理 学 療 法 学 第32巻 第3号 130
一・
134頁 （20D5年1 症例
研 究進
行性 核
上
性 麻痺
患
者
に
対
す
る
部
分
体
重 免
荷
ト
レ
ッド
ミ ル
歩行
ト
レ
ー ニン
グ
を
含
ん だ
短期 集
中
練
習
＊単
一
症 例研究
上出 直
人D
柴
喜 崇
2）前
田真
治 D荻
野美 恵
子 3＞ 要 旨 進 行 性 核 上 性 麻 痺 患 者に対 し，
部 分 体 重 免 荷 トレッ ドミ ル トレー
ニ ングを 含ん だ短 期 集 中練 習 を 施 行 し，
歩 行 能 カへ の影 響 を 検 討した、
症 例は69
歳 男性。
介 入 開 始 時の歩 行 能 力は，
屋 内 歩 行 最 小 介 助レベ ル で あっ た （FIM 移 動 下 位 項目；4），
、
介入方 法は，
体重 免荷装置を 用い て，
体重の30
％ 以内を免荷し た状 態 で，
トレッ ドミ ル ヒで の歩 行 トレー
ニ ング を3〜
5分 間 施 行し た、
、
トレ ッ ドミ ル の速 度は，
症例が耐えう る 最 大の 速 度とし，
トレー
ニ ン グ回数 毎に漸 増させ てい っ た。
全8回の トレー
ニ ン グを 含ん だ短 期 集中練 習 実 施 後，
症 例の歩行速 度， 歩 幅は改 善を 示 した。
し か し後 方 易 転 倒 性は変 化せず， ADL ト の移動 能 力 や転 倒 頻 度につ いては 改善し な かっ た：
t
部分体重 免荷 ト レッ ド ミル トレー
ニ ング は，
歩行 時の lllii下 肢の協 調 的 なス テッ ピン グ運動 を短 期 間で向上さ せ る効 果を有 する が．
バ ラ ン ス能 力に は効 果が小さい ことが 示 唆 さ れ た。ADL
上 での移 動 能 力の 向E
につ な げ る た め に はバ ラン ス ト レー
ニ ング と の併用 が 必 要 で あ る ことが示 唆さ れた／
t キー
ワー
ド 進 行性 核上性 麻 痺，
部 分 体重免荷 歩 行，
歩 行 能 力 は じ め に進 行 性 核上性 麻痺 （Pregrcssive Supranuclear Palsy
，
以 ドPSP ）は
，
主に錐 体 外 路 系が障 害さ れる進行 性の 中枢 神 経 系 変性 疾 患である峡、
眼 球 運 動 障 害，
痴 呆，
仮 性 球 麻痺，
姿勢・
歩 行 障 害な どの 臨 床症 状 を呈 する，
，
姿 勢・
歩 行 障 害 と しては．
姿 勢 反 射 障 害，
す く み 足，
小刻 み 歩 行，
後 方へ の 易 転 倒 性が特 徴と して挙 げら れ2］，
Parkinson病と類 似し た症 状を有 する。 PSP 患 者へ の運 動療法と し て は．
下肢の協 調 性の促 通やバ ラン ス トレー
＊ Shurt−
termIrtLervciTしion Inctuding Partial Body We 正ght S upported
Treadinil］Trainiiユg for n Patient with Progressiv ∈ Supranuclear
P31svl
｝北 里 大 学東病院 リハ ビ リ テ
ー
ション部〔〒22呂
一
8520 神 奈 III県 相 模［亰市 麻 溝 台21DNaeto Knmide
．
RPT，
MS，
Masaharu Maeda、
MD ：Departnエellt りfRehabiLitation
．
Kitasutり U”iversiしy East Hospital2） 北 里 人 学 医 療 衛生学 部
Yoshitaka Shibn
，
RPT、
MA ：Kitasato Univers1匸y，
Schcx，⊥（＞f ALIicdHeaLth Sciencc5
3）北 里大 学 東 病 院 神 経 内科
Miekn Ogi11〔，
、
MD ：1）epartment ot NeurolDgy，
Ki匸asato UniversityEaSt止iospitat
＃
E
．
［［Ui1・
Iiaokai エ1ictt kitasato．
u、
ac、
jp〔受f
’
j日 2004年4月2凵 受 f甲1］ 2005年2月1Z日 ）ニ ング が行わ れてい るが
，
確 固たる方 法は確立 してい ない 3）4）
．一一
方，
類 似した 症 状 を 示 すParkinson
病に対 する 歩行 トレ
ー
ニ ングへ の新た な る 展 開 と して，
部 分 体 重免 荷 トレッ ドミル トレ
ー
ニ ン グ 〔Pa、
rtia 】Body WeightSupported
TreadmM Training，
以 下PBWSTT ）の有 効 性が報 告 されてい る」 ’。PBWSTT
は，
体 重 を部 分 免 荷し た状 態で トレッ ドミ ルでの歩 行 トレー
ニ ン グを行 う もので，
脳 血管 障害後の 片麻癖 者晒 〉 や脊髄 損 傷 者8M ω の 歩 行 能力に対 する効 果が報 告さ れて お り，
さ ら に PSP 患 者に対して も，
PBWSTT の効 果が検 討さ れて い る］1：〕。 しかし，
PSP
患 者に関 する先 行 研 究は8
週 間の 介 人デザ インで行わ れ て お り， 短 期 間での介 入によ る効 果につ い て は言及 さ れてい ない。
さ ら に介人直 後の即 時 効 果のみの検 討であ り，
持 続 効 果につ いて も検 討さ れ て いない，
臨 床現場に おい て は ショー
ト ス テイや検査 凵 的 で の入院な ど，
短 期 間で の琿学 療 法 介入が要 求さ れ る場 面 は多々あ り，PSP
患 者に 関 し ても例外で は ない、
、
従 っ て，
PSP 患 者に対 するPBwSTT には，
短 期 間で の介 入に より歩 行 能 力 を 向上させ，
また介 入 後 も効 果の持 続 が 期 待で きる ことも理 学 療 法の一
戦 略として の可 能 性を 示 すため には重 要である。Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japanese Physioal Therapy Assooiation
進行性核ヒ性 麻 痺 患 者に対 する部 分 体 重 免荷 トレッ ドミル歩 行 トレ
ー
ニ ング を含んだ 短 期 集 中 練 習 ⊥31 そこ で今 回，
約2週 間の 短 期 入 院 を したPSP 患 者一
症例に対して，
通 常の運 動 療 法に加 えて PBWSTT を施 行し た。 施 行 後の歩 行 能 力に対 する 即時 効果 と持続効果 につ い て若 干の知 見が得ら れ たの で報告す る、
、
症 例 紹 介 69歳男 性 （身長 150．
Ocm，
体重50．
Okg ）、
，
平 成10年 頃 よ り 歩 行 障害，
バ ランス障 害が出現し，
時 折 転 倒 する ようになっ た。 平 成 ⊥3年 頃よ り転 倒 頻 度が増 加したた め，
S病 院 を受 診 した とこ ろPSP
疑いでK
病 院に紹 介 受 診となっ た。
K病 院に てPSP
と診 断さ れ た後，
平成 ユ5
年7
月 までS
病院 で抗ParkinsOI1
薬な どの投 薬に よ る 通 院 治 療 を受 けてい た が，
徐々 に身 体機能 や ADL の低 下 を き た し た。
症 例 お よ び家 族の 希望 に より，
平 成15 年8月 か らK
病院 に 通院 治 療となり，
平 成ユ6年ユ月に 精 密 検 査，
加療凵的に てK病 院に 2週 問の短 期入 院 と な っ た。
理 学 療法は平成15年11月より依 頼を受け，
運動 療 法，
ADL 指 導，
家 族 指 導の 目的で2
週間 に1 〜2
回 の 頻 度で外 来フ ォ ロー
を行っ ていた、
，
理 学 療 法 開 始 時の所 見と して は， 眼球運動 障害， 構 音障 害，
嚥 ド障害を認め，
知 的機 能は改 訂 版 長 谷川式 簡易 知能評価ス ケー
ルで 14 点 で あっ た。
た だ し琿学 療 法lt
の指 示には 正確に従 うこ と が 可能な知 的 機 能は有して い た。 姿 勢・
歩 行 障 害 とし て は，
立 ち直 り反 応の減 弱，
後 方 易転 倒性，
歩 行 開始 時 のす くみ足，
歩 行 時の加 速 歩 行や 小刻み歩 行が 認め ら れ た，、
転 倒の頻 度 とし て は，1
週 間 に2
回 以 上の転 倒を繰 り返し，
転 倒に よ る 頭 部の挫 傷や橈骨遠 位端 骨 折な どの 既往を有していた。
転 倒は介助 者である妻 が非 監視 時の ベ ッ ド か らの 立 ち 上 が りや歩 行の 際に起 きてい た 。ADL はBarthet Indexで 45点
，
移 動 能 力と して は，
手つ なぎ 介 助で 歩 行 して お りFunctional
Indepcndent
MeaSLtrei2♪ （以 ド，
FIM ）の移 動 下位 項H
は4であっ た 。 なお，
症例は妻と二人暮らし を してお り， 介 護 は 全 て 妻 が行っ ていた、
、
外 来理学 療法フ ォ ロー
中 に，
体 幹と下肢 の ス トレッチ，
立 ちE
が り練 習．
動 的 立位バ ラ ン ス トレー
ニ ン グ （リー
チ 練 習 な ど ），
訓 練 室 内 介 助 歩行 トレー
ニ ン グ お よ び歩 容 指 導，
妻へ の立ち上が り時や歩 行 時の 介助 方法の指導，
介護 保 険によ るマ ン パ ワー
導 人の 検 討 な ど を 行っ た が，
ADL
や転倒 頻度に大 き な変 化は認め られ ず， 歩 行 能 力 につ いて は除々に低 ドしてい る傾 向 が 認 め ら れ た。
PBWS 丁r
介入方 法 使用機 器に は，
トレ ッ ドミ ル 〔FUKUDADENSHI ，
MAT
−
2110），
体重 免 荷 装 置 （BIODEX，
BDX −UWS
），
セ
ー
フ テ ィハー
ネス （BIODEX，
BDXU −SH
） を用いた （図 1）。
セー
フテ ィハー
ネスはベ ス ト型の構 造 をしてお り，
症例の体 幹と両 側 人腿 を両 側 ド肢の ス テッ ピング運 図1 体 重 免 荷 装 置とトレッ ドミ ル 動 を 妨 げる事が ない ようにベ ル トで固定し，
休 重 免 荷装 置の ワ イヤー
に取 り付 ける。 体 重 免 荷 装 置は ワ イ ヤー
を 巻 き上げる こ とで，
セー
フティハー
ネスで 固定し た身体 を鉛 直 方 向に持ち 上 げ，
体重の免 荷を叮能にする。 体 重 の 免荷 量は，
片 麻 痺患者6〕やParkinSon病 患 者3｝に対 するPBWSTT
の 先 行 研究で行わ れてい る免 荷 量を参 考 に し，
症例の体 重の 30％ を免 荷 量の ト限とした。 さ ら にHesse らi／ は，
片 麻 痺 患 者に対 するPBwSTT
の 免 荷 量は症例 が 耐 え ら れ る 限 り漸 減 さ せ てい く必 要 が あ る とし てい る．
そこで 本 症 例 に 対 し て も， 30％の免 荷量 か らPBwSTT
を開 始 して，
小 刻 み 歩 行や加速 歩行，
つ ま ず き が 起 こら な け れ ば 除々に免荷量 を漸 減さ せ てい く こ と と し た。 本症例におい て は，
15％の免 荷 量が至 適 であ る と判 断し，
PWBSTT を開 始し た。 しか し全 介入 期間をつ うじて 15％の免 荷 量が最 も至 適であっ た た め， 結 果 的に免 荷 量は一
定とした。 トレ ッ ドミ ル 速 度の 設 定は， 片 麻 痺 患 者に 対 す る PWBSTT の トレッ ドミ ル 速 度 の 違い に関す る先 行 研 究13：，
14．
］ を参 考に し た。
片 麻痺患者で は，
快適 速度より も速い 速 度での トレッ ドミル訓 練 が 歩 行 速 度の改善に有 効なこ と が 認 め ら れてい る、
、
従っ て本症例に対して も，
訓 練 室 内での最 大 歩 行 速度 を 基準に して，
小刻み歩 行や 加 速 歩 行，
つ まず きが起こ るこ と なく安全に歩 行 叮能 な トレッ ドミル速度に設 定し，
訓練ご とに可 能 な 限 り漸 増 的 に 上 昇 さ せ てい っ た。
トレー
ニ ン グ時 間は，
小刻み歩 行や加 速 歩 行，
つ まず きの出 現，
症 例の 自覚 的 疲 労 感，
運 動 中の脈 拍 数か ら 判 断して設 定し，
可 能 な 限 り漸 増 させてい っ た。 本症例 に おいて は，
訓練 時 間は 3分よ り開始し，
5分 まで増加さ せ た。 介 入 中の トレッ ドミ ル速 度 とトレー
ニ ング時間の N工 工一
Eleotronio Library132 理 学療 法学 第32巻 第3号 トレッドミル 速度 Cm／min） 紀 30 20 10 o トレ
ー
ニング 時 聞 〔min ） 6 1 23 4 5 6 7 PBWST 「実施回数 注二
体 重 免 荷 量は15％ の ま ま一
定 8 十 トレッドミル 遮 度一
十一
トレー
ニング 時 聞 543210 図2 PBWSTT 実 施 回 数 と速 度・
免荷 量・
訓練 時 間の推 移 変 化を図2に 示 す。
トレー
ニ ング 中 は，
安全の た め に脈 拍 数 を測 定 しなが ら 理学 療 法士の近 位 監 視 ドに て行い．
さ ら に トレー
ニ ン グ前 後で血 圧 を 測 定し たt・
PBWSTT は全部で81
・1
施 行 し，
外 来理学 療 法フ ォ ロー
中に施 行していた 訓練 内容で あ る，
体 幹と下肢の ス トレ ッチ．
立 ちL
が り練 習，
動 的 、：綬位バ ラン ス トレー
ニ ン グ 〔リー
チ練 習 など） も並行し て実 施し た、
な お介入期 間 巾に抗Parkins（m 薬ツ）投 薬量 及び種 類の 変更は な かっ た。
症 例 およ びその家 族に対し，
トレー
ニ ングの内 容と考え ら れ る 効 果 に 関 し て 説 明 し．
同 意 を 得た．
t／
歩 行 能 力 評 価・
ADL 能 力 評 価 歩 行 能 力の 評 価 には，
10m 最 大 歩 行 速 度，
平 均歩幅．
歩 行 率お よ びFIM
運動 項Ll
の移 動下位 項 目を用いた，
ADL 能 力の評価にはBarthel
Index
〔以 ド，
Bl） を用い て．
100点 満 点で 評 価し た／
t 各 評 価 は．
（1）介入4〔｝L］ 前，
（2
）介 入 直 前，C3
：1 介入直 後，
〔・
1〕 介 入 終 了後4凵 目，
（5） 介 入 終 了 後33日 目の 5つ の時 期 に 実施 し た。
な お， 介 入 （入 院）前と介入 〔退 院 〉 後の外 来 理 学 療 法 介 入 につ い て は，
同様の内 容お よ び頻 度で施 行し た、
10m 最 大 歩 行 速 度，
馳
ド均 歩 幅，
歩 行 率の測定 方法は，
訓 練室 内に2m の助走路と減速 路 を 設 け た 直 線 10m の 歩 行路 を 設定し，
その歩 行 路 内を 症例が転 倒す るこ と な く歩行 可能な最 大の速 度で歩 行さ せ た その際の時 間 を デ ジ タル ス トッ プ ウt ッチ で 計測し，
さ ら に歩 数 を 計 測 し た。
測定は3
試 行 行い，
歩 行 距 離 （IO
m ） と計 測し た 時 聞お よ び 歩 数 か ら最 大歩 行速 度と平 均 歩 幅，
歩 行 率を 算 出 し，
結 果には3試 行の 中 か ら歩 行 速 度が…
番 速かっ た試 行の最大歩 行速 度，
平 均 歩 幅，
歩行 率の記録を採 用 し た。 なお安全のた め 測定中 は 理学 療 法 士が近 位に て監 視した状 態で実 施 し，
介助の た め 症例の身体 に触れ た場 合は， 測定 をやり直し た。 FIM の 移動下位 項凵 は，
7段 階で在 宅お よび 入 院 中に お ける病 棟での移 動 時の介 助 量 を 評 価 し た、
段 階 付けは．
手つ な ぎ歩 行の ような，
手を添え る 程 度の軽い 介 助 量 （25％ 以下） で 50m 以 上 歩行可能であ れ ば4，
身体 接触 に よ る介 助な し で 50m 以 上 歩行可 能であ れ ば5以E．
o 「e
m 以上の歩 行に，
体 を 支 えたり足を運ぶ などの 手を 添え る 以上の 介 助 量 （25％以tl
）が必要であれ ば3以 ドと し た，
転 倒 頻 度 転 倒 頻 度は、
前述 し た 歩行 能ノJ
の 評 価 を 彳∫っ た5
つの 時 期の前ユ週 間以内に お け る転 倒の有無 と その回 数 を介 護 者である妻，
また は入院 中の場 合は病 棟 看 護師に聞 き 取 り調査し た，
．
転 倒回数は，Cl
）転 倒 なし，
（2）1回 転 倒，
〔3〕複 数回転 倒 （2
回以上転 倒 ）の 3段 階に分 類し て評 価 した、
、
加 え て転 倒 時の 状況 につ いて も 可能 な限 り 聴 取した／
t 結 果 介 入 前後で の身 体，
精 神症状の変 化は認め ら れ ず，
ま た 介 入 中の 転 倒事 故，
脈 拍 数や 血 圧異 常な どの問題 は 生 じ な かっ た、
PBWSTT
前 後での5
つの峙 期に行っ た、10
m 最 大 歩 行速 度，
平 均 歩 幅，
歩 行 率の 変 化 を 表1に 示す．
、
10m 最 大 歩 行 速 度は，
PBWSTT によ る介入前か ら徐々に低 下を 示 した が，
介 入直 後には改 善を認め た、
し か し介人 終r
後は時 間経 過と ともに徐々に低 ドを示した が、
介 人 終∫後33FlI
」の速 度は介 入 直 前より速い 傾 向が あっ た。
’
卜均 歩 幅に関し ても，
10m 最 大 歩 行 速 度と同 様の傾向 を示し た。一
方，
歩行 率につ い て は，
IOm 最大歩 行速 度や平 均歩幅と 連 動 し た変化 を 示す傾向は認め るもの の，
その変化量 と して は，
速 度や歩 幅に 比べ ると小さい こ とが認め ら れ た。
FIM に 関 して は，
評 価 中の 全期間 を通して段 階4の ま ま変 化は認め ら れず，
手つ な ぎ介助 を 必 要とする状 態であっ た。 BI も同 様に45点の ま ま変 化は認め ら れ なか っ た （表1）、
t 転 倒 頻 度は，
介入前より複数回 転 倒を 認 め た が．
介入 直後に は転 倒なし，
ま たは ユ回転倒 と 頻 度 は 減 少 し た，
しか し，
介入終了後33日目の聞き取り 時には，
再 び 複 数 回転倒 が 認 め ら れた 〔表1〕。 転 倒 時の状 況と しては，
妻の非 監 視 時の ベ ッ ドか らの立ち ヒが りや 歩 行 中の 方向 転 換 時に起き て お り， 監視下で の動 作 中や歩 行 介助 時の 転倒 は 起 き てい な かっ た。 考 察 PBWSTT は 慢 性 期 片 麻 痺者6，7’ や 不全 脊髄 損傷 者s−
1〔｝） な どに行わ れてい る。
PSP 患 者 に 関 して も，
週3
回8
週Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japanese Physioal Therapy Assooiation
進 行性 核ヒ性 麻 辣 患 者に 対 す る 部 分 体 重 免 荷 ト レッ ドミル歩 行トレ
ー
ニ ング を含んだ短 期 集 中練 習 133 表 1ADL，
FIM，
転 倒 頻 度，
歩行 能ノJの変 化 PT 開始 時 PBWSTT ’ PBWSTT PBWSTT PBWSTT 介 入4〔］H
前 介 入 直 前 介入 直 後 介人終r
後4日 介入終 了 後33 日 転 倒 頻 度＊
FIM 〔移 動｝ 最 大 歩 行 速 度 〔mimin ） 平 均 歩 幅 〔cm ） 歩 行 率 〔steps ／「nin ） BurLhcl T”dex 複 数回転 倒 108 4一
〇 7Qり
尸
D 3 フ一
？一
4 1 複 数回 転 倒 4 22．
O l7．
2 127、
7 45 転 倒 な し 4 469 30．
3 154．
9 45 1囘転倒 4 36．
4 26．
31 38．
，
3 45 複数回転 倒 4 26．
2 19．
2 i36．
1 45牌
PBWSTT ：PartiatBody Weigh匸Supp（lrted TreadmiLt Training
，
串 転倒 頻 度：評 価時の前1週 間以内の転 倒 頻 度 を （1）転 倒 なし 〔2）1回転 倒 （3） 複数 回 転 倒 （21：
・
1以 上 転 倒 ）の 3段 階に分 類，
問の PBWSTT に よ る介 人 が 報 告さ れ て お り，
その結果，
歩 行 速 度や歩 幅，
歩行率とい っ た歩 行 能 力とファ ンク シ ョナル リー
チ やTimed
up ＆Go
な どの バ ラ ン ス能 力の 向上，
転 倒 頻 度の減 少が認め ら れてい る ］D。 しか し．
8
週 間にわ たる定期 的 な 介人の 実施は，
実際の臨床 現場に おい て は困難で あ る と考え ら れ，一
方では短期 間で の介 入 が要 求さ れる こ とも多々ある。 そこ で，
本症例 に は短 期 入 院 中の2
週 問 とい う限 ら れ た期間 に全8
回のPBW −
STT
を通 常の 運動 療 法に加え，
集巾的に施 行し た。 そ の結果，PSP
は進 行 性 疾 患で あ り，
さらに外 来 埋 学 療 法 介入時は 歩行 能 力が除々 に低 卜’
する傾 向にあっ たにも 関わ らず，
運動療 法に PBWSTT を カ11え た 介 入 直 後の最 大 歩行 速度 と平均歩幅に著しい向上 が認め られ．
短 期 問 で あっ て も集 中 的に施 行することで，
歩 行 を構 成 する時 間因子及び空間 因一
f一
の両者に 効果を 有 す る 可能 性が示1唆 さ れ た。
加え て， 歩 行率の上昇が小さ かっ たこ とか ら，
歩行 障 害の ひとつ である小 刻み歩 行 を増強する こ とな く 歩 行 機 能 を 向 上さ せ る 可能 性 も示 し てい る と考え ら れ る／
／
さ ら に持 続 効果 に 関 して は，
介入終了後4日 凵，
33 凵 目 と時 間 経 過に従っ て．
歩彳f
能 力は除々 に低下 を示し た。 し か し．33
日凵の歩 行 速 度 及 び 歩 幅は介入直 前 時 より も上回っ て お り，
少 な く と も1カ 月程 度は，
介入前 の 歩 行 能 力よ り，
向上 し た状 態が維 持 される ことが 推 測 さ れ た、
、
・
方で，
FIM の 移 動下位 項 口に おけ る得 点は．
最 小 介助レベ ルか らの変 化 が 認め られなかっ た。
また転倒 頻 度に関 して も，
介 入 直 後 およ び介 人終r
後4
日 目 以外は 複 数 回 転 倒 を 認 め た。
介 入直 後お よ び介入終 了 後4日ll
に お け る転 倒 頻 度の 減 少は，
入 院 中の結 果が含 まれ て お り．
看 護 師の監視や 介助の た めのマ ンパ ワー
が十 分にあ っ た ため に転 倒が 防1トで きた結 果であ る と考え ら れ る．
しか し，
在 宅生 活で は病院 と 同 様のマ ンパ ワー
の確 保が 難しく，
結果 と して介助 者の非 監 視時の立 ち 上が り時や 歩 行中の 方 向 転 換 時の転 倒 を 防 ぐこ と がで き なか っ た た め と摎え ら れる。 FIM の 得 点 変 化や在 宅での転 倒頻 度 の減 少につ なが ら な かっ た 要 因 と して，
バ ラン ス能 力の 向E
は 歩 行 速 度や歩幅の向上 とは相 関せず，
安 定性や安 全性の向上 に至らなかっ た 可能性が考え ら れ る。
す な わ ち，
PBWSTT は，
下肢の ステ ッ ピン グ 運動を促通 さ せ15｝，
協調性を向 ヒ させ る 効 果 は 高いが91，
バ ラ ン ス能 力に関 しては効 果 が 小 さい こ と が 示 唆さ れ る。
従っ てPBW −
STT
と 並 行し て ト分な負 荷の バ ラ ンス トレー
ニ ン グ を 取 り入 れ ることで，
転 倒 頻 度の減 少 も期 待で きると考 え ら れ る。 た とえば本 症 例の場 合 は，
立 ち上が り時や歩 行 時の方 向転 換 時の転 倒が ほとん ど で あ る た め，
これ らの 動 作 時の重心移動や 重 心保持の トレー
ニ ン グ を十 分に行 うこ とが重要であっ た可 能 性がある。 本 研 究の 結 果は．
PBWSTT 単 独の 介 人で はな く．
さ らに症 例の認 知 機 能 障害の影響や治療者と評価者が同・
である な どの混乱因 予を含み，
さ らに一
症 例に限っ た検 討，
ABA デザインを 用い てい ない な どの制限 因 子 を含 ん でい る。 加 えて，
訓練 プログラ ム の妥当性に関す る検 証 も 十 分 に な さ れている と は言えない 、 し か し，
本症 例 に お け る今 回の結 果は，
理 学 療 法 が 進 行 性 疾 患である PSP 患 者の 歩 行 能 力を向 Hさせ るロ∫能 性 を 示 す もの で ある と考え られ る。
今後， 歩行 能 力へ の効 果を詳 細に検 証 す る た め，ABA
デ ザ インに よ る検 討 や 対 照 群 を 設 け た研 究が必要である。
文 献1）Steele
JC．
RichardsonJC．
et at．
：Progressive suprunuclearpalsy
．
A heterf｝gune｛｝us degeneration involvinR匸he brainstem
、
basaL ganglia．
and cerebellum with vertical gazeand pseudbulbar pal呂y
．
［lucha ［dystenia and dementia．
Arch Neurol lO：333
−
359，
1964．
2）中馬 孝容
，
眞 野 行 生： パー
キン ソ ン症候群に お け る歩行 障害の特徴と その治療
，
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55，
2003，
3）Izzc〕 KL
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<Abstract>
Short-termIntervention Including Partial Body Weight
Supported
Treadmill
Training
for
aPatient
With
Progressive Supranuclear PalsyNaoto
KAMIDE,
RPT,
MS,
Masaharu
MAEDA,
MDDepartrnent of Rehabititation,Ki･tasato
U}tiversity
East
Hb6pital Yoshitaka SHIBA, RPT, MAKitasato
Uniuersity,
Schoot
qfAllied HealthSciences
Mieko
OGINO.
MD
Department of
IVburology,
Kitasato UniversityEast "ospitalThe illfluenceon walking abi]ity of partial
body
weight supported treadmill training was examinedfor
a69-vear-old
tnan with progressivesupranuctear palsy.When
traininginterventionbegan, rninimal assjstance was neeessary for locomotion
(FIM
tocomotion
!
wheel chair subscore:4).
The
trainingprotoco]al]owed support of S30% ofbody
weight, and training was conductedfor
3-5 min.TreaclmM
speed was set ashigh
as [he patient cou]d walk without falting,und was graduallyincreased
over subsequent training sessions.After
8
trainingsessions, walking speed and steplength
wereimproved,
but
thetendency tofallbackwards,locomotive
ability,and frequency of fallswereunchanged. Partial
body
weight supported treadmill training thus secms to enhance coordinativestepping movements of the lower
