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安心まちづくり推進要綱 を 警察庁が制定している 一方 女性 子どもを守るために 1999 年 12 月 16 日 女性 子どもを守る施策実施要綱の制定について が警察庁から関係部局 各都道府県警察の長に通達される この要綱は ボランティア 自治会等との連携 被害者支援 資器材の整備 の 3つの内容

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地域防犯活動における高齢者ボランティアの意識調査

桐 生 正 幸(東洋大学社会学部

はじめに 桐生(2013)は、兵庫県加古川市において 2007 年に発生した幼女殺害事件後に、防犯活動への関心、 犯罪に対するリスク認知と不安感などについて、地域の防犯ボランティアへの調査を行っている。質問紙法 により、加古川市を含む防犯活動が活発な兵庫県内5市の防犯ボランティア 361 名(平均年齢 67.3 歳) に対して調査を行なったところ、加古川市の防犯ボランティアは他の市よりも強く、 1)治安悪化を認識し、 2)高い犯罪不安感を感じていたこと、などが明らかとなっている。本報告では、 高齢者ボランティアにお ける同調査資料を再分析し、実際の殺人事件の影響や防犯活動への意識について、より詳細に検討した 。そ の結果、幾つかの知見が追加的に得られたので報告するものである。 まず日本の地域防犯活動の実態を明確にするため、これまでの動向を概観しておきたい。 1970 年 代 か ら ア メ リ カ な ど で 試 み ら れ て い た 環 境 デ ザ イ ン に よ る 犯 罪 予 防 「 CPTED 」 (Crime Prevention Through Environmental Design)が、日本で実施されたのは、1979 年に警察庁が行った 「都市における防犯基準策定のための調査」からである(小出,2003)。都市犯罪の現状、犯罪の発生要 因、対策などを都市工学的な視点から調査し、環境設計による「安全なまちづくり」を目指したものであっ た。 そもそも日本では、1963 年の全国防犯協会連合会の設立以降、コミュニティによる防犯活動が行われ てきた経緯がある。町内会・自治会や PTA による交通安全運動や夜回り(火の用心)などの事故防止や防 犯活動が継続的に、また地震や台風など災害に対する防災活動が機会的 に、それぞれ行われていた。古く は、江戸時代の「自身番」(各町内や区画内ある詰め所に、常時数名が居り、夜間の人の出入りの管理、犯 罪や火事の対応や予防を行った)のように、小区画毎の地域安全のシステムが日本には古くから有ったこと も起因し、各組織や多様な活動が、地域による安全のコミュニティ活動の土壌となっていたといえよう。 これら活動の上に、学問的な理論や系統だったシステムとしての安全・安心まちづくりが形成されてい ったのは、1988 年から 1989 年にかけて埼玉県と東京都にて発生した宮崎勤による連続幼女誘拐殺人事 件、1997 年の神戸児童連続殺傷事件、2001 年の大阪教育大学附属池田小学校における児童殺傷事件な ど幾つかの凶悪事件の発生が、契機となったと考えられる。以後、ボランティアによる子どもの犯罪被害 予防への意識が高まり、全国で地域防犯活動が広く行われて始める。 また、街頭犯罪の増加も相まって、建設省(当時)と警察庁の合同による「安全・安心まちづくり手法調 査」が 1997 年から 1998 年にかけ実施されることとなる。以後、ハード面では、例えば、道路や公園の 屋外照明の改善や監視カメラの設置といった個別の対策が行われ、各家屋に おいては、窓ガラスや鍵の強 化、監視カメラやセンサーライトの設置などが進められてきた。ソフト面では、地域ボランティアによる 防犯活動、教育機関などが行う子どもへの防犯教育などが活発に行われ始める。 これら環境改善や設備の充実といったハードの部分と、地域ボランティアによる見回りといったソフト の部分に加え、防犯活動の対象として、器物損壊や侵入盗など街や住宅を守るための活動と、子ども、女 性、高齢者など犯罪被害のリスクが高い対象を守る活動がある。警察の取り組みは、それらを横断的に捉 えながら行われてきた。 CPTED の視点に立って防犯活動の充実を促した初の試みとして、1989 年に山口県警察が行った「小 京都ニュータウン(山口市)」の防犯団地モデル指定がある(小出,2003)。これは防犯設備の対策に加 え、自治会・山口市・警察などによる「防犯モデル地区推進連絡会議」を設立し、防犯パトロールや防犯診 断などを行うものであった。以後、福島県警察による「美郷ガーデンシティ(福島市)」の防犯モデル団地 指定、静岡県警察による「防犯マンション認定制度」などが実施されている。また、 2000 年には「安全・

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安心まちづくり推進要綱」を、警察庁が制定し ている。 一方、女性・子どもを守るために 1999 年 12 月 16 日、「女性・子どもを守る施策実施要綱の制定に ついて」が警察庁から関係部局、各都道府県警察の長に通達される。この要綱は、「ボランティア・自治会 等との連携」「被害者支援」「資器材の整備」の3つの内容に分かれている。「ボランティア・自治会等との 連携」については、「女性、子どもを対象とした地域安全情報の提供、防犯指導の実施、防犯機器の貸与」、 「自主的なパトロール活動に対する支援、子ども 110 番の家に対する支援、子ども発見ネットワークの構 築」などが記載されている。 その後、2005 年に広島県や栃木県にて女子児童誘拐殺害事件が発生したことから、警察庁は「通学路 等における子どもの犯罪被害を防止するための諸対策の徹底について」( 2005 年 12 月 6 日)を通達する こととなる。ここでは、「声かけ事案等不審者情報の迅速かつ正確な把握と情報の共有化」、「学校、 PTA、 防犯ボランティア団体、地域住民等との連携の強化」、「子どもに対する被害防止教育の強力な推進」など が具体的な対策を含め記載されている。以上のような徹底した対策を呈示しながら、社会全体で女性・子 どもを犯罪から守る気運と行動を、警察は促している。なお、同年6月には、全国の防犯活動の地域ボラ ンティア団体は 13,968 団体、構成員数は 800,317 人となっている。団体数は、平成 2003 年度と比べ 約 4.6 倍に増加している(財団法人全国防犯協会連合会、2005)。また、各地方自治体(都道府県)は、 条例などを制定し、警察庁が提示する防犯活動の格子に沿った形で、住民による防犯活動を推進している。 すなわち、防犯グッズ(防犯ベル、携帯電話、防犯カメラ、サスマタなど)の普及、防犯ボランティアなど による防犯パトロール、地域安全マップなどの防犯教育などの活動である(岡本・桐生、2006)。 以上のような警察や自治体の支援を受けて、自治会・町内会、PTA などの様々な団体が、地域の特性に 合わせ、登下校時における防犯パトロールや地域安全チェックなどの地域防犯活動を展開している(図1参 照)。それらの子どもを守るための防犯活動は、一定の成果をもたらしているが、前述のようないくつかの 問題も生じている。例えば、問題の人的な原因としては、ボランティアに参加する人が 特定の高齢者世代 でほぼ固定されていることが挙げられ、時間的な制限や体力疲労などの問題が生じてきてい る。加えて、 交通事故などの発生頻度に比べ、犯罪に遭遇する頻度が少ないことから、「犯罪から子どもを守る」ための ボランティア活動の動機付け、活動持続の意識の維持が、難しいことも指摘される。 図1 防犯パトロール活動(左)と地域の安全をチェックするボランティア(右) これらの問題に対し、地域防犯ボランティアに対する心理学的研究は多くない。地域住民と犯罪に対す る不安感やリスク認知との関連(島田・鈴木・原田、2004)、犯罪被害と犯罪不安感との関連(島田、 2008)、犯罪情報が母親の犯罪不安に及ぼす影響(荒井・藤・吉田、2010)などの研究はあるものの、 心理学の観点から作成された質問紙法により、地域防犯ボランティアに対し、現在の問題点を検討するた めの調査、研究は少ない。例えば、荒井ら(2010)は、母親らの犯罪や防犯の認知について、①社会の治 安悪化に関する認知が地域連携に基づく防犯活動を促すこと、②自分は犯罪に遭わないという楽観的な認 知は、地域連携による対策(負担大)を抑制し、防犯ベルや GPS 機能付き携帯電話などによる自己防衛対 策(負担小)を促進させること、③家族の被害リスクや犯罪被害への不安は、防 犯行動とは結びつかないこ と、などを明らかにしている。しかし、このような傾向が、地域防犯ボランティアにおいても見られるの

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かどうかは、依然不明である。 そこで本研究では、まだ明らかにされていない、地域防犯ボランティアの犯罪情報の影響や防犯活動の 意識について、質問紙法を用いて検討したところ、幾つかの結果が得られたので報告する。 方法 2010 年 11 月から 2012 年 7 月の間、兵庫県内の地域防犯活動が盛んな5つの地域(加古川市、三木 市、明石市、西宮市、尼崎市)にて、各自治会や市役所などを通じて調査紙を配布し、地 域防犯活動、犯罪 への不安感や認知などの調査を行った。 兵庫県では、「地域安全まちづくり条例」(2006 年 4 月 1 日施行)が制定されており、県が地域に行 う支援施策として、「必要な情報の提供、相談、助言」、「活動のノウハウ等の習得機会の提供」、「人材 の確保や資金の調達への支援」、「著しい功績があった人への表彰など」がある。また、地域安全まちづく り推進員(ボランティア)を知事が委嘱し、身分証明書の発行、ボランティア保険料の負担などの支援を行 っている。1 グループ 5 万円限度の助成、腕章、防止、ジャンパーなどの用品を配布 する。このように、 今回の調査対象とした 5 市は、兵庫県から同様の支援を受け地域防犯活動を行っている。 調査の対象者は、各市とも、ボランティアとして児童の登下校パトロールなどを行う 高齢者及び PTA が 中心である。今回は、未解決の女児殺害事件が発生した加古川市とその他の4市 において、身近で児童が 殺害された地域の犯罪に対する不安感や防犯意識について検討する。加古川市における女児殺害事件は、 2007 年 10 月 16 日午後 6 時ごろ、加古川市別府町新野辺の被害者自宅前で、当時7歳のYちゃんが胸 と腹の2箇所を刃物で刺され殺害された事件である。当時、兵庫県内の地域防犯ボランティアに大きな衝 撃を与えた事件である。 調査手続き 女児殺害事件があった加古川市では、2010 年 11 月、自治会を通じて回答を依頼し調査票を回収した。 三木市では、2011 年 2 月、自治会を通じて回答を依頼し回収した。この三木市は、事件が発生した加古 川市に隣接し、両市は鉄道よりも自動車による交通手段が主となっている。行政上の境界には、山や田畑 が多い。明石市では、2011 年 7 月、市役所を通じて回答を依頼し回収した。明石市は、事件が発生した 加古川市とは播磨町、稲美町を挟んで近接し、両市は鉄道、道路の双方の交通手段が豊かである。西宮市 では、2011 年 8 月、市役所を通じて回答を依頼し回収した。尼崎市では、2012 年2月、保護司会を通 じて回答を依頼し回収した。西宮市、尼崎市とも、加古川市とは距離的にかなり離れた場所に位置する(図 2参照)。 図2 調査を実施した5市の位置関係 (地図の出典は http://expo.minnade.jp/hyougo.htm からである) 調査対象、内容 調査対象者は、地域防犯活動のボランティアである。 女児殺害事件の 発生場所

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調査内容は、まず性別、年齢、職業、家族構成といった属性に関する内容の後、「あなたが住んでいる地 域は、近隣の地域よりも犯罪が多いと思いますか」「住んでいる地域では、近隣よりも登下校時の見守り・ パトロールや街灯整備等の安全・安心を守る取り組みが活発に行われていると思いますか」「加古川市別府 町で 2007 年 10 月にYちゃんが殺害された事件以降、住んでいる地域に対する安全・安心を守るあなた の意識は変わったと思いますか」について、「思わない」「どちらでもない」「思う」の 3 件法による回答 を求めた。 次に、荒井ら(2010)を参照し、犯罪に対する反応として「認知的反応」に関する質問5項目、「感情 的反応」に関する質問 4 項目、マス・メディアによる事件報道から受けるインパクトについて「身近さ」「気 分の動揺」「被害者への共感」に関する質問各 2 項目、合計 16 項目による質問に対し、4 件法による回答 を求めた(表1参照)。 表1 認知的反応や感情的反応に関する質問内容 犯罪に対する認識についてお尋ねします。下記の 16 の質問項目について、あなたの気持ちや思うところと一 番あっている番号に○を付けてください。例えば、「犯罪が増加している」という質問に対して、少しそうだと 思うなら、「3」の「すこしそうである」に、全くそう思わないなら、「1」の「全くそうではない」に○を付 けてください。 1. 社会の治安が悪くなった 1 2 3 4 2. 自分の周囲には犯罪が起きそうな危険な場所が多い 1 2 3 4 3. 自分は安全である 1 2 3 4 4. 社会の安全性に対して不安を感じる 1 2 3 4 5. 自分が犯罪の被害にあうのではないかと不安を感じる 1 2 3 4 6. 報道されている犯罪や事件を身近に感じる 1 2 3 4 7. 犯罪や事件の報道を見たあとにいやな気分になる 1 2 3 4 8. 犯罪被害者の気持ちを思い、とても気の毒に感じる 1 2 3 4 9. 今後、社会一般の人が犯罪の被害にあう可能性は高まる 1 2 3 4 10. 自分もいつか犯罪にあいそうな気がする 1 2 3 4 11. 自分が犯罪の被害にあうことを考えたことはない 1 2 3 4 12. 世の中で起こる犯罪に対して不安を感じる 1 2 3 4 13. 自分が犯罪の被害にあいそうで恐いと感じる 1 2 3 4 14. 報道されている犯罪が自分の家族にも起こりそうだと感じる 1 2 3 4 15. 気分を不快にするような犯罪や事件を目にする 1 2 3 4 16. 犯罪被害者の気持ちを思うと、涙が出る 1 2 3 4 また、事件情報の視聴媒体について、テレビ、新聞、インターネット、ラジオによる視聴程度を、それ ぞれ 4 件法による回答を求めた。最後に、加古川市での女児殺害事件以降、回答者の意識や考えに変化が あったかどうかを、教育、政治・行政、警察、子どもや大人、地域社会への要望など含め、自由記述によ り回答を求めた。 結果と考察 今回、分析を行った回答者数は 419 名(女性 131 名、男性 288 名)である。年代は、80 歳代以上 14 名、70 歳代 168 名、60 歳代 184 名、50 歳代以下 50 名であった。職業は、自営業 43 名、正社 員・職員 27 名、会社役員 10 名、パート・派遣など 92 名、無職 228 名であった。 まず、防犯意識などの質問における結果である。 ①「あなたが住んでいる地域は、近隣の地域よりも犯罪が多いと思いますか」に対して、「思わない」 282 名、「どちらでもない」90 名、「思う」42 名であった。②「住んでいる地域では、近隣よりも登下

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校時の見守り・パトロールや街灯整備等の安全・安心を守る取り組みが活発に行われていると思いますか」 に対して、「思わない」31 名、「どちらでもない」91 名、「思う」292 名であった。③「加古川市で 2007 年 10 月に女児が殺害された事件以降、住んでいる地域に対する安全・安心を守るあなたの意識は 変わったと思いますか」に対して、「思わない」54 名、「どちらでもない」118 名、「思う」222 名で あった。 各質問と属性とのクロス集計の結果、③と年代においてのみ有意差がみられ(χ2=17.5,p<.025)、 60 歳代で「思う」が多かった。また、各質問と各市とのクロス集計の結果、③においてのみ有意差がみら れ(χ2=20.41,p<.01)、女児殺害事件があった加古川市と発生場所に近い明石市において、防犯意識が 変わったと思う回答の比率が、他市よりも多かった。 次に、犯罪情報の入手媒体についてである。 「あなたは、マス・メディアからの犯罪情報をどの程度視聴していますか」との質問において、新聞、テ レビ、ラジオ、インターネットのそれぞれに対し、「全く視聴しない あまり視聴しない 少し視聴してい る よく視聴する」から1つ選択させた。各質問と属性のクロス集計の結果、新聞と性別において有意差が みられ(χ2=15.0,p<.005)、男性の「よく視聴する」が多かった。また、全てのマス・メディアと各 市の間に有意差は見られなかった。 最後に、犯罪に対する認知的反応、感情的反応などの質問において、因子分析(主因子法、プロマックス 回転)を行った。その結果、Cronbach のα係数が 0.6 以上となる 3 因子が抽出されたことから、それぞ れ F1「自己の被害リスク」、F2「社会治安の悪化」、F3「犯罪被害者への共感」と命名した(表2)。 各因子得点における属性及び質問の有意 差検定を行った。その結果、全ての因子において、男性の得点 よ り も 女 性 の 得 点 の ほ う が 高 か っ た ( F1 「 自 己 の 被 害 リ ス ク 」 :t=2.28,p<.05, F2 「 社 会 治 安 の 悪 化」:t=2.98,p<.01, F3「犯罪被害者への共感」:t=3.36,p<.001)。また、質問①「あなたが住んでいる地 域は、近隣の地域よりも犯罪が多いと思いますか」において、一元配置の分散分析にて、F1「自己の被害 リスク」と F2「社会治安の悪化」とに有意差が認められ(p<.001)、多重比較の結果、両因子とも、犯 罪が多いと「思わない」よりも「思う」の得点が高いことが明らかとなった。 以上より、地域防犯ボランティアの中心年代は 60 歳代、70 歳代であったこと、ボランティア活動を行 っている地域は他の地域よりも犯罪は少なく、 自らの地域の防犯活動は活発であると思っていること、女児 殺害事件は、防犯意識に影響を与えたと思っていることが示された。この女児殺害事件は、60 歳代のボラ

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ンティアへ、また発生した加古川市と近隣市の明石市へ、それぞれ、より多く影響を与えていた。犯罪情報 は、新聞からの入手が主であり、その利用は女性よりも男性において高かった。 現在の犯罪事象においては、「自己の犯罪被害のリスク」、「社会全体の治安の悪化」、「犯罪被害者へ の共感」といった3つの意識構造がうかがわれた。これらの犯罪や防犯に関する意識は、全て 、男性よりも 女性のほうが高く感じていた。また、自己被害リスクや社会治安悪化は、他の地域より も現在住んでいる地 域の犯罪が多い、と感じている人ほど、高めに評価していることが示唆された。 さて、地域防犯活動における現在の問題点について、少し言及したい。これまでの住民ボランティアによ る防犯活動は、警察庁や文部科学省からの防犯活動の格子に沿った 形で、防犯グッズや設備(防犯ブザーの 携帯、防犯カメラの設置など)の普及、防犯パトロール、防犯教育などが行われてきた。それぞれが、地域 防犯において有効な活動であり一定の効果をもたらしているが、いくつかの問題点も指摘されている。 まず、犯罪の「転移」現象である。犯罪予防への空間要素の強化、監視性の徹底といった「犯罪者を寄せ 付けない」ことを重視することは、言い換えれば、その地域にから「犯罪者を追い出す」活動ともいえる。 例えば、ある自治体が「ひったくり防止」の強化を図ることによりその自治体内のひったくりは減少するが 、 その近隣都市でのひったくり件数は増加傾向となる、といったことが起こりうる。また防犯グッズの「お守 り」化現象も指摘される。犯罪者の視点に立てば、子どもが防犯ブザーを鳴らしても助ける人がいない場所 を狙って犯行する。よって、防犯ブザーを与えることが防犯対策ではなく、その子が狙われやすい場所にて 防犯ブザーを鳴らし近隣住民に聞こえるかどうか、聞こえない場合はどう対処するか、までを検討しなけれ ば、実際的な防犯対策にはならない。 このような犯罪者の合理的な行動を考慮した地域防犯活動を、今後は考えていかなければならない時 期と なっている。そして、そのためには、その地域の犯罪情報の分析を行い実際的な対策を講じることが求めら れる。例えば、警察が公表する犯罪発生情報や、地域住民による地域フィールドワークで得た情報を分析し、 いつ、どこで、どのような人が、どのような状況で、何をしたか、といった内容を共有し、次に発生しそう な場所や時間帯を想定しながら防犯活動をする ことが大切となろう。 例えば、田村(1992)や渡邉(2006)の研究で明らかになった幼少児誘拐、わいせつ事件、暴行傷害 事件の犯罪情報の分析結果を用いれば、具体的な子どもを守る防犯活動が可能となる。すなわち、 ①自動車を使用する犯人は「20 歳以上で、精神障害者は少なく、妻子持ちが多く、有職者で経済的にも 中流である」、また中年以降の自転車使用者の半数は「精神的な障害を有する者」である。 ②自転車を使用する犯人は「半数が少年」である。 ③徒歩により犯罪を行う犯人は「全体の半数を占めるが、中年以降の者にはアルコール問題を持つ者が 多い」 という傾向(田村、1992)を用いれば、犯人の交通手段が明らかになることで、防犯ボランティアが注 意すべき犯人像が明確となろう。 同様に、子ども被害の粗暴犯の場合は、 ①小学生被害よりも幼児被害のほうが、加害者に女性が多く、面識のある場合が多い。 ②被害者と面識のない粗暴犯の場合、移動手段は、徒歩、自転車による移動が多く、犯行現場の近隣に 住む者が多い ことも明かとなっている(渡邉 2006)。これらのことから、被害者の年齢や加害者の移動手段によって、 防犯ボランティアが注意すべき人物像が明確となろう。そして、このような基礎的なデータに加え、地域固 有の犯罪情報をフィールドワークやインターネット上などで配信される警察データなどを用いることで、よ り具体的な防犯活動が望めるものと考える。犯罪情報を分析することは、ただ漫然と行う防犯活動を、より 焦点を絞った効果的な防犯活動にシフトさせることを可能にするだろう。 次に、地域防犯ボランティアの参加、実施における問題である。 地域が一体となり防犯活動を行うには、様々な地域の問題や課題がある。例えば、地域防犯ボランティア に対する無関心層の多さの問題である。2012 年の内閣府の調査によれば、60 歳以上の高齢者が、地域に

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おける何らかのグループ活動に参加している割合は 59.2%であり、そのうち「安全管理」に関するグルー プ活動参加は 7.2%であった。また、過去1年間に、ボランティア活動に参加した割合は 47.0%であり、 そのうち、「地域の安全を守る活動」には男性が 13.1%、女性が 3.9%という割合であった。これらの割合 より、地域防犯ボランティアが全体の 10%前後の高齢者にて行われていることが、容易に推測されよう。 そして、これら高齢者ボランティアが防犯活動以外の地域活動にも加わっていることが指摘されており、日 々の活動における時間的な制限や、体力疲労などの問題が生じてきていると考えられる。加えて、住宅地や 郊外などでは容易に形成しやすい地域防犯パトロール隊も、マンションの多い都市部では人間関係の希薄さ も相まって、そもそも防犯活動自体が形成されにくい状況にある。今後は、幅広い世代から地域防犯ボラン ティアを確保し、また、パトロール以外の新たな防犯活動の構築が必要となってきている。 これら問題に対し、若い世代や父親世代が、高齢者ボランティアとは異なる場所や時間帯で行う地域安全 活動の模索が重要と考えられる。警察庁は 2010 年に「若い世代の参加促進を図る防犯ボランティア支援 事業実施要領」を出し、以後、全国の大学生が地域防犯活動へ参加しており、その活動は広がり をみせてい る。また、未就学児や小学生の父親世代が、地域のお祭りや運動会などのイベントへの参加を通じ、高齢者 地域ボランティアとのコミュニケーションを深め、そこで楽しめる防犯活動を実施するような動向も現れて いる。 本研究では、高齢者が中心の地域防犯ボランティアは、自らの地域 は、他の地域よりも犯罪が少なく防犯 活動は活発である、と思っていることが明らかとなった。このことは、ボランティア仲間が少なくとも、彼 らの防犯活動に対する意欲が高く、誇りを持って活動していることを示唆する。そして、「 犯罪被害者への 共感」といった意識構造が見出されたことから、彼らの活動の動因には、子どもを守りたいという思いがあ ることもうかがわれる。高い志しの高齢者の活動に対し、他のエリアのデータを加え分析し、また本調査の 自由記述の分析を合わせて行いながら、現在の地域防犯を担う高齢者の活動を補佐するための方策を、これ からも検討していきたい。 引用文献 荒井崇史・藤桂・吉田富二雄(2010). 犯罪情報が幼児を持つ母親の犯罪不安に及ぼす影響 心理学研究, 81, 397-405. 岡本拡子・桐生正幸(編)(2006). 幼い子どもを犯罪から守る 北大路書房. 桐生正幸(2013). 身近で発生した殺人事件が住民の不安と防犯意識に及ぼす効果 関西国際大学研究紀 要, 14, 243-252. 小出治(監)(2003). 都市の防犯:工学・心理学からのアプローチ 北大路書房 島田貴仁・鈴木護・原田豊(2004). 犯罪不安と被害リスク-その構造と形成要因-犯罪社会学研究, 29, 51-64. 島田貴仁(2008). 犯罪に対する不安感等に関する調査研究(1)-調査の概要と犯罪被害実態と犯罪不 安 感-. 季刊 社会安全, 70, 8-16. 田村雅幸(1992) 幼少児誘拐・わいせつ事件の犯人の特性分析 科学警察研究所報告(防犯少年編), 33, 30-41.

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渡邉和美(2006). 子どもの犯罪被害の実態と防犯対策.岡本拡子・桐生正幸(編) 幼い子どもを犯罪 から守る 北大路書房 pp.114-145. 参考文献 財団法人全国防犯協会連合会(2005) 安全ガイドブック第3号 小俣謙二・島田貴仁(編) (2011) 犯罪と市民の心理学:犯罪リスクに社会はどうかかわるか 北大 路書房 河合幹雄(2004) 安全神話崩壊のパラドックス:治安の法社会学 岩波書房 竹花豊(監)(2007) 地域の防犯:犯罪に強い社会をつくるために 北大路書房

Felson, M. (2002) Crime and Everyday Life、3rd ed. Pine Forge. 守山正(監訳)(2005)日常生活の犯罪学 日本評論社

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