香 川 大 学 経 済 論 叢 第71巻 第3号 1998年12月 181-215
顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係
一一一日本のインポート・ブランド市場における卸依存的商慣行の行方一一一崖
相 銭
I吋 問 題 提 起 本格的な大競争時代の到来が謂われる昨今,欧米諸国の経済・経営・技術・ 金融システムの競争優位に基づいたグローパル・スタンダード革命が急進展し つつある中で,日本を中心とするアジアの諸システムの相対的ローカル化かっ 弱体化が進んでいる。さらに,去年7月のタイの通貨危機から端を発して広がっ たアジア経済の総体的危機は,単に世界の成長センターとしてのアジア経済の 地位喪失だけではなしそれを支えた下部構造としての「アジア的価値」の凋 落を世間に流布させている。 このような抽象的な謡い文句としてのアジア的価値の凋落は,やはり「日本 的」経営システムおよび取引制度の問題性と少なからず相関関係をもっている。 言い換えれば,アジア地域において日本的システムと制度の学習や移転が盛ん に行われたからこそ,一時的であったもののアジア時代の到来が唱えられ,か つアジア的価値が称賛されたが,しかしアジア経済の危機が叫ばれる今,改め て日本的システムと制度の問題性が浮き彫りになっているのである。 本稿では,このようにアジア的価値の凋落と不可避的にかかわっているとさ れる日本的経営システムと取引制度,なかんずくその顕著な特徴のーっとして 問屋と呼ばれる卸売業者依存的商慣行の行方を追ってみたいと思う。ただし, 卸売業者「一般」の商慣行の議論が陥りやすい抽象論的ドグマを避けるために 特定の業界,具体的には上記の西欧発のグローパlレ・スタンダード革命の槍と, きわめて日本的な卸依存的商慣行の盾が激しくぶ、っかり合う日本のインポート・ブランド業界を取りあげたいと思う。 振り返ってみると,開国以来,近代化の波が日本によせてくるプロセスは, 認識論的優位性に立つ「西欧的価値」の攻めとアジア的前近代性から逸脱して いない「日本的価値」の守りの攻防戦の繰り返しに他ならず,やや大袈裟にい えば,結局のところ前者の押しつけによる後者への一方的受容を求める構図で あったと言える。このような日本での東西の精神論的優劣構図は,実践論的社 会科学の展開にも大いに影響を及ぽすが,とりわけアメリカ生まれのマーケ ティング論と日本で保たれてきた商業論との相互関係,否,より厳密にいえば 研究領域面でのマーケティング論による商業論の浸食・吸収というプロセスで 典型的に現れる。 もちろん,マーケティング論と商業論の相互関係を単に科学帝国主義という 陳腐なスローガンに還元して説明することは言い過ぎである。マーケティング 論が描いている産業資本(寡占メーカー)の科学的マーケティング戦略の中心 が,商業論での分析主体としてこれまで産業資本からは「独立的」に商いを営 んできた商業資本(商人)の排除・内部化(風呂, 1968;石原, 1982)の試み にあったということは,紛れもなく現代資本主義の進化プロセスが示した「歴 史的」事実であるからである。寡占メーカーのマーケティング行動による商業 組織への自前の色付けという現代資本主義の歴史から,上記のマーケティング 論による商業論の浸食・吸収というアカデミズムの動向が,単に認識論的な欧 米的価値観の優位だというより実践現場の動向を忠実に吸い上げた結果だとも 言えるだろう。 このように理論面にしろ実践面にしろ,現象的に商業に対するマーケティン グの優位性が,資本主義の進化プロセスに裏付けられた「歴史的相互関係」の (1) 本稿では,欧米からの有名衣料品・服飾雑貨品の輪入品に対して rインポート・プラ ンド」という用語を使うことにしたい。「輸入ブランド」ではなしわざとインポート・ ブランドという用語を使う理由としては,日本でも消費者認知度の高い外国の寡占メー カーの銘柄(ブランド)輸入品と区別するためでもあるが,同時にそれが日本の同製品関 連業界で一般的に使われているために,さらに本稿でのメイン・テー?としての西欧のブ ランドと日本の問屋との相克関係を意図的に浮き彫りにしたいためであると言ってよい。
769 顕著化するインポート・プランドと問屋の相克関係 -183-ダイナミズムの不可逆的な断面だと結論づけることができるならば,たぶん本 稿で取りあげようとする日本のインポート・ブランド業界は,まさにその結論 の格好の例示になるだろう。 「歴史的」ダイナミズムが示してきた「マーケティング」による「商業」の排 除という構図は,現代マーケティングのすべての行動の原点としての「ブラン ド」と,商業の核心的主体とはいえブランドのイメージを損傷する撹乱要因と して見なされてきた「問屋」との相互衝突関係として具体化される。とりわけ, 世界標準のグローパル・ブランド・マーケティング戦略を展開しようと試みる 欧米の有名ブランドの持ち主(以下ブランド・ホール夕、ーと称する)が,依然 として旧来の問屋依存的商慣行が残存する日本の流通現実に苛立ちを表す形 で,不協和音が絶えず聞こえてくる業界が,他ならず日本のインポート・ブラ ンド・マーケットである。西欧的価値と日本的価値,マーケティングと商業の 聞の「歴史的」キ目互衝突関係のダイナミズムが,ブランドと問屋の聞の相克関係と して,同マーケットにおいては,ほぽ
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見在進行型」に行われているのである。 果たして,世界的競争の激戦区の日本のインポート・ブランド・マーケット に携わっており,相変わらず、旧来の商慣行を保っている様々な卸売業者(以下, インポート謝と略する)は,グローバル時代において神聖不可侵のパワー・ブ ランドの地位を目指そうとする西欧のブランド・ホールダーの世界標準のマー ケティング戦略によって全面的に否定され,排除されるのか,これが本稿の分 析課題である。 議論の順序として,まず,日本のインポート・ブランド・マーケットの現況 とその構成員の動向を紹介する。つぎは,そこで現われているプランド・ホー ノレダーとインポート卸の聞の葛藤関係を具体的な事例を取り上げながら鳥敵す (2 ) 本稿では日本でインボート・ブランドに係わる卸売業者全体を「インポート卸」と命名 する。詳しくは後述するが,インポート卸は,インボート・ブランドの卸売業務に携わっ ている総合商社,インボート・ブランドの卸を専業とする大手輸入専門商社(以下,イン ポート専業卸と呼ぶ),そしてブランドの法的な持ち主としての欧州のプランド・ホーJレ ダーが直接に日本の卸売業務に関与するために設置した日本法人(以下,業界用語をその まま引用してジャパン社と呼ぶ)などの集合名詞と考慮してよい。インポート卸が直面している現実をうかがうことにしたい。 ることによって, ブランド・ホールダーによる流通からの一方的な排除という厳しい現 さらUこ, 前向きに対応している一部のインポート卸の動向を紹介する。そ 実の中でも, 日本のインポート・ブランド・マーケットの現実が商人とし れから,最後に, てのインポート卸に求めるものについて吟味したい。 日本におけるインポート・ブランド・マーケットの現況 II 市場規模の推移 矢野経済研究所の推計では,欧米から日本へ輸入されるファッション・ビジ
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↓ 〈図1>インポート・ブランド・マーケット規模の推移1) 20,000 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 2,000。
出所:矢野経済研究所編 (1998)Iインポートマーケット&ブランド年鑑:高級衣料 品・服飾雑貨編』より 注1)単位は億円で小売ベース771 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 -185-ネス関連商品(高級衣料品・服飾雑貨),すなわち本稿の用語でのインポート・ ブランドの市場規模は,小売ベースで
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年に1
兆6
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億円と算出された (く図1>を参照)09
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年のインポート・ブランド・マーケット規模は,最近の 日本の不況の煽りを受けて,前年比1
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.4%の減少ではあるものの,日本のアパ レノレ関連市場規模が小売ベースで約1
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兆円であることを勘案すれば,相変わら ず巨大な規模であることが分かる。 パフゃル経済の終駕で、1
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年に1
兆6
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億円だったマーケット規模は9
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年 代中盤まで下落しつつあったが,超円高の余波でマーケットは急速に回復し9
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年には約1
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億円にも達した。しかし,9
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年末からの円安,そして9
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年4
月の消費税率アップを契機にして冷え込んでしまい,結局のところ9
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年の マーケット規模は9
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年水準に逆戻りした。現在の不況の回復が見込めない分, 当分日本のインポート・ブランド・マーケットは伸び悩む状態が続きそうだ。2
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インポート・ブランドの涜通経路 欧米発のインポート・ブランドが日本に輸入されてから流通される経路を簡 略に表したのが,く図2
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である。流通経路の各々の構成員の行動パターンは, 次節に述べることにするので,ここでは主に商流を中心とした流通経路を簡単 にスケッチすることに留めたいと思う。 ヨーロツパとアメリカの有力ファッション・ビジネス関連ブランドの持ち主, すなわちブランド・ホールダーは,日本の巨大な消費市場を狙って積極的な市 場参入戦略を試みている。ただし一昔前までも,地理的にかつ文化的に遠く離 れた日本市場は,欧米のブランド・ホールダーには不確実性に満ちた未知の市 場にほかならなかった。何よりも国際的な基準からあまりにも異質の商慣行を 保っている複雑多岐な流通構造は,彼らにとっては,乗り越えるべき障壁であっ たに違いない。 ここで断っておきたいのは,だからといって欧米のブランド・ホールダーが, ( 3) 日本の商慣行および流通構造について詳しい議論は,丸山 (1992)を参照のこと。〈図2>日本のインポート・ブランド・マーケットの構造1) アメリカのブラン ド・ホールダー 欧州のブランド・ ホールダー //JV
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アパレJレ メーカー/
¥ ¥ 1 、SPA
フ ァ ッ シ ョ ン ビ ル・インショップ 百貨庖インショップ 独 立 専 門 庖 F 路 面 直 営 庖 C , , , , , , h 、 、 、 、 、 、 、 注 1) 破線で図まれた部分は,日本の圏内の卸しと小売りで成り立つ流通経路を表すも のである。 主に製造業製品の分野において世界的なビジネス展開を狙うグローパル企業の はじめから参入障壁としての流通構造や商慣行の改善や撤廃を求めて ょう』こ, きたことではないという点である。世界に通用できるブランド・パワーをもっ 日本に進出しようとする欧米の ているグローパル企業の製品に比べでは,-187-ファッション・プランドは,長らく日本の消費者の認知図にまでは浸透してい なかった。そのためにブランド・ホールダーは日本への進出草創崩tこは, 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 773 の流通現実を所与と見なしながら,係わるファッション・ビジネスにおける流 通経路の特定構成員とパートナーショプ関係を結ぶ、途を選んだ。そのパート 日本独特の流通構造や商慣行を生み出した第一義的存在として, して欧米のファッション・ブランド・ビジネスの将来性に着眼して日本でのイ ンポート・ブランド・マーケットを成り立たせかつ育てあげた存在としての, 本稿の主な分析対象であるインポート卸に他ならなかった。 日本 そ ナーとは, そしてジャパン祉などで インポート専業卸, 成り立つインポート卸を通じて,欧米のブランド・ホーノレ夕、ーは, テと呼ばれる高級既成服,バッグ,靴やアクセサリーなどのファッション・ブ プレタポル 次節で詳述するが,総合商社, ランド製品を辛うじて日本に上陸させることができた。インポート卸依存の対 自国でのように直接に消費者と接触できる小 売中心のビジネス展開までには手が届かなかったと言える。各々のインポート 日戦略のために,長らく彼らは, 卸は,ある程度販売力をもっている独立専門屈および専門店チェーン
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や百 貨庖インショップを中心としてインポート・ブランド製品の小売販路を開拓し てきた。 ブランド・イメージの向上, 日本でも小売業分野への直接進出を ジャパン社の100%子会社化,大型路面直営庖の展開, 一方,間もなく欧米のブランド・ホーJレダーは, 売上高や利益率の拡大に結び、つくと考え, ファッションビノレなどへの入居などは, これまでインポート・ブランド・マーケットの局外者だ、った 大手アパレノレ企業の中で,製造小売企業と訳されるSP
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が,同マーケットに参加しようとしてい (5) る点である。 目論むことになる。 その目論みの現れであるだろう。S
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特記すべきは, (4 ) 日本でインポート・ブランド・マーケットがいつから成立したかは一概には言い難い。 本稿では,いちおう今でも業界最大手として活動しているインポート専業卸のいくつか が設立されつつあった 1960年代後半を草創期と見なしたい。 (5) SPAについては次節以降,適所で記述する。3, 最近の市場動向の特徴 日本においては, 1980年代に入つての第 1次ブランド・ブーム, 80年代後半 においての第
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次ブランド・ブーム, 次ブランド・ブームが, そして9
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年に入ってから最近までの第3
(く表1>参照)と言われている。 それぞれ到来した しかし,最近の日本の景気沈滞が長期化することが予想されるため,第3
次 ブランド・ブームも終わりつつあるのではないかと睡かれている。昨今の日本 のインポート・ブランド・マーケットの動向の一般的な特徴は, まず,第3次 ブランド・ブームを引き起こしたとされるスーパー・ブランドの中でも,相変 わらず需要が伸びているグループ(たとえば, ルイ・ヴィトン,グッチ, エノレ メスなど)と伸び悩んでいるグループ(たとえば, シャネノレ, フェラガモなど) とで明暗が分けられていること,次に, 10万円台以上の高価ないわゆるコレク ション・ゾーンのブランド製品が苦戦する反面, 2万円以上 10万円以下のいわ ゆるブリッジ・ゾーンの製品の売れ行きは相対的に好調ぶりを見せていること が挙げられる。 さらに,後述のように依然として大きい比重を占めていた圏内 ライセンス生産がさらに縮小し,その代わりに直輸入傾向が顕著になりつつあ ることも特徴として挙げられる。その他の具体的な市場動向については,以下 の記述で明らかになるだろう。 〈表1>各ブランド・ブームの概要 区 分 時 期 特 徴 リーデデイングプランド 第l次ブーム 80年頃 竹の子族の登場とDC
ブランドの流行 ルイ・ヴィトン 第2次ブーム 80年代後半 主流だった園内ライセンス生産カま相対的 エルメスとシャネJレ (バブル最盛期) に縮小しその代わりに直輸入重視傾向へ 95年:からの 海外旅行で高級ブランド品を円換算の 上言己にフェラガモ, 第3次ブーム 超円高期 安値で購入でき,圏内でも内外価格差 プラダ,フェンディ, の是正で過去2倍の価格差が2割増へ グッチなどの多様化 出 所 日 経 流 通 新 聞 』 等 よ り 整 理775 顕著化するインポート・プランドと問屋の相克関係 -18少ー III..日本のインポー卜・ブランド・マーケットを巡る内外の 流通経路構成員の動向 本節では,日本のインポート・ブランド・マーケットの流通経路の主な構成 員の行動パターンを最近の動向を中心として述べることにしたい。 1 欧米のブランド・ホールダー マーケティングの母国のアメリカのブランド・ホーノレ夕、ーは言うまでもない が,最近に入つては欧州のブランド・ホールダーも従来のファッション・ブラ ンド・ビジネスにアメリカ流マーケティング手法を積極的に導入している。 具体的には,まずは,ブランド・アイデンティティとブランド・イメージを 第一義的に重視するブランド・マーケティングを追求している点が挙げられる。 それから出てきた世界戦略は,自社で定番商品の製造・販売・ブランド管理を すべてまかなおうとするいわば「世界統一ブランド戦略」と定番のブランド・ イメージを傷っけない範囲以内で現地の需要に応えながらもライセンス・ フィーを入手できる「ライセンス・ビジネス戦略」とで大別できそうだ。 次は,最近になってビジネス・スクール出身の経営者の登用が顕著になって いるために,株式公開や
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が流行っている点が指摘できる。これまで欧 州のブランド・ホールダーは,どちらかというと職人や専属デザイナーの腕前 を当てにしながら伝統と歴史を重視する家族的経営の領域を脱していなかっ た。しかし,今や多くのブランドの経営主体は専門経営者に代わっており,上 (6 ) 国際マーケティングの用語でいえば,世界統一ブランド戦略が標準化戦略でライセン ス・ビジネス戦略が現地適応化戦略になるだろう。ただし,ブランド・ホーノレダーの中で は,ライセンス供与が一時の売上高増加をもたらすかもしれないが,それ以上ブランド価 値を下げるので一切ライセンス事業は手がけない場合が少なくない。たとえば,プラ夕、, ブルガリ,グッチなどのパワー・ブランドのホール夕、ーは決してライセンス事業を行わな いことを公言している。 (7) 1997年に480億フランの売上高をあげ,フランスの高級ブランド75社の加盟国体のコ ルベール委員会の代表格として名声の高いLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン) グループの最近の動向は,まさにアメリカ流経営の典型を示すようだ。たとえば,アメリ場企業の場合は厳密な意味でブランド・ホールダーの株主も経営に関与するこ とになる。そして, プランドの価値は伝統と歴史という抽象的基準より,株主 資本利益率
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などで左右される株式の相場によって決まる。ただし,雇わ れた専門経営者が追求するだろう短期的成果主義と,伝統と歴史の香りによっ て愛顧されてきたブランドの素顔が相容れない側面があることは否めなに ちなみに,欧州のブランド・ホール夕、ーは1
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年代に入ってから,アジア市 場の巨大さと経済成長テンポの早さに注目して rアジア重視戦略」の旗を揚げ てきた。しかし,昨年のタイから始まったアジア通貨危機と総体的な経済不況 のため,ブランド製品需要は予想より落ち込んでいるため,アジア重視戦略は カ流M & A手法を動員した数々の企業買収の結果,同グループは, }レイ・ヴィトンを筆 頭にクリスチャン・ディオール,ジパンシイ,ケンゾー,セリーヌ,ロヱべなどのファッ ション製品および化粧品ブランドに加えて,モヱ(シャンパン),ヘネシー(コニャック) などの高級洋酒までの有名プランドを数多く抱えている。さらに問グループのアルノー 社長は,去年ファッション・ビジネスとは異なる消費財“メーカーであるもののマーケティ ング面では世界の頂点に立つP&Gやユニリーパ社などからマーケティング専門家を集 めている。同グループのアメリカ流経営導入の評価については論外とし‘て,一般的に保守 的な経営で知られているヨーロッパのファッション・ブランド業界に衝撃を与えている のは確かである。 (8 ) 実際,株式公開及び上場によって思わぬ困難に直面しているブラントホールダーも少 なくない。例えば,アメリカのダナ・キャラン・インターナショナルの設立者兼デザイナー のダナ・キャランが自社の所有権を手放すしかなかったケース, LVMHグループへ編入 されたトップデザイナーのジパンシイが半強制的に引退したケースなどは,ブランドを 育て上げたデザイナーがブランドから離れていった例である。一方,最近のグッチの経営 難も株式公開と深く係わっている。創業者一族の対立の隙を狙われアラブ系の投資会社 インベストコープに所有株を売却した後,グッチ社は公開企業になったが,今年6月時点 でプラダ社によってNY株式市場に上場しているグッチ社の株式の9川5%が買収されて しまったケースは,株式公開で資金カを強化するなど,アメリカ流の経営手法で成功した グッチが,今度は他社の株式買収で厳しい立場に追い込まれたことを意味する。そのほか にも,フェラガモ社によるウンガロ社の質収,ブルガリ社によるアパレル・メーカーの買 収の動き等々,伝統的に保守的な経営を堅持してきたヨーロツパのブランド・ホールダー が,リスクを冒しながらも株式公開に走るケースが増えているが,株価の急騰急落に戸 惑っているなど試行錯誤が続いている。 ( 9) これについて一つの出来事を紹介しよう。先述したルイ・ヴ、イトンなどのスーパー・ブ ランドを抱えているLVMHクソレープが, 1996年12月に発行株式の約61%を130億フ ランで買収したDFS(Duty Free Shoppers)が,最近のアジア経済不況の影響で苦戦して いる。DFSは,アジア地域の空港やホテルに180底の免税底を展開する世界最大の免税庖 チェーンであるために,同グループがアジアの成長可能性を見込んで高額で買収したわj 777 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 -191-軌道修正を余儀なくされている。日本の場合もアジア全体の景気沈滞から例外 的だとは言えないが,相対的に日本においてはインポート・ブランド製品への 需要の所得弾力性はさほど高くないと言われている。そのため,欧州のプラン ド・ホールダーは,相対的に安定的な日本市場を再評価しており,改めて日本 市場進出再強化戦略を試みている。後述するが,これまでの日本の商社やイン ポート専業卸とのパートナー関係を解消または修正しようとする動き,都心部 を中心とした大型路面旗艦屈を設けるなど本格的に小売業務を手がけようとす る動き,そして日本の伝統的商慣行について抜本的なメスを入れようとする動 きなどは,このような事情の反映である。 2 総 合 商 社 これまで,主に欧州のファッション・ブランド製品の輸入にかかわる物流な どを担いながら,後述のジャパン社へ出資するなど間接的にブランド・ビジネ スを営んできた総合商社は,その豊富な資金力と情報網を利用して,積極的に 川上と川下への進出戦略を試みている。 最近の動向をみると,概して既存展開ブランドの見直しゃ欧州の新有望ブラ ンド導入に力を入れていることが分かる。とりわけ伊藤忠商事や三井物産のよ うな総合商社は,大型ブランドの展開を狙っており,ライセンス事業の展開に も意欲を見せている。具体的にはブランド・ホールダーと日本国内での独占輸 入販売契約を結んだり,商標権を買い取ったりする形でト新たなパートナ一関係 の構築を試みている。ただし,これまでジャパン社への合弁ノfートナーとして 経営参加を行ってきた総合商社にとっては,前述のブランド・ホール夕、ーの日 本市場戦略の見直しの動向によって新たな対応を模索せざるをえなくなってい けであるが, 97年の売上高は134億フランで前年比43%減(ドル・ベースでは16%減) となり,98年にはさらに売上高の落ち込みが予想されている。強引な企業買収を通じて世 界最大のプランド王国を築き上げたLVMHグループがDFSの買収によって,今度は株 価が急落するなどの苦境に追い込まれているのは皮肉である。 DFSの買収によって売上 高の45%をアジア市場(実際は日本市場)へ過度に依存した結果であろう。なお,この出 来事に関するより詳しい内容は国際商業J,1998年7月号, 32~35 頁を参照すu ること。
る。たとえば,丸紅のように 100%出資の輸入品専門販売会社を設立する動きも 見られる。総合商社に関しては,後の適所で記述を加えることにしたい。 3.. インポート専業卸 本稿の第一義的分析主体が欧米からのインポート・ブランドだげを扱う輸入 専門商社(以下,インポ}ト専業卸と略する)である。欧米の洗練した文化の 結晶としてのブランド製品を,地理的に遠く離れた日本にいち早く紹介してき た異文化コミュニケーターとして,インポート専業卸の自負心は高い。 自前の多数の小売流通網を通しての地道な努力で日本市場ではじめは無名に 近かったブランドを一人前のブランドとして育て上げたという育ての親とし て,そしてインポート・ブランド・ビジネスを一つのまとまったビジネスとし て定着させてきた点で,インポート専業卸の役割は決して過小評価できない。 しかし,固まぐるしく変化する内外の経営環境への対応、に遅れた結果,インポー ト専業卸の行方は,ますます険しくなりつつある。 実際,これまでパートナーシップ関係を結んできたブランド・ホールダーの 対インポート専業卸への注文は手厳しいものがある。とりわけ,日本での問屋 依存的商慣行が自社のブランド・イメージや売上増加へ悪影響を及ぽすと判断 したため,インポート専業卸には,抜本的な口座整理などの改革措置を求めて いる。もし,改革措置が思惑通り進まない場合には,独占輸入販売契約の解消, ジャパン社の単独設立などを断行する意向を表している。 一方,それへの対応策として,インポート専業卸は,ブランド・ホール夕、ー の要求に応える一方で,ライセンス事業の整備や新ブランドの導入などを行っ ている。 く表
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は主なインポート専業卸について簡略にまとめたものである。同表か ら読みとれる注目すべき特徴として,所在地が商都として知られている大阪市 と神戸市に集中している点,業界大手とはいえ各社の売上高が単一の超有名ブ ランドにも及ばない場合があるほど体力が弱体化されつつある見にもかかわ らず主なインポート専業卸が厳しい市場環境の中で(三崎商事を除いて)概ね779 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 -193-〈表2>主なインポート専業卸の経営内容 (1997年度) 企 業 名 決算期 所在地 売 上 高1) 主要インポート・プランド2) ノてリーヘマックスマーラヘクリツィ ア,イエーガー,ジャン・シャlレル・ 三喜商事 6月 大阪市 34,342(L2%) ドゥ・カステlレノぜジャック,エレガン ス,イヴサンローラン・リヴゴーシュ, モスキーノ ヴアレンティノヘブノレガリヘフェラ アオイ 12月 神戸市 21,340(58%) ガモヘアイグナー,アクリス,プェン デイ 三崎商事 2月 大阪市 1l,500( -L7%) ジェニーヘビブロスヘドJレチヱ&ガツ ノfーナ, D & G サンープレール 6月 大阪市 9,133(13 4%) ビキヘヴアレンティノヘレ・コパンヘ レナ・ランゲ,ジル・サンダ コロネット商会 6月 大阪市 8,500(9 0%) ミラ・ショーンヘジェントルマン・ジ ノてンシイ,ストラネス オリゾンティ3) 3月 神戸市 5,200(156%) アイスバーグ,ヴィヴィアン・ウェス トウッド 石田商事 6月 大阪市 4,700(44%) アノレベルト・フェレッティ,ベlレベス ト 出所:矢野経済研究所編 (1998)Iインポートマーケット&ブランド年鑑:高級衣料品・服飾 雑貨編』及び「聞き取り」に基づいて作成 注1)単位は百万円で卸売ベース。括弧内は前年比増加率 2)*印が付いているブランドは,各々のインポート専業卸が出資しているジャパン社が 卸しているブランドであることを示す。 3) 1988年に側ワールドのオリゾンティ部として発足し, 91年に同社より分離独立しイン ポート専業卸になった。 前 年 度 の 売 上 高 を 上 回 る 実 績 を 示 す な ど 健 闘 し て い る 点 , な ど が 挙 げ ら れ る 。 (10) 実際,1997年度に業界最大手の三喜商事の売上高が343億円,二番手のアオイが213億 円(ただしいずれも卸売ベース)である反面,有力単一ブランドの日本市場での売上高(た だし小売ベース)が,ルイ・ヴイトン704億円,エ1レメス284億円,シャネ1レ283億円, グッチ230億円,
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K N Y215億円,プラダ195億円にも透していることからもイン ポート専業卸経営の相対的脆弱性が目立つと言える。しかし,インポート専業卸の中には 一人歩きできるようになったブランドについてはジャパン社の設立のように分社化を進 めていることは指摘すべきだろう。4.. ジャパン社 業界用語としてのジャパン社とは,欧米のブランド・ホールダーが直接に日 本での経営に参加するために設置した日本法人として,寡占メーカーの製品を 卸す販売会社に該当すると考えればよい。一般的にジャパン社は, フやランド・ ホーノレ夕、ーの100%子会社としてのジャパン担と,ブランド・ホール夕、ーに加え 総合商社や専業卸のいずれかかそれとも両側共が出資する合弁会社としての ジャパン社として大別される。 前者は,基本的に本社のグローパル戦略に従っており,国内では有名百貨庖 とファッションピノレへのインショップ出庖,大型の直営路面庄の展開のような 小売事業への積極的な進出を望んでいる。 一方で,後者すなわち合弁型ジャパ ン社は,基本的に問屋依存・小口小売庖取引という日本的商慣行が根強く残っ ており,実質的経営は日本側ノfートナーによって行われているために,最近に はいってブランド・ホーノレダー側の直営庖展開を中心とする小売事業進出の希 望(要求)に戸惑っている。 グローパル・マーケティング戦略が求められる今, 一般的にジャノfン社は, ブランド・ホールダーのコントロール強化の指示に従わざるを得なくなってい る。だいたい, 会計や人事の側面では本社集権化が試みられているが, ただし 今のところ営業や企画は現地事情をも考慮する方針を採っている。ブランド・ ホーノレ夕、一本社の ROE(株主資本利益率)重視政策によって,在庫や売掛金の 縮小, キャッシュ取引の拡大,路面旗艦庖の一層の展開を急いでいる。 ブランド・ホールダーはジャパン社の人材不足について不満をもっているよ マネジメント力,商品および販売のノウハウをもった人材は従 来のパートナーであったインポート専業卸のほうからは期待しがたい実状であ そのため総合商社の関連業務経験者や欧米のビジネス・スクール出身者な うだ。英語力, り, どにジャパン社への転職を呼びかけるケースも散見されている。 く表
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は, 日本のインポート・ブランド・マーケットでジャパン社が手がけ ているブランドの好調ぶ、りを示している。 1997年度基準, インポート・プラン ドの売上ランキング上位10社の中で1位から 9位までが,ジャパン社の取扱フ、781 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 -195-〈表3>売上高上位10位インボート・ブランド (1997年度)1) 順位 ブ ラ ン ド 名 国 名 :iE 業 名 売 上 高 田 1 Jレイ・ヴィトン フランス ルイ・ヴィトン・ジャパン 704 0 (193%) 2 ヱノレメス フランス エノレメスジャポン 283.9 (19 9%) 3 シャネlレ プランス シャネlレ 2831(-100%) 4 グッチ イタリア グッチジャノfン 230..0 (150%) 5 D..
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アメリカ ダナキャランジャノfン 2150 (-79%) 6 プラ夕、 イタリア アイ・ピー・アイジャノfン 195..0 (16 1%) 7 サルヴァトーlレ7ェラガモ イタリア アェラガモレディスブティック} 170.0 (55%) 8 マックスマーラ イタリア マックスマーラジャノfン 170 0 (163%) 9 タやンヒlレ イギ、リス 夕、ンヒルグループジャパン 137.0 (1.5%) 10 クリツィア イタリア 三喜商事 136..0 (63%) f ? s I ; 1 1 i i h 1 1 出所:矢野経済研究所編(1 998)Iインポートマーケット&ブランド年鑑:高級衣料品・服 飾雑貨編』より 注1)小売ベース 2)単位は億円。括弧内は前年比増加率 ランドである。1
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位にインポート専業卸の三喜商事の基軸ブランドのクリツィ アが辛うじて入っている。 5.. その他:SPA,小売専門庖 アパレル・メーカーも,不況の余波で軒並み売上高減少かそれとも経常利益 率減少で苦しんでいさL
大手アパレル・メーカーはその打開策のーっとしてア メリカ流のSPA
への途を模索している。SPA
の行動の特徴は,-製造小売企業」という訳が示すように,これまでは自 (ll) 実際, 1997年度決算期の売上高上位10社の上場アパレル・メーカーの中で,売上高と 経常利益率両方が対前年比増加したのは,バーパリーなどのインポート・ブランド事業を 積極的に展開している三陽商会(売上高で前年対比L4%増の1,363億円,経常利益で 49..6%増の51億円)だけに留まっている。 (12) SPAの鴎矢は1980年代後半になってからのアメリカのザ・ギャップだといわれてい る。日本では93年秋に入ってから海外企業の進出に伴い日本型SPAが続々と誕生する ことになる。ファイブフォツクスがいち早く日本一のSPAの旗をあげるが,最近の大手 アパレル・メーカーは概ねSPAへの途を前向きに検討しているとみてよい。日本のアパ レル・メーカーのSPAへの傾斜については,木下(1994)を,仕入れ原価にこだわる欧 米型SPAとプロパー消化率や回転率にこだわる日本型SPAの違いなどについては,繊 研新聞社編 (1998)を,各々参照のこと。社が作ったものを卸す段階で留まったアパレlレ大手とは違って,小売段階まで 手を伸ばそうと試みる点にある。それに加えて, SPAの本場のアメリカのアパ レル大手に学んでマスマーケットを狙い,積極的にチェーン化・大型路面庖化・ イン 百貨庖インショップ直営化を図ろうとする点も特徴的である。 SPAが, このような特徴を反映して, 自社の生産品目だけでは相対的に大型化しつつある小売庖舗の品揃え物形成に ポート・ブランド・マーケットに参加することは, たとえば,国際服(企画か は至らないための不可避な選択肢のように見える。 を目指して導 そして三喜商事から代わって ら販売までのプロセスを海外でも展開するアパレル・ブランド) 入した三陽商会のエポカとレナウンのカプノレズ, 販売元になったワールドのアイスパーグなどの例からも分かるように,新たな ビジネス・チャンスを求めて,有力アパレル・メーカーは欧米のインポート・ ブランドとの提携を模索している。 インポート却と長期継続的取引関係を結んできたインポート・ブラン 方 ド取扱の小売専門庖にも不況の波が寄せている。インポート卸全体の経営状態 が厳しくなりつつあるなかで,従来,小売専門j古に対して行っていた手形決済, 返品などのいわゆるファイナンス機能をインポート卸に期待することはできな い。すでに企業体力が衰弱化しているインポート卸にとっては,相変わらず問 すぐさまにブラ 屋依存的体質から脱していない小売専門庖との取引の持続は, ンド・ホールダーから斜視化され取引関係から排除される恐れがあることを自 覚しているからであろう。 インポート却の取引先として多数 の小売専門庖は,一方的な切り捨てか厳しい条件下の選別を余儀なくされる。 大手専門店チェーン (FC)への編入,専門庖同士の統合大型化などの生き残り策 このような動きからも推測できるように, (13) 特記しておきたいのは,インポート・ブランド事業に力を入れているものの,いまだ日 本の大手アパレル・メーカーによる海外進出はほとんど見られていない点である。1995年 秋に産声をあげたオンワード樫山の国際服ブランドICBが,やっと本軌道に乗っている 程度(卸売ベースで96年に 55億円の売上高を記録)である。参考までに示すが,通産省 編の『繊維統計』によると, 97年度アパレル製品輸入金額は 1兆7,489億円に対して,輸 出金額は262億円にすぎない状態である。
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783 顕著化するインポート・プランドと問屋の相克関係 -197-が求められるが,専門庖業態そのものの経営危機が社会的問題化されつつある 今日,ブランド・ホーJレダーとそれの意向にしたがうしかないインポート卸か ら敬遠され,顧客吸引力のあるインポート・ブランド製品を扱えない専門店が 今後増える事態は避けられないだろう。I
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間われるインポート・ブランド・マーケットの問屋依存的 商慣行L
インポート卸の排除の動きと日本独特の商慣行 最近になって,インポート卸業界を震揺させたこつの出来事が起きた。一つ は,去年春に起きた「アディダス・ショック」ということで,1
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年まで,ア パレル・メーカーのデサントとドイツ・アディダスが2
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年聞に及ぶ、ライセンス 提携関係を解消するという内容である。デサントの全売上高(
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年度9
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億円 で上場アパレル・メーカー・ランキング第7位)の4割を占めるアディダス製 品を扱えないことによって,デサントは大きな打撃を受けており,事業の全面 的な構造調整に取り組んでいる。もう一つは,同じく去年報道された,鐘紡と クリスチャン・ディオールの国内ライセンス契約の解消のニ昇一スで,既述し たように積極的な日本市場再強化戦略を試みているLVMH
の傘下に収まって いるディオールが日本直接進出のためだという点では,前者と変わりはない。 インポート卸業界では,ライセンス・ビジネスは結局は怖くて非情なものだ と沈痛した雰囲気が広がっており,これからもこのようなインポート卸排除の 動きが加速するだろうと恐れている。しかし,インポート卸排除の原因をブラ ンド・ホールダーの「非↑青な」マーケティング戦略のせいだというのは,決し て物事の本質を正しく捉えることではない。やはり,インポート卸の旧態依然 の商慣習を抜きにしては説明できない面がある。 (14) r商業統計』では,衣料品専門后の数が1994年調査時点で前期 (91年)対比で56%減 少していることを示している。とりわけ, (非法人の)個人型衣料品専門庖は10.4%減少 になっており,インポート・ブランドを扱っている専門庖を含めて本格的な零細衣料品専 門底の淘汰が始まっているという見解を裏付けている。一方,法人型衣料品専門庖はか えって 10%の増加を呈していることは注目に値する。取 り 急 ぎ , 日 ・ 欧 ・ 米 の 取 引 先 と の 取 引 様 相 と , ブ ラ ン ド ・ ビ ジ ネ ス に 重 要 な 在 庫 対 策 に つ い て の 差 異 を み て み よ う 。 ま ず , 欧 州 は , 買 い 取 り と イ ン シ ョ ッ プ の 消 化 仕 入 れ が 主 流 で , 在 庫 対 策 と し て は , 最 近 増 え て い る 工 場 直 営 の ア ウ ト レ ツ ト 設 置 で 対 応 し て い る 。 次 に , ア メ リ カ は , 買 い 取 り が 原 則 で , 売 れ 残 り は 買 い 取 っ た 側 が 値 下 げ 処 理 を す る が , 一 方 で 発 達 し た ア ウ ト レ ツ ト ・ マ ー ケ ッ ト が あ る か ら 在 庫 を さ ほ ど 心 配 す る こ と は な い 。 そ し て , 日 本 は , 委 託 仕 入 れ が 主 流 で , 最 近 に な っ て 消 化 仕 入 れ が 増 加 す る 傾 品 こ あ る が , ア ウ ト レ ツ ト が 未 発 達 の た め に 在 庫 負 担 は 重 い 。 そ の た め に 内 々 の セ ー ル を 通 じ て 在 庫 処 分 を 行 う 程 度 に 留 ま っ て い る 。 こ の よ う な 日 本 と 欧 米 に お け る 取 引 様 相 と 在 庫 対 策 の 違 い は , 言 う ま で も な く 日 本 の イ ン ポ ー ト ・ ブ ラ ン ド 製 品 の 流 通 に イ ン ポ ー ト 卸 が 関 与 、 す る 度 合 い が 欧 米 に 比 べ て 明 ら か に 高 い こ と に 由 来 し , そ の た め に 日 本 の イ ン ポ ー ト ・ ブ ラ ン ド ・ マ ー ケ ッ ト の 前 近 代 性 的 な 商 慣 行 と し て そ の 姿 を 表 す 。 項 を 改 め て そ の 側面をうかがってみよう。 (15) ここで,委託仕入れと消化仕入れの違いについて,大手アパレル・メーカー(あるいは
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と百貨庖の取号│を想定しながら,説明することにしよう(ブランド・ホールダーあ るいはそのエージェントとしてのインポート卸と,インポート・ブランド取扱小売業者と の関係にも,この説明の筋はさほど変わらない)。百貨庖にとって「委託仕入れ」とは, 卸しとしてのアパレル・メーカーが派遣した社員が商品を売りかつ最初から返品可能と いう条件付きの仕入れを指す。ただし,仕入れの主体は百貨庖側であるために仕入れコス トは百貨底側が負担し,かつどれだけ仕入れ,どれだけ庖頭に並べるかも百貨庖側の経営 判断に委ねる。このような日本の伝統的な商慣行としての委託仕入れは最近のアパレル・ メーカーのSPA
志向傾向によって「消化仕入れJに切り替えるケースが増えている。先 述したように小売段階への直介入を目論むSPA
型アパレル・メーカーは,直営路面底の 展開を開始する一方で従来の百貨底インショップの直営化を図るが,その結果として現 れたのが,委託仕入れに代わる消化仕入れである。消化仕入れの際,アパレル・メーカー は一般的に納品伝票は切らず,庖頭商品は自らの所有にし,そして庖頭在庫やディスプレ イも自ら自由に行う。百貨庖側は顧客に実際に売れた分,すなわち消化した分だけを仕入 れて販売したことになる。百貨庖倶uからすれば,アパレル・メーカーの消化仕入れ要求の 受け入れは,価格決定権や数量コントロール権の委譲というパワー関係における劣位的 立場によって,売場の貸し業への転落を意味することにもなるが,その反面,限られた経 営資源をPBなどで構成する「自主編集売場」に投入することを可能にするメリットもあ ることを指摘すべきであろう。ト 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 785 インポート卸と小売専門庖の聞の馴れ合い的商慣行 2“ なかんずくインポート専業卸やそれの取引文化を引きずる合 その主たる顧客である零細小売専門屈と,義理人情関係に 基づいた長期継続的取引関係で結ばれてい
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。問題は, インポート卸, 弁型ジャパン社は, インポート卸にとって ブティック型の小売専門庖は相変わらず主たる取引相手であるが,小売段階で のブランド管理こそが大事なブランド・イメージ段損を防ぎ,結果的に日本で のビジネス・チャンスの拡大に繋がると判断したプランド・ホーノレ夕、ー側が, インポート卸に対してプランド・イメージを崩す恐れのある零細小売庖口座の 日本のインポート・ブラ 大胆な整理を求めるところにある。既述したように, ンド・マーケットにおけるパワー関係の変化によってインポート卸はプラン ド・ホールダーの意志にしたがうしかない立場に置かれている。自社の製品を 卸しを通して多数の零細独立小売専門庖に卸す従来の取引関係から脱し,究極 的には直営小売体制を追求しているブランド・ホールダーの思、惑は,零細小売 専門庖にとっては死活の問題に他ならず,その分,抵抗の矢先は口座整理に走っ ているインポート卸側に向かう。零細小売専門屈側は,自分らがインポート卸 と共にインポート・ブランドを消費者に認知させ, 日本でのインポート・ブラ ンド・ビジネスを成り立たせてきたと主張しながら,これまでの良きパートナー ブランド・ホール夕、ーに屈して口座整理に走ること ブランド・ホールダーから直すべき商慣行としてひとまず指摘され るものは,インポート卸と小売専門届の聞の馴れ合い的商慣行にほかならない。 以下では筆者のインポート卸業界への参与観察と聞き取り調査に基づいて, の具体的な例を簡略にあげてみよう。 そ としてのインポート卸が, に反発している。 しかし, ①伝統的な属人的営業:最近,携帯端末などの情報機器の設置によって在庫 (16) 参考までに,あるインポート専業卸最大手の最近の取引先数(販売シェア)を調べてみ ると,百貨庖が約90I苫 (13%),専門庖約 3.000I苫 (65%),直販 (22%) となっている。 専門庖チャネルの比重の大きさが見えてくる。 (17) これについてより詳しい内容は,握 (1997b) の第 7章を参照されたい。l j i i # 管理システムや顧客管理システムを導入するインポート卸が散見され,結果的 に営業体制の合理化にも明るい兆しが見えてきた。しかしそれはあくまでも直 営小売庖の域を超えず,多数の零細独立小売専門底までの導入は遠く及ばない。 そのため,インポート卸の営業マンたちは,依然として従来通りの人的信頼関 係を重視する義理人情型営業手法(崖,
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に頼っているのが実状であZ
。 すべての業種,業態を問わず緊急課題になっている営業システムの合理化・科 学化・組j織化は,ブランドを売り物とするインポート・ブランド業界において 皮肉にもかえって遅れているといっても過言ではない。 ②小口取引と手形決済:インポート卸の主顧客が零細小売専門庄であるため に,年商規模が1
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万円にも及ばない口座も多数ある。委託決済商慣行のため に,専門庖との決済は,度々小口単位の消化後決済,あるいは数ヶ月後払いの 手形決済の形をとっている。決済日をきちんと守らず,結果的に銀行口座振り 込みでもなく,営業マンによる集金体制が定着している。営業マンの仕事の多 くが集金に費やされる。 ③展示契約会:インポート卸は,年間売上高の大半を,おおよそ年2回開か れる契約会に招待される小売専門庖側や百貨庖側のバイヤーとの購買契約に 頼っている。バイヤーたちは展示されるインポート・ブランド製品(あるいは カタログ)のサンプルを見て購買を行うが,このような契約会は,基本的に小 売業務を主に行っている欧米のブランド・ホーノレダーにとっては,問屋頼りの 日本的商慣行の存在のための不可避的かつ例外的なものとして見なされてい る。インポート卸頼りから小売直営体制へのシフトのために,展示契約会の仕 組には根本的なメスが入る余地があると,ブランド・ホール夕、一側は判断して いるようだ。いっぽう,展示サンプルの不足,納期の遅延,注文した製品と異 なる製品の納品など,インポート卸恨肋〉らも不満は絶えないため,ブランド・ ホ}ノレダー側とのコミュニケーションの問題も頻発している。 (18) 1995年時点での筆者のインタビュー調査によれば,ある合弁型ジャパン社の場合,年商 300万円以下のr,gの売上高は全体の約6 %しかないのに,営業マンがそこに注ぐ営業努力 は全体の約30%もかかるそうだ。787 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 -201 ④無分別な返品:委託仕入れが慣行的に定着しているために返品は仕方ない ものである。しかし,いつでも返品の可能な委託製品を扱っている小売専門庖 にとっては,販売誘因が乏しいことになる。ファッション製品のために,シ} ズンが過ぎた後の無分別な返品が,インポート卸の在庫負担になるのは必至で, それがブランド・ホーノレダーの不満に繋がることは容易に予想、できる。 ⑤大手小売専門庖の無理な協賛要求::
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展開を行うなどの大手専門屈はそ の交渉力を利用してインポート卸に対して,様々なイベントを口実にして時々 過度な形の協賛を要求する。年末や創業記念日などの際に謝恩セールを口実に するが,実は自屈の(買い取り製品の)在庫処分を行うためというのが本音で あって,インポート卸に集客効果の大きいインポート・ブランド製品の協賛を 要請するのである。ただし,この場合,インポート・ブランド製品もセーノレの 対象になるために正規の掛け率(一般的に買い取りの場合下代の60%,委託の 場合同65%)より低く設定されざるをえない。さらに女性社員の応援や抽選会 用景品提供が要求される場合もある。 ⑥口頭契約(暖昧契約)..日本的商慣行の特徴のーっとして取引関連契約の暖 昧さが指摘(丸山,1
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されて久しいが,インポート・ブランド業界も例外 ではない。インポート卸と小売専門屈との聞では,返品,決済条件,納期など の取引条件について口頭で合意されるのが常であり,そのためにその合意が守 られない場合が頻発する。 ⑦値引き販売:ブティック型の小売専門庄は,常連客の値引き要求に良く応 じる。多数のアパレノレ・メーカーのブランド製品と複数のインポート・ブラン ド製品を品揃えとして抱え込んでいる専門屈は,特定のインポート・ブランド 製品を顧客に値引き販売した後に,当該インポート卸にその分の仕入値を下げ るようにと要求する。さもなければ,常連客に推奨販売を得意とする専門庖は 他の競合ブランド製品を勧めるかもしれないので,黙ってその要求に応じるし かない。勝手な値号│き販売がもたらす大事なブランド・イメージの損傷は,小 売専門店にとっては対岸の火事にすぎない。 ⑧内々の在庫対策:ほとんどのインポート卸は,売れ残った小売専門庖の返品やブランド・ホーノレダーからの過剰仕入れが原因で,多数の在庫を抱えてい る。 しかし,在庫コストを減らすために,小売専門庖のように一般顧客向けの セーノレを実施するわげにはいかない。先述のように日本ではアウトレツトの登 場はつい最近のことでいまだ欧米のように一般的ではない。 そのために結果的 に特殊なセールに頼って,在庫商品を無くす方法が用いられる。例えば,得意 先小売専門庖の社員用に限つてのセーノレ,当該インポート卸の家族だけを対象 とするセーノレが,大々的に年に数次行われている。 この類のセールで売りさば かれる割合が全商品の約4分のlから 3分のlに及ぶインポート卸もあるそう だ。 ⑨安易なブランド拡張:インポート卸は時々短期的な売上高増大を狙い,安 易にセカンド・ライン製品あるいはライセンス製品の投入および、拡大に走って きた。 これまでは, ブランド・ホー/レダーも, それらの製品が日本消費者の曙 好にフィットするために売上高に寄与すること, そしてライセンス・フィー収 入が増えることなどのメリットがあったから, インポート卸のブランド拡張行 しかし,先述のように最近の欧米のブランド・ホールダー 伽) 為を容認してきた。 はブランド拡張がもたらすブランド・イメージの損傷を恐れ(小林, 1997), た いがい直輸入ブランド製品だけの扱いをインポート卸に求めている。 しかし, インポート卸のなかでは, すでに確立したセカンド・ライン製品やライセンス 製品の消費者認知を理由として, ブランド・ホー1レ夕、ーと意見対立を呈する場 合も見られる。 3, ブランド・ホールダーの苛立ち 以上のようなインポート卸と小売専門庖の聞の馴れ合い的商慣行のほとんど は, これまで修正の対象として問題視されてきた日本における卸一般と小売一 (19) 主に前期および前々期商品が対象であるが,今期の見切り商品を出す場合もある。 (20) ブランド・マネジメント論では,ブランド拡張を,ライン拡張とフランチャイズ拡張(あ るいはカテゴリ拡張)に分けて説明している。主に寡占メーカーの商品のブランド戦略を 中心とする議論ではあるが,より詳しくは, Tauber (1981),小林 (1997),青木(1998) などを参照のこと。
789 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 -203-般の聞の商慣行そのものと何ら変わりがない。すでに指摘したように最近のブ ランド・ホールダーは,世界標準のブランド・マーケティング戦略を展開しよ うとするために,信頼関係という美名でず、っと守られてきた日本独特のイン ポート卸と小売専門屈の聞の癒着関係がもたらすブランド・イメージの損傷と 市場拡大の機会損失を懸念している。 先述のように欧州のブランド・ホールダーが, このように商慣行改革に本腰 を入れての対応に遅れている日本のインポート卸に苛立ち,パートナーシップ 関係の解消に走るのも納得できる。 しかし,小売専門店を一気に整理できないインポート卸にも言い分はある。 インポート卸は,多数の零細小売専門屈との取引の非合理性は充分認識してい るカヲ, それを全面的に整理し,一方で大手小売専門庖と百貨屈との関係を強化 した場合に,当分の間売上高の
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割以上の減少は避けられないと試算している。 その際,株主対策などで短期成果主義を重視することになったブランド・ホー ル夕、一側が, そのような大幅な売上高の下落を容認できるかという問題が改め て出てくる。インポート卸は, どのようにすればこの進退きわまる苦境を乗り 越えることができるのか,次節ではその側面を窺うことにしよう。 V インポート却の生き残り戦略 インポート却におけるジレンマ:ブランド育てと大政奉還のパラドック ス 日本市場再強化戦略を狙っている欧米のブランド・ホールダーにとって,大 庖法の廃止(大}苫立地法の制定)の決定と金融ビッグパンの進展などは,追い 風として作用している。最近のいわゆるスーパー・ブランドの大型路面旗艦庖 の進出ブームと欧米のブランド・ホーノレダーによるジャパン社への経営支配の 強化などの強攻策の実施においては, ブランド・ホーlレダーの世界標準のブラ ンド・マーケティング戦略の思惑と日本のインポート卸の慣性的対応に加えて, 環境要因さえも推し進める形になっている。 言うまでもなく, このような動きは, 日本のインポート卸にとっては, さらに厳しい立場に追い込まれることを意味する。インポート卸の経営者とのイン タビューで,欧州│のブランド・ホールダーとの関係について聞けば,必ず、出て くるのが r大政奉還の繰り返し」としてのブランド・ビジネスの無情さ,無念 さについての肱きである。 先述のアディ夕、ス・ショックと鐘紡とクリスチャン・ディオールの関係解消 はその典型的な例になるだろう。インポート卸は,まずは,日本市場にはまっ たくの門外漢に過ぎなかったブランド・ホールダーとの関係の開始・持続にお いて,あらゆる努力を通じて売上高を確保しなければならない。もし思った通 りの実績が上がらなかったら,ブランド・ホールダーは当該のインポート卸の 販売能力に疑問を抱き,関係解消と新たなパートナー探しに走るだろう。 しかし,それに応えるためにインポート卸が懸命にそのブランド製品を売る 努力を行った結果,大きな成果を挙げたとしても,ブランド・ホールダーは, もしかしたら次の理由でインポート卸との関係解消を目論むかもしれない。す なわち,インポート卸との関係が持続するうちに,ブラックボックスとしての 日本市場の知識が伝えられ,そして日本の消費者にもブランド・イメージが浸 透するにつれ,ブランド・ホール夕、ーは,間もなくインポート卸との関係を持 続する動因を無くすことになる。それどころか,前近代的な商慣行に頼るイン ポート卸に対して,かえってやっと消費者に浸透したブランド・イメージを損 傷する存在として白眼視さえする。 インポート卸から見れば,ブランド・ホーノレダーとの関係においては,関係 解消の繰り返しの苦い経験から,ブランドを大きく育てなければいけないし, しかし大きく育ててもいけないというまさにジレンマ的状況に陥ることにな る。大きくなれば裏切られることを知りながらも,しかし大きくしなければな らない哀れさを感じながら,インポート卸はブランド・ホール夕、ーとの関係を 続けている。 一般的に外資が日本市場へ進出する際には rライセンスや輸入総代理屈契約 →合弁企業→単独出資法人」のプロセスを辿りながら,日本でのチャネル管理 の深度を高めている(田村,
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。しかし,ブランド・ホーノレ夕、ーと他の一般205 顕著化するインポート・ブランドと問屋の相克関係 791 的外資の進出戦略のプロセスはやや異なる様相を呈している。決定的に異なる 一般的な外資は生産・輪出・内需・開発の国際的展開といったグロー パル戦略の手順の一環ですでに日本の消費者にある程度認知された製品をもっ て日本市場への「漸進的な」アプローチを試みるのに対して, 日本市場進出の初期段階ではほとんど無名のブランドを一人前のブ ランドにまで育て上げる使命をはじめからインポート卸に課していることにあ ことは, ブランド・ホー lレダーは, る。その点でも,そしていつか大政奉還の日を迎えるかもしれない点でさらに, インポート卸が置かれた環境は,非常に厳しいと言わざるを得ない。 、
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↓ インポート却の対抗策2
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しかしな がら日本のインポート・ブランド・マーケットが今日のような商慣行や取引制 度を保ってきたことは,歴史的経緯を辿っていけば,それなりの合理的経済主 体行動の斉合状態の現れとして積極的に認めるべきだというのが,最近流行の 「比較取引制度研究」の教示である。 日本市場の特殊性をあまりにも強調することは慎むべきだろうが, インポート卸の従来の行動ノTターンを全面的に否定することは早 その点で, ばナイキの試行錯誤のケースは示唆的である。ナイキは, 商慣行を日本市場へそのまま強引に導入し一時的には大成功を収めたように見 やはり日本的取引文化の壁を乗り越えることができず,現在のところ やや苦境に陥っている。 たとえ アメリカで成功した 計かもしれない。今の段階で性急に評価を下すべきではないだ、ろうが, えたが, (21) ナイキは, 1993年末,日本市場において他の欧米ブランド・ホールダーの前轍を踏んで, 当時の合弁パートナ一日商岩井から全株式を譲り受け, 100%全額出資のナイキ・ジャパ ンを設立した。ナイキ・ジャパンは,小売底に対して(業界慣行である手形決済ではなく) 現金決済による完全買い取り制の実施,製品発売日の半年前に小売底側から受注する FOS (Future Order System)の実施,三ヶ月毎に新製品を入れ替える四シーズン告jの導 入,さらに96年からエアマックスなどの人気モデルについて取引先を選別するキー・ア カウント政策の実施などを行った。ナイキ・ジャパンは,返品が認められ,口頭契約が交 わされる旧来の日本的商慣行と一線を画し,完全買い取り制を軸としながらきめ細かな 行動綱領を含めている書類契約で成り立つアメリカ流の取引制度をグローパル・スタン ダードとして認識したのである。取引小売庖側は,ナイキ製品を取り扱う際には,自ら在j
しかし,ナイキ・ジャパンの試行錯誤が改めてインポート卸の行動パターン の有効性を示すものではない。日本のインポート・ブランド・マーケットにお ける卸依存的商慣行を改め,各々の構成員を世界共通のルールに従わせようと する西欧のブランド・ホール夕、ーの改革方向は,時々その改革スピードの早さ と改革方法の強引さが問題ではあるものの,相変わらず有効である。インポー ト卸が単に小売専門庖との義理人情的取引関係を最重要視する過去の商慣行に 慣性的にこだわり,日本市場の独自性を前面に立てながらブランド・ホー1レダー との関係を維持しようとすれば,それは自家撞着以外の何ものでもないだろう。 繰り返すことになるが,ブランド・ホールダーは,グローパノレ・ブランド・ マーケティング戦略の緊要性と日本市場環境の変化という内外要因から刺激さ れて,魅力的なパートナーだと見なされるインポート卸の選別を本格的に始め ている。従来の商慣行に頼りながらブランド・ホールダーとの長期に渡るパー トナーシップ関係にこだわるインポート卸は,市場から退出するほかはないだ ろう。日本のインポート・ブランド・マーケットの開拓者であり,そして主軸 としての地位を築いてきた数々のインポート卸とは言えども,市場の成熟期を 迎えつつ過度な競争環境のなかに置かれる現状からは,少なからず市場から退 出させられることは避けられないかもしれない。 しかし,インポート卸の中では,一部ではあるものの,厳しい現状への危機 意識をかかえ,自分なりの対応策を講じながら,一方的な上記のブランド・ホー ノレダーの強攻策にしたたかに向き合っているものも散見される。以下はその事 例を集めたものであるが,そこから今後のインポート卸の新たな戦略方向が見 庫リスクを持ちながら,短期間で新製品を売りさばかないといけないことについて苦情 を表したが,日本市場だけに例外を認めるわけにはいかないというナイキ・ジャパンの強 い意志によって受け入れられなかった。日本の市場状況を無視した強引なナイキ商法は, しかし,スニーカー・ブ}ムが去った去年秋頃からシューズの過剰在庫,それからの小売 段階での値引き競争の勃発,結果的な減収・減益という業績悪化によって,新たな局面を 迎えている。すなわち,あまりにも日本の商慣行や市場の独自性を無視したナイキ商法の 問題点が取り沙汰されている。とりわけ,ナイキ・ジャパンの競合相手でありながら最近 好調ぶりを示しているアディグ、ス・ジャパン (98年4月設立)は,ナイキ・ジャパンのや り方とは違って手形決済などの日本的商慣行を重視すると公表しているのは注目に値す る。793 顕著化するインポート・プランドと問屋の相克関係 207-えてくるかもしれない。簡略にまとめてみよう。 ①逆買収:1998年3月,オンワード樫山が,ダナ・キャラン・ジャパン社の 全株式を買収した。新生夕、ナ・キャラン・ジャパンは従来の独占輸入販売権に 力