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育児期の父母における家庭と仕事の関連―インタビュー調査を通して―

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-65 426

-育児期の父母における家庭と仕事の関連―インタビュー調査を通して―

○伊藤 里菜、池田 浩之 兵庫教育大学大学院 問題と目的 近年日本では,共働き世帯数が年々増加しており (内閣府,2017),多くの人が母,妻,労働者といった 複数の役割を持ち,多重役割を担っている。しかし, 複数の役割をこなすことは簡単ではなく,子どもの体 調不良時に妻も夫も重要な仕事があり,休みにくかっ たと回答した者は79.5%にも上り(久保,2012),多 重役割による困難があることがうかがえる。 役割間の関係を捉える枠組みの代表的モデルとし て,一方の役割における状況や経験が,他方の役割に おける状況や経験にも影響を及ぼすとする「スピル オーバー(流出)」,一方の役割での不満を他方の役割 での満足により埋め合わせるとする「補償」がある (福丸,2001)。この 2 つは仕事と家庭を両立すること のポジティブな面に着目したモデルである。本研究で は,この 2 つを用いて,役割間のポジティブな関係に 焦点を当てる。 先行研究では夫婦間での関連が指摘されており,仕 事と家庭の両立のネガティブな面・ポジティブな面の 双方が夫婦間で関連すること(黒澤,2011)が示され ている。このようなことは明らかになっているが,仕 事や家庭に関連する要因は非常に多く,複雑に絡み 合っている。それらを明らかにするためには,個々人 の状況などをより詳しく見ていく必要があると思われ る。 以上より本研究では,家庭と仕事という役割間のポ ジティブな影響を,尺度を用いて測定するとともに, インタビュー調査によって,育児期の子どもを持ちな がら就労している人の質的な実態を明らかにすること を目的とする。 方法 被調査者と実施時期就学前の子どもを持ち,就労し ている男女 6 名を対象とし,2017年 9 月から2018年 1 月にかけて実施した。 倫理的配慮調査の概要と目的,回答は自由意志に基 づくものであり,中止可能であること,調査内容は研 究にのみ使用し,個人が特定されるかたちで発表され ることはないこと等を記した書類を事前に配布し,同 意が得られた者に調査を実施した。 手続き縁故法により,調査対象者となる男女 6 名を 選定した。調査は被調査者の会社の面談室などの静か な部屋で実施した。初めに質問紙への記入を求め,そ の後30分程度の半構造化面接を実施した。 質問紙 1 .フェイスシート 2 .スピルオーバー尺 度1 (福丸,2001) 3 .主観的幸福感尺度4 (伊藤・ 相良・池田・川浦,2003) 4 .スピルオーバー尺度2 (小泉・福丸ら,2007) 5 .仕事観尺度3 (福丸・無 藤・ 飯 長,1 9 9 9) 6 .G H Q 3 05 ( 日 本 文 化 科 学 社, 1996,1985) インタビュー調査 初めに被調査者が記入したフェイ スシートを見ながら,家族構成や配偶者について聞き 取り,その後仕事や家庭,その両立について質問をし た。質問をしていく中で気になった点についてはさら に詳しく尋ねた。 結果と考察 6 名の調査対象者の平均年齢は34.0歳(年齢範囲 28–38歳)であった。子どもの人数は平均2.0人,末子 年齢は平均1.5歳であった。調査対象者のうち 5 名は 常勤, 1 名は非常勤であった。 尺度得点の素点を表 1 に示す。表 1 より,スピル オーバー尺度について,福丸・小泉(2003)と同様, 仕事から家庭への補償では男性よりも女性の方が得点 が高かった。ここには,生活における家庭や仕事の比 重 の 違 い が 関 係 し て い る と 考 え ら れ る。 イ ン タ ビュー調査では,「仕事が 8 , 9 で家庭が 1 くらい (ID1)」,「夫は仕事で忙しくて(ID3)」といった,夫 の就労時間が長く,仕事中心に生活を送っていること を示唆する語りや,「主人が,基本(家事を)手伝っ てくれはしないので(ID2)」「(家事や育児の比率は) 平日だったら私がほぼ,8 ,8 くらいですかね(ID3)」 といった,家事や育児を妻が中心として行っているこ とを示唆する語りが得られた。内閣府(2018)におい て,30代,40代男性では週の就労時間が60時間以上で ある割合が約15%と他と比べ高く, 6 歳未満の子ども を持つ夫婦の家事・育児関連時間は妻では454分に対 し夫では83分とかなり短いことが示されているが,本 調査においても男性は仕事中心,女性は家庭中心に生 活を送っているということが示された。また,家庭で の楽しさ・やりがいについての質問に対し,男性では 「子どもたちと一緒に過ごせるのはとても幸せ(ID1)」 といった子どもや家族といること自体が楽しく,幸せ なことであるという意見が目立った。一方女性では, 「いろんな会話ができるようになったりすると,まあ 成長を感じますし(ID3)」といった子どもの成長にや りがいを見出す発言や,「子どもとの世界ばっかりだ とちょっとしんどい(ID2)」,といった,子どもと長

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-65 427 -く過ごすことへのネガティブな意見もみられた。初 塚・石田(1998)では母親では父親と比べ育児関連ス トレスが高い傾向にあることが示されており,育児期 の母親では,家庭に重きを置いて生活することで子ど もの成長に喜びを感じる一方,育児によるストレスも 多く感じていると思われる。 以上より,男性は仕事中心の生活をしており,子ど もと過ごす時間が限られているため過ごすこと自体が 楽しいと感じているが,女性では子どもと過ごす時間 が長く,教育を担っていることで,子育てによるスト レスを感じやすいと思われる。そのため,仕事に行く ことで発散できる,家庭でのネガティブな状況を埋め 合わせられる,と認識しやすいと考えられた。 また,先行研究の得点と比較して,女性において家 庭から仕事へのネガティブ・スピルオーバーの得点と 仕事から家庭への補償の得点が高かった。ここから も,本調査の女性対象者では家庭から仕事へのネガ ティブな影響を多く認識しており,仕事は家庭におけ るネガティブな影響を埋め合わせるものとして機能し ていると思われる。個々の得点をみていくと,女性 3 名のうち仕事から家庭への補償の得点が高いのはID3, 5 の 2 名である。この 2 人は就労時間を短縮し,仕事 内容も事務等に制限している。インタビュー調査にお いても 2 名とも,仕事の内容自体は大変ではないとい う主旨の発言があったことから,仕事の内容や時間を 調整し,仕事が負担にならない働き方を選択すること で,ポジティブな面を知覚しやすいことが考えられ た。 また今回,「(妻が行った家事に対して)旦那が感謝 をしてくれないときはすごく嫌だなあと思います (ID2)」,「家事のやりがいは奥さんの感謝(ID6)」と いった発言がみられた。佐藤(2013)によると,育児 期の母親において夫婦関係がよいほど子育てへの否定 感が低く,父親においては夫婦関係がよいほど育児に 参与する傾向がある。これを踏まえると,家事・育児 への感謝があることで,夫婦関係が良くなり,母親で は家事・育児による精神的負担が小さく,父親では家 事・育児の時間が増加することが考えられる。今後多 重役割について考えるにあたり,夫婦それぞれを調査 し,互いの家事や育児への感謝についてより詳しく見 ていくことで,家庭や仕事に関連する要因が見出され る可能性が示唆された。

参照

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