幼小接続期における児童の非認知的能力に関する研究 人間教育専攻 幼年発達支援コース 富岡 季里子 1.研究の目的 文部科学省が平成29 年に告示 した幼稚園教育要領では、「知識・技能の基礎」、 「思考力・判断力・表現力の基礎」、「学びに向 かう力・人間性等」という小学校以降の基礎を 培うことが提示された。これには、幼児期に培 われた資質・能力を小学校やその後につなげて いくことが大切だと書かれている。ベネッセの 「幼児期から小学校1年生の家庭教育調査」の 中で、学びの土台となる3 つの軸が提案されて おり、その軸の中の1つが「学びに向かう力」 である。学びに向かう力とは、自分の気持ちを 言う、相手の話が終わるまで静かに聞く、物事 を諦めずに挑戦するなどの自己主張、自己統制、 頑張る力、協調性、好奇心に関係する力であり、 小学校以降の学習の基盤となるとされている。 このような幼児期に培われた学びに向かう力は、 小学校における生活の中で、どのように発揮さ れているのだろうカも先行研究の中では、ヘッ クマンらはペリー就学前計画の結果から、非認 知的能力は、就学前の介入が、実験群の子ども たちの自制心、粘り強さ、動機付けなどを育ん だことが、後の良い人生の実現につながったと いう角靭ミが示されている。また0ECD のレポ ートでは、非認知的スキルを「社会情緒的スキ ル(Social and Emotional Skifis)」と呼んでい る。社会情緒的スキルは、「長期目標のi鞠戎」「他 者との協働」「感情を管理する能力」の3 つの 側面に関する思考、感清、行動のパターンであ 指導教員 塩路 晶子 ると述べられている。上記で述べた学びに向か う力は、集中力、持続力といった非認知的能力 から成り立ち、幼児期に培った学びに向かう力 の基礎となる学びの芽生えが、小学校の接続期 においてスタートカリキュラムにより自覚的な 学びに変化していく。そこで、本研究では接続 期における児童たちの非認知的能力に焦点を当 てて明らかにしていく。さらに、その接績湖に あたる小学校1年生の担任をしている教員は、 非認知的能力についてどのように考え、子ども を指導しているのかということも明らかにした し~ 2.研究方法 研究I 幼小接続期における子 どもの非認知的能力 A 小学校1年生の教室に て参与観察を行い、事例を記述する。幼児期か ら児童期ならではの非認知的能力について明ら かにしているお茶の水女子大学の『幼児期の非 認知的な能力の発達をとらえる研究』に出てく るキーワードを参考にしつつ、その事例につい てオープンコーディングを行う。その後分析し たものを、0ECD の定める社会情緒的スキルの 3つのフレームワーク 低:目標の達成、B:他 者との協働、C :感晴のコントロール)ごとに 分類し、考察を行う。 研究~ 幼/J\1妾続期を担当する教員が考える子 どもの非認知的能力 A 小学校1年生の担任の 教員3 人と、幼稚園・小学校に勤務経験があり、 小学校1年生の担任経験のある教員2 人に半構
造化面接を行い、幼小接織切を担当する教員が 考える子どもの非認知的能力について分析する。 3.総合考察 研究には、小学校において参 与観察を行い、事例を言瞬し、小学1年生の授 業場面と生活場面において発揮される非認知的 能力について検討した。結果としては、授業場 面と生活場面において発揮される非認知的能力 については大きな違いは見られず、両場面とも C の感清のコントロールが少なかった。これは、 児童が小学校に入学することで、これまでの幼 稚園・保育所での生活と違い、時間割にそって 行動しなくてはいけない機会が多くなるからだ と考えられる。授業では、めあてがあり、その めあてを授業の中で達成する必要があり、生活 場面では、その時間のうちにしなければいけな いことやしたいことがあり、それを時間内で終 わらせる必要がある。そのため、A の目標の達 成が多く、C の感清のコントロールが少ないと 考えられる。また、B の他者との協働が多いの は、生活場面共授業場面において、友達や先生 とかかわる機会が多いからだと考えらえる。自 分以外の人と接することで自然と相手を思いや ったり相手の立場に立って考えたりしているの だろう。C の感情のコントロールが見られたの は、人とのかかわりでの場面が多かった。友達 と意見が対立した際に折り合いを付けたり、友 達とのかかわりの中で自分の成長に気づいたり という非認知的能力が見られた。研突llでは、 小学校1年生担任と、幼小担任経験の教員にイ ンタビュー調査を行った。小学校1年生担任が 他の学年の先生や幼稚園・保育所の先生、外部 の人たちとの連携をとても大切にしていること が分かった。生活について知るためには、実際 に幼稚園・保育所に足を運ぶのが分かりやすい が、時間的・距離的制約もあり、なかなか難し li その代わりに様々な人と連携を図ることで、 情報を得ている。また、小学校1年生担任、幼 小担任経験教員ともに入学までに身につけてお いてほしい力は、認知的能力ではなく、非認知 的能力であった。これは、認知的能力は小学校 入学してから身につけていけばいいが、非認知 的能力については、できれば幼稚園・保育所の 生活の中で見につけてほしいと考えているから だと思われる。小学校1年生担任も幼小担任経 験教員も幼稚園・保育所の生活で様々な体験を 通して非認知的能力を育んできてほしいと考え ているということが明らかとなった。そして、 授業において、児童が席に座って聞くだけでは なく、友達とのかかわりをもったり児童が自ら 考えられるように質問を投げかけたりして受動 的な授業ではなく、能動的な授業になるよう考 えられていたことがわかった。小学校1年生の 担任をしている教員は、非認知的能力について 大事なものだと考えており、児童とかかわると きはもちろんのこと、授業の中でも非認知的能 力を育む取り組みをしていることが明らかとな った。 引用・参考文献 マン(2015)『幼児教育の経済学』東洋経済新 報社 ・経済協力開発機構(編著)(2018) 『社会 情緒的スキル 学びに向かう力』明石書店 ・お茶の水女子大学(2016)文部科学省委託『「幼 児教育の質向上に係る推進体制等の構築モデル 調査研究」いわゆる「非認知的な能力」を育む ための効果的な指導法に関する調査研究・幼児 期の非認知的な能力の発達をとらえる研究―感 性・表現の視点からー』