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が 国 において 社 会 的 要 請 の 強 い 認 知 情 動 などをはじめとする 高 次 脳 機 能 の 障 害 による 精 神 神 経 疾 患 に 対 して 脳 科 学 の 基 礎 的 な 知 見 を 活 用 し 予 防 診 断 治 療 法 等 における 新 技 術 の 創 出 を 目 指 し

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Academic year: 2021

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(1)

統合失調症発症脆弱性因子の新たな候補を同定-統合失調症発症の予測・診断に 道筋- JST基礎研究事業の一環として、名古屋大学大学院 医学系研究科の貝淵 弘三 教授と尾崎紀夫教授らは、藤田保健衛生大学医学部の岩田仲生 教授らと の共同研究で、YWHAE 遺伝子を新たな統合失調症発症脆弱性因子注 1)の候補とし て同定いたしました。 統合失調症は世界人口の約1%が発症する重篤な精神疾患です。統合失調症は 複数の遺伝的要因と環境要因の組合せで発症する多因子疾患だと考えられてい ます。貝淵 教授らは、既知の統合失調症発症脆弱性因子である DISC1 (Disrupted in schizophrenia 1)が関与するシグナル伝達経路が統合失調症の発症メカニズ ムと深く関与していると考え、DISC1 相互作用分子を生化学的手法により同定し、 日本人統合失調症患者のゲノム情報を用いた関連解析を行いました。その結果、 14-3-3epsilon をコードするYWHAE遺伝子のプロモーター領域に存在する一塩基 多型(SNP : Single Nucleotide Polymorphism)注 2)と統合失調症との関連を見

出しました。この SNP を持つ群は YWHAE 遺伝子産物の発現量が上昇しており、 統合失調症を発症する確率が低い事を見出しました。また、Ywhae遺伝子産物が 減少しているヘテロノックアウトマウスが、統合失調症の中間表現型注 3)である 作業記憶に弱い障害を示すことを見出しました。 本研究成果は統合失調症発症メカニズムの全貌に迫ると共に、遺伝子診断に よる統合失調症発症リスクの予測法の確立に道筋を示す物であります。 本研究成果は、2008年10月3日(米国東部時間)発行の英国科学雑 誌「Human Molecular Genetics」に掲載されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究 (CREST) 研究領域:「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技 術の創出」 研究総括:樋口 輝彦(国立精神・神経センター 総長) 研究課題名:神経発達関連因子を標的とした統合失調症の分子病態解明 研究期間:平成19〜23年度 JSTはこのプロジェクトで、少子化・高齢化・ストレス社会を迎えたわ

(2)

が国において社会的要請の強い認知・情動などをはじめとする高次脳機能の障 害による精神・神経疾患に対して、脳科学の基礎的な知見を活用し予防・診断・ 治療法等における新技術の創出を目指しています。 <研究の背景と経緯> 統合失調症は高い遺伝性を持つ重篤な精神疾患です。統合失調症の発症機序 は未だ不明ですが、シナプス接続の異常を含む神経発達および神経変性疾患で あると広く受け入れられています。これまでの研究によって複数の統合失調症 発 症 脆 弱 性 因 子 が 複 数 同 定 さ れ て い ま す 。Disrupted-in-schizophrenia 1 (DISC1)遺伝子は統合失調症発症脆弱性因子の有力な候補です。DISC1 は大脳皮 質の神経発達に関与することが知られています。貝淵 教授らはこれまでに DISC1相互作用分子を生化学的手法により同定し、DISC1 が微小管依存性モータ ー分子であるキネシン 1 とその積荷分子である NUDEL/LIS1/14-3-3epsilon 複合 体または Grb2 との結合を仲介する積荷受容体として機能することを報告しまし た(図 1)。本研究では、DISC1 が関与するシグナル伝達経路が統合失調症の発症 に深く関与しているという考えに基づき、DISC1 相互作用分子群について日本人 統合失調症患者ゲノム情報を用いた関連解析を行いました。 <研究の内容> 1. DISC1 相互作用分子と日本人統合失調症との遺伝学的関連解析 DISC1 相互作用分子をコードする遺伝子上に存在する SNP をマーカーとして、 統合失調症患者および健常者のゲノム情報を用いた関連解析を行いました。そ の結果、14-3-3epsilon タンパクをコードするYWHAE遺伝子上の SNP において有 意差が得られました。 2. SNP の機能解析 本 SNP は YWHAE 遺伝子の開始コドン上流の 5’領域に存在していたため、遺伝 子産物の発現量に影響を与えるのではないかと考えました。SNP を含む領域を PCR により増幅し、ルシフェラーゼアッセイにより転写活性を調べた所、マイナ ーアレルである C タイプを含む配列において転写活性の上昇が確認されました。 また、本 SNP を持つ健常者のリンパ球における YWHAE 遺伝子産物の量を測定し た結果、mRNA 及びタンパク質の両方において発現量の上昇が確認されました。

(3)

3. ノックアウトマウスを用いた行動解析 YWHAE 遺伝子単独変異の個体に与える影響を調べるために、マウスにおける YWHAEホモログであるYwhaeのヘテロノックアウトマウスを用いた行動解析実験 を行いました。その結果、Ywhae遺伝子産物の減少したマウスは統合失調症の中 間表現型として注目されている、作業記憶注 4)に弱い障害を持つ事が明らかにな りました。 <今後の展開> 統合失調症はシナプス接続の異常を含む神経発達および神経変性疾患として 広く受け入れられていますが、発症に関わる分子メカニズムが不明なため具体 的な治療のターゲットが絞れませんでした。 本研究成果によって、DISC1 相互作用分子をコードするYWHAEは新規統合失調 症発症脆弱性因子候補であり、その遺伝子産物である 14-3-3epsilon の発現量 を増加させる SNP は統合失調症の発症率を低下させる事を見出しました(図 2)。 統合失調症は経時的に症状が悪化するため、早期の診断および治療が重要で ある事が知られています。本研究は、統合失調症脆弱性因子の遺伝子配列を調 査する事で、統合失調症の発症リスクを予測することが可能である事を示して います。今後はさらなる発症脆弱性因子の同定を進める事で、統合失調症発症 機序の解明と、その知見に基づいた発症予測・診断方法の確立を目指します。 <参考図> <用語解説> 注1)発症脆弱性因子 変異が生じることで疾患を発症する確率を上昇させる因子。 注2)一塩基多型(SNP) ゲノム塩基配列中に見られる一塩基が変異した多様性のうち、その変異が集 団内で 1%以上の頻度で見られる物。 注3)中間表現型 疾患と関連した遺伝性のマーカーであり、疾患の状態非依存的、つまり発症 していない状態でも現れる表現型。

(4)

注4)作業記憶

情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程に関する理論的な枠組 み。近年統合失調症患者において作業記憶障害を持つ群が有為に多い事が報告 され、統合失調症の中間表現型注 3)の一つとして注目されている。

<掲載論文名>

“Identification of YWHAE, a gene encoding 14-3-3epsilon, as a possible susceptibility gene for schizophrenia”

(統合失調症発症脆弱性因子の新たな候補としての YWHAE/14-3-3epsilon の同 定) ■問い合わせ先 名古屋大学大学院医学系研究科 所属・職名:薬理学 貝淵弘三 教授 または,田谷真一郎 講師 電話:052-744-2074 または 052-744-2075 FAX:052-744-2083 E-mail: [email protected] E-mail: [email protected] ■広報担当 名古屋大学医学部・医学系研究科 総務課総務第一掛(登内:とのうち) 電話:052-744-2774 FAX:052-744-2785 E-mail:[email protected]

(5)

細胞体

軸索

成長円錐

14-3-3

DISC1

P

LIS1

NUDEL

Grb2

DISC1

14-3-3

DISC1

P

LIS1

NUDEL

Rac1

IQGAP1

微小管

(-)

Grb2

MAPK

骨格制御

(+)

タンパク質輸送

タンパク質輸送

CLIP170

受容体

接着分子

細胞外マトリックス

アクチン

フィラメント

(Taya et al., 2007; Shinoda et al., 2007)

図1

DISC1による軸索伸長機構:DISC1はキネシンモーター

とNUDEL/LIS1/14-3-3

複合体を繋ぐ積み荷受容体として働く

(6)

YWHAE遺伝子

一塩基多型

グアニンタイプ

シトシンタイプ

14-3-3epsilon

タンパク質発現量

統合失調症

発症リスク

参照

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