306 氏名(生年月’日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(92)サトウシユウイチ
佐藤秀一(昭和
博士(医学) 乙第1339号平成5年1月22日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
大腸腫瘍の発生部位と形態に関する研究 (主査)教授 小幡 裕 (副査)教授 羽生富士夫,今井 康晴論 文 内 容 の 要 旨
目的 大腸の腺腫,早期癌は発育の方向が垂直と,水平に 大別され,垂直方向は隆起型(有茎性,広基性),水平 方向は表面型(扁平,平坦,陥凹)となる.しかし同 じ発育方向,組織像であっても,大腸の部位によって 腫瘍の形態に差がみられる.そこでゴ大腸の部位,腫 瘍の組織(腺腫,早期癌)が形態(有茎性,広基性) いかに関与しているかをみるため,隆起性の腺腫およ びm癌(粘膜内癌)について検討した. 対象および方法 1)大腸内視鏡検査により観察し組織学的に診断し えた隆起型の腺腫1,706個,m癌98個を検討対象とし た. 2)腫瘍の大きさは,腫瘍切除後,その頭部の最大径 を測定した. 3)腫瘍の形態は内視鏡所見により広基性,有茎性に 分け,亜有茎性は有茎性に含めた. 4)腫瘍の部位は,直腸,左側結腸(S状,下行結腸), 右側結腸(横行・上行結腸)に分けた. 5)sm癌(粘膜下浸潤癌)は発育の過程で変形する 可能性があるため除外した. 結果 1)腺腫について部位別に形態と大きさをみると,直 腸,左側結腸,右側結腸の各部位で大きくなるにした がい有茎性の比率(有茎率)は増加した,直腸の有茎 率の増加はゆるやかであるが,左側結腸の有茎率は大 きさが6mmを越えると急に高くな.り(p〈0.01),11 mm以上はさらに増加した(pく0.01).右側結腸は両 者の中間の傾向を示した. 大きさ別に形態と部位の関係をみると,5mm以下の 腺腫では有茎率に部位閻の差はなく,6~10mmでは左 側結腸ついで右側結腸,直腸の順に有割引が高くなり (p<0.01),11mm以上ではとくに左側結腸が他の部 位に比し,有意に高くなった(p<0.01). 3)m癌においては,直腸,左側結腸,右側結腸の各 部位で大きくなるにしたがい有茎率は増加したが,腺 腫に比し,各部位別有茎率の増加傾向はゆるやかで あった.大きさ別に形態と部位の関係をみると,腺腫 と異なりそれぞれの大きさで有茎率に部位間の差はみ られなかった. 考察 大腸腫瘍において,大きさ,部位と形態の関係を明 らかにした報告はなく,本研究は統計学的にそれらの 関係を明らかにした. 大きさに関しては,大腸腫瘍は大きくなるにしたが い有茎率は増加した. 部位に関しては,腺腫は左側結腸,右側結腸,直腸 の順に有茎率の増加傾向が高かったが,m癌では部位 間の差はなかった.このことは,直腸は蠕動が弱く周 囲臓器に固定されているためその影響は少なく,左側 結腸では蠕動が強いため有茎率が高くなるものと考え られた. m癌では腺腫と同様に,小さいものでは広基性が多 く,大きくなるにしたがい有茎性のものが増加するが, その変動幅は腺腫ほど明らかではなかった.また,m 癌は,腺腫に比し蠕動の影響は少なく,その差は腫瘍 一940一307 の発育速度によるものと考えられた. 結論 大腸腫瘍は大きさ,部位別に形態差(有茎率の差) がみられる.とくに部位による差異は蠕動運動に左右 され,その影響は腺腫がzn癌に比し大きいと考えられ た.