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情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 経年劣化を考慮した統計的遅延解析の一手法 築山修治 福井正博 素子の微細化が進むに連れ, 製造ばらつきが増大すると共に, 負バイアス温度不安定性 (NBTI), ホットキャリア注入, エレクトロマイグレーションなどに起因する経

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Academic year: 2021

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(1)

経年劣化を考慮した

統計的遅延解析の一手法

築山 修治

福井 正博

†† 素子の微細化が進むに連れ,製造ばらつきが増大すると共に,負バイアス温度不 安定性(NBTI),ホットキャリア注入,エレクトロマイグレーションなどに起因 する経年劣化が問題となっている.このような経年劣化に依って,遅延故障が生 じないようにするには,設計時に経年劣化に伴う遅延の増加量を見積もっておく 必要があるが,その増加量を過大に見積もり過ぎるとタイミング設計が困難にな る.そこで,増加量を最悪値ではなく,統計量として扱うことにすると,製造ば らつきを考慮した統計的遅延解析に組み込むことができ,過剰なマージンの発生 を抑えることができる.また,出荷後に遅延故障を検出するためのフィールドテ ストを効率的に行うためには,クリティカルパスとなる可能性の高いパスを精度 良く見出しておく必要があるが,製造ばらつきに依る遅延ばらつきと経年劣化に 伴う遅延増加量のばらつきを同時に処理することができれば,テストすべきクリ ティカルパスの候補を適切に抽出することが可能となる.そこで,本文では,経 年劣化に伴う遅延増加量を統計量として扱い,統計的遅延解析に組み込む手法を 提案する.

An Algorithm for Statistical Timing Analysis

Considering Long-Term Degradation

Shuji Tsukiyama

and Massahiro Fukui

††

The long-term degradation due to negative bias temperature instability (NBTI), hot carrier induced degradation, and/or electro-migration, becomes a problem in circuit design using nanometer process technologies, since it causes a delay fault in the field. In order to resolve the problem, we must estimate delay variation due to the long-term degradation in the design stage, but we must eliminate over estimation of the variation, so as to make the timing design easy. If we can treat the variation as a statistical value and take it into the statistical timing analysis, we can reduce over margin. Moreover, if we treat delay variations due to the process variability and long-term degradation together, we may be able to select an appropriate set of paths for which field testing are conducted to detect delay faults. Thus, in this paper, we propose a method to treat delay variation as a statistical value, and an algorithm for statistical timing analysis using this statistical value.

1. まえがき

素子の微細化が進むに連れ,負バイアス温度不安定性(Negative Bias Temperature Instability: NBTI),ホットキャリア注入(hot carrier injection),エレクトロマイグレー ション(Electro Migration: EM)などに起因する経年劣化が問題となり,製造直後のテ ストでは正常と判断された回路が後に不良となる可能性が生じている[1,2].特に,タ イミング制約が厳しい高速回路において,このような問題が生じないようにするには, 設計時に,経年劣化に依る遅延の変動を考慮してタイミング設計する必要があるが, そのような変動を精確に予測することは困難である.例えば,NBTI による PMOS の 閾値電圧の変化は,総オン時間およびそのときの温度に従って増大し[3],回復現象も あるため[4],使用環境や使用形態に依存する. 一方,微細化に伴って増大してきた製造ばらつきに対処するため,統計的静的遅延 解析(S-STA)が提案されている[5,6,7].ここでは,遅延を統計量として扱うので,遅 延ばらつきの平均や分散を,経年劣化に依る遅延の変動に応じて増加させるという手 法が提案されている[8,9].このように,製造ばらつきによる遅延変動と経年劣化によ る遅延増加量と同時に扱うと,5 年後あるいは 10 年後にクリティカルパスになる可能 性の高いパスを抽出することも可能となるため,フィールドテストの効率化を計るこ とも可能となる[10].しかし,経年劣化による遅延増加量に関しては,ある程度最悪 の場合も考慮しておく必要があるから,製造ばらつき要因の遅延ばらつきと全く同等 に取り扱うことはできない. そこで,本文では,S-STA に経年劣化の影響を取り入れるための新しい手法を提案 する.この手法は,混合正規分布を用いた S-STA 手法[6,7]のアイデアを拡張したもの である.これを行うため,以下の仮定をおく. 仮定 1. 経年劣化による遅延の増加量  は確率変量である. 仮定 2.  は下限値  から上限値 +w の間 [,+w] をばらつく. 仮定 3.  と w は素子毎に異なる値かもしれないが, のばらつきは同じ説明 変数 r0 で表される. 仮定 4. r0 は 0~1 の値をとる確率変数で,その PDF は線形に減尐する. ここで,仮定 3 は,論理ゲート A および B の遅延増加量A およびB の上限値がそれ ぞれA+wAおよびB+wBのとき,あるチップにおいて,A の遅延が 5 年後にA+wA/2 だ け増加するならば,同じチップ上の他の論理ゲート B の遅延もB+wB/2 だけ増加する ことを意味する.これらの仮定をおく理由は下記である. † 中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科

Dept. of Electrical, Electronic, and Communication Eng., Faculty of Science and Engineering, Chuo University

†† 立命館大学 理工学部 電子情報デザイン学科

(2)

(1) 設計時に将来の の分布を推定することが困難であるならば, の最悪値を用 いればよいが,その見積りが楽観的過ぎず,かつ過大でないようにしなければな らない.そこで, の下限値  と上限値 +w を与えることによって,この問題 を解決する.すなわち,平均的な使用であれば  より増加することはなく,最悪 でも +w より増加することがないという値を導入する. (2) ばらつき範囲の導入は,単に分散を増加させるという措置より,安全である. なぜなら,遅延 D の平均を E[D]+E[] に増加させた際,分散も V[D]+V[] に増加 させると,E[D]+E[]−√V,𝐷- + V,- のような遅延値も許してしまうからである. (3) [,+w] 間のばらつきを線形と仮定し,どの素子も同じ(共通の説明変数 r0で表 される)ばらつきをすると仮定すると,本文で示すように,効率的な演算手法が 構築できる. (4) S-STA では,相関が小さければ小さいほど,クリティカル遅延の分散が小さくな るため,どの素子の  も同じばらつきをするという仮定を置くことにより,クリ ティカル遅延の増加量を楽観的に見積もる危険が無くなる. (5) さらに,この仮定により,異なる素子の  間の相関は 1 となるため,決定困難 な相関係数を入力する必要がない.

2. 遅延ばらつきと基本演算

標準正規分布 N(0,1) の確率密度関数(PDF)を (x),その分布関数(CDF)を (x) で表す.PDF (x) が n 個の PDF h(x) の確率重み和 (x) = ∑nh=1Phh(𝑥) で表される 分布を,n 混合分布と呼ぶ.このとき,各確率 0 ≤ Ph ≤ 1(1 ≤ h ≤ n)は混合比と呼ば れ,∑nh=1Ph= 1 を満たす.以下では,各分布はその平均の昇順に並べられているも のとし,第 h 番目の分布を第 h 成分と呼ぶ.また,各成分が正規分布のとき,n 混合 分布は n 混合正規分布と言い,nGMM と書く. 第 h 成分が N(h,h 2 ) であるような変量 x の nGMM の第 i 次のモーメント E[xi] は, 第 h 成分の i 次のモーメントを Eh[xi] と書くと,次式で表せる. E[𝑥i] = ∑ P hEh[𝑥i] n h=1 (1) また,他の変量 y ~N(y,y2) と x との共分散 C[x, y] は,第 h 成分と y との相関係数を h とし,第 h 成分と y との共分散を Ch[x, y] と書くと,次式で与えられる. C,𝑥, 𝑦- = ∑h=1n Phσhσyh1= ∑nh=1PhCh,𝑥, 𝑦- (2) 上の仮定 4 より,説明変数 r0 の PDF g(r0) を, g(𝑟0) = { −2(𝑟00− 1) :: 𝑟 0 ≤ 𝑟0≤ 1 0< 0 or 1 < 𝑟0 (3) とし,経年劣化に伴い,[,+w] の範囲でばらつく  の PDF を次のように表す. 𝑔0() =w1∙ g .w−/ (4) このとき,r0の平均 E[r0],分散 V[r0],および 2 次のモーメント E[r02] はそれぞれ 1/3, 1/18, および 1/6 であり, のこれらはそれぞれ次式である. E,- =+w3 , V,- =w182 , E[2] =2+23w +w62 (5) 本文では,遅延 D の分布は以下の説明変数の線形結合で表されるものとする. 𝐷 =D + ( D+ wD𝑟0) + ∑nc=1sc,𝐷-𝑟c+ sx,𝐷-𝑥 (6) ここで,D+wDr0 =  は経年劣化に伴う遅延増加量であり,他は製造ばらつきに起因 するものである.製造ばらつきに起因するばらつきの平均は D で,n 個の互いに独 立な共通説明変数 rc ~N(0,1) (1cn)と 1 個の局所説明変数 x~N(0,1) で分布が表さ れるものとする.ここで,これらの変数は r0とは独立で,rc は他の遅延のばらつきの 説明変数でもあるが,局所変量は他の遅延のばらつきと独立であるとする.このよう に表すと, 以外のばらつきは正規分布なるので,その遅延量を DG と書く.従って, D は D = DG+ とも書け,DG の PDF は次式となる.ここで,G は正規分布の標準偏 差である. 𝑓G(𝐷G) =σ1 G∙. 𝐷G−D σG / , ここで,σG 2= s x,𝐷-2+ ∑nc=1sc,𝐷-2 (7) このように, 以外のばらつきを正規分布にしてしまうと,分布の表現能力が下がり, S-STA の精度が下がる.これを改善するため,我々は 2GMM を用いて分布を表現する S-STA 手法を提案したが[6,7],本文で提案する手法を 2GMM を用いた手法に拡張する ことは比較的容易であるので,ここではアイデアが理解しやすいよう,変量 r0 以外は 正規分布と仮定する. 遅延 D の平均および分散は,D = D+D と書くと次式となる.これより, = D+wDr0 が加わることにより,DG の正規分布から,平均が D+wD/3 だけ増加し,分散が wD2/18 だけ増加することが分かる. E,𝐷- =D+D+w3D=D+w3D (8) V,𝐷- = V,𝐷G- + V,- = σG2+wD 2 18 (9) また,D の PDF は次式となる. 𝑓D(𝐷) = ∫ 𝑔−∞∞ 0(𝐷 − 𝐷G)𝑓G(𝐷G)𝑑𝐷G= 2σG wD202. 𝐷−D−wD σG / −. 𝐷−D σG /3 + . 𝐷−D−wD σG /2Φ . 𝐷−D−wD σG / − Φ . 𝐷−D σG /31 (10)

(3)

図 1. PDF の違い この形状を調べるため,D = GX+D なる変数変換を行い,K = wD/G とおくと, 𝑓X(𝑋) = 2/K2,*(𝑋 − K) −(𝑋)+ − (𝑋 − K)*(𝑋) −(𝑋 − K)+- (11) を得る.図 1 に K= 6 のときの形状を赤線 で示す.黒点線は  = 1 の正規分布,青破 線は赤線と同じ平均と分散を持つ正規分布 である. の効果により,平均と分散が増 加すると共に,正の歪度を持つようになっ たことが分かる.単に分散を増加させただ けの正規分布では,X の小さいところの頻 度が増えた分,大きいところの頻度が減る. そのため,フィールドテスト用のパス選択 [10] に S-STA を利用する場合など,確率計 算に誤差が生じる. S-STA においてクリティカル遅延の分布を求めるには,2 つの遅延 DA, DB の和 DA+DB の分布を求める演算と,これらの最大 Max[DA,DB] を求める統計的 Max 演算 が必要となる[5-7].今,2 つの遅延 DA, DB が次式で与えられたとすると, 𝐷A= μA+A+ wA𝑟0+ ∑nc=1sc,𝐷A-𝑟c+ sx,𝐷A-𝑥A (12) 𝐷B= μB+B+ wB𝑟0+ ∑nc=1sc,𝐷B-𝑟c+ sx,𝐷B-𝑥B (13) 和の演算では DS = DA+DB を,Max の演算では DM = Max[DA,DB] を同様な形式で表現 しなければならない.それができれば,3 個以上の遅延の和や Max は 2 つの和や Max の繰り返しで求められるから,後は,回路の接続関係を示すグラフを位相幾何学的順 序で探索することにより,クリティカル遅延の分布を求めることができる. 和 DS = DA+DB を次式で表すことは比較的容易で, 𝐷S= μS+S+ wS𝑟0+ ∑nc=1sc,𝐷S-𝑟c+ sx,𝐷S-𝑥S (14)

次のように定めれば,平均に関して E[DS] = E[DA]+E[DB] が成り立つ.

μS= μA+ μB , S=A+B , wS= wA+ wB (15) さらに,共通変量 rc の感度および局所変量 xSの感度を,それぞれ次式で定めると, sc,𝐷S- = sc,𝐷A- + sc,𝐷B- (16) sx,𝐷S- = √sx,𝐷A-2+ sx,𝐷B-2+ 2sx,𝐷A-sx,𝐷B-R,𝑥A, 𝑥B- (17) 分散に関しても,和の関係 V[DS] = V[DA] + V[DB] + 2C[DA,DB] が成り立つ.ここで, R[xA,xB] は局所変量 xA と xB の相関係数であり,C[DA,DB] は DA と DB の共分散で, 次式で計算できる. C,𝐷A, 𝐷B- =wA18wB+ sx,𝐷A-sx,𝐷B-R,𝑥A, 𝑥B- + ∑nc=1sc,𝐷A-sc,𝐷B- (18) なお,S-STA において和の演算が必要となるとき,xA と xB は独立であるが,本文で は,常にこれらの相関を無視し,R[xA,xB] = 0 と仮定しておく. これに対して,Max 演算はそれほど容易ではない.非正規分布に対する統計的 Max を求めるには幾つかの手法があるが[11,12],ここでは 2GMM を用いた手法[6,7] を用 いる.

3. 遅延分布の 2GMM 表現

まず,式(11) で表された PDF fX(X) を,混合比が P1および 1 P1であるような 2 つ の成分 N(1,1 2 ),N(2, 2 2 ) からなる 2GMM で表す.そのため,fX(X) と 2GMM の 1 次から 5 次までのモーメントを一致させる.すなわち,次式が成り立つようにする. P1μ1+ (1 − P1)μ2= K 3 P1(σ12+ μ12) + (1 − P1)(σ22+ μ22) = K2 6 + 1 P1μ1(μ12+ 3σ12) + (1 − P1)μ2(μ22+ 3σ22) = K4 K2 10+ 15 P1(μ14+ 6μ12σ12+ 3σ14) + (1 − P1)(μ24+ 6μ22σ22+ 3σ24) = K4 15+ K2+ 3 P1μ1(μ14+ 10μ12σ12+ 15σ14) + (1 − P1)μ2(μ24+ 10μ22σ22+ 15σ24) = K4 K4 37+ K2+ 55 これらは非線形方程式であるが,変数 u = K1/3 を導入して式を見やすくすると, 解くことができ,5 つのモーメントを等しくする定数 P1  0.536350 と u  0.469698 が 存在することが分かる.以下では,この定数 P1をと書き,をと書く. ,   0.463650 (19) さらに,を以下のように定めると,  = u/3  0.156566 ,  = (1u)  0.537818 (20)   0.00896764 ,   0.0314885 (21) 1 = K, 2 = K, 12 = 1+K2, 22 = 1+K2 は 5 つのモーメントを等しくする解で ある.K = 1 および 6 のときの fX(X) と f2G(X) の誤差の最大はそれぞれおよそ 10 6 よび 0.006 である. これより,式(10) の PDF は,次の平均および分散を持つ 2GMM で表されることが 分かる.以下では,これらをそれぞれ D の第 1 成分 D1,第 2 成分 D2 と呼ぶ. D1 = D + 1wD , D2 = D + 2wD (22) D12 = G2 + 1wD2 , D22 = G2 + 2wD2 (23) ここで,混合比 1 を持つ第 1 成分 N(D1,D12) は,平均が E[D] = D+wD/3 から約 0.177wDだけ小さく,分散も V[D] から約 0.046wD 2だけ小さい.また,混合比 2 を 黒点線 N(0,1) 赤実線 fX(X) K = 6 の時

(4)

図 3. JPDF fY0(Y,r0) の概略と周辺分布 図 2. JPDF fY0(Y,r0) の概略と周辺分布 持つ第 2 成分 N(D2,D2) は,平均が E[D] から約 0.204wDだけ大きく,分散が V[D] か ら約 0.024wD 2だけ小さい. Max 演算手法を構築するには,DM = Max[DA,DB] の PDF を表す各説明変数の感度を 求めなければならない.提案手法は,DAおよび DB の分布を上で示した 2 つの成分に 分割して計算するので,この分割に伴って DA = DGA+A,DB = DGB+B の経年劣化分 A,B と,正規分布の各共通変量分 sc[DA]rc,sc[DB]rc を分割する必要がある. 3.1 の混合分布 遅延 D が D = DG+ = DG+D+wDr0 と表わされるとき,D と r0の JPDF fD0(D,r0) を 求める.DG と r0は独立であるから,DG と r0の JPDF は,式(7) の PDF fG(DG) およ び (4) の PDF g(r0) を用いて,fG0(DG,r0) = fG(DG)g(r0) と書ける.従って,変数変換を 行い,fG0(D,r0) = fG0(DDwDr0, r0 ) を計算すると,fD0(D,r0) は 0  r0 1 の範囲で 0 でない値をとり,D = wDY+D なる変数変換を行い,H = G/wD = 1/K とおくと,次式 となることが分かる. 𝑓Y0(𝑌, 𝑟0) =−2(𝑟H0−1).𝑌−𝑟H0/ (24) 従って,ある r0では N(r0,H 2 ) の正規分布を2(r01) 倍したものになっているから,Y と r0 の JPDF は図 2 に示すように,Yが大きくなるに連れ,正規分布の山が右にシフ トしながら低くなる形をしている.図において,r0 = Y の直線は N(r0,H2) の山の平均 の位置を示し,その左右の直線はこの山の 2 点の位置を示す. 今,上で生成した D の各成分が JPDF を構成する 2 つの成分 Y01 および Y02 の周辺 分布だとすると,Y01,Y02 の r0 に関する周辺分布も異なった分布になると考えられ る.そこで,r0 に関する こ れ ら の 周 辺 分 布も r0 の PDF と同様線形に変 化すると仮定し,D1 の +2点以下(すなわち Y = +2D1/wD 以 下 の範 囲)に,N(r0,H2) の2 点 以 上 ( す な わ ち Y = r02H 以上)の範囲が含 まれないような r0 の値 は,Y01 の分布には含ま れないとする.すなわち, r0 の第 1 分布の上限値 1 を,+2D1/wD = 1 2H で計算すると,式(25) のように得られる.この値が 1 より大きいときには,1 = 1 とする.なお,1が 1 より小さくなるのは,H = G/wD < 0.15 のときである. 1=1+ 2.H + √1+ H2/ (25) 第 2 分布の幅 2 は,r0 の 2 つの成分から成る混合分布の平均が r0 の平均 1/3 に等し くなるように決める.そうすると次式を得る.この値は1 = 1 のとき 1 になる. 2=2−31+11 2(1−1)  0.4216  + 0.57841 (26) 3.1 rcの混合分布 次に,共通変量 rn を例に,D と rn の JPDF fDr(D,rn) について考える.rn以外の正規 分布を変数 DGn ~N(Gn,Gn2) で表すと,D = DGn+sn[D]rn+ と書け,DGn,rn, は互 いに独立であるから,これらの JPDF は f3(DGn,rn,) = fGn(DGn)(rn)g0() と書ける.従 って,JPDF fDr(D,rn) は,変数変換を行うことにより,次式となる. 𝑓Dr(𝐷, 𝑟n) =2σGnw(𝑟c) D2 2. 𝐷−D−sn,𝐷-𝑟n−wD σGn / −. 𝐷−D−sn,𝐷-𝑟n σGn /3 +2σGn(𝑟c) wD2 . 𝐷−D−sn,𝐷-𝑟n−wD σGn /2Φ . 𝐷−D−sn,𝐷-𝑟n−wD σGn / − Φ . 𝐷−D−sn,𝐷-𝑟n σGn /3 (27) そこで,D = wDY+D なる変数変換を行い,Hn = Gn/wD,sw = sn[D]/wD とおくと,こ の JPDF は,rn が一定の場合,N(1/3+swrn, 1/18+Hn 2 ) の分布に(rn) がかかった分布に なっており,このような分布が,rn の増大に伴って右にシフトしていくような形状に

(5)

図 4. DA と DB の JPDF なっていることが分かる(図 3 参照).図 3 の楕円は JPDF の等高線を示しており,斜 めの直線は fYr(Y) の平均の位置を示している. Y と rn の相関係数 R[Y,rn] は D と rn の相関係数 R[D,rn] に等しく,次式となる. R,𝑌, 𝑟n- = R,𝐷, 𝑟n- =√V,𝐷 sn ,𝐷-Gn-+sn,𝐷-2+V,-= sw √1/18+Hn2+sw2 (28) これは,Hnが一定であれば sw の増加に伴って 1 に近づく.すなわち,D の分散にお いて,rn の感度 sn[D] の比重が増すと R[Y,rn] は 1 に近づく.従って,JPDF fYr(Y,rn) の 形状は,sw の変化に伴って図 3 の右図ように変わるが,ある rn での断面を 1/(rn) 倍 すると,その分布の分散は全て同じである. この図を参考に,sw 1 の場合には,rnの標準正規分布を N(n1,n12) および N(n2,n22) の 2 つの成分に分割し,それぞれの混合比を 1 および 2 とする.ここで,n1,n2 は 次式である.これらの混合分布の平均が 0 になる. n1=1−1/3 sw , n2= 2−1/3 sw (29) 各成分の標準偏差 n1,n2 は,混合分布の 2 次と 3 次のモーメントが rnのそれらに 一致するように決めると,次式を得る.sw 1 であればこれらは決定できる. n12= 1 −(u−1)2(1+ 2) 332sw2  1 − 0.0380 sw2 , n2 2= 1 −(u−1)2 1(1+2) 3322s w2  1 − 0.0345 sw2 (30) 一方,sw < 1 の場合,特に sw < 0.195 になると,この式でn1,n2 を決定できない. 上の図から分かるように,sw が 1 より小さくなると,rn の感度が小さくなり,D の ばらつきに対する rn の影響は小さくなる.そのため,D と rn の相関係数は 0 に近づ く.このような場合,D の第 1 成分に含まれる rn の分布は,sw = 1 の場合に D の第 1 成分に含まれる rn の分布と同様と考えることにし,sw < 1 の場合,sw = 1 の場合の分 割と同じ分割を行う.

4. Max 演算

以下では,それぞれ式(12) および (13) で表されるような遅延 DAおよび DBが与え られたとき,DM = Max[DA,DB] を次式のように表す手法について考える. 𝐷M= μM+M+ wM𝑟0+ ∑nc=1sc,𝐷M-𝑟c+ sx,𝐷M-𝑥M (31) このとき,DAおよび DBの分布はそれぞれ 2GMM で近似されており,各成分をそれぞ れ Aj (j=1,2)成分および Bk (k=1,2)成分と書くと,Ajは N(Aj,Aj2),Bk は N(Bk,Bk2) である.また,局所変量 xA, xB の相関を無視すると,共分散 C[DA,DB] は式(12),(13) か ら計算でき,これから DA,DBの相関係数 R[DA,DB] も計算できる. 今,[6,7] と同様に,DAおよび DBの JPDF が 4 つの 2 変量同時正規分布 AjBk (j,k{1,2})の混合分布になっており, その混合比を jk とする.また,各分 布 AjBk における DA,DBの相関係数は, AjBk が DA,DBの同時分布の一部をラン ダムに取り出したものなので,DA,DB 全体の相関係数 R[DA,DB] に等しいとす る.さらに,各 AjBk 分布において,DA DB なる領域に含まれる分布を AjBk1分 布,DA < DB なる領域に含まれる分布を AjBk2分布とと書く.図 4 にその概略を 描く.ここで,各楕円は分布 AjBkの等高線を示す. 各 AjBk1分布において,DA DB である確率 Pjk1,DA = DMの平均 Ejkq[DM],および 2 次のモーメント Ejkq[DM2] が計算可能であり,また各 AjBk2分布において,DA < DB で ある確率 Pjk2,DB = DMの平均 Ejkq[DM],および 2 次のモーメント Ejkq[DM2] を計算可 能である[6,7].従って,DMの分布を 8GMM で表すことができ,DM の平均 E[DM] お よび分散 V[DM] が次式で計算できる. E,𝐷M- = μM+M+w3M= ∑j,k,q*1,2+PjkqEjk1,𝐷M- (31) V,𝐷M- = sx,𝐷M-2+ ∑nc=1sc,𝐷M-2+wM 2 18 = ∑ PjkqEjkq[𝐷M 2] j,k,q*1,2+ − E,𝐷M-2 (32) 各説明変数(例えば rc)の感度 sc[DM] を計算するには,DA,DB,rcの JPDF が必要 となるが,これらの JPDF は複雑な式となるから,それから感度を計算するのは面倒 である.そこで,離散的な場合から近似手法を考える. 今,製造した全チップを AjBkq 分布のいずれかに分類できたとする.このとき,AjBk1 分布における M = M+wMr0の分布は,この分布に含まれるチップの DAの値の中の A = A+wAr0 の値の分布に等しい.この分布をAj と書くと,これは前節で求めた成 分 Aj に付随した r0 の成分から求められるので,Aj は,j=1 のとき [A,A+wAA1] の 範囲を,j=2 のとき [A+(1A2)wA,A+wA] の範囲をばらつくとする.同様に,AjBk2 分布にお ける M の 分布は ,この 分布に含 まれる チッ プの DB の値 の中の B = B+wBr0 の値の分布に等しいので,この分布をBk と書き,前節で求めた成分 Bkに付 随した r0 の成分から,k=1 の場合 [B,B+wBB1],k=2 の場合 [B+(1B2)wB,B+wB] の範囲をばらつく分布とする. 一方,AjBk1 分布における sc[DM]rcの分布は,この分布に含まれるチップの DAの中 の sc[DA]rc の値の分布に等しいので,これを作る rcの分布を N(cAj,cAj 2 ) とする.ま

(6)

図 5.DM = Max[DA,DB]の PDF た,AjBk2 分布における sc[DM]rcの分布は,DBの中の sc[DB]rcの値の分布に等しいの で,これを作る rcの分布を N(cBk,cBk 2 ) とする. こうすると,DA DB であるときの M の分布は,AjBk1 分布(j,k{1,2})における Aj 分布の混合分布,DA < DB であるときの M の分布は,AjBk2 分布(j,k{1,2})に おける Bk 分布の混合分布となる.同様に,DA DB であるときの rc の分布は,AjBk1 分布(j,k{1,2})における N(cAj,cAj2) の混合分布,DA < DB であるときの rc の分布 は,AjBk2 分布(j,k{1,2})における N(cBk,cBk 2 ) の混合分布となる.その混合比は, Aj に関しては PM1j,Bk に関しては PM2kである.ここで,PM1および PM2はそれぞ れ DA DB および DA < DB である確率である. これらを用いて,M の範囲 [M,M+wM] を次式で決定する. M= PM1{A+2(1 −A2)wA} + PM2{B+2(1 −B2)wB} (33) M+wM = Max[A+wA,B+wB] (34) また,rc の感度 sc[DM] = C[DM,rc] は次式で計算する. sc,𝐷M- = C,𝐷M, 𝑟c- = PM1∑j=1,2jCj,𝐷A𝑟c- + PM2∑k=1,2kCk,𝐷B𝑟c- (35) Cj,𝐷A, 𝑟c- = R,𝐷A, 𝑟c-AjcAj , Ck,𝐷B, 𝑟c- = R,𝐷B, 𝑟c-BkcBk (36) 最後に,局所変量 xM の感度 sx[DM] は式(32) から計算する.その際,もしも虚数に なったならば,sx[DM] = 0 とし,他の感度 s に次の係数 をかけて,感度と分散の間 に矛盾が生じないようにする. = s √∑nc=1sc,𝐷M-2− wM2 18 ⁄ (37)

5. むすび

本文では,統計的静的遅延解析に経 年劣化の影響を取り込む新手法を提案 した.この手法は,2GMM を用いて非 正規分布 Max 演算を処理するもので, 表参照と完結式の計算だけの処理しか ないので,効率的である. 紙面の都合で実験結果を記載できな かったが,図 5 に一部を示す.ここで, 青および緑の破線は DA,DB を,赤実 線が本手法で得られた DMを,縦線の 系列がモンテカルロシミュレーションで得られた結果である.標準偏差の誤差は 2.1%, 平均の誤差は標準偏差の 4.0%である.これらの誤差は,分布を 2 混合分布で表すこと により,改善できるであろう. 本手法の 2 混合分布への拡張,誤差の解析,さらに,感度計算の高精度化などが残 された課題である. 謝辞 モンテカルロシミュレーションを用いて実験データを収集してくれた中央 大学大学院 電気電子情報通信工学専攻 修士 2 年生 渡辺恭平君に感謝の意を表する. 本研究の一部は,平成 23 年度科学研究費補助金基盤研究(C) 21560364 および 23500071 の基に行われた.

参考文献

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参照

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