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西表島船浦で夜間観察されたクマドリオウギガニの交尾

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C A N C E R 18 (2009), p. 19- 20

西表島船浦で夜間観察されたクマドリオウギガニの交尾

小 背 丈 治

ク マ ド リ オ ウ ギ ガ ニ ( ヤ グ ジ ャ マ ガ ニ ) Battozius vinosus (H. Milne-Edwards) は , イ ソ オウギガニ科の一種で,国内 では 沖縄本島及び八 重 山諸島,国外 では フィリピ ン, ソロモ ン諸島 な どに分布 する (三 宅,1982). 本種 はま た,西表 島古見の民謡「ゃぐじゃー ま節j の主人公のカニ の正体であるとして,和名「ヤグジャマガニ」が 提唱された (大島 ,1962;三宅, 1982) が,一方 で「ヤグジャーマはシオマネキの一種

J

という説 を支持する見地から「クマド リオウギガニ

J

の和 名を用いるべき (酒井, 1976) とされている種類 でもある (平田ほか, 1988). 琉球列島産のクマ ドリ オウギガニについて ,Saba et al. (1978) が 沖縄本島産の抱卵雌から鮮化 させた幼生をメガ ロ パまで飼育し各幼生期の形態を記載した研究があ る. 本種はマングローブ林周辺の潮間帯上部の大 きな転石や流木の下に見つかることが多いが,生 態に関する情報は僅かでユある. 2008年11月沖縄県 西表鳥船浦で夜間干潮時に ,交尾中の雌雄に偶々 遭遇し,写真 を撮影する こ とができた (図1 ). 野外 で交尾中の個体 を観察する機会は稀であるの で,写真を添えて紹介する. 船浦湾口を締め 切 る形で建設された通称「海 中道路」の一部は, 1 m大の自然、石を積み上げて 築かれている. 2008年11月15日午前3時40分,海 中道路南側の石積みの聞の空隙中で, 2個体のク マドリオウギガニが甲の後縁を地面に接した状態 で,腹面を対峠させた姿勢をと っていた (図1 ). 雌 の 腹 帯 の 内 側 に 雄 の 腹 帯 が挿 入されていた. 約1分 間,フラッシュを発光させて10枚程の写真 を撮影したが,交尾中の雌雄はそのままの姿勢を 保持していた. その後,交尾個体の捕獲を行わな か ったので正確な大きさは不明でユあるが,雌雄と もに 通常発見される大型個体の部類であり,甲幅 5 - 7 c m程度であ ったと推定される . 写真 を見る と, 左側 に写っている 雌 の方がやや仰向 けの状態 であること, 雄の方がやや大き い こと,雌は両鋲 脚の先端を 上方に 向け ていること,雄は左鋲脚 を 雌の甲前側縁越しに 甲背面へと 回す一方,右鉄脚 の先端は上方に向け,左第一歩脚の先端を雌の体 の後方に回りこませていることが判る . また,積 み石の空隙は浅い

i

朝だまりになっており,交尾個 体の体 の後端は水中に没していたが,大半の部分 は空気 中に露呈 した状態であった 配偶行動や個体間関係に関する 研究が数多く行 われているシオマネキ類やコメツキガニ類と異な り, オウギガニ上科の配偶行動に関する知見はご く少 ない . Warner (1977) は 総 説 の 中 (p.116) で, 1ρbb (1972) による 学 位論文を引用し,ケ

Takeharu K O SU G E: Copulation of Battozius vinosus 図1 西表島船浦で夜間観察されたクマドリオウギガ observed at night in Funaura Bay, Iriomote Island ニの交尾ベア 右 側 が 雄

(2)

20 西表向船浦で夜間観察されたクマドリオウギガニの交尾 ブカガニの一種 目

lumnus hirtellus

(Linnaeu s) の

交尾姿勢について次のように記述した.

I

雌雄は 向き合 った位置をとり ,雄が鋲胸! と歩) 同lを使って 雌の体を抱く. 両者の腹帯は伸展し,雄の交尾器 が,雌の交尾孔に挿入されている . 両者は申を直 立させた状態か,またはどちらか一方が上位とな る姿勢をとる

.J

この記述は,今回観察されたク マド1)オウギガニの交尾についても概ねあてはま るが,クマドリオウギガニは左右の鉄脚のうち左 鉄脚のみを用いて雌を抱き,大型の右鉄脚は雌を : t ? I えるために

f

吏っていないようであった . 今 回 の 観 察 に よ っ て , ク マ ド リ オ ウ ギ ガ ニ が 夜間の干潮時に交尾することが判明した琉球列 島における本種の抱卵雌の出現時期について,三 宅 (1982) は「抱卵期は 8 月」と記述し,その根 拠となった Saba

et

al. (1978)

は,沖縄烏金武川 河口で 1976年8月10 日に抱卵雌を採集している . また,西表島古見の後良川河口で2006

10月か

2008

11月にかけてのさまざまな時期に観察し た結果,クマド リオウギガニの抱卵雌は 2007

4 m m) を確認し たのみで,それ以外の時期には見つかっていない (小菅 ・松本,未発表資料) 抱卵雌の出現時期や 交尾が行われる季節を正確に把握するには観察例 数が少ないが, 4月に産卵を開始すると仮定した 場合,西表鳥では 11 月に交尾した後,抱卵するま でに少なくとも約5箇月を要する可能性がある . 謝 辞 クマドリオウギガニの調査に協力された西表島 古見在住の松本千枝子氏 文献の入手に尽力され た福岡弘紀博士に深謝する . 文 献 平田義j告- 仲宗根幸男 ・諸喜田茂充, 1988. 民謡に歌 われた貝 カニ ・エビの正体. 沖縄の貝 カニ ・エビ. 風土記社,那覇, pp. 129-136 三宅貞 祥, 1982. ヤグジヤマガニ 田原色日本大型甲殻 類図鑑 (11) 保育社,大阪, p. 127, pl.43 大島 !資, 1962. 八重山の民謡と動物. ナマコとウニ . 内旧老級Iml,東京, pp. 15-36 酒 井 恒 , 1976 日本産蟹類 461 pp. 講談干

J

,東京

Saba, M ., Takeda, M .,

&

Nakasone, Y., 1978. Larval development of

Baptozius vinosus

(H. Milne Edwards) (Crustacea, 8rachyura, Xanthidae). Proceedings of the

J

apanese Society of Systematic Zoology, 14: 29-42 Warner, G. G., 1977. T he Biology of Crabs. 193 pp. E lek

Science,lρndon

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