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会〕
:東京女子医科大学三会第76回例会
日時昭和31年1月27日(金)午後2時半
場所 東京女子医大第一臨床講堂
1. 脊髄腫瘍の一例(中山内科)寺内ちせ
最近我々は,梅毒性脊髄膜脊髄炎と思われた四十才 男子の剖検の結果,頸部神経線維腫であった一例に遭 遇したので,とこに御報告致します。 本患者は,昭和25年1月以来頸部以下に運動障碍並 びに感覚障碍が徐々に起り,特に左側に強く,その症 状に動揺あり,梅毒反応が陽性にで,梅毒性脊髄膜脊 髄炎の臨床診断の下に駆梅療法を行い,一時軽快した るも,其の後再び増悪し,一進一退の経過をとり遂に 死亡した。病理解剖の結果,頸髄上部に二個の腫瘍あ り。一つは硬膜内で大きさはi蚕豆大で左前方に位t, 一つは硬膜外で大ぎさは小指頭大で右側に位し,両腫 瘍とも右側第一頸神経前根より発生せる神経繊維腫 で,これが脊髄を圧迫し前記障碍を来せるものと愚惟 される。 2.職業性放射線障碍(労働科学研究所)石津澄子
X線,ラジ=ウム,放射性同位元素(アイソトープ) などを取扱う医療従事者及び基礎的科学研突者につい て,その健康障碍を調査すると同時に,継読的な健康 管理を行った。 放射線障碍の主変化といわれる血液変化については 一一一ハに赤血球数,白血球数など,血球数の減少してい るものが多く,約60在中半数が障碍基準に該当しP要 注意,要療養者であった。 との外,白血球機能としで,墨粒貫測度,遊走速度 を見ると,必ずしもJ血無数に比例せず,数量の極度に 減少しているものは却つで機能尤進があり,数量は正 常に保たれでいるに拘らず,機能の減弱しているもの もあるという実状であった。 出血性素質検査として,皮フ盗血斑,プロトロンビ ン凝固時間などは正常値を保っているが,女子1例 に,血液凝固機序に異常を示すものがあり,実際iここ の例は,月経障碍,疲労,倦怠などを訴えるものがあ った。 筒血漿蛋白質変化には,蛋白組成特にグロブリンの 増加が注目される。 従来量と関連させつつ健康管理を行ってみると,血 液所見の推移は,医師の場合には,透視人員と密接な 関係をもつようである。 基礎的な科学研究ではX線取扱条件が診療機関での それとかなりの懸隔があるために,血液変化の推移も 医師の場合とはかなり相異している。 従って,継続管理を実施するに当つでは,X線その 他放射線の被曝量との関連で充分に検討する必要があ るっ この外,一般強壮:剤として,ブドウ糖,ビタミン類 造血剤などを投与すると,赤血球系統は,比較的早く 好転するが,白血球系統には顕著な効果が見出されな かったD 3. 入胎児腸管上皮細胞内に出現する所謂 メコニウム封入体に干て(解剖)円乗幸
入胎児腸管上皮紬胞の分化を胎児の月齢を追って観 察している中に,月経胎齢4カ月一一7カ月迄の小腸上 皮細胞の中に無色,淡黄色乃至黄色まれに褐色を呈し, ヘマトキシリン,エオジン染芭でエオジンに好染し, 鉄ヘマ}キシリンに濃染する小体を認めた。この小体 ’は既に二Tobeck, Patzeit, Parat, Schmidt等に二より記載され,小腸上部には無く,回腸に多数認められると 云われている。この小体の大ぎさは微紬頼粒状力、細胞 内を一個で充満する巨大なものに至るまで種々の大ぎ さがあり常に核上部に出現するも,まれに核下部にも 認められる。との小体は腸陰窩の細胞には認められな い。小体の形は一般に円形乃至楕円形でときlc不規則 形のものも認められる。染色性は全体が全く一様なも のが多いが,時にぽ其の内部に染色性の弱い部分があ り中央に孔があいた様に見えたり,小さな不染色部が 多数あり蜂窩状に見えるものもある。叉全体淡染せる ものもあり,又周囲の輪廓のみ認められるものもある。 この小体の化学的性状は目下検査中であるがMillon 氏反応陽性,Ninhydrim−Schiff反応,昇天フェノー ル青反応いずれも陽性で,蛋白質である事がわかつで いる。胎児腸管にかかる蛋白質の巨大分子が出現する 事は興味ある事である。又この小体はPylonin−Meth− ylgrifn染色ではピロニン好1生であるがりポヌクレヤ ーゼ試験によって消化されず,即R.N. Aではないと 一 JO.9 一