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研究コース 6(GOØWY チーム ) 要求獲得のためのヒアリングにおけるゴール指向要求分析の活用 ~ ゴール指向 Lite の提案 ~ Effective Use of Goal-Oriented Requirements Analysis Method at Interview Process

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Academic year: 2021

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要求獲得のためのヒアリングにおけるゴール指向要求分析の活用

~「ゴール指向 Lite」の提案~

Effective Use of Goal-Oriented Requirements Analysis Method

at Interview Process for Requirements Elicitation

Proposal of “GoalOrientation Lite”

-菅原 扶 (株式会社インテック) 室井 義彦(DIC株式会社) 山口 俊彦(テックスエンジソリューションズ株式会社) 山崎 哲 (テックスエンジソリューションズ株式会社) 研究概要 我々は,ソフトウェアシステム開発プロジェクトにおける要求定義での課題解決のため に,新たな方策「ゴール指向 Lite」を提言することにした.従来からある要求獲得手法の 「ゴール指向要求分析」の本質を損なうことなく,しかもそれよりも迅速かつ簡易に実施 できる方策として「ゴール指向 Lite」を創出した. 実 験 と し て 仮 想 の 業 務 シ ス テ ム 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト に お け る 要 求 定 義 で の 「 ゴ ー ル 指向 Lite」適用有無を比較検証したところその適用優位性が確認できた. Abstract

We propose a new method "Goal-Orientation Lite" to prevent from making failures at the requirements analysis phase of software system development project. Given effectiveness of Goal-Oriented Requirements Analysis (GORA) methods, we propose "Goal-Orientation Lite" as a speedy and simple method that still retains the essence of GORA.

We show effectiveness of the proposed method through an experiment that compares requirement analysis with and without it.

1. はじめに

ソフトウェアシステム開発プ ロジェクト(以下,プロジェクト)の要求定義 において, 要求の抜け漏れ,要求の内容が明確でない,ステークホルダ間での認識誤りが発生すると いった課題があり,我々の実経験に基づく議論でも同様課題があると認識できた. 要求工学知識体系 REBOK(Requirements Engineering Body Of Knowledge)によれば,共 通知識カテゴリにおける 8 つの知識領域のうち,要求定義に直接必要な知識領域は要求獲 得,要求分析,要求仕様化,要求の検証・妥当性確認・評価の 4 つのプロセスである[1]. 我々は,このうち要求獲得プロセスに着目した.なぜならば要求獲得とは「顧客を含む ステークホルダを明らかにし,会議やインタビューなどを通して要求を引き出す技術に関 する知識」と定義されており,前述の課題解決に効果があると考えたためである. 本研究では,要求の 構造化と分析の手法として注目される「 ゴール指向要求分析」[2] を要求獲得において活用することに着目し,要求定義における有効性について研究を行う. 以下本論文の構成を述べる.2 章でゴール指向要求分析の特徴とその課題を示す.3 章 では我々の提案する手法の詳細について説明する.4 章ではその手法の有効性検証のため に実施した実験詳細を示し,5 章で実験結果について考察する.6 章では,まとめとして本 研究の考察と今後の課題について述べる.

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2. ゴール指向要求分析における課題 2.1 ゴール指向要求分析 ゴール指向要求分析では,ゴールとはシステムが満足すべき状態であると定義されてい る.また,システム要求とはゴールを達成するための手段であると定義されている.プロ ジェクトにおいて達成すべきゴールにこそ最も着目すべきであり,ゴールを分解・詳細化 (サブゴール化)して達成手段を明確に定義したものをシステム要求と見なすということ である(システム要求化).これにより,システム要求に関する「何のためにそれが必要な のか」が明確になり,要求分析における議論や妥当性確認,要求変更時の追跡がそれぞれ 行いやすくなる.ゴール指向要求分析でのサブゴール化やシステム要求化の概念図が図 1 である. 図 1.ゴール指向要求分析の概念図 ゴール指向要求分析の いくつかあるフレームワ ークに共通する,ツリー 構造によるゴール間の関 係モデルの例を図 2 に示 す. モデリングでは,上位 ゴ ー ル を 下 位 ゴ ー ル に AND/OR 関 係 を 用 い て 分 解していく.上位ゴール になればなるほど抽象性 が高くなり,ゴール分解 の終了基準は,すべての 下位ゴールに対してその 達成手段,すなわちシス テム要求が特定されるこ とである. 図 2.ゴール間の関係モデル例 ゴー ル サブ ゴール 1-1 .. . ■ゴ ール: システ ムが満 足すべ き状態 ■サ ブゴー ル:ゴ ールの 分解・ 詳細化 ■シ ステム 要求: ゴール を達成 するた めの手 段 サブ ゴール 1-2 サブ ゴール 1-n シス テム要 求 1 シス テム要 求 2 シス テム要 求 3 .. . システム要求 n サブ ゴール m-1 サブ ゴール m-2 .. . サブ ゴール m-n … … … OR 詳細 化 アン ケート に 回答 する アン ケート 回答 を作 成する アン ケート 回答 を提 出する AND 詳細化 アン ケート を電子 メー ルで提 出する アン ケート を FAX で提 出する FAX 送信ボ タン メー ル送信 ボタン 達成 手段 シス テム要 求

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ゴール指向要求分析の要求定義への適用,すなわちツリー構造によるゴール間の関係モ デリング手法実施で,すべてのゴールに対するすべての達成手段(システム要求)を特定 でき,それらを明示的に可視化することができるため,以下の効果が得られる. (1) 要求獲得における抜け漏れの防止 (2) 要求の必要理由の明確化 (3) 要求獲得における矛盾や誤りの排除 (4) 要求の重要度・優先度の把握 (5) 要求獲得のためのヒアリング時における暗黙知に対する気付き (6) ヒアリング者と被ヒアリング者間(ステークホルダ間)での認識共有の促進 2.2 課題 まず我々は,ゴール指向要求分析を実際に試行実施してみた.具体的には,仮想小規模 プロジェクトを設定し,ゴール指向要求分析におけるツリー構造によるゴール間の関係モ デリング作成を行い,要求分析を試行した.結果,ゴール指向要求分析の実施には,以下 表 1 の課題があると認識した.表1の課題は,いずれも実際のプロジェクトにおいてゴー ル指向要求分析を活用することは容易でない,ということに起因しており,かつ我々の共 通認識の課題であった. 表 1.ゴール指向要求分析における課題 No 課題 点 課題 内容 理由 1 時間 制約 分 析 実 施 や 手 法 の 習 熟 に 時 間 が かか る ・基 本的に システ ム全体 のゴール モデル を書く こ とが 前提と なって おり,ツ リー内 の記述 に曖昧 さ を残 せず, 明示的 に記述 せざる を得な いため ・各 手法の 記述ル ールの 理解に時 間がか かるた め 2 属人 性 分 析 結 果 が 個 人 の 経 験 や 知 識 量 に依 存して しまう ・あ くまで ツリー 構造に よる記述 の枠を 提供す る だけ であり ,記述 の自由 度が高 いため 3 本 来 目 的 の 喪失 ツ リ ー を 完 成 さ せ る こ と に 意 識 が働 き,本 質的な 要求分 析という 本来 目的を 見失い がちと なる ・見た目 の記述 の枠に 目が 行きが ちで,かつわ か り や す い 終 了 基 準 で あ る 記 述 の 完 成 に 目 が 向 い てし まうた め 3. ゴール指向 Lite 3.1 アプローチ 要求定義におけるゴール指向要求分析手法の有用性は認知しつつも,それを実際のプロ ジェクトで活用するには,2.2 章の表 1 の課題に対する対策が必須である.そこで我々は, 表 1 の課題を解消でき,2.1 章で挙げたゴール指向要求分析の 6 つの期待効果を極力損な うことのない手法としてゴール指向要求分析を簡易化した「ゴール指向 Lite」を提案する. 3.2 手法詳細 ゴール指向 Lite はシンプルであり,既に獲得済の要求 1 つ 1 つに対し,2 つの手順を実 施するだけである.図 3 にゴール指向 Lite の概念図を,表 2 に手順を,実際の具体例を図 4 に示す.実施手順では,表 2 の洗い出し観点を自問することにより導出対象を獲得する. 洗い出し観点の決定根拠は,数あるゴール指向要求分析手法に共通する最も核となる観点 だと考えたためである.また 1 段上位までとしたのは,手順をシンプルにすることで導出 対象の獲得を容易にするためである.実施にあたっては,思いつく限りの上位ゴールや問 題・リスク,他要求を複数件導出して構わない.

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図 3.ゴール指向 Lite 概念図(上位ゴールからのアプローチ) 表 2.ゴール指向 Lite 実施手順(上位ゴールからのアプローチ) No 手順 洗い 出しの 観点 導出 対象 1 獲 得 済 の 要 求 か ら 1 段 上 位 の 目的 ・ゴー ルを導 出する なぜ 要求[a]を 実現す る必要 がある のか 上位 目的 ゴー ル[A] 2 導 出 し た 上 位 ゴ ー ル に 紐 付 く 他の 下位要 求を導 出する 要求 [a]を実現 するこ とだけ で,ゴール [A]が実 現す るか 下位 要求 [b] ゴ ー ル [A]を 実 現 す る た め に 必 要 な こ と は , 要 求[a]以 外にな いか 要求 [a]以外で ,ゴ ール[A]を実 現する ことが で きな いか 図 4.ゴール指向 Lite 活用例(上位ゴールからのアプローチ) また,上位ゴールがうまく導出できない場合の代替手順として,問題・リスク観点から のアプローチを行う.表 3 にその手順を,図 5 に具体例を示す. 元 要求[a] 他 要求[b] 上 位目的 ・ ゴ ール [A] 1) ゴー ル抽出 2) 他要 求抽出 元 要求[a] 上長 は部下 全員分 の月の 残業時 間を 一覧で 確認で きるよ うにし たい 他 要求[b] 月の 残業時 間が特 定時間 をオー バーし そうな 社員 につ いて特 定のタ イミン グで上 長宛に 警告メ ッセ ージ が届く ように したい 上 位目的 ・ ゴ ール [A] 上長 は月の 残業時 間が特 定時間 をオー バーし そうな 部下を 把握し たい 1) ゴー ル抽出 2) 他要 求抽出

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表 3.ゴール指向 Lite 実施手順(問題・リスクからのアプローチ) No 手順 洗い 出しの 観点 導出 対象 1 要 求 [a] が 実 現 で き な い 場 合 の 問題 ・リス クを導 出する 要 求 [a]を 実 現 で き な い 場 合 , ど の よ う な 問 題 が起 こり得 るか 問題 ・リス ク[A’] 2 導 出 し た 問 題 ・ リ ス ク に 紐付 く 他の 要求を 導出す る 要求 [a]を実現 するこ とだけ で,リ スク[A’]が 起こ らない か 他要 求[b] リ ス ク [A’] を 起 こ さ な い た め に 必 要 な こ と は, 要求[a]以 外にな いか 要求 [a]以外で ,リス ク[A’ ]を 起こし てしま う こと がある か 図 5. ゴール指向 Lite 活用例(問題・リスクからのアプローチ) 4. 実験 ゴール指向 Lite のヒアリングにおける有効性を検証するため,勤怠管理システム構築 の仮想プロジェクトによる実証実験を試みた.利用者(ヒアリングされる者)と分析者(ヒア リングする者)に分かれ,さらに分析者は,ゴール指向 Lite の手法を用いなかった場合(分 析者 A)と用いた場合(分析者 B)に分かれ,それぞれ要求獲得の為のヒアリングを実施した. 最終的にヒアリング時の質問内容と獲得した要求のリストを分析・比較することでゴール 指向 Lite のヒアリングにおける有効性を検証した. 4.1 実験方法 今回の実証実験の手順概要を表 4 に示した.また,各実験参加者の詳細手順と初期開示 した要求リストについては付録 1 に記載した. 表 4.要求獲得ヒアリング検証実験の手順概要 No 実験 手順 所要 時間 1 利用者 (1 名)が 作成し た要求 リスト のうち 10 件 の情 報を分 析者(各 2 名 )に 開示 30 分 2 開示さ れた情 報を基 に,ゴ ール指 向 Lite の分 析を実 施 ※分 析者 B の み 30 分 3 開示さ れた要 求リス トを基 に分析 者 A, 分析者 B がそ れぞれ ヒアリ ング実 施 60 分 4 最終的 に分析 者 A, B が獲 得し た要求 リスト とヒア リング 時の質 問内容 を比較 30 分 元 要求[a] 上長 は部下 全員分 の月の 残業時 間を 一覧で 確認で きるよ うにし たい 他 要求[b] 月の 残業時 間が特 定時間 をオー バーし そうな 社員 につ いて特 定のタ イミン グで上 長宛に 警告メ ッセ ージ が届く ように したい 実 現でき な い 場合の 問題 ・リ スク[A’] 上長 は月の 残業時 間が特 定時間 をオー バーし そうな 部下を 把握す ること が困難 となる 1) 問題 ・リス ク抽出 2) 他要 求抽出

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4.2 実験結果 実証実験にて,分析者 A,B がヒアリングした全質問リスト及び獲得できた全要求リス トを付録 2 に記載した.これら結果のうち,分析者 B が獲得した要求リストの一部を抜粋 したものを表 5 に,ゴール指向 Lite 適用による効果の分析結果を表 6 に示す. また実験時には,従来のゴール指向要求分析手法実施者も設けて分析を行ったが,30~ 60 分の時間制約内でツリーを完成させられず,十分な効果をあげることはできなかった. 表 5.実験にて分析者 B(ゴール指向 Lite 分析有)が獲得した要求リストの一部抜粋 No 獲得 要求内 容 02 プラ イベー トのデ バイス (携帯 ・PC) からは 利用で きない ように したい 08 承認 差戻し などが 頻繁に 起こら ないこ とが望 ましい 12 費用 種別は ,PJ 費 用(直接作 業費)とそ れ以外 費用(間接 作業費 )を 管理し たい 13 定時 退社率 などの 分析レ ポート 機能な どは今 の所不 要 14 申請 ・承認 は月次 だけで よい 15 三六 遵守の 為に社 員の残 業状況 を見え る化し たい 16 三六 協定違 反者に はメー ルで通 知する 機能が 欲しい 17 三六 協定に 違反し そうな 人には ,ア ラート が上が る機能 が欲し い 18 三六 遵守の アラー ト機能 は該当 社員だ けでな く,上 長にも あがる ように したい 19 三六 遵守の アラー トは閾 値設定 で管理 できる ように したい 20 さら に三六 遵守の アラー ト前に ,後何 時間の ような 情報が 伝わる ように したい 21 上長 が部下 の勤務 実績に ついて ,6 営 業日毎 にチェ ックで きるよ うにし たい 23 (適 度な 柔軟 性を欠 くこ と が なけれ ば) 自動 登 録 機能 があり , そ れ を 編集 できる 仕組 みとし ての 検討の 余地は ある 38 従業 員の入 力負荷 削減を 最優先 で重視 (1 人 あたり 1 日 4,5 分 ⇒1,2 分 にした い) 表 6.ゴール指向 Lite 実施による効果分析 ゴー ル 指向 Lite 適用 有 無 総質 問件 数 (件) ゴー ル指向 要求分 析に期 待する 6つの 効果 機能 仕様ま たは 現状の 確認 (1)抜け 漏れ の防 止 (2)必要 理 由の 明確 化 (3)矛盾 や誤 りの 排除 (4)重要 度・ 優先 度の 把握 (5)暗黙 知 に対 する 気付 き (6)認識 共 有促 進 A(無) 42 1 2.4% 4 9.5% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 37 88.1% B(有) 42 0 0.0% 13 31.0% 1 2.4% 2 4.8% 5 11.9% 0 0.0% 21 50.0% 5. 考察 5.1 ゴール指向 Lite 適用の効果(ゴール指向要求分析の 6 つの期待効果に対する) 2.1 章で挙げたゴール指向要求分析の 6 つの期待効果に対し,ゴール指向 Lite での適用 効果を 4.2 章の表 6 より下記の通り考察した. (1) 要求獲得における抜け漏れの防止 効果は見られなかった.これは,複数抽出していた上位ゴールが初回ヒアリングにて 明確化される前に,抜け漏れを洗い出すことは非効率であった為,今回の実証実験では 効果が出ていないものと思われ,ヒアリングを数回繰り返すことで効果が出てくるもの と推測する. (2) 要求の必要理由の明確化

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大きく効果があった.例えば,4.2 章の表 5 における要求 No.11 から 21(36 協定に関 連する各要求)の獲得にあらわれている.そもそもゴール指向 Lite の手順が問いかけ ている内容そのものである為,期待通りの結果が出ていると言える. (3) 要求獲得における矛盾や誤りの排除 効果はほとんど見られなかった.これは複数の要求を照らし合わせるなど,全体を見 ることで気が付くことができる内容であるため,ゴール指向 Lite では難しいと思われ, 予想通りの結果と言える. (4) 要求の重要度・優先度の把握 多少の効果があったと見られる.具体的には 4.2 章の表 5 における要求 No.38(入力 負荷軽減が最優先)の獲得があげられる.複数抽出したゴールそれぞれに対して,質問 することで優先度の高いゴール・要求というものが見えてくることより,それなりに期 待する効果が得られたと言える. (5) 要求獲得のためのヒアリング時における暗黙知に対する気付き 効果があったように見られる.例えば,4.2 章の表 5 における要求 No.02(個人のデ バイスは使用不可という社内ルール)及び No.08(承認時の差し戻し頻発対策)の獲得 などが該当する.ユーザーが当たり前と思っている内容は,要求として提示されないこ ともしばしば起こり得るが,上位ゴールから下位要求を把握する段階で幾分か気が付く ことができるものと 思われる.しかし,今回の実験結果では (1)の抜け漏れが抽出でき ていないことから,偶然的に出た結果かも知れず,さらなる検証を要すると言える. (6) ヒアリング者と被ヒアリング者間での認識共有の促進 効果は見られなかった.しかし,ヒアリング時に一緒に付箋を貼りながらゴールを洗 い出すなどを実施することができれば,より期待する効果があげられるのではないかと 推測する. また,表 5 からは確認できないが,「代替案の提案」が可能となるという効果も実験の結 果から見て取れた.これは,上位ゴールを分析した上で,そこから代替案を検討・提案す るというアプローチが可能となるという効果である.実験結果として,4.2 章の表 5 にお ける要求 No.35(自動登録機能)の獲得にその効果が現れている.初期開示要求において は,「自動登録機能は不要」という要求だったが,「柔軟性担保」というゴールを維持出来 れば,自動登録ありで編集可能とすることで検討の余地があるという回答を獲得している. 5.2 ゴール指向 Lite 適用の効果(ゴール指向要求分析の 3 つの課題に対する) ゴール指向 Lite の適用に対し,2.1 章の表 1 の課題が解消できているかどうか表 7 に整 理した.ただし,1 度の検証実験しか行えていないため確定的な結果とするためには,実 験を重ねる必要があると考えている. 表 7.ゴール指向要求分析の課題への対応 No 課題 点 ゴー ル指向 Lite を用い た 結 果 1 時間 制約 実施手 順が少 ないの で短時 間で実 施する ことが できた 2 属人 性 実 施 手 順 の 観 点 が 明 確 で あ る た め , 分 析 実 施 者 が 代 わ っ て も 概 ね 同 様 の 結果 が期待 できる 3 本来 目的の 喪失 記 載 レ ベ ル ( 分 解 化 ・ 詳 細 化 ) の 観 点 を 定 め て あ る の で , 重 要 で 本 質 的 な要 求の獲 得と分 析とい う本来 目的が 実施で きた

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5.3 実験結果から考察されたゴール指向 Lite の特徴 (1) ステークホルダとの協働分析作業 通常のゴール指向要求分析においては,その分析をいつ行うのかは特に定められてい ない.しかしゴールモデルが大きくなることを考えると,ステークホルダとその場で一 緒にツリーを作成するような方法は現実的に難しく,要求獲得後に分析者が個別分析し, 質問事項を後で作成することが通常である.一方,ゴール指向 Lite の場合,1 つの要求 から導出した複数のゴールをヒアリング時に確認しながら分析していくことで,短い時 間でヒアリングと分析を同時並行で進めることができた. これより,ゴール指向要求分析をすべて実施しきるよりも,ヒアリング時にステーク ホルダとその場で一緒に分析することのハードルが低くなると感じた.また,その場で 実 施 完 了 を 目 指 す の で ス テ ー ク ホ ル ダ 間 で ゴ ー ル と 要 求 の 認 識 共 有 が 促 進 さ れ る こ と を期待できる. (2) ヒアリング傾向 ヒアリング時における質問全体の特徴としては,ゴール指向 Lite 非適用の分析者 A は,「機能詳細を明確にしようとする」傾向が見られた.一方,ゴール指向 Lite 適用の 分析者 B は,「目的を明確にしようとする」傾向が見られた.この傾向から,分析者 A は分析者 B より早い段階で質問が枯渇することが予想され,ヒアリングを複数回繰り返 していくことで,分析者 A,B 間の要求獲得・分析の差はさらに大きくなっていくもの と推測できた. 6. 結論と今後の展望 我々は,仮想プロジェクトへの実証実験を通して,要求獲得のためヒアリング時におけ る手法であるゴール指向 Lite を提案し,以下の有効性を確認した. ・ゴール指向要求分析の 6 つの効果を引き継いでいる(5.1 の(1)~(6)参照) ・ゴール指向要求分析の 3 つの課題を解消できる(5.2 参照) また,今回の実証実験は時間的制約上,1 つの仮想プロジェクトを1度しか実施するこ とができなかった為,十分な検証が行えたとは言えない.特に 5.1 章の以下の 3 点に対し ては実証実験を繰り返し行うことによりその効果検証ができると考えた. (1) 要求獲得における抜け漏れの防止 (5) 要求獲得のためのヒアリング時における暗黙知に対する気付き (6) ヒアリング者と被ヒアリング者間での認識共有の促進 今後,実プロジェクトにおけるゴール指向 Lite 活用も含め,あらゆる検証を継続的に 行いつつ,必要に応じてゴール指向 Lite をブラッシュアップしていくことで,より実用的 な手法として確立していきたい. ・謝辞 本論文の執筆に当たり,九州大学大学院の荒木啓二郎教授,栗田太郎主査,石川冬樹副主査, 日科技連・研究コース 6 の研究員の皆様,日科技連・事務局の皆さまにお世話になりました. 厚く御礼申し上げます. 参考文献 [1] 飯村結香子・斉藤忍,REBOK に基づく要求分析実践ガイド,近代科学社,2015 [2] 山本修一郎,非機能要求とゴール指向要求定義,情報処理 Vol49 No4,2008,pp371-379

参照

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