1.梅田モデルの検証 昭和南海地震(1946、M8.0)の 1 週間前から直 前にかけて、紀伊半島から四国の太平洋沿岸の広 い範囲で、井戸水が減った或いは涸れたという報 告がある(水路局、水路要報、1948)。南海地震 の震源域・固着域に関する最近の研究成果と、異 常が報告された井戸の地形的特徴を併せて考察 することにより、梅田・他は地震前に井戸水が減 少するメカニズムについてのモデルを提唱して いる(地震予知連絡会会報、第 70 巻、2003)。 モデルには検証が必要である。梅田モデルにお いては、地震発生前のプレスリップによる隆起を 前提としている。橋本は、昭和南海地震のコサイ スミック断層モデルを基にシミレーションをお こない、地震前の地下水位低下がみられた地域が プレスリップによる隆起地域と矛盾しないプレ スリップ断層モデルを提唱した(地震予知連絡会 会報、第 70 巻、2003)。これにより、梅田モデル は一つの現実性を得たといえる。一方、地震前の 隆起を直接裏付けるような明確な観測事実は見 出されていない。そこで我々は、地震前の隆起と 関連の可能性が高いと考えられる地震前の異常 潮位に注目し、史料・証言等による調査を試みた。 2.須崎市野見湾の異常潮位 地震前の異常潮位についてはいくつかの報告 の中に散見するが、現在までの我々の調査の範囲 で、異常潮位の原因が海底の地殻変動(隆起)で ある可能性を示唆するものとしては、高知県須崎 市発行(1995)「海からの警告」がある。同書に、 地震発生前日 1946 年 12 月 20 日の夜半から地震 発生直前までの、須崎市野見湾における異常潮位 についての漁師の証言を纏めたものがある。それ によれば、日没を待って外海の漁場に向かった漁 船が操業を終え、帰港の途中、異常な干潮に遭遇 し、上げ潮になっても潮位が上がらず船を舫うの に難儀した事態が詳しく記されている。海底の隆 起の可能性を覗わせる、地震発生数時間前から発 生した異常に低い潮位を示す貴重な資料である。 体験者の証言を交えて紹介する。 図 1.漁師の証言に基づく須崎市野見湾における潮位異常(「海からの警告」、1995 付図) D-17 資料・証言による昭和南海地震前の四国の隆起について ○重富國宏・浅田照行・梅田康弘・辰己賢一
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