しての非営利組織体の概念について
著者
大坪 宏至
著者別名
Ohtsubo Hiroshi
雑誌名
経営論集
巻
40
ページ
37-64
発行年
1994-03-30
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005692/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja非
営
利
組
織
体 会
計 ・の
基
礎-会計実体 としての非営利組織体の概念 についてー
大
坪
宏
至
目
次
はじ め にI
. 非 営利組織体 と営利 組織体 との区分1,
組織体 の目的2.
資源提供 者
レ3.
その他 の分類基 準11.
非 営利組織体 内部の分類1.
内部分類の仕 方2
/ 公会計Ill.ESO
(環境貢献組織体)IV.
相含 説
お わり に
37 は じ め に 我 が 国 に お け る 非 営 利 組 織 体 の 数 は 増 加 し て い る と も い わ れ1) ま た , ア メ リ カ に お い て は , 非 営 利 組 織 体 の 支 出 が 社 会 全 体 の 支 出 の3 分 の1 を 占 め て い る と も い わ れ で い る2) 。 我 が 国 で は 企 業 会 計 に 比 べ て , 非 営 利 組 織 体 の 研 究 が 企 業 会 計 に つ い て の 研 究 以 上 に 進 ん で い る と は い い 難 く , 今 後 さ ら に 研 究 さ れ る べ き で あ る と 考 え る ○ ヽ ■ 本 稿 で は , 非 営 利 組 織 体 会 計 の 基 礎 と し て , ま ず , 非 営 利 組 織 体 と 営 利 組 織 体 と の 区 別 を 試 み , 両 者 の 概 念 を 検 討 し , 次 に , 非 営 利 組 織 体 そ の も の の 分 類 を 整 理 し , 考 察 を 加 え る こ と と す る 。また,我 が国 にお け る会計 分野 の研究 が, 企業会 計を中心 に行 われてきた
こ とか ら,会 計の領域 にお いて は企業 会計 が主で あ り, 非営利 組織体 は従,
あ るいは特 異 な もの とみなす風潮 が ない とはい えない。 そこで √今後 の会計
体系 を考 えるた めのひ とつ の視点 として,Ansoff,H.I
(アンソ フ) のESO
(enviroment-serving-organization
)とい う考 え方 と,井 上円 了の相 含説 を
紹介 し, 研究視点 のあ り方 を探 るこ ととす る。
なお,非営利 組織 体 は非営利 事業 体 とい われたり,アメ リカで はNonprofitOrganizations
,Not-for-ProfitOrganizations,NonbusinessOrganizations
等 と種 々の用 語が使 われている呪
ヶ
ここで は,用語 として,NonbusinessOrganizations
を用い てい るが,こ
れは営利 組織体 に対立 す る概 念 とし て,非営利組織体 全般 を広 く捉 えよう と
いう趣 旨か らで あ る≒
I 。非 営利 組織体と営 利組 織体と の区分
ニ1.
組織体 の 目的
非営利 組織体 と非営利 組織 体以 外 の組織体 を区別 す る場合, まず取 り挙げ
られるべ き重要 な相違 点 とし て, 利益 動機 があ る。 ここで, 非 営利 組織 体以
外の組織体 を, 非営利 組織体 に対立 す る概 念 として, 営利 組織体 と呼 ぶ こ と
とす る。
非営利組織体 は利益獲 得 を 第一義 的 な目的 とはしない。 こ れに対 して, 営
利 組織体 は利益獲 得 を第一義 的 な目的 としてい る。 し たがっ て, 非営利 組織
体 と営利組織体 とで は, サ ービ ス と価格 の関係 が異 なる。
アメリカ財務会 計基 準審議会(FinancialAccountingStandardsBoard,
以 下,FASB
と略称 す る。)の財務会 計概 念 ステイトメント,第4 号 は,
「非営
利 組織体 と営利 企業(businessenterprises)
の どちらも,提供 す る財貨 やサ
ービ スに価格 や料金 を負 担 させ るこ とで資源 を獲 得す る。 し かし, 財貨やサ
ービ スの販売 目的 は違 う。 あ る非営 利組織体 は財貨やサービ スを, コ スト に
等 しいかあ るい は それ以上 の価格で 販売 す るか もし れないが,一 般的 には,
多 くが コ スト 未満の価格で 財貨やサ ービ スを提供 す る もので あ る。」5)として
い る。 営利組織体 が非営利 組 織体 と同 じような価 格で, 財 貨やサービ スを提
供 す るこ とは ない し, す るこ と もで きない。営利 組織体の 「利益 獲得 は, さ
らに資源 の提供 を受 け るた めに必 要」6)なこ となのであ る。
非営利組織体会計の基礎- 会計実体としての非営利組織体の概念について−39 営 利 組織 体 が 第一 義的 な 目的 を利 益 獲 得 とし て い る の に対 し て, 非 営 利 組 織 体 は そ うで は な い。 そ れで は, 非 営利 組 織 体 の 第一 義 的 な 目 的 とは 何 で あ るのか。 それ は, サ ー ビ ス を提 供 す るこ と自体 で あ る。Anthony,R.N. ( ア ン ソニ ー)は 営 利 組 織 体 と非 営利 組 織 体 の相 違 点 の ひ とつ とし て,「非営 利 組 織 体 の 目的 は利 益 獲 得 以 外 の もので あ り, そ れは本 質 的 には サ ー ビ スを 提 供 す るこ とで あ る。」7) と指 摘 し て い る。利 益 動機 を 非営 利 組 織 体 と営 利 組 織 体 との分 類基 準 とす る こ と に対 し て は, 利益 動 機 は主 観 的 で あ る との主 張 もあ る8)。アメ リカ 会 計 学 会 (AmericanAccoutingAssociation, 以 下,AAA と 略称 す る。) に よ る「非 営 利 組 織 体 会 計 実務 委 員 会 報 告 書 」で は,利 益 動 機 以 外 に持分 権 (equityinterests )^)も分 類 基 準 とし て掲 げ て い る10)。 ア メ リカ の連 邦お よ び州 の 税 法 , な ら び に, 内 国歳 入法 等 にお い て も同 様 の 規 定 が な さ れて い る11)。 づ 2. 資 源提 供 者 し 非営利 組織 体 と営 利 組 織 体 との 分 類 基 準 とし て, 組織 体 に対 す る資 源 提 供 者 が誰で あ るの か と い う点 が 挙 げ ら れ る。Anthony は,「非 営 利 組 織 体 が 株主 か らで は な く,寄 付 者 か ら資 本(capital ) を得 る とい う こ とは, 営 利 組 織 体 と非営 利 組 織 体 の唯 一 明 確 な相 違 点 (theonlysignificantdifference ) で あ る。」12)と主 張 し て い る。 同様の主 張をFASB も行 っ て い る。つ まり,「非営利 組 版体 と営利 企業(businessenterprises )との 相 違 点 は, そ れ らが 資 源(resources )を獲 得 す る方 法 にお い て, 主 にあ ら わ れ て く る。」13) として い る。 営 利 組織 体 に とっ て の 主 た る資 源 提 供 者 は, 株主 で あ る。 彼 ら は 営 利 組織 体 に何 を期 待 し て い る の か, あ る い は何 に関 心 を持 っ て い るの で あ ろ う か。 彼 らが期 待 し て い るこ とは, 配 当 金 を受 け取 るこ とで あっ た り, あ るい は 株 価 が上 昇 す る こ とで あ ろ う。 また, 彼 らの 関 心 は, 営 利 組 織 体 が 利 益 を 獲 得 し て い るの か, あ るい は損 失 が 発生 し て い な い か といっ た こ とに向 け ら れ る。 こ れに対 し て,非 営 利 組 織 体 に とっ て の資 源提 供 者 は, 利 益 の 配 分 で は な く14) 他 の ご とに 関 心 を もっ て い る。 こ の点 に 関 し て,FASB は,「資 源提 供 者 は非営 利 組 織 体 の 純 資 産(netassets) が 増 加 し た の か(あ るい は減 少 した の か) とい う こ とだ けで は な く, どの よ う に, ど う して 増 加 (あ る い ぱ 減 少 ) した の か とい う こ とを 知 りた い と思 っ て い る。15, とし て い る。つ ま り,非 営
利組織 体 に とっ ての資源提供者 は,「経済的 便益(economicbenefits
)は期
待 しな い。あ るいは,提供 した資源以 下 の便 益 を期待 す る。」16)
こ と もあ るが,
彼 らの関心 は, 提供 さ れた資源が 目的 に沿 っ て適切 かつ 有効 にサ ービ スの提
供 の た めに利 用さ れてい るか どぅ か につ いて向 け られ るのであ る。
非営利 組織体 はこ うした資源提 供 者の関 心 を重視 したサービ スの提供 をし
てい か なければ, 資源の獲得 もさ らには組織 体 の存続 まで も危 うくなっ てし
まう17)
。非営利 組織体 に とっ ての資源 提供 者 は, 配当金 といった経済的便益で
は な く18) サ ービ スの提供 に関心 があ るので あ る19
)
。
組織体 の 目的 と資源提供 者 とい う2 つの分類 基 準 に関 連して,非営利組織
体 と営利 組織体 の それぞれにお ける純 利益 につ いて もまとめてお く必要があ
ると考 える。 純利益 の測 定はAnthony
も指 摘 し てい るように20) 概念上 は非
営利 組織体 にお いて も, 営利 組織体 におい て も同 じで あ るとい えよ う。
両 組織体 にお いて異な るのは, 純利益 の重 要性で あ る≒Anthony
の指摘
す るご とく,「FASB
のいうように『財政 的 に う まくやっ てい く(financiallyviable
)』22
)ためには,営利 組織体 は株式投 資家 を満 足さ せ るの に充分 な純利
益 を獲 得 しな ければ な らない。
」23)ので あ る。したがっ て,営利 組織体 におい
て は, 期間損 益 計算 が会計 の中心で あ り, 純利益 の大 きさによっ て業績評価
が なさ れるこ とになる24)
。そこで は, 純利益 が 非常 に重要 な意味 を もつので あ
る。
こ れに対 して, 非営利 組織体 は,
「株式投 資家 を もた ないので,純利益はゼ
ロ よりい くらかで も大 きければ,財政 的 に う まくいう て いるこ とにな る。」25)
ので あ る。
営利 組織体 で ぱ,純利益 が大 きけ れば大 きいほ ど,業 績 は良 い とい うこ と
にな る。 しか し,非営利 組織 体 にお け る純利益 は, 営利 組織体 が有 す るよう
な純利益 としての重要性 は もたないので あ る26
)
。非営利 組織体の純利益 が大 き
い とい うこ とは,利用可 能な資源 と同 等のサ ービ スを提供 しなかっ た という
こ とに な る。 非営利組織体 の純利益 は, ゼ ロ よ り多少で も大 きければ良 いの
で あ る。 したがっ て, 非営利組織 体の純 利益 は, 業績 測 定の指標 にはなり得
ない し, また, 資源提供者 は その よう な指 標 として純利益 に注 目す るこ とは
ないので あ る2≒
し かし,非営利 組織体の提供 す る,
「サ ービ スの質 と量 目関す る情報 は, そ
の ほ とん どが財務的で はなく,つ まり, 借方 ・貸 方 とい う会 計シ ステムから
非営利 組織体会 計の基 礎 一会計 実体 としての非営利組織 体の概念 につ いて−41 は 得 ら れ な い も の で あ る 。」28) と い え ,「 ほ と ん ど の 非 営 利 組 織 体 の 基 本 的 財 務 諸 表 は 提 供 さ れ た サ ー ビ ス の 価 値 ・ 量 ・ 質 を 報 告 す る こ と は で き な い 。 財 務 諸 表 が 報 告 で き る の は ,種 々 の サ ー ビ ス の コ ス ト に つ い て で あ る 。 そ し て , そ の た め の 原 則 は , 営 利 組 織 体 で あ ろ う と 非 営 利 組 織 体 で あ ろ う と 同 じ で あ る 。 純 達 成 度 の 情 報 は , 絶 対 に 必 要 な 補 足 情 報 で あ る が , そ の ほ と ん ど が 財 務 的 で な く , 非 貨 幣 的 性 質 の も の で あ る 。 さ ら に , 達 成 度 に 関 す る 情 報 は 組 織 体 の 種 類 に よ っ て 大 き く 異 な る も の で あ る 。」29)と い え る 。 し た が っ て , 非 営 利 組 織 体 の 業 績 測 定 に は , 純 利 益 の 測 定 と は 別 の 考 え 方 が 必 要 と な る 。 例 え ば , 費 用 ・ 便 益 分 析 あ る い は 費 用 ・ 効 果 分 析 の 研 究 を 展 開 し て い く の も ひ と つ の 方 法 で は な か ろ う か 。 非 営 利 組 織 体 の 資 源 提 供 者 は , 組 織 体 と の 関 わ り 方 に よ っ て , 例 え ば , 自 発 的 資 源 提 供 者 と 非 自 発 的 資 源 提 供 者 に 分 け ら れ る30)。両 者 の 顕 著 な 相 違 点 は , 提 供 さ れ た 資 源 が 目 的 に 沿 っ て 適 切 か つ 有 効 に サ ー ビ ス の 提 供 の た め に 利 用 さ れ て い る か ど う か に つ い て の 関 心 の 度 合 い が , 非 自 発 的 資 源 提 供 者 に お い て , 自 発 的 資 源 提 供 者 よ り も 高 い と い う 点 で あ る 。
3. その他 の分類基準
組織体 の目的(あ るい は利益 動機 の有無 ) と資源提供 者 とい う分類基 準 の
他 に,非営利 組織体 と営利 組織 体 とを分 類 す る基準 としては, サービ ス受益
者を挙げ るこ とがで きよ う。 つ まり, サ ービ ス受益 者 が特 定の個 人 (私的 )
で あるの か,あ るいぱ公共的(公的 )で あ るの か とい うこ とで あ る。ただ し,
どこまで が私的であ り, どこ まで が公 的 と呼び得 るの か, それらの範囲 につ
いては, さ らに検 討す るべ きで あ る。
組織体 の 目的(あ るい は利益 動機 の有 無),資源提供 者,サービ ス受益 者 の3
つの基 準 は, どれ も組織体 の基 本的特性で あ る。 この基 本的特性 には, 財
務報告利用 者 も含 まれよ うが31)これを分類 基準の ひ とつ として取 り挙 げ る必
要 はない と考 える。
基本的特性 とは別 に, 会計 制度上 の特性 があ るが, それらを分類基 準 に加
えてし まうこ とは,現代 の会計 を固 定的 な もの として捉 え, 特 に非営利 組織
体 の会計 につ い ては今後 の変化 ・ 発展の可 能性 を無視 して しまうこ とに もな
る。 したがっ て, 分類基 準 に会 計制 度上の特性 を加 え る必要 は, 現段 階で は
ないと考 える。
ただ し, アメ リカ 及びカナダ 地 方自治体 財務担 当者協会 (theMunicipalFinanceOfficersAssociationoftheU.S.andCanada)
の 行 なっ たよ う
に32)営利 組織体 と非営利 組織体 の相 違点を検 討 し,それ ぞれの会 計 制度上 の
特性 を明 らかにす るこ とは,非営利 組織体 の会 計 を発展 させ るた めに も, 必
要 なこ とで あ る と考 える。
n. 非営利 組織体 内部 の分類1.
内部分類 の仕 方
非営利 組織 体の分類 の試 み として,Henke,E.O. (ヘ ン ク)は以 下 の2 つ の
範 躊 に分類 して い る。
「第1 区分 の団 体 は, 病院や私立 単科大学 の運営 の よう に, 創業 時 の基本
金を受 領 したあ とは独立採算経営 とな るものであ る。」33)
ト
■
「第2 区分 は, 継 続的 に全部 もしくは一部補助 金 を要す る団 体で あ る。 こ
の第2 の団体 の中 には, 期間的な強制的賦課 によっ て維持 さ れ る政 府単位事
業 や保険 や福利厚生 団, 協会 や 自発的継続的 な寄付金 に よっ て維持 さ れる そ
の他の団 体を含 んで い る。」34)Henke
の第1 区分 に属 す る非営利 組織 体ぱ,サ ービ スの提供 に対 す る料 金
の徴収 に よっ て独立 採算 経営 をす る。 第2 区分 に属 す る非 営利 組織 体は補 助
金や寄付金 に よっ て維持 さ れる。Henke の分類 は組織 体 の維持形 態 に基づ い
た ものであ る。
料金 にして も,補 助金 や寄付金 に して も, 組織 体 に とっ ては財務資 源であ
る。 したがっ て,組織 体 の維持形 態の違いは, 財務 資源 の獲 得 方法 の違 い,
もし くは財務 資源 の源泉 の違 い ともい えよう。Anthony
は 財 務 資 源 の 源 泉 の 違 い (differenceinthesourceofthefinancialresources
) とい う観点 か ら, 非営利組織 体 を分 類 し た35)
。TYPEA
:財務 資源 全体あ るいぱ大部分を,収 益(revenues)
, つ まり,
財貨 やサ ービ スの販売 によっ て獲得 してい る非営利 組織 体。TYPEB
:財務 資 源を収益 以外 の源泉(nonrevenuesources
)か ら獲得
している非営利 組織 体。
営 利 ・ 非 営 利 基 準 (profit-nonprofitbasis ) に基 づ け ば, タ イプA はNonbusiness
で あ る。(図II −1 のALTERNATIVE1
を参照。)しか し,財
非 営利組織体会計の基礎 −会計実体 としての 非営利組織 体 の概 念につ いて−43
であ る。(図II −1 のALTERNATIVE2
を参照。)
。
図H −IAlternativeclassificationsforOrganizations
ALTERNATIAVE1 BUSINESS NONBUSINESS
PROFIT-ORIENTED
TYPEA
NONPROFIT
TYPEB
NONPROFIT
ゝ J ゝALTERNATIVE2BUSINESSNONNBUSINESS
TYPEANonprofit:Anonprofitorganizationwhosefinancialresources
areobtained,entirely,oralmostentirely,from
\revenuesfromthesaleofgoodsandservices.
TYPEBNonprofit:Anonprofitorganizationthatobtainsasignificant
amountoffinancialresourcesfromsourcesother
thanthesaleofgoodsandservices.
資料出所:RobertN.Anthony,FinancialAccountinginNonbusinessOrganizations.AnExploraryStudyofConceptualIssues.ResearchReport,Stamford,Conn.,FASB,1978.p.l61.
Anthony
はHerzlinger,R.E
バ ヘ ルツリンガ ー)との共著 の中で,非営利
組織体を依頼 人志向組織体(client-orientedorganizations
)^^)と公共志向
組織体(public-orientedorganizations
)^''
)とに分類 してい る38
)
。
タ イプA もし くぱ依 頼人 志向 型の組織体 とタ イプB もし くは公共志向型の
組織体 とは,財務資源 の源泉 の違 い以外 に も,種 々の相違 点 があ る。例 えば,
タ イプA も士 くは依 頼人志向 型の組織体で ぱ, 資 源の獲 得 が活動量 に応じて
可変的で あ り, 組織体 の活動 は比較的定型で あ る とい える。一 方,タ イプB
もしくは公共志向 型 の組織体 の財務資源 は固定的で あ り, 同 じ 目的を もっ た
組織体 が複数存 在す るこ とは余 りない39)
。
アメリカ公会計基準審議会の概念意見書第1号では,政府タイプ(governmenta トtype
) と企業 タ イプ (business-type ) という2 つの活動形 態 に分類 してい
る40)
。
政府 タ イプ の活動で は,「提 供 さ れた資源 と受 け取 られたサ ービ ス との 間
には, 交 換 関係(exchangerelationship
) とい うよ りは, むしろ期 間関 係
(timingrelationship ) とい う対 応 関係 があ るのが通 常で あ る。」41)とい え,
交換関係 はない。
企業 タ イプ の活動 は,「私企業 (private-sectorbusisness )の活動 に類 似
してい る。 その理由 としては,政 府 は私企業 と同 じサ ービ スを提供 してい る
こ とが挙 げ られる。 同時 に供 給者 と消費者 との間に交換 関係 があ るこ と, つ
まり, 消費 者 はサ ービ スの 代 価 を 支払 う とい うこ とが理 由 として挙 げ ら れ
る。」42)のであ る。 つ ま り,「企業 タ イプ の活動で は,代価 とサ ービ ス自体 と
の 間 に直 接 的 関係 が し ば しば 存 在 し て い る。 こ れは交 換 関 係 (exchangerelationship
)と呼ば れる。つ まり,消費者は提供さ れた特 定のサ ービ スに対
して料金 を徴収 さ れ る。」43)こ とに な る。したがっ て,政府 タ イプ の活動で一
般的であ る会 計技法,例 えばフ デンド・ アカ ウンティング ぱ,企業 タ イプ の
活動で は一般的 では な くなる44)
。
以上 のよ うな政 府タ イプ と企業 タ イプ の分類 も,Henke
やAnthony*' )
の示
した分類 と同様で あ る と解 さ れる46)
。
非営利 組織体 内部の分類 は, 形 態別 に行 うこ ともで きよ うが47),
資源 の源 泉
の違 い によっ て行 うのが基 本的で あ り,現 在 の ところ, それ以上 に細 か く分
類 す る必要 はない と考 え る。 ただ し,今後 将来的 には, 必要 に応 じ て細分類
を試 み るこ とにな るか もし れない。
2. 公会 計
我 が国で は, 通 常,公 会計 とい う用 語を用 いる場合, 共 通認識 に基 づ いた
統一 された使 われ方 はさ れてい なじ
ヽ。 それぱ,政 府会計だ けを意味 す る狭 義
に解 された り, 公企業 を含 めた広義 の使 われ方を したりす る。 この狭 義 と広
義 の分類 は, 公企業 を その範 躊 に含 めるかどうか によっ て区別 さ れてい る と
い える48
)
。
こ こで,
「我 が国で は」と断 つだ のは,アメ リカで は狭 義 と広義 の2 つ の公
会計が存在しないからであ る。そもそも公会計とは,アメリカでぃうgovernmental
非営利 組織体会計 の基 礎 一会 計 実体 とし ての非営利組織 体の概念 について−45accounting の 訳 で あ り , 慣 用 的 に 公 会 計 と 呼 ぶ よ う に な っ た の で あ る 。 こ れ を 「 ア メ リ カ 政 府 会 計 」 と 訳 せ ば 広 義 と狭 義 の 公 会 計 の 区 別 は 必 要 な か っ た と い え る 。 ア メ リ カ で は , 我 が 国 と は 違 っ て , 国 防 や 外 交 を 除 け ば , 州 自 体 が 日 本 の 政 府 機 能 を も も っ て い る 。し た が っ て ,ア メ リ カ のgovernmentalaccounting と 我 が 国 の 公 会 計 の 違 い は, 両 国 の 政 府 概 念 の 違 い に よ る も の と い え る49)。ア メ リ カ のgovernment の 概 念 ぱ , 我 が 国 の 政 府 よ り も 広 く ,「 部 門 と し て は , 立 法 , 行 政 , 司 法 の 各 機 関 を 含 み , 段 階 と し て は , 連 邦 , 州 及 び 地 方 の 各 政 府 機 関 」50) を 含 ん で い る の で あ る 。 仮 に,governmentalaccounting を 「 政 府 会 計 」 と 訳 し た 場 合 に , 上 述 の よ う に , 連 邦 政 体 で あ る ア メ リ カ 政 府 と 単 一 政 体 で あ る 我 が 国 政 府 と が 異 な っ て い る に も か か わ ら ず ,「 政 府 」 と い う 用 語 を 用 い た が た め に , あ た か も 両 者 が 同 一 の 意 味 を 有 す る が ご と き 誤 解 を 招 き か ね な い 。 そ こ で , 公 会 計 と 訳 し , そ れ が 慣 用 的 に 用 い ら れ る よ う に な っ た も の と 推 察 さ れ る 。 そ う で あ る な ら ば ,「 ア メ リ カ 政 府 会 計 」 と 訳 し た う え で ,我 が 国 で ぱ 広 義 の 公 会 計 を 「 公 会 計 」 と 称 し , 我 が 国 政 府 に つ い て は 「 政 府 会 計 」 と 呼 び , 地 方 自 治 体 に つ い て は 「 自 治 体 会 計 」 と 称 す れ ば , 公 会 計 に 狭 義 と広 義 の2 つ の 意 味 を も た せ る 必 要 性 も な か っ た と 思 わ れ る 。 イ ギ リ ス に お い て は √ 国 家 レ ベ ル で はcentralgovernment を 用 い , 地 方 レ ″ ル で はlocalauthority と 称 し て い る が51) 国 に よ っ て 政 府 概 念 が 異 な る の で あ る か ら , 各 国 そ れ ぞ れ の 用 語 が あ っ て 当 然 で あ り , 何 も ア メ リ カ に 合 わ せ た 用 語 を 用 い る 必 要 は な い と 思 わ れ る 。 な お , イ ギ リ ス で は , ア メ リ カ のgovernmentalaccounting に 相 当 す る 用 語 と し て,publicsectoraccounting と い う 用 語 を 用 い て い る 。 最 近 で は,AAA を は じ め と し,publicsectoraccounting と い う 用 語 が ア メ リ カ で も 使 わ れ て い る5≒AAA は,publicsector の 概 念 で, 報 告 書 を 出 し て い る53)。 そ こ で は,publicsector の 概 念 に つ い て ,「 す べ て の レ ベ ル の 政 府 一 連 邦 政 府 , 州 政 府 お よ び 地 方 政 府 な ら び に そ の 権 限 の 範 囲 に 関 係 な く , す べ て の 政 府 単 位 が 含 ま れ る。 例 え ば , こ れ ら 政 府 の 有 す る 権 限 の 相 違 に よ っ て , 全 般 的 な 目 的 を 有 す る 単 位 ( 連 邦 政 府 , 州 , 市 お よ び カ ウ ン テ ィ ), 限 定 的 な 目 的 を 有 す る 単 位 ( 特 別 区 , 例 え ば 学 校 区 , 給 水 区 , お よ び そ の 他 特 別 行 政 機 関 の 目 的 の 下 に 指 定 さ れ た 地 区 ) お よ び , 公 共 企 業 体 ( 都 市 公 益 企 業 , 連 邦 預 金 保 険 会 社 ,
その他) の3 つ の形 態 に分 けられ る。」54)としてい る。 こ こで 注 目すべ きは,
公企業 を含 んで い るこ とと,政府 の権 限の属さ ない営利 組織体 を除いてい る
ことで あ る。 公企業 を含 んで い るという点で は,我 が国 の広義 の公会計 と同
様で あ るとい えよう5≒ しかし,我 が国で ぃ う広義 の公会 計 には,政 府の権 限
に属さ ない営 利組 織体 も含 んで い るこ とか らす る と, 厳 密 には我 が国 の広義
の公会 計 と同 一で あ る とは言い難 い5‰
我 が国の公 会計 は,
「狭義 説,すな わち,国又 は地 方公 共団体 等 を会計主体
とす る考 え方 が通 説 とみなさ れてい る。
」57
)とい う指摘 もあ るが√吉 田寛教授
が,
「公会 計 に は政府 の会計 と非営利 組織体の会 計 があ る。… …(中略)……
公会計 は政 府会 計 と同 じで はない。」・ト(点 線部分 は筆者 によ る。), と指摘さ
れてい るよ うに, 現在で はむしろ広義 の公会 計 の方 が通 説に なっ てい るとい
えよう59)
。publicsectoraccounting
とprivatesectoraccounting
との区別 は,い わ
ば公共性 を基 準 にした分類であ り,営利 ・非営 利 を基準 とした分類 とは次元
が異な るので あ る。
以上 の こ とから, 図II −2 の ようにま とめ るこ とがで きよ う。
図H −2PublicSector
Accounting
政
府
仝
計
非 営 利 事 業 体 会 計
PrivateSector
Accounting
政府の権限に属さない
非 営 利 組 織 体 会 計
PublicSector
Accounting
公
企
業
仝
計
PrivateSector
Accounting
営 利 組 織 体 会 計
コ
非
営
利
組
織
体
会
計
」
コ
我
が 国 の 公 仝 計 ら広1 」非営利組織体会計の基礎 一会 計 実体 とし ての非営利 組織体 の概 念について−47 Ⅲ.ESO (enviroment-serving-organization )Ansoff,H.I.
( ア ン ソ フ ) ぱ 彼 の 著 書StrategicManagement の 中 で , 非 営 利 組 織 体 と 営 利 組 織 体 に つ い て , 資 産 が 何 に よ っ て 所 有 さ れ る か と い う 観 点 か ら , 次 の よ う に 分 類 し て い る 。 「 現 代 産 業 社 会 の か な め は , 財 貨 と サ ー ビ ス , も し く は ど ち ら か 一 方 を , 環 境 に 対 し て 供 給 す る こ と が 主 要 な 任 務 で あ る, 非 常 に 多 数 の 組 織 体 で あ る 。 資 本 主 義 産 業 社 会 で は こ う し た 組 織 体 は , 一 般 に 以 下 の2 つ の 主 要 な 範 躊 に 分 類 さ れ て き た 。 第1 の 範 躊 に は , 資 産 が 私 的 個 人 に 所 有 さ れ て い る 『 営 利 』 企 業 (for-profit ’businessfirm) が 含 ま れ る 。 第2 の 範 躊 は , 資 産 が 公 的 に 所 有 さ れ て い る 『 非 営 利 組 織 体 』(‘not-for-profit' ) か ら な る 。 こ れ ま で の と こ ろ , そ れ ぞ れ の 範 鴫 は , 著 し く 異 な り , 重 複 し な い 行 動 を す る も の と さ れ て き た 。」60ト そ し て ,2 つ の 範 躊 に つ い て ,「 企 業 は 主 と し て 次 の よ う に み ら れ て い た 。 つ ま り √ 良 い 生 産 者 で あ り √ 社 内 的 に は 効 率 的 で , 社 外 的 に は 企 業 家 的 で あ る , ひ た す ら に 利 益 追 求 を 目 指 す も の と み な さ れ て い た 。 公 的 に 所 有 さ れ て い る 組 織 体 は と い う と, サ ー ビ ス を 提 供 す る 組 織 体 で あ り , そ の 行 動 は 対 内 的 に は 官 僚 的 で 非 効 率 的 で あ り , 対 外 的 に は 冒 険 的 で は な い と み な さ れ て き た 。 企 業 の 利 益 と 効 率 と い う 目 的 は , 非 営 利 組 織 体 に お い て は ,『 公 共 サ ー ビ ス 』(publicservice ) を 提 供 す る と い う , よ り 曖 昧 な 概 念 に よ っ て 置 き 換 え ら れ て い た 。」61) と し て い る 。 ま た2 つ の 範 躊 の 区 分 は ,「 徐 々 に 曖 昧 に な り つ つ あ る 。」62) と 指 摘 し て い る 。 つ ま り ,「2 つ の 範 鴫 の 行 動 の 定 型 が , 相 互 に 重 複 」63) し て お り ,「 私 企 業 は , 本 質 的 に は 非 営 利 的 で あ る 活 動 を 遂 行 し , 一 般 大 衆 に 貢 献 す る よ う 求 め ら れ て い る 。」64) と い う の で あ る 。 確 か に ,「 政 府 予 算 は 増 大 し , 国 民 総 生 産 に 占 め る 消 費 割 合 も 増 大 す る こ と か ら , 非 営 利 組 織 体 の 固 有 の 経 済 的 な 非 効 率 性 は 圧 倒 的 に 明 ら か に な っ て き て い る。 そ の 結 果 , 公 共 部 門 は 企 業 の 効 率 性 を 見 習 う べ き だ と い う , 増 大 し つ つ あ る 圧 力 下 に あ る 。」65) と い え る 。 そ こ で ,「『 私 的 営 利 』(privatefor-profit )組 織 体 と 『 公 的 非 営 利 』(publicnot-for-profit ) 組 織 体 と の 区 別 は , 行 動 を 説 明 す る た め に も , あ る い は , 社 会 的 期 待 に 応 え ら れ る 新 し い 形 態 を 設 計 す る た め に も , 不 十 分 で あ る よ う に 思 わ れ る 。」66) と し て , 営 利 組 織 体 と 非 営 利 組 織 体 の 両 者 を 「『 環 境 貢 献 組 織 体 』(environment-serving-organization ) の メ ン バ ー 」67) と し て 扱 っ て い
るレ これらの組織体 の主 要 な機 能は,
「社会 に対 して財貨 とサービ ス,もし く
はどちらか一 方 を供 給 す る」68)こ とで あ る69
)
。
このESO (environment-serving-organization,]<X
下 こ れをESO
と略称
す る。)の中で も,両極端 に属 す る企業 と非営利 組織体 は明 ら かに異 なっ てい
る。ただし,
「共通 変数 を もつ 中間の領域で は,相互 にか な りの部分 が重複し
てい るこ とも分 か る。 また, 現代 の社会的 な傾向 は, こ うした重 複の増大で
あ るというこ とも分 か る。」70)とい える。ESO
の具体的 な内 容 として は「企業 ,病 院,大学,教会 ,郵 便局 や 自動車
免許登録所 (anautomotivelicenceregistrationburear
) の よう な政 府 の
サ ービ ス提供支 局 (servicesrenderingbranchesofthegovernment
)
等」71
)があ り,ESO
に含 まれてい ない組織体 には,
「非公式 の社 会 ク ラブ の様
な組織体,外 部の顧 客 に対 して具体的 な製品あ るいはサー ビ スを もた ない政
府 の立法,司法, 行政 の各支 局等」72)があ る。
非営利組織体 の環境 は,Ansoff によれば,
「20 世紀の ほ とん どを通 じ て,企
業 の環境 に比 べて荒 れ具合 が少 なかっ た。」73)
とい える。 その 理由の ひ とつ と
して,企業 が社会 の 中心であ っ たこ とが挙 げら れよ う。しかし,
「政 府支出 と
社会福祉支出 の爆 発的 な増大 は, 非効串 を許容で きない ところ に まで 達して
きた。 その結果, 非営利 組織 体 に対 しては,企業 の効串 を見習 うべ きで あ る
とい う圧力が,徐 々 に増大 してい る。」74)こ とも事 実であ る。 こ れは,「 わず
かの間 に, 非営利 組織体 の 静止状 態であっ た環境 は, 非常 に大 荒 れに なって
きた。」75)こ とを意味 して い る。したがっ て,営利 組織体 と非営利 組織体 との
間で は, 重複す る部分 が多 くなっ て きてい る ともい える76)
。Ansoff
のESO の 考 え方 は, 営利 組織体 と非営利組織 体の どちか ら一 方を中
心 とす る, あ るいは主 とす る考 え方で はなく, 両 者を相含 した もので あ ると
い える。 こ れは,井 上円 了 の主 張 とも共通す る考 え方で あ る ともい えよ う。
そこで, 次章で は, 井上 円了 の考 え方 につい て考察 す るこ と とす る。
IV. 相含 説
井上円了 は, 哲学 界の現 状 を「思 想界の独立心 に乏し きは, 有識 の士だ れ
か一驚 を喫 せざ るを得 んや。 その言動た る。
や一 も西洋 を写 し, 二 も西洋 にな
らい, 三 も西洋 に擬 せ ん とし, か れ笑 えば われ もまた笑 い, か れ泣 けば われ
もまた泣 き,一 箪,一笑 ぱ もちろん,一 挙手一 投足 に至 る まで, 風 夜孔々,
非 営利 組織体会計 の基礎 一会計 実体 としての非営利 組織 体の概 念 につ いて−49 た だ か れ の い う と こ ろ を 守 り , か れ の な す と こ ろ を 学 ば ん と し , こ れ 日 も 足 ら ざ る が ご と き 状 態 な り 。 し た が っ て 哲 学 界 の 光 景 は 概 し て 凄 風 蕭 雨 , 満 目 荒 涼 の 観 を 呈 す , あ に 長 嘆 の 至 り な ら ず や 。」77) と 憤 慨 し ,「 独 立 の 見 地 に 立 ち て , 西 人 未 到 の 学 域 に 先 鞭 を つ け ん と 欲 し , 多 年 研 讃 の 末 , よ う や く 一 新 案 を 考 定 す る に 至 れ り 。」78) と し て 『 哲 学 新 案 』 を 著 し た 。 円 了 は 狭 義 の 哲 学 す な わ ち 純 哲 学 の 目 的 を 「 各 方 面 よ り 観 察 を 下 し , 宇 宙 の 真 相 を 究 明 開 示 す る に あ り 」79)と 解 し て , 本 書 に お い て 宇 宙 を 論 じ て い る 。 各 方 面 よ り の 観 察 と は ,「 観 察 の 方 面 を 便 宜 の た め 表 裏 両 観 に 分 か ち ,更 に そ の 表 観 を 内 外 両 観 に 分 か ち , 更 に ま た 外 観 を 縦 観 横 観 に 分 か ち 」80) 観 察 す る こ とで あ る ( 図 Ⅳ −1 を 参 照 。)。 こ れ は ,「 富 士 山 を 観 察 せ ん と す る に , 大 宮 口 よ り す る も あ る べ く , 吉 田 口 よ り す る も あ る べ く , 須 走 口 よ り す る も あ る べ し 。 こ の 各 方 面 の 所 見 を 集 合 し て , 始 め て 富 岳 の 真 相 を 知 了 す る 」81) よ う な こ とだ と 説 明 し て い る 。 円 了 は 「 総 合 の 大 観 」82)を 主 張 し て い る の で あ る 。
図IV −1
縦 観
表 観
外 観
パ:
横
丿観
・ 回
≪
于
■
裏 観
一 丿
¨
現 観
資 料出所 : 東 洋 大 学 創 立100 周 年 記 念 論 文 編 纂 委 員 会 編『井 上 円 了 選 集 第 一 巻 』 所 収 , 東 洋 大 学,1987 年,286 頁。 た だ し,「過 観 」,「現 観 」 は筆 者 が つ け 加 え た。円了は外観 につ い て,
「吾 人 は耳 目等 の感官 を有 す。こ れすな わ ち心内 よ り
身外をうかが うべ き唯一 の窓 な り。 しかしてこの心窓 に映 じ きた る対境 を客
観 という。 この客観 の真相 を観察 す るは, 余の いわゆ る外観 な り。」83)とし,
さ らに,
「 もし客観 の大 初 にさ かのぼ り,いかに して世 界の開 発 せしか,いか
にして万物 の生起 せ しかを究 明す る。」84)こ とを縦観 と呼び,「 目前の世 界を
解 剖分 解し,その体 の なに もの よ り成 るかを 開説す る。」85)
こ とを横観 と呼 ん
で い る。
▽
円了 は縦観論 において, 宇宙 は進化 あ るい は退 化 し続 け る もので はな く,
輪化 す るものであ るとして,
「輪化 説」 を説い てい る。つ まり,宇宙 は「進化
退化 を無 限無 窮 に反復 し, その一 大 進化,一 大退 化 を もっ て一 世 界の大化 を
完了 す るな り。 すな わち一 界紀 は星 雲 よ り進化 して天地万 象を開眼 し, よう
や く退化 して これを閉合 し, つい に星 雲 に帰す るに至 る。果 た してしか らば
宇宙 の大法 は, 進化 にあ らず退化 にあ らず, 輪化 なり とい わざ るを得ず。 あ
たか も地球 の旋転 するがご とく, 車輪 の回 転す るがご とく, 世界 は縦 に古今
に わた りて輪 転す るな り。」86)として, こ れを輪化 説 と呼 んで ぃ る87)
。
円 了 は縦観 論 に続 いて,物的現 象 と心的現 象 の関係を論 究す るた めに, 横
観論 を展 開す る88)
。
物質 の変化 は, 例 えば, あ る原因 があ り, その 原因 にふさ わしい結果 が生
じ る とい う因果 法 によっ て説 明さ れ るが,円 了 はこ の因果 法 を指示 してい る。
つ ま り,
「物 質の変化 は因果 の大法 に よりて支 配 せ られ,その変化 は勢力の発
動 に外 ならざ れば, 因果法 は物 力=者 に関係 す るこ と言 を待 たず。 ……(中
略)……万 象の一変一化,すべて 因果 の連 鎖 によ りて結合せ らる るな り。
」89)
(点線 部分 は筆 者 による。) とし,「故 に因果 よ く物 象を 造 り, また よくこ れ
を破 るの力あ り となす。」90)として, その力を 「因力」 と呼んで い る。
円了 のい う因果法 とは具体的,客観 的,実質的,活動的 な因果で あ る91
)
。さ
らに,「因心」 につ いては次 の ように説明 して い る。
「余 は具体的 に因果 説を とり,万 物 の変 々化 々 す るは因力の しか らしむ る
ところ な りとなす。 天気の晴 雨, 草木 の栄 枯, 人獣 の死 生 に至 るまで, みな
因力の招致 す る結果 ならざ るなし。 しかし て その因 力が物質 を吸 引し招集 し
て,一 物一体 を結成す るに, 必ず その 中心 なか るべか らず。 これを因心 と名
付 く。」92)
この因 力は宇宙 の結果で あ り,因心 は この中心であ るとい うので あ
る。 こ のよ うに, 円 了は因心 説 を展開 してい るのであ る。
円 了 は輪化 説 と因心 説を主 張 したが,円 了 白身 が最 も主張 した かったのは,
む しろ「相含 説」で はなかっ たか と思 われる。円 了 は前掲書の中で,多 くの
こ とを相 含 説で 説明 してい る。以 下で は その う ちの い くつかを取 り挙げ, 相
含 説 につ いて考察 す る。
まず,元素 につい て,物力相含 説 を主 張 して い る。
「元 素を解 し て無形 中に
非営利 組織 体会 計の基 礎 一会 計実体 とし ての非営利 組織体 の概念 について−51 有 形 を 含 み , 有 形 中 に 無 形 を 含 む 。 す な わ ち 有 形 無 形 の 相 含 と な す 。 換 言 す れ ば , 物 質 性 , 非 物 質 性 の 相 含 な り 。 も し そ の 非 物 質 性 を 勢 力 と す れ ば , 物 質 と勢 力 の 相 含 と な る 。 こ れ を 余 は 物 力 相 合 説 と 名 付 く 。」93) 円 了 に よ れ ば , 現 象 と し て の 物 質 と勢 力 を そ れ ぞ れ 物 象 , 力 象 と 呼 ん で い る 。 ま た , 物 象 と 力 象 の 本 体 を 物 元 , 力 元 と 呼 ん で い る 。 こ れ ら の 関 係 に つ い て も 相 含 説 を 唱 え て い る 。 「 元 来 現 象 と 本 体 と は 不 一 不 二 の 関 係 を 有 し , 互 い に 相 包 含 し , 象 の 中 に 体 を 含 む と 同 時 に , 体 の 中 に 象 を 含 む 。 余 は こ の 関 係 を 体 象 相 含 , あ る い ぱ 象 如 相 含 , ま た は 象 元 相 含 説 と い う 。」94)円 了 は 前 掲 書 の 他 の 箇 所 に お い て も 同 様 に 延 べ て お り95) 如 と元 を 同 じ 意 味 で 用 い て い る と 解 さ れ る 。 ま た 宇 宙 自 体 の 物 質 と 勢 力 に つ い て も,「 互 い に 関 連 し ,互 い に 包 含 せ る を もっ て , 宇 宙 の 活 動 は す な わ ち 勢 力 の 活 動 な り , 勢 力 の 活 動 は す な わ ち 物 質 の 活 動 な り 。」96)と し て い る 。 内 観 論 で は , 物 界 と 心 界 も 相 含 関 係 で あ る と し て い る 。 つ ま り ,「 外 界 よ り 見 れ ば , 心 界 は 物 界 よ り 生 ず る が ご と く に 感 じ , 内 界 よ り 観 ず れ ば , 物 界 は 心 界 よ り 出 づ る 」97)よ う な も の で ,「 心 界 は 物 界 の 中 に あ る こ と は , 何 人 と い え ど も た や す く 了 解 す る と こ ろ に し て , 更 に 深 く 推 究 す れ ば , 物 界 か え っ て 心 界 の 中 に あ る を 見 る 。」98)こ と に な る 。 こ れ は , 大 地 に 立 っ て 空 と地 面 と を 見 る と, 空 と 地 面 は 眼 の 前 に 存 在 し て い る が , 同 時 に , 空 と地 面 は 眼 に 映 っ て い る ( 眼 の 中 に 存 在 し て い る ) と い う こ と で あ る 。 さ ら に , 心 如 と 心 象 も 相 含 し て い る こ と に な り99)象 如 相 含 は 内 観 と外 観 の そ れ ぞ れ で 成 り立 つ こ と に な る100)。 ま た , 物 如 と 心 如 も 相 含 し て い る こ と に な る101)。 こ れ ら の 他 に , 円 了 は 無 限 大 と 無 限 小 の 関 係 や102), 必 然 と 自 由 の 関 係103)も 相 含 で あ る と し て い る 。 円 了 は 純 哲 学 の 目 的 , つ ま り , 宇 宙 の 究 明 を 試 み た 。 宇 宙 を 時 間 と空 間 で 説 明 す る こ と も で き よ う が104),円 了 は 相 含 説 に よ っ て ,「 宇 宙 の 真 相 を 約 言 す る に , 外 観 に あ り て も 象 如 相 含 , 内 観 に あ り て も 象 如 相 含 , こ れ を 総 合 す れ ば 如 々 相 含 と な る 。」105ト と主 張 し て い る106)。 円 了 自 身 が 最 も 主 張 し た か っ た の は , 輪 化 説 や 因 心 説 で は な く , 相 含 説 で あ っ た107≒ ま た , 物 の 見 方 ・ 考 え 方 , 言 い 換 え れ ば 観 察 は , 一 方 面 か ら だ け で は な く 他 方 面 か ら も 行 な う こ と の 重 要 性 , さ ら に , 種 々 の 観 察 を 認 め な が ら 総 合 し て い く こ と の 大 切 さ を も ,同 時 に 指 摘 し た か っ た の で ぱ な か ろ う か 。
最 後 に,井 上円了 が鏡 を例 とし て述 べ た一節 を,相含 説を理解 す るための
一助 として掲 げてお こ う。
「ここ に二個 の鏡面あ りて, 互 い に対向 す る ときは, 甲鏡 の中 に乙鏡 を含
むを見, これ と伺 時 に乙鏡 の中 に甲鏡 を含 むを見 る。 か くして その相映 写 す
るこ と重々無尽 な り。」108)
おわり に
非営利 組織 体 の位 置づ けを, 非営利 組織体 の外部 と内部 に分 け て試 みて き
たが,便 宜上 組織体 をい くつ か の範 鴫 に分類 してみ ると√例 えば, 図V の よ
うに まとめられよう。
十
図V で は次 のような軸 によっ て分類 してい る。
ニx
軸 :営利 ・非営利 とい う利益動 機 を基 準 とす る。y
軸 :公営 ・私営 とい う経営形 態 を基 準 とす る。z
軸 :公共性 (あ るいはサ ービ ス受益 者) を基準 とす る。I
:非営利 事業 体 に の他 に政 府 ・地方 自治体 を含む広 い意味の用 語 とし
て「非営利 組織体」 を用い たた め, それと区 別す るた めに「事業体 」
とした。)
。II:
政 府,地 方自治体。Ill:
公企業。
Ⅳ :ここ には,例 えば,1985 年4 月1 日に発足 したNTT
や,1987 年4 月1
日 に発足 したJR 各社 等が含 まれ よう。V
:私企業。
Ⅵ :例 えば,会 員制 の私的 サービ ス団体等,I
の一 部が含 まれ るか もしれ
ない。
\
十
以上 は便宜上 の分類で あっ て, なお, 境 界線 は不 明瞭 な ところ もあ る。 ま
た,X 軸 とy 軸 の2 つ に よる分類 も, 分類 を簡 素化 す る という点で は, ひ と
つの分類 の仕方 とい え るか もしれ ない。Ansoff
のESO や井上 円 了 の相 含説 の考 え方 は,I からⅥ まで をひ とつ のか
た まりとして考 え, それぞ れに容積 の大 小 をつ けない とい うこ とで は なかろ
うか。 ここで は非営利 事業 体 を1 としたが,軸 を変 えれば (営 利・ 非営利,
私営 ・公営, 私 的・公共 的の それぞ れを逆 にす れば),V の私企業 はII に来 る
し,II の政府 ・地方 自治体 はV に位 置 す るこ とになる。つ まり, それぞれの
非営利 組織体会計の 基礎- 会 計 実体 とし ての非営利 組 織体の概念について−53 組 織 体 か ら み れ ば 自 分 が 中 心 と な る が , 別 の 組 織 体 か ら み れ ば そ れ は 中 心 で は な く な る こ と に な る 。 こ の よ う に , そ れ ぞ れ の 視 点 か ら 組 織 体 全 体 ( ひ と つ の か た ま り ) を 考 え る と い う こ と も, 会 計 体 系 の あ り 方 を 探 る ひ と つ の 考 え 方 と い え よ う 。 も ち ろ ん 同 時 に そ れ ぞ れ の 組 織 体 独 白 の 研 究 も さ れ る べ き で あ る 。 公 共 的 Z 私的 →
図 一V
営利 X 非営利〈注〉1
) 守永誠治教授によれば,次表のように報告されている。
⊇ノ ]
昭和54年
昭和62年
構成比(62
年)
民法 第34 条法 人
15,267
21,866
9.0
学
校
法
人
4,187
7,010
2.9
社 会 福 祉 法 人
8,014
12,217
5.0
宗
教
法
人
182,491
183,480
75.7
商
工
組
合
5,224
3,995
1.7
労
働
組
合
4,052
4,929
2.0
そ
の
他
15,297
8,886
3.7
合
計
234,532
242,383
100
資 料 出 所 : 守 永 誠 治 著 『非 営 利 組 織 体 会 計 の 研 究 』, 慶 灘 通 信,1989 年 ,4 頁 。2 ) 「 杉 山 教 授 の 調 査 研 究 に よ れ ば , ア メ リ カ 合 衆 国 で は , 連 邦 , 州 な ど の 政 府 公 共 団 体 , 大 学 な ど の 教 育 機 関 , 医 療 機 関 , 宗 教 団 体 , 慈 善 団 体 及 び 財 団 な ど の 営 利 を 主 た る 目 的 と し な い 組 織 体 の 支 出 が ,社 会 全 体 の3 分 の1 を 占 め る に 至 っ て い る と 報 告 さ れ て い る 。」(同 上 書,3 頁 。)3 )NonprofitOrganizations と い う 用 語 は , 連 邦 政 府 の 法 令 上 で 用 い ら れ,Not-for-ProfitOrganizations と い う 用 語 は, ア メ リ カ 会 計 学 会 で 使 わ れ,NonbusinessOrganizations とい う用 語IX, ア メ リ カ財 務 会 計 基 準 審 議 会 やAnthony 等 が 使 用 し て い る 。 こ れ ら の 用 語 の 使 用 例 に つ い て は , 以 下 を 参 照 さ れ た し。 会 田 義 雄 稿 「 非 営 利 組 織 体 の 財 務 諸 表 の あ り 方 一 公 益 法 人 会 計 基 準 の 見 通 し に 関 連 し て ー 」,『 企 業 会 計 』, 税 務 経 理 協 会 ,1984 年,Vol.36,No.3,7 −8 頁 。 若 林 茂 信 著r 新 ア メ リ カ イ ギ リ ス 公 会 計 一 制 度 と実 務 −J, 高 文 堂 出 版 社,1987 年,14 −15 頁 。4)Anthony に よ れ ば,「NonbusinessOrganizations は 通 常, 政 府(government ) ミ
と 非 営 利(nonprofit )の2 つ の 範 鴫 に 分 け ら れ る。
」と し て い る。(R.N.Anthony,ShouldBusinessandNonhusinessAccountingBeDifferent?,HarvardBusinessSchoolPress,Boston,Massachusetts,1988,p.ll
)。5
非営利 組織体会 計の基 礎 一会計 実体 としての非 営利 組織 体の概念 につい て−556 )lbid.7 )R.N.Anthony,op.cit 。p.ll.8 ) 「 利 益 動 機 は 実 質 的 な 基 準 で あ り, ま た 主 観 的 な も の で もあ る 。」( 会 田 一 雄 稿 「 非 営 利 組 織 体 会 計 の 基 本 問 題 」,『 企 業 会 計 』,Vol.33,No.7,1981 年7 月,106 頁 。)。9
)FASB に よ れ ば ,「 持 分 (equity ) あ る い は 純 資 産 (netassets ) と は , 負 債 を 控 除 し た 後 に 残 っ た , 実 体 の 資 産 の 残 余 部 分 (theresidualinterest) の こ と。」 で あ る(FASB,FinancialAccountingseries.Statemento チFinancialAccountingConseptsNo.6,ElementsofFinancialStatements,areplacementofFASB 犬ConceptsStatementNo.3(incoorporatinganamendmentofFASBConceptsstatementNo.2),FASB,HighRidgePark,Stamford,Connecticut,1985,par.49 )。つ ま り ,FASB は 純 資 産 を 持 分 と同 じ 意 味 で 用 い て お り ,「 営 利 企 業(businessenterprise )の 持 分 あ る い は 非 営 利 組 織 体 の 純 資 産 の ど ち ら も,実 体 の 資 産 と 負 債 の 差 額 で あ る 。」 と定 義 し て い る (/bid.,par.5O.) 。 ま た , 非 営 利 組 織 体 の 純 資 産 と営 利 企 業 の 持 分 と の 相 違 点 に 関 し て ,「 非 営 利 組 織 体 の 純 資 産 は ,営 利 企 業 の 持 分 とは 対 照 的 に , 所 有 主 持 分 (ownershipinterest) で な は い 。 非 営 利 組 織 体 の 顕 著 な る特 性 は ,営 利 企 業 で ぃ う と こ ろ の 所 有 主 持 分 が 欠 如 し て い る こ と。」と し て い る(/hid.,par.9O. )。10 )AAA,ReportoftheComitteeonAccountingPracticesofNot-for-ProfitOrganizations,TheAccountingReview ,SupplementtoVol. χLVL,1971P.94. こ の 報 告 書 で は , 非 営 利 組 織 体 と営 利 組 織 体 と の 分 類 基 準 と し て , 利 益 動 機 の 他 に,持 分 権 を 掲 げ ,非 営 利 祖 織 体 と は ,個 人 的 に 所 有 さ れ る 持 分 権 が な い こ と, 持 分 権 は 譲 渡 も 交 換 も さ れ な い こ と 等 の 基 準 を 満 た し て い る 組 織 体 で あ る と し て い る11 ) 「"nonprofit" と は, (1)利 益 を 挙 げ る こ と を 主 な 目 的 と し て 運 営 す る も の で は な い こ と,(2)そ の 財 産 又 は 収 入 を 会 員 , 理 事 者 又 は 役 員 に 分 配 し た り , 便 宜 を 与 え た り す る た め に 使 用 で き な い こ と √ 及 び(3)精 算 し た 場 合 , 残 余 財 産 を 他 の 非 営 利 事 業 体 か 州 へ 引 渡 し 特 定 の 個 人 へ 与 え ら れ な い こ と, の3 条 件 を 満 た す も の で な け れ ば な ら な い こ と に な っ て い る と い わ れ る。」( 若 林 茂 信, 前 掲 書,15 −16 頁 。)12 )R.N.Anthony,op.cit ,pよ13 )FASB,StatementNo.4,op.cit.,par.15.14 ) 「 営 利 企 業 と非 営 利 団 体 と の 最 も 重 要 な 相 違 点 は 営 利 企 業 に は 所 有 主 ( 株 主 ) の 存 在 で あ る 。 さ ら に , 営 利 企 業 は そ の 稼 得 し た 利 益 を そ の 企 業 の 所 有 主 お よ び そ の 経 営 の 受 託 者 ( 経 営 者 ) に 配 分 す る こ と を 目 的 と し て い る の に 対 し て , 非 営 利 団 体 は た と え 利 益 を 稼 得 し て も , そ の 利 益 を 配 分 す る 所 有 主 も存 在 し て い な い
し, また その経営 の受託者 に も利益 を配分 す る必要 ぱな いし, それは目的で はな い。非 営利団 体は稼得 した利益 があ れば通常 は その 組織 内 に留保 さ れて その非営 利団体 の事業 目的のた めに再利用 さ れるのであ る。」(河田清 一郎稿「非営利団体 会 計の純 資産概念 に関する一 考察−FASB 財務会 計概 念 ステイトメント第6 号を中 心 として ー」,今井 信二先生 古稀記念論文編 集委員会 編 『近代 会計の展 開』,千倉 書房,1989 年,74 頁。)15 )FinancilaAccountingStandardsBoard,StatementNo.6,op.cit,par.223.16) 「資源あ るい は資産 は,非営利 組織体 のい わば生 き血(lifeblood)で あ る。さ らに,組織 体は資源提供者 の満足 す るような水準 と質 の財 貨 やサービ スを提供 す るの に少 な く とも十分 な資源 を獲 得で きなけ れば,組織体 の事業 運営 目的を長期 に渡っ て達成 し続 け るのは不 可能で あ る。適切 な財 貨やサ ービ スを提 供しない組 織体 は,事業 活動 を続 け るため に必要 な資源 を獲得 す るこ とがいよい よ困難 にな っ て くる とい うこ とを, しば しば思い知 らさ れるこ とにな る。」(/bid.,par.14.) これ と同様 の主張 は,FASB,StatementNo.4,o ).cit.,卸r 消 にもみられる。17 ) 非営利組 織体 と営利組織体 の相違点 は,「非営利 組織体 は株主 か ら資本を得 るの で はな く, したがっ て配当金 も支払 わない とい うこ と」であ る(R.N.Anthony, ゆ。cit.,p.11.)。18 )FASB は純資 産の増減変化 を強調 してい るが,それ と同様 の主張 もあ る。「資源 の寄 贈者 ぱ その非営利団体が寄贈 した資 源を どの ように利 用 してい るか というこ とに関 心 を持 っ てお り, さ らに, その非営利団 体 の純資産 の増減 に も,彼 らは資 源 の寄贈 を継続 すべ きか どうかを判断 し意思決 定す るた めに,重大な関心 を もっ てい る。(河田 清一郎, 前掲稿,76 頁。)19)R.N.Anthony,op 。冶。p.31.20 )/bid.,p.34./21 )FASB,StatementNoA,op 。ぷ・jpar.l4.22 )R.N.Anthony,op.cit 。P.34.23 )「営利 組織 体 は利益獲得 を第一 義 目的 とし てお り,資 本の 増殖計算 により業績 が測定 さ れる。現行 の企業 会計が適正 な期 間損益 計算 を中 心 課題 としてい るの も, 主要 な任務 の ひ とつ として,正 確 な業 績測 定が求 められて い るた めであ る。」(仝 田一雄, 前掲稿,107 頁。) 「企業 活動 は利 益獲得 を目標 に行 われる。 した がっ て,原則的 には,企業 の業 績評価 は利 益 の多寡 によっ て判断 さ れ る。 このた め,企業会 計 は,外 部報告お よ び内部 報告 の別 を問 わず 利益 測定 を意図 して その フレ ー ム・ワー クがっ くられて い る。」(河野正男稿「公会計 と業 績評価 − ミクロ的 視点 とマ クロ的視点 −」,吉田 寛, 原田富 士雄共編 著 『公会 計 の基 本問題 』, 森山書店,1989 年,39 頁。)
非営 利組織 体会計 の基礎 −会計 実体 としての非営利組 織体 の概念 につい て−5724 )R.N.Anthony,op 。ぷ 。p.34.25 ) 「非 営 利 事 業 の 場 合 , 字 義 ど う り 事 業 活 動 の 目 標 が 営 利 す な わ ち利 益 獲 得 に な い た め, 営 利 を 目 標 と す る企 業 を 対 象 と し て 発 展 し て き た 企 業 会 計 の フ レ ー ム ・ ワ ー ク を そ の ま ま 非 営 利 事 業 に 適 用 し ,企 業 の 損 益 計 算 書 お よ び 貸 借 対 照 表 に 相 当 す る フ ロ ー 表 お よ び ス ト ッ ク 表 を 作 成 し た と し て も, そ の フ ロ ー 表 の 最 終 覧 の 数 値 す な わ ち 当 期 の 経 済 活 動 か ら 得 ら れ た 余 剰 が ど の よ う な 経 済 的 意 味 を 表 現 し て い る か に つ い て は 必 ず し も明 瞭 で は な い 。」( 河 野 正 男 , 前 掲 稿,39 頁 。)26 ) 「非 営 利 組 織 体 に お い て , 利 益 は 目 的 達 成 の 尺 度 とは な ら ず , 営 利 組 織 体 の よ う に は , 純 利 益 が 最 終 成 果 と し て 重 視 さ れ な い の で あ る 。」(会 田 一 雄 , 前 掲 稿 ,107 頁 。)27 )FASB,StatementNoA,op.cit,par.l8.FASB,StatementNo.6,op.cit.,par.18.28 )R.N.Anthony,op.cit,p.23.29 )Ibid,p.24.30 )「 非 営 利 組 織 の 場 合 に は 資 源 提 供 者 で あ る個 人 と組 織 の か か わ り が 多 様 で あ る こ と に 注 意 し な け れ ば な ら な い 。資 源 提 供 者 が 組 織 と の か か わ り を 全 く 自 由 に 決 定 で き る 場 合 か ら そ の よ う な 自 由 の 小 さ な 場 合 まで 様 々 で あ る た め 非 自 発 的 な 資 源 提 供 者 が 登 場 す る 。 こ こ で ぃ う 非 自 発 的 な 資 源 提 供 者 と は 自 発 的 資 源 提 供 者 と の 比 較 に お い て 経 済 的 意 思 決 定 と 結 び つ い た 組 織 選 択 の 自 由 度 が 相 対 的 に 小 さ い もの で あ る 。」(芝 健 次 稿 「 非 営 利 組 織 の 財 務 報 告 目 的 と そ の 計 算 構 造 」, 吉 田 寛 , 原 田 富 士 雄 共 編 著 『公 会 計 の 基 本 問 題 』, 森 山 書 店,1989 年,217 頁 。)31 ) 非 営 利 組 織 体 の 財 務 報 告 の 利 用 者 に つ い て は , ア メ リ カ 公 会 計 基 準 審 議 会 (GovernmentalAccountingStandardsBoard, 以 下,GASB と 略 称 す る。) と ア メ リ カ 財 務 会 計 基 準 審 議 会 の そ れ ぞ れ が 規 定 し て い る 。GASB,GovernmentalAccountingStandardsSeries,ConceptsStatementNo.loftheGovernmentalAccountingStandardsBoard,ObjectivesofFinancial 裁30-31.FASB,StatementNo.4,op.ci 。par.19.32 )TheMunicipalFinanceOfficersAssociationoftheU.S.andCanada,GovernmentalAccounting,Aiditing,andFinancialReporting ,Chicago,1980,pp.1-3. こ こ で は9 つ の 相 違 点 を 挙 げ て い る。 こ の う ち3 つ の 相 違 点 ( 重 要 な 評 価 能 力 の 欠 如 , 統 一 的 目 的 管 理 の 欠 如 , 財 源 の 強 制 的 調 達 と 独 占 的 サ ー ビ ス ) に つ い て は , 以 下 を 参 照 さ れ た し 。
杉山学稿「アメ リカ にお ける地 方 自治体 の業 績評価」,吉田寛,原田富士雄共 編 著 『公会計 の基本問題』,森山 書店,1989 年,135 −137 頁。33
) 加納直人訳『非営利団体 の会計』,(EmersonO.Henke ,AccountingforNonpr 所tOrganizations,WadsworthPublishingCompany,Inc.,Belmont,California,1966.
)好 学社,1973 年,2 頁。34 )同 上 。35 )R.N.Anthony,FinancilaAccountinginNonbusinessOrganizations,AnExploratoryStudyofConceptualIssues,ResearchReport,FASB,HighRidgePark,Stamford,Connecticut,1978,p.161.36 )個 々の依頼人 にサービ スを提供 し,料 金 を徴収 す る組織体で,タ イプA に相当 す る組織 体 と解 さ れる。37 ) 料金 の徴収 をし ない 組織 体で , タ イプB に相 当す る組織体で あ る と解 さ れる。38 )R.N.AnthonyandReginaE.Herzlinger,ManagementControlinNonprofitOrganizations,RichardD.Irwin,Inc.,Illinois,1975,pp.9-11.39 )依 頼 人志向組織体 と公共志向 組織体 の相違 点 につ いては,次 の稿 を参照 された い。会 田一雄稿「非営利 組織体 にお け る業 績 管理会 計」,『三田 経済学 研究』,第21 号,1980 年3 月,20 頁。 そこで は,次 の よ うに まとめ られて い る。 相 違 点
依頼人志向組織体 と公共志向組織体の相違
組
織
体
基 ①財・サ ービ スの提供対照 詣 ② アウトプ ットの測定 可能性 特 ③同 種組織体 の存否 性 ④ 排他性・ 集合消費性 活 ⑤ 活動の定 型性, 反復性 智 ⑥ 資源の源泉 源 ⑦収 入の可変性 業 績 管 理 ⑧ コ スト ・ コン ト ロ ー ル 手 段 ⑨ コ ン ト ロ ー ル時 点 ⑩ 業 績 評 価 の中 心 ⑩ 質 的 要 素 の 発生 形 態 ⑩ 質 的 側 面 の 配 慮 ⑩プ ロ グ ラ ムの 利 用 依 頼 人志 向 組 織 体 依 頼 人 依 頼 人 数 料 金 に よ り 可 能 ( 成果 尺 度 ) 多 数 存 在 排 他 的 ・ 非 集 合 消 費的 定 型 的 ・ 反 復 継 続 的 料 金 が 大 部 分 活 動 量 に対 応 し て 変 動 的 弾 力性 予 算 , 標 準 原 価 計 算 事 後 的 中 心 責 任 構 造 中 心 個 々 の 活 動 毎 に 発 生 依 頼人 の 要 求 料 金 算 定 が 中 心 公 共 志 向 組 織 体 公 共 全 体 困 難 通 常, 一 地 域 内 に ひ とつ 非 排 他 的 ・ 集 合 消 費 的 一 般 に 非 定 型 的 ・ 非 反 復 的 租 税 , 補助 金 , 寄付 金 が大 部 分 固 定 的 定 額 期 間予 算 事 前 的 , 事 中 的 中 心 プ ロ グ ラ ム構 造 中 心 ひ とつ のプ ロ グ ラ ム 全 体 で 発 生 利 用 可 能 資 源 , 大 衆 の ニ ー ズ, 社 会政 策 等 諸 々 の 要 素 業 績 管 理 が 中 心40)GASB,GovernmentalaccountingStardardsSeries,Concepts.StatementNo.l
非営利 組織 体会 計の基礎 一会計実 体 とし ての非営利 組織 体の概念 につ いて−59ofthegovernmentalAccountingstandardsBoard,ObjectivesofFinancilaReporting,GASB,Stamford,Connecticut,May1987.41 )Ibid,par.l7.42 )/bid.,par.43.43 )/bid. 。par.44.44 )/bid.,par.5O.45 )Anthony は ,「 非 営 利 組 織 体 は 通 常2 つ の 範 鴫 に分 け ら れ る。つ ま り,政 府 と 非 営 利(Nonprofit )で あ る。」(R.N.Anthony,ShouldBusinessandNonbusinessAccountingBeDifferent?,op.cit.p.11. ) と も い っ て い る 。46 ) 「 非 営 利 団 体 の 類 型 と し て は,(1)設 立 時 に 基 本 金 を 受 領 し た 後 は 事 業 収 入 や 仝 費 等 で 運 営 さ れ る 独 立 採 算 経 営 の 非 営 利 団 体I, (2)設 立 後 も継 続 的 に 全 部 又 は 一 部 が 租 税 , 補 助 金 , 寄 付 金 等 で 運 営 さ れ る 非 独 立 採 算 経 営 の 非 営 利 団 体 と に 大 別 さ れ る 。」( 河 田 清 一 郎 , 前 掲 稿 ,72 頁 。) こ の 分 類 は,Henke 等 と同 様 の 分 類 で あ る と い え る 。47 ) 例 え ば , 次 の 様 な 形 態 別 の 分 類 もあ る 。 「 ① 政 府 機 能 を 遂 行 す る す べ て の 団 体 , す な わ ち , 政 府 , 地 方 公 共 団 体 , 特 別 地 方 公 共 団 体 , 政 府 機 関 , 特 殊 法 人 等 で あ る 。 い わ ゆ る’政 府 団 体 と は , 地 域 住 民 の 福 祉 を 保 証 す る た め に組 織 化 し 管 轄 化 に お い て い る。 ② 私 的 な サ ー ビ ス団 体 で あ り , 学 校 教 育 , 宗 教 , 慈 善 , 医 療 及 び 社 会 的 サ ー ビ ス を 提 供 す る。 こ れ ら の 団 体 の 公 益 性 は し ば し ば 限 定 さ れ又 は 資 格 制 限 が 生 ず る こ とが あ る。 す な わ ち, 当 該 団 体 の 関 係 者 に 限 定 さ れ る こ と で あ る。 ③ 私 的 サ ー ビ ス 団 体 に し て ,会 員 制 に よ り 運 営 さ れ る 。こ れ ら の 団 体 の形 態 は , メ ン バ ー シ ップ を とっ て い る た め , 受 益 者 は 会 員 に 限 定 さ れ る 。 す な わ ち, そ の 受 益 者 は 当 該 団 体 の 規 則 や 規 定 を 守 る 非 会 員 に も 適 用 さ れ る こ とが あ る 。」( 日 本 公 認 会 計 士 協 会 公 会 計 特 別 委 員 会 編 『公 会 計 制 度 の 解 説 』, ぎ ょ う せ い,1988 年 ,3 頁 。)48 ) 「 広 義 説 と狭 義 説 の 分 岐 点 は 公 企 業 , 主 と し て 公 共 企 業 体 , 公 団 , 事 業 団 , 公 庫 , 金 庫 及 び 特 殊 会 社 その 他 に お け る 政 府 , 地 方 公 共 団 体 所 有 , 又 は か れ ら の 団 体 の 出 資 会 社 , あ る い は , こ れ ら の 団 体 と民 間 の 混 合 出 資 会 社 等 を そ の 領 域 に 含 め る か ど う か に あ る。」(同 上,9 頁 。) と い え る 。49) 「 公 会 計 に か か わ る ア メ リ カ と我 が 国 の 相 違 は , 政 府 概 念 の 考 え方 の 違 い に あ る。」( 同 上 書,10 頁 。)50 ) 若 林 茂 信 , 前 掲 書 。17 頁 。51 ) 同 上 。52 ) 「1972 年 の ア メ リ カ 会 計 学 会 (AAA ) と1977 年 のAAA に よ る主 唱 以 来 , 公 共
部門会計(PublicSectorAccounting )とい う用語は,AAA,1975 年 の年 次大会 (AnnualMeeting )か ら使用 されはじめ,1980 年 の年次大 会 よ り,公共 部門会 計 セクション(PublicSectorAccountingSection ),または公共部門セクション(PublicSectorSection) が設定 され るに至っ た。 摘要領域は公会 計 と同 じ。 か くして最 近で は,公会 計 と公共 部門会計 の用語が論文や著書な どで併 用さ れてい るという 状況で あ る。」(菊 池祥一郎 監訳 『アメリカ公会計 原則』,(NationalCouncilonGovernmentalAccounting,GovernmentalAccountingandFinancial 裁StatesandCanada,Chicago,1979.), 同文館,1986 年,4 頁。)53 )AAA, “ReportoftheCommitteeonConceptsofAccountingApplicabletothePublicSector,1970-71",TheAccontingReview,SupplementtoVol. χLVII,1972,PP.78-106.54 ) 菊地祥一郎, 前掲 書,162 頁。55 ) 若林茂信氏 は,会計 を その実体の経済的性格の差 に着 目 して,非 営利事業体仝 計 と企業会 計 に分 け, さ らに,実体 の法 的社会 的性格 によ りパブ リッ ク・セクタ 一 の会 計 とプ ラ イベ ート・ セクタ ーの会 計 に分 け, それぞ れの関係 を以 下 の図で 示 さ れてい る。