Title
土石流による土砂流出過程の予測法とその適用性に関する
研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
高濱, 淳一郎
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 乙第030号
Issue Date
2001-11-30
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1702
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位記号番号 学位授与年月日 専 攻 学位論文題 目 高 嶺 淳 一 郎 (岐阜県) 博 士(工学) 乙 第 30 号 平成13年11月30日 生産開発システム工学専攻 土石流による土砂流出過程の予測法とその連用性に関する研究 (Studie8 0n prediction 皿ethods of 8edi皿ent
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学位論文審査委員 (主査) 教 授 藤 田 裕一郎 (副査)教 授 安 田 孝 志 教 授 湯 浅 晶 教 授 江 頭 進 治
論文内容の要旨
本論文は,土石流による土砂の流出堆積過程を幅広い条件に対して予測することを目的 として,土石流動や掃流状集合流動を通して,掃流砂流送に至る非定常流れ場を領域区分 することなく解析するモデルを構築し,水路実験を行ってモデルの妥当性を検証するとと もに,土石流の発生した現地を対象として土砂流出解析を実施し,実現象への適用性を明 らかにして,その特性を示したものである. 主な内容は以下に列記したとおりである. 土石流に関する基礎的な研究について概説し,江頭らの構成則とその導出過程の妥当性 を説明した.■そして,掃流砂現象と土石流とにおける砂礫移動層の応力構造に本質的な違 いはないと考えて,上記の構成則を掃流砂運動に適用し,砂礫層の流動層厚,流速分布お よび流砂量に関する近似式を導き,実験結果と比較して,それは砂礫移動層厚が粒径以上 となる領域において妥当であることを示した. 浅水流型の連続式と運動方程式とを支配方程式とする代表的な土石流のシミュレーシ ョンモデルを取り上げ,単純な条件下での数値実験結果相互や水路実験結果との比較から! その特性と適用性を検討して江頭らのモデルが高い妥当性を有することを示した.すなわ ち,彼らのモデルでは,移動床において平衡状態を与える平衡濃度が構成則によって一義 的に定まる点,および抵抗則と侵食堆積速度の両方の評価に降伏応力が導入されていると いう整合性の2点で合理的であり,実際の堆積実験結果も概ね表現できることを確認した. 砂礫移動層と水流層とが存在し,ともに変化するという非定常の二層流状態では,両者 の内部境界(interfhce)においてそれを通過する水流のフラックスが存在し,それによる 両層間で質量と運動量の交換を考慮して,二層に分離した支配方程式を誘導した.幅広い-108-条件に対して,■このモデルによる解析結果と土石流の実験結果とを比較して,本モデルに よれば土石流の堆積とそれに伴う水流層の分離流下過程をよく表すことができ,実用上合 理的な評価が行えることを示した. 土石流による非定常性の高い土砂流出過程をDynamicⅥねveとKinematic Whveによ って解析した結果,前者ではフロント部でシャープなピークを伴う流量波形が出現し,急 勾配区間における侵食現象を解析する際にはDynamic Waveを用いるべきであるという 結論を得た.また,流れの非定常性が侵食堆積現象に及ぼす効果について検討するために, 運動方程式から評価される圧力勾配や慣性項を侵食堆積速度式に導入して数値実験を行 った.圧力勾配のみを加味すると,フロント部における水面勾配によりこの領域がより侵 食されやすくなるため,条件によっては堆積侵食の過程でフロント部の背後に極度の波状 の変化を伴う流れが形成され,それが下流に向かって伝播するような路床の不安定を有す る計算結果が得られた.一方,圧力項に加えて慣性項を導入して平衡勾配を評価すると圧 力勾配の影響が緩和され,波状変化は抑制されることが判明した. また,土石流に働く外力(主に重力)が内部降伏応力を大きく上回るような固定床領域 では堆積が抑制されることを水路実験で確認し,圧力勾配と慣性項を付加した数値実験に よってこの現象が再現できることを示した.一方,水路が移動床の場合は,慣性項を導入 した計算ではその効果によって堆積が過小に評価されることが判明した. 上述のように妥当性の検証された土石流の流出過程に関する二層流モデルを幅の変化 する現地の一次元流れ場に拡張し,再現計算を行い,実測値と比較してその適合性を検証 し,解析モデルの拡張性について考察した.すなわち,土石流中の液相に含まれる微細土
砂の存在に着目し,渓床の塊積土砂を流動中は間隙流体の一部と見なしうる微細土砂成分
と土石流の構成則に係わる粗粒分とに分けて取り扱い,土石流の堆積領域では粗粒分が骨 格を形成して堆積するものと考えて基礎式を整理した.また,現地に合わせて江頭らの侵 食堆積速度式における平衡勾配に粘着力を導入するとともに,上流端の境界条件としての 崩壊現象を解析に導入する方法として,崩壊土層を速度ゼロ,粘着力ゼロの流動層として 取り扱う方法を提案し,崩壊運動を支配方程式に基づいて解析した.まず,土石流発生前 に形成されていた天然ダムが発生とともに破壊されたと報告されている現地を対象とし た計算では,現地と同一の土砂堆積状況を再現することができ,土石流の流速,流動深, およびハイドログラフについても計算結果には振動がみられたものの,土石流のピーク値 や継続時間,低減部の変化は観測値とよく一致する傾向を示した.つぎに,微細土砂成分 を多く含む渓流で発生した土石流に適用したところ,土石流状態から掃流状集合流動や掃 流砂の領域を経て泥水状の流れへと変化する堆積過程をかなり再現することができた.以 上の結果は本モデルが現象の予測に適用可能であることを示している.同様にこのような 土石流による土砂流出には初期河床土層中に存在する微細土砂の影響が強く現れ,条件設窟の中ではその粒度構成がとくに考慮すべき項目であることを指摘した.
以上のように,本研究では,構築された二層流モデルが現象に関する領域区分を必要と しない支配方程式と構成則に基づいた解析手法であって,崩壊土砂の運動過程や土砂堆積 後の流水(泥水)の挙動,ならびに天然ダムへ流入する土石流と天然ダムの侵食過程等の幅広い条件に対して適用でき,合理的な結果を得ることが可能な有用性の高いことが論証 されている.
論文審査結果の要旨
本論文は,土砂災害の最大原因といって過言でない土石流について,流動機構の根幹で ある構成方程式に考察を加え,ついで,被災規模を支配する土砂流出過程に関する既存の 予測法を詳しく検討した結果に基づいて新たな予測モデルを提案し,そのモデルを水路実 験に適用して妥当性を検証するとともに,実際に発生した渓流土石流の流下過程を解析し, それが現地にも高い適用性を有していることを明らかにしたものである.その主要な成果 は以下に要約されているように,学位論文に十分値する内容を備えている. 1)土石流に関する基礎的な研究に関する概説から,江頭らの構成則の妥当性を説明し, 掃流砂輸送と土石流とにおける砂礫移動層の応力構造に本質的な違いはないことに 基づいて,その構成則を掃流砂運動に適用し,砂礫層の流動層厚,流速分布および 流砂量に関する近似式を導き,実験結果と比較して,砂礫移動層厚が粒径以上とな る領域においてその近似式が妥当であることを示している. 2)代表的な土石流シミュレーションモデルについて,単純な条件下での数値実験結果 相互や水路実験結果との比較からそれらの特性と適用性を検討して,江頭らのモデ ルが高い妥当性を有することを示している. 3)砂礫移動層と水流層とがともに変化するという非定常の二層流状態では,両者の内 部境界(interface)においてそれを通過する水流のフラックスが存在するため,そ れによる両層間で質量と運動量の交換を考慮して,二層に分離した支配方程式を誘 導して_いる.この支配方程式に先に検証された江頭らの構成則と侵食堆積速度式を 加えて土石流の流動過程の二層流モデルを構築した.幅広い土石流の実験条件に対 し,本モデルを適用した結果,土石流の堆積とそれに伴う水流層の分離流下過程が 本モデルによってよく表され,実用上合理的な評価が行えることを示している. 4)単純な条件の下における本二層流モデルによる数値実験と水路実験結果から,侵食 堆積現象を含めた土砂流出過程に及ぼす流れの非定常効果の重要性を指摘し,その 特性を示している.すなわち,DynamicⅥhveとKinematicWaveによる解析を比 人 較し,ついで,侵食堆積速度に流れの非定常効果を反映させるために,その評価式 に運動方程式の圧力項や慣性項を付加した場合について水路実験を対象とした数値 実験を行い,非定常効果の導入方法の相違による流出特性の変化を明らかにしてい る. 5)土石流の流出過程の本二層流モデルを幅の変化する土石流発生現地の一次元流れ場 に拡張して再現計算を行い,実測値と比較してその適合性と拡張性を論証している・ とくに,土石流中の掛目に含まれる微細土砂の存在に着目し,渓床の堆積土砂を流 動中は間隙流体の一部と見なしうる微細土砂成分と土石流の構成則に係わる粗粒分 とに分けて取り扱い,土石流の堆積領域では粗粒分が骨格を形成して堆積するもの-110-と考えて基礎式を拡張している.また,現地に合わせて江頭らの侵食堆積速度式に おける平衡勾配に粘着力を導入するとともに,主要な上流端境界条件である崩壊現 象を解析に導入する方法として,崩壊土層を速度ゼロ,粘着力ゼロの流動層として 取り扱う方法を提案し,その現象を支配方程式に基づいて解析している.本モデル のこれらわ拡張によって,現地の土砂堆積状況がよく再現され,土石流の流速・流 動探やハイドログラフのピーク値や継続時間,そして低減部の変化も観測値とよく 一致する傾向を得ている.さらに,土石流状態から掃流状集合流動や掃流砂の領域 を経て泥水状の流れへと変化する堆積過程もかなり再現できることを示している・ 以上のように,本論文で提案された土石流による土砂流出過程に関する二層流モデル は,interface(内部境界)を導入した非常に斬新で独創的なモデルであって,土砂と水 が揮然一体となった土石流から,上部が水で下部が土砂流動層という掃流状集合流動状 態を経て、掃流砂輸送による渓床変動までを連続的に取り扱うことのできる適用範囲が 極めて広く,しかも非定常性の強い実現象の予測評価が可能な,工学的に優れた有用性 を持っていることが明らかにされている.