香川生物(KagawaSeibutsu)(32):9−12,2005
鳥類標識調査によるエゾセンニュウ上oc〟∫feJJα.わ∫CわJαfαの
香川県初標識記録
岩 田 篤 志
〒761−2305 香川県綾歌郡綾南町滝官2172−8 TheBrstcapturedrecordoftheGr’ay−sGrasshopperWarblerILocustella.PISCiolatainKagawaPrefecture,Japan
AtsushiIwab,2J乃−β,r泌〃0刑≠γちβyo〝α〃一成o,A.γα〟rα−g〟〃.励gαWα,乃ノー2・ヲ∂・タ,・J呼α〝 羽を捕獲した。前述のとおり本種の本件にお ける記録は極めて\少なく,写真を伴う確実な 記録としては香川県で初と考えられるため, 古い記録ではあるが報告す−る。本報告が本種 の保護に資することを期待する。 なお報告項目は,日本鳥学会における様式 を参考とした。 1= 種名,亜種名,性及び齢 エゾセンニュウ(亜種エゾセンニュウ) エoc〟5JeJJα.声5C∼のJαねα招〃fco仏 性不明・第1回冬羽 2.捕獲者 岩田篤志(鳥類標識調査者認定第736号) 3… 捕獲日時及び場所 ・捕獲日時 2000年10月16日(6時45分) ・捕獲場所 香川県高松市西宝町峰山 (峰山公園西側外周路) 4..捕獲状況 調査地は幅約60cm程度の林道である。捕獲した標高は約200mである。ここに1枚12mの
は じ め に
エゾセンニュウエoc〟5JeJJα声5CわJαぬは,西シベリア低地南部からウスリー‥中国東北
部・サハリン・千島で繁殖し,フィリピン・ スラウェシ・モルツカス諸島・ニューギニア 西部で越冬するウグイス科Sylviidaeの鳥類で ある(五百沢,2000)。日本では亜種エゾセン ニュウりα椚〝∫coJαが北海道で繁殖し,春秋 に本州以南を通過する。日本鳥学会(2000)は四国での分布をPV
(passagevisiter)としており,香川県でも少数 が通過していると考えられる。しかし本種は 薮等への潜行性が強いため観察されるこ.とが 少なく,本県での記録は2件(香川県,1977) しかない。また『香川県レッドデータブック 香川県の希少野生生物』(香川県,2004)には 掲載されておらず,保護を要する種としては 認知されて−いない。 筆者は(財)山階鳥類研究所の認定を受け, 香川県で鳥類標識調査(環境省事業)を2000年4月から実施している。その一・環として
2000年10月2日から12月18日まで高松市峰山
で調査したところ,エゾセンニュウの幼鳥1 − 9 −OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
かすみ網(環境大臣許可取得,(財)山階鳥類 研究所より貸与)を5枚設置し,2000年10月 2日から同年10月16日までの間の5日間調査 した。 エゾセンニュウの捕獲地点は,樹高約6汀1 はどのマテバシイ ダα∫α〃fαβ血Jg∫の林で,林 道の両側には約軋5m程度のアベリアAムビアgα× grα〃叩orαが生えた,日中でもやや暗い場所 である。捕獲した網の位置から,地上約30cm を移動中だったと考えられる。 5.形態に関する記述 捕獲個体はツグミよりも/トさく,体は細長 い。畷はやや太くて長く,上境は暗褐色で下 囁は肉色である。全身は暗オリーブ褐色,腹 部は白色であり,巽・尾羽を含めて明瞭な白 斑等の模様はない。脚は長く肉色である。 6.計測値 ・自然翼長 73.8mm ・全頭長 40.1m汀l ・尾長 70mm ・ふ舵長 25.Omm ・体重
28g
・T6−Tl(最長尾羽と最短尾羽の差) 22mm 7,種・亜種を同定した基準 (1)軽の同定 本個体は明瞭な白斑がないこと,脚が長い こと等の形態的特徴から,センニュウ属 ⊥oc〟∫′ピタJαである。 日本に生息するセンニュウ属としては,オ オセッカエ.クワれ エゾセンニュウエカ∫CわねJα, シベ リアセンニュウエ.cer祓わ/〟,シマセンニュ ウエ.ocムoJe〃∫f∫,ウチャマセンニュウエ.〆e∫斤どょ, マキノセンニュウエ./d〃CeOJ〝rαが認められて いる(日本鳥学会,2000)。 このうちシベリアセンニュウ,オオセッれ マキノセンニュウは体に明瞭な縦斑があるこ とから,本個体とは一致しない。 残るエゾセンニュウとシマセンニュウ及び ウチャマセンニュウは酷似しているが,シマ センニュウとエゾセンニュウの識別点として 次のような点が指摘されている。なお,ウチ ャマセンニュウとエゾセンニュウの識別点は シマセンニュウと同様である。 ・シマセンニュウの背には不明瞭な縦斑があ る。 ・シマセンニュウの尾羽の先端には明瞭な灰 白色斑がある。 ・シマセンニュウはエゾセンニュウより緩や かな円尾である。 また,尾羽については,最長尾羽と最短尾 羽の差(T6−Tl)がエゾセンニュウは28∼32m軋 シマセンニュウは15∼17mmというデータがあ る(山階,19:i4)。 本個体は背に縦斑はなく,尾羽先端には白 斑はない。これらの外部特徴はエゾセンニュ ウに一致する。またT6−Tlは22】れmであり,シマ センニュウの範囲を超えている。エゾセン ニュウとしてはやや短いが,後述するとおり 本個体は幼鳥であり,尾羽は幼羽であるため やや短いと考えられる。 よって本個体はエゾセンニュウと同定し た。 なお捕獲した環境も標高約200mの雑木林で あり,より低湿地を好むシマセンニュウとは 図1.エゾセンニュウ はoc“∫Je侮カ∫CfoJαJα) −10 wOLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
齢の判定が可能であり,本個体についてこの 点を確認したところ,頭骨は気骨化の途中で あり,この点からも第1回冬羽であると考え られる。 性については,雌成鳥であれば腹の白色部 は腹の中央で止まる(山階,1934)との指摘が あるが,第1回冬羽に関する記述は無い。 よって本個体の性は不明である。 10..過去の記録とその文献 香川県、では,1974年に高松市小田池,1978 年に観音寺市三豊干拓での記録(香川県, 1977)がある。1974年10月12日の小田池にお ける記録(石原,1982)もあるが,これは上記 の1974年記録と同一・と考えられる。 ただし,本種は野外観察ではシマセンニュ ウとの識別が困難であり,エゾセンニュウ・ シマセンニュウともに通常日にする機会のな い香川県にあっては,両種を混同する可能性 が少なくないと考えられる。 まず形態的特徴としては,野外観察では尾 羽先端の白斑が確認できない場合,それだけ でエゾセンニュウと識別されやすい。しかし シマセンニュウ幼鳥の場合,尾羽は成鳥に比 べて−柔らかく磨耗しやすいため,尾羽先端が 磨耗して白斑が欠落している場合がある。野 外観察では尾羽先端の磨耗の有無までは確認 し難いため,注意が必要である。 この点について,前述のいずれの記録も観 察状況や識別根拠に関する詳細な記述がない ため,識別根拠を再検討することは不可能で ある。 また環境については,渡り途中は通常の生 息環境から逸脱した環境にも出現するため, 一・概には言えないものの,エゾセンニュウに 似るシマセンニュウは,より湿地を好む傾向 がある。 これまで記録された小田池及び三豊干拓地