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対話事例にみる児童の社会認識の発達 : 漁村におけるインタヴュー調査より

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(1)

対話事例 にみ る児童 の社会認識の発達

―― 漁村 にお けるイ ンタ ヴュー調査 よ リーー

An Analysis of the Dialogue with Children

in a Fittling Village about Conception of SOcial lnstitutions

教育心理学教室 田 丸 敏 高

Toshitaka′ ramaru* : An analysis of the dialogue with children in a fishing village about cOnception of sOcial institutions. (Journa1 0f the Faculty of Education,「 Γottori

University,<Education Science>,1987,29-1) は じめ に 子 どもの認識活動 ない し思考 に接近するためには

,様

々 な方法が考 えられ る。本研究 において は 「対話法」 を用いているが

,

同様 の方法 は

,

発達心理学 の巨人 と言われている

Piaget,J(1896-1980)や

Wallon,H(1879-1962)に

よって既 に用い られている。

Piaget(1926)は ,

こうした方法 を臨床法 と呼び

,精

神科の医師の臨床検査 と照応 させて とらえ ている。「臨床検査 とい うものは医師が自ら問題 をつ くり

,仮

説 を立 てて,その仮説 に条件 を適合 さ せ

,そ

して最後 に各仮説 を

,彼

が会話において刺戟す る反応 に対 してテス トすることによってそれ を統制す るとい う意味で実験的の ものである。」 そして

,そ

の意義 について,「テス トと直接観察の 方法における最 も長所 とす るところの ものを結合 し

,両

者の短所 とす るところの もの を排除す る」 としている。 この方法 によって

,Piagetは

児童の思考 の実在性

,汎

心性

,人

工性 を示 した。 また

,Wallon(1945)は

「子 どもの思考の起源」に関す る研究 を対話法 を用いて行 っている。彼 は,「子 どもの思考能力 をためす唯―の手段 は

,子

どもか ら説明 をうるような仕方で

,子

どもに質問 することだ」 と考 える。 そして

,こ

の方法の意義 について

,

とりわけ「子 どもが

,あ

る障害 に直面 した とき, どのように

,ふ

るまうか。子 どもの可能性 は

,な

にか。子 どもの不充分 さは

,ど

んな も のか。子 どもは

,

どんな精神的メカニズムをそなえてい るか」をみるときに高 く評価する。 こうし て

,Wallonは

,「子 どもの出発点 における思考のはた らき」である「対

Jや

「矛盾」,「混同心性」 を明 らかにしてい る。 なお

,Piagetに

おいて も

Wallonに

おいて も

,主

た る質問 は自然現象に関 してなされている。 こ れは

,子

どもの興味お よび研究者の関心の時代性 によるもの と考えられる。本研究では

,社

会認識 に関 して対話法が用い られた。 ここに

,本

研究の特徴が ある。児童が社会 を認識 し始 めるとき

,児

童の思考 に特有の困難があ らわになる。 ここでは

,

こうした困難 に着 目しなが ら

,児

童の社会認識

(2)

田丸敏高:対話事例 にみ る児童の社会認識の発達 過程 を明 らか にす る こ とを課題 とす る。 方 法 被験児

T小

学校

2年

生 13名

, 4年

生 24名

, 6年

生 15名 日時

1986年

7月16日 午 後1時か ら

4時

場所

T小

学校教 室

.

手続 き 一人 当た り30分程 度 の個人 面接 を行 う (面接員 15名)。 イ ンタヴ ュー 内容 は

,カ

セ ッ トテープを用 いて録音 した。 質 問項 目

1.あ

なた は

,お

店 で お菓 子 を買 った こ とが あ ります か。 お菓子 を買 う ときに は ど う し ます か。 ど うしてお金 を払 うの で す か。 その お金 をお店 屋 さん は どうす る と思 い ますか。

2.バ

ス に乗 りたい ときは どうしますか。 どうしてお金 を払 うのですか。運転 手 さん はそのお金 を どうす るのだ と思 い ますか。

3.太

郎 くんが

,お

店 屋 さんでお金 を払 ってお菓子 を買 い ま した。 太郎 くん とお店 屋 さん とで は ど ち らが得 を した と思 い ますか。 それ は どうしてですか。

4.お

店 屋 さん に行 った ところ

,バ

ナ ナ は1本30円,スイ カ は1個800円 で した。 どうしてバ ナナ よ リスイカの方が値段 が高 いのですか。 5。 お店屋 さんに行 った ところ

,い

わ しは1匹30円

,は

まちは1匹800円 で した。 どうしていわ しよ りはまちの方が値段 が高 いのですか。 6。 お金で買 える もの には どんな ものが あ りますか。 お金 で買 えない ものには どんな ものが あ りま すか。

7.お

金 とは何 ですか。

8.Tの

人 た ち は, どん な仕事 を してい ますか。知 ってい る もの をあげて くだ さい。 9。 大人 は

,い

ろい ろな仕事 をして働 いてい ます。大人 は

,

ど うして働 くのですか。 10。 あなた は

,は

や く大人 になって働 きたいですか。 それ は どうしてですか。

11.大

人 は

,働

くとお金 を稼 ぎます。 それ は どうしてですか。 お医者 さん と学校 の先生 とは

,ど

ち らが余計 にお金 を稼 ぐと思 い ますか。 それ は どうしてですか。

12.あ

なた は

,お

金 が ほ しいです か。 どの くらい ほ しいですか。 それ は どうしてですか。 お金がい っぱいい っぱ いあ った らどうしますか。

13,あ

なた は

,Tに

生 まれ て良か った と思 い ますか。 それ は どうしてですか。

Tの

良 い点 は どんな 点 ですか。

Tの

悪 い点 は どんな点 ですか。

14.30年

,Tは

どん な町 にな っている と思 い ますか。 15。 あなたが もし町長 さんだ った ら

,Tを

どん な町 に したいですか。 16。 小学校 を卒業 した ら

,あ

なた は どうしたいですか。

17.あ

なた は ここで ず っ と暮 らしたいですか。 それ は どう してですか。

(3)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 29巻 第

1号 (1987) 57

結 果 と考 察 用い られ る資料 は

,イ

ンタヴュー過程 その ままを書 き出 した ものである。各年齢段階に典型的な 対話事例 を示 しなが ら子 どもの社会認識 について考察 してい く。

1.場

面 に拘束 された思考 M. N。

(2年

生) お菓子 を買 うときはどういうふ うにして買 う

?―

―「お金 を出 して買 う。」―― どうしてお金 を出 す と思 う

?一

―「わか りません。」― ― どうして

?考

えてみて。Mく ん考 えてみて。 なんでお金払 う んだろうかあ

?―

―「店 の もん勝手 に取 った らいけん。」― ―勝手 に取 った らいけん

,た

だで持 って 帰 った らいけんなあ。一―「店の もんは店の もん。」――店の もんを持 って帰 るのは

,な

んでお金払 わん といけんだあ

?―

―「 どろぼ うした らいけん。」―― ……そこのお店の人 はな

,Mく

んがお金 を 払 った らそのお金 をどうす るんだ と思 う

?―

―「お店の人がお金 を払 う。」― ― どこに払 うんだ

?一

―「お店のおばさんがお金 を出 した。……わか りません。」――考 えてみん さいな。 どこに払 うんだ と思 う

?Mく

んは

,ど

っか払 うって言 つたなあ

,お

ばさんが。一―「お店 のおばさんが払 う。

J一

一 だれに

?―

―「お金 を出 した人。」―― だれだ ろう

,お

金 を出 した人 って

?一

― 「わか りません。J 一―やっぱ りわか らんか。Mく んがお店 にお金 を出 して

,お

店のおばさんはMく んか らお金 をもら って

,そ

れでそのお金 をお店 のおばさんはどうする

?一

―「お店のおばさんは

,お

つ りに払 った り, おつ りを入れ といておつ りを払 うときに出 して。

J―

一 おつ りは全部入れた ままにしとく

?一

―「お つ りの ときに出 して。」一一 おつ りは全部出すんか?チャ リーンっていうとこに

,ま

だ こん中にお金 残 っ とるだ ろう。そした らその残 ったお金 はどうす るん

?―

―「残 ったお金 は今度来た人がおつ り を…… う―ん

,わ

か りません。」一一今度来た人 におつ りを出 した りす るんだな。 そ した らみんなお つ りを出 しちゃうんだろうか

?―

―「引 き算 みたいに600円出 して

,お

つ りを出 した ら後 で400円も らえる。」―― そ した らみんなおつ りで出 しちゃ う?あ とお店 に残 らんか

?―

― 「わか りません。」 一― そのお金 をどうす るだ ろうなあ

?一

―「や っぱ りわか りません。」―一わか らんか

?―

―「店 の おばさん じゃない とわか らん。J一― じゃあ, もしMく んが店のおばさんだ った らどうす ると思 う? ――「だけど

,わ

か りません。」―― わか らんか

?―

―「勝手 にお金取 った りした らいけんけ。

J一

M商

店 さん

,Mお

店屋 さんっていうのがあってな

,お

菓子買いに行 ってお金払 うだろ。おつ りも らうわな。そ した ら

,あ

とMく んにお金が残 るがなあ

,い

くらか。 もしぼ くが1,000円持 って行 って 600円の ものを買 って1,000円出 した ら

,Mく

んがおつ りを400円くれるな。 あ と600円残 るが

,そ

れ をどうす る

?―

―「 それはそん中に入れ とく。」一一 そん中にずっ と入れ とくだか

?―

―「ずっ と入 れ とく。ほかの人が来てお金 を出 して,おつ りがいるときに出す。」一― それだけか

?―

― 「はい。J 本児 は

,場

面 に縛 られている。お金 はお菓子の買手か ら売手 に渡 され

,次

にはおつ りとして売手 か ら買手 に返 され る。お金の一部 は

,レ

ジの中に蓄 えられ るが

,そ

れ もいつか またおつ りとして買 手 に渡 され るのを待 っているだけである。残 りはあって も

,ず

っと入れておかれ るだけである。 思考が場面 を越 えられないため

,お

金の流通 について想像することは本児 には困難である。買手 か ら受 け取 られたお金が商品の仕入れに使われた り生活費 とされた りす ることは

,本

児 には想像 し えないことなのである。「お金 を払 うこと」と「おつ りを返す ことJとは

,対

となって本児の思考 を 堂々め ぐりさせ る。

(4)

田丸敏高:対話事例 にみる児童の社会認識の発達 本児の ことばには

,

ときどき主語が欠 ける。行為の主体 が売手であるのか買手で あるのか明示 さ れない。能動 と受動 とか混同 される。 ここに も場面 に拘束 された本児の思考の特徴が よ く現れてい る。 太郎 くんってい う人がおってお店屋 さんにお菓子 を買 いに行 ったが

,そ

した ら太郎 くん とお店屋 さんのおばさん とではどっちが得 をした と思 う

?一

―「おばさん。」一一 おばさん力ゞ得 した と思 うか。 どうして

?―

―「おつ りを出 して……やっぱ りどっちも得 した と思 う。J―一 どっちも得 した と思 う? おばさんはどうして得 したの

?―

―「おばさんはおつ りを もらえるし

,そ

れにあの太郎 くんってい う人 はおつ りのお金 をもらえる。」―一おつ りの何 が もらえる

?―

―「おつ りの……わか りません。」 ―一わか らん

?太

郎 くんがなポテ トチ ップスを買 って100円を出 して買って出 した ら,太郎 くんはポ テ トチップスが もらえるだ ろ。そ した らお店 のおばさんは太郎 くんか ら100円 もらうな。どっちが得 し たんだろう

?―

―「お店のおばさん。」―― どうしてだ と思 う

?一

―「おばさんは太郎 くんってい う 人がお菓子 を買 ってお金 をもうか る。」―― どうして もうか ると思 う

?―

―「太郎 くん とい う人がお 菓子 を買 って100円お店 のおぼさんに出 したけ。」― ― もうかると思 うか。 じゃあ

,太

郎 くんは損 し た と思 うか

?―

―「太郎 くん もお菓子が買 えたけ。」―一Mく んは

,太

郎 くん とお店屋 さんの どっち にな りたい

?―

―「やっぱ りどっち も。」 子 どもにはお金 は価値 あるもの と考 えられている。 どち らが得かを考 えた とき

,

まず店 のおばさ んだ と思 う。しか し

,商

品 と貨幣 との交換が考 えられているわけではない。違 った ものが交換 され るのはなぜか

?何

が両者 に共通 しているのか ?こ うした問題 は本児の思考 を越 えてい る。 そこで, おつ りを意識 した とたん太郎 くん も得 した と考 えて しまう。確かに

,お

使 い として置い物 に行 き, おつ りを駄賃で もらった ら一一本児 に も経験があるであろう一一太郎 くん も得 した と思われるので あろう。 本児では

,損

得が相補的関係 をな していない。 したが って一方の得が他方の損 にはな らない。 お ばさんはお金

,太

郎 くんはお菓子 とい うそれぞれ別々の理 由で双方の得が認 め られ る。同等 な もの による比較 は見 られず

,別

個の場面が思 い浮かべ られ る。 今度 ははまちが

1匹

800円 ,どうしていわ しよ りはまちの方が高い と思 う?は まち といわ しとどっ ちが大 きいかな

?一

―「わか りません。」一一 どうしてだろうな

?考

えてみて。 いわ しが30円で

,は

まちが800円。―― 「いわ しって珂ヽさい魚だでなあ

,骨

がいっぱいある。」―― だか ら安 い

?他

に何 かないかな?―― 「えっ と

,わ

か りません。

J―

一 さだ とたい

,さ

ば食べた ことある

?一

―「 あ りま す。」一―たいは

?―

―「食べた ことないけど大 きさは知 っています。砂糖 が入 っ とるのなんかで見 た ことがあ ります。」―一 さばは

?一

―「食 った ことあるし

,見

た こともある。」―市 どの くらいの 大 きさだ

?一

―「 この くらい。」―― さば とたい と

,さ

ばの方が大 きいな

,た

いに比べ て。 どっちが 高い と思 う

,値

段が

?―

―「 さば。」―― どうして

?―

―「たいは今 ごろあん まり釣れんけ

,味

がわ か らんけ,買わん と思 う。J――・・・・…― バナナ とスイカだったらどうだったかいな

?一

―「スイカ。J ―― どうして

?一

―「大 きい し

,味

がおいしいか ら。」―― おいしいか ら。 いわ しとはまちは

,い

わ しよりはまちの方が大 きいだがな

?―

―「だ けど値段が高いのはおい しいってい うことで

,安

いっ ていうのはまずいっていうことか もしれん。」

(5)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 29巻 第

1号

(1987) 物 の値段 の違 い は どこか ら来 るのだ ろ うか。 本 児 は

,最

初 経験 的場 面 的 に考 え よ う とす る。 そ し て

,大

きさ とお い しさ とに言及 してい る。片方 だ けで は どこか理 由不足 を感 じる とこの2つを合 わ せ て理 由にす る。 「値段 が高 い」 と「 おい しい」 とは

,対

を為 してい る。 そのため,「 おい しいか ら値段 が高 い」は 容 易 に「値段 が高 いか らおい しい」 に替 わ る。 Mく んが37歳 にな る ころには

Tの

町 は どん なふ うにな っ とる と思 う

?一

―「 わ か りませ ん。」一 一 想像 してみて。一 ―「古 くなっ とる。」― ― どん な感 じにな っ とる と思 う

,お

うちや あが

?―

―「お うちや あはみ ん な貧 乏 になっ とる。」一 一 みん な貧 乏 になっ とるか なあ

?一

―「 な らん うち もあ るか もしれ ない。」―一 この港 は大 き くなって い くと思 うか

,そ

の ままか

?一

―「大 き くな って い くと思 い ます。」―一 舟 は

?一

―「大 き くな って い きませ ん。人 が作 って いか ん と大 き くな って い き ませ ん。」 一 一 町 は?山 とか木 とか は

?一

―「わか りませ ん。」一 一 じゃあ

,ど

う して こんなふ うに変 わ って い くと思 う?た とえば どうして貧 乏 になってい くと思 う

?一

― 「お金 をい っぱい使 った り

,家

に落 書 きや あ した りす るけ,きた ない家 になってい くと思 う。J一一港 はどうして大 き くなってい くと思 う ? ―― 「港 は聞 いた こ とが あ る……わか りませ ん。」 本 児 が 自分 の町 の将 来 を想像 す る とき

,ま

ず経験 した場面一一 古 くなる家

,落

書 き

,お

金 を使 っ て しまうこと一一 か ら始 め る。次 いで

,人

か ら聞 いた とい う伝 聞 による。 しか し

,そ

の伝 聞 の根 拠 につ いて は想像 しえない。真 の推論活動 には

,

まだ至 らない。

M.R。

(2年

生) Rく んは

,お

店 で お菓 子 を買 った こ とあ るわ な

?―

―「 あ る。」― ― その ときにね,・お菓子 を買 う ときには どうす る

?一

―「 おね え さん と一緒 に買 い に行 く。」― ― じゃあ

,お

ね えさん は どうす る ? お菓子 をが さっ と店屋 か ら取 って

,で

,あ

とど うす る?ただ持 って帰 っちゃ う

?一

― 「 うん

,お

金 を払 って

,あ

,お

金 を出 して買 って帰 る。」一 ― じゃあな

,ど

う してお店 の人 にお金 を払 うんだ と 思 う

?一

―「取 って帰 った らどろぼ う と思 う。」― ― どろぼ う と思 う

?―

―「 うん

,夜

の ときに遅 れ て取 りに行 った らどろぼ うと思 う

,お

金 を払 わ ん と。 だ け―。」― ― じゃあ

,お

店 の人 が や る って言 った らもらって帰 る

?―

―「遠慮 す る。」― ― そ うか そ うか。 じゃあなあ

,お

店屋 さん は も らった お 金 を どうす る と思 う

?―

― 「・…・・」

に使 うか な

?―

― 「置 い と く。」――置 い と く― う

?―

「 うん。」―一 置 い といて どん どん どん どんお金 をため る

?―

― 「 おつ りを出 した りす る。」― 一 お つ りを出す け ど,も らったお金が あ るだ ろう

?一

― 「 うん

,50円

や あ出 した らなあ

,な

ん ばか くる, おつ り。」―一 おつ りくれ る。 もしもな

,400円

の本 買 い に行 った ときにな,1,000円 出 した ら600円 払 って くれ るだ って。 じゃあ,その400円 のお金 を どうす る?自分 は

,本

屋 さん どう しな る と思 う ? ――「 あんなあ,1,000と ,1,000円 もらった お つ り……」― ―・・・……

-600円

出 す だ ろ。 で

,

もらっ た1,000円 札 は どうす る と思 う?また おつ りに使 う

?―

― 「わか らん。」 本 児 にお いて も場 面 的思考が特徴的で ある。 お金 は買手 か ら売手 に支払 われ

,再

び売手 か ら買手 におつ りとして返 され る。 それ以外 のお金 の動 きは

,本

児 の想像 を越 えてい る。 余分 なお金 は置 い ておかれ るだ けで あ る。 そ うした こ とか ら

,本

児 に とって

,

もの を買 った ときにお金 を支払 わなけれ ばい けない理 由 は,

(6)

田丸敏高 :対 話事例 にみる児童の社会認識の発達 「取 って帰 った ら (他人 が

)ど

ろぼ うと思 う」 か らで あ る とい うことにな る。理 由 は

,社

会 制度 に で はな く

,日

頃大 人 か ら言 い聞か されている「道徳 的 な もの

Jに

とどまって いる。 「 どろぼ う と思 う」 とい う表現 にみ られ るよ うに

,主

語 が明示 され ないの も本 児 の場面 的思考 の 特徴 で ある。 なお

,

どろぼ うの話 に後 に「夜 の とき」が出 て きたの は

,Wallonの

言 う「対 」のた め で あろ う。

M.A。

(2年

生) お店 でお菓子買 った こ とある

?―

―「 うん。

J一

― … … そん な ときになあ

,ど

うや って買 った

?―

― 「 えっ と―

,お

金 を出 して買 った。」―― なんでお金 出 したんだ

,な

んでだ ろ う

?―

― 「 う― ん, あ―

,わ

か らん。」―― なんでお金払 うのか なあ

?一

― 「 お金 もうけ とるけ―。

J一

一 だれ がお金 も うけ とるだ

?―

― 「 お店 の人 。」一 ― お店 の人 が お金 もうけ とるか

?―

― 「 うん。」― 一 ぶ ― ん

,な

んでお金 もうけん とい けんのか なあ

?―

―「 お菓 子 を持 って きた な

,お

じさん に集 めて渡す。」― 一 じゃあ

,お

店 の人 はな

,お

客 さんが払 ったお金 はみ― ん なお菓子 とか持 って きた人 に渡 しち ゃ うん か

,み

んな渡 しち ゃ うんか

?―

―「 うん

,み

ん な。 お金 の値段 だ け。」一一 あ とは どうす る

?―

―「 あ とは置 い とってか ら, また

,た

めた ん を……

J一

― な に, もっ とはっ き り言 って

?―

― 「 あれ

,集

めたんだ け残 ったの と一緒 に一緒 に置 い とってか ら

,

また

,持

って きたの に

,あ

,た

め とってか ら

,ま

,持

って きたお じさん に

,あ

,お

金 を また払 う。」― ― じゃ

,み

―ん な

,や

っぱ りあれか, 持 って きた お じさん にあげちゃ うか

?―

―「 ううん

,値

段 だ け。」――値 段 だ け。 だか ら

,そ

の ほか のやつ は どうす る

?一

― 「 うん

,置

い とってか ら

,置

い とってか ら……」― 一 置 い といて どうす る

?―

―「 え とな。

J一

一 置 い と くだ けか

?―

―「置 い とい てか ら

,ま

たた まった ら

,ま

,持

って き たお じさんに

,あ

れ ―

,お

じさん にお金 を払 う。」 本児 は

,お

店 の人 が

,客

か ら受 け取 ったお金 をた めてお くだ けで な く

,仕

入 れ に使 うことを考 え る。 おつ りの場面 しか思 い浮 かべ られない子 どもに比 べれ ば

,一

歩進 んで い る と言 え るか もしれ な い。 しか し

,本

児 は,「 お菓子 を持 って きたお じさん にお金 を渡す」ことを想像 した とたん

,お

金 の 他 の使 われ方 を考 え る ことがで きな くなって しまう。

1つ

の思考が他 の思考 を妨 げ る。1つの場面 を越 えよう として

,ま

た再 び次 の場面 に拘束 され る。 (バス に乗 った とき

)な

んで お金払 った

?―

― 「 あれ … …店 と同 じよ うに

,あ

,お

金 もうけ と るけ。」―一 だれがお金 もうけ とるだ

?―

― 「バ スの運 転 手 さん。

J一

一 じゃあ な

,バ

スの運転手 さ んな, もうけたお金 どうす るんか なあ

?―

―「 ん?」― ― もうけたお金

,お

客 さん に も らうだ ろ う ? ――「集 め とってか ら

,そ

して

,あ

ったお金 で ごはんや買 った りす る。

J一

一 ごはん なんか買 った り す る。 それだ けか

?―

―「 それ や か なあ

,そ

れ や

,バ

スの 中 に入 れ とってか ら両替 す る ときに。

J―

下 ああ

,両

替 。一 ― 「 や る。」―一 ほかには

,そ

れだ け

?―

―「 うん。」一 一 それ だ けか, もうな ん に も使 わん?じゃあ な

,そ

の運転手 さんが集 めたお金 って い うの はな

,運

転 手 さんが全 部使 っちゃ うんか

?―

―「 う うん

,ほ

か の人。

J一

― ほかの人 。 ほかの人 ってだれだ

?―

―「運転 手 や,あの 一, バ スの運転手 さんや,あ れ,あれ,な んだいな,パ トカ ー じゃな くてタクシー。」―― タク シ

?あ

―, 待 って よ待 って よ。 だか ら,バス に乗 るだろ,バス に乗 った ときにお金 を運転 手 さん に払 うんだ ろ。 この箱 に入 れ るんだ け ど

,そ

の じゃ箱 に入 れたお金 はな

,運

転 手 さんが全 部使 っちゃ うんか

?一

― 「 ううん。 あ

,た

くさん にな る まで入 れ とってか ら

,両

替 す る ところのお金 に入 るけ

,置

い と く。」

(7)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 29巻 第

1号

(1987) ――置 い と くだ けか

?一

― 「置 い とって

,満

杯 にな った ら取 る。」―一 取 って どうす る

,運

転 手 さ んが 使 っちゃ うんか

?一

― 「 ううん

,パ

ンや買 った り

,バ

スや洗 った りす る。油 や入 れた り。J ここで

,本

児が最初 に想像す るお金の使われ方は

,生

活費である。次に

,両

替の場面が出て くる が

,店

屋のおつ りの ときと同様

,こ

の場面で本児の思考 はいったん閉 じられ る。 しか し

,執

拗 に質 問が繰 り返 され ると,「ほかの人

Jが

引 き出される。お金のほかの使 われ方か ら「 ほかの人」が出て きたのであろうが

,そ

のため本児の思考 は脇道 に外れてい く。思考の一貫性 を維持す ることは

,困

難なのである。 本児 は,「タクシー」まで外れた後 に

,再

び箱 に入 っているお金 を想像する。 そ して

,今

度 は

,バ

ス代やバスの維持費 に思 い至 る。場面的拘束か ら抜 け出ようとしている。

2.推

論的思考の芽生 え・場面的思考 との葛藤

T.Y。 (4年

生) お菓子 を買 うときはどうすればいいですか

?―

―「 まずおやつを取 って

,そ

いで食品 を出 して, そいでお金 を出 します。」― ―お金払 うな。 どうしてお金 を払 うんですか

?―

―「 はい

,買

うものだ か ら。買 うものだか ら。

J―

―買 うものはお金払わん といけん

?―

― 「はい。」―― どうして

,ど

う して買 うものはお金払わん といけないんですか

?―

―「・…・.」

__ぉ

菓子 を持 つてつてお金 を払 っ てお菓子 をもらうな。 どうしてお金 を払わん とお菓子が もらえんだろうな

?一

― 「自分のためにな るものだか ら。」――・・・…

店屋 さんはそのお金 をどうしますか

?―

―「 う―ん

,何

かに使 っち ゃいます。」―― そのお金 を何かって

,た

とえばどうい うこと

?何

に使 うの

?―

―「なに

,お

店 な ど で買 うもの。」一― お店 な どで買 うもの?お店 の人が また どっかのお店で買 うもの

?―

―「服 とか。」 本児は

,お

金 を払 うための理由を発見 しようと努力 している。 そ して,「自分のためになる」とい う理由を正当な ものだ として述べる。お金の流通 について も考 えはじめている。 どうしてバ スに乗 る ときにな

,お

金 を払わん といけんですか

?―

―「 自分 を遠 くまで連れていっ て くれるか ら。」一一 じゃあ

,そ

のお金 は

,自

分が払 ったお金 は

,そ

の後 どうなると思 いますか ?こ んな箱みたいなのに入れ るがんな

,ガ

チャって。 それか らどうなると思 う

?―

― 「取 り出 していろ いろな ところに使 うと思 います。」一―取 り出 していろいろ

,だ

れが使 うの

?一

―「 そのバ スの運転 手 さん。」一一運転手 さんがそのお金 を取 って

,そ

れか らそのお金 は運転手 さんが もらって帰 るの? ――「 じゃな くて

,半

分 は自分が もらって

,そ

して もう1つは会社 な どに持 ってい きます。J ここで も

,お

金 を払 うに正 当な理由「速 くまで連れてい く」 を見 い出す努力が見 られ る。 また, 運転手が得たお金 については

,会

社 に渡 され ることが推理 され るが

,そ

れだけでは運転手 に不公平 ということで「半分」ずつの分配が思いつかれ る。 本児 は様々な理由を考 える。 (太郎 くんがお店屋 さんで買い物 をした とき

)ど

っちが得 した と思 いますか

?一

― 「 う―ん

,お

店屋 さんだ と思 います。」― 一 どうしてお店屋 さんが得 した

?一

―「おやつだ と

,あ

,買

うものが 決 まっとるけど

,で

もお金 もらった人 は何 にで も使 えるか らです。」

/ど

うしてバナナよ リスイカの

(8)

田丸敏高:対話事例 にみ る児童の社会認識の発達 方が値段が高いんで しょうね。一― 「大 きい し

,バ

ナナは

1年

間あるし

,ス

イカは夏に しかないか ら。

J―

―・……どうしてスイカよ りちっちゃいのに高いんだろうな

,メ

ロンの方が

?一

―「あ まり取 れないし

,そ

れにうまいか ら。」

/ど

うしていわ しよ りはまちの方が高いんですか

?―

― 「それ も, なかなか取れないか らです。」 1つ の事柄 に複数の理由がつ けられ

,

もっ ともらしさを高めようとで もす るかの感がある。複数 の理由によって

,特

定の場面 に拘束 された思考か ら抜 け出そうとしている。 30年後 っていた ら40歳になるかな

,な

,40歳

になった ときに

Tは

どんな町 になってると思 います か

?一

― 「・……良 くなっていると思 います。」 ―一一うん, どういうふ うに良 くなっ とるかな?た と えば

,町

の様子 とかはどんなふ うになっとるのかな

?一

― 「上がな くて

,地

面 がな くて

,全

部 コン ク リー トになっている と思 います。」一一 うん

,地

面が コンクリー トになってて

,ほ

かの所 は

?―

一 「家が変わっていると思います。」一―・・・… どうい うふ うに変わっとるのかな

?―

―「全部 コンク リ ー トみたいなので建 ってると。鉄 みたいなので。」一― そうか

,学

校 は

?一

―「学校 とか は,夏には な

,ク

ーラーな どが。J 町の将来のイメージは,「近代化」三「都市化

Jに

固定 されている。

F.T。 (4年

) ,

どうしてお金 をお店 の人 に払 うの

?―

―「買 うか ら。」――買 うと

,ど

うしてお金 を払わなきゃい けないのかなあ

?―

―「お店の人が ごはんや食べ られな くなるか ら。」

/バ

スに乗 りたい ときはどう する

?一

―「お金 を払 って乗 ります。」―― どうしてお金 を払 うのかなあ

?―

―「バスの運転手 さん が給料がなか った らいけないか ら。」―― じゃあ

,運

転手 さんはそのお金 をどうす るんだ と思 う

?一

―「子 どものお こづかいや ごはんを買 って食べ させた りす る。」 本児 は

,お

金 を払 う理由 として相手の「生活費

Jを

考 える。 しか し

,そ

の表現 は多分 に心理的な い し目的的である。お金の流通の必然性 について認識 しているわけではない。 太郎 くんがお店屋 さんでお金 を払 ってお菓子 を買い ました。太郎 くん とお店屋 さん とではどち ら が得 をした と思いますか

?―

―「 どっちも得 していない。

J一

一 どうして

?―

―「お菓子 をお店屋 さ んがお金 を出 して買ってきて

,そ

れで買 う人がお金 を出 した ら

,買

った人 もそのお金 と同 じ物 を持 っておるしお店屋 さんはそれ と同 じ代金 を。」一一 じゃあ

,ど

っち も損 したの

?―

―「損 はしてない けど

,ぶ

つ う。」 「お菓子

=お

金」 とい う等式で結 ばれ る関係 を

,本

児 は洞察 し

,そ

れを「同 じ

Jと

い うことばで 表現 している。なぜ同 じなのかについては

,そ

の根拠 を把握 しているわけではないですが

,す

でに 感 じとっている。 どうしてバナナよリスイカの方が値段が高いのですか

?一

―「スイカは1個 といって も大 きい し, バナナは1本 といって も少 し長 いか ら,だか ら値段 が違 う。」―― スイカが大 きいか ら

?―

―「はい。」

(9)

鳥取大学教育学部研 究報告 教育科学 第 29巻 第

1号

(1987) ―― じゃあ

,

どう して大 きい と値段 が高 いのか なあ

?―

―「得 す るか ら。」― 一誰 が得 す るの

?一

一 「買 った人。」

/ど

う していわ しよ りは まちの方 が値段 が高 いの

?―

―「 は まち はお い しい。

J一

一 ど う してお い しい と値段 が高 いのかなあ

?―

― 「買 った人 が得 す るか ら。」 本 児 は

,値

段 の基 に損得 関係 を考 えて い る。単 に見 か けで判 断す るよ りも本 質的 な もの に迫 ろ う とす る思考 を見 せ ている。 とはいえ

,そ

れ は客観 的関係 として考 えられ てい るわ けで はな く

,ま

だ 主観 的 に考 え られ ている。 お金 で買 え る もの には どんな ものが あ る と思 う

?―

― 「食 べ る もの とか着 る もの とか履 くもの と か。あ と暖 か くす る もの とか寒 くす る もの とか。」

/お

金 で買 えい もの には どんな ものが あ りますか ? 一―「人 間 の命 や影 や……

J一

一 どう して人 間 の命 はお金 で買 えないの

?―

―「人 間 の命 だ った ら, 死 ぬか らお金 は使 えない し。

J一

一 じゃあ

,影

は どうして買 えないの?――「影 は人 間 にひ っつ いて 取 れ ない し

,日

が 当た って取れ て も取 れ ない。

J一

一 じゃあね

,お

金 って何 ですか

?一

―「 もの を買 うもの。」 買 え る もの に対 して は

,カ

テ ゴ リー分 け して答 える。 しか し

,買

えない もの に対 して は

,具

体 的 事物 が述 べ られ る。 買 えない理 由 も,「 死 ぬか ら」(人間)とか「取れ ないか ら

J(影

)と か方向違 い の ことが言 われ る。お そ ら く

,買

え る ものの イメー ジ として「手 に取れ て

,な

くな らない

Jが

あ る と思われ る。 大人 はね, ど うして働 くのですか

?―

―「 お金 を もうけ るた め。

J一

― どう して お金 を もうけ るた めに働 くのか なあ

?―

―「 ごはん を食 べ た りせ な い けん け―。

J―

一 あなた はね

,早

く大人 にな って 働 きた いです か

?―

―「 はい。

J一

一 ど うしてですか

?―

―「 自分 でお金 をた め て

,い

ろん な もの を 買 ってみた いで す。」―一 どんな もの を買 ってみたいですか

?一

― 町尻とか靴 とか そんな もの。」一 一 じゃあね

,大

人 は働 くとお金 を稼 ぎ ます。 それ は

,

どう してですか

?―

― 「会社 で働 いた ら

,そ

した ら

,会

社 の手伝 い って い うか

,社

長 がや らな くて もい いか ら

,社

長 が

,給

料 って い うか

,そ

の 会社 で作 った もの を売 ってお金 を もうけて

,そ

の お金 を給 料 に してその会社 に勤 めて い る人 に分 け てあげ る。J 大人 は,「 お金Jの ために働 くと推 し量 られ る。働 いてお金 が得 られ るの は

,社

長 の代 わ りに働 い たか らで あ る。労働 それ 自身 と賃金 とが関係 づ け られ てい る。 きみ はね

,将

来 どんな人 間 にな る と思 い ます か

?―

―「わか ん ない。」―一 考 えて ご らん

?一

―「漁 師 にな って海 で働 く。

J一

一 じゃあ

,

どん な人 間 にな りたいの

?―

― 「 や さ し くて

,強

い人 間。J

N.H。 (4年

生) お店屋 で お菓子 を買 った ことが あ りますか

?―

―「 とき どきあ る。

J一

一 お菓 子 を買 う とき どう し ますか

?―

― 「 な るべ くガ ムや あ は着 色 料 が使 ってあ るの は買 わ ないで

,チ

ョコ レー トなんか を買 う。

J一

一 お菓子 を買 う ときにお金 を払 うけ ど

,ど

う して

?―

―「 これ くだ さい って言 って

,品

物 を 見せ て

,お

つ りを もらうまで待 っ といて……

J一

一 どう してお金払 わ な きゃい けな い ん だ ろ う

?―

(10)

田丸敏高:対話事例 にみ る児童の社会認識 の発達 ―「お店の人が商売のために仕入れて きたか ら。」― ― そのお金 をどうするんだ と思 う

,そ

の後

?―

― 「それは暮 らしに

,何

か商品を買 った りす るために使 うのだ と思います。」 本児 は

,直

接的場面 を越 えて推論する能力 をもっている。 もちろん

,そ

れ は

,他

人か ら聞いた こ とや学校で教わった ことに由来 しているのか もしれない。 しか し

,彼

の想像 はすでに特定の場面 を 抜 け出 している。 バスに乗 ってお金 を払 うけど

,そ

のお金 はどうなると思 う

?―

― 「そのお金 はバ スの運転手 さん の給料 になると思 う。 その前 に細かいお金 はバ ス会社 に渡 して

,そ

れをお札 に替 えて もらってそれ をもらう。」 バス料金 について考 えるときも

,本

児の思考 は特定の場面 にとらわれていない。体系的な制度 に ついての認識 にはまだ至 ってないが

,場

面 を越 えた推理が始 まっている。 こうした思考様式 は

,他

の箇所 に も示 され る。 お金で買 えるものにはどんなものがあ りますか

?―

― 「何々以外 それは全部 って言 っていい?」 ―― いいよ

,そ

れで も。一―「人の命以外。」一 ― じゃ

,そ

れ以外 って ことは

,人

の命 はお金で買 え ないって ことだ。ほかにはない,お金で買 えない もの

?―

―「 自分が とって も大切 に してい るもの。」 一― なんでお金 で買 えないんで しょう

?―

―「お金 よ りも

,買

えない ものの方が大切 だか ら。」一 ― 大切だか ら。 じゃあ

,お

金 って何ですか

?―

― 「お金 って

,お

札で も玉で もいい

?お

金が必要 な世 界 にはとって も貴重 な ものだけど

,た

とえば

,戦

争中はお金が必要ない。そんな ときには

,た

だの ゴ ミってい うか

,た

だの紙切れだ と思 う。だ けど

,

この時代 はお金 は とって も貴重な もの。J 本児 は,「何々以外」 という包含関係 を用いてい る。 これは

,Piagetも

言 うように

,論

理的思考 の基礎である。 また

,質

問の答 え方に対 して質問 してい る。 これ も

9,10歳

になって現れ ることで ある。言語的思考 (内言による対話

)を

示唆 している。戦争の話 は

,教

育 ないし大人の影響 であろ う。 先生 は学校で子 どもに勉強教 えるけど

,ど

うして

?―

―「それは

,先

′oの仕事 だか ら。

J―

一子 ど もは学校 に通 っているけど,大人 は通 いません。どうして子 どもは学校 に行 くので しょう

?一

―「大 人 は

,子

どもの ときた くさん勉強 しているか ら。 よ く子 どもの仕事 は勉強 って言 うで しょう。 それ で

,大

人の仕事 は仕事。J 「なまいきな」言い方ではあるが,「仕事Jとい うことばを用いて

,そ

の共通な尺度 によって

,大

人 と子 どもとが比較 されている。「大人の仕事 は仕事」とい う言い方が,そ の ことをよ く示 している。 しか し

,論

理的思考が どこで も始 まっているとい うわ けではない。 どうしてバ ナナよ リスイカの方が高いので しょう

?―

―「大 きいか ら。おい しい し。

J/メ

ロンは スイカよ り高い よ

,ど

うしてかな

?―

―「あれ は

,日

本 では数が少 な くて

,り

しい貴重品だか ら。」

/

さばが (いわ しよ り

)高

いのはどうして

?―

― 「おい しいか ら。」

(11)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 29巻 第

1号 (1987) 65

ここでは

,共

通の尺度 によ り思考 は見 られず

,個

別的な理 由が次々 と述べ られる。

T.K.(4年

生) (お店でお菓子 を買 うとき

)な

んでお金払 うんだろう

?一

―「作 った甲斐がないか ら。」一― …… ―― じゃあな

,お

店の人 はその もらったお金 を何 に使 うんで しょう

?―

―「 う―ん

,お

かず とか 自 分の買いたい もの。

J一

―買いたい ものを買 う,それだけ

?全

部使 っちゃう

?―

―「残 しとく。貯 金 す る。」― ― …・・バ スに乗 るときもやっぱりお金い りますね,どうしてかな

?―

―「 う―ん,乗せ る甲 斐がないか ら。」―― どうしてバスに乗 った らお金払ゎん といけんのかな―

?一

―「ん―

,え

っと―, 何のために作 ったかわか らないか ら。」一―……なんでお金 もらわん とい けないのかな―

?一

―「お 金 もらわない と商売 じゃないか ら。」――商売す るためには絶対 お金がいる

?ど

うして商売す るため にはお金がいる

?―

―「ん―

,商

売 しない とお金がた まらないか ら。」一―・・・…運転手 さんは集 まっ たお金 を何 に使 うんですか

?一

― 「おかず。 う―ん

,会

社 にち ょっ と加 えて貯金す る。貯金 は残 っ た

,貯

金 して好 きな もの を買 う。J――会社 にはち ょっ とだ け

,ち

ょっと置いて使 うの

,あ

とは

?―

―「ボーナスで もらう。」――・・・…バ スを運転 しとって

,お

客 さんにもらったお金

,こ

こにあるで し ょ。 これをまず どうす る

?―

―「会社 に全部渡す。」一 ―会社 に渡 して

,じ

ゃあ

,ど

うす る

,渡

した お金は

?一

―「んで

,ボ

とナスの日にそれをもらう。」―― どの くらいもらう

?―

―「バスだけ―。」 一―全部 もらう

?―

―「ち ょっ と。」―一 ちょっ としか もらえん?たいへんだな。運転手 さんはち ょ っとだけもらって

,会

社 に残 したお金 はどうす るの

?―

―「う―ん

,今

度バ ス作 るときに配 る。」― ―バス作 るときにか?じゃあね

,運

転手 さんはもらったお金何 に使 うの

?―

―「 う―ん

,た

くさん 貯金す る。」――貯金だけ

?一

―「ん―

,自

分のいるだけ貯金 して

,あ

とは使 う。J 本児 は

,お

店 にお金 を払 うのは「作 った甲斐がないか らJと い う心理的理 由づけをする。 しか し, これはすでに視点の移動 を伴 っている。自分の視点か らお店屋 さんの視点へ

,移

動がなされている。 バス代のことを考 えるときもこうした視点の移動が越 こり

,運

転手の立場か ら「(バスを

)何

のた め に作 ったかわか らないか ら」 とか「商売だか ら」 とか「 お金がた まらないか ら

Jと

か考 え始める。 述べ られている理 由は主観的な ものではあるが

,相

手の立場か らも考 えてみるとい うことは1つの 進歩である。 また

,こ

の児 は貯金 にこだわ る。貯金 は

,い

つ もこの児が耳 にす ることばか もしれない。「お金J はまず「貯金」 と結 びついている。 そのため,「自分のいるだけ貯金」す るのが先決で,「あ とは使 う」 ということになる。 どうしてスイカの方が高いんだ と思 う

?―

―「ん―

,大

きい し

,重

たい。実がた くさんはいって いる。」―一 じゃあ

,大

きくて実がた くさんはいっているもの は何で も高いのかな

?一

―「ん―, ま ずかった ら安 い。J―― おいしいものは高い?じゃあ

,お

い しくって大 きくて安い ものって絶対にな いかな

?―

―「 う―ん

,大

安売 りの とき。J一一 そうか。で もバ ナナだっておい しいで

?―

―「 うん, けど河ヽさい。」―一 じゃ大 きい ものが高いのかな?じゃ大 きい ものはみ―んな高い

?―

―「中がか ら っぽだった ら安 い。」―一大 きいな

,こ

の くらいの石 ころとちっちゃいちっちゃいダイヤモ ン ドとど つちが高い と思 う

?―

― 「ダイヤモ ン ド。」 ―― ダイヤモ ン ドだな―。 どうして

,ち

っちゃいが? ――「 う―ん

,石

もらったって何の価値 もない し

,け

どダイヤモ ン ドもらって売 った ら金が もうか る。」―― じゃあ

,大

き くって もな

,お

金 にもな らない もの もあるで しょ。 なんでスイカだった ら高

(12)

田丸敏高:対話事例 にみる児童の社会認識の発達 いんかなあ

?―

―「ん―

,味

がおいしい。」一一 おい しいか ら

?バ

ナナ もおい しいよ

?―

―「 けどス イカ1切れ分でバナナ

1個

分 と同 じことだ と思 う。」 本児が値段 (価値

)に

ついて考 えるときは

,ま

だ見かけに とらわれている。 しか し

,そ

の際言及 され る見かけは多様 である。「大 きいJ「重い」「多い」な どの感覚的諸性質が考 え られ る。そのため, ダイヤモ ン ドによって矛盾が持ち込 まれて も再 び事実が持 ち出され るに とどまる。同語反復 (大き くて も高 くないのは価値 がないか ら。お金 にな らないか ら。

)に

陥 った り

,別

の性質 (おい しい

)が

述べ られた りする。スイカ

1切

れ三バナナ1個とい う等式 まで発見するが

,そ

の根拠 を考 えること はで きないでいる。 なんで

,は

まちの方が高いんかな―

?一

―「 はまちの方がおい しいか ら。」一一おい しいか ら

,い

わ しよりも。 じゃあ

,お

い しい ものの方が高いんかな―

?一

― 「それに

,そ

れ とその季節 しか獲れ ない ものだか ら。

J一

一 どっちが

?―

―「 はまち。」 本児 は

,常

に具体的な もの (はまち

)に

ついて思考す る。質問 は

,一

般化 して (おい しい ものは すべて高いか

)な

され る。 それで も

,は

まちか ら離れることはで きない。その代 わ り

,

ここでは漁 村の子 どもらしく客観的理 由が付 け加 えて語 られる。 お金で買 えるものには

,

どんな ものがあると思いますか

?一

―「 う―ん

,使

えるもの。」――使 え るものって

?―

― 「使 って損 をしないもの。

J―

一・・・…た とえばどんな もの

?一

―「 ん―

,そ

れか, 新聞は読んでためになるし

,電

話 とかは遠 くで も聞 こえる。 とか

,水

道がない と生 きれないか ら, 水道 も。電気がない と暗 くて見 えない……」一― は一ん

,な

るほどなあ。ほかには もうない

?―

一 「ガス。」―― ほかにはないかな

?―

―「 う―ん

,マ

ッチ。 ロウソク。」―― そ うかそ うか

,ほ

かに は もうない

?―

―「ん―

,ス

トーブ。」―― じゃお金で買 えない ものにはどんな ものがあるかな ?一 ―「えっ と― 山。

J―

― あ―

,確

かに。 ほか には

?一

―「 う―ん

,人

間。」一一そうだな―

,ほ

かに はないかな

?―

―「持 つているもの。」――持つているもの

,誰

?一

―「自分が。買 って も1つあ るけど

,買

って も意味が ないか ら。

J―

一 自分が持っているものが買 えない

?―

―「 自分が持つてい る ものを買 ったって どうしようもない。」一― ……で も,それ は買 えるけど買わない もの じゃないか。 そ うじゃな くって

,ど

んなにお金 を出 して も買 えない ものってないかな

?一

―「空気。

J―

一本当だ な。 ほかにはないかな

?一

―「 う―ん と

,え

っと―

,ん

,太

陽。」一 ほん とほん と,ほかにはない かな

?―

― 「酸素 と水素。

J一

一 ああ

,す

ごい

,よ

―知 っとるな。 ほかにはないかな

?一

― 「雨。J ―― ほかにはないかな ?も うないかな

?―

―「地球。」――確 かに買 えないな。 じゃあな

,お

金って 何だ と思 う

?―

―「それ を出 した ら何 で も買 える。

J一

ヨ可で も買 える

?で

も今買 えない ものがあっ たで。一―「 うん

,そ

れは何の役 にも立たないか ら。」一一空気 は何 の役 にも立たんか―?なあ困 る が。――「空気 はどんなことをやって も出 とるけ

,大

丈夫。」―― じゃ

,

もう1回聞 くけどお金 とは 何ですか

?―

―「ん と―

,え

っと―

,役

に立 つ ものが何で も買 える

,自

然の もの とか。」 本児 は

,お

金で買 えるものを聞かれて「使 えるもの

Jと

答 えている。 これ は

, 1種

のカテゴ リー 的思考 を示 していると言 える。 しか し

,本

児 には

,対

が随所 に現れ

,カ

テゴ リー的思考 を一貫 させ るのを妨害す る。「お金」は「損 をしない」と結 びついている。 そこか ら

,役

に立 つ ものが次々 と述

(13)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第29巻 第

1号

(1987) 67

べ られ る。「電気」 と「ガスJ,「マ ッチ

Jと

「 ロウソク」,「ス トーブ」は

,互

いに対 を構成 している と考 えられ る。「役 に立つ」が考 え られ るため

,買

えない もの として「 自分が持っているもの」とい う答 えが生 じる。 本児 は

,お

金の定義 として「何で も買 える」 と言 う。 しか し

,こ

の「何で も

Jは

普遍 を意味 しな い。例外がい くらあって も矛盾 とは思わない。今度 は

,再

び「役 に立つ」 ことが基準 になる。 しか し,これ も普遍的な基準ではない。例外 にはまた別の理由が付 け加わる。「空気 はどんな ことや って も出 とるけ

,大

丈夫。」そ して

,最

後 には「お金」を媒介 に「役 に立 つ ものが何 で も買 える

Jと

表現 され る。 どうして大人 は働 くんだ と思 う

?一

―「お金 をためるため。」一― ……

人 は どうして働 くん かな

?―

―「お金 もうけるため。」一一 お金 をもうけるためだけに働 くんかな ?ほ か に理 由はないか な

?―

―「好 きな もん買 うため。」―― Tく んはな

,早

く大人 になって働 きたい

?―

―「・…・.」

__

働 きた くない

?一

―「(う なず く)」 ―一 どうして

?―

―「 う一ん

,た

いざい。

J一

― なんでだ

?―

― 「 めん どくさい。」―― めん どくさいか

?何

しとった方がいい

?―

― 「自由。」―一 自由に しとくの がいいか。 自由だった ら何す るだ

?―

―「 ファミコンとかいろいろ。J 本児には

,働

く理由は「お金

J以

外 には見当た らない。そして,「お金

Jは

買 うことと結 びついて いる。だった ら

,働

かずに買 えるな ら「 自由

Jの

方が いい ことになる。本児 に とっての「自由」は, ファミコンである。 なんで働 いた らな

,お

金が もらえるかなって思 ったの

?一

―「 えっと―

,そ

の仕事 をや っとった ら魚がた くさん獲れて

,そ

れ を組合 とかに出 した らお金が もらえて

,

もし会社 だ った ら……あれ, なんだったいな?」 ―― なんで働 いた らお金が もらえるか

?―

― 「なんで働 いた らお金が もらえる か。 もし

,会

社だった ら仕事のプ リン トとか をや って

,あ

,も

,あ

,あ

,

ものを売 る会社 だった ら……やおやだった ら……なんだいな

,問

?J一

― もう1回言 うで。働 いた らどうしてお 金が もらえるんかな

?一

―「会社だった ら―, もし……働 いた ら会社 とかにお金がた まって

,そ

の お金 とかで会社がいろいろ作 って

,そ

れ を作 った人 やあが何のために作 ったかわか らんけ―。」―一 ぶむふむ。だいぶわかったけど

,な

んで―その人やあがわざわざ作 ったかお金 を もらわん とわか ら んけ

,お

金 をもらうか。それが理 由か

?何

でお金 あげん といけん

?―

― 「その人が何 のために働 い ているかわか らないか ら。お金のために働いているか ら。」 労働 に対する賃金 について考 える際 も

,本

児 は具体的仕事で考 えようとす る。漁師の場合

,会

社 の場合

,や

おやの場合 とい うふ うに

,本

児の思考 は渡 り歩 く。 しか し

,一

般 的 に考 えることはで き ない。結局

,会

社の ことか ら,「お金のために働 いてい るか ら」ということに到着す る(戻って くる)。 お医者 さん と学校の先生だった ら

,ど

っちがた くさんお金稼 ぐと思 う

?―

― 「学校。

J一

一学校 の先生か

?ど

うして

?一

―「学校 の方がた くさん子 どもが・……え―

,や

ることがす ごいか ら。子 ど もが何10人とかおった ら

,そ

の集金代 とか

,子

どもを教 えるためにお金がた くさん

,子

どもす ご く 教 えた らお金がた くさん もうかるか ら。」―一 あ―そ うか

,で

もお医者 さんだ ってた くさん来 るで, 患者 さん。一―「 けど

,時

々少 ない ときがある。

J―

― じゃ

,た

くさんた くさん学校 の先生だった ら

(14)

田丸敏高 :対話事例 にみ る児童の社会認識 の発達 教 えた り

,お

医者 さんだった ら患者 さんの数が多い方が もうか るのか

?―

― 「だけ―

,医

者の とき が もうか る方があるか もしれん。」一― じゃ

,ち

っちゃい学校の先生 と大 きい学校の先生 とどっちが た くさんお金が もうか る

?―

―「大 きい学校の先生。

J―

一学校 の先生 はどこか らお金 もらうんだ? 十

う―ん

,え

っ と

,中

心部。」―一 どこの

?―

― 「鳥取。

J―

一鳥 取の中心部の人 は

,

この先生 はちっちゃい学校 の先生だか らち ょっとで

,こ

の学校の先生 は大 きい学校の先生だか らいっぱいあ げるんか

?一

―「 よ く子 どもを教 えた方。」 賃金に関 して

,本

児 は

,数

(子どもや患者の

)と

い う量 を基準 として比較で きる。 そのため

,初

め医者は「時々」患者が少ない という理 由で先生の方が もうかると考 えたが

,患

者が多 ければ医者 の方が もうかると考 えなおす ことがで きる。条件 との関係 である規則 について検討で きることは, 思考のうえで画期 的な進歩である。 しか し

,

この量的基準 をすべての事象に一貫 させて考 える能力 は

,本

児 にはまだない。少 し不 自然 さを感 じると

,別

の基準

,し

か も量的ではな く単 に質的な基準 をす りこませて しまう。「 よ く子 どもを教 えた方Jとい うのは

,本

児に とっては十分納得 のい く基準 なのである。客観的な基準が倫理的な ものに取 って代 わ られて も

,平

気なのである。 どうして先生 は子 どもに勉強教 えるんだ と思 う

?―

―「教 えない とお金が もうか らないか ら。」― ― お金 もうけのために先生 は勉強教 えるんか

,そ

れだけ

?一

―「 うん と

,自

分 も学べ るか ら。」一一 ……―― それだけ?ほかにはないかな

?―

―「お金のためだか らどんなことで もや る。

J―

―・・・… 一大人 は学校 に行かないのに

,子

どもはどうして学校 に行 くんだ と思 う

?―

―「 うん

,大

人 はもう 昔学校 に行 っ とるか ら。子 どももその学校卒業 して勉強 とか も卒業 した ら

,大

人 みたいにお金 もう けする。」一― なんで子 どもは勉強 しとかん といけん

?一

―「 えと

,自

分のためにな らないか ら。J ――・・・…勉強 しとかん と困るかな

?ど

んな ことが困 るかな

?―

―「わか らないこと

,質

問で もわか るように。」 本児 は

,あ

らゆる行動の意味について「 お金」 をよ りどころに して判断 しようとしてい る。 その 意味では

,一

般的判断が可能 にな りつつあると考 えられ る。 しか し,「お金Jでもってすべての行動 の価値 を判断す ることは所詮無理がある。無理 に気づ くと突然 まった く具体的場面的な答 えが現れ る。成人 な らば無理 と知 りつつ押 し通 し信 じこもうとする者 もあろうが

,本

児 は場面的思考 に戻 る ことによ り新たな考 え方 もする。ただ し

,そ

こに矛盾 を発見することはない。矛盾 は

,一

般的判断 と一般的半J断との間で初めて生 じるのであるか ら。

3.推

論的思考 への移行

H.N。 (6年

生) お菓子 を買 った ときにどうやって買い ましたか

?―

―「自分のお金で。」―― ……―一 せ っか く(こ づかい として)も らったお金 をな

,お

店 に行 って払 うの

,

もったいない と思わん?なんで払 うんだ, だけどそれで も

?一

―「お金が造 られているか ら。」―― ……そのお金 を店の人 はどうす ると思い ま すか

?―

「貯金 とかす る。」―― ほかに どうしますか

,貯

金のほかに ?――「子 どもとか にや る。」 ―一 まだ

,ほ

か に使 い ますか?……――「それから

,鳥

取やに行 った ときに使 う。」

/バ

スに乗 って ○○ に行 った ときに

,降

りるときにどうした

?一

―「お金 を払 った。

J―

― なんで降 りる ときにお金 を払 うんですか

?―

― 「さっきと同 じ事言 って もいい?」 ―― 同 じと思った ら同 じ事 を言 って もい

(15)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 29巻 第

1号

(1987) いです。違 うと思 った ら違 うふ うに言って ください

?―

―「日本 にはお金があるか ら。」一一 お金が なか った ら払わない

,世

の中に

?―

―「食べ物 とか払 えばいい。

J―

― じゃ

,ど

うして食べ物 に しろ, 食べ物で払 うにしろ,どうして何か を払 うの

?―

― 「お金が,あの・…・・,あ,生活 で きないか ら。」 ――運転手 さんは

,

じゃあ

,Hく

んが払 ったお金 をどう

,運

転手 さんは払われたお金 をどうす ると 思いますか

?―

―「家のために使 った り

,貯

金 した りす る。」― 一 じゃあ

,集

めたお金 はごっそ り家 に持 って帰 って

,自

分で使 うって こと

?―

―「 えっ と

,バ

スの

,バ

スが留 まる所 とか に行 って

,社

長が分 ける

,み

んなに。」――社長がみんなに分 けて

,持

って帰 って

?―

―「それを家のためや貯金 に使 う。」―一 じゃ

,持

って行 かれた社長 さんは

,配

った後 どうしますか

?―

―「社長 の分 も配 る。J 本児 は

,お

金 を払 う理由 として

,お

金が存在 していることをあげる。お金が世 の中になけれ ば, 代わ りに「食べ物 とか払 えばいい

Jと

考 えている。おそ らく

,歴

史の学習を通 じて学 んだ ことを基 に して答 えているのであろう。お金 は

,物

の代わ りであ り流通手段であることが把握 されてしxるの であろう。 得 られたお金の使 いみちに関 しては

,貯

金や生活費がイメージされている。 また

,社

長 による分 配 と

,社

長 自身の不労所得 とが思 い浮かべ られている。 思考 は場面の拘束か ら解放 され

,社

会的歴史的な推論 に道が開かれている。 (お菓子 を買 った

)太

郎 くん とお店屋 さん とでは

,

どち らが得 をした と思 いますか

?―

― 「お店 屋 さん。

J―

― どうしてお店屋 さんの方が得 をしたんだ と思いますか

?―

―「仕入れた値段 は もしも 40円だ とした ら

,売

るお金 は50円になった り60円になった りす るか ら。J―― だか ら

,そ

の10円分 だ けもうけるか らって ことか。 じゃあ

,太

貞Iく んは損 をしましたか

?―

―「別 に損 は してない。

J一

― 別に損 は してない

?―

―「 ま

,損

,20円

分や10円分損 しとるけど。」 本児 は

,仕

入れや利益 について も知 っている。 しか し

,利

益の大小が どう決 まるかについてはわ かっていないようである。 これについては

,想

像 によってではな く

,経

済学的な学習 によってわか ることなのである。 どうしてバ ナナ よ りもスイカの方が高いんですか

?―

―「大 きい し

,う

まいか ら。

J―

一大 きい も んは何 で も高いんですか

?―

―「 うまい もんが特 に高い。」―一 じゃ

,メ

ロンとスイカは どっちが高 い

?―

―「 メロン。」――・・・…Hく んはうまい と思 うか もしれんけど

,私

はスイカの方がおい しいっ て言 うか もしれんで。だった ら

,私

スイカは とって もおい しい と思 うか ら

,ス

イカた くさんお金払 います って言 うんか

?―

―「栄養分がある。」― 一栄養分があるか ら

,そ

れが高いんか?にば しって 知 っとる

?こ

んなちっちゃいのでな

,

だ しとか取 るやつ。 使わんか

?―

―「 にば しか?」 一一 あ んなんって骨 になるのんやがあってな

,こ

けて も大丈夫なのに

,栄

養がた くさんはいっとるで。 だ けど

,あ

れ も高 くないで。一―「 なら

,栄

養分があっておい しい もの。」 物の価格が どの ようにして決 まるのか考 えることは

,子

どもにはたいへん難 しい課題 である。6 年生で も初 めその物 自身に備わっている性質 に注 目す る。「大 きいか ら」は

,ほ

とん どの子 どもに共 通 した最初 の答 えである。 しか し

,そ

の矛盾 を指摘 され ると

,本

児 は

,別

の感覚的属性 である「 お いしさ」 に注 目す る。再 びその矛盾 を突かれると

,今

度 は「栄養分」 とい う

,非

感覚的な (自然科

(16)

田丸敏高:対話事例 にみ る児童の社会認識 の発達 学的

)な

概念 を持 ち出す。 こうした ことは

,本

児がすでに矛盾 を察知で きること

,抽

象的な概念 を 扱 えることを意味 している。 しかし

,社

会科学的 な概念 を扱 うことは更 に困難 なことである。「栄養分」だけではうま くいかな くなると,「栄養分があっておいしい」という交わ りによる説明 を行 う。本児 は

,こ

うした集合の関 係 まで用いることがで きる。だが

,価

格 とい う対象 にふ さわ しい扱いにはまだ届かない所 に

,本

児 はいる。 もしもあなたが値段 をつけるとした ら,はまち とたい とどんなふ うに値段 をつけますか

?一

―「な んばで もええ。」― ―で も

,理

由をつけてつけるんだ よ。 あなたな りの理由をつけて

?―

―「たいが 1,300円

,は

まちは1,100円。」―― どうしてそうつ けたの

?一

一一―「たいはおい しい し

,栄

養分が あるし

,で

かいか ら。」一一 それか ら

,は

まちを1,100円にしたのは

?一

―「たい よ りうま くない し, 栄養分がたいよ りないか ら。」一… …・いわ しつてな,栄養分 もあるしいろいろな料理 に使 えるけど, なんで安いんだ

?一

―「 こげるか ら。 こげた りす るか ら。」―― こげる

?一

―「 こげた ら悪いか ら。」 ―一 どういうことか教 えて

,わ

か らないか ら。一―「焼 いた ときにこげた りしてか ら

,い

けんけ。 体 に悪↓ゝか ら。」 本児は

,様

々 な理由について考察することがで きる。 しか し

,そ

れだけでは ものの本質へ向か う ことは保障 されない。 大人の人 はどうして働 くんですか

?一

―「子 どもを育 てた りするため。

J一

一 じゃあ

,

もしも子 ど もがいなかった ら,大人の人 は働かないんですか?――イ 自分 を育 てる。」 ほかの理由では働 きま せんか ?自 分が食べてい くためだけに働い とんさるか

?一

―「 あ,おとうさんやおかあさんのため。J ――・・・… じゃあ

,Hく

んはな

,大

き くなって働 きたい と思いますか

?一

―「別 に思いません。」一一 どうして別 に思わないんですか

?―

―「たいぎいか ら。」―一働 いた ことがあ りますか

?ど

うしてた いざいってぃうのがわかるの

?―

「肩が凝 った りす るか ら。」 本児 は

,一

貫性 を求 める。働 くのは誰かを育 てるためであるし

,誰

かのためであると考 える。 そ こか ら,「自分 を育 て る」 というような表現 を作 り出 した り,「お とうさんやおかあさんのため」 を 思いついた りす る。一般的な命題 と個別的な事象 との行 き来が始 まっている。 ここの子 どもたちは

,働

くことが「たいぎい(疲れ る)」 と考 えている。一方

,働

くことは「お金」 と結びつけて考 え られている。 したが って

,労

働 について考 えるときは

,そ

の どち らかが前面 に出 て他 を押 さ.え込 んで しまう。 じゃ

,大

人の人 はね

,働

いた らお金 を稼 ぎますか

?―

―「はい。」一一 どうしてお金が稼 げるんで すか?――「働 いてい るか ら。」―― どうして働 いた らお金が もらえる

?一

―「働 けばいろんな人か らお金が もらえて

,そ

のお金。」一―いろんな人 って, どんな人がお金 くれ るの

?―

―「ホテルだっ た ら

,泊

まって来た もんがお金 くれ るけ

,そ

れでや る。J

参照

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