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同 効 薬 比 較 ガ イ ド 9 オピオイド 鎮 痛 薬 おさえて おきたい オピオイド 鎮 痛 薬 の 基 礎 知 識 オピオイド 鎮 痛 薬 には, 麻 薬 性 オピオイド 鎮 痛 薬 (モルヒネ,フェンタニ ル,オキシコドン,メサドン,コデインリン 酸 塩 ), 麻 薬 拮 抗 性 鎮 痛

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オピオイド鎮痛薬の

基礎知識

▶オピオイド鎮痛薬には,麻薬性オピオイド鎮痛薬(モルヒネ,フェンタニ ル,オキシコドン,メサドン,コデインリン酸塩),麻薬拮抗性鎮痛薬(ペ ンタゾシン,ブプレノルフィン),その他(トラマドール)などがあります ▶オピオイド鎮痛薬は,鎮痛作用が強く痛みのコントロールに効果的なため, 各種がんによる痛みに対して広く使用されます ▶がん患者における鎮痛コントロールでは,生命予後の長短にかかわらず, 痛みの程度に応じて躊躇せずに必要な鎮痛薬を選択することが重要です ▶がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使用は,「WHO方式がん疼痛治療 法」を基本とします

非麻薬性オピオイド鎮痛薬の

ポイント

▶「WHO三段階除痛ラダー」においてトラマドール,コデインリン酸塩は第 二段階,ブプレノルフィンは第三段階で使用する鎮痛薬に分類されます。 「WHO三段階除痛ラダー」にはペンタゾシンの記載はありません ▶ 長期にオピオイドを使用している患者へ部分作動薬であるペンタゾシンやブプレ ノルフィンを使用すると離脱症状や鎮痛効果低下を引き起こす可能性があります ▶トラマドールやブプレノルフィンなどそれぞれ同じ成分を含有する薬剤で あっても,わが国で承認されている効能・効果が異なる製剤があります

麻薬性オピオイド鎮痛薬の

ポイント

▶オキシコドンはモルヒネやフェンタニルに比べ,より早期からの使用が可 能です ▶ 腎機能低下時にモルヒネを投与する場合は,活性代謝物であるモルヒネ─6─グ ルクロナイド(M─6─G)が蓄積する可能性があるので注意する必要があります ▶ フェンタニルの1日1回貼付製剤は,定常状態に達するまでに約4~5日間を 必要とするため,短期間での増量による過量投与に注意する必要があります

おさえて

おきたい

オピオイド鎮痛薬

9

同 効 薬

比 較 ガ イ ド

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123 122



オピオイド鎮痛薬の分類,位置づけ

1 オピオイド鎮痛薬

オピオイドとは生体内のオピオイド受容体に結合する物質(リガンド)の総称である。 オピオイドにはモルヒネ,フェンタニル,オキシコドン塩酸塩水和物,メサドン,コデイ ンリン酸塩などの麻薬性鎮痛薬,ペンタゾシン,ブプレノルフィンなどの麻薬拮抗性鎮痛 薬,エプタゾシン,トラマドール塩酸塩などのその他の鎮痛薬,麻薬拮抗薬であるナロキ ソン塩酸塩やレバロルファン酒石酸塩,β─エンドルフィン,エンケファリン,ダイノル フィンなどの内因性ペプチドが含まれる。オピオイドのなかで,内因性ペプチドや麻薬拮 抗薬を除くオピオイド受容体作動薬をオピオイド鎮痛薬とよぶ1)

2 オピオイド受容体

オピオイド鎮痛薬はオピオイド受容体に対するリガンドとして作用している。オピオイ ド受容体にはμ,δ,κの3種類の存在が認められている。μ受容体にはμ1とμ2受容体 サブタイプが存在し,μ1受容体は脳における鎮痛,徐脈,縮瞳,尿閉,悪心・嘔吐,瘙 痒感などに関与し,μ2受容体は脊髄における鎮痛,鎮静,呼吸抑制,消化管運動抑制な どに関与していることが知られている2) オピオイドの代表的な副作用である便秘は,主に中枢・腸管に存在するμ2受容体へオ ピオイドが作用することにより生じる。オピオイド受容体サブタイプの主な薬理作用およ び親和性の強さを表1に示した3)

3 WHO方式がん疼痛治療法

オピオイド鎮痛薬は鎮痛作用が強く,痛みのコントロールに非常に効果的なため,各種 がんによる痛みに対して広く使用されている。 がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使用は「WHO方式がん疼痛治療法」を基本と する。「WHO方式がん疼痛治療法」の「鎮痛薬リスト(WHO鎮痛薬リスト)」を表2に 示す。「WHO方式がん疼痛治療法」における鎮痛薬の使用法は,治療にあたって守るべ き「鎮痛薬使用の5原則(表3)」と痛みの強さによる鎮痛薬の段階的な使用法を示した 「WHO三段階除痛ラダー(図1)」から成り立っている。 「WHO三段階除痛ラダー」では,軽度の痛みには,第一段階の非オピオイド鎮痛薬を 使用するが,これらの薬剤は副作用と有効限界(ceiling effect)により基本的に標準投与 量を超える増量は行わない。非オピオイド鎮痛薬で効果が不十分なときには,「軽度から 中等度の強さの痛み」に用いるオピオイド鎮痛薬を追加する。第二段階で痛みの緩和が十 分でない場合は,第三段階の薬剤に変更する。ただし,痛みの強さによっては第二段階を 省略してよい。また,いずれの段階においても非オピオイド鎮痛薬は併用するのが原則で ある。さらに,第三段階でも必要により鎮痛補助薬の使用を検討する。患者の生命予後の 長短にかかわらず,痛みの程度に応じて躊躇せずに必要な鎮痛薬を選択することが重要で 表1 オピオイド受容体サブタイプの薬理作用と各オピオイドの受容体に対する結合親和性 オピオイド μ受容体 δ受容体 κ受容体 μ1 μ2 主な発現作用 鎮痛 縮瞳 多幸感 悪心・嘔吐 尿閉 瘙痒感 徐脈 鎮痛 鎮静 身体依存 呼吸抑制 消化管運動抑制 鎮痛,鎮静,縮瞳 呼吸抑制 消化管運動抑制 悪心・嘔吐 鎮咳,利尿,うつ 幻覚,離人感 気分不快 鎮痛 鎮静 身体依存 呼吸抑制 悪心・嘔吐 トラマドール +※ ペンタゾシン ++(P) + ++ ブプレノルフィン +++(P) ++(P) +++(P) コデイン + モルヒネ +++ + オキシコドン +++ フェンタニル +++(μ1>μ2) (P)部分作動薬であることを示す ※トラマドール自体に結合親和性はなく,代謝物が部分作動薬として作用する 表2 WHO方式がん疼痛治療法の鎮痛薬リスト 薬剤群 代表薬 代替薬 非オピオイド鎮痛薬 アスピリン アセトアミノフェン イブプロフェン インドメタシン コリン・マグネシウム・トリサルチレートa) ジフルニサルa) ナプロキセン ジクロフェナク フルルビプロフェン※1 弱オピオイド (軽度~中等度の強さの痛み に用いる) コデイン デキストロプロポキシフェンa) ジヒドロコデイン アヘン末 トラマドールb) 強オピオイド (中等度~高度の強さの痛み に用いる) モルヒネ メサドンa) ヒドロモルフォンa) オキシコドン レボルファノールa) ペチジンc) ブプレノルフィンd) フェンタニル※2 a:日本では入手できない薬剤。 b:日本では注射剤のみ入手可能。 c:がん疼痛での継続的な使用(反復投与)は推奨されていないが,他のオピオイドが入手できない国があるため, 表に残された薬。 d:経口投与で著しく効果が減弱する薬。 ※1:原著では,基本薬リストにあげられていないが,非オピオイド鎮痛薬の注射剤としてはフルルビプロフェンの 注射剤(ロピオン)がある。 ※2: (強オピオイド)フェンタニルは,経皮吸収型製剤(貼付剤)と注射剤が使用できる。当時はフェンタニル貼 付剤を使える国が限られていたことから,原著では基本薬リストにあげずに文中での記載にとどめている。 表3 鎮痛薬使用の5原則 経口的に(bymouth) 時間を決めて規則正しく(bytheclock) 除痛ラダーにそって効力の順に(bytheladder) 患者ごとの個別的な量で(fortheindividual) そのうえで細かい配慮を(withattentiontodetail)

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オピオイド鎮痛薬の分類,位置づけ

1 オピオイド鎮痛薬

オピオイドとは生体内のオピオイド受容体に結合する物質(リガンド)の総称である。 オピオイドにはモルヒネ,フェンタニル,オキシコドン塩酸塩水和物,メサドン,コデイ ンリン酸塩などの麻薬性鎮痛薬,ペンタゾシン,ブプレノルフィンなどの麻薬拮抗性鎮痛 薬,エプタゾシン,トラマドール塩酸塩などのその他の鎮痛薬,麻薬拮抗薬であるナロキ ソン塩酸塩やレバロルファン酒石酸塩,β─エンドルフィン,エンケファリン,ダイノル フィンなどの内因性ペプチドが含まれる。オピオイドのなかで,内因性ペプチドや麻薬拮 抗薬を除くオピオイド受容体作動薬をオピオイド鎮痛薬とよぶ1)

2 オピオイド受容体

オピオイド鎮痛薬はオピオイド受容体に対するリガンドとして作用している。オピオイ ド受容体にはμ,δ,κの3種類の存在が認められている。μ受容体にはμ1とμ2受容体 サブタイプが存在し,μ1受容体は脳における鎮痛,徐脈,縮瞳,尿閉,悪心・嘔吐,瘙 痒感などに関与し,μ2受容体は脊髄における鎮痛,鎮静,呼吸抑制,消化管運動抑制な どに関与していることが知られている2) オピオイドの代表的な副作用である便秘は,主に中枢・腸管に存在するμ2受容体へオ ピオイドが作用することにより生じる。オピオイド受容体サブタイプの主な薬理作用およ び親和性の強さを表1に示した3)

3 WHO方式がん疼痛治療法

オピオイド鎮痛薬は鎮痛作用が強く,痛みのコントロールに非常に効果的なため,各種 がんによる痛みに対して広く使用されている。 がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使用は「WHO方式がん疼痛治療法」を基本と する。「WHO方式がん疼痛治療法」の「鎮痛薬リスト(WHO鎮痛薬リスト)」を表2に 示す。「WHO方式がん疼痛治療法」における鎮痛薬の使用法は,治療にあたって守るべ き「鎮痛薬使用の5原則(表3)」と痛みの強さによる鎮痛薬の段階的な使用法を示した 「WHO三段階除痛ラダー(図1)」から成り立っている。 「WHO三段階除痛ラダー」では,軽度の痛みには,第一段階の非オピオイド鎮痛薬を 使用するが,これらの薬剤は副作用と有効限界(ceiling effect)により基本的に標準投与 量を超える増量は行わない。非オピオイド鎮痛薬で効果が不十分なときには,「軽度から 中等度の強さの痛み」に用いるオピオイド鎮痛薬を追加する。第二段階で痛みの緩和が十 分でない場合は,第三段階の薬剤に変更する。ただし,痛みの強さによっては第二段階を 省略してよい。また,いずれの段階においても非オピオイド鎮痛薬は併用するのが原則で ある。さらに,第三段階でも必要により鎮痛補助薬の使用を検討する。患者の生命予後の 長短にかかわらず,痛みの程度に応じて躊躇せずに必要な鎮痛薬を選択することが重要で 表1 オピオイド受容体サブタイプの薬理作用と各オピオイドの受容体に対する結合親和性 オピオイド μ受容体 δ受容体 κ受容体 μ1 μ2 主な発現作用 鎮痛 縮瞳 多幸感 悪心・嘔吐 尿閉 瘙痒感 徐脈 鎮痛 鎮静 身体依存 呼吸抑制 消化管運動抑制 鎮痛,鎮静,縮瞳 呼吸抑制 消化管運動抑制 悪心・嘔吐 鎮咳,利尿,うつ 幻覚,離人感 気分不快 鎮痛 鎮静 身体依存 呼吸抑制 悪心・嘔吐 トラマドール +※ ペンタゾシン ++(P) + ++ ブプレノルフィン +++(P) ++(P) +++(P) コデイン + モルヒネ +++ + オキシコドン +++ フェンタニル +++(μ1>μ2) (P)部分作動薬であることを示す ※トラマドール自体に結合親和性はなく,代謝物が部分作動薬として作用する 表2 WHO方式がん疼痛治療法の鎮痛薬リスト 薬剤群 代表薬 代替薬 非オピオイド鎮痛薬 アスピリン アセトアミノフェン イブプロフェン インドメタシン コリン・マグネシウム・トリサルチレートa) ジフルニサルa) ナプロキセン ジクロフェナク フルルビプロフェン※1 弱オピオイド (軽度~中等度の強さの痛み に用いる) コデイン デキストロプロポキシフェンa) ジヒドロコデイン アヘン末 トラマドールb) 強オピオイド (中等度~高度の強さの痛み に用いる) モルヒネ メサドンa) ヒドロモルフォンa) オキシコドン レボルファノールa) ペチジンc) ブプレノルフィンd) フェンタニル※2 a:日本では入手できない薬剤。 b:日本では注射剤のみ入手可能。 c:がん疼痛での継続的な使用(反復投与)は推奨されていないが,他のオピオイドが入手できない国があるため, 表に残された薬。 d:経口投与で著しく効果が減弱する薬。 ※1:原著では,基本薬リストにあげられていないが,非オピオイド鎮痛薬の注射剤としてはフルルビプロフェンの 注射剤(ロピオン)がある。 ※2: (強オピオイド)フェンタニルは,経皮吸収型製剤(貼付剤)と注射剤が使用できる。当時はフェンタニル貼 付剤を使える国が限られていたことから,原著では基本薬リストにあげずに文中での記載にとどめている。 表3 鎮痛薬使用の5原則 経口的に(bymouth) 時間を決めて規則正しく(bytheclock) 除痛ラダーにそって効力の順に(bytheladder) 患者ごとの個別的な量で(fortheindividual) そのうえで細かい配慮を(withattentiontodetail)

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2 剤形

トラマドール,ペンタゾシンは錠剤またはカプセル剤があるが,いずれの製剤も粉砕後 の安定性が高い5)─7)ため,経管投与も可能である。ブプレノルフィンは肝臓での初回通 過効果が大きいため経口製剤はなく,坐剤,テープ剤が市販されている。消化管機能の低 下などにより,経口および経管投与ができない場合に有用である。コデインは錠剤および 散剤が市販されている。

3 薬理学的作用

①トラマドール

トラマドールはコデイン類似の合成化合物であり,鎮痛効果はμオピオイド受容体に対 する弱い親和性とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を併せ持つことで発 揮される。トラマドールからCYP2D6により代謝されたモノ─O─脱メチル体はμオピオ イド受容体に対して未変化体よりも高い親和性(モルヒネの1/10程度)を有する。

②ペンタゾシン

ペンタゾシンは,κ受容体に対して作動薬,μ受容体に対しては拮抗薬もしくは部分作 動薬として作用する。そのため,鎮痛効果は主にκ受容体を介しているが,一部μ受容体 も介している。ペンタゾシンは鎮痛作用の有効限界を有する。モルヒネが投与されている 患者に対してペンタゾシンを投与するとμオピオイド受容体拮抗作用により離脱症状や鎮 痛効果低下を引き起こす可能性がある。

③ブプレノルフィン

ブプレノルフィンはμ受容体に対して部分作動薬として作用し,κ受容体に対しては拮 抗作用を示す。モルヒネより25~50倍強い鎮痛効力をもち,モルヒネと類似する作用を 示すが,1回量が2~4mgで有効限界に達する。部分作動薬であるブプレノルフィンはμ 受容体に対する親和性がモルヒネよりも強い。大量にモルヒネを投与している患者にブプ レノルフィンを投与すると,競合して総合的な鎮痛効果が弱まる可能性がある。

④コデイン(医療用麻薬)

コデインのオピオイド受容体に対する親和性は低く,その鎮痛効果はCYP2D6により O─脱メチル化された代謝生成物のモルヒネによるμ受容体を介した作用である。コデイ ンの鎮咳作用はコデインそのものの薬理作用である。

4 効能・効果,用法・用量

トラマールは各種がんにおける鎮痛に対して適応承認されているが,トラムセットは非 がん性慢性疼痛や抜歯後の疼痛に対してのみ承認されている。同様にレペタン坐剤は術後 や各種がんにおける鎮痛に対して承認されているが,ノルスパンテープは非がん性の疾患 および状態における鎮痛に対しての適応のみである。同じ成分を含有する薬剤であっても ある。 本章では内服および外用剤のオピオイド鎮痛薬を非医療用麻薬(非麻薬性オピオイド鎮 痛薬)と医療用麻薬(麻薬性オピオイド鎮痛薬)に分けて比較する。



非麻薬性オピオイド鎮痛薬の比較

1 非麻薬性オピオイド鎮痛薬の種類

非麻薬性オピオイド鎮痛薬には麻薬拮抗性鎮痛薬(ペンタゾシン,ブプレノルフィン), および未規制鎮痛薬(トラマドール)がある。コデインリン酸塩散(10%)は医療用麻薬 に分類されるが,WHO方式がん疼痛治療法で弱オピオイドに分類されているため,非麻 薬性オピオイド鎮痛薬に含めた。 トラマドール(トラマールカプセル:日本新薬=ファイザー,トラムセット配合錠:持 田=ヤンセン),コデインリン酸塩散はWHO鎮痛薬リストにおいて弱オピオイド(軽度 ~中等度の強さの痛みに用いる)に分類され,除痛ラダーの第二段階で使用すべき薬剤で ある。ブプレノルフィン(レペタン坐剤=大塚製薬,ノルスパンテープ:ムンディファー マ=久光)は強オピオイド(中等度~高度の強さの痛みに用いる)であり第三段階に分類 される。ペンタゾシン(ソセゴン錠:丸石=サノフィ)は鎮痛効果が弱く,精神症状や有 効限界を有することから使いにくい薬剤である4)との意見もあり,WHO鎮痛薬リストに 記載されていない。 図1 三段階除痛ラダー

2

1

3

がんの痛み からの解放 痛みの残存ないし増強 痛みの残存ないし増強 痛み 中等度~高度の強さの 痛みに用いるオピオイド ± 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬 軽度~中等度の強さの痛み に用いるオピオイド ± 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬

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2 剤形

トラマドール,ペンタゾシンは錠剤またはカプセル剤があるが,いずれの製剤も粉砕後 の安定性が高い5)─7)ため,経管投与も可能である。ブプレノルフィンは肝臓での初回通 過効果が大きいため経口製剤はなく,坐剤,テープ剤が市販されている。消化管機能の低 下などにより,経口および経管投与ができない場合に有用である。コデインは錠剤および 散剤が市販されている。

3 薬理学的作用

①トラマドール

トラマドールはコデイン類似の合成化合物であり,鎮痛効果はμオピオイド受容体に対 する弱い親和性とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を併せ持つことで発 揮される。トラマドールからCYP2D6により代謝されたモノ─O─脱メチル体はμオピオ イド受容体に対して未変化体よりも高い親和性(モルヒネの1/10程度)を有する。

②ペンタゾシン

ペンタゾシンは,κ受容体に対して作動薬,μ受容体に対しては拮抗薬もしくは部分作 動薬として作用する。そのため,鎮痛効果は主にκ受容体を介しているが,一部μ受容体 も介している。ペンタゾシンは鎮痛作用の有効限界を有する。モルヒネが投与されている 患者に対してペンタゾシンを投与するとμオピオイド受容体拮抗作用により離脱症状や鎮 痛効果低下を引き起こす可能性がある。

③ブプレノルフィン

ブプレノルフィンはμ受容体に対して部分作動薬として作用し,κ受容体に対しては拮 抗作用を示す。モルヒネより25~50倍強い鎮痛効力をもち,モルヒネと類似する作用を 示すが,1回量が2~4mgで有効限界に達する。部分作動薬であるブプレノルフィンはμ 受容体に対する親和性がモルヒネよりも強い。大量にモルヒネを投与している患者にブプ レノルフィンを投与すると,競合して総合的な鎮痛効果が弱まる可能性がある。

④コデイン(医療用麻薬)

コデインのオピオイド受容体に対する親和性は低く,その鎮痛効果はCYP2D6により O─脱メチル化された代謝生成物のモルヒネによるμ受容体を介した作用である。コデイ ンの鎮咳作用はコデインそのものの薬理作用である。

4 効能・効果,用法・用量

トラマールは各種がんにおける鎮痛に対して適応承認されているが,トラムセットは非 がん性慢性疼痛や抜歯後の疼痛に対してのみ承認されている。同様にレペタン坐剤は術後 や各種がんにおける鎮痛に対して承認されているが,ノルスパンテープは非がん性の疾患 および状態における鎮痛に対しての適応のみである。同じ成分を含有する薬剤であっても ある。 本章では内服および外用剤のオピオイド鎮痛薬を非医療用麻薬(非麻薬性オピオイド鎮 痛薬)と医療用麻薬(麻薬性オピオイド鎮痛薬)に分けて比較する。



非麻薬性オピオイド鎮痛薬の比較

1 非麻薬性オピオイド鎮痛薬の種類

非麻薬性オピオイド鎮痛薬には麻薬拮抗性鎮痛薬(ペンタゾシン,ブプレノルフィン), および未規制鎮痛薬(トラマドール)がある。コデインリン酸塩散(10%)は医療用麻薬 に分類されるが,WHO方式がん疼痛治療法で弱オピオイドに分類されているため,非麻 薬性オピオイド鎮痛薬に含めた。 トラマドール(トラマールカプセル:日本新薬=ファイザー,トラムセット配合錠:持 田=ヤンセン),コデインリン酸塩散はWHO鎮痛薬リストにおいて弱オピオイド(軽度 ~中等度の強さの痛みに用いる)に分類され,除痛ラダーの第二段階で使用すべき薬剤で ある。ブプレノルフィン(レペタン坐剤=大塚製薬,ノルスパンテープ:ムンディファー マ=久光)は強オピオイド(中等度~高度の強さの痛みに用いる)であり第三段階に分類 される。ペンタゾシン(ソセゴン錠:丸石=サノフィ)は鎮痛効果が弱く,精神症状や有 効限界を有することから使いにくい薬剤である4)との意見もあり,WHO鎮痛薬リストに 記載されていない。 図1 三段階除痛ラダー

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がんの痛み からの解放 痛みの残存ないし増強 痛みの残存ないし増強 痛み 中等度~高度の強さの 痛みに用いるオピオイド ± 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬 軽度~中等度の強さの痛み に用いるオピオイド ± 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬

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127 126 わが国において承認されている効能・効果は異なるため,注意が必要である。コデインリ ン酸塩散・錠はがん,非がんを問わず疼痛時の鎮痛,鎮咳,鎮静,激しい下痢症状の改善 に対して適応がある。モルヒネの効力を1としたときの各薬剤の力価を比較すると,トラ マドールは1/5,ペンタゾシンは1/2~1/4,ブプレノルフィンは25~50倍,コデインは 1/10程度とされており,比較一覧表に示した各製剤の用量の違いは力価の違いによるも のと考えられる。

5 薬物動態

いずれの薬剤も未変化体尿中排泄率は20%未満と低く,腎機能低下時もほとんど影響 を受けない。コデイン,トラマドールの代謝物であるモルヒネ,モノ─O─脱メチル体は 薬理活性を有するが,さらに代謝されるため腎機能低下時も影響は小さいと考えられる。 すなわち,いずれの薬剤も主なクリアランスは肝臓であるため,肝障害患者において慎重 な投与が必要である。特にトラマールを肝障害患者に経口投与した場合,健康成人に比べ て血中半減期(t1/2)は2.6倍(健康成人5.1時間,肝障害患者13.3時間)延長,全身クリ アランス(CL/F)は半分以下(健康成人9.6mg/min/kg,肝障害患者4.2mg/min/kg)に 低下するとの海外の報告があり,注意が必要である。 トラマドールは主にCYP2D6およびCYP3A4で代謝され,O─脱メチル体およびN─脱 メチル体に変換される。カルバマゼピンはCYP3A4などを誘導するため同時あるいは前 投与でトラマドールの鎮痛効果を下げ,作用時間を短縮させる可能性があり,併用注意で ある。 ブプレノルフィンはCYP3A4により活性作用のないノルブプレノルフィンに代謝され るため,CYP3A4を阻害(イトラコナゾール,エリスロマイシンなど)または誘導(フェ ノバルビタール,リファンピシンなど)する薬剤とは併用注意である。 コデインはオピオイド受容体への親和性は低い。しかし,その約10%がCYP2D6によ り代謝されモルヒネとなり,鎮痛効果をもたらす。日本人の約0.7%は,CYP2D6活性が 低く(poor metabolizer)モルヒネがほとんど生成されないため,コデインの鎮痛効果が 発揮されない。

6 副作用

比較一覧表における副作用の頻度は,異なる臨床試験の結果であり,単純に比較するこ とは困難である。いずれの薬剤においても,悪心,嘔吐,傾眠は頻度の高い副作用であ る。一般に,トラマドールは便秘,悪心,嘔吐の発生頻度は低いため,使用しやすい薬剤 とされている。しかし,中枢神経のセロトニン蓄積によるセロトニン症候群や痙攣発作を 引き起こすことがあり,痙攣発作の素因をもつ患者ではその発作を増悪させる可能性があ る。ペンタゾシンは不安,幻覚などの精神症状が発現することがあるとされている。



麻薬性オピオイド鎮痛薬の比較

1 麻薬性オピオイドの種類

本項において比較する10製剤の成分はモルヒネ,オキシコドン,フェンタニルのいず れかである。これらの製剤を選択する際は,成分の特性を理解することが重要である。 また,モルヒネには徐放錠,徐放細粒,液剤,坐剤,注射剤などさまざまな剤形の製剤 が市販されている。一方,フェンタニルは消化管吸収における初回通過効果が高いため, 市販されている製剤は注射剤と貼付剤および口腔粘膜吸収剤である。

2 剤形

モルヒネ製剤は使用できる剤形が多く,嚥下障害や介護の必要な場合など患者の病態や 環境を考慮した選択が可能である。MSコンチン錠(塩野義),モルペス細粒(藤本)は モルヒネ硫酸塩水和物,オプソ内服液およびアンペック坐剤(大日本住友)はモルヒネ塩 酸塩水和物であるが,硫酸塩と塩酸塩の違いは合成方法であり,鎮痛効果や副作用,薬物 動態に差はない8)。モルペス細粒は,錠剤やカプセルを飲み込めない患者に有用である。 また粒子径は小さく,8 Fr以上の経管チューブであれば経管投与が可能である9) フェンタニルは分子量が小さく脂溶性が高いため経皮吸収型の貼付剤(デュロテップ MTパッチ:ヤンセン,フェントステープ:久光=協和発酵キリン)および口腔粘膜吸収 剤(アブストラル舌下錠:協和発酵キリン=久光,イーフェンバッカル錠:大鵬薬品)が あり,経口投与や注射ルートの確保が困難な患者へも投与が可能である。 モルヒネ,オキシコドンにはそれぞれ安定した血中濃度を維持する目的で定時服用する 徐放製剤〔モルヒネ:MSコンチン錠およびモルペス細粒,オキシコドン:オキシコンチ ン錠(塩野義)〕と至的投与量設定(タイトレーション)や突出痛などに頓用(レスキュー ドーズ)で用いる速放性製剤〔モルヒネ:オプソ内服液,オキシコドン:オキノーム散(塩 野義)〕がある。レスキュードーズは基本となる徐放製剤の1日投与量の1/6程度を1回量 として,速放性製剤を用いる。タイトレーションにレスキュードーズを用いる場合は,基 本となる徐放製剤の1日投与量にレスキュードーズの1日投与量を上乗せして,翌日の徐 放製剤の投与量を増やすのが一般的である。また,タイトレーションにより除痛の安定し ている患者においても19~95%に一過性の痛みの増悪や突出痛が出現する。レスキュー に用いられるオプソ内服液,オキノーム散の最高血中濃度到達時間(Tmax)はそれぞれ0.9 時間,1.9時間であり,作用発現はオプソのほうが早いと考えられる。一方,突出痛は, 発生からピークに達するまでの時間が3分程度と短く,平均持続時間は15~30分で,90% は1時間以内に終息する痛みである。この突出痛を適応として,2013年にフェンタニルの 速放製剤(rapid onset opioids:ROO)である舌下錠およびバッカル錠が発売された。そ れぞれのTmaxは0.7~0.9時間とそれほど速くないが,口腔粘膜からの吸収のため,血中濃

度の立ち上がりは速く,突出痛に有効である。ただし,突出痛のみが適応であり,従来か らの速放性経口製剤とは,使用方法が異なる。各製剤の添付文書を遵守して使用する必要 がある。

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わが国において承認されている効能・効果は異なるため,注意が必要である。コデインリ ン酸塩散・錠はがん,非がんを問わず疼痛時の鎮痛,鎮咳,鎮静,激しい下痢症状の改善 に対して適応がある。モルヒネの効力を1としたときの各薬剤の力価を比較すると,トラ マドールは1/5,ペンタゾシンは1/2~1/4,ブプレノルフィンは25~50倍,コデインは 1/10程度とされており,比較一覧表に示した各製剤の用量の違いは力価の違いによるも のと考えられる。

5 薬物動態

いずれの薬剤も未変化体尿中排泄率は20%未満と低く,腎機能低下時もほとんど影響 を受けない。コデイン,トラマドールの代謝物であるモルヒネ,モノ─O─脱メチル体は 薬理活性を有するが,さらに代謝されるため腎機能低下時も影響は小さいと考えられる。 すなわち,いずれの薬剤も主なクリアランスは肝臓であるため,肝障害患者において慎重 な投与が必要である。特にトラマールを肝障害患者に経口投与した場合,健康成人に比べ て血中半減期(t1/2)は2.6倍(健康成人5.1時間,肝障害患者13.3時間)延長,全身クリ アランス(CL/F)は半分以下(健康成人9.6mg/min/kg,肝障害患者4.2mg/min/kg)に 低下するとの海外の報告があり,注意が必要である。 トラマドールは主にCYP2D6およびCYP3A4で代謝され,O─脱メチル体およびN─脱 メチル体に変換される。カルバマゼピンはCYP3A4などを誘導するため同時あるいは前 投与でトラマドールの鎮痛効果を下げ,作用時間を短縮させる可能性があり,併用注意で ある。 ブプレノルフィンはCYP3A4により活性作用のないノルブプレノルフィンに代謝され るため,CYP3A4を阻害(イトラコナゾール,エリスロマイシンなど)または誘導(フェ ノバルビタール,リファンピシンなど)する薬剤とは併用注意である。 コデインはオピオイド受容体への親和性は低い。しかし,その約10%がCYP2D6によ り代謝されモルヒネとなり,鎮痛効果をもたらす。日本人の約0.7%は,CYP2D6活性が 低く(poor metabolizer)モルヒネがほとんど生成されないため,コデインの鎮痛効果が 発揮されない。

6 副作用

比較一覧表における副作用の頻度は,異なる臨床試験の結果であり,単純に比較するこ とは困難である。いずれの薬剤においても,悪心,嘔吐,傾眠は頻度の高い副作用であ る。一般に,トラマドールは便秘,悪心,嘔吐の発生頻度は低いため,使用しやすい薬剤 とされている。しかし,中枢神経のセロトニン蓄積によるセロトニン症候群や痙攣発作を 引き起こすことがあり,痙攣発作の素因をもつ患者ではその発作を増悪させる可能性があ る。ペンタゾシンは不安,幻覚などの精神症状が発現することがあるとされている。



麻薬性オピオイド鎮痛薬の比較

1 麻薬性オピオイドの種類

本項において比較する10製剤の成分はモルヒネ,オキシコドン,フェンタニルのいず れかである。これらの製剤を選択する際は,成分の特性を理解することが重要である。 また,モルヒネには徐放錠,徐放細粒,液剤,坐剤,注射剤などさまざまな剤形の製剤 が市販されている。一方,フェンタニルは消化管吸収における初回通過効果が高いため, 市販されている製剤は注射剤と貼付剤および口腔粘膜吸収剤である。

2 剤形

モルヒネ製剤は使用できる剤形が多く,嚥下障害や介護の必要な場合など患者の病態や 環境を考慮した選択が可能である。MSコンチン錠(塩野義),モルペス細粒(藤本)は モルヒネ硫酸塩水和物,オプソ内服液およびアンペック坐剤(大日本住友)はモルヒネ塩 酸塩水和物であるが,硫酸塩と塩酸塩の違いは合成方法であり,鎮痛効果や副作用,薬物 動態に差はない8)。モルペス細粒は,錠剤やカプセルを飲み込めない患者に有用である。 また粒子径は小さく,8 Fr以上の経管チューブであれば経管投与が可能である9) フェンタニルは分子量が小さく脂溶性が高いため経皮吸収型の貼付剤(デュロテップ MTパッチ:ヤンセン,フェントステープ:久光=協和発酵キリン)および口腔粘膜吸収 剤(アブストラル舌下錠:協和発酵キリン=久光,イーフェンバッカル錠:大鵬薬品)が あり,経口投与や注射ルートの確保が困難な患者へも投与が可能である。 モルヒネ,オキシコドンにはそれぞれ安定した血中濃度を維持する目的で定時服用する 徐放製剤〔モルヒネ:MSコンチン錠およびモルペス細粒,オキシコドン:オキシコンチ ン錠(塩野義)〕と至的投与量設定(タイトレーション)や突出痛などに頓用(レスキュー ドーズ)で用いる速放性製剤〔モルヒネ:オプソ内服液,オキシコドン:オキノーム散(塩 野義)〕がある。レスキュードーズは基本となる徐放製剤の1日投与量の1/6程度を1回量 として,速放性製剤を用いる。タイトレーションにレスキュードーズを用いる場合は,基 本となる徐放製剤の1日投与量にレスキュードーズの1日投与量を上乗せして,翌日の徐 放製剤の投与量を増やすのが一般的である。また,タイトレーションにより除痛の安定し ている患者においても19~95%に一過性の痛みの増悪や突出痛が出現する。レスキュー に用いられるオプソ内服液,オキノーム散の最高血中濃度到達時間(Tmax)はそれぞれ0.9 時間,1.9時間であり,作用発現はオプソのほうが早いと考えられる。一方,突出痛は, 発生からピークに達するまでの時間が3分程度と短く,平均持続時間は15~30分で,90% は1時間以内に終息する痛みである。この突出痛を適応として,2013年にフェンタニルの 速放製剤(rapid onset opioids:ROO)である舌下錠およびバッカル錠が発売された。そ れぞれのTmaxは0.7~0.9時間とそれほど速くないが,口腔粘膜からの吸収のため,血中濃

度の立ち上がりは速く,突出痛に有効である。ただし,突出痛のみが適応であり,従来か らの速放性経口製剤とは,使用方法が異なる。各製剤の添付文書を遵守して使用する必要 がある。

(9)

129 128

3 薬理学的作用

モルヒネ,オキシコドン,フェンタニルにおけるオピオイド受容体への親和性について 3種を同時に比較した報告はない。表4に示したオピオイド受容体に対する親和性の阻害 試験では,オキシコドンは各オピオイド受容体に対する阻害率がモルヒネに比べて小さ く,受容体への親和性が低いことが理解できる。また,モルヒネとフェンタニルの比較 (表5)において,フェンタニルはμ受容体への親和性が高く,κ受容体への親和性が低 い。すなわち,フェンタニルはモルヒネと比較して嫌悪感や精神症状などの副作用が起こ りにくいものと考えられる。

4 薬物動態

10) モルヒネの肝クリアランスは1,750mL/minと大きく,肝血流量に依存する。すなわち, 持続静脈内投与時には肝臓の薬物消失能による影響はほとんどなく,肝硬変末期,門脈大 静脈シャント,心不全などによる肝血流量の低下によるクリアランスの低下に注意が必要 である。 経口投与時はバイオアベイラビリティが小さく,その値は肝臓の薬物消失能の影響を受 ける可能性がある。すなわち,経口投与時は肝実質細胞の変性(AST・ALTの上昇など) などによる肝機能低下に伴うバイオアベイラビリティの増大にも注意が必要である。 また,モルヒネの代謝物であるモルヒネ─3─グルクロナイド(M─3─G)はオピオイド 受容体への親和性はほとんどないが,モルヒネ─6─グルクロナイド(M─6─G)は親和性 があり,鎮痛作用や鎮静作用を有する。いずれの代謝物も腎臓より排泄されるため,腎機 能低下時には代謝物の蓄積による傾眠傾向に注意する必要がある。 オキシコドンのクリアランスはモルヒネより小さいものの,肝血流量に依存すると考え られるが,静脈内投与時の報告が少なく不明な点もある。オキシコドン徐放錠のバイオア ベイラビリティは健康成人において60%であるが,がん患者では87%である。バイオア ベイラビリティは肝臓の薬物消失能の影響を受けるため,がん患者において肝機能が低下 していたものと考えられる。 オキシコドンの代謝物はノルオキシコドン,オキシモルフォンなどが知られている。主 代謝物であるノルオキシコドンに有意な活性はなく,オキシモルフォンはオキシコドンの 約14倍の鎮痛効果があるがさらに代謝されるため,その血中濃度は極めて低い。代謝物 の排泄経路である腎機能の低下時においても影響はほとんどない11) フェンタニルは,CYP3A4阻害作用の非常に強いリトナビルとの併用により血中濃度曲 線下面積(AUC)が増加し,t1/2が延長したという報告12)があるため,リトナビルと併用 注意である。しかし,フェンタニルのクリアランスは大きく,その決定因子は肝血流速度 であるため,肝実質細胞(肝薬物代謝酵素)の活性の変化がフェンタニルの平均血中濃度 に与える影響は小さい。そのため,CYP3A4誘導剤および阻害剤との併用が臨床上問題と なる場合は比較的少ないとも考えられる。 また,フェンタニルには活性代謝物がほとんどなく,腎機能低下時においても蓄積によ る有害事象は問題にならない。蛋白結合率は80%以上であり,血漿蛋白結合依存性であ ると考えられる。このため,血漿アルブミン濃度やα1─酸性蛋白濃度が低下した場合は フェンタニルの遊離型濃度が上昇する可能性があるため注意が必要である。

5 効能・効果,用法・用量

①効能・効果

いずれの薬剤も,効能・効果は「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」 または「激しい疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」である。ただし,WHO疼痛ラダーに おいてオキシコドンは,モルヒネやフェンタニルと同様に第三段階に使用する強オピオイ ド鎮痛薬であるが,少量の投与により第二段階の弱オピオイド鎮痛薬としての役割も果た すとされている13)。したがって,オキシコンチン錠,オキノーム細粒はより早期からの 使用が可能である。 近年,オキシコドンは神経障害性疼痛に効果があるともいわれているが14),15),臨床に おける明確なエビデンスはなく,今後の検討が期待される。デュロテップMTパッチは 「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」に加え,「中等度から高度の慢性疼 痛における鎮痛」に対して効能・効果が認められているが,慢性疼痛患者に処方するには, 厚生労働省通知により「慢性疼痛治療に関するトレーニング(e─learning)」の受講と, そこで発行される「確認書」が必要となる。

②用法・用量

MSコンチン錠,モルペス細粒の添付文書上の用量は1日20~120mg,オキシコンチン 錠の用量は1日10~80mgと定められているが,いずれの薬剤も有効限界(ceiling effect) はなく,患者の状態により添付文書用量を超えて投与される場合もある。 フェントステープは1日1回貼付製剤であるが,10回反復貼付したときの血清中フェン タニル濃度は図2に示すように5日目で定常状態に達し,添付文書で増量の目安としてい 表4 オピオイド受容体(μ,δ,κ)に対する結合親和性の阻害試験 濃度 μ δ κ [3H]─DAGO 結合阻害率(%) [3H]─DADALE 結合阻害率(%) [3H]─U69593 結合阻害率(%) オキシコドン 10 ─9 10─7 10─5 3.8 44.8 97.5 25.1 47.3 89.5 ─4.1 22.3 97 モルヒネ 10 ─9 10─7 10─5 34.1 96.7 100.1 45.3 72.3 100.3 ─3.5 49.2 87.6 オピオイド受容体(μ,δ,κ)に対する結合親和性の阻害試験。阻害率が大きいほど,受容体へ の親和性が高いことを示す 表5 フェンタニルおよびモルヒネのオピオイド受容体に対する親和性 μ δ κ

Ki値(nmol/L) Ki値(nmol/L) Ki値(nmol/L)

フェンタニル 1.02±0.05 1,530±160 1,080±70

塩酸モルヒネ 2.40±0.22 2,280±370 427±43

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3 薬理学的作用

モルヒネ,オキシコドン,フェンタニルにおけるオピオイド受容体への親和性について 3種を同時に比較した報告はない。表4に示したオピオイド受容体に対する親和性の阻害 試験では,オキシコドンは各オピオイド受容体に対する阻害率がモルヒネに比べて小さ く,受容体への親和性が低いことが理解できる。また,モルヒネとフェンタニルの比較 (表5)において,フェンタニルはμ受容体への親和性が高く,κ受容体への親和性が低 い。すなわち,フェンタニルはモルヒネと比較して嫌悪感や精神症状などの副作用が起こ りにくいものと考えられる。

4 薬物動態

10) モルヒネの肝クリアランスは1,750mL/minと大きく,肝血流量に依存する。すなわち, 持続静脈内投与時には肝臓の薬物消失能による影響はほとんどなく,肝硬変末期,門脈大 静脈シャント,心不全などによる肝血流量の低下によるクリアランスの低下に注意が必要 である。 経口投与時はバイオアベイラビリティが小さく,その値は肝臓の薬物消失能の影響を受 ける可能性がある。すなわち,経口投与時は肝実質細胞の変性(AST・ALTの上昇など) などによる肝機能低下に伴うバイオアベイラビリティの増大にも注意が必要である。 また,モルヒネの代謝物であるモルヒネ─3─グルクロナイド(M─3─G)はオピオイド 受容体への親和性はほとんどないが,モルヒネ─6─グルクロナイド(M─6─G)は親和性 があり,鎮痛作用や鎮静作用を有する。いずれの代謝物も腎臓より排泄されるため,腎機 能低下時には代謝物の蓄積による傾眠傾向に注意する必要がある。 オキシコドンのクリアランスはモルヒネより小さいものの,肝血流量に依存すると考え られるが,静脈内投与時の報告が少なく不明な点もある。オキシコドン徐放錠のバイオア ベイラビリティは健康成人において60%であるが,がん患者では87%である。バイオア ベイラビリティは肝臓の薬物消失能の影響を受けるため,がん患者において肝機能が低下 していたものと考えられる。 オキシコドンの代謝物はノルオキシコドン,オキシモルフォンなどが知られている。主 代謝物であるノルオキシコドンに有意な活性はなく,オキシモルフォンはオキシコドンの 約14倍の鎮痛効果があるがさらに代謝されるため,その血中濃度は極めて低い。代謝物 の排泄経路である腎機能の低下時においても影響はほとんどない11) フェンタニルは,CYP3A4阻害作用の非常に強いリトナビルとの併用により血中濃度曲 線下面積(AUC)が増加し,t1/2が延長したという報告12)があるため,リトナビルと併用 注意である。しかし,フェンタニルのクリアランスは大きく,その決定因子は肝血流速度 であるため,肝実質細胞(肝薬物代謝酵素)の活性の変化がフェンタニルの平均血中濃度 に与える影響は小さい。そのため,CYP3A4誘導剤および阻害剤との併用が臨床上問題と なる場合は比較的少ないとも考えられる。 また,フェンタニルには活性代謝物がほとんどなく,腎機能低下時においても蓄積によ る有害事象は問題にならない。蛋白結合率は80%以上であり,血漿蛋白結合依存性であ ると考えられる。このため,血漿アルブミン濃度やα1─酸性蛋白濃度が低下した場合は フェンタニルの遊離型濃度が上昇する可能性があるため注意が必要である。

5 効能・効果,用法・用量

①効能・効果

いずれの薬剤も,効能・効果は「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」 または「激しい疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」である。ただし,WHO疼痛ラダーに おいてオキシコドンは,モルヒネやフェンタニルと同様に第三段階に使用する強オピオイ ド鎮痛薬であるが,少量の投与により第二段階の弱オピオイド鎮痛薬としての役割も果た すとされている13)。したがって,オキシコンチン錠,オキノーム細粒はより早期からの 使用が可能である。 近年,オキシコドンは神経障害性疼痛に効果があるともいわれているが14),15),臨床に おける明確なエビデンスはなく,今後の検討が期待される。デュロテップMTパッチは 「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」に加え,「中等度から高度の慢性疼 痛における鎮痛」に対して効能・効果が認められているが,慢性疼痛患者に処方するには, 厚生労働省通知により「慢性疼痛治療に関するトレーニング(e─learning)」の受講と, そこで発行される「確認書」が必要となる。

②用法・用量

MSコンチン錠,モルペス細粒の添付文書上の用量は1日20~120mg,オキシコンチン 錠の用量は1日10~80mgと定められているが,いずれの薬剤も有効限界(ceiling effect) はなく,患者の状態により添付文書用量を超えて投与される場合もある。 フェントステープは1日1回貼付製剤であるが,10回反復貼付したときの血清中フェン タニル濃度は図2に示すように5日目で定常状態に達し,添付文書で増量の目安としてい 表4 オピオイド受容体(μ,δ,κ)に対する結合親和性の阻害試験 濃度 μ δ κ [3H]─DAGO 結合阻害率(%) [3H]─DADALE 結合阻害率(%) [3H]─U69593 結合阻害率(%) オキシコドン 10 ─9 10─7 10─5 3.8 44.8 97.5 25.1 47.3 89.5 ─4.1 22.3 97 モルヒネ 10 ─9 10─7 10─5 34.1 96.7 100.1 45.3 72.3 100.3 ─3.5 49.2 87.6 オピオイド受容体(μ,δ,κ)に対する結合親和性の阻害試験。阻害率が大きいほど,受容体へ の親和性が高いことを示す 表5 フェンタニルおよびモルヒネのオピオイド受容体に対する親和性 μ δ κ

Ki値(nmol/L) Ki値(nmol/L) Ki値(nmol/L)

フェンタニル 1.02±0.05 1,530±160 1,080±70

塩酸モルヒネ 2.40±0.22 2,280±370 427±43

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131 130 る2日目(48時間後)では定常状態のおよそ6割程度の濃度にしか達していない。このた め,短期間の増量は慎重に実施すべきである。

③投与量換算比

オキシコンチン錠の添付文書では,経口モルヒネ製剤(MSコンチン錠,モルペス細粒 など)から切り替える場合に,オキシコンチン錠の1日用量の目安を経口モルヒネ製剤1 日投与量の2/3量としている。これはバイオアベイラビリティ(モルヒネ22.4%,オキシ コドン60~87%)の違いが大きく影響しているからであり,静脈投与の場合は経口投与 と換算比が異なる(モルヒネ注射剤:オキシコドン注射剤=1:1.25)ため注意が必要で ある。 フェンタニル貼付剤には3日間貼付製剤のデュロテップMTパッチと1日1回貼付製剤 のフェントステープ,ワンデュロがあり,いずれも,他のオピオイド鎮痛薬からの切り替 えが必要である。切り替えの際は添付文書の換算表(表6,7)を用いて初回投与量を決 定する。デュロテップMTパッチの換算表において経口モルヒネ製剤90mgに対してデュ ロテップMTパッチ4.2mgへ切り替える(経口モルヒネ:フェンタニル=1:150)ものと している。しかし,この換算値を用いた場合,鎮痛効果が十分に得られない症例を経験す ることがある。添付文書では安全性を重視した換算値を提示しているが,鎮痛効果を重視 した換算値(経口モルヒネ:フェンタニル=1:100)を用いている施設が多い1)。フェン トステープは他のオピオイド製剤からの切り替えが必要であるという点においてデュロ テップMTパッチと同様だが,添付文書の換算値は(経口モルヒネ:フェンタニル=1: 100)を用いている。いずれの場合にせよ,経口モルヒネ製剤の薬物動態はバイオアベイ ラビリティの個体差が大きく,切り替え時の投与量は,換算表のみに頼らず患者の症状・ 訴えを十分にモニタリングして調節することが重要である。

6 安全性情報

モルヒネ製剤は「重篤な肝障害のある患者」への投与は禁忌であるが,オキシコドン製 剤やフェンタニル貼付剤の添付文書にその記載はない。また,「麻痺性イレウスの患者」 が投与禁忌なのは,オキシコドン製剤のみであるが,この点についても明確な根拠を見出 せなかった。 比較一覧表に,インタビューフォームに記載された副作用の発生頻度を記載したが,プ ロトコルの異なる臨床試験であり,比較には注意が必要である。さらに,モルヒネ徐放錠 の副作用は1997年に医薬品の臨床試験の実施基準(good clinical practice;GCP)が制定 される以前の臨床試験であり,オキシコドン徐放錠やフェンタニル貼付剤との比較は困難 である。オピオイドの主な副作用は悪心,嘔吐,便秘,眠気である。便秘は,μ受容体の サブタイプ(μ1,μ2)のうち主に中枢・腸管に存在するμ2受容体へオピオイドが作用 することにより生じることが知られている。フェンタニルはμ1受容体に対する親和性が 高く,μ2受容体に対する親和性が低いため便秘が生じにくいことが報告されている1)。 図2 フェントステープがん性疼痛患者における反復貼付時の薬物動態 血清中フェンタニル濃度(平均値+標準偏差)推移 10 回反復貼付 時間(hr) 2mg(n=7) 4mg(n=5) 血清中フェンタニル濃度 (pg/mL) 0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240 264 288 312 336 360 2500 2000 1500 1000 500 0 表6 デュロテップMTパッチ換算表(オピオイド1日使用量に基づく推奨貼付用量) デュロテップMTパッチ貼付用量 (定常状態の推定平均吸収量) 2.1mg (0.3mg/日) 4.2mg (0.6mg/日) 8.4mg (1.2mg/日) 12.6mg (1.8mg/日) オピオイド鎮痛薬1日使用量 ↑ ↑ ↑ ↑ モルヒネ 経口剤(mg/日) <45 45~134 135~224 225~314 坐剤(mg/日) <30 30~69 70~112 113~157 注射剤(mg/日) <15 15~44 45~74 75~104 オキシコドン経口剤(mg/日) <30 30~89 90~149 150~209 フェンタニル注射剤(mg/日) <0.3 0.3~0.8 0.9~1.4 1.5~2.0 表7 フェントステープ換算表(オピオイド1日使用量に基づく推奨貼付用量) フェントステープ貼付用量 (定常状態の推定平均吸収量) (0.3mg/日)1mg (0.6mg/日)2mg (1.2mg/日)4mg (1.8mg/日)6mg オピオイド鎮痛薬1日使用量 ↑ ↑ ↑ ↑ モルヒネ 経口剤(mg/日) ≦29 30~89 90~149 150~209 坐剤(mg/日) ≦10 20~40 50~70 80~100 注射剤(mg/日) ≦9 10~29 30~49 50~69 オキシコドン経口剤(mg/日) ≦19 20~59 60~99 100~139 オピオイド製剤の使用には,その薬物の特性や製剤学的な特徴を理解し,患者の状況 に合致した製剤を選択する必要がある。 薬剤選択時はコ コ に 注 目

(12)

る2日目(48時間後)では定常状態のおよそ6割程度の濃度にしか達していない。このた め,短期間の増量は慎重に実施すべきである。

③投与量換算比

オキシコンチン錠の添付文書では,経口モルヒネ製剤(MSコンチン錠,モルペス細粒 など)から切り替える場合に,オキシコンチン錠の1日用量の目安を経口モルヒネ製剤1 日投与量の2/3量としている。これはバイオアベイラビリティ(モルヒネ22.4%,オキシ コドン60~87%)の違いが大きく影響しているからであり,静脈投与の場合は経口投与 と換算比が異なる(モルヒネ注射剤:オキシコドン注射剤=1:1.25)ため注意が必要で ある。 フェンタニル貼付剤には3日間貼付製剤のデュロテップMTパッチと1日1回貼付製剤 のフェントステープ,ワンデュロがあり,いずれも,他のオピオイド鎮痛薬からの切り替 えが必要である。切り替えの際は添付文書の換算表(表6,7)を用いて初回投与量を決 定する。デュロテップMTパッチの換算表において経口モルヒネ製剤90mgに対してデュ ロテップMTパッチ4.2mgへ切り替える(経口モルヒネ:フェンタニル=1:150)ものと している。しかし,この換算値を用いた場合,鎮痛効果が十分に得られない症例を経験す ることがある。添付文書では安全性を重視した換算値を提示しているが,鎮痛効果を重視 した換算値(経口モルヒネ:フェンタニル=1:100)を用いている施設が多い1)。フェン トステープは他のオピオイド製剤からの切り替えが必要であるという点においてデュロ テップMTパッチと同様だが,添付文書の換算値は(経口モルヒネ:フェンタニル=1: 100)を用いている。いずれの場合にせよ,経口モルヒネ製剤の薬物動態はバイオアベイ ラビリティの個体差が大きく,切り替え時の投与量は,換算表のみに頼らず患者の症状・ 訴えを十分にモニタリングして調節することが重要である。

6 安全性情報

モルヒネ製剤は「重篤な肝障害のある患者」への投与は禁忌であるが,オキシコドン製 剤やフェンタニル貼付剤の添付文書にその記載はない。また,「麻痺性イレウスの患者」 が投与禁忌なのは,オキシコドン製剤のみであるが,この点についても明確な根拠を見出 せなかった。 比較一覧表に,インタビューフォームに記載された副作用の発生頻度を記載したが,プ ロトコルの異なる臨床試験であり,比較には注意が必要である。さらに,モルヒネ徐放錠 の副作用は1997年に医薬品の臨床試験の実施基準(good clinical practice;GCP)が制定 される以前の臨床試験であり,オキシコドン徐放錠やフェンタニル貼付剤との比較は困難 である。オピオイドの主な副作用は悪心,嘔吐,便秘,眠気である。便秘は,μ受容体の サブタイプ(μ1,μ2)のうち主に中枢・腸管に存在するμ2受容体へオピオイドが作用 することにより生じることが知られている。フェンタニルはμ1受容体に対する親和性が 高く,μ2受容体に対する親和性が低いため便秘が生じにくいことが報告されている1)。 図2 フェントステープがん性疼痛患者における反復貼付時の薬物動態 血清中フェンタニル濃度(平均値+標準偏差)推移 10 回反復貼付 時間(hr) 2mg(n=7) 4mg(n=5) 血清中フェンタニル濃度 (pg/mL) 0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240 264 288 312 336 360 2500 2000 1500 1000 500 0 表6 デュロテップMTパッチ換算表(オピオイド1日使用量に基づく推奨貼付用量) デュロテップMTパッチ貼付用量 (定常状態の推定平均吸収量) 2.1mg (0.3mg/日) 4.2mg (0.6mg/日) 8.4mg (1.2mg/日) 12.6mg (1.8mg/日) オピオイド鎮痛薬1日使用量 ↑ ↑ ↑ ↑ モルヒネ 経口剤(mg/日) <45 45~134 135~224 225~314 坐剤(mg/日) <30 30~69 70~112 113~157 注射剤(mg/日) <15 15~44 45~74 75~104 オキシコドン経口剤(mg/日) <30 30~89 90~149 150~209 フェンタニル注射剤(mg/日) <0.3 0.3~0.8 0.9~1.4 1.5~2.0 表7 フェントステープ換算表(オピオイド1日使用量に基づく推奨貼付用量) フェントステープ貼付用量 (定常状態の推定平均吸収量) (0.3mg/日)1mg (0.6mg/日)2mg (1.2mg/日)4mg (1.8mg/日)6mg オピオイド鎮痛薬1日使用量 ↑ ↑ ↑ ↑ モルヒネ 経口剤(mg/日) ≦29 30~89 90~149 150~209 坐剤(mg/日) ≦10 20~40 50~70 80~100 注射剤(mg/日) ≦9 10~29 30~49 50~69 オキシコドン経口剤(mg/日) ≦19 20~59 60~99 100~139 オピオイド製剤の使用には,その薬物の特性や製剤学的な特徴を理解し,患者の状況 に合致した製剤を選択する必要がある。 薬剤選択時はコ コ に 注 目

(13)

133 132 一般名 トラマドール塩酸塩 トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン 塩酸ペンタゾシン ブプレノルフィン塩酸塩 ブプレノルフィン コデインリン酸塩水和物 商品名 規格 (製薬会社) トラマールカプセル カ25mg,50mg (日本新薬=ファイザー) トラムセット配合錠 錠(トラマドール塩酸塩37.5mg, アセトアミノフェン325mg)/錠 (持田=ヤンセン) ソセゴン錠 錠25mg (丸石=サノフィ) レペタン坐剤 坐0.2mg,0.4mg (大塚製薬) ノルスパンテープ 貼5mg,10mg,20mg (ムンディファーマ=久光) コデインリン酸塩散・錠 散10mg/g,100mg/g 錠5mg,20mg (各社) 特徴 ・μ受容体への親和性とセロトニ ン・ノルアドレナリン再取り込 み阻害作用を併せもつ ・経口モルヒネの約1/5の鎮痛効 力 ・トラマドール塩酸塩とアセトア ミノフェンの配合錠 ・がん性疼痛への適応はない ・μ受容体部分拮抗薬 ・オピオイド投与中の併用で,離 脱症状や鎮痛効果低下の可能性 あり ・モルヒネより25~50倍強い鎮痛効力を もつ ・μδκ受容体の部分拮抗薬 ・週1回貼付で安定した血中濃度を維持で きる ・非がん性の疾患の鎮痛に対し承認されて いる ・モルヒネの1/10の鎮痛効力(約10%が 代謝されモルヒネが生成する) ・鎮咳作用を有する 効能・効果 右記疾患等に おける鎮痛 各種がん(非オピオイド鎮痛薬で 治療困難な場合) ①非がん性疼痛,②抜歯後の疼痛 (ともに,非オピオイド鎮痛薬で治 療困難な場合) 各種がん ①術後,②各種がん 変形性関節症,腰痛症に伴う慢性疼痛(非オピオイド鎮痛薬で治療困難な場合) 疼痛 その他 × × × × × 各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静,激し い下痢症状の改善 用法・用量 1日100~300mg,分4。ただし1回100mg,1日400mgを超えない ①1回1錠,1日4回,投 与間隔は4 時間以上あける。1回2錠,1日8 錠を超えて投与しない。空腹時の 投与は避けることが望ましい ②1回2錠。追加投与は投与間隔を4 時間以上あけ,1回2錠,1日8錠 を超えて投与しない。空腹時の投 与は避けることが望ましい 1回25~50mg。追加投与する場 合は3~5時間の間隔をおく ①1回0.4mgを直腸内。その後必要に応じ て約8~12時間毎に反復 ②1回0.2mgまたは0.4mgを直腸内。その 後必要に応じて約8~12時間毎に反復。 低用量より投与開始が望ましい 前胸部・上背部・上腕外部・側胸部に貼付, 7日毎に貼り替え。初回貼付:5mg。20mg を超えない 1回20mg,1日3回 警告 × あり*1 本剤を注射しない × × × 禁忌 成分過敏症 本剤 本剤 ペンタゾシン,ナロキソン 本剤 本剤 アヘンアルカロイド 薬剤等による急性 中毒 アルコール,睡眠薬,鎮痛薬, オピオイド鎮痛薬,向精神薬 アルコール,睡眠薬,鎮痛薬, オピオイド鎮痛薬,向精神薬 × × × アルコール 重篤な呼吸抑制状 態,呼吸機能障害 × × ○ ○ ○ ○ 重篤な肝障害 × ○ × ○ × ○ MAO阻害薬を投 与中または投与中 止後14日以内 ○ ○ × × × × 治療により十分な 管理がされていな いてんかん ○ ○ × × × × その他 × 消化性潰瘍,重篤な血液の異常, 重篤な腎障害,重篤な心機能不全, アスピリン喘息(非ステロイド製 剤による喘息発作の誘発) 頭部傷害,頭蓋内圧上昇,全身状 態が著しく悪化 頭部傷害・脳の病変による意識混濁,頭蓋 内圧上昇,妊婦・妊娠の可能性,直腸炎, 直腸出血または著明な痔疾 × 気管支喘息発作中,慢性肺疾患に続発する 心不全,痙攣状態(てんかん重積症,破傷 風,ストリキニーネ中毒),出血性大腸炎 原則禁忌 × × × × × 細菌性下痢 麻薬性オピオイドの比較は136~139ページ

*1 重篤な肝障害発現のおそれについての注意,および,アセトアミノフェン1,500mg/日を超える高用量での長期投与時における 肝機能確認などに関する記載。また,トラマドールまたはアセトアミノフェンを含む他剤との併用による過量投与に関する記 載。添付文書参照。

比較一覧表

9-1

非麻薬性オピオイド

(14)

一般名 トラマドール塩酸塩 トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン 塩酸ペンタゾシン ブプレノルフィン塩酸塩 ブプレノルフィン コデインリン酸塩水和物 商品名 規格 (製薬会社) トラマールカプセル カ25mg,50mg (日本新薬=ファイザー) トラムセット配合錠 錠(トラマドール塩酸塩37.5mg, アセトアミノフェン325mg)/錠 (持田=ヤンセン) ソセゴン錠 錠25mg (丸石=サノフィ) レペタン坐剤 坐0.2mg,0.4mg (大塚製薬) ノルスパンテープ 貼5mg,10mg,20mg (ムンディファーマ=久光) コデインリン酸塩散・錠 散10mg/g,100mg/g 錠5mg,20mg (各社) 重大な副作用 ショック ○ ○ ○ ○ ○ × アナフィラキシー様 症状 ○ ○ ○ × ○ × 痙攣 ○ ○ × × × 気管支痙攣 依存性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 呼吸抑制 × × ○ ○ × ○ その他 意識消失 意識消失,中毒性表皮壊死融解症, 皮膚粘膜眼症候群,急性汎発性発 疹性膿疱症,間質性肺炎,間質性 腎炎,急性腎不全,喘息発作の誘 発,肝機能障害,黄疸,顆粒球減 少症,劇症肝炎 無顆粒球症 呼吸困難,舌根沈下,せん妄,妄想,急性 肺水腫,血圧低下による失神 呼吸困難 錯乱,無気肺,喉頭浮腫,麻痺性イレウ ス,中毒性巨大結腸,せん妄(類薬) μ受容体 + トラマドール自体に結合親和性はなく, 代謝物が部分作動薬として作用する ++ 部分作動薬 +++ 部分作動薬 + δ受容体 ― ― + ++ 部分作動薬 ― κ受容体 ― ― ++ +++ 部分作動薬 ― 薬物動態 対象 健康成人男性 健康被験者 健康成人男性 術後患者 健康成人 健康成人(外国人) 投与量 (単回) 100mg 1錠(トラマドール塩酸塩37.5mg/ アセトアミノフェン325mg) 50mg 0.2mg,0.4mg 10mg 30mg Tmax(hr) 1.5 トラマドール:1.8, アセトアミノフェン:0.8 2 約1~2 119 0.91(外国人) t1/2(hr) 5.31(β) トラマドール:5.1, アセトアミノフェン:2.8 1.63~3.2 2.2*2 30 2.88(外国人) バイオアベイラビリティ (%) 68(外国人) トラマドール:68(外国人) アセトアミノフェン:90 18.4(外国人データ) ― 15(外国人) 53(外国人) クリアランス (mL/min)i. v. 467(外国人) トラマドール:467(外国人), アセトアミノフェン:300(外国人) ― 798 779 1,260(外国人,CL/F) 分布容積(L) 162(外国人) トラマドール:162(外国人),アセトアミノフェン:57.6 370~415 97~187 430(0.3mg持続静注) 420(外国人,Vd/F) 蛋白結合率 (in vitro)(%) 19.5~21.5 トラマドール:19.5~21.5, アセトアミノフェン:15~21 61.1(外国人データ) 96 94 54.5 未変化体 尿中排泄率(%) 24hr値:12~16(経口) 24hr値:12~16(経口) 11~13(48hr;i.v.) × × EM3.33,PM3.56(経口)

活性代謝物の生成 モノ―O―脱メチル体 トラマドール:モノ―O―脱メチル体 × ほとんどなし ほとんどなし(ノルブプレノルフィン) モルヒネ,codeine―6―glucuronide,ノルコデイン

代謝酵素 CYP2D6,CYP3A4

トラマドール: CYP2D6,CYP3A4 アセトアミノフェン: CYP1A2,CYP2E1,CYP3A4

― CYP3A4 CYP3A4 CYP3A4,CYP2D6

*2 インタビューフォームに記載がないためDRUGDEXより引用

麻薬性オピオイドの比較は136~139ページ

参照

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