図 -3 薬剤管理指導件数の推移(大阪府立急性期・総合医療センター)

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病棟配置と中央業務、

持参薬問題を

どうクリアしていくか

前田 病棟加算を取得して 一定の質を保ちながら維持 するには、ローテーション や中央業務との関連など課 題もあります。限られた人 員で質の高い薬剤業務を行 うには、効率的な業務体制が不可欠です。そこで病棟シ フト等言わば薬剤部マネジメントに関する工夫を伺います。 木村 当院はメイン薬剤師 1 名にサブ薬剤師 1 名の組み 合わせが病棟配置の基本です。このサブはまた他病棟の メインをやっているケースもあるので、補完し合うこと が前提ですが、教育機関であり研究業務もあるという業 務の中で数は全然足りていないのが現状です。 尾上 当院はフロアごとに 2 病棟で 3 〜 4 名体制でやっ ています。これは 1 病棟に 1 名プラス、キャリア 1 〜 2 年目の若手のサブの組み合わせが基本で、さらにその上 にベテラン 1 名が付きます。最近は、週 1 〜 2 回程度は 2 年目薬剤師が必ずメインの薬剤師と交代して動くとい う形を取っています。これは若手に現場での体験を積ま せる教育効果を狙ってのローテーションです。まだ試行 錯誤の段階ですが、病棟薬剤業務を通してどのような情 報を提供し、また、薬学的にどのような介入をしたかを 自己点検・確認する目的で毎週、病棟薬剤業務チェック リスト(図 -4)を提出してもらっています。 室井 当センターでは現在、19 病棟に薬剤師を配置して います。1 名のリーダーを含む 8 名の薬剤師で構成する 4 チームを編成し、3 チームが 5 病棟、1 チームが 4 病棟を 担当しています。チーム編成は、各チームが担当する診 療科に対応できる専門薬剤師・認定薬剤師・認定取得予 定薬剤師などを中心に考慮しています。それとリーダー が毎日、中央業務と病棟業務の人の配置を決め、かつ総 括が全体的なバランスを見て、中央業務がおろそかにな らないようにしています。 木村 薬剤部マネジメントでは中央業務もおろそかにで きないと思っています。室井先生のところは病棟のチー ムの中から、何人か常に中央業務に応援に行くという形 を取って中央業務が成り立っているわけですね。当院は 今のところ病棟担当者を中央業務から切り離しています が、業務の効率化や薬剤業務全般を担える人材育成など を考慮して、いかにローテーション体制をとっていくか 模索しています。 室井 当センターがチーム制にしたのは新入局薬剤師や 異動者等、新人が比較的多かったという院内事情もあり ます。各業務を早く習得す るために、中央の各業務及 び病棟業務での従事時間を 薬剤師別・月別に集計して、 業務バランスをチェックし ています。 前田 チーム制、専任いず れにせよ、限られた人数で いろいろ工夫して効率的に やっていくしかないという のが現状だと思います。それと行政監査の視点で言うと、 配置で一番問題になるのは ICU と HCU です。2 週間を 超える患者さんがいたら注意が必要で、必ず配置してお かないといけない。 尾上 当院も ICU は配置しています。通常勤務は午前 8 時 45 分からですが、ICU は 8 時半から看護師の申し送り があり、そこには必ず参加してもらっています。それと ICU や救急病棟については必ず「薬剤師の視点から何を やったか」をカルテに書くような指示をしています。 前田 薬剤師の行動をカルテに書くことはとても重要で す。実際、調査が入って記録がなかったら一切だめですね。 図 -4 病棟薬剤業務のチェックリスト(北野病院)

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当院の適時調査の経験を申し上げておきますと、3 日間 の調査でそのうち病棟加算の症例を 1.5 日かけて説明して います。また薬剤管理指導業務では、「重複薬投与の事例 はありますか」「禁忌の症例はありますか」といった質問 が出ますが、すべて記録を出して説明できないとだめです。 それともう一つお聞きしたいのはいわゆる“持参薬問 題”です。皆さんどう対応されていますか。 木村 本年度の診療報酬改定で「入院の契機となった持参 薬は使用してはいけない」となりましたが、まだどこで線 を引いていいか、はっきりとしたところが分からないで すね。 前田 当院では基本的には使用せず、使用する場合は病 棟薬剤師が主治医と協議し、理由を記載するようにして います。 室井 当センターは電子カルテに、採用薬以外のマスタ を使った持参薬入力や注意喚起をするための付箋をつけ るシステムがあり活用していますが、入院患者さんが未 採用薬を安定して継続服用されている場合は、その旨を 医師に報告して判断を仰ぐこともあります。 前田 使用するかどうかは各施設が決めればいいと思い ますが、薬剤師としては持参薬の中に、「入院の契機となっ た薬剤がないか」「その処方は適正か」を評価(薬学診断) することが重要だと思っています。

病棟薬剤業務の“エビデンス”を

積み重ねることが重要

前田 この病棟加算は導入 2 年を経て検証によりその質 が問われることになっています。ちなみに中医協・診療 報酬改定結果検証部会が行ったアンケート調査が公表さ れましたが、これはどう受けとめましたか。 木村 8 割以上の医師たちが「病棟に薬剤師がいるほうが いい」、看護師も「薬剤師がいるほうがいい」という結果で したが、私はそういう結果についても有効に利用するべ きだと思っています。それで関係者全員が、「薬剤師は病 棟にいるのが当たり前」と思うようになっていくのが理想 ですね。 前田 もちろん中医協の場では病棟加算がチーム医療の 進展、医師や看護師の負担軽減にどう結びついたのか、 つかなかったのかの分析が行われ、それが次回の改定の 議論のベースになっていくはずです。私自身も、この制 度を継続発展させていくためにはもちろんのこと、院内 関係者の理解を得てチーム医療を活性化していくために も、副作用の未然防止・早期発見、薬剤関連のインシデ ント件数の減少といったさまざまな角度から、病棟薬剤 業務の有用性を実証していく必要があると思っています。 この点で先生方はどんな取り組みをされていますか。 木村 薬剤部では自分たちの業務内容を分析するために、 薬剤師の介入件数をプレアボイド的観点で集めています。 前田 どんなふうに集めているのですか。 木村 薬学的なレベルは問わなくて、一番は投薬や注射 状況の把握で、「どういう品目についてどういう介入をし たか」とか、医薬品安全性情報の周知や相談応需であれば、 「どういう品目について情報提供したか」「持参薬に関し ての服薬計画でどういう提案をしたのか」「どの相互作用 について確認して説明したか」「ハイリスク薬に関わる投 与前の説明は何をしたのか」ということを、それぞれの項 目ごとに集計を取って、たとえば病棟ごとの差を確認し て、自分たちの質をより高めるような形でデータを見て います。 前田 それを病院トップに、薬剤部の仕事としてアピー ルされますか。 木村 いいえ。今はそこまではしていません。たとえば 後輩に介入事例を指導するとか、あくまで部内で活用す るものとしています。ただ病棟スタッフと共有したほう がいいものについては周知します。 前田 でも薬剤管理指導の中に書いてあったり、実際、 プレアボイド的に回避している結果は医師、看護師から の評価にはつながるはずですね。 室井 そういう取り組みをアピールしないというのは もったいないですね。絶対に病院の上層部に示した方が いいと個人的には思います。 前田 そうおっしゃる室井先生のところはいかがですか。 室井 疑義照会入力システムがあるので、それを活用し てデータ収集につなげているところです。 前田 どんなシステムですか。 室井 薬剤師が医師に疑義照会した内容を検索できる当 センターオリジナルのシステムです。どういう疑義照会 をかけているかを見ることができるので、他の者が重複 照会しなくてもすみます。いろいろな項目で検索やソー 図 -5 薬剤師が病棟に配置されたことによる影響(配置前との比較) (病棟に薬剤師が配置されている病棟の医師、複数回答 中医協資料)

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Towa Communication Plaza

トもかけられますし、医師や看護師が見ることもできます。 前田 上層部へのアピールにはどう使いますか。 室井 プレアボイドにつながったものを運営会議等で紹 介しました。管理者に「薬剤師は有意義なことをしている」 ということを印象付けて、次の人員要求の際の説得材料 にします。 木村 そういう IT システムがあるのはいいですね。教育 ツールにももってこいだと思います。 前田 当院では疑義照会はエクセルで記録します。病院 機能評価でも「疑義照会の記録はありますか」と聞かれま すね。こういった記録には、「安全・安心で信頼できる質 の高い医療の提供には薬剤師が必要である」というエビデ ンスが十分蓄積されていくはずです。私はとにかく薬剤 師の活動は記録しておかないと誰にも認められないと 思っています。カルテに記載すること、収集して分析・ 活用する、そして病院トップや他の医療従事者にアピー ルするという一連のものだと思います。

プロトコールに基づいた

薬物治療管理(PBPM)に挑戦する

前田 病棟加算が診療報酬で評価され、薬剤師 のチーム医療への積極的貢献が求められている 中で、病棟で必要とされる存在になっていくた めに何をなすべきか、ということで私は「プロト コールに基づく薬物治療管理(PBPM:Protcol Based Pharmacotherapy Management)」という ことを提案したいと思っています。当院では、 事前に承認を得て実施している事例を、事後で も可能にしました。数十年前の「抗 MRSA 薬の 初期投与設計は薬剤師がする」ということをス タートにして、剤形変更や ODP や粉砕の指示 など、入院患者全員を対象として薬剤師が現場 でできるようにしています。たとえば疑義照会 の処方変更、抗菌薬の時間、TDM 対象の血中 濃度測定、検査の項目ではシスプラチン投与時 のナトリウム測定の代行入力、血糖降下剤の BS(血糖値)の測定の代行入力などから化学療 法のレジメン登録してある支持療法の代行入力 といったところもできます。 木村 化学療法ではどこまで代行入力できます か。 前田 リウマチの患者さんも含めて B 型肝炎 ウィルス測定も代行入力できます。B 型肝炎の 3 セット、DNA まで測るようにしています。ま た、退院時の日数調整も可能です。これは患者 さんに素早い対応ができるからすぐ退院できる ようになるし、事務、看護師、医師もすごく喜 んでいて医療安全にもつながっています。もちろん医師 の事後承諾、カルテに記載といったことを PBPM の条件 としてあることは言うまでもありません。 室井 代行入力した後、医師はチェック・承認をするの ですか。 前田 はい。そういうシステムですが、医師が承認を忘 れている場合もありますので、事後の場合、その理由を カルテに書く。カルテに書くというところがミソです。 カルテに書いてあれば薬剤師がやってくれたという事実 が残り、感謝されます。そうしないと投与できなくて治 療がストップしてしまうから、退院もできない。結局、 患者さんが迷惑することになってしまいます。 木村 私も PBPM は医療従事者の従来の価値観や常識を 変えていく手法だと思っています。前田先生の取り組み をお聞きすると、まさに薬剤師による質の高い医療提供 であり、結果的に医師などの負担軽減にもつながってい るのが分かります。 用法 効能・適応 初期投与量設計 提案 5784 件 中国労災病院(2013.5.8-5.21)1年換算 病棟薬剤師が、年間約 5000 件の処方を適正にしており、副作用の減少は、持ち出しの減少になる。 2000 (件数) 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 実施 5208 件受け入れ率 89.95% 投与量 の 変更 肝障害・腎障害 の 副作用 そ の 他副作用 相互作用 処方 エ ラ ー 追加処方 の 提案 処方変更・中止 の 提案 そ の 他︵内容記載︶ 図 -6 病棟薬剤業務での処方提案と実施件数(中国労災病院) 病棟薬剤業務実施加算 平成 20 年度 2000 1800 1600 1400 1200 1000 請求件数 平成 21 年度 平成 22 年度 平成 23 年度 図 -7 薬剤管理指導算定件数の推移(中国労災病院)

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室井 私もそういった薬剤師の臨床力をつけていかない といけないと実感しています。 尾上 当院は現在、1 病棟で薬剤師による持参薬オーダ を行っているのみでまだまだですが、PBPM にも積極的 にチャレンジしていきたいと考えています。 前田 実際、PBPM は「薬剤師が何をした」という証拠が 残ります。それは薬物療法の結果責任を薬剤師が負うこ とです。「責任を取る」というところにいかないと薬剤師 の立場は永遠に向上しないと思っています。

病棟薬剤業務から

薬剤師の未来が見えてくる!

前田 それでは最後に、お三方の「病棟薬剤業務への思い、 これからの薬剤師のあり方」について一言ずついただいて 本日の座談会の締めにしたいと思います。 木村 私たち薬剤師には、「薬学的な介入をすることに よって患者さんの薬物治療の質を高めたい」という本意が あると思っています。それは自分たちの中でアウトカム を見つけていくことです。どんな成果が出たかというの は各施設がつくりあげていくものだと思うので、そこを アウトカムに落としていく。私自身も、「うちはこういう 病棟で、こういうことに病棟薬剤師が関わりました。あ る科においてはこんな結果が出ています」ということを院 内はもちろん、外部に向けても発信していきたいと考え ています。 前田 これからの薬剤師像に関してはどうですか。 木村 将来的には、入院患者さんに「私があなたの主治薬 剤師です」と宣言できる形をつくりたいです。それには「薬 物治療の処方設計にしても、処方の変更にしても、必ず 薬剤師に相談してから」というのが当たり前になる風土を 医療につくっていくことだと思います。事実、今回の病 棟加算によって、そういう未来に一歩ずつ踏み出してい ると考えます。 前田 室井先生はいかがですか。 室井 先ほどお話した疑義照会入力システムの記録を見 ると、「本当に安全で安心できる質の高い医療の提供をす るためには薬剤師が必要である」というエビデンスが十分 蓄積されてきているのを実感します。ですから、それを 粛々と増やしていくことだと思っています。それが薬に 関して、医師や看護師に薬剤師の存在意義をアピールす る武器になると考えているのです。もう一つ申し上げる と、今は 20 時間相当の薬剤師の配置でしかないのですが、 まずはこれが次期診療報酬改定で適切なフィーを伴って 40 時間に拡張されるように、病院薬剤師がさまざまなも のを積み上げていく必要があると思っています。 前田 尾上先生、お願いします。 尾上 お二方と思いは同じです。私が理想としているの は、「患者さんのために何ができるかを常に考えて、それ を行動移せる薬剤師になること」です。木村先生が、「も う未来に一歩ずつ踏み出している」とおっしゃいました が、私自身も病棟に行くたびに、医師、看護師、患者さ んとの距離が本当に近くなっている、チーム医療の一員 として期待されているという実感があります。 前田 病棟加算への取り組みで多くの薬剤師が実感する のは、「薬剤師が病棟に常に存在し、薬物療法を展開する ことによってよりよい医療を目指すことができる」という ことだと思います。どこの病院でも副作用を専門にして いる医師はいません。そこで薬剤師が薬に対して責任を 持って積極的に対応していけば、医療は変わります。患 者さんのために、医師の処方を牽制できる薬剤師になっ ていけば、薬剤師の存在価値はさらに向上すると思いま す。また私たちは薬剤部の管理者でもありますから、そ ういった薬剤師を育てていく責務があることも共通認識 として持ちたいと思っています。  先生方、本日は長時間にわたり貴重なお話をありがと うございました。 (座談会収録 2014 年 8 月 2 日)

「いしかわ 921 在宅ネットワーク」の地域包括ケアセミナーを共催

Close Up Seminar 地域の在宅医療における「多職種連携 ネットワーク」をサポートします。  本格的な高齢社会に突入するわが国では 「地域包括ケア体制」を施策として掲げてお り、それぞれの地域で在宅患者をケアする “インフラづくり”が求められています。「い しかわ 921 在宅ネットワーク」は石川県金 沢市エリアで活動する、医療・介護分野の多職種(医師・看護師・薬剤師・介護関係等)が参 加するネットワークです(TCP No.30 「がん医療の地域連携体制のつくり方」で紹介)。東和 薬品では同ネットワークの特別講演会、東京医科歯科大学大学院・川渕孝一教授によるセミナー (石川県に地域包括ケアはなじむか?)を共催しました。

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