自作教材を活用した指導の工夫 教職教養科目「理科指導法2」の実践を通して
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(2) Ⅱ.自作教材の取り組み 1 教材作りのねらい 学生が「ものづくり」を体験し、その指導を行えるようになることを期待し、次の①~③を目指すこと にした。 ① 知識や法則を活用した「ものづくり」を行う 「ものづくり」を通して、仕組みに関わる知識や法則を考えることは、関係する事物・現象が身近な ものとなり、関連した仕組みや法則を確かなものとして学ぶことができる。 ② 手作業を重視した「ものづくり」を行う 手作業による「ものづくり」は、目指す作品のイメージを構想し、作業手順を考え、それを実践する ことである。これは現実に触れ、考え、働きかける能動的な能力を身に付けることになる。 ③ 「ものづくり」の意義や効果を体得する 「ものづくり」で得られる効果は、①の学びと合わせて、作品を完成することで得られる達成感や成 就感がある。これらは、その後の実践で、自信や意欲として働き、行動力を高め、指導力の向上につな がる。 2 自作教材の内容 1 の①~③を目指すため、モーターの製作を行うことにした。 モーターの製作は、電流の流れや磁界(磁力線)、磁極間の力などを考え、回転運動を継続できる仕組 みを作ることである。一般に行われているモーターの製作は、「回転する電磁石が 2 つの直流モーター」 である場合が多い。このモーターは、電源のスイッチを入れて(スイッチ ON で)も回らず、回すには回 転軸を始動しなければならない。スイッチ ON で回るモーターは、ローターが 3 つ以上必要である (※ 3)。 ここで製作するモーターは、「スイッチ ON で回る」ことを条件とし、「3 ローター式直流モーター」(回 転する電磁石が 3 つのモーター)とした。難しい製作ではあるが、モーター本来の仕組みを考え、その仕 組みを実現することを重視した。また、「スイッチ ON で回る」ことを、モーター完成の目安とし、学生 が製作したモーターの評価を行うことにした。 3 自作教材の材料 材料は、手作りしやすい材料を使用することにした。 表1 使用したモーターの材料 部. 品. 本体枠 ローターの型. 材. 料. 牛乳パック紙. 部. 品. 材. 料. 回転軸. 竹ひご. 整流子. プラスチック製のパイプ、銅板. ローターの鉄心. 釘. ブラシ. プラスチック製の板、銅板. コイル. エナメル線. 導線. ビニール銅線(赤、緑). 磁石. フェライト磁石. 磁界分散器. トタン板. 厚板と台木. 木板. 補強材. 塩ビパイプ、シリコンチューブ. この他に、プレス用型板、プレス棒、両面テープ、ホッチキス、布やすりを使用。. 4 教材作成の方法 学生が行う教材作成は、次の「3 ローター式直流モーター作製マニュアル」をもとに行った。. ― 150 ―.
(3) 東京理科大学教職教育研究 第 3 号. 3 ローター式直流モーター作製マニュアル(※ 4). ― 151 ―.
(4) ― 152 ―.
(5) 東京理科大学教職教育研究 第 3 号. ― 153 ―.
(6) ― 154 ―.
(7) 東京理科大学教職教育研究 第 3 号. ― 155 ―.
(8) 図 1 完成したモーター. 図 2 3 ローター式直流モーターの説明用パネル. Ⅲ.自作教材を利用した授業 1 授業実践の内容 後期の「理科指導法 2」の受講 生 18 名に教材作りとして手作り によるモーターの製作を実施した。 前の授業で、教材作りを予告し、 図 3 の課題①を課し、宿題とした。 この課題は、モーターを作る上で 必要な知識である「電流による磁 界のでき方(右ねじの法則)」を 復習し、「コイルに電流を流した ときの磁界のでき方」を表現する ワークシートである。 これは、学生が日常生活で電流 による磁界を考えることが少な く、中学校で学んだ「磁界」や「磁 力線」について再確認する機会と した。 この「モーター作り」の授業は、 次の 2 回の授業で行うことにした。. 図 3 課題①. ― 156 ―. 右ねじの法則の復習と応用.
(9) 東京理科大学教職教育研究 第 3 号. (1 回目の授業) 教材の説明と教材作り、課題②の指示 課題①をもとに、自作した図 2 の「3 ローター式直流モーターの説明用パネ ル」で 3 ローター式直流モーターの仕 組みを説明した。ここでは、コイルの 電流の向きが整流子によって変わり、 電磁石の極が変わることをパネルで示 し、ローターが回り続けることを確認 した。その後、上記の「3 ローター式 直流モーター作製マニュアル」をもと に手作業でモーター作りを行った。 ここでは課題②として、図 4 の「モー ターの原理を考える」ワークシートを 宿題とし、次回提出するよう指示した。 (2 回目の授業) 教材の完成と始動・ 調整・審査、課題②の提出 モーターが完成した者から、スイッ チ ON でローターが回るか試動を行 い、回らなければ原因を調べ、不具合 を直させ、審査を行って完成度を評価 することにした。 ところが、2 回目の授業でモーター を完成させた学生が 3 名しかおらず、. 図 4 課題② モーターの原理を考える. 次の授業を 3 回目として継続すること. にした。3 回目の授業で全員がスイッチ ON で回るモーターを完成させたが、完成に至るまでに個人差が 生じ、全員が審査を終了するまでに 3 回目の授業の全てを要した。なお、モーターの審査が終了した者か ら次の授業の予習を行うことにした。. 図 5 モーター作りの様子. 図 6 モーターの審査. 2 授業実践の結果 授業後に無記名でアンケートを行い、回収できた 16 名の結果が次のようになった。 ○ アンケートを行った学生の内訳 <所属> 応用物理学科 3 名 基礎工学科 13 名 ― 157 ―.
(10) <性別> 男子 13 名 女子 3 名 <理科工作の経験の有無> 経験あり 9 名 経験なし 7 名 ○ 今回のモーター作りについて <難易度> 難しかった 11 名 どちらともいえない 3 名 易しかった 2 名 <興味を持てたか> 興味を持てた 15 名 どちらともいえない 1 名 興味を持てなかった 0 名 <モーターの原理や仕組みを考えられたか> 考えられた 14 名 どちらともいえない 2 名 考えられなかった 0 名 <今回のモーター作りについて> 大変参考になった 6 名 参考になった 10 名 あまり参考にならなかった 0 名 参考にならなかった 0 名 <モーター作りを行った学生のおもな感想> ・モーターの原理については、中学時代に学んだが、実際に作ってみると、ブラシ同士が触れない ように留意するなど、モーターを回すうえでの条件などに気付くことができた。 ・授業で工作を行うことで、モーターに関してより詳しく学ぶことができ、構造について深く理解 することができた。 ・モーターについて興味を持てたが、工作によってモーターの原理や仕組みが理解できたかと言わ れると、参考になったが、理解するにはいたらなかった。しかし、実際に作ることで、想像しや すくなり、やって良かったと感じる。 ・回る仕組みは紙上で磁界などを考えることはあったが、実際に作って確かめたのは初めてだった。 理科工作も初めてだったので楽しく体験することができた。 ・モーターは作製の手順が紙で丁寧に示されていたので割と容易に作ることができたが、最後の実 際に運転させる際の微調整が非常に難しかった。 ・仕組みを理解しながら工作する経験は、生徒にとって非常に有意義な時間になると思う。 ・なぜ巻く向きをそろえるのかなど、生徒に考えさせる良い題材だったと思う。 以上が今回の授業でモーターの製作を行った学生の反応である。課題②で学生にモーターが回る仕組み を考えさせ、レポートとして提出させたが、ほとんどの学生がほぼ正解していた。ただ、ブラシが整流子 の二つの銅板にまたいで接触する場合、その部分のコイルに電流が流れず、鉄心に永久磁石と違う極が発 生して引き合うことに気づいた学生がいなかった。以前の授業では、この現象を指摘できた学生は 20 名 中 1 名だけであった。これは、このような現象に馴染んでおらず、考える機会がなかったことが関係して いると思われる。アンケートの<理科工作の有無>では、ほぼ半数の学生が「工作の経験あり」とあった が、経験の内容が小学校や中学校の授業での経験であり、個人で継続的に行っている者はいなかった。や はり体験の機会が少ないといえる。. Ⅳ まとめと今後の課題 1 まとめ 今回のねらいである『① 知識や法則を活用した「ものづくり」を行う』、『② 手作業を重視した「もの づくり」を行う』、『③「ものづくり」の意義や効果を体得する』は、学生が熱心に取り組んでいた様子と 事後のアンケートから判断して、ほぼ達成できたといえる。 今回は、難しい「ものづくり」となったが「スイッチ ON で回るモーターを作る」という具体的な目標 ― 158 ―.
(11) 東京理科大学教職教育研究 第 3 号. を示すことで、学生が知識を「ものづくり」の中で生かし、意欲的に困難を乗り越えようとしていた。今 後、教師としてこの経験を子供たちの「ものづくり」の指導に生かし、生きて働く能力を育成する力とな ることを期待したい。 2 今後の課題 今回の手作業を重視した「ものづくり」は、学生が個別に作業を行えるよう、製作のためのマニュアル 作りや材料の準備などに多くの時間を要した。また、個々の学生の経験や作業能力の違いで作業進度に時 間差が生じたこと、電源装置や工作用具の数が充分でなく、作業を思うように進められなかったことなど の要因で、完成までに予想以上の時間がかかった。今後は、これらの条件整備や準備を充分行い、学生の 「確かな能力」の育成を効果的に行えるようにしたい。 参考文献 (※ 1)尾本惠市 岩波書店 ゲノムから進化を考える 5 ヒトはいかにして生まれたか . 1998 年 3 月 pp86 ~ 103. (※ 2)文部科学省 実教出版株式会社 高等学校学習指導要領解説 理科編 理数編 2000 年 12 月 pp3 ~ 4 (※ 3)井出萬盛 秀和システム よくわかる最新モータ技術の基本とメカニズム 2004 年 12 月 pp38 ~ 52 (※ 4)永山嘉昭 日経 BP 社 説得できる図解作成の鉄則. ― 159 ―. 2004 年 7 月 pp16 ~ 187.
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