自治体福祉政策の実施過程における生活支援ハウス
の意義 : その設置目的と実際の機能
著者
越田 明子
雑誌名
東洋大学大学院紀要
巻
51
ページ
115-140
発行年
2014
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007303/
要旨
本研究は、自治体福祉政策を実現するために小規模自治体が独自の取り組んできた生活支 援ハウスの運営について理解することを目的とする。A県の30自治体計41施設について調査 し、設置目的と実際の機能について明らかにした。 各自治体は、生活支援ハウスの運営を通して高齢者のニーズに応えようと試みていた。そ して、1)地理的自然環境要因によるニーズに応える居住機能、2)低所得者に配慮した居住 機能、3)虚弱者への生活支援機能と介護支援機能、4)災害や虐待からの緊急保護機能、5) 家族の代替機能を備えていた。 特に、居住機能は制度開始から一貫して過疎地域のニーズに応え、実際の生活支援機能や 介護支援機能は、高齢化の進行とともに拡大していた。合わせて、応能負担であるため低所 得高齢者へ特別に配慮していた。一方、保護機能や代替機能は国の要綱にもなく当初は重要 視されていなかったが、新たなニーズに対応し、自治体にとっては潜在的機能でもあり残余 的な福祉機能であった。これらの取り組みは自治体独自の裁量に基づく施策の機能であり、 自治体福祉政策に期待されるものである。キーワード
自治体福祉政策、政策実施過程、生活支援ハウスの機能、地域高齢者のニーズ目次
Ⅰ.研究背景 1.高齢者福祉政策における基礎自治体の役割 2.自治体福祉政策の一施策としての「生活支援ハウス運営事業」自治体福祉政策の実施過程における生活支援ハウスの意義
―その設置目的と実際の機能―
福祉社会デザイン研究科社会福祉学専攻博士後期課程3年
越田 明子
Ⅱ.目的および分析枠組み Ⅲ.調査の概要 1.調査対象 2.調査期間および方法 3.調査内容 4.倫理的配慮 Ⅳ.結果 1.入居者の居住形態 2.併設事業 3.生活援助員の役割 4.定員 5.入居者の特徴 6.支援ハウスの設置目的と実際の機能 1) 設置時にみとめたニーズと期待した機能 2) 入居者のニーズと実際の機能 7.退去者の退去理由 Ⅴ.考察 1.地域の実情に応じた居住機能 2.拡大機能としての介護支援機能 3.潜在的機能としての低所得者支援 4.潜在的機能としての生活支援機能と保護代替機能 5.まとめ-支援ハウスの意義 Ⅵ.結論
Ⅰ.研究背景
1.高齢者福祉政策における基礎自治体の役割 わが国の高齢者福祉政策は、1990年の福祉八法改正等を機に、在宅福祉サービスの法制 化、福祉サービスの市町村への権限移譲、市町村老人保健福祉計画策定の義務化等により、 基礎自治体の責任と役割を増大させた。 1994年の高齢社会福祉ビジョン懇談会による「21世紀福祉ビジョン-少子・高齢社会に向 けて」は、社会保障の姿として、住民に身近なサービスはできるだけ市町村を中心にして、 一元的、計画的に実施できる体制に移行し、福祉面での規制緩和を含め、基盤整備を行い、 民間部門の活用によるサービスの提供を促進していくべきとした。そして、2000年には社会 福祉基礎構造改革によって、措置制度から契約制度への福祉サービス利用方式の転換が本格的に進められ、同年の介護保険法施行は、分権化や計画化、そして福祉サービスの普遍化、 多元化をさらに促進した。 一方、同時期の地方分権一括法の制定や、2000年の市町村の合併の特例に関する法律の改 正は、行財政の効率化・合理化を目的に人口1万人未満の小規模自治体を解消するための市 町村合併を推進した1。これにより、基礎自治体の数は減少したが、存続する小規模自治体 は、依然として財政力が低く人口減少や高齢化、過疎化による課題を抱えている2。 全国に先駆けて高齢化の課題に直面してきた小規模自治体は、地理的環境要因も相まって 地域共同体の高齢者生活支援機能の低下や(山本1996;浜岡1998;栗田2000;大野2005)、 福祉人材の不足、そして民間参入が厳しい故の介護保険サービスの不足といった問題が指摘 され続けてきた(高野1999・2003;平岡2006;山本2007;川村2014)3。 地域の福祉課題については、地域の資源や条件によって取り組むべき方向が異なる。ま た、高齢者の生活問題については、普遍的なニーズに対応する介護保険制度がよりよくカバ ーするよう、保険者である自治体が規制と基盤整備を講じなければならない。しかし、多く の高齢者の生活を包括的に支援するには、自治体内の介護保険事業のみでは不十分であり、 とりわけ小規模自治体のように、家族や地域、その他の団体が担えない場合は、実情に応じ た自治体独自の福祉施策が必要になる(河合:2012)。 2.自治体福祉政策の一施策としての「生活支援ハウス運営事業」 地域の実情に応じた自治体独自の福祉施策は、自治体の財政状況にも左右されるが、自治 体側のニーズ把握の力量や理念に大きく影響される。しかし自治体における福祉施策の財源 の多くが、国の補助金によって規定され続けてきたことや、在宅老人福祉事業のほとんどが 介護保険事業に転換したため、介護保険が及ばないニーズに応える独自の施策展開例は少な い。 このような中、本研究で着目した「生活支援ハウス(旧高齢者生活福祉センター)(以下、 支援ハウスとする)4運営事業」は、1989年の「高齢者保健福祉推進十か年戦略(以下、ゴー ルドプランとする)」によって、過疎地域に限定して400か所の設置目標が推進された事業で ある。 1997年の介護保険法の制定にともない、1998年度第3次補正予算において過疎地域等の限 定が撤廃され、全国での設置が可能となり、「今後5か年間の高齢者保健福祉施策の方向(ゴ ールドプラン21)」では、特別養護老人ホーム(以下、特養とする)退所者やひとり暮らし に不安を感じている生活支援を要する高齢者が居住できる施設として、また特養の多機能 化・機能転換の併設施設5として、5年間の目標数を1,800か所と大幅に増やし設置が推奨され てきた。本研究で協力を得たA県設置自治体の高齢者保健福祉計画をみると、現在、その多 くが養護老人ホームと列記した「高齢者の福祉施設」や、「高齢者の住まい」として位置づ
けられている。 この支援ハウスは、デイサービスセンター等に居住部門を合わせて整備した小規模多機能 施設であり、単身もしくは夫婦世帯で独立して生活することに不安のある高齢者に対して、 介護支援機能、居住機能、交流機能を総合的に提供する6。事業主体は市町村で、入居決定 も市町村の判定による。あわせて設置や運営基準は条例で定め、介護保険制度が応益負担で あるのに対して、応能負担での利用を可能としてきた。 そして、概ね自立した高齢者を対象7に生活援助員が安否確認や見守り等を担ってきたが、 入居者の虚弱化等にともない、各種相談、助言を行うとともに、緊急時の対応や、必要時に は介護サービス等の利用手続きの援助、地域住民との交流事業や場の提供も担う。 また、当初は国庫補助金による施設整備や運営であったが、三位一体の改革で在宅福祉事 業費補助金の税源移譲対象となり、2006年度からその運営費は一般財源化し、施設設置費は 交付金に代わり現在に至る8。 以上をふまえ、国の支援ハウス設置意図には、3つの段階があることを指摘することがで きる。 第Ⅰ期は、1990年から1997年のゴールドプランにより過疎地域に設置を推進した時期であ る。そして1998年から2005年の第Ⅱ期は、地域限定を解除し介護保険制度の全国展開という 政策意図をふまえ、介護保険施設の受け皿や多機能化のための施設として期待された時期で ある。さらに第Ⅲ期の2006年以降は、運営財源を国庫補助から一般財源化して、その運営に 自治体独自の裁量を求めるとともに、施設整備費としてはより地域の実情に応じた機能をも つ福祉空間整備のための一施設として期待された時期である(越田2014)。 以上のような支援ハウス運営事業は、要綱による規定のため、期待される機能は居住から 介護支援機能まで広範囲に渡り、設置自治体の実情に合わせやすい施策である。また、全国 の中でも小規模自治体が多いA県の設置状況をみると、近年、地域ニーズに応じて増設もし くは新設する複数の自治体が出現しており9、自治体福祉政策における一事業ではあるが、 その機能は今日の自治体福祉政策のあり方と方向性を示唆するものと推測する。
Ⅱ.目的および分析枠組み
ここで、福祉政策の側面をとらえる視点について確認する。福祉施策の策定にあたっては、 変動するニーズと合致したものにするために、ニーズを十分に把握する必要がある。そして、 現実の施策は意図したことと異なる働きをすることをふまえて、制度が期待した目的と実際 に到達した結果との関係について観察する必要があるという(Titmuss=1958:17)。 しかし、政策決定過程は複雑であるので、政策決定者の目的を正確に知ることは難しく、 制度の目的を知るには、何のために利用されるかという視点からその機能をみたほうがよい という(Spicker=2001:84-86)。ゆえに、制度運用における当初の目的と実際について、施策の機能を分析することが有用であるならば、施策の顕在的機能と意図しなかった潜在的機 能の分析は(Merton=1969、Lofland,J. & Lofland, L. H.=1997:218)、まさに施策の実施過程 における自治体の独自性や運用のあり方を示唆すると思われる。 したがって、本研究では、自治体が独自に取り組む福祉施策の一事例として、この「支援 ハウス運営事業」に着目し、自治体福祉政策のあり方と方向性を検討することを目的とし た。自治体が国の要綱をうけて制度を運用するときに、どのような地域ニーズを把握して支 援ハウスを設置してきたか確認したうえで、入居している高齢者の特徴や生活状況、そして 入居理由、退去理由から、支援ハウスが実際に担った機能について把握し、その関係につい て分析することにする。
Ⅲ.調査の概要
1.調査対象 全国の中でも支援ハウスを設置している自治体が多いA県内の30自治体(41施設)を調査 対象とした。30自治体の特徴として、設置自治体の76%が国のいう人口1万人未満の小規模 自治体であり、それらの小規模自治体における平均高齢化率は40%である。また設置当初は 小規模自治体であったが、現在は合併して市になったところもある。しかし依然としてその 地域は90年代よりも過疎化が進行しており、これを加えると全体の86%が過疎高齢化する環 境にある10 また先に述べた政策意図の段階別設置数は、第Ⅰ期11施設、第Ⅱ期は21施設、第Ⅲ期は9 施設であり、第Ⅱ期に最も多く設置された。また、第Ⅲ期は増設が多く、新設も2施設ある。 2.調査期間および方法 用いるデータは、2008年度から継続的調査を実施して得たものである。支援ハウスは、わ が国の福祉政策の変遷過程において、様々な意図をもって取り組まれてきた施策であるが、 支援ハウスを事例とした制度政策研究はこれまでほとんどない。したがって本研究開始時は、 不明な点が多かったため、情報を集め、帰納的に仮説を構築しながらすすめた。 はじめに、2008年度から2009年度にかけてすべての自治体窓口および支援ハウスを訪問し て、設置背景と運営状況について、ゆるやかな構造化しないインタビューを実施した。他の 自治体で話題となった内容については、当該自治体ではどのような状況にあるかというよう に、徐々に具体的な質問を追加して、半構造化インタビューを実施するに至った。また、担 当者も他自治体の様子を知ることが少ないため、既存の記録を確認しながら説明するという 場面もあった。そして運営課題を抱えている自治体から、他自治体の状況について尋ねられ ることもあった。 支援ハウス運営事業の設置主体は自治体であるが、運営は、直営もしくは委託された社会福祉法人が担う。ゆえに、多くの自治体で設置と運営の主体が異なるため、データの収集は 難しく慎重に行う必要があった。自治体担当者の数年毎の交代や、設置時のことを知る職員 がいない場合は、詳細情報を得ることができない。そして通知や予算の他、設置や運営の経 緯について自治体側が記録に残していないこともある。さらに、運営の実態や方針について も同様のことがあり、委託先社会福祉法人の担当者の方がうまく説明できるという場合もあ る。したがって、各自治体担当者への1回の半構造化インタビューのみでは不十分であった。 さらに訪問調査によって得られた結果からは、多数の変数が抽出され、それが妥当な範囲の ものであるのか否か判断できなかった。 そこで、より正確なデータを収集するために、訪問調査の結果から質問紙11を作成し、 2012年5月から6月にかけて郵送もしくは訪問し、再度自治体担当者に確認した。そして、訪 問調査時に得たデータと質問紙調査から得たデータと合わせて、分析の資料とした12。 インタビューの内容はフィールドノートに記し、文書データとして保存し、内容毎にコー ディングした。可能な限りインタビュー内容をそのまま記録したが、頻回に語られる内容に ついては、定性的コード名をノートにそのまま記した。その後、文書をセグメント化して、 コードと文書セグメントからなる事例-コードマトリックスを作成し、各要素間の関係を分 析した13。 3.調査内容 調査内容は、設置年、運営形態、設置財源、運営費、定員、設置目的、併設事業、生活援 助員の役割、入居条件、入居理由、入居者の特徴(性別、年齢、自立度、利用料、食事状況 等)、退去理由、運営上の課題等である。このうち、本稿においては支援ハウスの機能に関 わる項目をとりあげる。 4.倫理的配慮 本研究の対象は、自治体における設置運営の実際であり、個人を特定するデータは扱って いない。協力依頼時には、研究目的とデータ使用方法について文書および口頭で説明し了承 を得た。また協力を得た自治体へは複数回継続訪問を繰り返しデータの信頼性をあげた。
Ⅳ.結果
1.入居者の居住形態 支援ハウスの入居形態は多様であった。回答を得た33施設において、最も多かったもの は、自宅から転居し、新たな住まいとする「定住型(22施設)14」であった。次にみられたタ イプは、一時期のみ居住し目的が達成すれば帰宅する、もしくは他の施設に転出する「一時 対応型(16施設)」や「季節対応型(9施設)」であった。この「一時対応型」は、緊急時の他、養護老人ホームや介護保険施設の入所までの待機用中間施設として利用する場合も含ま れる。数は少ないが、畑の手入れや換気等を目的に、生活の拠点である支援ハウスと自宅を 往来する「自由往来型(4施設)」もあった。 また、ニーズに応じて「定住型」と「一時対応型」、すなわち長期でも短期でも入居可能 であるという施設が11施設、「定住型」のみが14施設、「一時対応型」のみが8施設であっ た15。 2.併設事業 多くの支援ハウスは、国の要綱にあるように「通所介護事業所」に併設されていた。回答 があった併設事業は、「通所介護事業所(29施設)16」、「訪問介護(17施設)、「短期入所(18 施設)」、「居宅介護支援事業所(15施設)」、「在宅介護支援センター(11施設)」、「地域包括 支援センター(11施設)」、「介護老人福祉施設(9施設)」、「認知症対応型共同生活介護(3施 設)」であった。 その他、「診療所(6施設)」、「共同作業所(1施設)」や「健康増進センター(1施設)」が あげられた。また併設でなくとも、隣接や徒歩圏内に、町村役場や、介護保険事業所等が整 備されている施設が多かった。 3.生活援助員の役割 生活援助員は、主に安否確認(13施設)や相談対応(22施設)、家族への連絡(14施設) といった生活支援や入居者の家族や事業者との調整等を担っていた。 日常生活上の具体的な支援として、「集会・茶話会の企画運営(9施設)」、「食事のセッテ ィング(8施設)」、「配食を届ける(5施設)」、「買い物に同行する(3施設)」、「通院に同行す る(2施設)」、「服薬の管理(3施設)」、「金銭管理(1施設)」等があけられた。 そして、併設する「通所介護事業所(6施設)」や「訪問介護(7施設)」、「短期入所事業所 (2施設)」、「居宅介護支援事業所(1施設)」の職員と兼任して働く施設もあり、多くは「日 中のみ対応(14施設)」していたが、数名で「日夜交代制(9施設)」をとる施設や「住み込 みで24時間対応(4施設)」する施設もあった。日中のみ生活援助員が対応するという施設に おける夜間のサポートは、シルバー人材センターを利用した宿直職員や委託法人の職員、直 営17では自治体職員による宿直担当者が担っていた。 4.定員 国の要綱によると、20名を上限として10名程度が定員である。A県支援ハウスの定員数は、 41施設459名で、1施設3名から19名、平均9名である。回答を得た34施設の実際の入居者は、 平均6.3名であった。全室入居者がいる施設もあれば、冬季の利用が主であるため他の時期
は空室が多いという施設もあった。 5.入居者の特徴 入居者の性別、年齢、自立度、利用料、食事状況について尋ねた。回答のあった施設の入 居者は214名であった18。支援ハウスは、以下のような入居者が生活を継続できるようサービ スを整えていた。 1)入居者の年齢 国の要綱では、60歳以上の高齢者を入居の対象としている19。2012年4月現在、A県の支援 ハウスの入居者は、男性27%、女性73%で女性の入居者が多く、全体の約半数(53%)が85 歳から89歳の80代後半の高齢者(64名)であった。次に80代前半が41名、90代前半が27名で あり、入居者の約75%が80歳以上であった(有効回答180名)。 2)自立度 入居者の自立度(有効回答206名)をみると、約35%が自立高齢者であった(73名)。要支 援・要介護状態にある人も入居しており、要介護1(39名)が最も多く、次に要介護2(31 名)、要支援2(27名)であった。また要介護3(10名)、要介護4(6名)、要介護5(2名)の 高齢者も入居している施設があった。要支援・要介護状態にある人の多くが通所介護と訪問 介護を利用していた。 3)利用料 約8割の自治体が、応能負担による利用料を条例で定めていた。多くが国の要綱に基づく 基準を採用していた20。独自に利用料を設定している自治体もあったが、月額数千円程の差 であった。また利用料を定額としている自治体もあったが、ほぼ応能負担の基準と変わらず、 月額数千円から1万円以内が多かった。その他光熱水費の負担があった。 回答のあった35施設の入居者154人の平均月額利用料は、1万円以下(約9200円)であっ た。自治体毎の基準には若干の差があったが、該当人数が多い利用料をみると、月額7,000 円(30名)、3,000円(29名)、0円(27名)、10,000円(21名)であった。また、要綱に基づき 「年収120万円以下の者は利用料0円」としている12施設をみると、入居者40人中27名(68%) が利用料0円すなわち年収120万以下であった。 4)食事状況 複数回答を可として、計493の回答があった。入居者は、「自ら買物にでかける(75名)」 者もいるが、山間部のため商店がなく食材の調達には「家族(66名)」や「移動販売(57 名)」、「店から配達(29名)」等を利用しており、83名が設置当初の要件でもある自炊によっ て食事を摂取していた21。 また、「通所介護(56名)」や「配食サービス(33名)」、「ヘルパーの調理(18名)」、「調理 員による食事提供(33名)」等の利用もあった。介護保険サービスを利用しない者でも、希
望者には併設の通所介護事業所や介護老人福祉施設が、食事の提供をするよう調整している 施設がみられた。また食事の提供のために、調理員が働いている施設もあった。入居者の多 くは、自宅での生活者と同じく、自立度に応じて、自炊と通所介護事業所での昼食や配食サ ービス等の様々なサービスを組み合わせて食事をしていた。 6.支援ハウスの設置目的と実際の機能 支援ハウスの入居者は平均80代後半で、自立から要介護度のある高齢者までが、生活援助 員の見守りや安否確認、食事の支援、併設事業のサービス等を利用しながら、支援ハウスで 生活していた。 一方、このような入居者の生活を可能にするために、自治体側が支援ハウス設置時に期待 した機能(設置目的)と、入居措置をして、入居者のニーズに応えようと試みた機能(実 際)について、国の福祉政策の変遷過程における支援ハウス設置意図の段階別に示したもの が、表1である。 なお、設置段階別にみた設置目的は、その時期に自治体側が把握した地域高齢者のニーズ に応えるために支援ハウスに期待した機能として整理した。一方、入居者の入居理由は、調 査時に回答した理由であるので、必ずしても設置時期と合致しているわけではない。ただし 地域の状況や高齢者の特徴、自治体内の介護サービス量によって、支援ハウスの機能整備に は自治体による一定の方針が影響すると推測できる。また、1990年代の第Ⅰ期に設置した自 治体と、近年に設置した自治体とでは経験も異なる。したがって、ここでは国の通知や要綱 に基づき自治体内に制度を導入して、設置段階別にその施設がどのような機能を整えてきた か確認する。具体的には、訪問調査と質問紙調査から得た、設置目的と入居者の入居理由、 退去理由から支援ハウスの機能について整理する。 また、支援ハウスの設置目的について、各自治体担当者から、最も多く回答された説明 は、国の要綱に基づく「単身や夫婦のみの世帯で家族による援助を受けることが困難な者で あって、高齢等のため独立して生活することに不安のある」高齢者に対して、「介護支援機 能、居住機能、交流機能」を提供することであった22。同じく、入居者の入居理由としても、 要綱にある対象者像が語られたので、上記の表現は除外して詳細事項のみを取りあげて検討 する。 1)設置時にみとめたニーズと期待した機能 多くの自治体が支援ハウスに多様なニーズの解決を求めていた23。設置時にみとめた最も 多いニーズは、①地理的自然環境要因によって地域生活に困難を抱える高齢者のニーズであ り、“積雪等による冬季生活の不安” や “買物や通院時の移動が難しい” “サービスの利用が できない” “集落が点在しているので高齢者向けの集合住宅が必要” という背景があった。
次に “母屋の老朽化や火災等で新たな高齢者向けの住宅が必要” “低所得者向けの高齢者住 宅が必要” という②住まいの確保に関するニーズであった。 また、③虚弱な高齢者の支援ニーズとして “介護老人保健施設退所後や病院退院後の支援 が必要” 等があげられた。 設置段階別にみても、第Ⅰ期から第Ⅲ期の支援ハウス設置の理由に、中山間地特有の課題 である①地理的自然環境要因に関する事項が多く、第Ⅱ期と第Ⅲ期には②住まいの確保ニー ズが増え、一貫して居住機能が期待されていた。 また第Ⅱ期以降には、③虚弱者の支援ニーズに対応する生活支援機能や介護支援機能を目 的として設置した自治体がゆるやかに出現していた。特に第Ⅲ期には “病院退院後の支援” を必要とする高齢者のために設置を試みた施設が増えていた。同様に第Ⅲ期には、国の要綱 にはない④虐待や災害時に対応する保護機能や、⑤家族介護や関係の問題に対応する家族の 代替機能をあげる自治体もあった(越田2014:21-24)24。 2)入居者のニーズと実際の機能 次に、入居者の入居理由から、各自治体が実際にどのようなニーズに応えてきたか、設置 時に期待した機能(目的)をふまえて確認する(表1)。 (1)全施設の傾向と特徴 実際の機能として、①自然地理的環境要因による居住ニーズや、②住まいの確保に関する ニーズに対応する居住機能を多くの施設があげていた。この居住機能について、第Ⅰ期・第 Ⅱ期は設置目的と同傾向にあったが、第Ⅲ期は、設置目的とした施設数よりも実際の方が少 なかった。 次に、実際の機能として “軽度のケアや見守り” を必要とする者への支援や、“養護老人 ホーム入所待機者への支援” “病院退院後の支援” “介護老人保健施設退所後の支援” “障害の ある者への支援” “医療的ケアが必要な者への支援” といった③虚弱者に対する生活支援機 能や介護支援機能がみとめられた。生活支援機能や介護支援機能は、設置時には取りあげら れていなかったが、実際には当初予定よりも約2倍の施設で対応した機能である。そして、 自宅での生活に不安がある “養護老人ホーム入所待機者” への支援は、設置の目的としては ほとんどみられていなかったが、第Ⅰ期から第Ⅱ期に該当者を受け入れる施設があった。 また、④虐待や災害等からの緊急保護を目的に入居者を受け入れたという施設が第Ⅱ期に 設置した施設に多かった。そして第Ⅲ期に、この保護機能を目的として設置した施設があっ たが、実際の保護はまだなかった。さらに、⑤家族介護や関係の問題に対応する家族の代替 機能については、設置目的としても実際の機能としても第Ⅰ期からみられ、第Ⅲ期には多く の施設で該当者を受け入れていた。
(2)機能別の傾向と特徴 以上、設置目的をふまえ、入居者の入居理由から実際の機能について概観したが、各施設 の状況を機能別にみると、次のような傾向があった。 中山間地域の多くの設置自治体で、点在集落の高齢化の課題をかかえており、①地理的自 然環境要因による居住ニーズに対応する居住機能をあげていた。第Ⅰ期から第Ⅲ期まで一貫 して設置目的としても実際の機能としても多かった。第Ⅲ期の実際は若干少なかったが、設 置後間もない増設施設が多く、以前よりも生活環境やサービスが整えられてきたことも影響 していたようである。 ②高齢者向けの住まいのニーズに対する実際の機能には、2つの特徴があった。1つめは、 中山間地域の高齢者のニーズを満たす機能としてもっともなものである。それは第Ⅰ期・第 表1 設置の各段階における生活支援ハウス設置目的と実際の機能(入居者の入居理由) 設置 実際 設置 実際 設置 実際 冬季の生活に不安がある.雪おろしや雪かきができ ない/雪が積もると家から出ることができない/集 落が点在しているので高齢者向け集合住宅が必要 9 10 8 8 8 4 25 22 山間部で暮らしているので買物や通院時の移動が難 しい 7 7 8 8 5 2 20 17 居宅介護(通所介護,訪問介護)サービスが少ない /移動時の身体的負担が大きい/職員による送迎や 訪問が危険で難しい 2 2 2 2 5 2 9 6 母屋の老朽化や火災等により新たな高齢者住宅が必 要/住宅改修に多額な費用がかかるので難しい/介 護度が低い人が利用できる自治体外の施設や住宅は 高額で利用できない 2 3 6 4 5 1 13 8 低所得者向けの高齢者住宅や居住型施設が必要/低 所得者が多い 3 4 5 5 5 1 13 10 軽度のケアや見守りが必要 - 3 - 4 - 1 - 8 養護老人ホーム入所待機時の中間施設として必要 - 2 1 4 - - 1 6 介護老人保健施設入所待機時の中間施設が必要 - - - - 1 - 1 1 介護老人保健施設退所後の支援が必要 - - 1 2 1 1 2 3 病院退院後の支援が必要 2 1 1 4 5 2 8 7 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)入所待機 時の中間施設として必要 - - 2 1 1 - 3 1 医療的ケアが必要な人が利用できる居住型施設が必 要 - - 1 3 - - 1 3 障害があるので支援がある居住型施設が必要 - 1 - 3 - 1 - 5 ④緊急保護ニーズ 虐待や災害等の緊急一時避難先が必要 1 - 2 5 4 - 7 5 短長期の不在家族の代替が必要 (冠婚葬祭,農繁期,日中独居等) 2 3 2 1 6 5 10 9 家族と不仲であるため生活を分離したい 1 1 - 3 4 4 5 8 表1 設置の各段階における生活支援ハウス設置目的と実際の機能(入居者の入居理由) 機能 ニーズ 具体的内容 第Ⅰ期 (11) 第Ⅱ期 (21) 第Ⅲ期 (9) 計 設置 実際 居住機能 ①地理的自然環境 要因による居住 ニーズ 54 45 ②住まいの確保に 関するニーズ 26 18 注5:多くの例があったとしてもカテゴリーが同一であると判断した場合,カウント1とした. 生活支援 機能 介護支援 機能 ③虚弱者の支援 ニーズ 16 33 保護機能 代替機能 22 22 ⑤家族の代替ニー ズ 注1:各期カッコ( )内数値はその時期の設置数 注2:「設置」は設置時に自治体が把握したニーズと支援ハウスに期待した機能(目的),「実際」は実際の入居者のニーズと対応し た機能である. 注3:各期の数値は,複数回答可としてヒアリングと質問紙調査の結果から著者が集計した該当施設数である. 注4:実際の機能は,入居者の入居理由を参考にした.
Ⅱ期に①の地理的自然環境要因によるニーズと合わせて、高齢者向け住宅や低所得者に配慮 した居住型施設のニーズに応じるものであった。 2つめの特徴は、①地理的自然環境要因によるニーズには依拠せず、低所得者向けの居住 機能を担った施設が、第Ⅰ期の終わりから第Ⅱ期にかけて5施設みられ、このうち3施設は養 護老人ホーム待機者にも対応していたというものである。環境要件やサービスがある程度整 えられている自治体において、このような運用をする施設がみられるようになっていた。(表 2)。 表2 住まいのニーズ対応する居住機能(設置目的と実際) 2 8 9 3 6 7 10 13 23 26 18 21 17 12 24 29 31 32 34 35 37 38 39 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ 機能 ニーズ 具体的内容 増設 ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ● ● ● ● ● ● ○ ● ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ● ● ● ● ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ● ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ● ● ● ● 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 設置 実際 ○ ○ ○ 設置 ○ 実際 ○ ○ ● ● ● ○ 設置 実際 設置 実際 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ 実際 ○ 設置 実際 障害がある 設置 実際 ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 要低所得者向居 住施設 表2 住まいのニーズ対応する居住機能(設置目的と実際) 施設(No.) 設置時期 居住機 能 ①地理的自 然環境要因 による居住 ニーズ 冬季不安・孤立 移動困難地域に 居住 介護サービス困 難地域に居住 ②住まいの 確保に関す るニーズ 老朽化等による 要高齢者向居住 施設 生活支 援機能 介護支 援機能 ③虚弱者の 支援ニー ズ 要見守り 養護待機者対応 (中間施設) 老健待機者対応 (中間施設) 老健退所者対応 病院退院者対応 特養待機者対応 (中間施設) 医療的ケアが必 要 注5:その他の留意点については,表1の注に準ずる. 保護機 能 代替機 能 ④緊急保護 ニーズ 被虐待・被災害 対応 ⑤家族の 代替ニーズ 同居家族の不在 家族と不仲 注1:分析の対象とした項目に該当した自治体のみピックアップして表を整理した. 注2:該当する施設に○印を記し,今回分析時に着目した施設と項目に●を記載した. 注3:増設施設を持つもしくは増設された施設は「増設」欄に○を記した. 注4:「機能」「ニーズ」「具体的内容」は表1と同じ項目であるが,「具体的内容」のみ要約した.詳細は表1を参照. 支援ハウスは、生活援助員による相談や見守り等の支援を備えた居住型施設である。した がって、生活援助員が勤務することによって生活支援機能を既に備えていると解釈すること もでき、あえて設置目的としてこなかった施設もあるようである。また、多くの施設が概ね 自立した高齢者の入居を対象としてきたので、設置時にニーズをみとめたとしても、要介護 状態にある者には他の介護保険サービスが対応するとして入居を想定していなかったように もみえる。しかし実際には、第Ⅱ期に、養護老人ホーム入所待機や退院後の人、障害のある
人や医療的ケアを必要とする人を受け入れていた。この中でも、退院後の人への対応を目的 として設置した数は多かったが、多くは第Ⅲ期に増設した施設の設置目的であったため、設 置目的と実際の関係では一致していなかった。第Ⅲ期に設置した施設においては、過去の設 置運営の経験もふまえ、予防的に設置目的としてあげたともいえるだろう(表3)。 表3 虚弱者に対する生活支援機能・介護支援機能(設置目的と実際) 2 3 4 11 8 9 6 23 13 30 15 16 26 12 14 19 29 31 33 34 36 35 37 38 39 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ 機能 ニーズ 具体的内容 増設 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ● ● 設置 実際 ● ● ● ● ● ● ● ● 設置 ○ 実際 ● ● ● ● ● ● 設置 ○ 実際 設置 ○ ○ 実際 ● ● ● 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ● ● ● 設置 ○ ○ ○ 実際 ● 設置 ○ 実際 ● ● ● 障害がある 設置 実際 ● ● ● ● ● 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 注:表2の注に準ずる. 保護機 能 代替機 能 ④緊急保護 ニーズ 被虐待・被災害対 応 ⑤家族の 代替ニーズ 同居家族の不在 家族と不仲 要低所得者向居住 施設 生活支 援機能 介護支 援機能 ③虚弱者の 支援ニーズ 要見守り 養護待機者対応 (中間施設) 老健待機者対応 (中間施設) 老健退所者対応 病院退院者対応 特養待機者対応 (中間施設) 医療的ケアが必要 表3 虚弱者に対する生活支援機能・介護支援機能(設置目的と実際) 設置施設(No.) 設置時期 居住機 能 ①地理的自 然環境要因 による居住 ニーズ 冬季不安・孤立 移動困難地域に居 住 介護サービス困難 地域に居住 ②住まいの 確保に関す るニーズ 老朽化等による要 高齢者向居住施設 また、④虐待等からの保護機能についても、実際に機能させた施設のうち設置目的として いた施設は1施設のみであり、他は目的としていなかった。実際に保護してきた5施設のうち、 4施設が低所得者に対応し、2施設が養護老人ホーム入所待機のための中間施設としての役割 も担っていた。またそれらの施設は、①地理的自然環境要因に起因する居住機能をもたず、 前述の高齢者向け住まいのニーズに応えた2番目の特徴をもつ施設に該当する(表4)。
表4 被虐待者や被災害者に対する保護機能(設置目的と実際) 2 21 18 23 26 32 12 35 37 38 39 Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ 機能 ニーズ 具体的内容 増設 ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● 設置 実際 設置 ○ 実際 ● ● ○ 設置 実際 設置 実際 設置 ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ 設置 実際 設置 実際 障害がある 設置 実際 ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ● 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 要低所得者向居住 施設 表4 被虐待者や被災害者に対する保護機能(設置目的と実際) 設置施設(No.) 設 置 時 期 居住機 能 ①地理的自然 環境要因によ る居住ニーズ 冬季不安・孤立 移動困難地域に居 住 介護サービス困難 地域に居住 ②住まいの確 保に関する ニーズ 老朽化等による要 高齢者向居住施設 生活支 援機能 介護支 援機能 ③虚弱者の 支援ニーズ 要見守り 養護待機者対応 (中間施設) 老健待機者対応 (中間施設) 老健退所者対応 病院退院者対応 特養待機者対応 (中間施設) 医療的ケアが必要 注:表2の注に準ずる. 保護機 能 代替機 能 ④緊急保護 ニーズ 被虐待・被災害対 応 ⑤家族の 代替ニーズ 同居家族の不在 家族と不仲 最後に、⑤家族の代替機能についてみると、これも2つの特徴があった。第Ⅰ期から第Ⅱ 期にかけて設置目的にあげていなかった施設でもこれを理由に入居を受け入れていたことと、 第Ⅲ期に設置目的にあげて増設した5施設で機能させていたことである。増設した施設はそ の経験から沢山の目的をかかげて設置していたが、実際にはこの家族の代替機能を求める高 齢者に応えていた(表5)。
表5 家族の代替機能(設置目的と実際) 6 9 2 21 13 19 26 15 23 35 37 38 39 34 36 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ 機能 ニーズ 具体的内容 増設 ○ 〇 ○ 〇 〇 〇 〇 〇 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設置 実際 ○ ○ 設置 ○ 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 実際 設置 実際 ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 ○ 実際 ○ 設置 実際 ○ 障害がある 設置 実際 ○ ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ○ ○ ○ 設置 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ● ● ● ● ● 設置 ○ ○ ○ ○ ○ 実際 ● ● ● ● ● ● ● ● 要低所得者向居住 施設 表5 家族の代替機能(設置目的と実際) 設置施設(No.) 設置時期 居住機能 ①地理的自然 環境要因によ る居住ニーズ 冬季不安・孤立 移動困難地域に居 住 介護サービス困難 地域に居住 ②住まいの確 保に関する ニーズ 老朽化等による要 高齢者向居住施設 生活支援 機能 介護支援 機能 ③虚弱者の支 援ニーズ 要見守り 養護待機者対応 (中間施設) 老健待機者対応 (中間施設) 老健退所者対応 病院退院者対応 特養待機者対応 (中間施設) 医療的ケアが必要 注:表2の注に準ずる. 保護機能 代替機能 ④緊急保護 ニーズ 被虐待・被災害対 応 ⑤家族の代替 ニーズ 同居家族の不在 家族と不仲 7.退去者の退去理由 自治体によっては、入居条件や退去基準を設けている施設がある。心身の自立度について、 生活援助員のみでは対応できない場合は、生活の継続ができないこともある。また、自治体 内の介護サービスの整備状況によっても、サービスを利用しながら支援ハウスでの生活が可 能かどうか決まる。さらに、入退去の条件を定めたとしても、転出先の確保ができなければ、 予定通りの結果になることはない。 したがって、支援ハウスの機能については、入居者の入居理由と入居者の状況からどのよ うなサービスを提供しその機能を整備したということに加えて、実際の退去理由から、どの ような段階までのニーズに対応してきたかについて確認する必要がある。 実際の支援ハウス退去者の退去理由(退去先)を表6に示した。回答のあった28施設25で最 も多い退去理由は、「他界」、「入院」、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)へ転居」 であった。また数としては少なくなるが、設置目的や入居理由にもあげられた「養護老人ホ ームへ転居」や、「介護老人保健施設へ転居」、そして新たに「グル―ホームへ転居」、「ケア ハウスへ転居」という回答もあった。入居者のニーズを満たす他の一般施策が対応している
施設へ転出していた。 一方、居住機能や生活支援機能、家族の代替機能を求めて入居していた高齢者が、「春に なり環境条件が整ったため自立度が高くなり自宅へもどる、心身状態が改善したため自宅に もどる」というケースや、「公営住宅への転居」、「家族と同居」という回答もあった(表6)。 表6 退去理由(転居先)表6 退去理由(退去先) 設置時期 理由 第Ⅰ期 (11) 第Ⅱ期 (21) 第Ⅲ期 (9) 計 他界 7 6 2 15 入院 5 8 2 15 特別養護老人ホーム (介護老人福祉施設) 5 8 - 13 養護老人ホーム 1 5 - 6 介護老人保健施設 1 - - 1 グル―ホーム - 3 - 3 ケアハウスへ転居 1 1 - 2 自立度が高くなり自宅へもどる 2 2 1 5 公営住宅 - 3 - 3 住環境が改善し自宅にもどる 1 1 1 3 家族と同居 1 4 1 6 注1:各期カッコ( )内数値はその時期の設置数. 注2:数値は該当施設数. 注3:回答のあった28施設の複数回答による結果である.
Ⅴ.考察
入居者の居住形態と支援ハウスの生活環境、入居者の特徴(年齢、自立度、利用料、 食事の状況)をふまえて、支援ハウス設置時に期待した機能(目的)と、実際の入居者に 対応した機能(実際)について、国の福祉政策の変遷過程における支援ハウス設置意図の段 階別に確認してきた。ここで、支援ハウスの機能について考察する。 1.地域の実情に応じた居住機能 本研究の結果から、各自治体は、生活支援ハウスの運営を通して地域高齢者のニーズに応 えようと試みていた。特に、居住機能は制度開始から一貫して過疎中山間地の高齢者のニー ズに応えていた。この機能は、いつの時期においても設置目的と入居者のニーズが合致した 傾向にあり、顕在的な機能といえるだろう。 2.介護支援機能の拡大 入居者の年齢や要介護度、食事提供、実際の機能、退去の理由等をみると、支援ハウスの 対象は、制度開始当初に対象としていた「概ね自立した高齢者」から「要支援又は要介護状態にある高齢者」と変わったようである。そして入居者の退去理由から、要介護度が高く疾 病障害や老衰等の状況にある高齢者のニーズに対応してきたことも明らかになった。 国の要綱にある支援ハウスの「介護支援機能」は、虚弱な高齢者のニーズに応えてきた が、人口の高齢化にともない、要介護者や疾病障害のある高齢者にも対応するようになって いた。支援ハウスが、直接、介護サービスを提供することはないが、要介護度のある者が、 外部サービスを利用するにしても、生活援助員や自治体担当者、その他の併設事業の職員間 の連携やサポートが必要になる。当初の設置目的になくてもニーズがある場合には対応して きており、「介護支援機能」が拡大したとみることもできるだろう。また、介護保険による 施設サービス等の代替的な機能を持つようになったようにもみえる。いずれにしても、当初 の設置目的になくても各自治体は、支援ハウスを通じて、そのような単身または夫婦での生 活に不安がある虚弱な高齢者のニーズに応えようと試みていた。 また、サービスを利用しながら生活できるのであれば、可能な時期まで暮らし続けること ができるよう、あくまでも住居という視点で見守る施設もいくつかあった。かつては自立も しくは要支援であった入居者が、要介護状態になり終末期になっても受け入れてきた施設も あった。このような場合、支援ハウスが担わない介護機能は、併設事業をはじめとする自治 体内のサービス量に左右される。しかしわずかであってもサービスにアクセスしやすい場所 に住まうことは、当然のことながら、要介護度が高くなっても支援ハウスで暮らし続けるこ とを可能にする。自治体側としては、病院からの退院者等の様態がやや変動しやすい状況に ある虚弱者への生活支援と同じく、またはそれ以上に、要介護者や疾病障害のある者に対す る介護支援機能についてどのように担い応えていくか、これからの課題となるだろう。 特別な例として、「昔はヘルパーの数が少なく、重度になっても頻回に訪問できなかった ので、村内にケア付き住宅をつくってみた。そして、疾病障害のある人は、診療所に併設し た居住部門に入居できるようにした。現在は、他界するまで自宅という方針で、ヘルパーの 数を増やしている(第Ⅱ期設置・第Ⅱ期増設自治体)」と、運用時に自治体内に不足する機 能を見極め、マンパワーの実情に合わせて、要介護度が高くケアを必要とする人が集合して 生活できるように機能を特化させた施設もあった。これについては、国や他の自治体では意 図しなかった機能であるが、当該自治体にとっては、慎重に検討した結果としての設置目的 と実際の機能であるので、顕在的でかつ当初期待された介護支援機能の拡大機能といえる。 3.潜在的機能としての低所得者支援 各自治体における支援ハウスの設置目的と実際の機能は、必ずしも一致していなかった。 特に入居者の利用料負担額からみても過疎中山間地域の実態として、低所得高齢者の経済的 な生活問題について配慮する必要があった。これについては、国の要綱には記載されていな いが、この支援ハウスは、設置が開始した1990年代から、一貫して応益負担で利用を可能と
してきた。そして、多くの自治体担当者が、わずかな年金でも生活できるよう、高齢者の年 収と生活費について配慮していた。 例えば、自治体担当者が「支援ハウスの暮らしは、自立していれば、3万~4万円でやって いけると思う(第Ⅱ期設置・第Ⅲ期増設自治体)」、「国民年金年額80万の人から、介護保険 料等ひくと、手元に残るのは70万ぐらいだ。支援ハウスの暮らしは、利用料と食費は月4万 円とすると、12か月で48万になる、光熱水費を月2千円~3千円として、年50万くらいで生活 できる。残りのお金で、孫に何かできる。また、デイ・サービスの利用も可能だと思う(第 Ⅰ期設置・第Ⅲ期増設自治体)」と語っていた。 各自治体は、多くの高齢者が低所得であることを前提に自治体独自のサービスを提供して おり、国が応能負担のうえ設置主体を各自治体にした効果でもあるだろう。特に介護保険開 始後の応益負担による契約の現代において、国の施策としても、潜在的機能として十分に機 能していると思われる。また自治体の福祉政策としては、このことを当初から加味してきた 自治体においては顕在的な機能であり、意図していなかった自治体においては、他の介護支 援機能や保護機能が優先したとしても、所得の低い入居者にとっては副次的に機能する潜在 的な機能でもあるだろう。 4.潜在的機能としての生活支援機能と保護代替機能 国の要綱にもあげられてこなかった新たな機能が2点明らかになった。いずれも過疎中山 間地特有のニーズに対応するものではない。1つめは、障害のある者への生活支援機能と介 護支援機能である。2つめは、虐待等からの保護機能と家族の代替機能である。いずれも、 家族や地域、そして民間サービスが対応しない、もしくは対応できない、極めて残余的な機 能であり、自治体が独自に対応してきたと解釈できるものである。 障害のある者への支援機能については、訪問調査時に多く語られた事項ではない。したが って、質問紙の項目にもあげていない。ヒアリング時に触れられた程度の情報であるが、い くつかの施設で同様の情報があったため実数としてあげた機能である。すなわち、著者によ って観察され続けた機能である。実態としては、もう少し多いようにも思われる。多く語ら れなかった背景に、様々な事情があると推測するが、最も大きな理由は支援ハウスが高齢者 を対象とする施設として位置づけられてきたことにあるだろう。しかし、障害のある者が支 援ハウスに居住することによって、地域での生活を可能にしてきたことは、自治体があらゆ る地域ニーズに対応した結果である。生活援助員の声かけや安否確認、支援ハウスにおける 食事の提供等、必要時にはサービスを利用しながら生活する。これは、国の要綱にも自治体 側の設置目的にもないが、必要とされる福祉的な対応である。状況からいうと虚弱者の支援 ニーズに対する取り組みとみることもできる。ただし、本来は意図も予測もしていなかった ことを独自の判断で対応したのであるならば、それは支援ハウスの潜在的機能でもあるだろ
う。 また、一般に虐待等による緊急避難としての施設利用については、地域の老人福祉施設や 介護保険施設と連携しながら、各自治体が居室やベッドを確保しなければならない。しかし 施設サービスが身近でない自治体や、緊急性が高い場合は、柔軟に運用できるこの支援ハウ スの利用が最も妥当な場合もある。家族の代替機能についても同様のことがいえるだろう。 また家族との関係の問題への対応は、保護機能より予防的な機能でもある。これについても、 当初は意図しなかった潜在的機能といってもよいだろう。 5.まとめ-支援ハウスの意義 以上から、支援ハウスは図1のように、その機能を拡大させてきたようである。設置当初 は、概ね自立した高齢者のニーズに対応する介護支援機能、居住機能、交流機能をふまえた ものであった。 自治体の福祉施策として、一貫して、地域の地理的自然環境要因による生活問題を解消す ることと、住環境整備のための機能を整え、食の支援や介護保険サービスを利用しながら生 活を営む施設として機能していた。 しかし、高齢化の進行や、新たなニーズの顕在化によって、あくまでも在宅生活の延長と しての居住型施設として進化する一方で、自治体内のサービスを利用しながら、常時の安否 確認や定期的な調整、その他の支援といった施設的な機能も担うように拡大していた。これ らの背景には、対象とする地域高齢者のニーズが多様になったことと、自治体がもつ介護や 生活支援のサービスが整えられてきたこともあるだろう。 また、自治体の福祉政策が当初意図しなかった福祉的な機能を支援ハウスは担うようにな っていた。政策の意図した機能を発揮することは、地域ニーズを鑑み目的を達成するために も重要な事項である。加えて、意図しなかった福祉的機能は、今日における自治体の裁量に 基づく制度運用のひとつのあり方であるといってよいだろう。 ウィレンスキーとルボーは、社会福祉制度について、家族とか市場という正常な供給機構 が破綻したときのみに活動を始めるべきであるという補充的なものと、一般の個人の自足性 を助ける制度的なものがあると定義した(Wilensky,H.L.& Lebeaux,C.N=1971:143-146)。 これは、社会福祉の残余的概念と制度的概念ともよばれ、日本においては、普遍主義と選別 主義の議論の中で語られてきた(金子・堅田・平野2009:1-6)。社会福祉基礎構造改革によ る介護保険制度は、まさに普遍主義の象徴でもある。本研究の対象とした施策が対象とした 地域は、高齢化率が高く、市場が参入し難い地域である。家族や市場が代替しない場合は、 基礎自治体が施策を講じる必要がある。対象を選別して措置することによってニーズを満た すという機能を果たす。多くの高齢者が低所得者であることから、選別するというよりは、 この地域では「支援ハウス運営事業」を制度化して、一般的なニーズに近いものから、残余
的なニーズまで担っているともいえるだろう。 図1 生活支援ハウス機能の変化のイメージ
Ⅵ.結論
本研究は、自治体独自の高齢者福祉政策のあり方と方向性を理解するために、小規模自治 体に設置が多い、自治体独自の「支援ハウス運営事業」に着目して、設置に関する自治体の 設置目的と実際の機能の関係を明らかにした。 各自治体が支援ハウス設置時に期待した機能と実際の機能には、類似点もあったが、異な る点もあった。各自治体は、支援ハウスの運営を通して高齢者のニーズに応えようと試みて いた。 特に、居住機能は制度開始から一貫して過疎中山間地域のニーズに応えていた。そして実 際の生活支援機能や介護支援機能は、高齢化の進行とともに拡大していた。また応能負担で あるため低所得高齢者へ特別に配慮していた。一方、国の要綱にもなく制度開始時は重要視 していなかった保護機能や代替機能が新たなニーズに対応し、自治体にとっては潜在的機能 でもあり残余的な福祉機能であった。これらの取り組みは自治体独自の裁量に基づく施策の 機能であり、自治体福祉政策に期待されるものである。 以上が、A県の「支援ハウス運営事業」の事例からみた、自治体独自の福祉施策のあり方 と方向性である。小規模自治体ではない地域においても同様のニーズをかかえる高齢者に対 応するために、このことには何らかの示唆があると思われる。また、本研究の知見を支援ハ ウスの機能として一般化していくには、今後は、A県以外の地域における支援ハウスの分析 が必要である。そして、地域高齢者のニーズの変化にともない、どのように機能を変容もし くは維持させてきたか、そして影響する要因はどのようなものか、さらに検討を続ける必要 がある。1 2003年11月の第27次地方制度調査会の答申で、合併を行うことが期待される対象の一つとし て「小規模市町村に係る合併」について取りあげられ、小規模な市町村としては「おおむね1 万人未満を目安とする」と説明されたが根拠についての提示はない。また、同年12月の第29 次地方制度調査会答申においても、人口1万人未満の小規模市町村の行財政基盤を強化するこ とが課題となった。 2 現在、過疎地域自立促進法に基づく「過疎地域」の指定は小規模自治体に多い。その要件は 国勢調査の結果を基にした市町村人口の減少率と高齢者比率や若年者比率、財政力である。 この要件(指数0.42以下)が該当する市町村(第2条第1項及び第32条)と、一部要件に該当す る過疎地域とみなされる区域のある市町村があり、過疎法に基づいて過疎対策が講じられる (第33条第1項2項)。2000年4月1日以降の市町村数及び過疎関係市町村数の変遷をみると2014 年4月1日現在、市町村数は3,229から1,719と減少したが、過疎指定、一部過疎、みなし過疎市 町村割合は全体の46.4%である。総務省・過疎対策ホームページ「平成12年4月1日以降の市町 村 数 及 び 過 疎 関 係 市 町 村 数 の 変 遷 」 を 参 照。(http://www.soumu.go.jp/main_ content/000288546.pdf,2014.7.30) 3 古川は、1980年代後半以降における福祉制度変革期における改革の諸側面を、1)普遍化(一 般化)、2)自助化、3)多元化、4)分権化、5)自由化(規制緩和)、6)地域化、7)計画化、 8)総合化、9)専門職化をあげている(古川2012:61-71)。過疎高齢化が進行する小規模自 治体においては、実情に合致しない制度改革であり、4)分権化、6)地域化、7)計画化、に おける自治体の裁量と責任をもっても、1)普遍化の一般施策や、5)自由化、9)専門職化の 制度が行き届かない地域における福祉施策のゆくえには課題がある。本研究の対象地域にお けるいくつかの課題を明らかにしたうえで別稿にて論じたい。 4 2001年に「高齢者生活福祉センター」が名称を変更し「生活支援ハウス」となった。本稿に おいては、旧名称を使用していた1990年代を取りあげる場合も、支援ハウス(略)と呼ぶこ ととする。なお設置段階別の議論をする場合は、名称で区別せず、後述の設置段階(第Ⅰ期、 第Ⅱ期、第Ⅲ期)をもって説明する。 5 1999年 全 国 厚 生 関 係 部 局 長 会 議 資 料( 老 健 局 )「 介 護 サ ー ビ ス の 基 盤 整 備 に つ い て (1999.1.19)」において、介護保険制度下での施設整備の留意点として、この2点に基づき支援 ハウスが取りあげられた。またひとり暮らしが困難な特養退所者の受け皿施設として、支援 ハウスの他、養護老人ホームやケアハウスの整備も推進された。 6 1990年代の運営は、「在宅老人福祉対策事業の実施及び推進について(1976.5.21社老28号)」 における、要援護老人対策事業「在宅老人デイ・サービス事業実施要綱(別添4)3;高齢者生 活福祉センター運営事業」として位置づけられ、2000年に要綱が独立し、2001年「高齢者生 活福祉センター運営事業の実施について」別紙「生活支援ハウス(高齢者生活福祉センター)
運営事業実施要綱(社老第655号、老発第192号改正)」によって現在の名称に変更された。 「一定期間住居を提供すること」と規定していたが、「必要に応じ住居を提供すること」と改 められた。 7 国の要綱に「概ね自立した者」という記述はないが、生活援助員の人数と資格、および勤務 体系等から、多くの設置自治体がこのような高齢者を入居の対象としてきた。 8 2005年の三位一体の改革において、離島や山村等の特別措置法に基づく支援ハウスに限定し て「地域介護・福祉空間整備等交付金」の対象となった。 9 本研究の対象施設でみると、既に設置してきた9自治体が第Ⅱ期・第Ⅲ期に11施設増設し、第 Ⅲ期には2自治体が新たに設置していた。 10 2014年26年4月1日現在。 11 質問紙の調査項目について、一自治体の担当者に協力を得たが、その自治体が直面しない事 項についてはよくわからないという状況にあった。訪問調査時に得た他自治体の状況が多岐 に渡っていたため、複数選択項目と自由記載を多く設けた。なお、先行する実態調査報告と しては、全国社会福祉協議会(1996)による調査(訪問調査15か所、郵送調査33か所)と、 財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構(2001)による調査報告(N289、 回収率53.6%)がある。しかし本研究の訪問調査時に得た回答に同傾向の質問項目や回答もあ ったが、不足する情報が多かったため参考程度に留めた。 12 主に支援ハウスの機能については、訪問調査によるヒアリングと質問紙調査の結果を合わせ て分析した。その他の併設事業や生活相談員の役割、入居者の年齢や食事状況等の項目につ いては、質問紙調査の回答から数値を示し概観することとした。 13 佐藤の質的データ分析法を参考にした(佐藤2008:33-63、112-113)。 14 質問紙調査については、複数回答可とした。回答があった施設数をカッコ( )に記載した。 15 居住のタイプについては、ヒアリング結果と先行調査項目の一部参考にして著者が作成し整 理した(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構2001:33)。 16 著者の調べによる実数はこれ以上であるが、他の併設事業数と比較できるように、質問紙調 査の回答施設数のみを記載した。 17 設置主体は自治体であるが、30自治体中22自治体が、運営を社会福祉協議会に委託していた。 また、社会福祉協議会以外の社会福祉法人や農業協同組合に委託している自治体は7自治体で あった。一方、自治体が直接運営しているものが3施設ありこれらの3自治体は、小規模自治 体の中でもさらに人口が少ない自治体であった。 18 質問紙調査では、2012年4月1日現在の入居者数を尋ねた。一時対応型や季節対応型の施設や、 開設間もない施設の入居者数には変動があるため、自治体側が安定している時期を選定する 場合や、他の時期には満室であるが調査時は少数であったということも推測される。したが って、施設によっては若干の誤差が予測されるが本研究の目的から逸脱することはないと判
断し概要把握のために有効回答として扱った。 19 1990年代の本事業開始時の要綱では65歳であったが、2000年の新たな要綱で60歳と変更され た。法的拘束がないので各自治体で柔軟に対応していた。 20 要綱による利用者負担基準は、「ケアハウスと同様の取り扱い」としており、年収120万円以 下の利用者負担額は0円、年収120万1円~130万円以下は月額4千円、130万1円~140万円以下 は月額7千円、…240万1円以上は月額5万円の段階別設定である。また生活保護世帯や町村民 税非課税世帯等の段階で利用料を設定している自治体もあった。 21 多くの自治体では、要綱に記載されている支援ハウスの機能や生活相談員の配置数、居住環 境から、「独立して生活することに不安」はあるが、「自炊のできる自立した高齢者」を入居 の対象としてきた。 22 「生活支援ハウス運営事業実施要綱(社老第655号)」による「利用対象」を参照。 23 得られたデータをカテゴリーに分けた後、著者が次のように整理した。“…” は、高齢者のニ ーズの具体的内容や背景を記載した。そして①~⑤は、それらを代表するニーズである。 24 別稿にて、支援ハウス設置をめぐる国の政策意図と自治体の設置目的について分析した(越 田2014)。本稿においては、この自治体の設置目的と新たに整理した支援ハウスの実際の機能 の関係から考察をすすめる。 25 質問紙調査には、設置主体である自治体担当者もしくは担当課が回答しており、増設してい る場合は、施設毎の回答ではなく自治体内の全施設の経験を説明する自治体もあった。特に、 増設施設が併設している場合はまとめて回答するケースが多かった。自治体内に点在して設 置した施設においては、別々に回答する自治体もあった。なお本調査においては、概要を知 るために該当項目に対して複数名いたとしても、カウント1として集計している。