リードフレームと表面処理
加 藤 凡 典
aa ㈲エー・アイ・ティ(〒 161︲0033 東京都新宿区下落合 3︲2︲6︲205)
General Information for Leadframe and its Surface Treatment Technology
Kazunori KATO
aaAiT (3-2-6-205, Shimo-ochiai, Shinjuku-ku, Tokyo 161-0033)
Keywords : Leadframe, Surface Treatment Technology
1 .半導体産業における後工程とリードフレーム
還暦を迎えたばかりの半導体産業はまだ若い産業であるが, 当初から日本とアメリカ・ヨーロッパでは異なった形で発展 してきた。日本においては総合電気メーカが半導体の製造か らパッケージング,さらにはプリント基板の製造と半導体の 実装,そして最終電子機器の組み立て製造まで一貫で行って いた。しかし,時代とともに生産量が増加すると,次第に地 方工場,関連子会社,専業メーカへと分業化も進むようになっ た。一方,アメリカやヨーロッパでは半導体の専業メーカが 力をつけ,ウエハプロセス(前工程)を本国で行い,後工程を 東南アジアで行うと同時に,製造工場を持たない数多くの ファブレスの半導体メーカも誕生し,その製造を請け負う ファンダリやサブコンが台湾,東南アジア,中国などで発展 するようになってきた。20 年ほど前までは半導体プロセス を大別し,ウエハをハンドリングし,トランジスタを作りこ む工程を前工程,ウエハを個片化し,樹脂やセラミックに封 止し外装めっきを施す工程を後工程と呼び,プリント基板上 へのはんだ付けは別のボード実装工程として区別されていた。 しかし 1990 年前後から面実装やリードのファインピッチ化が 進むと,その実装性や信頼性がパッケージに要求されるよう になり,パッケージングとボード実装の境界はなくなってきた。 半導体パッケージのサブストレートとしてその初期から現 在に至るまで最も大量に用いられ,半導体産業を陰で支えて きたのが金属の薄板を加工したリードフレーム*である。 1960 年代前半に日本でも半導体が試作されるようになった 時は,エッチングによる DIP(Dual Inline Package)タイプの リードフレームが用いられた。その後 1980 年頃まではプリ ント基板にリードを挿入し,裏面からはんだ付けするボード 実装が主体でデザインも限られていたため,リードフレーム の量産にはスタンピング,小量産あるいは試作はエッチング, という役割分担が出来上がっており,寸法が標準化された オープンフレームも存在していた。リードフレーム産業が急 速に拡大したのが 1985 年前後からの 10 年間であった。パソ コンの市場拡大と面実装技術の確立により,TSOP(Thin Small Outline Package)(図 1)や QFP(Quad Flat Package)(図 2)といった技術的に難易度の高いパッケージのニーズが急速小特集:リードフレームと表面処理
図 1 電子辞書の Sub Board に用いられている TSOP リードフ レーム 図 2 ウルトラモバイル PC に用いられている QFP リードフ レーム * リードフレームとは半導体パッケージの主要材料で,チップを搭 載するダイバッド,チップと金ワイヤなどで電気的に接続し封止 されるインナーリード,パッケージの外側に配置され,プリント 基板との接続に用いられるアウターリードから構成される板厚 0.1mm ~ 0.25mm 程度の銅合金あるいは 42 合金からなるパッケー ジ用サブストレート
リードフレームと表面処理 に増加したためである。特に多ピン・ファインピッチの QFP 用リードフレームはスタンピング加工では当時の技術では限 界に近く,製造にコストがかかりすぎたため,エッチングリー ドフレームが主体となっていた。この時期に変形を防止する ための先端カット(めっき工程までは先端をつないでおき, ポリイミドベースのテープによってリードを固定してから先 端をカットする製造方法)やグランドプレーンや熱放散板を リードフレームに接合した複合リードフレーム,DRAM 用 に主として使われている LOC(Lead on Chip)用のリードフ レームが開発された。1990 年代後半になると携帯ビデオ用 に多くの CSP(Chip Size Package または Chip Scale Package) が使用され始めたが,その一つの形態としてリードフレーム タイプの小型パッケージ,QFN(Quad Flat Non-lead package) (図 3)が開発され,ハーフエッチングや電着レジストによる 部分めっき技術が完成した。最近はリードフレームを用いた SiP(System in Package)構造のパッケージも実用化されている。 こうしたパッケージの推移について,表 1 にまとめた。 なお,これらのパッケージ形態は,別稿の解説「リードフレー ムを使用した半導体パッケージ」に詳細に記述されている。
2 .リードフレーム産業
リードフレームの市場は SEMI の推定で 2007 年は 3,118 MUS$(1US$ = 100 円として約 3,118 億円)となっていて,か なり大きな市場といえるが,2004 年頃からパッケージのサ ブストレートとしてはリジッド基板の市場が大きくなった (図 4,図 5)。これは数量的にはリードフレームのほうが圧 倒的に多いものの,MPU の基板として高価格品が大量に用図 3 電子辞書の Sub Board に用いられている QFN,SSOP リー ドフレーム 1965 年頃~ リードあるいはピンを初めとした基板にリードを挿入し,基板の裏面ではんだ付けす る挿入型で半導体パッケージはスタート用途に応じてプラスチック,セラミック,ガ ラス封止 ⇒ DIP,PGA など 大型コンピュータ,スーパーコンピュータ用に超多ピン,熱放散技術,電気特性のコ ントロール,Bump 技術などの基礎が着実に発達 1970 年代後半~ プラスチックパッケージの量産が開始し,装置の自動化,部材の生産技術が確立 1980 年代初め~ SMT =表面実装タイプが実用化 ⇒ PLCC,SOP,QFP 1980 年代後半 QFP の多ピン化が本格化すると同時に信頼性の高い TSOP の生産技術が確立
⇒ 28mm 角の 160 ピン,208 ピン QFP TSOP Type Ⅰ & Ⅱ
1990 年代前半 パソコンの普及によりパッケージング技術が大きく進歩
⇒ DRAM 用 LOC,0.5mm pitch 208 pin QFP,多層 QFP
1995 年頃~ 携帯ビデオなどの携帯機器を中心により小さいパッケージが実用化 ⇒各種 CSP,WLCSP 2000 年 携帯電話市場の急速な拡大 ⇒ QFN,チップ・スタックド・パッケージ,COF,カメラ・ジュール 2000 年~ SiP ならびに各種モジュールが本格化 2004 年 デジタル家電と自動車により新たな技術が必要に ⇒ PoP, 高信頼性実装技術など 2007 年 Embedded,TSV など新たな技術の開発 2008 年~ 電磁気,熱,駆動部などの総合技術が必要 ⇒ SiP-MEMS,SiP-MOEMS,バイオ,ナノ,光などとの融合 表 1 半導体パッケージの推移 図 4 パッケージ材料出荷額
出典: SEMI Global Semiconductor Packaging Materials Outlook, November 2007
図 5 パッケージ材料市場の分類(2007 年)
出典: SEMI Global Semiconductor Packaging Ma-terials Outlook, November 2007
総 説 いられており,さらに DRAM, SiP, FBGA(Fine Pitch BGA)な
ど単価の高い領域での用途が増加しているためである。金融 危機に始まった不況で 2009 年の半導体産業は 10%~ 20%の マイナス成長となり,数量ベースでも 2001 年以来 8 年ぶり に数量減も予測されている。 半導体が産業として成立し始めたのが 1980 年代に入った 頃で,WSTS の分類で Monolithic IC は月平均 14 億 2600 万 個の生産数であったものが,2007 年では月平均 125 億 9200 万個生産されている。(それ以外に 279 億 1300 万個のディス クリート*2が製造されている。)(図 6)。携帯電話などの最 新電子機器を見ると,そこには従来型のリードフレームを用 いたプラスチックパッケージは殆ど使用されておらず, FBGA や WLPKG(Wafer Level Package), QFN そして各種モ ジュールによって基板は構成されている(図 7,図 8)。しか しパソコンやテレビ,白物家電などでは,まだまだ従来型の プラスチックパッケージが多く使用されている。大まかに いって,パッケージ全体の 60%が従来型のリードフレーム タイプ,QFN, SON(Small Outline No Lead Package)といった リードの無いタイプではあるもののリードフレームを用いて いるものが 13%程度と,全体の 75% 前後がリードフレーム を使用したパッケージとなっている。またディスクリートに も大量にリードフレームが用いられている。 スタンピング,エッチングともに相変らず日本のメーカが 高いシェアを確保しているが,トランジスタ用リードフレー ムについては 33% 程度,IC 用リードフレームにおいては 40% 程度が国内で製造されていて,過半数は海外工場で製 造されている(図 9)。また韓国のリードフレームメーカの品 質や先端品の製造技術は日本メーカに肉薄していると推定さ れるが,他の国のリードフレームメーカのそれはまだ日本の
図 8 Main Board of NOKIA6131 2006 年製
15 個のパッケージ中 WLPKG7 つ,リードフレームタイプは SON 1 つだけ 図 7 1996 年の携帯端末機に使用されているメインボードと PKG 8 個の半導体が用いられ,すべてリードフレームタイプ 図 6 Monolithic IC と Discrete の月平均製造数推移(WSTS 公表値) 図 9 国内リードフレームメーカ製造拠点別製造数 2008 年上期 JAST 会推定 *2 トランジスタ,ダイオード,コンデンサなどの単機能を有する半 導体素子の総称
リードフレームと表面処理 メーカとは差異があると評価されている。
3 .リードフレームの役割
表 2 には半導体パッケージの目的をまとめてあるが,リー ドフレームも重要な役割を果たしている。これをまとめてみ ると次のようになる。 (1)チップの搭載 チップを固定し,その後の外部との電気的接続,樹脂封止 などのプロセスでの位置制度を確保すると同時に,チップの ダメージを防ぐ。 (2)チップと外部との接続 インナーリードとチップとの間を金線などのワイヤで接続 し,アウターリードをプリント基板とはんだ接合することで 電気,信号のやり取りを可能とする。 (3)熱の放散 半導体が駆動することで発生する熱をダイパッド,リード を通じて放散する。 (4)応力の緩和 プリント基板への実装後発生する外部からの各種応力,テ スト時にソケットなどとの間で発生する応力,などパッケー ジングプロセスの完了後のテスト,搬送,実装,機器の使用 時にはさまざまな物理的,熱的ストレスが発生する。リード やはんだ,封止樹脂などがこのストレスを緩和し,チップへ のダメージの発生のリスクを低減する。富士通が開発し,量産に成功した BCC(Bump Chip Carrier 富士通の商標)のようにリードフレームを一種の治具のよう に使うこともある。BCC とはリードフレームの製造装置, プロセス,材料を用いて銅合金上にめっきバンプを形成し, 通常のパッケージングプロセスと同様にダイアタッチ,ワイ ヤーボンディング,樹脂封止後基板となっている銅材をアル カリエッチングで除去することでパッケージング工程が終了 する軽量小型のパッケージで,1998 年頃には既に携帯電話 に使用されており,10 年以上の実績があるパッケージである。 最近では金属基板上に電鋳 = EF (Electro Forming)で端子と なる電極を形成し,パッケージングを行うタイプの QFN を 製造するプロセスも完成していて,リードフレーム技術を応 用したパッケージも増えている。
4 .リードフレームにおける表面処理
リードフレームには表面処理が必要であるが,その目的は 下記の 4 点が主なものであり,薄型プラスチックパッケージ, 高密度実装用のファインピッチリードフレーム用に技術は進 化してきた。 リードフレームメーカでは,リードフレームの半導体チッ プを接合する各インナーリード部に部分めっき,または,ア ウターリードまで含めた全面にめっきを施している。組立 メーカで半導体実装後に樹脂封止やセラミックによる封止が 完了してから,パッケージの外にでているアウターリードに はんだ付け性を確保するためのはんだやすずめっきを施す工 程は外装めっきと呼ばれ,リードフレームメーカではなく専 門のメーカで行われる。 (1)チップのダイパッドへの接合 共晶やはんだによるダイアタッチではリードフレームダイ パッドに金めっき,あるいは銀めっきが施されている。現在 の主流であるエポキシ系銀ペーストや DAF(Die Attach Film) によるダイアタッチではこうしためっきは無くても良い。 (2)ワイヤーボンディング性の確保 1985 年前後まではリードの先端に部分的に金めっきが, それ以降では銀めっきがワイヤーボンディング性確保のため に施されている。一般的にこの部分めっきは,生産性を上げ るため高電流密度での特殊なめっきが行われる。パラジウム PPF(Pre Plated Frame)ではニッケル+パラジウム+金の 3 層 のめっきが施されることが多い。 (3)信頼性の向上 銀ペーストによるダイアタッチでは樹脂成分のブリードア ウトの防止,ダイパッド裏面の酸化防止膜の形成,銅材の酸 化防止処理といった特別な表面処理も行う。めっきやエッチ ングの前処理や後処理としてもいろいろな表面処理が施され, また拡散防止用のニッケルめっきやすず ︲ ニッケルの合金 めっきも施されることがある。 (4)はんだ濡れ性の確保 リードフレームのはんだ付け性は樹脂封止後,外装めっき としてはんだめっきやすずめっき(電気めっきやディピング) が一般的で,リードフレームメーカの役割ではなかった。し かし 1990 年前後にパラジウムを用いた全面めっきによりワ イヤーボンディング性とはんだ付け性を持たせた PPF が登 場した。当初は工程の短縮と樹脂封止後にウェットの工程が 入らないため信頼性が高くなる,ということが目的であった が,最近は環境対応の鉛フリー化技術としても大切なものと なっている。5 .リードフレーム製造標準プロセス
リードフレームの製造プロセスの詳細については後述され るので,ここでは標準的なプロセスを簡単にまとめてみる(図 10)。 (1)企画・設計 目 的 重要性の最近の傾向 補 足 デバイスの保護(環境,機械的な外力) ⇨ 実装技術や筐体とも関連 応力の緩和 ⇨ Underfill やエラストマ 熱放散 ⇨ or ⇨ System Level 最配線機能 テスティング ⇨ 常に必要 フットプリント位置の標準化 ⇨ 常に必要Fan in または Fan out ⇨ CSP やベアチップ
電気・電磁気の特性への影響 ⇨ 高周波や高速
ex High frequency 表 2 半導体パッケージの目的
総 説 半導体プロセスで使用されるリードフレームの図面は原則 として半導体あるいはパッケージング会社から提供される。 しかしエッチングのアートワークには腐食代*3を筆頭にさ まざまな補正が施され,スタンピングにおいてもポンチやダ イの設計,クリアランスや抜き順の決定,プレス機の選定な ど製造プロセスや装置を決定しなくてはいけない。めっきの 治具や他の機械加工用の金型についても既存のものを共用す るか,新規作製するかも決定し,必要に応じて図面を作成す る。こうした作業が企画・設計である。 (2)リードフレームの形状の形成 スタンピング,またはエッチングにて必要とされるリード フレームの形状を形成する。エッチングは応力のかからない 加工法であるが,ウェットの表面処理プロセスであるため, 素材表面には化学的な変化が起こる。またリードフレームを 複数連同時にエッチング加工することが一般的であり,エッ チング後一連ごとにバラす必要がある。一方スタンピングで は応力が発生するので,必要に応じて(多ピン QFP など)熱 処理による応力緩和処理が加わる。またバリが発生するので バリ取りや平坦幅の確保のためのコイニング加工も加えられ る。 品質面では治具穴の精度,ピッチ精度,リードの強度,表 裏の寸法差などにおいてはスタンピング品が優れており,か つ抜きかすは高品質のスクラップとして売却できる。エッチ ング加工は高価な金型が不要で,短納期での製造が可能であ り,小ロット品や試作品の製造には適していると同時に,ハー フエッチング処理による深さの深い 3 次元の加工が可能とな る。しかし,化学的に素材を溶解してしまい,かつフォトレ ジストはアルカリで剥膜するため,廃液の処理にはコストが かかる。 (3)めっきと各種表面処理 一般的にはスタンピング品はリール状態で,エッチング品 は一連ごとにめっきを主体とする表面処理が施される。めっ きの前処理として脱脂や表面の酸化膜や異物の除去が行われ た後,素材やパッケージによって決定されている仕様に応じ て銅ストライクめっき,ニッケルめっき,銀めっき,金めっ き,パラジウムめっきなどが施される。 さらにパッケージとしての信頼性の向上のため,銀の置換 防止処理,前述のようにめっきマスクの際からもれて析出し た銀めっきの除去,銅の酸化防止処理,銀ペーストのブリー ドアウト防止などさまざまな表面処理が施される。また腐食 性のイオンなどが表面に残らないような純水洗,乾燥を行い, 表面に残留しているイオン量も規制している。 (4)後工程 めっき後,ダイパッドのダウンセット,固定テープの貼り 付け,先端がつながったまま加工された場合にはそのカット などの後工程が加わる。 (5)検査 抜き取り,あるいは全数の外観検査 ,抜き取りによる寸 法測定と工程能力による管理が行われる。 (6)梱包・包装 良品となったリードフレームはコンタミの発生の無い OPP(Oriented polypropylene)フィルムなどで包装され,ロッ ト管理が可能な形で梱包され出荷される。梱包・包装におい ては輸送中のストレスによる変形が発生しないように合紙や スペーサ,場合によってはプラスチックケースが用いられて いるが,異物やアウトガス,吸湿などをコントロールしない とイオンコンタミの上昇,酸化による変色やステインの発生 などが生ずる。
6 .リードフレーム用材料・装置
リードフレームを製造するためには当然のことであるが材 料と装置が必要となる。材料として使用されるものには下記 のようなものがあり,多くの大手企業も参入している(図 11)。 6.1 金属材料 コバール,あるいは鉄,場合によってはステンレスやクラッ ド材といった素材も使用されることもあるが,リードフレー ム用の素材は鉄とニッケルの合金である 42 材とリードフ レーム用銅合金が主体となっている。これらの素材はエッチ ング用,スタンピング用それぞれの仕様に応じた板厚,幅, 表面性状,形状でリードフレームメーカに納入される。もと もと 42 材はコバール材に用いられるコバルト価格の高騰か 図 10 リードフレーム製造プロセス概要 図 11 リードフレーム関連産業構造 *3 フォトレジスト用アートワークの設計に際し,横方向へエッチン グが進行することを前提にした最終製品の寸法とアートワークの 寸法の差リードフレームと表面処理 ら代替材として使用されるようになった。熱膨張係数が Si チップに近いことから DRAM などチップサイズの大きい半 導体には適しているが,価格は銅合金に比較し高いことと, 電気・熱伝導度が低いこと,全面パラジウムめっきには適さ ないことなどの理由で最近は減少の傾向にあり,参入メーカ も限られている。 一方,銅合金はコネクタ用途と重複する部分もあり,参入 メーカも多い。板厚が 0.25mm 以上のリードフレームや異型 材の場合には強度の問題はあまり無く,加工性や耐食性,必 要とされる熱伝導度からりん青銅や純銅に近い物が使用され てきた。しかしパッケージの薄型化や微細化に対応し, 0.2mm, 015mm, 0.125mm さらには 0.1mm と板厚が薄いもの になると,すべてのプロセスにおいて変形が生じない程度の 強度を持つ必要があり,さまざまな合金が開発された。一般 的には電気伝導と強度の相関から高伝導・中強度,中伝導・ 中強度といったように分類され,合金の強化機構からコルソ ン系,固溶強化系,りん青銅系などと分類することもできる。 こうしたリードフレーム用の銅合金については基本特許が切 れたものについては複数のメーカが製造することもある。参 入メーカは 10 社前後ある。 6.2 フォトレジストと剥膜液/金型とプレス油 エッチング加工においてはアートワーク(フォトマスク) フォトレジスト(液状またはドライフィルム)エッチング液 (塩化第二鉄または塩化第二銅)剥膜用の薬品(アルカリなど) が必要となる。また,スタンピングでは金型とプレス油が必 要となる。 アートワークや金型はリードフレームメーカの大切なノウ ハウであり,大手リードフレームメーカでは内作または限ら れた協力会社に限定して作製しているケースが多い。また めっき後に施される機械加工においても金型が必要となるが, 中小の金型メーカが金型管理を含めリードフレームメーカを サポートしたり,金型メーカが機械加工を担当したりする ケースがエッチングリードフレームメーカの場合にはよくみ られる。 フォトレジストとしては,ドライフィルムかカゼインまた は PVA を主成分とする液状のレジストが用いられている。 6.3 表面処理剤 スタンピングあるいはエッチングによって形状が完成した リードフレームには,前述のようなさまざまな表面処理が施 される。場合によると信頼性に関わる不良を発生させること もあり,薬剤の選定,管理は大切となる。 6.4 めっき薬品 リードフレームに使用されるめっきは,銅ストライクめっ き,ニッケルめっき,金めっき,銀めっき,パラジウムめっ き,ニッケル - パラジウム合金めっき,すず ︲ ニッケル合金 めっきなどである。特にめっき厚の厚い(1 ~ 10μm)銀など のめっきは噴流により電流密度を上げた部分高速めっきが採 用されている。パッケージングの最後にはアウターリードの 外装めっきとして,すずめっき,すず ︲ 銅合金めっきなどが 施される。 6.5 固定テープ,LOC テープ,QFN テープ リードフレームにポリイミドのテープが用いられ始めたの は 64pin DIP の変形防止であった。この場合はチップからの 距離も遠く,リード間の間隔も広かったため信頼性に影響は ほとんど無かったが,208pin QFP に用いられるようになる とイオンコンタミ,マイグレーション,封止樹脂との密着性 など要求品質が厳しくなり,サプライヤも限られていた。ま た,DRAM 用の LOC テープは固定テープと同様ポリイミド テープをベースとし,両面に接着剤が塗布されている。この 場合はさらにボンディング性も必要となっている。またここ 数年需要が増加しているリードの無い SON や QFN などでは 樹脂封止時に樹脂の漏れを防止するテープをリードフレーム 裏面前面に貼った状態で出荷することもある。 6.6 めっき治具/電着レジスト 材料とはいえないが,部分銀めっきの場合に使用するめっ きマスクはスパージャと呼ばれるめっき液流を制御する治具 にめっきエリアにあわせたマスクをシリコーン樹脂で貼り合 わせて作製している。また QFN のようにめっきエリアが狭く, めっきのサイドや裏へのまわり込みが許されない場合には電 着レジストがめっきのマスクとして用いられることもある。 6.7 製造装置 製造装置としてはプレス機,エッチング装置,めっき装置, ダウンセットマシーン,テーピング装置,先端カット機,検 査装置などが必要となるが,一貫ラインあるいはいくつかの 工程を繋げた装置がある。Taping + Down Set +先端カット +外観検査,エッチング+めっき+外観検査などリードフ レームメーカが各々の基準で一貫ラインを設計・製造するこ ともある。 スタンピング加工用のプレス機そのものは大手もメーカの ものを使用するが,搬送機構やダウンセットなどの簡単な機 械加工の装置は内作か中小メーカが作製することが多い。一 方,めっき装置やエッチング装置については,自作より専業 メーカのものを購入するケースが最近は増えている。また検 査に関しても変形,汚染,見逃しを減少するために CCD や レーザを用いた自動検査機が大手メーカでは主たる検査方法 となっており,画像処理メーカなどがこれをサポートしてい る。 また大手リードフレームメーカでも,すべてを一貫で自社 内で製造するケースは少なく,検査,トリミング,めっき, ダウンセット,テーピング,先端カットなどめっき専業メー カや機械加工専業メーカへ外注するケースも多々見られる。 またエッチング専業メーカがエッチング完了後,めっき前の リードフレームを作製し,めっき専業がめっきすることもあ り,大中小規模の企業が複雑に絡みあった産業構造を形成し ているのがリードフレーム業界である。
7 .今後の技術課題
他の部材と同様,価格に対する要求は極めて強いため,生 産性の向上,歩留まり向上が常に求められているが,これか らのリードフレームについては下記のような課題が存在する。 (1)標準化 ここ 1 ~ 2 年,金,銅,パラジウム,ニッケル,樹脂など プラスチックパッケージ用の素材の高騰が目立っている。 パッケージの外形や寸法は規格化されているが,リードフ総 説 レームの外形や素材については各社独自に開発,評価を進め, それがひとつの競争力となっていたため標準化はあまり進ん でいない。しかしすでに開発が殆ど必要とされない従来型の リードフレームにおいてはその外形や寸法精度など業界全体 で評価方法を含め標準化をはかり,環境対応と無駄の排除を 行う時期に来ている。 (2)DFM リードフレームの素材から製造プロセス,さらにパッケー ジングプロセスにいたるすべての工程や材料について DFM (Design for Manufacturability)の思想を取り入れる必要があり,
単なるプライスダウンを求めるのではなく,トータルプロセ スにおけるリーズナブルなコストダウンをはかり,産業全体 を健全なものにすることも必要である。こうしたためにはノ ウハウや設計を初めとするさまざまな情報をきちんとデータ ベース化し,可視化すること,つまり製造をサイエンスにす る必要がある。 (3)トレイサビリティ 半導体の信頼性が単なる製品そのものの信頼性を向上させ るだけでなく,トレイサビリティの確保も要求するように なって来た。高価な MPU やメモリーなどでは模造品も存在 するようになり,その被害だけでなく,模造品の解析や対策 には膨大なコストがかかっている。また模造品を用いた機器 が重大な事故を起こすこともありうる。リードフレーム一つ 一つに ID をつけることは事実上不可能に近いが,業界全体 で知恵を絞り,トレイサビリティの確保する方法を確立しな くてはいけない。 (4)パッケージとしての信頼性の向上 今後,半導体を多く使うアプリケーションには自動車,医 療機器,サーバーなどが挙げられ,携帯電話やデジタルカメ ラ,液晶テレビ,音楽プレイヤなど民生機器と比較し,より 高い信頼性と高機能が半導体に求められることになる。半導 体用パッケージのメインのサブストレートであるリードフ リームは技術的にも既に成熟したものではあるが,さらなる 信頼性向上にむけた技術の改善が必要である。 (5)新規産業への技術展開 リードフレームやその技術を生かしたプロセスをこれから 成長する技術に応用することも必要である。ナノ,バイオ, MEMS などさまざまな研究がなされている技術の多くは最 終機器に実装されて使用される。こうしたところに機械加工, エッチング,めっき,さらには高度の分析技術を備えている リードフレーム技術と産業を構成している企業を有効利用す ることも必要である。残念ながら日本での製造ではなかなか 利益が出なくなっているリードフレームも,そのインフラを 用いて技術の水平展開を行い,新たな製品を創造することで 活性化する必要がある。
8 .おわりに
半導体産業はその設備投資の負担が大きく,しかも少しで も市場が低迷したり,在庫が増加すると急速に価格が低下し, 赤字会社が増加する,という不健全な構造になってしまって いる。技術の継続的な進歩と絶え間ない信頼性の向上を実現 するためには,素材から最終製品に至るまでの Total Process Solution を対等の立場で追求する必要がある。日本のリード フレームメーカのシェアや技術はまだ世界をリードしている だけでなく,素材メーカ ,薬品メーカ,装置メーカ,そし て半導体メーカと日本語でいつでも十分な議論ができる環境 にある。さらに大手リードフレームメーカの多くは各々がほ ぼすべての半導体メーカ大手とのビジネスを展開している大 企業の一部門であることから,中立な立場で,新たな,そし て健全な産業構造を構築するリーダシップをとることを期待 したい。 リードフレームの生産技術,表面処理技術には,いろいろ ユニークなものが含まれているが,今まで,特に学会誌など であまり紹介されることはなかった。このような技術の要素 が,今後,多方面にも応用されるとよい。 (Received November 28, 2008)参考資料
半導体パッケージング技術の具体的な技術資料や後工程ビ ジネスについては,下記セミナーや技術情報誌を参照してい ただきたい。 ●展示会・セミナー(1)SEMI 例年12月にSEMICON Japan 開催
同時にSTS(SEMI Technology Symposium)や技術ワーク ショップIPSS(International Packaging Strategy Symposium) (2)JPCA 例年6月に JPCAショー開催 セミナーも併設 (3)Internepcon/ICP 例年1月にショーを開催 セミナーも併設 (4)ISSEC / 半導体新技術研究会 年6 ~ 7回のセミナー実施 ●学会誌ほか (1)エレクトロニクス実装学会 会誌および春・秋講演大会 (2)日経マイクロデバイス(日経 BP 社) (3)日経エレクトロニクス(日経 BP 社) (4)Semiconductor FPD World(㈱プレスジャーナル) (5)エレクトロニクス実装技術(㈱技術調査会 月刊誌) (6)大塚寛治,宇佐美保;半導体パッケージング工学(日経BP社) (7)半導体新技術研究会編 村上 元監修,最先端半導体パッケー ジ技術のすべて(工業調査会)