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教師の成長過程に関する試論的研究

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Academic year: 2021

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(1)

A Pilot Study on the Developmental Process of′

reachers

発達心理学教室 教育心理学教室

Toshitaka:rAMARU and Yuichi ToDA*:A Pilot Study on the Developmental

Process of Teachers.(Journal of Faculty of Education,Tottori University,

Education Science〉

35‐

1,1993)

目 的 教師の成長過程 を明 らかにす ることは

,理

論的 にも実践的 にも重要な課題である。 現在

,人

間の発達研究 は

,神

経生理学的な変化 を伴 う児童期 の成長過程 のみならず

,生

活者 とし ての成人期や老年期 の成長過程 に接近することも要請 している。 この ことは

,人

間の心理 を種々の 関係 において考察す ることを必要 とす る。 とりわ け

,成

人 の発達 は

,職

業生活や家庭生活 との関係 を除外 して考 えることはで きない。 ところで

,教

師 とい う職業 は

,そ

の仕事 を通 じてさまざまな子 どもと出会い

,子

どもか ら学ぶ と いった直接的に人間的な発達 の機会に恵 まれたものである。そのため

,職

業生活 を通 じての成長過 程 を見 い出 しやすい と考 えられ る。 しか し

,教

師が生涯 にわたって どのようにして こうした発達 の 道 を歩 んでいるかについて は

,実

証的な資料 は乏 しい。

D.レ

ビンソンは

,生

活構造か らライ フサイ クルを4つの発達期 にわけている。

0∼

22歳が児童期 と青年期

,17∼

45歳が成人前期

,40∼

65歳 が 中年期

,60歳

以降が老人期 として

,重

なっている部分が過渡期である。 こうした区分 は

,さ

まざま な職業 の男性 についての面接調査 に基づいた ものである。(D。 レビンソン

,1992)こ

うした発達期 が教師の成長過程 において も見い出せ るか どうか

,ま

,そ

うした成長 に関わ る状況 はいったい何 なのか

,検

討 の余地がある。 教師の成長過程 に関す る研究 は

,教

員養成 とい う実践的な問題か らも重要である。 日本教育学会 「教師教育 に関す る研究委員会」 は

,研

究の到達点 として次のような点 をあげている。 「教師 としての資質 とか力量 とか呼ばれているものは

,彼

,全

体 としての人間的な資質や力量 を基礎 とす るものであ り

,し

たがってそれは

,彼

自身の生涯 にわたる成長や発達の過程 と切 り放 し て論ず ることはで きない。」「大学 は決 して教師教育 を完成す る場所で はない。」「大学 にお ける教師 教育 は

,小

・ 中 。高等学校 の教育 に接続 して

,将

来教師になろうとしている青年 に

,生

涯 にわたる 人間形成及 び学識形成 の基礎 を与 えるような ものでな くてはな らない」等。(長尾

,1992)

(2)

こうした見地か らす ると

,教

員養成 に関わ る研究 は

,教

師の成長過程全体 の中で大学教育 の意義 を明 らかにす るものでな くて はな らない。 また

,そ

の ときの教師の成長過程 とは

,た

んに「通俗的 な意味での職人的技能」が高 まることではな く

,学

識形成 を含む人間 としての発達 を指す ことにな る。 本研究 は

,生

活構造の変化が

,成

人 の発達 に重要 な影響 をもた らす ことを仮定 し

,年

齢 の異なる 教師に調査 を試みるものである。調査 は

,幼

児期か ら現在

,そ

して将来の展望 にわたって

,教

職 に 関わ るさまざまな意識の様態 と変化 について

,教

師個別 に面接 し行 うが

,

とりわけ

,大

学教育 に関 すること

,教

師 としての成長

,い

ま抱 えている問題 を とりあげてみたい。 また

,女

性教師特有の問 題 も取 り上 げることとし

,と

りわ け

,出

産 と育児 の もつ意味 について も検討 したい。 方 法 〈予備調査 と質問項 目の選定〉1992年 12月

, 1人

あた り

2時

間程度の面接 を経験の豊かな教師

5人

に対 して行 い

,質

問項 目の選定 を行 った。 (本調査 の日時 と場所〉1993年 1月 ∼ 2月

,調

査協力者 の自宅 ない し勤務校 において実施 した。 〈手続 きお よび質問項 目〉一 日の様子等 を記入 して もらったあ と

,以

下の項 目について1人あた り

1時

間程度 の面接調査 を行 った。 (質問項 目〉 1。 大学入学以前の こと (先生 と友 だち関係 を中心 に) 幼稚園

,小

学校

,中

学校

,高

校 の頃で印象に残 っていること

/こ

どもの ころの父母兄弟 のこと

/

こどもの ころの時代背景 と環境の こと

2.教

師志望 について 教師になろうと思った時期

/受

験 のこと

/教

師志望 に至 る人か らの影響 3。 大学 の こと 理想 の教師像 とその変化

/印

象 に残 る学生生活,授業,大学 の教師

/教

育実習

/大

学で得 た もの

/

時代

4.教

師になって 教職 に就 いてか らの他 の教師 との出会い

/子

どもと接す るなかでのお もしろさ

,難

しさ

,学

んだ こと

/自

分 の変化

/教

師 をしていて良かった こと

,嫌

な こと

/大

学時代 の勉強 は役 に立 ったか

5.家

庭生活 の こと 家事 の こと

/[こ

どもがいる人 に対する質問

]こ

どもが生 まれて変わった こと

/子

育ての中で う れ しかった こと

,困

った こと

/教

師 をしていて子育 てに役立 った こと

/子

育てをして教師 をす るこ とに役立 った こと 6。 その他 ス トレス

,疲

,病

/転

職希望

/も

う一度大学 に入学で きるとした ら

/も

し校長 になるとした ら

/教

師 としての今後 〈調査協力者〉 面接調査 に応 じて もらった人 の年齢

,性

,調

査時点での勤務校 の一覧 を掲 げる。 なお

,出

身大 学 は

,鳥

取大学教育学部が12人

,県

外他大学が

9人

であった。

(3)

記号 年 齢 性 別 勤務校 A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U 20才代前半 20才代後半 20才代後半 30才代前半 40才代前半 40才代前半 40才代前半 40才代前半 40才代前半 40才代前半 40才代後半 40才代後半 40才代後半 40才代後半 50才代前半 50才代前半 50才代前半 50才代前半 50才代前半 50才代前半 60才代前半 女 女 男 男 女 女 男 女 女 女 女 女 女 女 女 女 男 男 男 男 女 小 学 校 小 学 校 小 学 校 小 学 校 小 学 校 養護学校 小 学 校 小 学 校 養護学校 養護学校 中 学 校 小 学 校 養護 学校 小 学 校 小 学 校 中 学 校 中 学 校 高等学校 養護学校 中 学 校 小 学 校 結 果

1.大

学教育について 大学教育について得た回答 を示す と

,以

下のようになる。なお

,( )内

の記号 は

,該

当する教師 を示す。 (A)「障害 を持つ子 に出会 って

,こ

のような子 に教 えたい

,と

思 った。サー クル を通 して

,一

生懸 命やれば何かが精神的 にも身 につ くことを得 た。」 (B)「障害児教育研究会や こども会 の活動 を通 して

,養

護学校教員 にな ろうと思った。」「教育実習 で

,教

材研究が しっか りで きた。子 どものお もしろさ

,授

業の難 しさ

,現

場 の先生のす ごさを学ん だ。」

(C)「

友だちの幅が広がった。教育実習で は

,児

童心理 を学 んだ ことが役 に立 った。」

(D)「

教育実習で

,現

場 の先生 の授業 はす ごい と思った。」 (E)「た くさんのバ イ トをして

,色

々な職種がみれた。」「 ゆっ くり考 える時間があった こと

,た

く さんの人 に出会 った ことが よかった。」「教育実習 は

,と

て も楽 しかったが

,た

いへんだな

,え

らい な と思 った。障害児 クラスは役 に立 った。」

(F)「

いろんな人 に出会 って

,人

間の生 き方 を学んだ。」

(4)

│ (G)「

全国規模 の友 だち

,親

の有 り難 さ

,自

炊 のたいへんさ

,自

立 を学 んだ。」「

YMCAで

子 ども

たち と接 しているうちに子 どもたちか ら離れ られな くなった。」

│ (H)「

施設や実習で

,障

害児 を思いあがった気持 ちで見ていたが

,子

どもと接す るうちに

,上

か ら 見ていた子 どもの とな りにい られ るようになった。」「老人 ホームで

,人

によって見方が違 うことに

1

気付いた。」「大学の教育 は

,何

か書 いた り

,レ

ポー トを書 く上で役 に立 っている。」「卒論 の先生 と 友だちを得た。」「実習で養護学校 にいった ことが印象深い。」 (I)「テニスクラブの友 だち と雑魚寝 した り

,し

ゃべった りした ことが印象的。」「′

b理

の勉強が一 番お もしろかった。素直 に自分 を見つめなお した り

,人

間って こんな ものか

,自

分 って こんなもの か

,

とい う考 えの整理がで きた。」「実習で特殊学級がす ごくたいへんだったが

,普

通学級 よ り

,印

象が残 っている。」 (J)「バ イ トな どの大 きな体験がで きて

,行

動様式や

,自

分が大 きく変わ り

,ピ

アノだけだった自 分 を崩せた。」「 自分で選 んだサー クル

,心

理の授業

,ボ

ランティアな ど自分か ら動 き回って

,色

々 つかんだ。」「教育実習 は研究授業 にた くさんの人が きて くれて感動 した。とて も素本卜で楽 しか った。」

(K)「

英語 にばか り熱中 していた。」「高校 とは違 う自由な気分 を味わつた。」「

ISA(国

際学生会 議

)が

E「象に残 っている。」

(L)「

友だち と出会 えた。」「音楽 の勉強がで きた し

,そ

の勉強が役 に立 った。」 (M)「特殊学級の子 と触れ合い

,こ

んな子の教育が したい と思 った。」「一般教養

,幅

広い知識 を身 につけた し

,視

野が広が った。」「異常児関係 (注 :現在 の障害児教育

)の

ことや指導法

,指

導計画 が役 に立 った。」 (N)「県外か らきた人 に色々教わった。」「教育実習 をして勉強 を教 えるだけでな く

,動

いて遊 んで やることが大事 だ と思 った。」「児童心理や ピアノ

,ま

た小学校 の先生 をしていた ことのある人 の授 業 は聞いたことがす ぐに役 に立 つので よかった。」

(0)「

生涯や りがいのある『職』を得た。」「友人

,恩

師に恵 まれ

,考

え方 に影響 を受 けた。」「 ピア ノな どの実技 を身につ けた ことが役 に立 った。」 (P)「習字 を通 して色々な人 に知 り会 えた。」「国語で は和歌

,俳

旬 な どその時習 った ことをそのま ま使 えるので よい。」「根 をつめて何 日で も取 り組 んだ りで きるのは大学時代夜 なべ をした りした こ との成果。」

(Q)「

人間 としての生 き方 を絵 のなかで学んだ。」

(R)「

学会で学問の先見性 を知 った。」「専門や

,教

職 の基礎の積み上 げは大切。」 (3)「 学友会でサー クルの基礎 を作 った り

,大

学 の自治のあ り方に疑 間 を持 って自分 たちで働 きか けた。」「サークルや課外授業が役 に立 った。」 (T)「教育実習 をして

,ぜ

ひ教師 になろうとい う気持 ちが強 まった。」「 さまざまな意味での知識 を 得たし

,色

々な意味で『やった』 という気持ちがした。」「大学時代の勉強を上台にして自分から学 んでい くという意味で大学教育 は役に立った。」

(U)「

教師になろうという気持ちが一層強 くなった。」「友だちが県下にで きた。」 以上 のような大学教育 についての意見 は次のようにまとめ られる。 専門の勉強 においては

,自

分 の興味ある分野や実技 などが教師になってか らも役 に立 っていると い う意見が多い。 しか し

,大

学 はそのような狭義 の勉強だけでな くむ しろ課外活動 な どを通 して, 人間形成 をはかる場 となっている。

(5)

特 に

,サ

ー クルやボランティア

,ア

ルバイ トな どは

,視

野 を広 げた り

,人

間的に も成長す る上で プラスになっているとい う。 また

,友

,恩

師 との人間関係

,子

どもとのぶれあい

,教

育実習 は, 自分の考 え方 に多大 な影響 を与 えている。 大学生活 は

,そ

れ までの学校生活 とは違 う自由な雰囲気の中で

,自

分か ら進んで働 きか けてや り たい ことを発見 し

,の

ば してい くな ど成果の大 きな もの となっている。

2.教

師 としての成長 次 に

,教

師 としての成長 に関す る回答 を示す と以下 のようになる。

(A)初

めて教壇 に立 った とき,「厳 しい ものを感 じた。」私 自身「登校拒否 にな りそうだった。」「授 業中

,(子

どもが)漫画 を読 んだ り

,抜

け出 した り

,ゲ

ームボーイをした りしていて

,授

業 にで るの がいやだった。他 の先生の時 はちゃん としているのに。聞いてな くて も

,残

り半分 くらいの子 を相 手 に授業 をした。 よ く

,手

を出 した り足 を出 した りしていた。」学校 は,「中学で

,荒

れていた。」 しか し,「

1年

間教科書 もほ とん ど持 って こない し

,授

業 も聞いてなかった子が,『どうせ高校 に 行 けれない』といっているのを聞いて

,そ

の ことで話 し合 った。 その年度末 に

,そ

の子が,『

1年

間 迷惑かけたな。 また頑張って くれ』 といって くれたのが

,う

れ しかった。」

(C)理

想 の教師像 は,「『熱中時代』(注 :主 演 水谷豊)のような先生 にな りたかった。」「子 ども も最初 の頃 は,『先生

,先

生』 といって くれて『先生 っていいな』 と思った。」 しか し「途中か ら

,子

どもが勝手 な ことを始 めて しまった。 それ を止められなかった。」その うち, 子 どもと接す る中で,「勉強中は大人ぶ っているが

,遊

びの ときは子 どもっぽ くてかわいい。」「子 ど もは人 をよ くみているので こちらも正直 にな らない といけない」 と思 うようになった。 「子 どもたちに子 どもたちな りの世界 をつ くってほしい。」「仕事 の内容がわかって きたので予定 がたてやすい。」

(E)実

際に教師になった ころは,「教育技術 に とらわれ

,子

どもを見れなかった。」今 は「『だ まっ て

,じ

っ くり耳 を傾 けて じっ くり見て ください』 と子 どもに言われていると思 う。」「学級

,学

習 に おいて効率 よ く動いて しまうが

,ど

の子 のいっていることもしっか り聞 くこと」 を子 どもか ら学 ん だ。「五年前な ら涙がでるほど感動す ることがあったけど

,今

,仕

事量が多 く,えらい ことも多い。 (自分 の

)こ

どもが去年か ら不登校 になった。 それ まで は口やか ましくあれ これ言 っていたが

,本

人 はあっけらかん としていた。で も彼 はす ご く傷 ついていた。下の子 は

,耐

えて明る くしてい るが, 胸 に抑 えているのがた くさんあるだろうな。今 はこどもの話 をゆっ くり聞いている。精神的 に も時 間的に もゆ とりがない。」

(H)教

師 には「 はじめはなるつ もりはなかった。医療 ケースワーカーをね らって病院でバ イ トし ていた ら

,友

だちのお父 さんか ら『教師 になってみないか』 とすすめられた。その人 は とって も人 間的 にすばらしい人で

,

この人 に勧 め られたか らやってみようと思った。」しか し

,免

許 をもってい る社会

,養

護 の採用 はな く

,通

信で小学校 の免許 を取 ることにす る。教師になった とき,「 (教育実 習 を

)中

・ 高 しか してないのに小学校

,し

か も二年生 の担任で絵本 みたいなのを何時間 もか けて教 えるので どうすればいいかわか らず困った。校長先生 に困っているとい うと

,次

の時間授業 して く ださ り

,そ

れ を観察 した。 その日の授業案的なメモ を書いておいて

,校

長先生 にチェックして もら って授業 をした(―ヵ月 くらい)。 とにか く普通 に話 して も子 どもは分か らないので困つた。離任式 の時

,工

事中で うるさか ったが校長先生が子 どもに とって大切 な式だか らといって (工事 を

)や

め させた。教師 とのお別れでお菓子の鯛 をもらってい ると

,子

どもがバスを止 めて待 っていて くれた。

(6)

子 どもがずっ と道や田んばを走 って追いか けて きて くれた。 ボロボロ泣いた。 それか ら小学校 の免 許 を取 った。」子 どもと接す る中でお もしろいのは,「毎 日一人 の子 どもで も同 じで はない。」 こと。 「 こっちの見方が不充分 だ と思わせ ることが うれ しい。」例 えば「体育館の入 り日で六年生の子がつ つたっているので どうしたのか と思 うと

,入

学 したての男の子が

,花

壇 に向かってお しっ こをして いた。間 に合わなかった訳で もないのに。す ごく天気が良かったので きっと気持ち良かつたのだろ う」と思 えるようになった。「(難しいのは)自分 の物 さしで はか ろうとしてしまうこと。」「(学んだ ことは

)子

どもは素直 に物事 を受 けとめるし感情 をス トレー トに言つて くれる。一 日一 日が一生懸 命。明 日で も同 じ明 日はこない。子 を核 にして教師 と親が成長で きた らいい。親か らも教 えられ る。」 教師をしていて良かった と思 うのは,「親子のふれあいで 自分 に響 いて きた とき。子 どもの状態 をプ リン トで表現す ると

,連

絡 ノー トや子 どもの言葉で返 って くるのが うれ しい。子 どもを核 に したつ なが りがあって うれ しい。」「(嫌だ と思 うのは)自分 たちのやっていることをたて まえとかで制限 さ れて くるのがいや。」教師 を始 めた頃 と比べ ると,「かたひ じをはらな くなった。 はじめは教師 とし て軽 く見 られた くな くて

,そ

つな くしようとしていたが 『学級だより』 を出しはじめた頃か ら自分 のあ りの ままを出す ことがで きるようになった。力が抜 けたように思 う。」今では,「国語の教科書 に船がでて きた とき

,子

どもが『船 をつ くろう』と言い出 し

,子

どもの提案で牛乳パ ック153個を使 って船 を造 った。プールにその船 を浮かべて乗 って遊 んだ。」また,「『秋 を見つけよう』とい う生活 科の授業 の時,『道が夏 よ りぬるいけど暖かい』 と子 どもが言 うので

,み

んなで歩道 に寝転が った」 とい うように

,子

どもと自然体 でふれあってい こうとしている。私 は,「『教 えこむ』よ り,『鏡』に な りたい。」

(J)教

師 になろうと思 ったのは,「大学で音楽療法研究会 に入 ってか ら教育の方に興味 をもったの が きっか け。何のために音楽 をするのか

,音

楽で何がで きるのか

,

と悩 み

,や

っぱ り先生かな と思 った。」教師になった とき

,(最

初 の二年 は講師)「三年生 の担任 をしていた時

,と

て もやんちゃな男 の子が転校 して きてそのクラスにほんろうされた。弱視 の女の子 とその子が よ く喧嘩 をしていた。 自分 はや り方 もわか らない し

,生

徒 とよ く喧嘩。体 を張 って必死でたいへんさを味わった。つ らい 必死 の思 い出。子 どもとよ くぶつかって泣いた り泣かせた り。」「(おもしろいのは)できないだ ろう と思っていて もそれがで きて しまった りした時。 あ きらめずにで きるんだ とい う信念 をもって子 ど もと接す ると

,で

きて しまうんだな ぁということ。常 に理想 をもってやればで きる。やればで きる ということが教師の味わい。」「(難しいのは)生徒集 団が少ないので切磋琢磨で きない。教師の影響 が強 くなって しまう。指導の効果 も発揮 しに くい。人間関係 のパ ター ンが限 られているのでそれが 教 えに くい ことにつながっている。先生 と生徒 の間 にクッションがないか ら指導が しに くい。」尊敬 で きる教師 との出会い もあ り

,そ

れ は「女の先生で

,打

算抜 き (子どものために捨身

)で

子 どもの ためにしなければな らない ことに一生懸命の先生」で「 まるごと教育者で どうどうと自分の意見 を いう先生」だった。

(P)教

師になろうと思ったのは,「中学 くらいの時。先生の出入 りの多い環境 だった。」大学入学 当時の理想 の教師像 は,「小学六年の時の担任 のように学級 にこだわ らず学年全体 のつなが りを大 き くしようとす る教師。 その理想 は今 も変わ らない。」教 師になった とき,「養護施設 の子が

,弁

当が 持 って これず

,わ

たしのお母 さんに自分の分 と二つ弁当をつ くって もらい

,朝

,職

員室 に取 りにき て弁当箱 を川で洗 って返す という約束 をしたうえで

,毎

日弁当を持 っていった。」 また,「精薄 (注 知能 の発達 に遅れ をもつ

)の

男の子が

,う

まくやっていけず施設 にい くことになったが

2度

も脱 出 した。線路 をつたって家 まで帰 ろうとした。頼 んで学校 に戻 して もらい

,た

だ学校 に くるだけでい

(7)

い と思って頑張 つた。」ほか にも「一言 も口をきかない女の子が クラスにいた。 しか し家で は話す ら しい。

1学

期かかつて,『うん』『Vゝいえ』が首振 りで示せ るようになった。

2学

期 になって

,何

か の拍子 に返事 をした。 もう少 しだ と思 って話 しかけた。

3学

期 になって蚊 の鳴 くような声 だけど1 文読めるようになった。 その時

,そ

の子 の読 む番 に少 しで も長い文が くるように他の子たちが考 え て本読みをしていることに気付 いた。」 このような経験 をする中で学 んだ ことは,「生徒や学級の力 はすごい ものだ」 とい うこと。 また

,担

任 を受 け持 って

1年

後 の「学級 の変わ りよう

,生

徒の変わ りようがお もしろい。だか らやめ られない。保護者 とのつなが りもで きる。」良かつた と思 うのは「生 徒が良い方向にむかって卒業 した とき。保護者 と教師 と生徒が一つになって

,た

とえ口をきかない 時があった として も

,本

気 になって全力投球すれば生徒 は変わ る。つっぱつていた男の子が今で も 手紙 を くれた り家 を訪ねて きて くれた りす る。当時の交換 ノー トは今で も捨てることがで きない。 本当に彼 とのつなが りはこのノー トくらい しかなかったが・・ 。。」

(S)初

めて赴任 した中学校 は「受験体制 の厳 しい学校で

,朝

か ら補習があつた り

,試

験 の成績 を はりだ した りしていた。管理体制が厳 し く

,教

師が威張 っていた。」ある時「女 の子が (試験 の成績 をはりだすのを

)や

めてほ しい, と泣いて訪ねて きた」ことか ら,「学力 とか成績 をは りだす ことが 子 どもたちにどんなに大 きな重石 をか けているか とい うことを初 めて知 った。」 また,「

H中

学 にい た とき

,あ

るつっぱっている子 どもの父親が酔 っぱらって凍死 した。 この子の面倒 を見ていたのに その子が他の子 とけんか した ときに止 めに入 ったら『お まえには関係 ないだろう』 といって向かっ て きた。 この ことが,いに『グサ ッ』 と突 き刺 さった。」だか ら,「子 どもたちの背負 っている背景の 中には

,教

師の力で は解決で きない もの もある。子 どもと心 を通 い合 えない ことがあるのが困難。」 そして,「子 どもはその ときみせている顔以外 に

,裏

にひそむ ものをみんな抱 えている。その子がみ せている表情や姿だけを見 て対処 して はいけない。」 その頃 と比べ ると,「傲慢 なエ リー ト意識みた いなものがな くなって

,謙

虚 になった。人間 にはいろんな立場や背景があるので表面 だけを見ては いけない。」 と思 うようになった。「弱Vゝ立場 にいる子 どもたちに目が向 き始めた。数年前 しぶ しぶ 持 った障害児学級の子 どもたちに教 えられ

,今

までの自分 を反省 して きて

,今

養護学校 に立 ってい る自分がある。」 (U)教師 になって,「最初 の頃 は無我夢中で他の先生 に負 けない ようについてい くのに必死だった。 楽 しい山間部 の子 どもたちで

,純

真で地域 の人 も良かつたし

,言

えば素直 について きて くれた。」尊 敬で きる先生 に も出会い,「一緒 に勤 めている上の人 を見て理想像 にさらに付 け加 えていつた。三十 代後半か ら四十代前半で は

,研

究のすすめ方や学校全体 の目のつけ方 をな らい

,四

十代半 ばか らは 自分で も考 えた ことを付 け加 えて提案 していった。」子 どもと接 してい く中で,「お もしろい ことば か り。

1, 2年

の子 は本 当にお姉 さん

,お

母 さんのい うことのように素直 に聞いて くれるし

, 5,

6年

になるとみんなに言わな くて も自分 の気持ちを分かって くれ る。 クラスの子 どもが誉 め られた り親か ら『先生

,こ

どもが変わ りました』 と聞 くとうれ しい。」「子 どもか ら学ぶか ら教師 は育つ。 子 どもはす るどい。 目に見 えないけどた くさん学んだ と思 う。」教師 をしていて,「(良かつた と思 う のは

)小

1の子が『妹がで きたよ。何 て名前だ と思 うP先生 と同 じ名前 にしたんだよ。』といった こ とや

,教

え子が 『先生の ような小学校 の先生 にな りたいか ら鳥大 にい く』 とい う話 を聞いて とて も うれ しかった。 また

,体

の不 自由な子 をおんぶ して遠足 に行 った ことな ど他 に もた くさんある。嫌 だ と思った ことはなかった。」

(8)

3.子

育てについて 子育てに関わ ることで

,教

師 としての自分が どのように変わって きたか について

,回

答 は以下の ようとこ整】里で きる。

A.親

の気持 ちがわかる

(D)こ

どもがで きた ことで 自分が「変わった。親 になった とい うことで親 の心がわか るようにな つた。参観 日にいって も

,親

は自分 の子の ことしか見ていない。 そうい う目で学校や先生や授業 を 見 る。 このことがわか るようになった ことは

,大

きい。」だが,「教師 をす ることと子育 て とは無関 係であると思 う。」

(F)こ どもが生 まれて,「同 じ親 としてわか り合 える菩田分がで きた。親 としての想 いがわか るよう になった。同 じ親 として

,こ

どもの成長 と共 に私 自身 も変化。」「母親 の気持 ちになって接すること がで きる。」

(J)子

育てをす ることによ り,「保護者 の身 になって考 えることがで きる。 自分の こどもを持 って いることが授業 に役立 った り。」

(K)こ

どもが生 まれて「母 らし く

,優

しさがでて きた。母親的要素 を持 った先生 になった。生徒 をみるときにわが子の ことを

,こ

どもをみるときに親 のことを考 えるようになった。子 どもの後 ろ に家族 の広が りが見 える。」 (L)こ どもがで きて一度 は転職 も考 え,「オルガ ン教室の先生 をしようか と思い

,知

り合 いの楽器 屋 さんに相談 したが『やめ といたほうがいい』 と言われ

,も

う一度考 え直 した。 自分 の母親が近 く に住 んでいて子守 りをして もらえるので続 けてみようと思った。」また

,自

分 の こどもを育 てること によ り,「親 の気持 ちが理解 で きるようになった。こんな ときこの親 はこう考 えるだろうな― と考 え ることがで きる。」 B。 子 どもの気持 ち もわか る

(B)自

分 にこどもがで きて「前 よ りもっ と気が長 くなった。」

(M)「

子 どもの心理面

,発

達面 を見 ることがで きる。」 (N)こ どもが生 まれて,「親 の気持 ちが分か るようになった。言葉か けが

,こ

どものある先生 とな い先生では違 う。」「ス トレー トでな く子 どもの気持ちを考 えてで きるようになった。」

(0)「

親 と生徒 の気持 ちが良 くわか るようになった。」 (P)「(教師 を始 めた頃の自分 と比べて)余裕が もてるようになった。(こ どもを持 つようになって) 親の気持ちが前 よりは分かるようになった と思 う。」「生徒 の気持 ちに

,(自

分の)こ どもを通 して戻 れる」「子の気持 ちになれ る。」

(Q)「

自分の こどもを見 るときも

,客

観的にみてや らなければな らない。」

C.子

どもがかわい く

,大

切 に思 える (C)こ ども力Sできて,「子 どもはい ろいろな人 か ら愛情 を受 けている,そ ういう子が きているので , いい加減 な ことはで きない。」

(E)自

分 にこどもがで きて,「クラスの子が こんなに母 の思いを受 けて育 った子だ と

,思

った。」 教師 をしていることが子育てには「マイナスだった」が

,子

育てが教師 をす ることに役立つ ことは

(9)

「 あった。」「 こどもがで きるまで はいつで もやめるつ もりだった。 こどもがで きてか ら

,

この仕事 をしな くちゃいけない と

,腰

をすえた。」 (I)自分 にこどもがで きて,「子 どもってかわいいなって

,心

か ら思 えるようになった。学校で思 ったの とはち ょっ と違 う。」

(M)こ

どもが生 まれて,「子 どもは親 に とって無条件

,無

償 の愛であるもの

,が

わか る。」 (U)こ どもが生 まれて,「自分の こどもはかわいい。受 け持 ちの子 もかわいい。大事 とい う感覚が 強 くなった。お母 さんはこんな時 こうす るだろうと母親 の感覚が分かるようになった。」

D.教

師 として役立つ

(G)子

育てをして,「わが子の欠点 とか を

,事

例 として子 どもの前 に出せ る」 ことが役 にたつ。

(J)「

子 どもの発達 に関 して

,い

ままで習 って きた ことが復習 になった。我慢強 くなった。」 (N)「この くらいの学年の子 はこんな ことを思 っているとか,こんな行動 をす るな どがわか る。女 の子 はグループをつ くりやすい とか

,お

金 の使 い方な ど。」

E.自

分 のこどもに理想 を要求 した り

,寂

しい想 いをさせ る

(K)「

こどもとぶれあう時間がなかったので

,こ

どもは情緒不安定

,愛

情不足 になった。」 (L)「家で も教師面 して しまうことがある。理想 の子 に近づかせたい と思って しまう。忙 しす ぎて, ゆっ くり見てやれなかった。」 (M)「忙 しいので

,ゆ

っ くりしつけをしてや らなければな らなかった頃に

,日

で しつ けをして しま った。 また

,こ

どもはか ぎっこだったので

,寂

しい思いをさせて しまった。 ゆっ くり相手 をしてや れなかった。」 (P)「こどもが『教員 にはな らん』といった くらいだか ら

,結

構寂 しい想いをしたので は,と思 う。」

(U)子

育てをしていて,「担任 をしている子 どものいい ところばか りをこどもに当て はめようとす るか ら, こどもに とって は迷惑。」 子育ての経験 を含 めて

,教

師 としての成長 についての回答か ら

,次

のようにまとめ られ る。 教師 は

,大

学で必要な単位 を取 り資格 を得れば『完成 した教師』 となれるわけで はない。教師 に なるまでの生活

,教

師 になってか らの経験が大 き く影響する。 ①大学 に入 るまで

P先

生が

,理

想 の教師像 は「小学六年の時の担任 のように学級 にこだわ らず学年全体 のつなが り を大 きくしようとす る教師。 その理想 は今で も変わ らない」 とい うように自分が子 どもの時出会 っ た教師が

,そ

のまま理想 の教師 となることがある。 その反対 に教師に傷つけられた り

,尊

敬で きな かつた経験が教師 としてのあ り方 に大 きく影響 していることもある。 ②教師 になって 何 よ りも子 どもとの出会いは教師 として成長す るきっか けとなる。

A先

生のように

1年

,苦

労 させ られた生徒か らの「1年間迷惑かけたな

,ま

た頑張つて くれ」 とい う言葉や

P先

生 の ように子 どもの変化

,成

長 を励 みにすることで

,教

師 を続 けている。 ③ こどもカミで きて 自分 自身が親 にな り子育てをす ることで教師 としての成長の きっかけが ここで も見 られ る。

F先

生 のように「同 じ親 としてわか りあえる部分がで きた。・・・ こどもの成長 とともに私 自身 も変化 し

(10)

た」と親 の気持 ちがわか るようになった とい う教師 は多い。 また

P先

生が,「子 どもの気持 ちに(自 分 の

)こ

どもを通 して戻れ る」 というように

,子

どもの気持 ち もわかるようになって くる。

C先

生 は「子 どもはいろい ろな人か ら愛情 を受 けている。そういう子が来ているので

,い

い加減 な ことを す ることはで きない」 と

,子

どもの見方が変わ り

,さ

らに大切 に対処 しなければ と考 えるようにな つている。反対 に

,L先

生 の「家で も教師面 して しまうことがある。理想 の子 に近付かせたい と思 って しまう」

,K先

生 の「 こどもとぶれあう時間がなかったので

,こ

どもは情緒不安定

,愛

情不足 に なった」 とい う指摘 もある。 ④学校 の中堅 として

H先

生が「 はじめは教師 として軽 く見 られた くな くて

,そ

つな くしようとしていたが『学級 だよ り』 をだ しはじめた頃か ら自分のあ りのままを出す ことがで きるようになった」 というように

,40

代 くらいになって親 と子 どもと学校が見 えて きて

,ま

た子 どもと自然体で接 してい くことがで きる ようになった。 そこに教師 としての成長 を感 じさせ る。 しか しこの頃になると教師のなかでは中堅 的な立場 とな り

,体

力的 にも精神的にも疲れやすぃ とい う傾向があることも確かである。 教師 を続 けてい くなかにはさまざまな困難があ り

,そ

れ を子 どもとともに乗 り越 えてい く過程が ある。子 どもとともに自分 自身 も成長 し

,ま

,そ

れが喜び となってい くのではないだろうか。

4.現

在抱えている問題 現在

,教

師 はさまざまな困難 を抱 えなが ら

,仕

事 をしてい る。 そうした問題 についての回答 をあ げてみ る。

A.健

康面 についての問題

(B)「

ス トレスはたまっているだろうが

,忘

れ ることで解消 している。」「丈夫だ。」

(D)「

ス トレスはた まりに くい方。歌 うことで解消 している。」 しか し「疲れやすい方。」

(E)「

ス トレスはたま りやすい。(仕事 を

)や

るときはや る

,や

らない ときはや らない ことでス ト レスを発散。」

(G)「

元気だが角膜ヘルペスの為ずっ と通院 している。 目薬が必要。」 (I)「ス トレスはたまりに くい方だが

,元

々 はたま りやすい方か も。プールで泳 ぐことや大声 を出 して しゃべ ることで発散。」

(J)「

(ス トレス は

)た

ま りやすいけど発散 もしやすい。家 に帰 ってか ら夫 と一緒 に過 ごした りこ どもを見 た りしていると解消 して くる。 とくに夫 は他の仕事 をしているので考 え方なども違 うので 家 に帰 る と新鮮 な気持 ちになれ る。」「疲れやすいか もしれないが体 は感 じない。『気』で勝 っている。 元気だが土・ 日はゆっ くりしたい と思 う。」

(K)「

睡眠不足で疲れやすい。」 (L)「45歳をす ぎて

,疲

れやす くなった。勝脱炎 にな りやす く

,通

院 している。職業病だ といわれ た。」

(N)「

年 を取 ると疲れやす くなって きた。」

(0)「

糖尿病で疲れやす く

,毎

日注射。

2週

間に

1度

通院

,月

に1度は起 きれない。」

(P)「

(ス トレスは

)た

まる。 どんな ときで も。夫が同 じ く中学校 の教師で

,話

があ うので

,聞

い て もらうことで解消 している。」「家 に帰 ると

,

どっ と疲れがでる。」

(11)

(S)「ス トレスがた まりやすい。」「解消法 はお酒か もP」 (T)「 初対面 の人 には緊張 しがちだ し

,す

わって ものを考 えた り

,じ

っ として書いた り読 んだ りす るので

,運

動不足 になる」ので,「ス トレスがたま りやすい。」ス トレスは「アル コール類や ビタ ミ ン剤で解消」 している。

B.仕

事 の忙 しさについて (E)「仕事量 の多 さ

,家

事 の多 さ」で「精神的

,時

間的ゆ とりがない。」 (J)「学校 の業務が忙 し くなって きている。教師 は余暇のライフワークがで きに くい。」 (I)「雑務 に追われ る。」 (N)「病気で も病院 にいけない。歯医者 に行 きた くて も行 く暇がない。」

C.子

どもと接す る際の問題点

(B)教

師 として子 どもと接する難 しさは「た くさんある」。「子 どもの一人一人 の気持 ちを くむ こ と」や「勉強 を教 えること」 な ど。 (D)「子 どもの考 えを捉 えること

,

どの子か らも信頼 を得 ることは難 しい。」 (E)「思春期 にさしかかっている子 を見て

,な

かなか手伝 うこと力Sできない。」 (I)「あまり表現 して くれない子 どもの気持 ちを受 け止 め られない。」 (M)「自開症や

,言

葉 のない子への指導法が難 しい。」 (R)「不登校 について

,ど

う支援

,指

導 してい くか

,早

く対策 をつ くらねば。少 しで も解決 してい く方向にい くようなマニ ュアルみたいな ものをつ くりたい。」 (S)「子 どもたちはた くさんの問題 を抱 えている」が,「子 どもたちの背負 っている背景の中には 教師の力で は解決で きない もの もある。」「子 どもが出 している反応が しっか り見 とれない ときに考 え込んで しまう。」「子 どもと心が通 じ合 えない ことがあることが困難。かつて はこんなことなかっ たのに…。」「子 どもが本 当の姿 を見せていな くて

,そ

の場で はどうにも理解で きない ことがある。 特に中学生の子 どもは心が揺れ動 く時期 なので

,そ

れを的確 に捕 まえることがで きない ときは子 ど もが見 えていないので

,(教

師 をしていることが

)嫌

だ と思 う (時がある)。」 (T)「 今 の子 どもの考 えがわか らない。子 どもの表現が理解 しに くい。」「 ものの価値観が 自分 と違 う。朝食 の習慣 な ど

,教

えなければな らない こともあるのだが・・・。」

D.教

師 どうしの問題

(I)「

大人 どうしの意見 の対立 をまとめた りするのが大変。」 (P)「 同僚 に相談 して も本気で考 えて くれ る人 はそういない。どち らか といえば

,今

は頼 られ る立 場。・ ― 難 しいのは人間関係。 どち らか といえば同僚 との。学年 に二人

,同

じ考 えを持つ人がいれ ばなん とかなるが

,自

分一人では難 しい。」

(Q)「

中間管理職 だか ら

,教

員の和 をきちん としてい く事が大切。子 どもにもその まま現れる。」 「教員の和 を大切 にしたい。」

E.教

師 としての自分 の未熟 さ

(C)「

子 どもの要求 に応 じて適当なア ドバイスをす るような教師 にならない といけない。」

(D)自

分 自身「ちゃ らちゃ らしす ぎているし

,ち

ょっ と冗談が過 ぎる。」「失敗 を挙 げた らきりが

(12)

無い。」

(F)「

幅広 く勉強 して

,後

輩 に間かれた らこたえられ るようにしたい。」 (K)「教科 の方 はいつ までたって も未熟。子 どもが興味 を持 って くれ る授業,自分 の英語力のアッ プ

,も

っとよ く話せ るようにな りたい。」「今の学校 は人権教育が盛 んなので

,そ

の面 においての自 己研修・研究 を積 みたい。」

(M)「

人間 を磨 きたい。い ろいろ勉強 をして。」

F.教

師の きゅうくつ さ

(B)「

自分 自身 を見 られ るので はな く『先生』とい う目で見 られ る とき」教師 をしていて嫌 だ と思 う。

(G)「

『教師だか ら∼ は駄 目』 というような正論的な枠 にはめられ ること。束縛 されず自分の人生 を一人 の人間 としてや りたい ことをや りたい。」

(T)「

自分勝手 な行動がで きない。教師 としての枠組 みがあるために

,は

めが はずせない」のが嫌 だ。 G。 学校 システムの問題点

(A)「

子 どもも管理 されているが

,教

師 も管理 されている気がす る。」

(J)「

学校 の雰囲気が管理的になって きている。」 (G)「教育現場が難 しい。教員免許法の改訂が必要。ランクによって

,い

い先生

,悪

い先生 と決め つけられるのでや りに くい。」 5。 もし校長 になった ら 校長 にはあま りな りた くない として

,回

答 に遺巡す る場合が多か ったが

,あ

えてなるとした らと して求 めた回答の結果 を以下 に示す ことにする。

(A)「

話の短い

,楽

しい話 をす る

,休

憩時間に子 どもと遊ぶ。」

(B)「

おお らかな」

(C)「

『まか しとけ

,お

まえらの好 きにしろ』 とい う

,あ

る程度先生の個性 に任せ る。」

(D)「

先生方 にしっか り勉強 して もらう

,自

分が授業 してみせ る。」 (E)「何かに絞 って学校 を運営す る。」

(F)「

自分 自身が勉強 し

,独

断だけでな く

,み

んなの思いを把握す る。」

(G)「

楽 しい職場づ くりをして

,み

んなに慕われる。」 (H)「徹底的 に指導で きるか,または

,部

下 を信頼 してすべてを任せて外部 に向かって盾 になる。」

(I)「

子 どもも先生 もみんなが過 ごしやすい。」

(N)「

いろいろ気配 りをして くれて

,み

んなが意見 を言いやすい

,や

さしい

,信

念 をもっている, または

,ワ

ンマンな校長 に もあこがれる。」

(0)「

責任 を教員 に押 しつ けないで

,

とれ る

,他

の先生たちが何で も話せ る。」

(P)「

学力 はつけてや りたい

,楽

しくつけてやれた らいい

,点

とれ点 とれで はな く。」

(Q)「

教員の和」 (R)「一人ひ とりの子 どもを大事 にして

,一

人 ひ とりにあったプログラムをつ くる

,生

徒中心の指 導をす る。」

(13)

(S)「 学校 は楽 し く不登校 な どもない学校 にしたいので

,上

か ら押 さえつけるような管理的な こと のない学校 に したい

,一

人ひ とりの子 どもが尊重 され るような学校運営 をしたい。」

(T)研

日して同せず

,皆

といっしょにや りなが ら流 されない,リ ーダーシップを強 くとって行動で きる。」 (U)「環境 を整 える

,研

,話

を聞 けれ る

,判

断 し指導する。」 校長 になった らどうしたいか とい う質問 は

,現

在抱 えている問題 の裏返 しで もあるので

,こ

こで いっしょにまとめて整理 してお きたい。 教師 という職業 を続 けてい く中で抱 えている問題 は

,多

岐 に渡 った内容 となった。 まず

,健

康面 の問題 を多 くの教師があげていた。「ス トレスがたまりやすい」,「疲れやすい」とい う回答が多 く

,持

病 のある教師 もいた。仕事量 の多 さ

,学

校 の業務 の忙 しさといつた

,仕

事 の忙 し さについて回答 している教師 もいた。 また

,子

どもの気持 ちを正確 に捉 えることの困難 さ

,よ

り具 体的には自閉症

,不

登校への対処 の困難 さを指摘す る教師 もあった。 これ らは

,子

どもと接す る際 の困難である。 さらに教師 どうしの人間関係 の難 しさ

,自

分の教師 としての未熟 さ

,教

師 とい う枠 にはめ られ ることの きゅう くつ さ, もあげ られていた。。 さらに,学校 の雰囲気や学校 システム 自体 の問題点 の指摘 もあったが,これ は,「校長 になった ら」 とい う質問に対 して

,教

師を信頼 し任せ ることをい う回答 につながっている。学校 の自由な雰囲気 を求めていると考 えられ る。 考 察

1.教

師の成長過程 に関 して 「大学の講義 の内容 はあまり覚 えていない」「あの出会いがあって今 の私がある」「 とにか く教師 という仕事 は忙 しい」等々の言及 は

,教

師 という仕事 をしている人 との会話 において は決 して珍 し い もので はない。それ らの言及が 自分 にあて はまるか どうか を尋ねる質問紙調査 を実施 したな らば, かな りの人が「あて はまる」 と回答す るであろう。 しか し

,今

回の面接調査 において は

,あ

えて量 的なまとめは行 っていない。常套旬的な表現が 自分 の現実認識 と一致す るか どうかの認識 を聞 うの ではな く

,個

々人 の現実 に即 して表現 され る微妙なニュアンスを聞 き取 ることが

,ま

ず は目指 され たのであった。以下 に

,結

果 に即 してそれ らのニュア ンスを読み取 りなが ら今後 の課題 を整理 して い きたい。

A.大

学教育 について 大学教育 について語 られた中で,大学 における授業科 目名 と関連 していそうな もの は,「教育実習」 「卒論」「(児童)心理」「英語」「音楽」「障害児教育」「 ピアノ」「小学校 の先生 をしていた ことのあ る人 の授業」「習字」「国語 (和歌

,俳

旬)」「絵」である。 これ らは

,主

に,「 EF象に残 っている(大 学の

)授

業 はあ りますか」「教師 をす る上で大学時代 の勉強 は役 に立ちましたか」とい う問いに対す る回答 の中に見 られた。 しか しなが ら

,そ

もそも「役 に立つ」 とはどうい う意味なのだろうか。「(障害児 クラスでの

)教

育実習」「児童心理」「音楽」「障害児教育」「 ピアノ」が「役 に立 った」 とされていたが

,こ

の「役

(14)

に立つ」 とい う表現 そのものは

,質

問の言葉 の反復 であ り

,分

析 はで きない。被面接者固有 の表現 は,「国語 (和歌

,俳

旬)」 は「その時習 った ことをそのまま使 えるので よい」,「児童心理や ピアノ, また小学校 の先生 をしていた ことのある人 の授業」 は「聞いた ことがす ぐに役 に立つ」,「大学 の教 育」 は「何か書いた り

,レ

ポー トを書 く上で役 に立 っている」 という叙述 にあ らわれている。 この 場合の「役 に立つ」 とい う意味の解釈 には複数 の可能性がある。 一つめの可能性 として,「そのまま」「す ぐに」 とい う言葉が

,自

分の力で考 えた りす る とい う労 力 を省 く「ハ ウ トゥ」的な利便性 を意味す るのであれば,「役 に立つ」講義 とは「ハ ウ トゥ」的スキ ルの伝授である。やや譲 って,「そのまま」「す ぐに」 とい う言葉が

,独

創的な授業 の展開が困難 な 環境条件 においてある程度の自己流 のアレンジをしたうえで

,

という意味である可能性 もある。二 つめの可能性 として

,日

々の教育活動 にお ける労力 を軽減 した時 に「役 に立 った」 とい うので はな く

,子

どもたち とわか りあえた

,よ

り多様 なかかわ りあいがで きた とい う実感 を持つのに貢献 した と思 えた ときに「役 に立 った」 という場合があ ろう。 今後

,子

どもたちや教師 自身 に「 どのように」役 に立 ったのかを更 に関 う必要性がある。

B.教

師 としての成長 教師 としての成長 の節 目は「出会 い」 にあるようだ。その節 目で何かが変わったのか どうか は確 認で きていないが

,そ

の出会いによって

,そ

の人が教師 を続 けてい く理 由が積 み重 なってい くよう に思 える。離任式の後見送 る子 どもの姿 に「 ボロボロ泣 いた」り,「子 どもとよ くぶつか って泣いた り泣かせた り」

,子

どもの言葉や態度が「′いにグサ ッと突 き刺 さった」 り,「目にみえないけどた く さん学 んだ」 りしている。強い情動 を伴 い

,時

期 を特定で きる「出会い」 もあれば

,比

較的長 い期 間の積 み重ね としての「出会い」 もあるように思 える。 出会 った子 どもたちのプロフィールを面接者 に伝 えるのに,「

1年

間教科書 もほ とん ど持 って こな い し

,授

業 も聞いてなかった子」「養護施設 の子」「精神薄弱の男の子」「一言 も口をきかない女 の子」 「つっぱっていた男 の子」等の表現が されている。 どち らか といえば

,学

校文化へ適応 しに くい と 思われていることが多い属性であろう。 そ こで語 られているかかわ りあいは

,授

業場面以外でのや りとりが多い。授業 とい う場面 に限定 されないかかわ りの中で

,教

師が子 どもたちの別 の顔,「その とき見せている顔以外 に

,裏

にひそむ もの」を知 ってい く。 そして,「自然体でふれあってい こう」, 「傲慢 なエ リー ト意識みたいな ものがな くなって

,謙

虚 に」,「子 どもか ら学ぶか ら教師 は育つ」 と い う心境 になっている。 子 どもたち以外 の人か らも

,教

師 は多 くの影響 を受 けている。教師になろうと思 った り

,よ

りよ い教師 を目指 そ うと思 った りす るきっか けとなった「小学

6年

の時の担任」「友だちのお父 さんで, 人間的 にすばらしい人」「校長先生」「一緒 に勤 めている上 の人。」その人 たち との「 出会 い」か ら, 理想 の教師像 を形成 している場合があるようだ。 また

,親

との出会い

,自

分 の こどもとの出会 い, 親 としての自分 との出会い も語 られている。 これ ら多 くの「出会い」 は

,人

間の多様性

,一

人 の人 が持つ顔 の多様性 に

,な

にかの きっか けでそれ までのかかわ り方 と異なるかかわ り方 を して

,あ

ら ためて「出会 った」経験であるようだ。

C.現

在抱 えている問題 教師の抱 えている問題 の中か ら

,他

の多 くの職種 と共通す ると思われ るものを除外す ると,「子 ど もと接す る際の問題点」「教師 としての自分 の未熟 さ」「教師の きゅうくつ さ」が現在抱 えている問

(15)

題 として浮かびあが って くる。前二者 に関 して は

,教

師 とい う職業 ゆえに「悩 んでいる」のが通常 の状態 と言 えるか もしれない。三つめについては

,自

分 の持 つ自己像 と

,他

者か ら期待 されている と認知 している自己像 のずれにまつわる悩みである。 これ らの悩 みは

,よ

りよいあ り方

,あ

るいは より自分 らしいあ り方 を模索 しての悩みであると言 えよう。 しか し

,面

接記録全体 に「健康面での 問題」「疲れ」「忙 しさ」に関す る記述 も多 く,「聖職」のイメージ とは程遠 い「 あわただしさ」が感 じられ る。 もち ろん

,教

師 よ りも忙 しい職業 はある。 しか し

,そ

れ らの職業 よ りも教師の忙 しさの方が問題 だと思われるのは

,子

どもたち と特別 な意図 もな くお しゃべ りす るとい うような

,一

見仕事 には見 えないが しか し大切 なかかわ りあいを阻害 して しまうか らである。「 自分 たちのやっていることをた てまえ とかで制限 され」た り,「雑務」 に追われた り,「ランクによっていい先生

,悪

い先生 と決 め つけられ」た り,「学校が管理的 になって」 きていた りす ることが,「時間的な」 ゆ とりだけではな く「精神的な」 ゆ とりがな くなっている感 じの原因なので はないだろうか。意味があると実感で き ることで「忙 しい」のな らば

,そ

こには充実感 もあ り,「ス トレス」はもっ と軽微 だ と思われ る。重 い「ス トレス

Jに

なって しまうのは

,そ

こに徒労感や不完全燃焼感があるか らで はないだろうか。 「 こんな ことが子 どもたちのために役立つのだろうか」「 この仕事 には何の意味があるのだろうか」 「 もっ と準備がで きれば

,よ

い ものがで きたはずなのに」と感 じる繰 り返 しであれば

,そ

こには「雑 務」 をこなすス トレスが溜 まるのみで はなか ろうか。 以上 の考察か ら

,次

3点

に関す るよ り詳 しい記述が実 り多い結果 をもた らすであろう。

①教員養成課程で学んだことが「役に立つ」 とは

,具

体的にはどういうことなのか。

②教師にとって重要な「出会い」 とは何がどのように変わる出会いなのか。

③教師の忙しさが充実感ではな く徒労感や不完全燃焼感になっている場合の原因について詳しく

探 ること。

2.教

師の成長過程研究のライフコース研究 における位置づけ 本研究では

,教

師の成長過程 と教員養成課程の役割 についての知見 を得

,今

後 の研究 の方向性 を 探 ることを主たる目的 とし

,考

察 を行 って きた。 それに加 えて

,こ

こで

,こ

の研究 をライフコース 研究へ位置づ けた場合 の可能性 を探 ってお きたい。

A.ラ

イ フコース研究 とコーホー ト分析 ライフコース とい う術語 は社会学 に起源 を持つ用語であ り,その概念 は,「生涯発達 は加齢 を考慮 して

,個

体 の内的要因 をやや固定的 に重要視 しているのにたい して」,「個々人が生活 している外的 影響 とタイ ミングを重視 している」(本田・ 斉藤

,1993)と

い うスタンスに立脚 している。 また

,本

田・斉藤 (同上

)は ,森

岡 (1985)の,「ライフコースの視角 はコーホー ト分析 と深 く結 びつ く。 もしコーホー ト分析 と結合 しなければ

,個

別 のライフコースに関心 を持つ生活史法 と異な らぬものに終わって しまう。 しか しコーホー ト分析 と結合す ることによって異なるコーホー ト間の 比較 を通 して

,個

人 の生活の変化 を社会変動 と関係づ けることが可能 になる」とい う指摘 をもとに, データ収集法 として

,二

次的分析 のための既存 データ収集

,接

続す るい くつかのコーホー トについ ての短い縦断的研究 の結合

,回

想法な どを挙 げている。 グレン (1984)によれば

,人

口統計学でのコーホー トとは

,地

理的にか もし くは他 のなん らかの

(16)

方法で画 された全住民の うち

,一

定の時期 に人生 における同一 の重大 な出来事 を体験 した人 び とで あ り,「一定 の時期」 とは 1日 (あるいは

,そ

れ以下

)と

か20年 (あるいは

,そ

れ以上)と いう任意 の ものである。つ まリコーホー トの境界 は研究 ごとに任意であるのだが

,社

会科学的研究で は一般 に

1年

か ら10年の期間に人生 における重大な出来事 を共通 に体験 した人 び とによって構成 されてい る。「人生 における重大 な出来事」として出生 を考慮 したコーホー トは出生 コーホー トと呼ばれ

,同

じ年 あるいは同 じ時期 に一定水準 の教育 を修了 した人び とは学歴 コーホー トと呼ばれ る。 また

,大

部分 の研究者 は

,一

つ以上 のコーホー トのなにが しかの特性 について二時点以上の測定が行われて いる研究 に対 してコーホー ト分析 とい う用語を用いている。一つのコーホー トの諸特性 を三時点で 比較す る比較 す るとい うものは特 にコーホー ト内趨勢研究 と呼 ばれ るが

,コ

ーホー ト研究 の有用性 は

,二

つ以上 のコーホー トについて三時点以上のデータがある場合 にいっそう大 きくなると指摘 さ れている。(グレン

,同

上) コーホー ト分析 におけるデータの変動 は

,標

本誤差及び各 コーホー トの加齢 に伴 う構成員の変化 による効果のほかに

,次

3種

類 の効果 に分類 され る。 年齢効果:加齢 の影響 によって生 じた効果 コーホー ト効果:コ ーホー ト成員であることが原因 となって生 じた効果 時代効果:各調査時期 に固有 の影響 によって生 じた効果 しか し

,標

本誤差 や各 コーホー トの加齢 に伴 う構成員 の変化 による効果の分離 は容易で はな く, 年齢

,コ

ーホー ト

,時

代 の各効果の混交の識別問題 の厳密な統計的解決 は不可能である (グレン, 同上)。 だか らといって;コーホー ト分析が有用でない とい うわけで はな く

,原

因の推論 に関 して複 数の可能性 の提示 に留 まることが許 され るか

,コ

ーホー ト表以外 の情報や理論的根拠 の援用が可能 な場合 は

,充

分実 り多い手法であると思われ る。

B.教

師のライフコース研究 職業 を教師 に限定 したライフコース研究 も

,接

続す るい くつかのコーホー トについての短 い縦断 的研究の結合

,回

想法 な どの手法 によって可能であろう。今回の調査研究 は

,こ

の うちの回想法 に 基づいた ものであったが

,そ

こか ら得 られた知見 を先行情報 としてのコーホー ト法による調査 と分 析が今後望 まれ る。 職業 を教師 に限定す る とい うことは,「人生 における重大 な出来事」 として,「同 じ年あるいは同 じ時期 に教員養成課程 を修了 した こと」 あるいは「同 じ年 あるい は同 じ時期 に教職 に就いた こと」 を採用す るとい うことである。だが

,養

成課程の修了 と就職が必ず しも同一時期で はない こと

,課

程修了者 のすべてが就職す るわけで はない ことか ら

,よ

り厳密 なコーホー ト属性 の限定が必要であ ろう。そのうえで

,転

勤 。昇進・結婚 な どのライフ・ イベ ン トが転機 となるのか どうか

,本

研究 に おいて論 じた「出会 い」が どのような形で転機 となるのか

,か

つての教師像 と現代 の教師像 の時代 比較等のテーマが設定可能である。 更 に

,教

師のライフコース研究が

,日

本 において特殊 な位置づ けを与 えられ る可能性があること を指摘 してお きたい。 それ は

,現

代 日本 の教師 は

,親

子同職 。夫婦同職である場合が決 して希で は ない とい う事情 に依拠 している。 親子同職 という事態 には

,高

取 (1990)の 紹介 してい るプラデル・ ドゥ。ラ トゥールや高取 (1992) の

,家

族 のアイデンティティーの継承への問題関心 と類似 の関心 を抱かざるをえない。高取 らは, 女系 を通 じてのアイデンティティーの継承 を扱っているが

,職

業選択 の幅の比較的広い現代 にあっ

(17)

て親 と同 じ職種 を選 んだ教師が親か ら何 を継承 しているのか

,そ

のアイデンテ ィティー形成過程 は どのような ものであったのか

,等

様々 な間が設定可能である。 また

,夫

婦同職 とい う事態 も比較的多いので はないか と思われ る。結婚や子 の出生 とい う生活構 造上の変化が

,両

性 の職業上のあ り様 にどのような影響 を与 えるのかを検討す るのには好適 な事例 ではないだろうか。 もちろん

,子

育 て とい うことが職業上 のあ り様 に影響 を与 える度合 いが他の職 業 に比べて高い とい うことは念頭 に置かなければな らない。 以上

,ラ

イフコース研究 としての教師の成長過程 の記述か らの研究の発展方向の可能性 を考察 し た。多様 な要因が分離 しがた く絡 んだプロセスの記述 とい う困難 な課題 ではあるが

,後

年の時代比 較 に耐 え得 る調査資料の蓄積 は重要 な意味があろう。

文献

N.D.グレン 藤田英典 (訳

)

コーホー ト分析法 朝倉書店 1984 本田時雄・斉藤耕ニ ライフコース・ライフイベン ト・転機 日本発達心理学会第 4回 大会発表論文集 81ページ 1993 長尾十三二 教師教育に関する研究委員会 教育学研究第59巻第 3号 331∼335ページ 1992 D.レ ビンソン 南博 (訳

)

ライフサイクルの心理学 講談社 1992 高取憲一郎 ヨーロッパ′い理学 との対話 法政出版 1990 高取憲一郎 女系三世代 におけるアイデンティティーの形成 1992年 度文部省特定研究報告書「教育 と子 どもの権利 保障に関する総合的研究」所収 1992

謝辞

本研究にあたっては,予備調査から本調査にいたるまで数多 くの先生に貴重な時間をさいて,ご協力 をしていただ きました。名前をあげることはできませんが,心より感謝いたします。 また,調査においては,学生諸君の献身的な協力を得 ることがで きました。この報告は

,河

本由美子,西村陸志, 米原久代,米原由起,宮口温子のみなさん との共同研究 といってもよいでしょう。 どうもありが とうございました。 (1993年4月20日受理)

(18)

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