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ロックフィルダム建設における原位置問題に対する実証的研究

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Academic year: 2021

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Title ロックフィルダム建設における原位置問題に対する実証的研究( 本文(Fulltext) ) Author(s) 千原, 英司 Report No.(Doctoral Degree) 博士(農学) 乙第153号 Issue Date 2019-03-13 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/77975 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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ロックフィルダム建設における原位置問題に

ロックフィルダム建設における原位置問題に

対する実証的研究

対する実証的研究

2018年

岐阜大学大学院連合農学研究科

岐阜大学大学院連合農学研究科

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ロックフィルダム建設における原位置問題に

ロックフィルダム建設における原位置問題に

対する実証的研究

対する実証的研究

2018年

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目次

第1 章 第1 章 1.1研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 第2 章 アルカリ骨材反応により損傷したコンクリート構造物の評価 第2 章 アルカリ骨材反応により損傷したコンクリート構造物の評価 2.1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2.2 事故状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 2.3 アルカリシリカ反応性試験法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2.4 洪水吐コンクリートの調査及びその結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 2.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 2.6 今後のASRが想定されるコンクリート構造の調査と評価に対する提言・21 第3 章 変形性地盤において外防水止水板を用いた監査廊構造 第3 章 変形性地盤において外防水止水板を用いた監査廊構造 3.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 3.2 建設地点の基礎地盤と変形予測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 3.3 監査廊継目構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 3.4 外防水止水構造の性能確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 3.5 設置と監視計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 3.6 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38

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第4 章 岩石の風化が材料の透水性/せん断強度に与える影響と評価 第4 章 岩石の風化が材料の透水性/せん断強度に与える影響と評価 4.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 4.2 利用材料の性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 4.3 岩石の風化が遮水性材料に与える影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 4.4 岩石の風化がロック材料に与える影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 4.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 第5 章 結 論 第5 章 結 論 5.1 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 5.2 今後の問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66 付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 謝 辞 謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73

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第1 章 序論

第1 章 序論

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.1 研究の背景

研究の背景

我が国では,戦後の食料増産を目的として日本全国においてかんがい排水事業が 実施された。昭和20年代より昭和50年代の目的は米の増産を主目的とし,その後の 基盤整備事業では畑地灌漑や排水事業による畑地作物の安定的生産を目的とした 事業展開がなされた。これらの事業では農業展開の根幹となる安定的用水確保を目 的として,多くのダム建設が行われた。古来,我が国の農業用水補給用の水源としては, 満濃池に代表されるようなため池が建設されてきた。これに対し,戦後の国営かんがい 排水事業では,受益面積3,000ha以上とする国営事業採択面積に対応する大型の水 源が必要となり,貯水容量も,数百万m3オーダーから数千万m3オーダーの大型ダム の建設が実施された。当時,このような大型ダムの建設技術は,我が国には確立された ものがなかったため,当時の農林省では,アメリカの開拓局U.S.B.R.(United States Bureau of Reclamation)から導入した基準を和訳し,その作業と平行にダム建設が行わ れてきた。建設されたダムの形式には,コンクリートを主たる材料とした,重力式コンクリ ートダムやアーチダムが主に建設された。また,土石材料を用いたフィルダムでは,大き な岩石材料を用いないアースダムや,岩石材料を含み,高い堤高のダム建設も行えるロ ックフィルダム建設も行われた。

これらの建設技術は,先に述べたアメリカ開拓局が用いていた,コンクリートダムの設 計手法を示した,Design of Gravity Damや土石材料の運用の仕方を示したEarth Manual等の文献等が我々の時代にはバイブルとなっていた。昭和30年代からは,我 が国においても多くの研究が進み,事業のバックボーンとなる設計基準等の整備もなさ れ,これに基づき多くのダム建設がなされてきた。建設の中で,技術は研鑽され,新たに

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2 蓄積された技術が建設現場に応用される,それが昭和から平成にかけて展開されてき たダム建設技術であったと考える。 著者は,農業土木をメインとするコンサルタントに昭和53年に入社し,約40年間農 業用ダム建設の調査設計・施工指導に当たってきた。その40年間は,我が国のダム 建設技術が大きく進展した時代であったと言っても過言では無い。 いっぽう,農業土木の学問は経験工学的要素を持つ学問であると教えられてきた。 例えば,近代的フィルダム建設技術の一つに土の締固めの進展とその理論化がある が,その元になっている1933年に示されたプロクター(Proctor)の締固めに関する考え 方の根幹は,彼が従事したフィルダム建設現場に適合する論理の集大成であると言わ れている。このようにフィルダム建設技術と発展への原動力となった問題の原点は現 地にあり,これに対応する論理的アプローチや集大成が建設技術の進展に大きく寄与 していたと考える。 平成に入り,大きな受益面積を有する農業基盤整備事業はおおむね完了し,平成の 終わりとともに農林水産省が行う大型のダム建設もほぼ完了する事となった。しかし,我 が国の食の安全と国民への安定した食料供給を行うには,我が国農業や食料生産の 基盤となる農地,これを支える水源施設の健全な機能継続が必要である事は言うまで もない。そのためには,水源施設に対する適切な維持管理が必要であり,状況に応じ て,補修,改修の必要性が生じる場合もある。これに対応するには,建設時代の,それぞ れの現場に応じて適用された対応技術を記録しておく必要があると考えている。特に, 我が国の地質構造は,中古性代からの長い時間をかけたプレートの移動の影響を受 けていることや,新生代に起きた火山活動等の影響を受けており,それぞれのダム現場 において固有の地質的問題を抱えていた事から,その対応も様々な対応が行われてき た。

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3 その様々な問題と,その問題に対する技術的対応の記録を残しておけば,何れかの 時代に誰かの力を借りることになるが,やがては体系化され新しい技術の発展に繋がる のでは無いかと考える。ここで示す記録と,幾つかの対応は,この時代のダム建設に生 きてきた技術者の最後の責任ではないかと考えている。

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研究の目的

研究の目的

本研究は,進化するダム建設技術の中において,原位置に発生した問題への対応の ために実施した幾つかの手法や事例を取り纏めたものと考えている。現場発生問題で は,問題への対応として,既往の基準や試験方法では評価や問題の解決が難しい場合 がある。このような場合,問題解決へ向けては,既往の試験をアレンジした試験を行う必 要がある。また,そのデータの評価・分析により,新たな発見も生まれることがある。また, 問題への対応のため新たな素材の開発や,そのための性能評価試験を行うことも必要 となる場合も生じる。特に,新たな素材開発では,ダムの耐久年数や素材の長期的性能 を確認する必要があり,様々な角度からの検証が必要と考えられる。 このような,原位置に発生した問題への対応のために新たに行った素材の開発や, 試験方法を整理・記録しておくことは,新たな技術開発に繋がるものと著者は考えてい る。私が生まれ育った熊本県には,通潤橋という江戸時代に建設された水路橋がある。 約10年ほど前にその改修工事が行われた。水路橋の天端に設置された水路構造は, 四角く切り出した石の中心をくり抜き,そろばん玉のように連続した構造とし,その継目 には,止水のためのある物質が継目に掘られた溝に埋め込まれていた。改修では,古 来の手法を再現すべく多くの素材を用いた試行錯誤が成されたが,最終的には,松ヤ ニと石灰の混合材を用いたと聞いている。改修工事が向き合った難問の一つは,その 素材の記録が無かった事であった。このように,経験の中で培われた技術は記録する

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4 ことにより次世代に繋がってゆくものであると著者は考える。この論文では,私が経験し た幾つかの技術について取り纏めているが,それは,通潤橋の問題と同様に,某かの記 録を残すことにより後生の技術者の何かに役立てれば良いと考えていたものである。 例えば,第2章では完成後約30年を経過した壁高14mの擁壁が天端から8mの 地点で折れ,倒壊した事故を取り扱っている。事故の原因は,周辺のコンクリート表面の 亀裂等からアルカリ骨材反応の可能性も指摘されていた。しかし,倒壊前に実施された 運用中のコンクリート構造物から供試体をコアカッターで抽出し,その残存膨張性を確 認するカナダ法を用いた試験方法では,アルカリ骨材反応は起きていないとの結果が 得られていた。その後,壁は倒壊し,その原因究明が必要となった。そこで,現地観察を 実施したところ,コンクリート表面の観察から,今回の倒壊コンクリートを構成する細骨材 と粗骨材は素材の異なる材料であることが想定された。つまり,倒壊前に実施されたカ ナダ法は,細骨材と粗骨材の合成材を試験しており,アルカリ骨材反応が生じる粗骨材 に注目した試験を実施することとした。そこで,コンクリートを破砕し,コンクリート中から 粗骨材だけを抽出し,これをすり潰し,現在実施されているJIS8401 による,モルタルバ ーを用いたによる膨張促進試験を行った。結果は,粗骨材は大きな膨張性を示し,その 他の観察データ等を含め総合的に倒壊の原因がアルカリ骨材反応であることを確認 し,加えて,倒壊に至るメカニズムを明らかにした。 また,第3章では変形性地盤に建設されたロックフィルダム監査廊において,地盤の 不同沈下により生じる監査廊ジョイントの開口に対し,従来の止水板では開口ジョイント 沿いの浸透経路が生じる恐れがあるため,これに対応可能な新たな止水構造の開発を 行ったが,この開発経緯と新しいシステムであるが故に,その止水性能と施工精度の確 認のため種々の試験を実施し,その記録を取り纏めている。 九州農政局が建設した大型ロックフィルダムとなる天神ダムでは,河床部の基礎地

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5 盤に90mにわたる劣化帯が分布していた。このダムでは,将来の安全管理と補修作業 空間の確保を目的として全線にコンクリート監査廊が設置された。監査廊は,基礎地盤 上に長さ6mのブロック長を標準とするコンクリートカルバートで構成される。基礎地盤 が軟弱な場合,基礎地盤の変形に伴いその継目にはずれや開口が生じ,その解放空 間直上に施工される土質遮水材には,進行性水理破壊の危険性が生じる。従来の止 水板を用いた止水装置は,構造外部からの水の侵入防止だけが,その機能目的であっ たため,構造が不同変形を生じた場合,これに伴う継目沿いの浸透経路形成への抵抗 性は全く無い。そのため,ひとたび完成後に不同変形が生じれば,生命線となる遮水機 能は喪失し,危機的状況に陥る可能性が大きい。 これに対し,最終的に採用した外防水止水構造は,継目に生じた解放空間を更にそ の外側からラッピングし,閉合空間にしてしまう発想から思いついた装置である。その構 造は従来利用された構造ではなかったため,ゴム止水板開発メーカーとの協議を重ね, 構造の設計を行い,試作品を用いた種々の性能試験を行い現地への適用に至った。 施工後から2018年の今日まで,約20年を経過し,折ある毎に現地を訪問,内部から観 察を続けてきたが内部への漏水や周辺の間隙水圧には,浸透破壊を示す症状はなく この装置が目的した機能を発揮している事を確認し,この記録を取り纏めた。 第4章では,北陸農政局が建設した堤高100.4mの近年最も堤高の高い桝谷ダム の築堤材料に関する研究を取り纏めている。1990年から1992年にかけ,社会人修士 コースの中で近藤 武教授に師事し「築堤材料のばらつきに関する一考察」とする修 士論文をまとめた。本学位論文で研究しているのは,修士時代に纏めきれなかった,築 堤材料の地質と風化の違いが与える遮水性とせん断強度特性についてとりまとめを行 っている。昭和後期から平成にかけては,農水省や国土交通省において多くのロックフ ィルダムの建設が行われてきた。その中で,築堤材料に関する報文等は多く示される

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6 が,材料の地質分類を明らかにしたうえで,風化の影響による透水性やせん断強度へ の影響を示したものは少なかった。 フィルダムの遮水材は,一定の粘土(粒径<0.005mm)を保有する粘性土を用いる が,桝谷ダムのように堤高の大きなダムでは,圧密変形を防止するため礫(本論文では 礫系D>4.75mmの中礫を礫として扱っている)の混合割合が大きな材料を用いる。礫 の混入が多い材料の締固め特性は,密度は大きくなるが,僅かな含水比の変化で透水 係数(cm/sec)が大きく変化する。桝谷ダムの場合,遮水材料は周辺の地山から中古生 代の美濃帯風化物を採取したが,地質分布が砂岩と粘板岩の2種類であり,採取深度 による風化の程度も大きな差があった。そのため,地質,風化の二つの要素により透水 性が大きく変化する事から,その材料状態を適切に把握した施工が必要となり,これら の異なる要素を組み合わせ,透水特性や,密度の管理方法に関する分析を行う必要が あった。また,3 種で構成された堤体ロックゾーンの築堤材料は,主として美濃帯の砂岩 の風化物を,風化程度に応じた分級を行い施工が行われた。その分級方法は,岩石の 風化とせん断強度の関係を礫の表乾比重,礫の吸水率を要素とした相関性を導き出し 現地での分級,判定方法への適用を計った。 この論文の中で実施した,試験方法やその評価手法,素材の開発,その性能検証方 法等は,壁の倒壊事故,厳しい地盤条件上でのフィルダム建設,あるいは堤高100mと でありいずれも事例の少ない技術的問題という共通点がある。その記録を,フィルダム 建設における原位置問題に対する実証的研究としてここに取り纏めた。

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章 アルカリ骨材反応により損傷した

コンクリート構造物の評価

章 アルカリ骨材反応により損傷した

コンクリート構造物の評価

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.1 はじめに

はじめに

1970年代初頭,我が国ではアルカリシリカ骨材反応(以下ASR)によるコンクリートの問 題はまれである1)とされていた。しかし,1980年代中期には我が国でもこの問題がクロー ズアップされ,1989年にはJIS規格変更が行われ骨材中のシリカ分の含有量を制限する など抑制対策が実施された事もあり,この問題に対するコンクリートの安全性は高まった。 一方,規制がかかるまでに建設された鉄筋コンクリート構造には,ASR2)を起因とする亀 裂の発達や,これに付随した鉄筋の腐食進行により,破壊に至る危険性が増加している 事も予測される。(なお,アルカリ骨材反応には,アルカリシリカ反応 (ASR) とアルカリ炭 酸反応 (ACR)がある。我が国ではASRが殆どとされ,本稿ではASRの用語を用いる。) ここでは,長崎県で発生した,フィルダム洪水吐コンクリート擁壁の倒壊事故を受けて,そ の原因究明のためカナダ法,化学法,モルタルバー法,SEM-EDS試験等,複数のASR

評価試験を実施した上で,それらから得られた異なる試験結果評価について検討を行 った。

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.2 事故状況

事故状況

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.1 壁の損壊

壁の損壊

事故が発生したのは1972年から1983年にかけて建設されたロックフィルダムの洪水吐 静水池である。事故は,2013年11月末の初冬に発生した。洪水吐の完成は1983年であり, 事故当時,完成後約30年を経過していた。洪水吐の形式は側溝余水吐,水路幅は12 m であり,その静水池左岸側壁(最大壁高H=14.4 m)が天端より約8.0 mの位置で折れて 倒壊した。図-1は倒壊ブロックの概要を示すが,静水池から副ダムにかけて左岸側約37 m,静水池3ブロックと副ダムの1ブロック,合計4ブロックが同時に倒壊した。 図-1 静水池側壁倒壊部概要 本地区ではその前年度,ダム施設のストックマネジメントを目的とした調査が実施され ており,天端には縦断方向の亀裂,側壁には複数の亀甲状亀裂が確認されていた事や 中性化試験の結果等から,ASRによる影響の可能性が指摘されていた矢先の事故とな った。 写真-1 倒壊した静水池コンクリート擁壁

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現地観察結果

現地観察結果

現地では,倒壊しなかった静水池左岸上流ブロックと静水池右岸側壁全域にもたわ みが大きく現れており,今後の倒壊が予測されたため,背面の掘削と倒壊した標高以上 の壁の撤去が行われた。図-2は,その際観察された左岸倒壊ブロック上流コンクリート壁 背面の状態を示す。観察結果では,下記の特徴が認められた。 図-2 倒壊部直上流壁背面観察概要図 ① 倒壊標高以上のコンクリート面には,複数の亀裂が認められる。天端では開口幅 0.3 mmから1.0 mmで上下流方向,壁面では同0.3 mmから0.5 mmで水平方向に 生じている亀裂が認められる。 ② 壁表面の被り部分のコンクリート(設計かぶり6 cm)に剥離が生じ,鉄筋とコンクリ ートが分離している。 ③ むき出しになった異形綱棒鉄筋は鉄筋腐植度グレードIV(錆が進行し異形綱棒の 山が分からないくらい錆びている状態)3)まで酸化腐食している。(写真-2) 写真-2 倒壊を免れた上流壁の背面状況

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.3 壁のたわみ調査結果

壁のたわみ調査結果

ASRが内部で生じた場合,コンクリートの膨張により複数の亀裂が生じる。その結果, 壁のたわみの形状は,図-3に示すような複数箇所で「折れる」形になるため,全体として は直線的でなく曲線的なたわみを示す場合がある。そこで壁の上部より標尺を吊り下 げ,たわみの簡易計測を実施した。表-1に倒壊した静水池左岸の対岸(右岸)壁の8箇 所で簡易計測したたわみ量を,また,表-2に観測点の偏角を示す。このように,当地区の ようなフルーム壁では天端に近い部位で偏角が大きく,模式図に示す「折れている」変 形が認められた。 表-1 右岸壁たわみ計測結果 図-3 たわみ模式図

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表-2 右岸壁観測点偏角計算表

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アルカリシリカ反応性試験法

アルカリシリカ反応性試験法

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.1 化学法とモルタルバー法

化学法とモルタルバー法

レディーミクストコンクリートの利用ではASRに対するJIS規格が定められ,JIS A 5308:2014では,骨材のアルカリシリカ反応に対しては,その付属書Aにレディーミクスト コンクリート用骨材に関し生産者と購入者の間で下記の試験方法による確認を行う規定 となっている。ASRは骨材中のシリカ(二酸化ケイ素SiO2)とコンクリートに含まれるアル カリ(Na+, K+)などが反応することによって生じた生成物が吸水・膨張してコンクリートに ひび割れを生じる現象であり,反応確認試験は膨張物質を化学的に計測する化学法 と,対象骨材から作成したモルタルの膨張量を計測する手法で行われる。 ① 骨材のアルカリシリカ反応性試験法(化学法,JIS A 1145):化学法は,骨材の反応に より消費されたNaOHの量 (Rc),骨材とアルカリの反応で溶出したシリカの量(Sc) を計測し反応性判定を行う。 ② 骨材のアルカリシリカ反応性試験法(モルタルバー法,JIS A 1146):化学法で無害で ないと判定された場合に,対象骨材で作成した40×40×160 mmのモルタルバー供試

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12 体の膨張量で反応性を判定する方法である。26週経過時における供試体の膨張率 が0.1%未満の場合を“無害”,0.1%以上の場合を“無害でない”と判定する。なお, 13週で0.05%以上の膨張を示した場合にはこの時点で“無害でない”と判定する。モ ルタルバー法での試験中養生条件は40±2℃,湿度95%である。

2.3.2 その他のASR を対象とした試験方法

2.3.2 その他のASR を対象とした試験方法

前述のモルタルバー法では最短でも13週の試験時間がかかることに対し, 2000年前 後に試験時間がより短いASRの促進養生試験が提起され,実用にむけた関連論文4-6) 示された。例えば, ① カナダ法(ASTM C 1260;養生条件: 80℃, 1N NaOH溶液浸漬;判定:14日後の膨 張量0.1%未満で無害,0.1%<膨張量<0.2%潜在的有害物質を含む、0.2%以上 で潜在的有害), ② デンマーク法(養生条件: 50℃, 飽和NaCl溶液浸漬;判定:3ヶ月後の膨張量0.1% 未満で無害,0.4%以上で膨張性あり)の試験方法は短期間にASRの判定が可能と されている。 ただし,カナダ法やデンマーク法によるASR評価試験法はそれぞれ反応促進のため, JIS A 5308に比べると高温あるいは高アルカリ環境下の試験となること,供試体の形状が 異なるため反応速度の違いが生じることから,我が国で現在標準的に用いられる化学法 やモルタルバー法とは同じ判断基準での評価は出来ない。

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洪水吐コンクリートの調査及びその結果

洪水吐コンクリートの調査及びその結果

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.1 事故前のコンクリート調査

事故前のコンクリート調査

本地区では,事故の数ヶ月前に下記のようなASRに対するコンクリート調査が実施さ れていた。 ① 試験手法 当初調査では,「完成後」状態のコンクリート構造調査でありボーリング コアを供試体としてカナダ法によるASR確認試験を実施した。 ② カナダ法による試験結果;表-3に側壁コンクリートの試験結果を示す。14日では膨 張量0.1%以上であったが,追加評価として行った28日経過後の結果では膨張量 が0.2%未満となったため、ASRとの判定はなされなかった。 表-3 カナダ法によるASR試験結果 A-B,C-D供試体計測線

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.2 事故後の追加試験と調査

事故後の追加試験と調査

当地区ではその後,倒壊事故が発生したため,原因究明と今後の対処方法を明らか にすべく追加試験を実施した。現地の倒壊したコンクリート破片を観察すると,粗骨材は 安山岩質であるが,細骨材には貝殻が含まれており,海砂が用いられているものと想定し た。ここで,初期調査で実施したカナダ法によるASR確認試験は施工後の残存膨張率を 確認する試験であり,粗骨材と細骨材の集合体としてのコンクリートに対する膨張量確認 試験と位置づけられる。一方,当地区の場合,細骨材の海砂ではなく粗骨材がASRに関 与していると思われ,下記の試験を追加した。

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.3 追加試験と試験手法

追加試験と試験手法

追加試験は,下記のSEM-EDS法を用い; ①走査型電子顕微鏡による反応物質表面 観察と,②エネルギー分散型 X線分析によるゲルの成分分析を行った。また,倒壊コンク リートから抽出した粗骨材を用いて,③JIS A 1145, 1146による化学法,モルタルバ ー試験を併せて実施した。 試験の手法; 試験の手法;

① 走査型電子顕微鏡観察走査型電子顕微鏡観察 (SEM-EDS: Scanning Electron Microscope / Energy DispersiveX-ray Spectroscope):

SEM;走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)は電子顕微鏡の 一種である。電子線を絞って電子ビームとして対象に照射し,対象物から放出さ れる二次電子,反射電子(後方散乱電子,BSE),透過電子,X線,カソードルミネッセ ンス(蛍光),内部起電力等を検出する事で対象を観察する。

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② EDS;エネルギー分散型エネルギー分散型X線分析線分析 (Energy Dispersive X-ray Spectrometry,EDX,EDS)

E EDS;エネルギー分散型X線分析は,広義の意味として,電子線やX線などの一次線 を物体に照射した際に発生する特性X線(蛍光X線)を半導体検出器に導入 し,発生した電子-正孔対のエネルギーと個数から,物体を構成する元素と濃度 を調べる元素分析手法. (https://ja.wikipedia.org/wikiより) ③ 粗骨材を対象とした粗骨材を対象としたJIS A 1145, 1146による化学法,モルタルバー試験による化学法,モルタルバー試験: 現地コンクリートから粗骨材をハンマー打撃により抽出し,それを粉砕した供試体を用 いたASR反応試験を実施した。試験は化学法とモルタルバー法による試験を実施した。

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追加試験に用いた試料採取

追加試験に用いた試料採取

写真-3 は,採取したコンクリートと,他地区のコンクリートの表面を示している。写真に 示されるように,本地区のコンクリートには,粗骨材の周りに白色の遊離石灰が付着してい る。これらは,粗骨材がアルカリ骨材反応により膨張し,内部に微細な亀裂が発生し,その 面に遊離石灰が溶出して付着したものと思われる。 写真-3 倒壊コンクリートと他地区のコンクリート表面 倒壊したコンクリート 他地区のコンクリート ASR反応 ゲルのリング 亀裂に溶出し た遊離石灰

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16 写真-4 は,採取したコンクリート片と,写真-5 は,これを人力破砕し,粗骨材を取り出 したものである。 写真-4 試験用倒壊コンクリート 写真-5 コンクリートから抽出した粗骨材

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追加試験結果

追加試験結果

① SEM-EDS試験結果 (外観分析結果):ハンマーで抽出したコンクリート片からは 粗骨材の安山岩の外周にASR起因のシリカゲルのリング状物質が観察された。写真-6 に粗骨材(安山岩)外周のリングを,写真-7 にその拡大写真を示す。 写真-6 骨材周辺のリング 写真-7 拡大写真 これを電子走査顕微鏡(SEM)画像で観察すると,写真-8 に示すASR特有のロゼット 状物質7)と写真-9 に示すゼリー状物質7)が確認された。 -2

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写真-8 ロゼット状物質 写真-9 ゼリー状物質

② SEM-EDS試験結果(EDS分析結果):図-4, 5にSEM-EDSによるロゼット状物質と ゼリー状物質の分析結果を示す。表-4には,ASRの反応生成物の典型例7)を示す。 EDS試験結果からロゼット状物質にはアルカリ-カルシウム-シリカ型(K濃度大),ゼリー 状物質には,アルカリ‐カルシウム‐シリカ型が認められた。 図-4 EDS定性チャート(ロゼット状物質) 図-5 EDS定性チャート(ゼリー状物質) 相 対 強 度 ( X 線 強 度 ) 相 対 強 度 ( X 線 強 度 )

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18 表-4 アルカリ骨材反応生成物の典型例7) ③ 化学法による試験結果 表-5に,コンクリートから抽出した粗骨材を用いた化学法による試験結果を示す。試験 は,0.15~0.30mmに粒度調整した粉砕粗骨材を水酸化ナトリウム溶液に24時間浸した後, アルカリ濃度減少量(Rc) と溶解シリカ量(Sc)を測定し,アルカリシリカ反応性の判定を行 った。なお,化学法によるASRへの判定基準は以下に示される。 Sc≧10 mmol/LかつRc≦700 mmol/Lの時, Sc≧Rcとなる場合に,無害ではない 表-5 粗骨材を用いた化学法試験結果

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19 化学法の試験結果では,ScはRcの4倍を示し,「無害ではない」事を示しており,反応の 程度が大きいと判断された。

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モルタルバー法による試験結果:

モルタルバー法による試験結果:

表-6に,コンクリートから抽出した粗骨材を用いたモルタルバー法による試験結果を 示す。 表-6 モルタルバー法試験結果 この結果が示すように,モルタルバー法による試験結果では,粗骨材の平均膨張率は 無害とされる0.1%を大きく越える0.348%を示し,完成後約30年を経過した今日において も, 粗骨材は大きな残存膨張率を有している事が明らかとなった。

2.5 まとめ

2.5.1 試験結果

2.5 まとめ

2.5.1 試験結果

カナダ法とJIS A 1145, JIS A 1146による粗骨材を対象としたASR評価試験結果の総括 ① コンクリートから抜き取ったコアを用い,カナダ法によるASR反応試験を行ったが, 反応はあるものの,しきい値(長期観察後における膨張率0.2%)は超えなかった。 そのため,カナダ法を用いた試験では,倒壊の原因特定はできなかった。 ② 現地コンクリートの観察の結果,コンクリートの細骨材は海砂,粗骨材は安山岩が 用いられており,何れかの骨材に反応がある場合,これを分離して試験を行う必要 膨張率(%)

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があると考えた。そこで,コンクリートから粗骨材を抽出して,SEM-EDS試験による観 察と,ゲル物質の成分分析を行うとともに,JIS A1145, 1146の化学法,モルタルバー 法によるASR反応試験を行った。その結果,SEM-EDS試験結果で,ASRによるゲ ルが確認され,粗骨材は,JIS A1145,の化学法による ASR反応試験結果において 「無害ではない」との結果となった。また,JIS A 1146モルタルバー法による試験結果 では,その膨張量は,しきい値0.1%に対して0.348%と,極めて大きい値となった。 この結果は完成後30年を経過したコンクリート中の粗骨材に0.3~0.4%の残存膨 張率があることを示しており,事故現場において粗骨材がASR反応を起こしていた ことを裏付けている。 以上の結果,当初実施されたカナダ法では擁壁コンクリートのASRに対する評価は判 断が難しいものであったが,追加調査,試験により,コンクリート内部でのASR進行を裏 付ける結果が得られたと言える。

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想定される倒壊のメカニズム

想定される倒壊のメカニズム

現地観察結果,及び,追加試験の結果から,壁の倒壊は以下のように進展したものと想 定される。 ① ASRによりコンクリート内部で粗骨材の膨張が発生し,その膨張圧により表面に微 細な引張亀裂が生じた。 ② コンクリートの膨張により天端には縦断方向開口亀裂が生じ,水平土圧を受ける側 壁では,水平方向の亀裂が時間とともに発達した。 ③ 亀裂から降雨水が浸透,ASRが促進され,空気と降雨水からの酸素供給により鉄筋 腐食が進行し,鉄筋外周に多量の錆が発生した。錆の膨張圧でコンクリートのか ぶり部分が剥離した。 ④ かぶり部分が剥離,鉄筋とコンクリートは分離し,鉄筋とコンクリートの付着力が消失,

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21 構造に必要な引張抵抗能力が消失し倒壊に至った。 このプロセスから考えれば,倒壊した構造では,鉄筋コンクリート構造内部で①ASRに よる膨張亀裂が発達,②酸化汚染が生じ錆の膨張圧により鉄筋コンクリート構造としての 機能を消失,破壊に至った事になる。つまり,ASRは鉄筋の錆による腐食と,膨張の原因 を生み出しており,最終的には,鉄筋の機能喪失が,倒壊を引き起こしたものと判断される。

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.6 今後のASR が想定されるコンクリート構造の

調査と評価に対する提言

今後のASR が想定されるコンクリート構造の

調査と評価に対する提言

我が国には,1970年代中盤までに建設されたコンクリート構造物には,ASR反応性骨 材を含むコンクリート構造物が存在する。これらのコンクリート中のASR反応物質が依然 として残存膨張性を有している構造もあり,適切な安全性評価が必要である。特にフル ーム壁のような壁構造では引張サイドが背面にあり,事故を未然に防ぐためには,見えな い危険をどのように察知するか,今後の検討が必要と考えられる。

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22 引 用 文 献 1)コンクリートひび割れ対策研究会:続コンクリートのひび割れ総合資料集,p. 422 (1979) 2)日本工業規格:JIS A 0203コンクリート用語,番号3407(2014) 3)日本コンクリート工学協会:コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針,p. 18 (2003) 4)掛布眞司,山本満明,鳥居和之:ASTM C 1260による骨材のアルカリシリカ反応性 とコアの残存膨張性の評価,コンクリート工学年次論文集,Vol. 23, No. 2, pp. 601 ~606(2001) 5)宮永憲一,鈴木宏信,高木宣章,児島孝之:骨材のアルカリシリカ反応性評価に 関する検討,土木学会第57回年次学術講演会講演概要集,pp. 1105~1106 (2002) 6)野村昌弘,平 俊勝,片山哲哉,鳥居和之:カナダ法によるコンクリートコアの残留 膨張性の評価,土木学会第55回年次学術講演会講演概要集,pp. 606~607(2000) 7)小林一輔,丸 章夫,立松秀信:アルカリ骨材反応の診断,コンクリート構造物の 耐久性診断シリーズ,2,森北出版,p. 45(1991)

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章 変形性地盤において外防水止水板を用いた

監査廊構造

章 変形性地盤において外防水止水板を用いた

監査廊構造

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はじめに

はじめに

軟弱な地盤や断層等の破砕部を含む基礎地盤上にフィルダムを建設する場合,基礎 地盤には築堤荷重による変形が生じる。変形は,地層の傾斜や軟弱層の構成によって は,複雑な変形が生じることとなる。この場合,基礎地盤に建設されたコンクリート監査廊 は,剛性が高い構造のためその変形は継目に集中し,継目に開きやずれの形で変位が 生じる。その結果,継目の上下流方向に大きな空隙を伴う漏水経路が生じる可能性があ り,監査廊継目沿いの浸透経路に対する慎重な対応が求められる。ここでは,基礎地盤 に幅の広い劣化帯と称された破砕層を含む地質が存在する基盤上に建設されたフィル ダム監査廊の止水構造として新たに開発された外防水止水構造を用いた事例を紹介す るとともに,将来管理に資する資料として,完成後約15年を経過した現状を報告する。

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建設地点の基礎地盤と変形予測

建設地点の基礎地盤と変形予測

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変形性地盤と築堤に伴う変形予測

変形性地盤と築堤に伴う変形予測

(1) 基礎地盤;Aダムは中生代~新生代古第三期の四万十類層群に属する 日南層を基盤としている。 図-1 ダム軸岩級区分縦断図

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24 図-1 はAダムの岩級区分縦断を示す。基礎地盤は砂岩・頁岩及びその互層から 構成される。 左岸側のアバットはCM級以上の砂岩優勢層より構成される。また,河床から右岸 側ではCL~CM級の砂岩・頁岩の互層で構成される。 左岸アバットから河床部には,数条の破砕された層を含む幅約70mのD級岩盤を 含む変形性の大きな劣化帯と称された地層が分布する。この劣化帯は河床部から左 岩アバットに向け約50°落ちの傾斜を示し,堤体横断方向に対しては,約30°下流 下がりとなっている。 (2) 変形予測と設計対応 ;表-1 にボーリング孔内で実施された基礎地盤の孔内水 平載荷試験の調査結果とこれらから推定した設計値を示す。(データは,掘削線より下 方のボーリングデータから得た試験値のみを用いている。) 表-1 基礎地盤の変形係数 築堤による基礎地盤の変形予測は有限要素法を用いた二次元応力変形解析を実施し ている。図-2 は解析モデルの基礎地盤状況を示す。 図-2 基礎地盤縦断変形解析モデル地盤状況 地質名 岩級区分 範囲 設計値 D 26,000~92,000 61,000 CL 110,000~480,000 240,000 CL~CM 200,000~1,330,000 570,000 CM以上 500,000~2,180,000 1,270,000 四万十類層 群日南層 変形係数(kN/m2)

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25 解析手法は9段階の逐次盛土解析をおこなっている。1) 図-3 は13579段階 の盛立により生じる基盤面沈下量を示している。その結果,河床から左岸アバットでは築 堤後,最大で30cmの沈下と,局所的には大きな鉛直方向の不同変形が予測された。 図-3 基礎地盤変形解析結果 このように,左岸劣化帯付近に予測される基礎地盤の変形予測結果を考慮し,監査 廊路線設置計画と堤体断面形状は下記の方針で設計が行われた。 ① 監査廊路線:河床劣化帯部分では基礎地盤の沈下による不同変形量が大きく,そ の区間ではダム軸中心線上に監査廊を設置することは困難と判断された。その結果, 河床部劣化帯部では図-4 に示すように監査廊を,ダム軸下流約30mのフィルターゾー ン下流半透水ゾーンの基礎面に迂回設置する路線が採用された。 図-4 河床部監査廊配置図 基 盤 面 沈 下 量 ( c m)

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26 ② 堤体形状:堤体形状は,図-5 に示すように,遮水性に対する安全性向上のため 遮水ゾーンの幅を大きくした構造が採用された。(河床部遮水ゾーン 上流1:0.5下流 1:0.2,標準部;遮水ゾーンの傾斜;上下流ともに1:0.2) 図-5 河床部堤体標準断面図 一般的に,中心コア型ロックフィルダムの遮水ゾーンの基礎幅は,堤高の30%から 50 %あれば十分とされる。そのため,コアゾーンの鉛直方向の傾斜は,1:0.15~1:0.2で 設計される事が多い。本ダムの場合も劣化帯以外の標準断面では,1:0.2 を用いてい る。この場合,上下流のコア幅は,20%×2 = 40% であり,天端の最小幅,6.0m を加える と基礎地盤におけるコア幅は,堤高の約50% の標準的なコア幅となる。これに対し,本 ダムの劣化帯部分のコア幅は,上記のように,上流側のコア傾斜を1:0.5とし,基礎地盤 におけるコア幅は堤高の約73%として水理的安全性の向上が計られている。

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監査廊継目の変形と止水上の問題

監査廊継目の変形と止水上の問題

昭和60年代からは,河川管理者が30m以上のフィルダムにおいては,安全管理と漏 水に対する補修工事を目的として監査廊の設置を義務化したこともあり,農業用ダムの 建設においても,多くのフィルダムで監査廊が設置されるようになった。フィルダムの遮 水性能の有利性として,その材料の柔軟性によりやや軟質な基礎地盤に対しても遮水 材料の変形性により遮水に対する安全性を維持できることにある。しかし,剛性の高い コンクリートで作られる監査廊は,基礎地盤の不同変形に対し追随性がなく,フィルダム の特性である柔軟性と相反した性質を持つ。特に標準的に縦断方向には6mのスパン で打設される監査廊コンクリート継目には基礎地盤に生じた変形が集中するため,継目 部分の遮水性能の確保が重要な問題となる。 (1) 監査廊継目の挙動予測 ;変形性の基礎地盤では,監査廊継目に図-6 に示すよ うな,ずれ,開き,とその複合的な変位が生じる事が予測される。 ① ずれ変形 ② 開き変形 ③ ずれと開き 図-6 監査廊変形概要図 A ダムにおいては,築堤荷重による基盤変形と監査廊継目のずれ,開きを予測する ためにジョイント要素を用いた有限要素法による応力変形解析2)を実施した。有限要素 解析は,基本要素は,三角形要素を用いる。ジョイント要素は,この一辺の要素に平行な 線を与え,二本の線で四角い4接点のジョイント要素を構成する。解析においてジョイン

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28 ト部は,一定の変位が生じると,入力した剛性が小さくなるように予め設定されており,大 きな変形表現が出来るようになっている。解析では,監査廊周辺の要素はすべてジョイ ント要素が配置され,変形予測の精度を上げている。 解析の結果,左岸アバット部では,劣化帯の変形性の大きなゾーンが左岸下方に潜 り込む形となるため,大きな継目の変位が予測された。解析結果を図-7,8 に示すが左 岸アバット下部では,最大開き10mmが監査廊頂盤外側に生じることが予測された。ま た,周辺の複数の継目においても数mmの開きが予測された。 図-7 監査廊変形解析結果図 図-8 左岸アバット部変形解析結果拡大図 開き 10mm 開き 10mm 開き 5mm 開き10mm 開き10mm 開き5mm 開き 10mm 開き 10mm 開き 5mm

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.3 監査廊継目構造

監査廊継目構造

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監査廊継目構造

監査廊継目構造

図-9 に一般的な監査廊継目構造を示す。監査廊の継目には,コンクリート構造内部 への漏水や局所的な変形等への対応を目的としてさまざまな工夫がなされる。3) 図-9 監査廊継目構造詳細図 ① 止水板;内外の二重止水板で貯水圧に対抗。 ② 継目グラウチング;盛土完了後,二重止水板の間にモルタルグラウチングを行い 水圧により外側の止水板が内部方向に変形することを防止。施工は,築堤完了後 基礎地盤の変形終了後,湛水前に実施される。 ③ アイガス充填;頂部偶角部で継目の変形対応と上下流漏水防止。材質は歴性材 が用いられる。 その他,築堤後廊内外と外部岩盤の間では,コンタクトグラウチング等による対応 策がなされる。特に継目における横断方向の浸透防止と,監査廊コンクリートと基礎 岩盤の接触面となる縦断方向の浸透防止を目的としている。

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30 しかし,Aダムのように変形が大きくなる場合,図-10 に示す矢印の部分では外側の 止水板の更に外側で空隙が生じ,監査廊内部からの対応がきかず上下流浸透に対 し,アイガスの効能を越えた変 形が生じた場合,上下流方向の水理破壊に対し極めて危険な状態が生じる。 図-10 継目変形時に形成される空隙 図-11 継目変形時の頂部に形成される空隙 監査廊底盤部分では,盛土施工が先行した後,下方地盤方向へは,主カーテングラ ウトと,補助カーテングラウトが,側方へは,コンタクトグラウチングによる遮水グラウトが施 工される。しかし,盛土工事完成後に,基盤変形による継目のずれや開きが生じていれ ば,図-11 のように上方向に対しては,天端や基礎地盤接触面に生じる空隙を経路とす る土粒子流亡を伴う進行性破壊が生じる危険性が大きくなる。このように,変形性が大き

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31 く想定される基礎地盤上に建設されるフィルダム監査廊の止水構造は内部への浸水防 止だけの対応では不十分である。

3.3.2 外防水止水構造の開発

3.3.2 外防水止水構造の開発

上記の問題に対し以下の止水構造が検討された。 ① ずれと開きにより生じる解放空間を更に外側からくるんでしまい,その止水構造に より,変形を閉合空間に吸収する止水装置が必要である。これを外防水止水板と称す る事とした。 ② 外防水止水板の外周には止水板本体の塑性変形をバックアップする緩衝用バック アップゴム(B=500 t=25mm)を配置し,外防水止水板が水圧によりコンクリート継目に めり込む場合,変形を和らげる事とする。 図-12 外防水止水構造説明図 ③ 施工は,図-13 に示すように,側面と底盤では岩盤面の凹凸を吸収するため一次 コンクリートを先行施工。そこにバックアップゴムと外防水止水板をセットし本体コンクリ ートを打設する工法とした。 図-13 外防水止水構造詳細図

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32 なお,外防水止水板と,バックアップゴムは2種類のゴム構造であるが,二種のゴムの 接続面は,ゴムより軟質で,滑りやすいアスファルトウレタンゴムで接着した。これらの性 能4)は表-2 に示すとおりである。 表-2 外防水止水構造材料性能一覧 資材 バックアップゴム アスファルトウ レタンゴム 外防水 止水板 備考 硬度 50 40 60-70 硬度 JISK 6301 伸び率 350以上 420以上 350以上 % 引張強度 15,000以上 2,200 15,000以上 kN/m2 付着強度 800 kN/m2 この結果変位の大きな左岸アバット部5箇所の継目は図-14 に示す構造が採用され た。 図-14 外防水止水板を有する継目断面図

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外防水止水構造の性能確認

外防水止水構造の性能確認

本ダムで計画した止水構造は,特殊構造となるため,止水性能,施工性確認等が必 要と思われ,種々の試験による性能確認が行われた。

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耐圧試験

耐圧試験

完成後の作用水圧に対する性能確認を図-15 に示す装置で止水性能確認をおこな った。試験の実施内容は以下のとおり。 ① 試験装置は1m×1m×0.6mの供試体2ピースを作成, 2ピースのブロック接触面 が監査廊継目を表す。ピースには円筒形に加工した止水板をセットしている。 ② その接触面には,ずれ45mm,開き15mmの空隙をセットする。セットは,止水板 をセットした状態で内圧をかけると二つのコンクリートは浮き上がり,簡単に移動が できる。移動が,設定値のずれ45mm,開き15mmの状態でそれ以上にずれ開き が大きくならないように,H綱とアンカーボルトで移動を拘束した。 ③ この状態で,貯水時に作用する水圧0.6Mpを一定期間作用させ,内部圧力の減 少(監査廊への漏水)が無いことを確認した。 図-15 耐圧試験供試体概要図 作用水圧 監査廊継目 外防水止水板

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施工確認試験

施工確認試験

本止水構造の施工箇所は斜面傾斜部での施工となる。これに対し止水板は凹凸が 複数箇所あり,コンクリート打設時のバイブレータのかけ過ぎが行われると,コンクリート 中から分離したエアーが溜まりやすい構造となっていることを室内打設試験で確認して いた。これを現場へ伝えるために,現地において,横断面は監査廊の原寸大とし,継目 を含む1m区間コンクリートブロックを打設,施工が正確に行われるための施工確認試 験が実施された。施工確認試験では,下部よりコンクリートが打設され,頂部の施工で はバイブレータ施工後に止水板を中央部へ向けてめくり上げ,分離したエアーを排除し た後,追加コンクリートを打設し,最後に人力で止水板をコンクリートに叩き込む事で凹 凸内にコンクリートを貫入させる事が現場レベルで確認された。写真-1 は,試験後にコ ンクリートブロックをコンクリートカッターで切断,止水板凹凸部へのコンクリート充填が確 実に行われている事を確認した。 写真-1 打設試験切断後の供試体 ここにエアー溜まりが生じやすい。 ここにエアー溜まりが生じやすい。

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.3転圧試験

転圧試験

本止水装置には,50mmのバックアップゴムを変形に対応する補助構造をとってい る。その構造は変形性が大きいゴム構造のため盛土荷重による締固め効果と遮水性の 確保が十分可能かという問題が懸念された。これに対し,現地に監査廊天端を模擬し たコンクリート床盤を打設,写真-2,3 に示すような外防水止水盤を設置した状態で実際 にコンタクトクレイ,コア材の盛土,転圧を行い,バックアップゴムを含む外防水止水装 置直上の現場密度試験及び周辺透水試験を実施した。その結果,転圧効果や止水板 周辺の透水性への影響が無いことを確認した。 図-16 現場盛立試験断面図 写真-2 外防水止水板上を模擬し た施工面と透水試験装置 写真-3 コンクリート天端上を 模擬した施工面と透水試験装

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36 具体的な試験は以下のように行っている。 ① コンクリート床版 t =1.0m を打設。 ② 監査廊ジョイントとその上に外防水止水板を模擬した部分を設置。 ③ コンクリート天端と,外防水止水板模擬地点に,循環式間隙水圧計のポーラ ストーンを各々3カ所設置。 ④ 盛土施工と同様,コンタクトクレイ,細粒コア,標準コアをタンパー,90kg級 振動コンパクター,20t級振動タンピングローラーで転圧。 ⑤ 転圧施工中に,試験点上で現場密度を測定。 ⑥ 転圧後,循環式間隙水圧計のポーラスストーン周辺を飽和させる。 ⑦ 循環式間隙水圧計の送水側とリターン側に一定の水位差を与え,定水位透 水試験状態のなかでの送水量を計測した。 ⑧ 試験は,飽和状態をH0としてこれに送水,リターン側の水位差を

+9.8kPa, + 14.7kPa +19.6kPaの3段階の圧力差で実施した。 試験の結果を表-3 に示す。 以上の試験の結果,外防水止水板上のコア材には,転圧障害が生じていないこと, コンクリート天端と外防水止水板上の透水性に相違が無いことを確認した。これ らの種々の確認試験により,新たに導入する,外防水止水板の止水性能と,盛土への 影響が無いことを確認し,施工を行う事とした。 写真-4 外防水止水板を模擬し た施工面への盛土作業 写真-5 循環式間隙水圧計を用いた透水試験

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37 表-3 外防水止水板接触面比較透水試験結果

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設置と監視計画

設置と監視計画

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.1 監視計画

監視計画

設置後の監視は,設置断面の監査廊上下流に電気式間隙水圧計を2 断面配置し,継 目断面のコア材内部で,上下流の発生間隙水圧を経過観察する事とした。 写真-6 一時コンクリートに施工される外防水止水板

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経過観察結果

経過観察結果

Aダムではその後,施工が開始され盛土施工が行われたが,変形予測地点の継目 には概ね予測どおりの開き,ずれが発生した。最大開きは,監査廊内部から確認した幅 で7mmとなった。これより扇状に開くと想定される外周部の継目の開きは10mmと想定 され,当初予測と同じ開きと判断された。その後ダム完成後貯水が開始されたが,内部 観察では,継目からの漏水跡や,遊離石灰は確認されていない。また,監査廊天端の

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38 上下流に設置した電気式間隙水圧計の観測値では間隙水圧計測値に異常は認めら れなかった。その後,電気式間隙水圧計の寿命がきたため,監査廊縦断方向に設置し ている水量水圧計の挙動と監査廊内部からの開いた継目の観察を行っている。観察の 結果,止水機能は正常であり,この止水構造の適性を確認した。

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まとめ :

まとめ :

今回開発した外防水止水装置は,建設時代にその建設地点特有の問題に対してな された工夫の一つである。今,約15年の経過年数を経てその安全性は一定の評価が 可能となったと考えている。昨今,かんがい排水事業で新たなダム建設の機会は減少 し,ストックマネージメント事業により,施設機能の長寿命化が計られる時代となった。今 後の管理では,建設時代の各ダム特有の重要な情報は時代を超えて伝える必要があ ると考える。今回取りまとめた外防水止水構造施工箇所等のように,厳しい条件に対す る対応を行った箇所に対しては,長期にわたり注意深い監視・管理が必要と考えてい る。

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39 引 用 文 献 1) 農林水産省農村振興局整備部設計課監修 土地改良事業計画設計基準 設計 ダム 技術書【フィルダム】PⅡ-149[参考](a) 2) 同上PⅡ-150イ 監査廊を考慮した解析(ジョイント要素) 3) 同上PⅡ-150(4) 継目構造及び止水処理 4) ASTM D412によるゴム及びエラストマーの引張試験

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第 4章 岩石の風化が材料の透水性/せん断強度

に与える影響と評価

章 岩石の風化が材料の透水性/せん断強度

に与える影響と評価

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.1 はじめに

はじめに

ロックフィルダムでは風化軟岩の特性を活かし遮水材からロック材まで原位置採 取材を分類,利用する.ここでは,中・古生代の美濃帯を基盤とする地域に建設され た大型ロックフィルダムにおいて, 砂岩と粘板岩を母材とする築堤材料のうち, 遮 水材料については,母材の地質的相違と風化程度が締固めや透水性に与える影 響を明らかにした.また, ロック材については礫表乾密度(Ga)と,礫の吸水率をパラ メータとして風化度合いを評価し, 風化程度が材料のせん断強度に与える影響を 明らかにした.後者は, 今後のロックフィルダムの管理において風化度合いを礫表 乾密度(Ga)と,礫の吸水率(Q)という簡易な試験方法を用いることにより, 材料劣 化評価や,安全性評価に利用出来るものと考えている.

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.2 利用材料の性質

利用材料の性質

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.1 ダム概要と建設地点の地質

ダム概要と建設地点の地質

桝谷ダムは福井県南越前市に建設された堤高 100.4m,築堤量3,447 千m3,総 貯水量25,000千m3の大型中心コア型ロックフィルダムである.標準断面を図-1 に 示す. 図-1 ダム標準断面図 図-1 桝谷ダム堤体標準断面図

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41 断面構成は遮水ゾーンをゾーンⅠ,ロックゾーンをゾーンⅡ,Ⅲ,Ⅳで構成し,周 辺地山から材料採取を行った.またフィルター材は,近傍採石場からクラッシャーラ ンC-40(美濃帯砂岩)を購入している. ダムの建設地点は中・古生代の美濃帯に属する砂岩・粘板岩, チャート及びそ の互層からなる.図-2 にダムサイト周辺の地質平面図を示す. 築堤材のうち遮水 材の主たる採取地は, 貯水池上流の砂岩・粘板岩の互層地域の尾根頂部である が, 一部はダム軸右岸直上流の崖錐層と原石山表層の強風化部からも採取して おり, 採取位置により地質や風化度合いが異なる. ロック材は,ダムサイト下流左 岸に位置する原石山より美濃帯の砂岩優勢層から材料採取を行っている. 図-2 ダムサイト周辺地質平面図

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材料の風化と定義

材料の風化と定義

軟岩には,①堆積軟岩②風化軟岩③火山軟岩がある.堆積軟岩は新第三期~ 洪積世の砂岩, 泥岩, 凝灰岩類等の新しい時代の堆積物と示される事が多い. 一方, 風化軟岩は多くの文献では花崗岩の風化物を事例にしている.1,2)風化の 定義については, 「風化は,地表付近の岩石が,乾湿の繰り返しや凍結融解によっ

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42 て細片化するなどの物理的作用により細片化し, また降雨の浸透による岩石中の 解けやすい成分の溶脱や酸化などの化学作用により岩石が粘土化し,岩が土にな る現象である.3)とする考えがある.桝谷ダムのダムサイトは,中・古生代の美濃帯に 属する砂岩・粘板岩・チャートとその互層からなる堆積岩である. 築堤材料として 用いているものは,その風化物であり,本地区の材料は,中・古生代の堆積岩の風 化軟岩と呼ぶべきものと考えている. さらに本地区の遮水材では,母材の地質的 影響や,風化程度が力学特性や透水特性に与える影響を考慮するため, 砂岩と 粘板岩, 風化の度合いにより風化岩と強風化岩の2種に分けて評価している.

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.3 岩石の風化が遮水性材料に与える影響

岩石の風化が遮水性材料に与える影響

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砂岩・粘板岩の地質的特徴

砂岩・粘板岩の地質的特徴

砂岩・粘板岩の互層は, 地層の堆積境界面に層理面を有する.層理面はせん 断破壊による力学的な差が生じやすく, 続成作用を受けた場合,亀裂や破砕面と なることが多い. このように, 砂岩・粘板岩の互層構造では選択的な破砕と, この 破砕部から進入する水と酸素供給により風化速度の差を生じる場合が多い. 本地区を形成する美濃帯は中・古生代に形成された堆積岩であり新生代の地 盤に比べれば長い時間をかけた地殻変動と変質作用を受け更に,表層部はその 後の風化作用を受けている. 遮水材料は尾根頂部から採取したが,尾根頂部は 地下水位が低く,位置により,5m~15mの深度まで風化が進んでいる.風化の特徴 は以下のようである. (1) 砂岩優勢層の風化;本地区の砂岩は細粒砂岩が多い.表層は1m~2mは 粘土化し, 深度 5m~10mのまで強風化層と風化層が互層状に分布する.強風化 層のマトリックス部分は, シルト, 砂分が多く粘性は低い.強風化層の礫は, ハン

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43 マーの軽打で壊れる. 更に下層の風化層の礫はやや硬質で, 数㎝から 20cm程 度のサイズまで堆積時代の層理を明瞭に残した状態で分布し, ハンマーの強打 で数個に分離する. (2) 粘板岩優勢層の風化;表層は1m~3mの深度に粘土化した層が分布する. 粘土化した層は粘性が強い.深度 15m~20mは強風化層と風化層が分布する. 強風化層の礫は風化が進み指で容易につぶすことが可能な状態を示す. 層理面 が明瞭となる風化層においても,礫はハンマーの軽打でばらばらになりやすい. このように, 砂岩・粘板岩のマトリックスと礫は, 風化状態による物理的相違が大 きいことが特徴である. 図-3 に土取り場の一断面を示す。表層の弾性波速度帯0.3km/sec が強風化帯,弾 性波速度帯 0.7~0.8km/secが風化帯である。層厚は施工地点により大きく異なる。 図-3 土取り場断面図

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試験に用いた試料の特徴

試験に用いた試料の特徴

遮水材は上記のように採取地の①地質的相違(砂岩・粘板岩)②礫の風化度合 い(強風化・風化)③礫の混合割合(礫率)で性状が大きく異なる事が予測され, 将来の施工管理を目的に下記の試験を実施した.試験試料は, 砂岩優勢及び粘 板岩優勢テストピットから各々の材料を採取,そのマトリックス部分と礫部分を分級 し使用した.なお,材料の礫混合割合は,細礫と中礫の境界面である, d > 4.75mmに対応する礫率を Pと示し.表-1 に使用材料の物理特性を示す. 表-1 試験用材料特性 材料 名称 土粒子比 重Gs (g/cm3) 礫 密 度 Gb (g/cm3) 礫 率 P(%) 現場含 水比W (%) 細粒分 割合 (C+F) % 塑性 指数 ( %) A 2.74 2.31 87.9 8.2 3.7 15.5 B 2.77 - 0 21.2 39.2 17.5 C 2.79 1.99 61.0 17.3 18.0 15.6 D 2.79 - 0 23.1 46.0 15.6 A; 砂岩優勢テストピットからの 風化岩礫主体の採取試料.(礫密度 Gb = 2.31 g/cm3 B; A のピット上部の強風化岩層の土の部分を,礫率P = 0 に調整した 混合用の試料. C; 粘板岩優勢テストピットからの強風化岩礫主体の採取試料(礫密 度Gb = 1.99g/cm3. D; C のピット上部の強風化岩層の土の部分を礫率P = 0に調整した 混合用の試料. 注;地盤工学会では,2mm以上の粒子を細礫,ここで扱っている 4.75mm以上

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を中礫と定義している。いっぽう,U,S,B,Rが用いていた Earth Manual で は,4.75mm以上を礫と定義していた。この論文では,地盤工学会が示す中礫を 礫として扱うこととしている。

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岩石の風化が締固めに与える影響

岩石の風化が締固めに与える影響

A の砂岩風化岩礫にB の試料,及びC の粘板岩強風化岩礫にD の試料を混合し, 礫率を40%,及び60%で調整した材料について, 標準エネルギーEc = 100%及び 200%で締固めた締固め試験結果を表-2に示す. 表-2 風化岩/強風化岩礫を含む材料の締固め試験結果 礫率 P (%) 締固め エネルギ-Ec(%) A 風化岩礫+ B 混合材 C 強風化岩礫+ D 混合材 γd max (g/cm3) 最適含水比 (%) γd max (g/cm3) 最適含水比 (%) 60 200 1.965 12.7 1.816 16.8 100 1.924 13.7 1.781 17.5 40 200 1.910 14.2 1.788 17.4 100 1.867 15.3 1.750 19.0 0 200 1.747 18.8 1.704 20.0 100 1.699 20.4 1.664 21.6 試験結果より, 締固めエネルギー,Ec = 200%,礫率P = 60%,40%,の締固め試験結 果では, 風化岩礫と強風化岩礫を用いた場合の最大乾燥密度(γd max)は,風化岩礫 混合材の最大乾燥密度に対し8%及び6%減となった。桝谷ダムの遮水材の施工管 理値は透水性管理の条件からD値97%以上としたが,管理範囲100-97%の間,3% に対して材料の違いによっては,管理値を大きく下回る誤った評価が生じる可能性が 明らかになった。また, 最適含水比には3~4%の差が生じたが, 後述の透水性から

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47 必要な含水比の施工管理幅は2.0%程度であり, 施工では礫の地質的相違と風化度 合いを考慮した管理の必要性が明らかとなった. 図-4 砂岩風化岩,礫率 P =40,60%の締固め試験結果 2材料の相違による乾燥密度の差 Wopt=12.7 % Wopt=16.8 % 乾 燥 密 度 乾 燥 密 度 (g /c m 3) 乾 燥 密 度 乾 燥 密 度 (g /c m 3) 図-5 粘板岩強風化岩,礫率 P =40,60%の締固め試験結果

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岩石の風化が締固め時の礫破砕に与える影響

岩石の風化が締固め時の礫破砕に与える影響

締固めエネルギーにより生じる礫の破砕に対する影響を調べるために, 標準エ ネルギーEc = 100%,200%で行った締固め前後の礫率変化を表-3 に示す. 表-3 礫率変化による礫破砕状況(%) 風化岩 強風化岩 初期 礫率 Ec100% 締固め後 Ec200% 締固め後 初期 礫率 Ec100% 締固め後 Ec200% 締固め後 60 55.0 54.0 60 48.2 44.4 40 36.8 36.5 40 33.8 29.8 この結果より,Ec =100%と 200%で締固めた礫率 Pの減少は, 風化岩礫を含 む土では1.0%,強風化岩礫を含む土では4.0%程度となっている。 一方,表-2で は締固めエネルギーの違いによる密度増加は風化岩,強風化岩礫を含む材料の 試験結果でいずれも 2%程度を示す. この結果より, 大きな締固めエネルギーの 作用下では,風化岩礫を含む土では, 締固めエネルギーは主として締固めに利 用され, 一方, 強風化岩礫を含む土の締固めでは, 締固めと礫の破砕にも作用 したものと考えられる。この結果,この結果, 強風化岩礫には破砕により礫自体に 微細な亀裂が残り, そこが浸透経路となる可能性を示唆している。

参照

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