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格子状改良壁の実用沈下解析法

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大林組技術研究所報 No.71 2007

◇技術紹介 Technical Report

格子状改良壁の

実用沈下解析法

Practical Analysis Method for the Settlement

of Grid-shaped Soil Improvement

佐原 守

Mamoru Sahara

高橋 真一

Shinichi Takahashi

石井 雄輔

Yusuke

Ishii

大野 茂 Shigeru Ono

(本社設計本部)

1. はじめに

弾性論を応用・拡張した実用沈下解析法を提示し,実 地盤・建物を対象として実施した3 次元弾性 FEM8)によ る沈下解析結果 9)との比較により,その妥当性を検証し た。本報はこの実用沈下解析法に関する技術紹介である。 建築基礎構造設計の合理化を図ることを目的に,行政 や学会において地盤改良設計指針類 1)2)が整備され始め ている。固化系工法による種々の改良形式のうち,特に 格子状形式は地震時に格子内部に囲まれた地盤に発生す るせん断変形を抑制し,液状化による被害を合理的に防 止することができる 3)-5)。さらに,格子状改良壁は地震 時の液状化防止効果のみならず,格子壁の大きな剛性に よる常時の不同沈下抑制効果も期待できる。動的解析 6) やFEM 解析6)7)等の詳細解析法は,格子間隔や格子壁長 さを特定した問題に対して,非常に有力な解析法である が,設計初期段階においてこれらの仕様を種々変化させ てパラメトリックに検討する場合,利用し難い。詳細解 析を伴わない実用法として,液状化防止効果を評価する 手法4)5)は既に提案されているが,不同沈下抑制効果を評 価する実用法は提案されていない。

2. 実用沈下解析法の提案

格子状改良壁の沈下挙動を3 次元 FEM 解析法で予測 する場合,Fig. 1 に示すように格子壁の複雑な形状を忠 実にモデル化する必要がある。実用性を考慮して,Fig.2 に示すような弾性論を応用・拡張した実用沈下解析法を 提案した。Fig.2 中の直方体状の FEM 要素は,格子壁部 と格子壁間に囲まれた内部地盤を区別せず,剛性の等価 な均質要素として扱う。地盤の沈下量は,有限厚さの多 層系地盤上の沈下問題を扱う Steinbrenner の近似解を用 いて評価する。直方体状の要素の等価剛性を簡易に評価 するために,Fig.3 に示す格子間隔と深さの寸法比から決 p E1,ν1 E2,ν2 E0,ν0 Eg,ν H 3 次元 FEM 解析法 Eg :格子状改良地盤部の 変形係数 ν :格子状改良地盤部の ポアソン比 Ei :各層の地盤の変形係数 νi :各層の地盤のポアソン比 B×L L B Eg,ν H Fig. 1 3次元FEM解析法 3-Dimentional FEM Analysis Method

E1,ν1 E2,ν2 Eg*,ν p 実用沈下解析法 (弾性論の応用・拡張法) 直方体FEM モデル Eg*:格子外縁を包絡し、内部 を均質な直方体状の要素に置 換した場合の等価変形係数 弾性論モデル (有限厚さの多層系地盤上の基 礎沈下問題を扱う Steinbrenner の近似解) H B×L 繰返し 収斂計算 L H B Eg Eg*,ν Fig. 2 提案した実用沈下解析法 Proposed Practical Analysis Method

(2)

大林組技術研究所報 No.71 格子状改良壁の実用沈下解析法

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b/h

Eg*/Eg

l=1.0b

l=1.5b

l=2.0b

l=2.5b

l=3.0b

b

l

l

h

Photo 1 建物外観 Perspective Fig. 3 等価剛性評価図

Nomogram for Equivalent Deformation Modulus

まる等価剛性評価図を,後述の格子壁の要素モデルと直 方体の要素モデルによる FEM 弾性解析結果を踏まえて 作成した。この Fig.3 を用いて評価した等価剛性を持つ 直法体要素下の沈下量と Steinbrenner の近似解による地 盤沈下量の連続条件を満足させて解を得る。この連続条 件を満足させる際,繰返し収斂計算を伴うことより,前 の解析ステップの出力データから次の解析ステップの入 力データ作成までの一連処理を行う簡易プログラムを作 成し,その省力化を図った。 Fig.3 の等価剛性評価図を作成するために用いた格子 壁および直方体の要素モデルは,Fig.1 のハッチング部分 を切り出し,これをFig.4 および Fig.5 に示すような単純 支持梁モデルとした。梁中央部の柱下部に単位等分布荷 重を作用させた時の同位置における沈下量を求めた。 Fig.4 のモデルは格子内部の地盤の剛性は無視し,格子壁 部分のみの剛性Eg を考慮し,Fig.5 のモデルでは格子内 部も格子壁部も一体の等価剛性Eg*を考慮した。Fig.4 お よび Fig.5 のモデルの梁中央部における沈下量が一致す るEg*を逆算した。格子壁の厚さ t を 1.0m,深さ h を 4.0m とし,建物の代表的な柱スパン間隔に対応する格子間隔 b および l の組合せを全 25 ケース想定し,各ケースの逆 算解析結果Eg*を無次元しまとめて Fig.3 を作成した。

3. 実用沈下解析法の検証

3.1 地盤・建物条件 実用沈下解析法の検証対象とした実地盤・建物条件に おける土質柱状図および断面図をFig. 6 に,平面配置図 をFig. 7 にそれぞれ示す。深度 21~23m に粘性土が堆積 しているが,過圧密比8 程度の硬質洪積粘土であるため 圧密沈下量は微小であり,発生する沈下量は即時沈下量 と見なせる。建物は,地上3 階・高さ約 13m・地下無・ Fig. 4 格子壁の要素モデル

Element Model of Grid Wall

Fig. 5 直方体の要素モデル Element Model of Hexahedron

b=4.0 l=4.0 l=4.0 t=1.0 t=1.0 t=1.0 t=1 .0 単位等分布荷重 :載荷面 l=4.0 l=4.0 1.0 1. 0 1. 0 h= 4.0 (a)平面図 (b)断面図 4.5 4.5 9.0 沈下量 b=4.0 単位等分布荷重 :載荷面 1.0 h= 4. (b)断面図 0 (a)平面図 4.5 4.5 9.0 沈下量 (b=4.0m,l=4.0m,h=4.0m の場合) (b=4.0m,l=4.0m,h=4.0m の場合) 2

(3)

大林組技術研究所報 No.71 格子状改良壁の実用沈下解析法 平面寸法36m×38m の S 造免震建物であり,べた基礎換 算の平均接地圧は約 30kN/m2,採用した布基礎下の平均 接地圧は140kN/m2であるPhoto 1 および Photo 2 参照)。 なお,改良地盤壁直下のN 値 25 前後の粘土質細砂,お よび深度21~23m に堆積するシルト質粘土(一軸圧縮強 度qu=371~396kN/m2)とも,十分な強度があり支持力的 な問題は無く,さらに別途実施した動的解析によって液 状化抑制効果も検討しており,液状化の問題も無いこと を確認している9)。 3.2 3 次元弾性 FEM 解析法 3 次元弾性 FEM による解析結果を実用沈下解析法によ る解析結果の検証対象とした。Fig. 8 に対称性を考慮に 入れて 1/4 部分を切り出してモデル化した 3 次元弾性 FEM 要素分割図を,解析に用いた地盤定数を Table 1 に 示す。荷重は Fig.7 の太線部に示す布基礎下部分,すな わち Fig.8 の平面図のハッチング部分に,等分布荷重度 140kN/m2を作用させた。Fig. 7 の X-X’断面および Y-Y’ 断面における沈下分布図をFig. 9 に示す。格子状改良壁 上の沈下量は5~9mm,最大変形角は 0.23×10-3であり, 上部構造の要求性能を十分満足する値に留まることを確 認した。 3.3 実用沈下解析法 前記2.において提案した実用沈下解析法を,3.1の実地 盤・建物条件に適用した。Fig. 6およびFig. 7に示す格子 状改良壁の寸法比はb/h=1.0,l=1.0bであり,Fig. 3から等 価変形係数はEg*=0.6Egとなる。これを提案した実用沈下 解析法に適用した。改良地盤の変形係数Eg,ポアソン比ν の具体的な値は,既往の提案値1)を参考にして,E g=E50= 130qu=130Fc(E50:一軸圧縮試験結果による変形係数, qu:一軸圧縮強度,Fc:設計基準強度=0.90MN/m2),ν= 0.26に設定した。各層の地盤の変形係数,ポアソン比は3 次元弾性FEM解析法と全く同じTable 1に示す値に整合 させた。 Fig. 9に実用沈下解析法を3次元FEM解析法と比較し て示す。実用沈下解析法は,3次元FEM解析法をやや上 回るものの,概ね良く対応していることから,実用法と Fig. 6 土質柱状図・断面図

Boring Log and Cross Section

Photo 2 格子状改良壁 Head Plane of Grid-shaped Soil Improvement

層下端 深度 層厚 m 土質名称 平均 N値 変形係数 E=2.8N MN/m2 ポア ソン 比ν -2.3 2.3 埋土 8.0 2,240 0.33 -10.0 7.7 地盤改良 15.8 4,424 0.33 -13.7 3.7 粘土質細砂 23.7 6,636 0.33 -16.8 3.1 粘土質細砂 22.0 6,160 0.33 -20.9 4.1 細砂 28.5 7,980 0.33 -22.7 1.8 シルト質粘土 - 5,000 0.45 -24.8 2.1 細砂 20.0 5,600 0.33 -27.7 2.9 細砂 36.7 10,276 0.33 Table 1 3次元弾性FEM解析に用いた地盤定数 Soil Constants for 3-Dimentioanal FEM Analysis

X 7.1 7.2 7.2 7.2 7. 2 35. 9 34.4 17.1 17.3 X’ Y ’ Y 単位:m 太線部:布基礎 Fig. 7 平面配置図 Plane Arrangement 細砂 シルト質粘土 細砂 粘土質細砂 34.4 17.1 17.3 12 .4 4.0 3.8 0 10 20 30 40 50 60 N値 0 500 1,0 00 1,5 00 kN/m2 7.7 2. 3 0.6 4. 0 0 5 10 15 20 25 30 X-X’断面(図-2 参照) 単位:m 35 土質名 細砂 埋土 シルト 質細砂 細砂 シルト 質粘土 粘土質 細砂 有効上 載圧σv' 圧密降 伏応力 pc 格 子 状 改良壁 3

(4)

大林組技術研究所報 No.71 格子状改良壁の実用沈下解析法 4 して十分妥当な精度と判断した。

4. まとめ

格子状改良壁を併用した直接基礎形式は,良質地盤ま での深さが非常に深く,比較的接地圧や搭状比の低い中 低層建物(物流施設・生産施設・ショッピングセンター 等)を合理的に支持したい場合に有効な一基礎形式であ る。本報では,格子状改良壁の大きな剛性による基礎の 不同沈下抑制効果を評価可能な実用沈下解析法を紹介し た。この解析法は,短時間に解析可能であることから, 概略の基礎形式選定時や,設計初期段階における繰返し 検討時に特に有効な実用解析法である。 参考文献 1) 日本建築センター:建築物のための改良地盤の設計 及び品質管理指針 -セメント系固化材を用いた深 層・浅層混合処理工法-, pp.349~353, (1997) 2) 日本建築学会:建築基礎のための地盤改良設計指針 案,(2006) 3) 山内一秀,他:格子状連続地中壁を用いた液状化対 策(その1・その2),第25回土質工学研究発表会, pp.1037~1038,(1990) ,第26回土質工学研究発表会, pp.1027~1028,(1991) 4) 建設省土木研究所,他:液状化対策工法設計・施工 マニュアル,共同研究報告書,第186号,(1999) 5) 古屋弘,他:液状化対策工法としての格子状地盤改 良の解析的検討,第25回地震工学研究発表会講演論 文集,pp.397~400, (1999) 6) 斉藤賢二,他:埋立て地盤上に建つ大規模免震建物 を支持する格子状基礎(その1~その5),日本建築学 会大会学術講演梗概集,pp.467~476,(2002) 7) 石崎仁:複合地盤の変形特性に及ぼす改良形式の影 響,土木学会論文集,No.487/Ⅲ-26,pp.89~98, (1994) 8) 杉江茂彦:3次元地盤/地下水連成解析プログラム 「GRASP-3D」の解析理論と粘土の力学挙動解析へ の応用,大林組技術研究所報,No.51,pp.15~22, (1995) 9) 佐原守,他:格子状改良地盤壁による液状化・不同 沈下対策を施した免震建物,日本建築学会学術講演 梗概集,pp.713~714,(2007) Fig. 9 沈下分布図 Settlement Distribution Fig. 8 3次元弾性FEM要素分割図

3-Dimentinal FEM Element Division

(a)X-X'断面(Fig.7 参照) 0 5 10 15 -10 0 10 20 30 沈下量 mm 40 m (b)Y-Y'断面(Fig.7 参照) 15 40 m 50 0 5 10 -10 0 10 20 30 沈下 量 mm 〇-〇:3次元弾性FEM解析法  ●-●:実用沈下解析法 荷重載荷面 (布基礎下面140kN/m2 CL CL CL 荷重載荷面 (b) 平面図 (c) 断面図 (a) 全体図 全体図 平面図 節点数14,196 要素数12,500 全体図 平面図 節点数14,196 要素数12,500 全体図 平面図 節点数14,196 要素数12,500

Fig. 5   直方体の要素モデル Element Model of Hexahedron

参照

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