• 検索結果がありません。

知的障害児の学校教育での水泳指導に関する評価表の検討(2) : 自由形の評価表の検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "知的障害児の学校教育での水泳指導に関する評価表の検討(2) : 自由形の評価表の検討"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Title

知的障害児の学校教育での水泳指導に関する評価表の検討

(2) : 自由形の評価表の検討( 本文(Fulltext) )

Author(s)

湯浅, 美菜; 松本, 和久; 吉田, 晃樹; 坂本, 裕

Citation

[岐阜大学カリキュラム開発研究] vol.[24] no.[1] p.[37]-[45]

Issue Date

2006-12

Rights

Version

岐阜県立関養護学校 / 岐阜大学教育学部附属中学校 / 岐阜県

立大垣養護学校 / 岐阜大学教育学部特別支援教育講座

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/23388

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

知的障害児の学校教育での水泳指導に関する評価表の検討(2)

自由形の評価表の検討

湯浅美菜

*1

・松本和久

*2

・吉田晃樹

*3

・坂本 裕

*4 第一報(湯浅ら,2006)で示した検討版SO評価表を用いた自由形の指導を行った個別指導2事例の結 果等から「キック」,「プル」,「コンビ」の大項目からなるYM評価表を検討した.その結果,スイマ ーの様子が記録として残りやすいように中項目に練習方法を示し,各項が知的障害児の指導で重要と思わ れる各練習方法での手足の動きや体の状態をより具体的な行動レベルで記述できる評価表となった. 〈キーワード〉 水泳指導,評価表,知的障害児 1. 問題と目的 第一報(湯浅ら,2006)では,スペシャルオリンピ ックスの指導マニュアルを参考に,学校現場で使用で きる泳法指導の評価表の作成を目的とし,実際の指導 を通して検討を加えた結果として検討版 SO 評価表を 示した.本報では,その検討版 SO 評価表を実際の水 泳指導に適用し,さらに知的障害児教育の学校現場で 使用可能な水泳指導に使用することのできる自由形の 評価表を検討する. 2.方法 (1) 目的 個別の水泳指導を通して,学校現場での水泳指導に 使用することのできる評価表(以下,YM 評価表と略 す)を検討する. (2) 対象資料 第一報(湯浅ら,2006)で示した検討版 SO 評価表 (3) 方法 検討版 SO 評価表を個別の水泳指導で使用する. (4) 対象校・生徒 A中学校特殊学級に在籍する1年生の男子1名(S 1児)と3年生の男子1名(S2児)の2名である.対 象生徒は,学校の水泳授業で SO 評価表のチェックを 行った結果,大項目「自由形」の項目に距離を記入す ることができ,多くの項目を検討できる状態の生徒を 選出した. (5) 実施期間 X年7月 22 日,29 日,8月4日,5日の計4日 (6) 実施場所 A中学校プール (7) 記録方法および分析方法 指導中の対象生徒の状況をビデオ撮影する.指導 後,ビデオ分析を行い,検討版 SO 評価表のチェック を行う. 3.結果 検討版 SO 評価表を対象児に実際に使用した結果は TABLE1のようになった.各指導日,各対象児ごとの その状況は以下のとおりであった. (1) S1児 ・#1(7/22) 通過しなかった項目についての指導中の S1児の様 子は次のようであった.中項目「ビート板を持って, 顔付けキック」の練習では,「視線は前方」を向くの が望ましいが,視線が左右に向いていた.中項目「陸 岐阜大学カリキュラム開発研究 2006.12,Vol.24,No.1,37-45 *1 岐阜県立関養護学校 *3 岐阜県立大垣養護学校 *2 岐阜大学教育学部附属中学校 *4 岐阜大学教育学部特別支援教育講座

(3)

38

上でストローク」の練習では,「ひじを曲げてかく」 のが望ましいが,ひじを伸ばしたままかいていた.ま た,「ひじを一番高く」してストロークするのが望ま しい.しかし,ひじを一番高くしてかくことができて いることもあれば,腕を伸ばしたまま水から手が出 て,手の平が一番高くなっていることもあった.そし て,手を前方に戻すとき,「力を抜いて前方に戻す」 のが望ましいが,手首に力が入ったまま戻していた. さらに,ストロークのとき,「視線は前方」を向くの が望ましいが,手を動かすのと同じように視線も左右 に動いていた.中項目「ビート板を持って,片手クロ ール」の練習では,「呼吸の時顔を横に向ける」のが 望ましいが,頭を前方に起こして呼吸をしていた.ま た,手の入水の順序は,「指先,ひじ,肩の順」にす るのが望ましい.しかし,適切な順序で入水すること もあったが,腕を伸ばしたまま水から手が出て,手の 平が一番高くなり,指先とひじの入水が同じようなタ イミングになることもあった.そして,「ビート板を 持っている方のひじをしっかり伸ばす」のが望ましい が,ひじが曲がっていることがほとんどであった.中 項目「ビート板を持って,両手クロール」の練習で は,「呼吸の時顔を横に向ける」ことが望ましいが, 呼吸の時顔を横に向けることもあれば,頭を前方に起 こしていることもあった.また,「口を大きく開けて 呼吸する」のが望ましいが,口を大きく開けて呼吸が できていることもあったが,口を閉じたまま,呼吸を #1 #2 #3 #4 #1 #4 親指が軽く触れる程度に内股で ○ ○ ○ ○ ○ ○ 水面のちょうど下で ○ ○ ○ ○ ○ ○ 太ももから動かす ○ ○ ○ ○ ○ ○ ひざを折り曲げない ○ ○ ○ ○ ○ ○ つま先を伸ばす ○ ○ ○ ○ ○ ○ プールサイドにつかまってキック 腰や背中がまっすぐ伸びている ○ ○ ○ ○ ○ ○ ビート板を持って,顔上げキック 腰や背中がまっすぐ伸びている ○ ○ ○ ○ ○ ○ 視線は前方 × ○ ○ ○ × ○ あごを引く ○ ○ ○ ○ ○ ○ ストリームラインを作って進む ○ ○ ○ ○ ○ ○ 終わったら立つ姿勢に戻る ○ ○ ○ ○ ○ ○ ひじを曲げてかく × × × × × × 手のひらを後方にしてかく ○ ○ ○ ○ ○ ○ 指は自然に開く ○ ○ ○ ○ ○ ○ 太ももまでかく ○ ○ ○ ○ ○ ○ ひじを一番高くする △ △ × × △ × 力を抜いて前方に戻す × × × × × × 視線は前方 × △ × × × × 呼吸の時顔を横に向ける × ○ △ △ × × 一方のひじが水面に出てから肩の横に戻す間に 呼吸を行う ○ ○ ○ ○ × × 呼吸の前に鼻から息をはく ○ ○ ○ ○ ○ ○ 口を大きく開けて呼吸する ○ ○ ○ ○ ○ ○ 指先,ひじ,肩の順に静かに入水する △ △ ○ × × × ビート板を持っている方のひじをしっかり伸ばす × × ○ ○ ○ ○ 呼吸をしている間キックをし続ける ○ ○ ○ ○ × × 呼吸の時顔を横に向ける △ ○ △ △ × × 一方のひじが水面に出てから肩の横に戻す間に 呼吸を行う ○ ○ ○ ○ × × 呼吸の前に鼻から息をはく ○ ○ ○ ○ ○ ○ 口を大きく開けて呼吸する △ △ ○ ○ ○ ○ 指先,ひじ,肩の順に静かに入水する × △ ○ ○ × × ビート板を持っている方のひじをしっかり伸ばす × × ○ ○ × ○ 呼吸をしている間キックをし続ける ○ ○ ○ ○ × × コンビ 自由形で泳ぐ 床の線を手がかりにまっすぐ泳ぐ △ △ △ △ プールサイドに座ってキック ビート板を持って,顔付けキック グライドキック キック S1児 S2児 大項目 中項目 項目 陸上でストローク ビート板を持って,片手クロール ビート板を持って,両手クロール プル TABLE 1 事例児S1児・S2児の指導経過の推移

(4)

していることもあった.そして,手の入水の順序は, 「指先,ひじ,肩の順」にするのが望ましい.しか し,腕を伸ばしたまま水から手が出て,手の平が一番 高くなり,指先とひじの入水が同じようなタイミング であった.さらに,「ビート板を持っている方のひじ をしっかり伸ばす」のが望ましいが,ひじが曲がって いることがほとんどであった.中項目「自由形で泳 ぐ」練習では,「床の線を手がかりにまっすぐ泳ぐ」 ことよりも,25m を泳ぐことが目標となっていたの で,まっすぐ泳ぐための手だてを提示しなかった. ・#2(7/29) 通過しなかった項目についての指導中の様子として は,中項目「陸上でストローク」の練習では,「ひじ を曲げてかく」のが望ましいが,ひじを伸ばしたまま かいていた.また,「ひじを一番高く」してストロー クするのが望ましい.しかし,ひじを一番高くしてか くことができていることもあれば,腕を伸ばしたまま 水から手が出て,手の平が一番高くなっていることも あった.そして,手を前方に戻すとき,「力を抜いて 前方に戻す」のが望ましいが,手首に力が入ったまま 戻していた.さらに,ストロークのとき,「視線は前 方」を向くのが望ましいが,視線が前方のままできる こともあったが,手を動かすのと同じように左右を向 いていることもあった.中項目「ビート板を持って, 片手クロール」の練習では,「呼吸の時顔を横に向け る」ことが望ましいが,頭を前方に起こして呼吸して いた.また,手の入水の順序は,「指先,ひじ,肩の 順」にするのが望ましい.しかし,適切な順序で入水 することもあったが,腕を伸ばしたまま水から手が出 て,手の平が一番高くなり,指先とひじの入水が同じ ようなタイミングになることもあった.そして,「ビ ート板を持っている方のひじをしっかり伸ばす」のが 望ましいが,曲がっていることがほとんどであった. 中項目「ビート板を持って,両手クロール」の練習で は,「口を大きく開けて呼吸する」のが望ましいが, 口を大きく開けて呼吸ができていることもあったが, 口を閉じたまま,呼吸をしていることもあった.ま た,「ビート板を持って,片手クロール」の練習のと きと同様に,手の入水の順序は,「指先,ひじ,肩の 順」にするのが望ましい.しかし,適切な順序で入水 することもあったが,腕を伸ばしたまま水から手が出 て,手の平が一番高くなり,指先とひじの入水が同じ ようなタイミングになることもあった.そして,「ビ ート板を持っている方のひじをしっかり伸ばす」のが 望ましいが,曲がっていることがほとんどであった. 中項目「自由形で泳ぐ」練習では,泳ぎだした時は, 「床の線を手がかりに」してまっすぐ進めていたが, 疲れてくると線からはずれて泳いでいた. ・#3(8/4) 通過しなかった項目についての指導中の様子として は,中項目「陸上でストローク」の練習では,「ひじ を曲げてかく」のが望ましいが,ひじを伸ばしたまま かいていた.また,「ひじを一番高く」してストロー クするのが望ましい.しかし,腕を伸ばしたまま水か ら手が出て,手の平が一番高くなっていた.そして, 手を前方に戻すとき,「力を抜いて前方に戻す」のが 望ましいが,手首に力が入ったまま戻していた.さら に,ストロークのとき,「視線は前方」を向くのが望 ましいが,手を動かすのと同じように視線も左右に動 いていた.中項目「ビート板を持って,片手クロー ル」の練習と「ビート板をもって,両手クロール」の 練習では,「呼吸の時顔を横に向ける」ことが望まし いが,呼吸の時顔を横に向けることもあれば,頭を前 方に起こしていることもあった.中項目「自由形で泳 ぐ」練習では,泳ぎだした時は,「床の線を手がかり に」してまっすぐ進めていたが,疲れてくると線から はずれて泳いでいた. ・#4(8/5) 4回目の指導で通過しなかった項目については,中 項目「陸上でストローク」の練習では,「ひじを曲げ てかく」のが望ましいが,ひじを伸ばしたままかいて いた.また,「ひじを一番高く」してストロークする のが望ましい.しかし,腕を伸ばしたまま水から手が 出て,手の平が一番高くなっていた.さらに,手を前 方に戻すとき,「力を抜いて前方に戻す」のが望まし いが,手首に力が入ったまま戻していた.ストローク のとき,「視線は前方」を向くのが望ましいが,手を 動かすのと同じように視線も左右に動いていた.中項 目「ビート板を持って,片手クロール」の練習では, 「呼吸の時顔を横に向ける」ことが望ましいが,呼吸

(5)

40

の時顔を横に向けることもあれば,頭を前方に起こし ていることもあった.また,手の入水の順序は,「指 先,ひじ,肩の順」にするのが望ましい.しかし,腕 を伸ばしたまま水から手が出て,手の平が一番高くな り,指先とひじの入水が同じようなタイミングになっ ていた.中項目「ビート板を持って,両手クロール」 の練習では,「ビート板を持って,片手クロール」の 練習と同様に,「呼吸の時顔を横に向ける」ことが望 ましいが,呼吸の時顔を横に向けることもあれば,頭 を前方に起こしていることもあった.中項目「自由形 で泳ぐ」練習では,泳ぎだした時は,「床の線を手が かりに」してまっすぐ進めていたが,疲れてくると線 からはずれて泳いでいた. (2) S2児 ・#1(7/22) 通過しなかった項目についての指導中の様子として は,中項目「ビート板を持って,顔付けキック」の練 習では,「視線は前方」を向くのが望ましいが,視線 が真下を向いていて,顔を水中に入れすぎているよう であった.中項目「陸上でストローク」の練習では, 「ひじを曲げてかく」のが望ましいが,ひじを伸ばし たままかいていた.また,「ひじを一番高く」してス トロークするのが望ましい.しかし,ひじを一番高く してかくことができていることもあれば,腕を伸ばし たまま水から手が出て,手の平が一番高くなっている こともあった.そして,手を前方に戻すとき,「力を 抜いて前方に戻す」のが望ましいが,手首に力が入っ たまま戻していた.さらに,ストロークのとき,「視 線は前方」を向くのが望ましいが,手を動かすのと同 じように視線も左右に動いていた.中項目「ビート板 を持って,片手クロール」の練習では,「呼吸の時顔 を横に向ける」ことが望ましいが,呼吸をするために 立ってしまっていた.また,手の入水の順序は,「指 先,ひじ,肩の順」にするのが望ましい.しかし,腕 を伸ばしたまま水から手が出て,手の平が一番高くな り,指先とひじの入水が同じようなタイミングであっ た.そして,呼吸をするために立ってしまっていたの で,「一方の腕のひじが水面に出てから肩の横に戻す 間に呼吸を行う」という項目と「呼吸をしている間キ ックをし続ける」という項目は×となった.中項目 「ビート板を持って,両手クロール」の練習では, 「ビート板を持って,片手クロール」の練習のときと 同様に,「呼吸の時顔を横に向ける」ことが望ましい が,呼吸をするために立ってしまっていた.また,手 の入水の順序は,「指先,ひじ,肩の順」にするのが 望ましい.しかし,腕を伸ばしたまま水から手が出 て,手の平が一番高くなり,指先とひじの入水が同じ ようなタイミングであった.そして,呼吸をするため に立ってしまっていたので,「一方の腕のひじが水面 に出てから肩の横に戻す間に呼吸を行う」とい う項目と「呼吸をしている間キックをし続ける」とい う項目は×となった.さらに,「ビート板を持ってい る方のひじをしっかり伸ばす」のが望ましいが,曲が っていることがほとんどであった.中項目「自由形で 泳ぐ」練習では,「床の線を手がかりにまっすぐ泳 ぐ」ことよりも,25m を泳ぐことが目標となっていた ので,まっすぐ泳ぐための手だてを提示しなかった. ・#2(7/29) 欠席 ・#3(8/4) 欠席 ・#4(8/5) 2回目の指導となったが,通過しなかった項目につ いての指導中の様子としては,中項目「陸上でストロ ーク」の練習では,「ひじを曲げてかく」のが望まし いが,ひじを伸ばしたままかいていた.また,「ひじ を一番高く」してストロークするのが望ましい.しか し,腕を伸ばしたまま水から手が出て,手の平が一番 高くなっていることがほとんどであった.そして,手 を前方に戻すとき,「力を抜いて前方に戻す」のが望 ましいが,手首に力が入ったまま戻していた.さら に,ストロークのとき,「視線は前方」を向くのが望 ましいが,手を動かすのと同じように視線も左右に動 いていた.中項目「ビート板を持って,片手クロー ル」の練習と「ビート板を持って,両手クロール」の 練習では,「呼吸の時顔を横に向ける」ことが望まし いが,呼吸をするために立ってしまっていた.手の入 水の順序は,「指先,ひじ,肩の順」にするのが望ま しい.しかし,腕を伸ばしたまま水から手が出て,手 の平が一番高くなっており,指先とひじの入水が同じ

(6)

ようなタイミングであった.また,呼吸をするために 立ってしまっていたので,「一方の腕のひじが水面に 出てから肩の横に戻す間に呼吸を行う」という項目や 「呼吸をしている間キックをし続ける」という項目は ×となった.中項目「自由形で泳ぐ」練習では,泳ぎ だした時は,「床の線を手がかりに」してまっすぐ進 めていたが,疲れてくると線からはずれて泳いでい た. 4.考察 (1) 練習方法,項目の検討 ① 練習方法の検討 #1では,S1児,S2児ともに,中項目「ビート板 を持って,片手クロール」の練習において片手だけを かくのが難しいようで,両手をかいていた.そこで, ビート板の上にある方の手を添えると,回すと決めた 側の手のみをかくことができるようになった.中項目 「ビート板を持って,片手クロール」の練習が2回目 となった,S1児は#2,S2児は#4においては,始 めのうちは両手をかいてしまうこともあったが,#1 と同じように,手を添えると,繰り返すうちに一人で 片手ずつ回すことができるようになった.これは,両 手を使って泳ぐ経験を積んでおり,片手だけをかく経 験が少なかったためと考えられる.渡邊(2005)は,ク ロールの息つぎの練習として「片手クロール」の練習 方法をあげているが,身体動作の難しい知的障害のあ る子どもにとっては,中項目「ビート板を持って,片 手クロール」の練習,「ビート板を持って,両手クロ ール」の練習と段階を踏むよりも,中項目「ビート板 を持って,両手クロール」の練習のみで,息継ぎの指 導を取り入れる方が有効であると考えた. ② 項目の追加・書き換えの検討 各指導日の状況を踏まえて,評価表の練習方法,項 目の追加と書き換えの検討を以下のように行った. ○#1(7/22):追加4項目,書き換え1項目 ・中項目「ビート板を持って,両手クロール」に項目 「両手が一時ビート板の上にそろう」追加 S1児,S2児ともに,中項目「ビート板を持って, 両手クロール」の練習のときに,片方の手をかき終え て前方に戻す前にもう片方の手をかいていた.そのた め,ビート板から手が離れ,流れていってしまった. このような手をかくタイミングでは呼吸がやり辛い が,片方の手が前にある状態であると呼吸はやりやす くなる. ・中項目「自由形で泳ぐ」に項目「両手が一時前にそ ろう」追加 また,S1児,S2児ともに,中項目「自由形で泳 ぐ」練習のときに,呼吸をしている間に,呼吸をして いない側の手をかき始めていた.このような手をかく タイミングでは呼吸はやり辛いが,片方の手が前にあ る状態であると呼吸はやりやすくなる.また,中項目 「ビート板を持って,両手クロール」の項目「両手が 一時ビート板の上にそろう」とのつながりも考えた. ・中項目「プールサイドにつかまってキック」に項目 「ひじを伸ばす」追加 S2児は,中項目「プールサイドにつかまってキッ ク」の練習のときに,ひじを曲げて,プールサイドに つかまっていた.泳ぐときの姿勢として手が前にある ときにはひじが伸びているのがよい姿勢である. ・中項目「ビート板を持って,顔上げキック」に項目 「頭を動かさない」追加 S2児は,中項目「ビート板を持って,顔上げキッ ク」の練習のときに,キックを打つのと一緒に頭を左 右に動かしていた.頭を動かすことで体も揺れてしま い,姿勢が崩れてしまう. ・中項目「グライドキック」の項目「ストリームライ ンを作って」を「腕で頭を挟み,ひじを伸ばす」に 書き換え 項目「ストリームラインを作って」ではイメージが 困難であるため,具体的な体の状態を示す「腕で頭を 挟み,ひじを伸ばす」に書き換えた. ○#2(7/29):追加1項目 ・中項目「陸上でストローク」に項目「かく手が体の 中心を越えない」追加 中項目「自由形で泳ぐ」練習のときに,S1児の水 中での手をかく動きを見てみると,かく手が体の中心 をずいぶん越えて動いていた.そのため,からだが大 きく揺れ,まっすぐに泳ぐことが難しかった. ○#3(8/4):追加1項目

(7)

42

・中項目「ビート板を持って,片手クロール」の項目 「 呼 吸 の 時 顔 を 横 に 向 け る 」 に 「 肩 を 見 る よ う に」追加 中項目「自由形で泳ぐ」練習ときに,S1児は,疲 れてくると呼吸をするのに頭を前方へ起こしていた. 呼吸のとき顔を横に向けたときに見るものは肩が適切 である. ○#4(8/5):追加1項目 ・中項目「ビート板を持って片手クロール」に項目 「呼吸のとき水面すれすれに顔を出す」追加 S2児は,中項目「ビート板を持って片手クロー ル」の練習のときに,呼吸をするのに,水面からたく さん顔を出していて,下半身が沈みぎみになってい た. (2) 提案する YM 評価表 ① 検討版 SO 評価表の変更点 検討版 SO 評価表の練習方法,項目の追加や書き換 えを検討したところ,各練習方法とチェック項目の変 更点は次のようになった. ・中項目「プールサイドに座ってキック」のチェック 項目に変更はない. ・中項目「プールサイドにつかまってキック」は,項 目「腰や背中がまっすぐ伸びている」のみであっ たが,#1の指導を踏まえて,「ひじを伸ばす」 という項目を追加し,2つのチェック項目となっ た. ・中項目「ビート板を持って,顔上げキック」は,中 項目「プールサイドにつかまってキック」の練習 の項目と同じであったので省き,#1の指導を踏 まえて,項目「頭を動かさない」を追加し,1つ のチェック項目となった. ・中項目「ビート板を持って,顔付けキック」のチェ ック項目に変更はない. ・中項目「グライドキック」は,項目「ストリームラ インを作って進む」であったが,#1の指導を踏 まえて,「腕で頭を挟み,ひじを伸ばす」という 項目に書き換えをした.項目「終わったら立つ姿 勢に戻る」と合わせ,2つのチェック項目となっ た. ・中項目「陸上でストローク」は,#2の指導を踏ま えて,項目「かく手が体の中心を越えない」を追 加した.最初からあった項目に変更はなく,合わ せて8つのチェック項目となった. ・中項目「ビート板を持って,片手クロール」は,4 日間の指導を踏まえて,練習方法を削除した.中 項目「ビート板を持って,片手クロール」と「ビ ート板を持って,両手クロール」のチェック項目 は 同 じ で あ っ た の で , 中 項 目 「 ビ ー ト 板 を 持 っ て , 片 手 ク ロ ー ル 」 の 項 目 の 追 加 や 書 き 換 え は 「ビート板を持って,両手クロール」の練習の項 目に行った. ・中項目「ビート板を持って,両手クロール」は,# 1の指導を踏まえて,項目「両手が一時ビート板 の上にそろう」を追加した.また,中項目「ビー ト板を持って,片手クロール」の削除に伴って, 項目「呼吸の時顔を横に向ける」には,#3の指 導を踏まえて「肩をみるように」という項目を書 き 加 え た . さ ら に # 4 の 指 導 を 踏 ま え て , 項 目 「水面すれすれに顔を出す」を追加した.最初か らあった項目に変更はなく,合わせて9つのチェ ック項目となった. ・中項目「自由形で泳ぐ」は,項目「床の線を手がか りにまっすぐ泳ぐ」のみであったが,#1の指導 を踏まえて,項目「両手が一時前にそろう」を追 加し,2つのチェック項目となった. ② YM 評価表 検討版 SO 評価表を,個別の水泳指導に用いて,改 善してできあがった YM 評価表を TABLE2に示した. 大項目は練習内容,中項目は練習方法,項目はチェッ ク項目から構成した.評価表が,「キック」,「プ ル」,「コンビ」の大項目に分かれていることに変更 はない. 検討版 SO 評価表と大きく異なる点は,同じ項目を 繰り返し書く作業を省いたことである.そのため,YM 評価表は,大項目「キック」,「プル」のそれぞれの 練習において,中項目に出てくる項目は同じ大項目中 の後の中項目でも常に該当する項目である.また,大 項目「コンビ」では,中項目「キック」,「プル」に 含まれている項目すべてと大項目「コンビ」の項目が 該当する.

(8)

大項目「キック」は,中項目「プールサイドに座っ てキック」,「プールサイドにつかまってキック」, 「ビート板を持って,顔上げキック」,「ビート板を 持って,顔付けキック」,「グライドキック」の5項 目から構成した.中項目「プールサイドに座ってキッ ク」の練習の項目に変更点はなく,「親指が軽く触れ る程度に内股で」「水面のちょうど下で」,「太もも から動かす」,「ひざを折り曲げない」,「つま先を 伸ばす」の5項目である.中項目「プールサイドにつ かまってキック」の練習は項目「腰や背中がまっすぐ 伸びている」に,「ひじを伸ばす」という項目を追加 し,2項目とした.中項目「ビート板を持って,顔上 げキック」の練習の項目のうち「プールサイドにつか まってキック」の練習と同じ項目は省き,項目「頭を 動かさない」1項目とした.中項目「ビート板を持っ て,顔付けキック」の練習の項目に変更点はなく,項 目「視線は前方」,「あごを引く」の2つである.中 項目「グライドキック」の練習は,項目「ストリーム ラインを作って進む」を「腕で頭を挟み,ひじを伸ば す」という項目に書き換えをし,項目「終わったら立 キック プールサイドに座ってキック 親指が軽く触れる程度に内股で 水面のちょうど下で 太ももから動かす ひざを折り曲げない つま先を伸ばす プールサイドにつかまってキック 腰や背中がまっすぐ伸びている ひじを伸ばす ビート板を持って、顔上げキック 頭を動かさない ビート板を持って、顔付けキック 視線は前方 あごを引く グライドキック 腕で頭を挟み、ひじを伸ばす 終わったら立つ姿勢に戻る プル 陸上でストローク ひじを曲げてかく 手のひらを後方にしてかく 指は自然に開く 太ももまでかく ひじを一番高くする 力を抜いて前方に戻す 視線は前方 かく手が体の中心を越えない ビート板を持って、両手クロール 呼吸の時顔を横に向ける(肩を見るように) 一方の腕のひじが水面に出てから肩の横に戻す間に呼吸を行う 呼吸の前に鼻から息をはく 口を大きく開けて呼吸する 指先、ひじ、肩の順に静かに入水する ビート板を持っている手のひじをしっかり伸ばす 呼吸をしている間キックをし続ける 両手が一時ビート板の上にそろう 水面すれすれに顔を出す コンビ 自由形で泳ぐ 床の線を手がかりにまっすぐ泳ぐ 両手が一時前にそろう TABLE2 水泳:自由形指導評価表案(YM評価表)

(9)

44

TABLE3 自由形指導評価表の推移 YM評価表 グライドキックをする〔m〕 親指が軽く触れる程度に内股で 親指が軽く触れる程度に内股で 水面のちょうど下で 水面のちょうど下で 太ももから動かす 太ももから動かす ひざを折り曲げない ひざを折り曲げない つま先を伸ばす つま先を伸ばす プールサイドにつかまって 左右相称の動きでキックを する〔秒〕 プールサイドにつ かまってキック 腰や背中がまっすぐ伸びている 腰や背中がまっすぐ伸びている ひじを伸ばす 指導者の補助つきでビート 板を持ってキックをする 〔m〕 ビート板を持っ て、顔上げキック 腰や背中がまっすぐ伸びている 頭を動かさない 視線は前方 視線は前方 あごを引く あごを引く ストリームラインを作って進む 腕で頭を挟み、ひじを伸ばす 終わったら立つ姿勢に戻る 終わったら立つ姿勢に戻る ひじを曲げてかく ひじを曲げてかく 手のひらを後方にしてかく 手のひらを後方にしてかく 指は自然に開く 指は自然に開く 太ももまでかく 太ももまでかく ひじを一番高くする ひじを一番高くする 力を抜いて前方に戻す 力を抜いて前方に戻す 視線は前方 視線は前方 かく手が体の中心を越えない 呼吸の時顔を横に向ける 一方の腕のひじが水面に出てから肩 の横に戻す間に呼吸を行う 呼吸の前に鼻から息をはく 口を大きく開けて呼吸する 指先、ひじ、肩の順に静かに入水す る ビート板を持っている方のひじを しっかり伸ばす キックを使って自由形を泳 ぐ〔m〕 呼吸をしている間キックをし続ける 呼吸の時顔を横に向ける 呼吸の時顔を横に向ける(肩を見るように) 一方の腕のひじが水面に出てから肩 の横に戻す間に呼吸を行う 一方の腕のひじが水面に出てから肩 の横に戻す間に呼吸を行う 呼吸の前に鼻から息をはく 呼吸の前に鼻から息をはく 口を大きく開けて呼吸する 口を大きく開けて呼吸する 指先、ひじ、肩の順に静かに入水す る 指先、ひじ、肩の順に静かに入水す る ビート板を持っている方のひじを しっかり伸ばす ビート板を持っている手のひじを しっかり伸ばす 呼吸をしている間キックをし続ける 呼吸をしている間キックをし続ける 両手が一時ビート板の上にそろう 水面すれすれに顔を出す 検討版SO評価表 プールサイドに 座ってキック 陸上でストローク ビート板を持っ て、片手クロール ビート板を持っ て、顔付けキック グライドキック 片側で呼吸をして自由形で 泳ぐ〔m〕 自 由 形 プルと呼吸の調和した自由 形で泳ぐ〔m〕 ビート板を持っ て、両手クロール けのびをして立った姿勢に 戻る〔%〕 SO評価表 プールサイドに座って、指 導者の補助つきでキックを する〔秒〕 キ ッ ク ふ し 浮 き

(10)

つ姿勢に戻る」と合わせて2項目とした. 大項目「プル」は,中項目「陸上でストローク」, 「ビート板を持って,両手クロール」の2項目から構 成した.中項目「陸上でストローク」の練習は,「ひ じを曲げてかく」,「手のひらを後方にしてかく」, 「指は自然に開く」,「太ももまでかく」,「ひじを 一番高くする」,「力を抜いて前方に戻す」,「視線 は前方」の最初からあった項目に「かく手が体の中心 を越えない」という項目を追加し,8項目とした.中 項目「ビート板を持って,片手クロール」の練習は削 除した.「ビート板を持って,両手クロール」の練習 のチェック項目は「両手が一時ビート板の上にそろ う」という項目を追加した.また,項目「呼吸の時顔 を横に向ける」に「肩を見るように」という項目が書 き加わり,項目「水面すれすれに顔を出す」を追加し た.最初からあった項目「一方の腕のひじが水面に出 てから肩の横に戻す間に呼吸を行う」,「呼吸の前に 鼻から息をはく」,「口を大きく開けて呼吸する」, 「指先,ひじ,肩の順に静かに入水する」,「ビート 板を持っている手のひじをしっかり伸ばす」,「呼吸 をしている間キックをし続ける」の6項目に変更はな く,合わせて9項目となった. 大項目「コンビ」は,中項目「自由形で泳ぐ」の1 項目で構成した.中項目「自由形で泳ぐ」練習は,項 目「床の線を手がかりにまっすぐ泳ぐ」に「両手が一 時前にそろう」という項目を追加し,2項目となっ た. 5.まとめ 個別指導2事例の結果,スペシャルオリンピックス 水泳プログラムの解説部分や文献とともに第一筆者の 水泳競技者ならび指導者としての経験を加えて,泳法 を自由形に限定した「キック」,「プル」,「コン ビ」の大項目3つからなる YM 評価表を作成した.SO 評価表から検討版 SO 評価表へ,そして,YM 評価表へ の検討の推移を示したものが TABLE3である. こうして完成した TABLE2の YM 評価表は,学校現 場での使用を考え,指導する技能とその練習方法が対 応 し や す い よ う に 重 複 す る 項 目 を 整 理 し , 「 キ ッ ク」,「プル」,「コンビ」の大項目から構成した. また,スイマーの様子が記録として残りやすいように 中項目に練習方法を示し,それらの各項は知的障害児 の指導で重要と思われる各練習方法での手足の動きや 体の状態をより具体的な行動レベルで記述できるよう にした. ただし,今回の研究は学校の屋外プールでの取り 組みであったため,対象生徒を自由形がある程度泳げ る2名に限定してしまった.今後は学校現場で多くの 児童生徒との実践を通して,検討を加え,また,他の 泳法についても検討を加えていきたい. 謝辞 事例対象となってくださったA中学校特殊学級 の生徒さんならびに保護者のご協力に心より感謝申し 上げます. 文献 1)湯浅美菜・松本和久・吉田晃樹・坂本裕(2006): 知的障害児の学校教育での水泳指導に関する評価 表の検討(1)-知的障害特殊学級での検討-.岐阜 大学カリキュラム開発研究,24(1),31-36. 2)渡邊義行(2005):学校水泳指導の基礎・基本.西 日本法規出版.

参照

関連したドキュメント

学期 指導計画(学習内容) 小学校との連携 評価の観点 評価基準 主な評価方法 主な判定基準. (おおむね満足できる

瓦礫類の線量評価は,次に示す条件で MCNP コードにより評価する。 なお,保管エリアが満杯となった際には,実際の線源形状に近い形で

小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児

職員参加の下、提供するサービスについて 自己評価は各自で取り組んだあと 定期的かつ継続的に自己点検(自己評価)

本稿で取り上げる関西社会経済研究所の自治 体評価では、 以上のような観点を踏まえて評価 を試みている。 関西社会経済研究所は、 年

「PTA聖書を学ぶ会」の通常例会の出席者数の平均は 2011 年度は 43 名、2012 年度は 61 名、そして 2013 年度は 79

通関業者全体の「窓口相談」に対する評価については、 「①相談までの待ち時間」を除く