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高心配性者の認知・行動的困難に対するメタ認知的介入―注意訓練法と自己教示訓練との効果比較―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-06 308

-高心配性者の認知・行動的困難に対するメタ認知的介入

―注意訓練法と自己教示訓練との効果比較―

○町田 規憲1)、清水 健司2)、佐藤 健二3) 1 )徳島大学大学院総合科学教育部、 2 )信州大学人文学部、 3 )徳島大学大学院社会産業理工学研究部社会総合科学域 【問題と目的】 心配とは「否定的情緒を伴った,制御の難しい思考 やイメージの連鎖。不確実だが否定的な結果が予期さ れる問題を心的に解決する試み」(Borkovec, et al., 1983)と定義されている。心配は固執的対処に結びつ く場合に制御困難になることが示唆されており(杉 浦,2002),こうした過剰な心配に基づく固執的情報 処理の維持過程を示したモデルとして,自己注目実行 機能モデルが提唱されている(Wells & Matthews, 1994)。 このモデルでは,実行機能を支える注意制御機能, およびメタ認知的信念(i.e. 思考の働き方や制御法 といった,思考制御に関する信念)との相互作用に よって心配に基づく処理過程が維持されているとして い る。 こ れ を 背 景 理 論 と す る メ タ 認 知 療 法 (Metacognitive Therapy: MCT)は,従来の介入と比 し て そ の 効 果 の 高 さ と 即 効 性 が 示 さ れ て お り (Normann, et al., 2014),前者に基づく介入技法と して注意訓練法(Attention Training Technique: ATT)が開発されている(Wells, 1990)。ATTは過剰な 心配を主症状とする全般不安症患者を対象としたMCT には含まれていないが, 1 週間で大学生の過剰な心配 を有意に低減させることが示されている(田中・杉 浦・神村,2010)。また,後者に基づく介入技法とし て心配に関するメタ認知的信念に焦点化した自己教示 訓練(Self-instructional Training: SIT)が開発さ れ, 2 週間の介入による過剰な心配への効果が示され ている(金築・金築・根建,2010)。このように単独 での介入効果はそれぞれ示されているものの,直接比 較した研究は見当たらない。これらの効果比較を行う ことで,より直接的に効果につながる介入目標が明ら かになり,心配性傾向の高い者(高心配性者)に対す る効率的援助に関する知見を提供し得る。しかし各先 行研究のデザインには,介入期間やホームワーク(以 降HW)の時間など量的差異があり,これら単独の効果 量を報告した研究は非常に少ないため,メタ分析によ る比較は困難である。よって本研究では,それら量的 差異を統制したデザインを用いて,介入目標の違いに よる短期集中的介入の効果を比較検討した。 また,全般不安症患者は,価値に沿った行動及び QOLが健常者と比して有意に低く,価値に沿った行動 の程度がQOLを有意に予測することが示唆されている (Michelson, et al., 2011)。加えて,過剰な心配に より認知資源が枯渇すると,適応的対処の減少と回避 的対処の増加が引き起こされることが示唆されている (Roemer, et al., 2005)。よって高心配性者の困難を 解消するためには,心配の変化だけでなく,行動面の 変化も重要な指標といえる。そのため本研究では,こ れについても検討した。 【方法】 実験協力者 A 大学に通う大学生177名(男性46名,女性60名, 不明71名,M =19.84歳,SD =1.23歳)に対して,講義時 間を利用して心配性傾向を測定する日本語版Penn State Worry Questionnaire (PSWQ)のうち因子負荷 量の大きい上位10項目 を配布した。次に,PSWQ得点 が全調査対象者の平均値(M =29.50, SD =7.80)以上で あり,かつ実験参加を承諾した33名(男性14名,女性 19名)を,ATT群(10名; 男性 4 名,女性 6 名),SIT 群(11名; 男性 5 名,女性 6 名),介入待機群(以降 WLC群12名; 男性 5 名,女性 7 名)に無作為に割り付 けた。その際,群間で性差と日本語版PSWQの得点差が 生じないようにブロック化を行った。 実験デザイン 全ての群で,実験初日(Pre調査), 1 週間後(Post 調査), 2 週間後(FU調査)を以下の内容で実施した。 また,ATT群とSIT群には,Pre調査回答後にそれぞれ の技法とその背景理論に関する心理教育を実施し,そ の後 1 週間,割り付けられた各技法を, 1 日20分程度 HWとして実施するよう求めた。HWの内容については, それぞれWells (2009),金築他(2010)を参考に作成 した。 介入評価 ( 1 )日本語版PSWQ:杉浦・丹野(2000)を用い,16 項目 5 件法で回答を求めた。 ( 2 )BADS-SF:山本・首藤・坂井(2015)を用い,行 動活性化の程度について 8 項目 7 件法で回答を求め た。 ( 3 )認知的統制:杉浦・杉浦(2003)による「破局 的思考の緩和」の下位尺度のみ用い, 5 項目 4 件法 で回答を求めた。 ( 4 )心配に関するメタ認知的信念:金築・伊藤・根 建(2008)の各下位尺度から因子負荷量の大きい上 位 7 項目ずつを用い, 5 件法で回答を求めた。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-06 309 -( 5 )VACS:今井他-(2015)を用い,注意制御機能を 下位尺度ごとに計18項目 6 件法で回答を求めた。 倫理的配慮 本研究は,信州大学人文学部の調査・実験に関する 倫理委員会の承認を受けている。 【結果】 まず,各群のPre時点における各下位尺度得点を従 属変数として 1 要因分散分析を実施したところ,いず れの指標においても有意差はみられなかった。 次に,各下位尺度得点を従属変数,群(ATT群,SIT 群,WLC群)×時期(Pre, Post, FU)を独立変数とし た 2 要因混合分散分析を実施した。その結果,PSWQ, 破局的思考の緩和,ネガティブなメタ認知的信念の各 得点において交互作用が有意であり,BADS-SF得点に おいては有意傾向であったため,それぞれ単純主効果 検定を実施した。本稿では以下の主要な結果のみ報告 する(Figure.1)。なお,以下には効果量の指標とし てHedge’s g (Hedges, 1981) を g ,その信頼区間を []で示す。 ( 1 )PSWQ得点において,ATT群とSIT群でPre-Post間, Pre-FU間で有意に低減していた。また,FU時点にお いて,WLC群と比してSIT群とATT群の得点が有意に 低かった(t(93)=-2.41, p <.05, g =-2.20 [-3.26, -1.15]; t(93)=-3.02, p <.01, g =-2.23 [-3.27, -1.19])。 ( 2 )BADS-SF得点において,Post時点の得点がWLC群 と 比 し てATT群 に お い て 有 意 に 低 か っ た(t(93) =2.52, p <.05, g =2.08 [1.05, 3.12])。一方で, FU時点では,有意な群差は示されなかった。 【考察】 両技法においてPSWQ得点の有意な低減がみられたも のの,両介入群に有意な群差は示されなかったことか ら,本研究から両技法における心配低減効果に差があ るとは言えない。ただし,ATT群において注意制御機 能に有意な変化が認められなかったことから,注意制 御機能に変化が認められた場合のATTとの効果の差に ついては不明確であり,その検討は今後の課題であ る。 また,行動活性化の群差は有意傾向に留まり,FU時 点ではその効果が消失していた。このことから,注意 制御機能への短期的介入単独では,行動活性化を維持 できない可能性が示唆された。近年メタ認知的信念に よる症状への影響に対し,注意制御機能が調整効果を 持 つ 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る(e.g. 向 井・ 杉 浦, 2018)。よって今後は,両側面への介入の作用機序の 特定および実施法の精緻化が求められる。

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