背 景
微粉炭火力においては、燃料の一層の安定確保と共に、燃料コストの抑制を図ることが重要となっている。
そのためには、これまで経験のない様々な性状の石炭の利用が必要であり、これらの炭種について、発電所へ
の適合性が事前に評価でき、石炭種に応じた運用指針が提示できる技術が不可欠である。このため、当所は新
規石炭の適合性が石炭性状と燃焼条件から評価できる「炭種適合性評価システム」を定格負荷時の単味燃焼と混
炭燃焼を対象として開発した* 1 * 2
。しかしながら、本システムの実用性を向上させるためには、一層の高精
度化と、部分負荷燃焼にも適用可能な機能の拡張が不可欠である。
目 的
粉砕性評価について微粉炭粒度の予測が行えるよう高精度化すると共に、粉砕性および NOx ・灰中未燃分
排出特性の評価システムについて、部分負荷燃焼時への拡張を図る。
主な成果
1.粉砕性評価の高精度化および部分負荷燃焼時への拡張
実発電所のデータを基に、石炭の粉砕性(微粉炭機(ミル)動力および 200 メッシュパス率* 3
)に影響
を及ぼす主要因子として、HGI* 4
、燃料比、給炭量、回転分級機回転数等が抽出できた。これらの影響因
子と粉砕性との相関関係を詳細に解析した結果(図-1)、HGI、給炭量および回転分級機回転数を関数とし
て、ミルの各負荷条件における粉砕性を、精度良く推定できることを明らかとした(図-2、図-3)。
2.NOx・灰中未燃分排出特性評価システムの部分負荷燃焼時への拡張
実発電所のデータを基に、定格負荷燃焼時を対象としてこれまでに作成した NOx ・灰中未燃分排出特
性* 5
評価システムの部分負荷燃焼時への適用性を検討した。定格負荷燃焼時に幅広い燃焼条件(二段燃焼
率、排ガス再循環率、過剰酸素濃度等)で運転を行っているユニットにおいては、定格負荷燃焼時を対象
とした評価システムで部分負荷燃焼時の評価が可能であった(図-4)。一方、ある程度固定された燃焼条件
で定格負荷燃焼を行っているユニットでは、部分負荷燃焼時の燃焼条件が定格負荷時と大きく異なるため、
評価精度が低くなった。この場合は、定格負荷燃焼時の予測式に部分負荷率を加えて新たな式を導出する
ことにより、定格負荷燃焼時と同様の精度で NOx ・灰中未燃分排出特性を評価できることを明らかにした
(図-5)。
以上の結果を加え、これまでに構築した本システムの全体構成を図-6 に示す。自然発火性、粉砕性、
NOx・灰中未燃分排出特性および生成灰性状を評価項目として、定格負荷時の単味燃焼および混炭燃焼、
ならびに部分負荷燃焼時の石炭の実機への適合性が判断できる炭種適合性評価システムを完成した。
今後の展開
今後は、炭種適合性の評価項目として、生成灰の形状や火炉内付着性、微量物質の排出特性等を追加し、シ
ステムの一層の高性能化を図る。
主担当者 エネルギー技術研究所 燃料・燃焼工学領域 上席研究員 松田 裕光
関連報告書 「炭種適合性評価技術の開発(その 5)−粉砕性および NOx・灰中未燃分排出特性評価の部
分負荷燃焼時への拡張−」電力中央研究所報告: W03306(2004 年 4 月)
主要な研究成果
48
炭種適合性評価技術の開発
−部分負荷燃焼時の粉砕性およびNOx・灰中未燃分排出特性評価−
* 1 :炭種適合性評価システムは、「自然発火性」、「粉砕性」、「NOx・灰中未燃分排出特性」、「生成灰性状」の4評価
項目から、石炭の発電所への適合性を評価するもの。電中研研究報告「炭種適合性評価技術の開発−発電用石炭
のデータベースと適合性評価システムの作成−」W99302(2000)
* 2 :電中研研究報告「炭種適合性評価技術の開発(その 2)−混炭利用時への拡張と機能向上−」W01302(2002)
電中研研究報告「炭種適合性評価技術の開発(その 4)−混炭燃焼時および部分負荷燃焼時におけるメチレンブ
ル−吸着量の推定−」W03038(2004)
* 3 :石炭の微粉砕において 200 メッシュのふるいを通過する微粉炭(粒子径 75 μ m 以下に相当)の重量割合
* 4 :ハードグローブ指数;ハードグローブ試験機を用いて、規定条件のもとで求めた、石炭の粉砕性を示す数値
* 5 :NOx 排出特性は、NOx 転換率(石炭中 N 分の NOx への変換割合)、灰中未燃分排出特性は、未燃焼率(石炭中
C.エネルギーと環境の調和
49
40
50
60
70
80
90
0 20
200メッシュパス率[%]
100
給炭量[t/h]
40 60 80 100
0
30
60
90
0 30
データ n
標準誤差
121
定格負荷 53
部分負荷 68 0.078
200メッシュパス率予測値[%]
120
60 90 120
200メッシュパス率実測値[%]
HGI:40∼80
燃料比:0.94∼2.23
ミル負荷100%
ミル負荷50%
ミル負荷135%
全 体
0.109
0.106
0
4
8
12
16
20
0 8
n 標準誤差
全 体 116
ミル動力予測値[kwh/t]
4 12 16 20
ミル動力実測値[kwh/t]
ミル負荷100%
ミル負荷50%
ミル負荷135%
0.119
0.119
0.119
66
50
データ
定格負荷
部分負荷
単味/定格
混炭/定格
部分負荷燃焼
NOx転換率 予測値[%]
15.0
12.0
9.0
6.0
3.0
0.0
0.0 3.0 6.0 9.0 12.0 15.0
NOx転換率 実測値[%]
定格負荷
部分負荷
定格負荷
部分負荷
未燃焼率予測値[%]
未燃焼率予測値[%]
未燃焼率実測値[%]
未燃焼率実測値[%]
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
(1)定格負荷燃焼時の
予測式による評価
(2)部分負荷燃焼時の
予測式による評価
回転分 級機回転 数
回転分級 機回転数 石 炭性状
石炭性状
給炭 量
給炭 量
粉砕性評 価
粉 砕性評 価
ミ ル動力
ミル 動力
20 0メッシュ パ ス率
200 メ ッ シュ パス率 燃 焼条件
燃 焼条件
NOx・灰中未 燃分評価
NOx・灰中未 燃分評価
NOx
NOx 灰中未燃 分(予測値 灰中未燃 分(予測 値 / 実試 料) /実試 料 )
生成 灰性 状 評 価
生成 灰性 状 評 価
量
自然発火 性評価
自然発火 性評価
HG I , 燃料比
燃料比
O/C
燃料
回転分 級機回転 数
回転分級 機回転数 石 炭性状
石炭性状
給炭 量
給炭 量
粉砕性評 価
粉 砕性評 価
ミ ル動力
ミル 動力
20 0メッシュ パ ス率
200 メ ッ シュ パス率 燃 焼条件
燃 焼条件
NOx・灰中未 燃分評価
NOx・灰中未 燃分評価
NOx
NOx 灰中未燃 分(予測値 灰中未燃 分(予測 値 / 実試 料) /実試 料 )
生成 灰性 状 評 価
生成 灰性 状 評 価
量
自然発火 性評価
自然発火 性評価
HG I , 燃料比
燃料比
O/C
燃料
回転分 級機回転 数 石炭性状
量
粉砕性評 価
ミ ル動力
20 0メッシュ パ ス率 燃 焼条件
NOx・灰中未 燃分評価
NOx
NOx 灰中未燃 分(予測 値 / 実試 料)
生成 灰性 状 評 価
量
性評価
HG I , 燃料比
燃料比
燃料比
O/C
O/C
燃料
注)MB吸着量:メチレンブル−吸着量は石炭灰をコンクリ−トの混和材として
用いる場合、石炭灰中活性炭素により吸着される界面活性剤量の指標
:入力項目
:出力項目
:評価プログラム
:本研究の検討内容
給炭量 回転分級機回転数
HGI,燃料比
石炭性状
自然発火性評価
粉砕性評価
200メッシュパス率 ミル動力 燃焼条件
燃料比、N分
NOx・灰中未燃分評価
灰中未燃分(予測値/実試料)
生成灰性状評価
MB吸着量注)
部分負荷燃焼による二段燃焼
率や過剰酸素濃度変化を評価
システムに考慮
ミル運転条件から、200
メシュパス率、ミル動
力を予測可能とした
5 3
5
5
6
0
▲ 低速
● 中速 3
■ 高速 3
● 中速 0
■ 高速 6
KEY 分級機回転数 HGI
図-5 灰中未燃分排出特性評価精度
定格負荷燃焼時の予測式に部分負荷
率を加えて新たな式を導出すること
により定格負荷燃焼時と同様の精度
で評価できることが明らかとなった
図-6 炭種適合性評価システムの全体構成
発電所の種々の運転条件における、自然発火性、粉砕性、NOx・灰
中未燃分排出特性および生成灰性状を石炭性状と機器運転・燃焼条
件から精度良く評価できるシステムを確立した
図-4 NOx排出特性評価精度
定格負荷燃焼時の予測式を用いて部
分負荷燃焼時のNOx排出量が精度良
く評価できることを明らかにした
図-1 給炭量と200メッシュパス率の関係
200メッシュパス率に及ぼす粉砕
条件(図では給炭量)の影響を明
らかにした
図-2 200メッシュパス率評価精度
HGI、給炭量、分級機回転数による予測
200メッシュパス率が、HGI、給炭
量、分級機回転数から精度良く予
測できることが明らかになった
図-3 ミル動力評価精度
HGI、給炭量、分級機回転数による予測
ミル動力が、HGI、給炭量、分級
機回転数から精度良く予測できる
ことが明らかになった