1 2016 年 8 月 4 日
スチュワードシップ活動の状況に関する報告
(2015 年 7 月~2016 年 6 月)
大和証券投資信託委託株式会社 当社は、投資信託委託会社として、受託者責任を遂行すべく、投資信託おのおのに設け られた運用方針に基づき、それぞれの運用目標を最大限達成するように努めております。 その一環として、投資先企業(投資先企業及び投資候補先企業を指し、以下同じ。)の企業 価値を高めるべく、議決権行使を含め、さまざまな形で対話をしてまいりました。 当社は、2014 年 5 月に「『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・ コード》」の受け入れを表明し、その後「スチュワードシップ責任に対する当社の取り組 み方針」と「投資先企業との建設的な対話の方針」を発表いたしました。また、昨年はエ ンゲージメント・チームを立ち上げて投資先企業とより有効なエンゲージメントを行う体 制を整備し、「アナリスト・ハンドブック」を作成するなど担当者のレベルアップに努め て、スチュワードシップ責任の遂行に取り組んでまいりました。 日本版スチュワードシップ・コードは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境など に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通 じて、企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リ ターンの拡大を図ることを期待しています。 ここに、2015 年 7 月~2016 年 6 月における当社の取り組み状況をご報告いたします。Ⅰ.建設的な対話(エンゲージメント)の状況
(1)エンゲージメントにおける方針 当社は、企業価値の持続的な向上に資する対話を行うことを目的に「投資先企業と の建設的な対話の方針」を公表しています。 エンゲージメントにおいて重要な「資本効率」「資本政策」「情報開示」「ESG」の観 点を投資先企業と共有し、それらに対する取り組みなどを題材に企業価値の中長期的 な向上につながる議論を行うことが重要であると考えています。2 以下が、対話の方針全文です。 平成26 年 6 月 23 日制定 平成27 年 12 月 21 日改正
投 資 先 企 業 と の 建 設 的 な 対 話 の 方 針
大和証券投資信託委託株式会社 当社は、投資先企業の状況の的確な把握と認識の共有に努めます。 特に以下の観点について、重点的に対話を深めてまいります。 経営方針・財務戦略に対する観点 ・ROE の中長期的な向上のための、投資先企業毎の方針や取り組み ・資本コストに関する考え方 ・キャッシュの水準に関する方針やキャッシュの活用方針 ・配当政策や自社株買い政策など株主還元に関する方針や取り組み ・企業価値が毀損されるおそれがあると考えられる場合に、その問題の改善方針 投資家との対話・情報開示に対する観点 ・中長期的な経営方針についての投資家との対話に関する取り組み ・情報開示の充実に関する取り組み 環境・社会・企業統治(ESG)課題に対する観点 ・社外取締役の配置や独立性の確保など企業統治に関する取り組み ・持続可能な社会の形成や地球環境課題への対応に向けた取り組み なお、投資先企業との対話に際して、未公表の重要事実を含む法人関係情報の提供を 働きかけることを一切いたしません。万が一それらに該当する情報を取得した場合には、 当該企業に対して当該情報の速やかな公表を促します。 (2)エンゲージメントの態勢 ① リサーチ活動の一環としてのエンゲージメント リサーチ活動は主に調査部企業調査課に所属するアナリストが担当しております。 アナリストは、総員17 名(2016 年 6 月末現在)で、「素材」、「加工組立」、「非製造」、 「金融・不動産」の4 チーム体制をとっております。3 企業との対話に際してアナリストが考えるべき論点を整理することを目的として、 『アナリスト・ハンドブック~「スチュワードシップ・コード」に関するアナリスト 活動の手引き~』を作成し、リサーチ活動の基盤整備を行っています。 この「アナリスト・ハンドブック」は、経済産業省の「持続的成長への競争力とイン センティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト最終報告書(いわゆる 「伊藤レポート」)を題材に勉強会を行った後、2015 年 9 月に完成させました。 2015 年 7 月から 2016 年 6 月までの期間では、1,754 社の企業を対象に、8,722 件(う ち決算説明会等への出席が 2,537 件)のリサーチ活動を行いました。そのうち 540 社 (778 件)と、対話の方針に基づいたエンゲージメントを行いました。 対話の方針に基づいたエンゲージメントは、1.ROE・資本コスト、2.資本政策、3. 投資家との対話の方針・情報開示、4.環境・社会・企業統治(ESG)の4つに類型化し ており、当期間の実績は下表のようになりました。 (注)一回のミーティングで複数の観点から対話をする場合があるため、重複計上しております。 ② エンゲージメント・チーム 日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを踏まえて、2015 年 6 月からは、調査 部、エクイティ運用部が共同でエンゲージメント・チームを設立し、活動を開始しまし た。2016 年 6 月時点のメンバーは、運用本部長(CIO)、運用副本部長 2 名、エクイテ ィ運用部長、エクイティ運用部ファンドマネージャー2 名、調査部アナリスト 2 名の合 計8 名となっています。当該期間に 17 社とのエンゲージメント・チーム・ミーティン グを行いました。対象先企業は、アクティブ運用ファンドでの保有比率の高い中小型銘 柄を中心に選定しました。ミーティングでは中長期的な視点での議論を重視し、可能な 限り対象先企業の社長をはじめとする代表取締役との意見交換を行い、当社が投資先企 業に期待すること、建設的に対話したいこと、資本政策の考え方、企業の本源的価値に ついての考察などを記載した「大和投資信託のエンゲージメント方針の紹介」を手交し て建設的な対話を行いました。 観点 対話件数 1.ROE・資本コストについて 291 2.資本政策(キャッシュ活用・株主還元など)について 513 3.投資家との対話の方針・情報開示について 468 4.環境・社会・企業統治(ESG)について 109
4 ③ ガバナンス・ミーティング 議決権行使に関する話題やコーポレート・ガバナンス体制など、当該期間に投資先企 業のガバナンスを主なテーマにしたガバナンス・ミーティングを116 社(145 件)と行 いました。 ガバナンス・ミーティングでは、当方から投資先企業のガバナンス体制について意見 をのべ、企業からは議案の背景の説明、当社の議決権行使基準に対する意見をいただく など、有用なミーティングを行いました。 当期間の実績は下表のようになりました。 (注)一回のミーティングで複数の観点から対話をする場合があるため、重複計上しております。 (3)エンゲージメントの具体事例 企業の経営者との対話の具体的事例の一部について、概要をご報告いたします。 ① 経営方針・財務戦略に対する観点 - ROE・資本コストについて <A 社> A 社は 2017 年 3 月に期限を迎える中期経営計画で ROE 目標を設定していますが、 同業他社との比較では低い水準です。この目標設定の背景についての説明を受けた上 で、次期中期経営計画で同業他社並みのROE 目標を掲げるための考え方について議論 しました。 <B 社> 主力事業が成熟市場にあるなか、他社事例も紹介しながら海外展開やブランドに関 する戦略を議論しました。他社事例は事業戦略立案の参考になると評価を受け、今後 も継続的にディスカッションの機会を持つことになりました。 <C 社> C 社は、事業範囲が旧来型の不動産業にとどまっていたことから、市場の評価が高ま らず株価が同業他社に比べてかなり割安な状態に放置されていました。競合他社が中 観点 対話件数 1.ROE・資本コストについて 72 2.資本政策(キャッシュ活用・株主還元など)について 60 3.投資家との対話の方針・情報開示について 76 4.環境・社会・企業統治(ESG)について 141
5 期経営計画で訪日外国人向けのホテル事業を中期的に拡大することを発表し、持続的 なROE の向上策として投資家の評価を高めたことを、事業拡大の成功例として紹介し 説明を行いました。 ② 経営方針・財務戦略に対する観点 - 資本政策について <D 社> D 社は、事業環境が良好ななか ROE が 20%を上回る高い水準にある一方、自己資 本比率も高い水準に達しています。ストックビジネスであるため安定的な業績が見込 まれ、設備投資が必要とも考えづらい会社です。こういった状況のもとでさらに資本 効率を高めるために、相対的に低位に留まる配当性向に着目し、株主還元の有効性に ついて対話を行いました。 <E 社> E 社は、キャッシュリッチかつ低 ROE が課題でしたが、持続的な成長や 100%を超 える総還元性向となる新中期経営計画を公表し、当面の改善傾向を確認することがで きました。さらに企業価値を向上して行くために、中期経営計画以降を視野に入れた 長期の成長戦略や、投資と株主還元のバランスについてのディスカッションを実施し ています。 ③ 投資家との対話・情報開示に対する観点 <F 社> ビジネスモデルと研究開発が成長の鍵になると考え、この 2 点に関する情報開示の あり方について議論しました。その後公表されたアニュアルレポートにおいて、研究 開発の効率性についての説明が行われており、IR の充実につながりました。 <G 社> G 社は、3 ヵ年の中期経営計画にて利益目標とともに株式時価総額目標を掲げていま す。しかし、利益目標を達成するだけでは当該時価総額目標を達成できるかは不透明 であると考え、中期経営計画以降を含む長期成長戦略等の株価バリュエーション向上 施策について議論を行いました。また、株価を意識した経営には、業績目標をクリア するだけではなく、投資家との対話方法や成長戦略を明確化するなど、投資家による 企業の評価を高める努力が必要であることを訴えました。
6 <H 社> H 社は、IR 活動に消極的であったことから企業価値が過小評価されていると考えま した。そこで、IR 強化の必要性につき継続的に議論を行いました。その後、決算説明 会が開催されるようになったことに加え、中期経営計画の公表も行われるようになり ました。 <I 社> I 社は独自の技術と商品を強みとして安定成長を続ける企業ですが、代表取締役社長 が機関投資家と接する機会をほとんど設けていませんでした。今回、IR 向上の必要性 や、企業価値向上を意識するメリットなどを、代表取締役社長を含むマネジメントと 議論しました。その後同社は、中長期的な業績向上や企業価値向上に対する貢献意欲 を高めることなどを目的として、ストックオプションの導入を発表しました。 ④ 環境・社会・企業統治(ESG)課題に対する観点 <J 社> 主力事業が成長市場にあるなか、オーナー企業である J 社においては、競合環境の 見極めや投資意思決定における社外取締役の役割が特に大きいと考え、経営陣と議論 しました。また、的確な経営判断に重要な役割を果たす社外取締役が直接投資家との 接点になることは、株式市場における信頼感醸成に繋がると説明したところ、社外取 締役と投資家の対話についても前向きに検討していただけることになりました。 <K 社> 環境規制に関する国際条約の発効に向けて批准が進んでいます。K 社は、条約発効 に先行して環境対応装置の導入を開始、ここ数年装置の導入数を増やしてきました。 このような取り組みを企業価値向上に結びつける方策について議論を行いました。 <L 社> 買収防衛策が更新期限を迎えるに当たって、当社の議決権行使の基準と考え方を説 明しました。取締役会による恣意的な発動余地がある場合には買収防衛策議案に反対 する旨説明したところ、後日、防衛策発動に際しては買収者がルールを遵守しない場 合を除き必ず株主意思確認総会を開き、株主の権利を尊重したスキームに変更するこ とを検討している旨の連絡がありました。
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Ⅱ.議決権行使の状況
2015 年 7 月~2016 年 6 月に 2,407 社の日本企業に対し、議決権を行使いたしました。 議決権は、「議決権の指図行使に関する方針」(以下「議決権行使の方針」)に基づいて行 使しております。 当社は議決権行使の方針を、投資先企業の持続的成長に資するべく、適宜見直しており ます。企業とのエンゲージメントは、見直しの契機としても重要な役割を果たしています。 以下に、当期間に行った議決権行使の基準の主要な変更点と背景をご紹介します。 ・業績判定基準においてROE のみを尺度とすることにつき、多くの企業から画一的すぎ るとの意見をいただいたことから、より説明力が高い議案判断を目指して、従来のROE に加え、株式市場における評価(PBR)を基準に取り込みました。 ・社外取締役の独立性基準において、基準の客観性をより高めることを目的に、東証の 独立性基準を準用する基準に変更しました。 ・買収防衛策議案においては業績による判断基準を設けておりましたが、有識者との意 見交換なども踏まえてこれを廃止し、買収防衛策のスキームを重視する基準を導入し ました。 ・定款変更議案においては、「重要な業務執行の決定の取締役への委任」「業務執行取締 役の責任減免」「取締役会決議による剰余金の配当」に関わる定款変更については、従 来は反対していましたが、会社法の趣旨に照らして原則賛成に変更しました。 議決権の行使結果については、別途、「2016 年 5 月、6 月議決権行使結果」を作成し公表 しております。 議決権行使結果には、議決権行使の方針の主な変更点も記載しています。8