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上原記念生命科学財団研究報告集, 27 (2013)

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Academic year: 2021

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117. サイトカイン誘導性膜タンパク質の神経炎症における役割

中島 晶

Key words:Toll 様受容体,インターフェロン誘導性  膜タンパク質,炎症性サイトカイン,アストログリア

名古屋大学 大学院医学系研究科   

医療薬学

緒 言

 脳虚血,アルツハイマー病や統合失調症等の中枢神経疾患において,炎症性サイトカインにより引き起こされる神経 炎症が神経細胞障害に関連している事が明らかにされている1).また,近年,これら中枢神経疾患の神経炎症に,損傷 を受けた細胞の断片や種々のウイルス感染に応答する自然免疫分子である Toll-like receptor (TLR) シグナルの関与が 示唆されている2)  我々は,TLR3 アゴニストである合成二本鎖ポリヌクレオチド (PolyI:C) を投与したマウス脳の網羅的遺伝子発現解 析により,アストログリア細胞にインターフェロン誘導性膜タンパク質 (IFITM3) が発現することを発見しており3) IFITM3 がエンドサイトーシスを制御することにより神経発達に影響を及ぼす可能性を報告している4).IFITM3 はタ イプⅠ(α,β など) およびタイプⅡ(γ) インターフェロンによって誘導され 5),インターフェロンの抗ウイルス活性に 重要な役割を果たしていることが知られている6).中枢神経疾患との関連では,統合失調症,双極性障害、自閉症患者 の死後脳で IFITM3 の発現増加が報告されているが7-9),その病態生理学的意義はほとんどわかっていない.  本研究では,培養アストログリア細胞を用いて,TLR1/2 アゴニストである Pam3CSK4, TLR2/6 アゴニストである FSL-1, TLR3 アゴニストである PolyI:C,TLR4 アゴニストである LPS および TLR5 アゴニストである FLA-ST による IFITM3 の誘導およびそのメカニズムについて検討した.

方 法

1.培養アストログリア細胞の調製  実験には ICR 系マウス(日本エスエルシー,静岡)を使用した.本実験は名古屋大学医学部実験動物指針に準じて 行った.生後2-3日の新生仔マウスから海馬および大脳皮質を取り出した.髄膜を剥がし dispase および DNase を 用いて酵素処理をした後,初代培養としてフラスコに播いた.90-95%コンフルエントになった時点で二次培養を行っ た.全ての実験には二次培養アストログリア細胞を用いた.Pam3CSK4, FSL-1, PolyI:C,LPS あるいは FLA-ST を処 置し,24 時間後に細胞を回収した.Nuclear factorκB (NFκB) の阻害剤 helenalin および TANK-binding kinase (TBK-1) の阻害剤 BX795 は TLR アゴニスト処置の1時間前に処置した.

2.リアルタイム PCR による遺伝子発現量の解析

 培養アストログリア細胞から抽出した RNA を SuperscriptIII (Invitrogen) を用いて cDNA に変換した後,7,300 real-time PCR (Applied Biosystem) を用いてIFITM3 mRNA 量を定量した.

3.統計解析

 データは平均±標準誤差で示した.独立多群間の比較には一元配置分散分析(one-way analysis of variance, ANOVA)を用い,有意差が認められた場合には Tukey の検定を行った.いずれの検定においても危険率 5%以下の場 合を有意差ありと判定した.

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結果および考察

 TLR1/2 アゴニストである Pam3CSK4, TLR2/6 アゴニストである FSL-1, TLR4 アゴニストである LPS および TLR5 アゴニストである FLA-ST を培養アストログリア細胞に処置すると濃度依存的にIFITM3 遺伝子発現が増加し た(図1).これらの結果より,TLR3 に加えて,他の TLR シグナルの活性化によっても IFITM3 の遺伝子発現が引 き起こされる事が明らかとなった. 図 1. 培養アストログリア細胞における IFITM3 mRNA レベルに対する TLR アゴニストの効果. TLR1/2 アゴニストである Pam3CSK4, TLR2/6 アゴニストである FSL-1, TLR4 アゴニストである LPS および TLR5 アゴニストである FLA-ST の処置により,培養アストログリア細胞におけるIFITM3 遺伝子発現は濃度 依存的に増加した.

(3)

図 2. TLR アゴニスト誘発性 IFITM3 遺伝子発現増加に対する helenalin の効果.

NFκB の阻害剤である helenalin を前処置することにより Pam3CSK4, FSL-1, LPS および FLA-ST 誘発性 IFITM3 の遺伝子発現増加は抑制された.一方,PolyI:C 誘発性 IFITM3 の遺伝子発現増加は helenalin を前処置しても抑制さ れなかった.

 一方, TBK-1 の阻害剤である BX795 の前処置により PolyI:C 誘発性 IFITM3 の遺伝子発現増加は有意に抑制された (図3).以上の結果より, PolyI:C により誘導される IFITM3 の遺伝子発現には TBK-1 から IRF3 を介した経路が重要

(4)

図 3. PolyI:C 誘発性 IFITM3 遺伝子発現増加に対する BX795 の効果.

TBK-1 の阻害剤である BX795 の前処置により PolyI:C 誘発性 IFITM3 の遺伝子発現増加は有意に抑制された.  以上の結果より, 培養アストログリア細胞において, TLR シグナルの活性化により IFITM3 が誘導されることを明ら かにした.今後は, IFN-β, IL-1β や TNF-α 等の中和抗体を用いて, TLR アゴニスト誘発性 IFITM3 遺伝子発現にお けるこれらサイトカインの寄与の程度を明らかにしたいと考えている.また, IFITM3 がエンドサイトーシスを抑制 し, アストログリア細胞からの分泌因子を制御する事により神経発達障害を引き起こす事が明らかとなっているが4)

IFITM3 相互作用タンパク質の解明,IFITM3 によるエンドサイトーシス制御機構の解明および IFITM3 によりその分 泌が制御され神経発達障害を引き起こす因子の同定が今後の課題である.

共同研究者

本研究の共同研究者は名古屋大学医学系研究科医療薬学分野の山田清文である.最後に,本研究にご支援を賜りました 上原記念生命科学財団に深く感謝致します.

(5)

5) Liu, H., Kang, H., Liu, R., Chen, X. & Zhao, K. : Maximal induction of a subset of interferon target genes requires the chromatin-remodeling activity of the BAF complex. Mol. Cell. Biol., 22 : 6471-6479, 2002. 6) Everitt, A. R., Clare, S., Pertel, T., John, S. P., Wash, R. S ., Smith, S. E., Chin, C. R., Feeley, E. M., Sims, J. S.,

Adams, D. J., Wise, H. M., Kane, L., Goulding, D., Digard, P., Anttila, V., Baillie, J. K., Walsh, T. S., Hume, D. A., Palotie, A., Xue, Y., Colonna, V., Tyler-Smith, C., Dunning, J., Gordon, S. B., The GenISIS Investigators, The MOSAIC Investigators, Smyth, R. L., Openshaw, P. J., Dougan, G., Brass, A. L. & Kellam, P. : IFITM3 restricts the morbidity and mortality associated with influenza. Nature, 484 : 519-523, 2012.

7) Arion, D., Unger, T,. Lewis, D. A., Levitt, P. & Mirnics, K. : Molecular evidence for increased expression of genes related to immune and chaperone function in the prefrontal cortex in schizophrenia. Biol. Psychiatry, 62 : 711-721, 2007.

8) Garbett, K., Ebert, P. J., Mitchell, A., Lintas, C., Manzi, B., Mirnics, K. & Persico, A. M. : Immune transcriptome alterations in the temporal cortex of subjects with autism. Neurobiol. Dis., 30 : 303-311, 2008. 9) Iwamoto, K., Kakiuchi, C., Bundo, M., Ikeda, K. & Kato, T. : Molecular characterization of bipolar disorder

by comparing gene expression profiles of postmortem brains of major mental disorders. Mol. Psychiatry, 9 : 406-416, 2004.

10) Kawai, T. & Akira, S. : The role of pattern-recognition receptors in innate immunity: update on Toll-like receptors. Nat. Immunol., 11 : 373-384, 2010.

参照

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