− 319 − カ テ コ ー ル 関 連 化 合 物 の 抗 酸 化 活 性 に 関 す る 基 礎 的 研 究 教科・領域教育専攻 自然系コース(理科) 福田智亮 はじめに 本研究は,高い抗酸化能を有し,天然抗酸化物質と して知られている Lーアスコルビン酸におけるエン ジオール (HO-C=C-OH)部位を有するカテコール 関連化合物に着目し,安定ラジカルとして知られる 1 , 1-ジフェニル 2ーピクリノレヒドラジノレ (DPPH) が, ラジカル消去物質が存在すると非ラジカル体である 1, 1ージフェニルー2ーヒ。クリノレヒドラジンに変化する性 質を利用しながら,カテコール関連化合物(カテコー ル (1),4-メチルカテコーノレ (2),4 -tertーブ、チノレ カテコーノレ (3),4-ニトロカテコーノレ (4),3, 4-ジヒドロキシベンズ、アルデヒド (5))及び Lーアスコ ルビン酸 (6)を用いて,抗酸化活性の評価と抗酸化 におけるメカニズムを速度論的・分子論的に解明する 事を目的として,第1章から第3章で構成される基礎 的研究を実施した。 OH
i
j
p
i
3
H
O
ど
a 崎 -E E -n H H (1)カテコール (6) Lーアスコルビン艶 (芝)4-
メチルカテコール(
3
)
4ぺert-プチIレカテョーfレ(
4
)
4-
ニトロカテコ- Jレ(
5
)
3
,4-v
ヒドロキシベンズアルデヒド 第1
章カテコール関連化合物及びしーアスコルビン酸に おける抗酸化活性の速度論的な解訴 第 1章は,カテコール関連化合物の DPPHラジカル 消去反応における反応速度を明らかにする事を目的 として,カテコール (1)の 4位に電子供与性の置換 基を有する4-メチルカテコール (2)と4-tert一プチ ルカテコーノレ (3),電子吸引性の置換基を有する 4-ニトロカテコール (4)と3.4-ジヒドロキシベンズ 指 導 教 員 早 藤 幸 隆 アルデヒド (5)と共に,カテコールと同様にヱンジ オール (HO-C=C-OH)部位を有するLーアスコル ビン酸 (6)を用いて検討した。 【カテコール関連化合物・ L-アスコルビン酸の DPPHラジ カル消去反応における抗酸化活性の速度論的な解析】 カテコールと 4ーメチルカテコールは,反応開始から DPPHラジカル消去反応が進行し,30秒程度で平衡に達 した。反応速度定数は,カテコールが636.53(/秒), 4-メチルカテコールが1074.3(/秒)であった。 4-tert -ブチルカテコールは反応速度定数 1021.7(/秒)を示し, 30秒程度で平衡に達した。 3.4-ジヒドロキシベンズア ルデヒドは,反応速度定数554.2(/秒)を示し, 100秒 程度で平衡に達した。 L -アスコルビン酸は,反応開 始から DPPHラジカノレ消去反応が激しく進行し,反応 速度定数15901(/秒)を示すと共に, 30秒程度で平衡 に達した。 4ーニトロカテコールは, 5種のカテコール 関連化合物の中で DPPHラジカノレ消去反応が最も穏や かに進行し,反応速度定数36.425(/秒)を示した。 以上より,カテコール関連化合物及びLーアスコ ルビン酸の DP問ラジカノレ消去反応における反応速度 はL-
アスコルビ、ン酸(
6
)
>
4
ーメチルカテコール (2)>
4 -tertーブ‘チルカテコール (3)>カテコール (1)>3,4ージヒドロキシベンズ、アルデヒド (5) >4
ーニトロカテコール(
4
)
という結果となった。この 事から,カテコール関連化合物及びL-
アスコルビン 酸の DPPHラジカル消去反応における速度論的な解析 は,カテコール骨格の4位の置換基の電子的な効果が 反応速度定数に影響を与える事が示唆された。 第2
章二成分共存下におけるカテコール関連化合物 及びLーアスコルビン酸の抗酸化活性の評価 第2章では,二成分の抗酸化物質の共存下において, DPPHラジカルを消去する競争反応により抗酸化活性 の評価を試みた。核磁気共鳴装置(
N
M
R
)
により,剛R
測定チューブ内で二成分の抗酸化物質が DPPHラジカ− 320 − ルと反応する様子を観測する手法を導入し,町一則R スベクトル測定により,二成分の抗酸化物質がDPPHラ ジカルを消去する際の分子構造の変化を通して,抗酸 化活性を評価した。二成分の抗酸化物質の共存下にお ける組合わせは,第1章におけるDPPHラジカル消去反 応の反応速度の実験結果を基に,①Lーアスコルビン 酸と 4ーメチルカテコール,②4-メチルカテコールと 4-tert-ブ、チノレカテコール,③4-tertーブチルカテコー ルとカテコール,④カテコールと 3,4ージヒドロキシベ ンズアルデヒド,⑤3,4-ジヒドロキシベンズアノレデヒ ドと 4ーエトロカテコーノレとした。 【ニ成分抗酸化物質の共存下におけるカテコール関連化 合物のOPPHラジカル消去における抗酸化活性の評価】 二成分抗酸化物質の共存下におけるカテコール関 連化合物の抗酸化活性の強さは, DPPHラジカル消去能 力において Lーアスコルビン酸 (6)