• 検索結果がありません。

組織と個人の新統合システム : 試論

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "組織と個人の新統合システム : 試論"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

組織 と個人の新統合 システム :試 論

I 序 筆者はこれまでの研究において,組 織における 「個」の尊重 という理念を掲 1 ) げ,組 織 と個人の統合 とい う枠組みのなかで,こ の問題 を研究 して きた。 今 日,組 織 と個人 を取 り巻 く環境は大 きく変化 しつつある。国際化,情 報化, 雇用の流動化 によって, 日本の企業は従来の雇用慣行 お よびマネジメン トの見 直 しを迫 られている。企業が グローバルに活動 を展開す るようになると, 日本 企業に固有の慣行 を維持す ることは困難になる。 また情報 。通信技術の発達 に よって,職 場ではフェイス ・トゥ ・フェイスの関係が減少 し,仕 事のなかに人 格的要素が乏 しくなる。 そ して働 き方は,時 間的に も空間的に もフレキシブル になる。将来は,複 数の企業に対 して多元的に帰属す るようなケースも増えて くるであろ う。 さらに雇用の流動化,雇 用形態の多様化 によって,個 人の組織 に対す る関わ り方はいっそ う限定的なものになってい く。 この ような社会的 ・技術的条件の変化 は,上 述 した個の尊重 を実現す るうえ で好機 で もある。個人に とって,さ まざまな局面で選択の余地が拡大 し, 自律 性が高 まるか らである。 もっ ともそれが無条件に個 の尊重へ と結びつ くわけで はな く,対 応の仕方 しだいでは逆の道 をたどる可能性 も大いにある。それだけ 明確 な指針 と理論的裏付けが重要 になって くるとい うことである。 筆者 は,上 述 したような環境のなかで進行す るプ ロフェッショナル化 とい う 現象に着 日し,そ こか ら個人 を尊重 しなおかつ組織の利益 と両立できるような 肇 田 太 1)大 田 (1993),(1994),(1996b)な どを参 照 。

(2)

104 彦 根論叢 第 302号 関係 につ いてひ とつの展望 を見出そ うとしている。 労働力の統計が示す ように,専 門的 ・技術的な職業の 占め る比重は高 まる一 方である。 さらに,今 後 日本の労働者が国際的な競争のなかで生 き残 るには, 専 門的知識 ・技術 にいっそ う依存せ ざるを得 ない とい う現実がある。すなわち, 専 門的な能力 を用 いて働 く労働者が,社 会のなかで もまた組織のなかで ももは やマ イナー な存在 ではな くなって きているのである。 問題 は,こ のような人々 をいかに して組織 と統合 し,マ ネー ジしてい くかで ある。暗黙の うちに 「組織人」 を想定 していたこれ までの伝統的な統合の枠組 みでは,真 の意味で彼 らを組織 と統合す ることが難 しくなっている。新 しい統 合 の システム を構築す ることが必要 なのである。 プ ロフェッショナル ・ワー クの特徴のひ とつ として,仕 事 と個人人格の分離 が困難であること,そ して個人の 自発性, 自律性に大 きく依存す るとい うこと があげ られ る。 そこか ら必然的に,個 人の視点,個 人の論理 を踏 まえた理論の 枠組みが要求 され るようになる。 本稿 では,増 大 しつつあるプ ロフェッショナル的な労働者の仕事 ・組織に対 す る関わ り方の特徴 を概観 し,そ れ を踏 まえて組織 と個人の統合の枠組み と具 体的 なプ ロセスを示す。 そ して最後に,こ のような統合 を行 ううえで必要 な組 織の形態につ いて も論 じることに したい。 II 企 業 内 プ ロフェッシ ョナルの台頭 専 門的 な知 識 ・技術 を用 いて働 く人々 は,絶 対数 にお いては もちろん,就 業 者全体 に 占め る比率 にお いて も,一 貫 して増加傾 向 を示 してい る。 た とえば総 務 庁 の 「労働 力調査 」 では 「専 門的 ・技術 的職業従事 者」 とい う分類 が用 い ら れ て い るが,1975年 か ら1995年の20年間に,そ の数 は361万人か ら790万人へ, 全 体 に 占め る比率 は7.0%か ら12.2%へ と増加 して い る (第 1図 ,第 2図 )。こ の比率 はア メ リカな どと比べ る とまだ低 く,今 後 さらに高 まるこ とが予想 され る。 それ では,彼 らの仕事 の専 門性 は どの よ うに定義 す るこ とが で きるのか。 こ

(3)

組織 と個 人の新統合 システム :試 論 第 1 図 専 門的 ・技術的職業従業者 (就業者数) 800 700 600 500 400 300 200 出所 :総 務庁 「労働 力調査」 をもとに作成。 第 2 図 専 門的 ・技術的職業従事者 (構成比) 13 12 11 10 9 8 7 6 5 1970 出所 : 第 1 図 に同 じ。 こでは 「専 門化」 とい う概念 を用 いて,そ れ を説明す ることに したい。 いわゆる専門化には 2種 類の方向がある。ひ とつはテイラー ・システムに象 徴 され るような仕事 の細分化 であ り, もうひ とつは,医 師などに象徴 されるよ 就 業 者 数 ︵万 人 ︶ 構 成 比 ︵% ︶

(4)

E P E F I I I   I 106 彦 根論叢 第 302号 うな職業の専 門分化 である。Thompson(1961)は ,前 者 を 「課業の専 門化」, 後者 を 「人の専 門化」 として区別す る。 「課業の専 門化」は組織によるプ ロセ スであ り,一 般 に機械化がそれ を促進す る。一方 「人の専門化」は社会的プロ セスであ り,特 定の職業が専 門職 としての社会的承認 を獲得 しようと努力す る 歴史のなかでそれは進んでい く。 本稿 でい う 「専 門化」は,「 人の専 門化」の方向 を意味 し,社 会的には多様 な専 門職の増殖 とい う現象 をもたらす。 もちろん彼 らは企業 とい う組織によっ て雇用 され る者ばか りではないが,社 会的,技 術的,お よび経済的な理由か ら 組織に雇用 されて働 く形態が一般的にな りつつある。 さらに新 しい専門的職種 のなかには,産 業社会の進展 とともに発達 した職種 もある。 Reich(1991)は ,ア メ リカ社会 で働 く人々 を,生 産労働者,サ ー ビス労働 者,お よび 「シンボ リック ・アナ リス ト」に分類す る。 シンボ リック・アナ リ ス トは,デ ー タ,言 語,音 声などを操作 し,問 題解決,問 題発見,戦 略的媒介 を行 うこ とに よって,ボ ー ダー レスな経済 (グローバル ・ウェブ)の なかで活 躍す る人々である。具体的には,研 究科学者,設 計技術者,ソ フ トウェア技術 者,建 設技術者,経 営 コンサルタン ト,建 築 コンサルタン ト,シ ステム・アナ リス ト,広 告プランナー,建 築家,工 業デザ イナT,編 集者,ジ ャーナ リス ト, それに大学教授 などが含 まれ,全 労働者の 5分 の 1を 占め る。 ところで,職 業社会学上,専 門的職種 はプ ロフェッション (プロフェッショ ナル)と して扱われ ることが多い。そ して,典 型的なプロフェッションは,つ ぎの ような要件 を備 えた職業 とされている。 1,長 期 の教育訓練によって獲得 された専 門的知識 ・技術 を用いる職業 であること。 2.サ ー ビスの提供にあた っては,倫 理的規範に従 い,私 的利益 だけでな く公益への奉仕が求め られるこ と。 3.能 力的お よび倫理的基準 を維持す るこ とを主 目的 とした職業団体 が存 在 してい ること。 4。 この ような専 門性,倫 理性 を保証す る内的規制が存在す るため,専 門の領域においては公に認め られた排他的権限が付与 され,一 定の 2)Carr― Saunders=Wilson(1933),Greenwood(1957),Wilensky(1964).

(5)

組織 と個人の新統合システム :試論 107 独 立性 と自律性 が備 わ ってい るこ と,な どであ る。 これ らの要件 を備 えた伝統 的 なプ ロフ ェ ッシ ョナ ル (プロフェ ッシ ョン)と しては,医 師,法 律 家,科 学 者,聖 職 者 な どが あげ られ る。 しか し,こ れ らの伝統 的 なプ ロフェ ッシ ョナ ルの 多 くは もともと独 立 自営 が 通例 で あ り,今 日組織 の一員 として働 く場合 も,そ のほ とん どが病院,弁 護士 事務所,大 学 な ど,Etzioni(1964)の い う 「専 門職組織」に属 してい る。 こ れ らの組織は専 門業務 を遂行す ることを主 目的に設立 された ものであ り,営 利 な どを目的 とす る企業 な どの組織 とは性格 が異 なる。Etzloniは,他 方の,企 業 に代表 され るような専 門職 の 目的 と組織の 目的が異なる組織 を 「非専門職組 織」 と呼んでいる。 筆者は,企 業 な ど非専 門職組織に雇用 され るプ ロフェッショナルの要件 とし て,専 門的知識 ・技術 に基づ く職業であること,な らびに専門家団体 あるいは 専 門家社会 の基準に よる能力その他 の評価 システムが何 らかの形で存在 してい ることをあげている。 ただ,前 述 した 「人の専 門化」 とい う面か らみた専門性, それに後述す るように現実の組織 ・仕事 に対す る関わ り方,志 向 とい う主観的 な側面に着 目した場合,経 理,財 務,営 業などの ような職 も含む広い概念 を用 いることが必要になって くる。そ してそれによって, よ リー般的な視点か ら, 組織 と個人の統合の問題,な らびにそれ を踏 まえたマネジメン トを論 じること がで きると考 えられ る。 そこで,専 門知識 ・技術 を用いる業務 に携わる者であ り, しか もその仕事 内 容 が一定の (外部)汎 用性,完 結性, 自律性 を備 えている場合,彼 らを 「企業 内プ ロフェ ッショナル」 と呼ぶ ことにす る。 したが つて これは 「専 門的技術的 職業従事者」 よりも広い概念であ り,前 述 したシンボ リック・アナ リス トもそ の多 くはこれに含 まれ る。 つ ぎに,企 業内プロフェッショナルの主な特徴 について述べてお きたい。 3)大 田 (1993)21頁。 4)こ こでい う 「企業」は,正 確 には非専 門職組織 を意味す る。 したが つて行政機関なども これに含 まれ る。

(6)

108 彦 根論叢 第 302号 第一の特徴 は,い うまで もな く彼 らの多 くが産業の場 で活動 しているとい う ことである。 そ して,個 人の専 門的能力によって有形無形の報酬 を獲得す る。 そのため,欲 求充足の方法には個人主義的な色彩が濃 く,仕 事の場においては, 何 らかの形 で競争原理が働 いている。 しか もそれは,最 終的に経済原則によっ て支配 されているのが普通 である。 したが って,伝 統的なプロフェッショナル につ いての研究成果が彼 らにその まま当てはまるとはか ぎらないのである。 伝統的 なプ ロフェ ッシ ョナルの場合,公 益への奉仕責任 と高度の倫理性が求 め られてお り,そ れに対応す る排他的地位 と特権が公的に付与 されている。 し か し企業 内プ ロフェッショナルの場合,そ うした地位や特権が与えられている 職種 は少 ない。 したがって基本的には,彼 らに対 して伝統的なプロフェッショ ナル と同等の禁欲的行動, 自己犠牲 を強いることはで きない。 もちろん,彼 らが社会的に認知 され,社 会的な評価 を獲得す るためには,一 定の社会的責任 を果たす ことが不可欠である。それはまた,彼 らの所属組織に 対す る交渉力 を高め るために も必要 な条件 である。 しか し,彼 らの社会的なら びに組織内の位置づ けか らして,公 益への奉仕 を第一義的な目的 とす ることが 求め られ るわけではない。企業の社会的責任 についてはさまざまな議論がある が,少 な くとも企業内プロフェッショナル個人の レベルでは,「 満足基準」で , 応 えるこ とによって足 りると解釈すべ きであろう。 第二の特徴 として,ユ ニバーサ リズム と仕事志向があげ られる。 彼 らは企業 とい う組織に所属 して働 く。 したがって,何 らかの形で組織の利 益 に貢献す ることが前提条件 となる。 しか し一方で,彼 らの活動領域は必ず し も所属組織の内部に限定 されず,彼 らの 目的 も組織の枠 を超 える。個々の企業 に とって も,特 定の職種 に対す る需要にはか ぎりがあ り,そ れがつねに変動す る以上,専 門の仕事の継続 を終身的に保障す ることはで きない。 したがって, 彼 らが 「プ ロフェ ッシ ョナル」 としての専 門性 を維持 し,独 自の 目的 を追求す 5)も っ とも,そ の基準 を具体的に どの程度 とす るかは,組 織お よび仕事 の種類 (たとえば 業種や職種 )に よって異なる。 また,社 会的責任 をどの主体が, どの ように して負担す る か につ いては,別 途詳細 な議論が必要 である。

(7)

組織と個人の新統合システム :試論 109 るため には,組 織 が閉鎖 的 でない こ と,少 な くとも最終的に移動可能性が留保 されて い るこ とが不可欠 であ る。 この よ うに企業 内プ ロフェ ッシ ョナルは,一 定 の流動性 を備 えた産業社会 の 産 物 であ る とい え る。 さ らに,雇 用 の流動化 は,個 人の価値観 ・志 向や 態度 の 面 で もプ ロフェ ッショナル化 を推進す る。個 人のアイデンティティ,職 業生活 におけ る拠 り所が,組 織の名声や 内部のポス トなどか ら, 自分の能力,仕 事上 の業績,社会的評価 ・資格 といったポー タブルなものへ と移 ってい くか らである。 彼 らは専 門 とす る仕事の うえで能力 を発揮 し,そ の成果によって所属組織か ら,ま た社会か ら有形無形の報酬 を獲得 しようとす る。 そのためには,広 い意 味での社会的な要求に応 えていかなければならない。仕事の性質においても, また志向の面で も,彼 らは組織の枠 を超 えたォープンなシステムのなかで生 き ているのである。 I H 仕 事 ・組織 への関わ り方 と統合 の枠組み 1 プ ロフェ ッシ ョナル ・モデル 企業内プロフェッショナルの仕事 と組織に対す る関わ り方は,つ ぎのように モデル化す ることがで きる。 彼 らは,専 門の仕事の うえで能力 を発揮 し,そ の業績によって専門家社会に おけ る地位 と評価,金 銭的報酬 などを獲得す る。それによって,低 次の欲求は もちろん,尊 敬 ・自尊, 自己実現,達 成 といった高次の欲求 も充足す る。 この うち高次の欲求は,非 飽和的な性格が強い。 したが って, よ り高い水準の 日標 を定めて最大限の努力 を継続す るのである。すなわち個人 と仕事 との関係は, March=Simon(1958)の い う 「最適基準」によって支配 されているというこ とがで きる。 一方で彼 らは組織の一員 としての地位 を有 し,組 織からさまざまな誘因を獲 得す る。 まず,低 次の欲求 を充足す るためには,安 定 した生活や良好な人間関 係が必要 である。 また,専 門の仕事 において能力 を発揮す るためには,設 備や

(8)

材料 ,資 金 な どの物理 的 ・経済的条件,そ れ に情報,人 的支援,組 織 のブ ラン ド (看板 )な どが不可欠 であ る。 したが って,そ れ らの誘 因 を獲得 す るため彼 らは組 織 に対 して依 存す るこ とにな る。 ただそれ らは,彼 らに とって一種 の必 要 条件 とい うこ とが で きる。 したが って,そ の性質上一定の水準で獲得 で きる か否かが決定 的 に重要 であ る。 またそれ らの 多 くは,組 織 の メンバー として容 認 され る程 度 の貢献 を して い る者 に対 しては付 与 され るのが普通 であ る。 その ため彼 らは,低 次欲求 を充足 し,ま た高次欲求充足の ための条件 を獲得 す るの に必要 な範囲で組織に対 して直接貢献 しようとす るのである。すなわち,個 人 と組織 との関係は 「満足基準」によって支配 されていることになる。 要す るに,彼 らの生 き甲斐は高次欲求 を直接充足す ることので きる専 門の仕 事 の方にあ り,組 織 はそのための手段 として位置づ け られているのである。筆 者が研究者,技 術者な どを対象に して行 った実証研究では,彼 らが専 門の仕事 に第一義的な価値 を見出 し,組 織 を手段視す る傾 向の強いことが明 らかになっ ている。 また経営 コンサルティング企業 を対象 とした研究で も, と くにアメ リ カ型の企業は,知 的刺激,情 報収集 といったインフラス トラクチャーの役割 を 7 ) 果 た しているこ とが報告 されている。 この ように,企 業内プロフェッショナルは,専 門の仕事 に対 しては最適基準, 所属組織 に対 しては満足基準で貢献す るとい う分離 した関わ り方 をしていると 考 え られ る。この ような仕事 と組織への関わ り方 を概念的に表 した ものが,「プ ロフェッショナル ・モデル」である。 D 2 組 織 と個 人の問接統合 一 方組織の側か らは,彼 らの行動 を組織の 目的あるいは利益へ と結びつけて いか なければ な らない。 そ こか ら,組 織 と個 人の統合 の問題 が生 れ る。 広 く解 釈 す るな らば,こ れ までの経営 学 あ るいは経営組 織論 は,組 織 と個 人 6) 7) 8) 大 田 (1993)第 2, 6章 。 村上 (1994)。 大 田 (1993),(1994),Ohta(1994).

(9)

組織 と個人の新統合 システム :試論 111 の 統 合 の 問題 を主 要 な テー マ と して 扱 って きた とい って もよ い。Taylorの 科 学 的 管 理 法 , M a y o , R o e t h l i s b e r g e r ら に よ る人 間 関係 論 な ど も,広 い意 味 で は経営組織の 目的 と個人の 目的 をいかに調和 させ るか とい う問題意識に基づ く ものであった。 そ して,組 織 と個 人の統合 の問題 を真正面にす えて研究 したのは,Argyris, McGregor,Likertら に代表 され る新人間関係学派の人々である。彼 らが用い た統合 の枠組みは,つ ぎのような考 え方に基づ く。個人が組織の 目的 を受け入 れ,組 織全体 に関わる重要 な仕事 を遂行す ることによって成長 を遂げ, 自己実 現や達成感 といった重要 な報酬 を得 る。 また組織は,そ の過程 で個 人か ら最大 限の貢献 を引 き出す ことができる。 このような伝統的な統合の枠組み を 「直接 (的)統 合」 と呼ぶ ことに している。直接統合 では,全 体 にかかわる意思決定 へ の参加,頻 繁 な相互作用,豊 富なコミュニケー ションなどが重視 され,ま た 組織の類型 としてはいわゆる有機的組織が理想 とされ る。 ここで重要 な″点は,直 接統合が暗黙の うちに一定の人間像 を措定 しているこ とである。主に組織のなかで能力 を発揮 し,そ こか ら得 られ る内的および外的 報酬 に よって,低 次の欲求は もちろん,高 次の欲求 も充足できる人間である。 彼 らは,組 織か ら得 られ る誘因によって主要 な欲求 を充足 しようとす る。 その ために組織に対 して最大限の貢献 をす る。すなわち,プ ロフェッショナル ・モ デルの ように仕事 と組織 とが別個の もの として認識 され ることはな く,組 織 と の関係 は最適基準によって支配 され る。 このような組織 (仕事)へ の関わ り方 が 「組織人モデル」である。 組織 (仕事)に 対 して組織人モデルの ような関わ り方 をす るに者には,た し かに直接統合 は有効 である。前述 したような組織構造 とマネジメン トをとお し て,個 人の能力は最大限に発揮 され,主 要な欲求は組織のなかで充足 される。 の そ して, 個 人の 目標 の達成 は, 組 織 の 目標達成 に直結す る。 9 ) 目 的 と目標 は もちろん同 じではない。本稿 では一応,よ 的」, よ り派生的 ・具体的な もの を 「目標」 としているが, る場合 もある。 り基本的 ・抽象的 な もの を 「目 文脈 に よって互換的に用 いてい

(10)

しか し,個 人が仕事 と組織に対 してプ ロフェッショナル ・モデルのような関 わ り方 をす る場合 には,直 接統合 は有効 とはいえない。彼 らは組織に対 して満 足基準で貢献 しようとしているに もかかわ らず,直 接統合 はその ような個人の 限定的 ・手段的な関与 を想定 していない。 したがって,彼 らに とって直接統合 は,主 要 な欲求 を充足す るうえで役 に立たないばか りか,場 合 にょっては過大 な負担 を強いるもの となる。 彼 らに対 しては,プ ロフェッショナル ・モデルを前提 に した統合の枠組みが 必要 になる。個人が専 門の仕事の うえで能力 を発揮 して 自己の 目的 を達成す る。 それに よって個 人は主要 な欲求 を充足 し,組 織は仕事の成果によって利益 を得 る。 この ような統合の枠組み を 「間接 (的)統 合」 と呼ぶ。第 3図 は,問 接続 合 を直接統合 と対比 して示 した ものである。直接統合 では,個 人が組織に参加 した段階で組織の 目的 を受け入れ,そ れ を仕事上の 目的 として追求す る。 これ に対 して間接統合 では,個 人は組織に属 しなが らも専門の仕事 をとお して 自己 の 目的 を追求す るのである。 筆者が全 国の主要企業 を対象 に して行 った実証研究の結果では,企 業 内プロ フェッショナルに対 しては,直 接統合 よ りも間接統合の方が有効 なことが明 ら 1 0 ) かになっている。 経済学,そ れに科学的管理法に代表 され る伝統的管理論では,経 済的誘因を 重視す る経済人モデル を措定 し,賃 金 などの経済的誘因によって組織 との統合 を図ろ うとす る。 また,新 人間関係学派 をは じめ とす る伝統的な直接統合の枠 組みは,暗 黙のうちに組織人モデルを前提にしている。 しか し,今 日増大 しつ つある企業内プロフェッショナルの態度や行動パターンは,組 織人モデルより もプロフェッショナル ・モデルに近似 している。彼 らと組織の統合 を図るには, プロフェッショナル ・モデルを前提にした問接統合の枠組みが有効なのである。 1 0 ) 大 田 ( 1 9 9 4 ) , ( 1 9 9 5 ) 。

(11)

第 3図 直 接統合 と問接統合 組織 と個 人の新統合 システム :試論 く直接統合 の メカニズム〉 個 人 目 的 の 追 求 組織 目的の追求 〈問接統合の メカニズム〉 社会的機能の面からの誘導

組織 目的の追求 IV 間 接統合 の類型 4種 類 の統合 プ ロセス 前述 したように,企 業内プロフェッショナルは, を発揮 し,そ の成果によって主要な欲求を充足 しよ それぞれの専門分野で能力 うとする。それは見方を変 仕 事 を と お し た 個 人 目 的 の 追 求

(12)

えれば,彼 らが志 向す る専 門家社会や 市場 か ら影響 を受 け てい るこ とを意味す る。 第 3図 で示 した よ うに,間 接統合 にお いては個 人の 目的 は社会 的機能 の面 か ら誘導 され るが,そ れは第 4図 の よ うな 4つ の タイプに分 類す るこ とが で き る。 第 4図 専 門家社会 ・市場 との関係 専 門 家 社 会 タ イ プ I _ 個 人 別 労 働 市 場 それ ぞれ の統合 プ ロセスにつ いて説明す る。 タイプ I:専 門家社会 に よる誘 導 (研究者型) 研 究者,公 認会 計士,建 築士 な ど職業社会学上典 型的 なプ ロフェ ッシ ョナル に分類 され る職種 では,学 会や専 門家 団体 が準拠集 団 とな り,そ れが メンバー 個 々人 に一定 の影響 力 を有 してい る。 そのため,学 会 におけ る評価 基準や専 門 家 団体 の規 範 に よって,個 人の 目的 (あるいは 目標)が 誘導 され,間 接的 にあ るいは長期 的 に組織 の 目標 と調和 させ るこ とが で きる。 これ らの団体 は, 自 ら が, また当該専 門職 が社会 的 に認知 され社会 的 な影響 力 を維持 す るため に,社 会 的 な要求 に対 して無関心 でい られ ないの であ る。 その ため,た とえば学会 が 応用研 究 に高 い評価 を与 えた り,専 門家 団体 が社会 的貢献 に関す る申 し合 わせ 成 果 の 市 場 職 業 別 労 働 市 場

(13)

組織 と個 人の新統合 システム :試 論 を行 うようなことがある。 タイプ II:市 場ニー ズによる誘導 (半独立型) 専 門家社会 はそれほ ど発達 していないが,仕 事の成果が市場価値 をもち,そ れが組織の利益 に直結す るような職種がある。 た とえば,一 部の営業職や社 内 ベ ンチャーなどが これに該当す る。個人が仕事で成果 をあげるためには,市 場 のニー ズに直接応えなければならない。そ して,市 場の要求に応えることは組 織の課題 で もあ る。す なわち,個 人の 目的は仕事 の成果の市場価値 によって誘 導 され,組 織の 目的 と統合 させ るのである。 タイプ III:労働市場 による誘導 (エリー ト・プロ型) 専 門家社会 はそれほ ど発達 してお らず,ま た個人の仕事の成果が必ず しもそ の まま市場価値 をもつわけではないが,専 門の仕事の遂行 をとお して組織の利 益 に貢献す る職種がある。労働市場が機能 しているならば,個 人の能力 ・業績 は給与などの報酬 に反映 され る。 したが って個人が高い報酬 を獲得す るために は,専 門の仕事 をとお して組織に貢献 し, 自己の市場価値 を高め る努力 をす る 必要がある。すなわち,労 働力の市場価値 を媒介に して組織の 目的 と個人の 目 的が統合 され るのである。代表的な職種 としては,ソ フ ト開発や情報処理 の技 術者,さ まざまなコンサルタン ト,証 券ディー ラー,編 集者, コピー ライター, 塾の講師などがあげ られ る。彼 らのなかには企業の顔 として活躍す るスター的 存在 も含 まれてお り,彼 らを引 き留め るため, またその貢献 に報 いるため,高 額 の金銭的報酬や高いポス トが与えられているケース もある。 タイプ IV i職務 内容 による誘導 (職人型) この タイプは,他 の 3タ イプ とはやや性格 を異にす る。販売,経 理,財 務, 特許 な どの職種 では職務 が比較的標準化 しやす いため,個 人よ りもむ しろ職種 ご とに労働力の市場価値が決 まる。当該職務が市場価値 を高め るためには,職 務 の内容が社会的要求 を反映す るこ とが不可欠である。 したがって,そ れが間

(14)

接 的 に個 人 の 目標 を誘 導 す る こ とに な る。 た とえば,情 報機 器 の発 達 に伴 って 販 売 や 経 理 の仕 事 の なか で定 型 的 な作 業 の価 値 が低 下 し,サ ー ビス的 な要素 が いっそ う重視 されるようになった といわれている。同 じ販売や経理 という職種 で も,仕 事の内容がそれだけ変化 したわけである。 2.マ ネジメン トの要件 4つ の理念型で示 したように,問 接統合 とい う枠組みのなかでも個人の 目的 を誘導す るメカニズムは職種や仕事の特性によって異なる。 したが って,そ こ で必要 とされ るマネジメン トも一様 ではない。 ここでは,そ れぞれのタイプに 求め られ るマネジメン トの要件について述べ てお きたい。

① タ イプI:研究者型

研究者,公 認会計士,建 築士 などは,産 業社会 で働 く典型的なプロフェッシ ョナル といって もよい。彼 らの準拠集団は専 門家社会にあ り,そ こで高い評価 を獲得す ることを最大の 目的 としていることが多い。 したがって,組 織か ら獲 得す る金銭的報酬や組織内の地位 は,そ れほ ど大 きな誘因 とはならない。彼 ら に とってそれ らの報酬は,い わば 「衛生要因」的な性質 をもつにす ぎない。 ま た,仕 事の成果が組織の利益 に反映 されるプロセスは迂回的である。そのため, とくに短期の業績 とリンクした報酬体系は,動 機づけの面において有効でない ばか りか,公 平性,妥 当性の面で も問題がある。 プ ロフェッショナル ・モデルで示す ように,一 般にプロフェッショナルは組 織に対 して限定的に関与 しようとす る。彼 らが組織に対 してそのような関わ り 方 をし,専 門の仕事 に専念す るためには,公 式の規則や制度による立憲的保障 が必要 である。 とりわけ タイプ Iで は,そ の重要性が高い。 この タイプでは組 織の利益への貢献が迂回的であるため,短 期的 ・直接的貢献 を優先 しがちな組 織の行動 との間で不一致が生 じやすいか らである。 11)大 田 (1993)第 4章 。

(15)

組織と個人の新統合システム :試論 117 論理的には,専 門家社会の評価基準や規範が社会的なニー ズを何 らかの形で 反映 し,そ れが個人の 目標 を誘導 している以上,マ ネジメン トはその誘導 メカ ニズムに委ねておけばよいはずである。 しか し現実には,専 門家社会によって 吸い上げ られ る社会的ユー ズ と企業の戦略的な重要性 とがつねに一致す るとは か ぎらないため,組 織 と個人の 目標の肌解が生 じる可能性がある。 また,必 ず しもすべての者が高次欲求によって強 く動機づ け られているわけではない。 し たが って,プ ロフェッショナルの権利のみを制度的に保障す るのはバ ランスを 欠 き,そ れ を企業に要求す るのは無理がある。 そこで,業 績主義に代 わる制度 として,た とえば任期制のようなチェック ・ システムが必要になる。 また,一 定の権限が得 られる地位 に昇進で きない場合 には転出す るとい う,ア メ リカのプロフェッショナル ・ファームでみ られ るよ

うな制度 (up‐or‐out promotional system)も適用の余地があるといえよう。

要す るにこの ような契約制度や慣行 は,身 分や仕事上の諸条件 に対す る立憲的 保障 と対応関係にあるものである。 ② タ イプ II:半独立型 この タイプでは,個 人が市場価値のある成果 を産出 し,そ れによって直接報 酬 を獲得す る。個人が仕事上の 目的 (目標)を 自己の 目的 (目標)と して追求 す るためには,<努 力→専門の仕事 におけ る業績→報酬 >と い う期待 メカニズ ムが働かなければならない。すなわち,仕 事上の成果が報酬に直結す る,オ ペ レー ショナルなシステムが備 わっていることが必要である。 したがって究極的 には,組 織あるいは管理者の裁量が入 る評価のプロセスはできるか ぎり排除 さ れ,報 酬が成果に応 じて 自動的に決 まるようなシステム,す なわち個人が 自ら 「稼 ぐ」 システムが取 り入れ られ ることが理想である。 この ようなシステムで働 くことは,制 度上 もまた意識の面で も,雇 用労働 と 自営業 との境界が曖味になることを意味す る。社 内ベ ンチャーなどはその一例 12)Malos=Campion (1995).

(16)

であ る。 また,歩 合給 の営業職 な どに も半独 立 ともいえる就業形態がみ られ る。 なお この タイプ では,個 人の独 立性 が高 いため,組 織 との間で雇用契約や成 果 の所有権 その他 に関す る契約 が必要 に な るこ とが 多い。営業 な どの仕事 では, 顧客 に関す る情報 が その市場価値 を反映す る価格 で売買 され るよ うな システム も検 討 され るべ きでは なか ろ うか。

③ タ イプI I I : エリー ト・プロ型

タイプ IIと違 って この タイプでは,個 人は分業体制 の なかで他 の機能 と密 接 な関係 にある専 門の仕事 に携 わる。 したが って,個 人の仕事 の成果が直接市 場価値 をもつ ことは少 ない。 しか し,仕 事 の出来不出来が個 人の能力に大 き く 依存 し,個 々人の成果は比較的明確 に識別 で きる。そのため,有 能 な者は外部 か らスカウ トされ ることも珍 しくな く, よ り有利 な条件 を求めて移動す ること は本人のキャ リア向上に もつなが る。 この ような背景があるため,彼 らに とって専 門分野で どれだけの評価 を受け どれだけの地位 。報酬 を得 ているかが大 きな関心事 になる。 もちろん彼 らがつ ねに 自らの市場価値 を意識 して行動 しているわけではない。一般的には,専 門 の領域 で 「良い仕事」をしようと心がけているにす ぎない。ただ,「 良い仕事」 の基準が,突 き詰め ると労働市場におけ る評価 に結びついている。すなわち, 労働市場におけ る評価が潜在的な準拠枠 (frame of reference)を形成 してい るため,報 酬 は能力 ・業績 を表す一種 のシンボル としての意味 をもつのである。 この タイプでは,個 人が組織の中心的な役割 を担 っていることも多 く,ま た 他 の職種 との間におけ る機能上の相互依存 も大 きいため,個 人の 目標 と組織の 目標 とを裁然 と切 り離す ことは難 しい。そのため表面上は,個 人が専 門の仕事 と所属組織の両方に コ ミッ トしているようにみえる場合が多い。 しか し,上 述 したように彼 らのキャ リアは特定の組織内に限定 されないこと,そ れに組織 目 的への貢献があ くまで も自分 の専 門 とす る仕事 をとお した ものであることか ら 明 らかなように,彼 らが追求 しているのは組織の 目的ではな く,あ くまで も自 己の仕事上の 目的なのである。

(17)

組織 と個 人の新統合 システム :試論 119

彼らの仕事の特性, とりわけ個人の能力によって成果に大きな格差が生じる

という点からも,ま たキャリア形成の特徴から考えても,マ ネジメントはいわ

ゆる個別管理に近いものにならざるを得ない。プロジェクト・チームとして働

くような場合 も,個 人の分担が明白ならば,請 負形式にすることもひとつの選

択肢になるであろう。

④ タ イプIV:職 人型

これには,た とえば労働省の 「ビジネス ・キャ リア制度」の対象 とされてい る財務,経 理 など狭義の事務系専 門的職種のほか,多 くの職人的な仕事 も含 ま れ る。 このタイプでは,仕 事 内容が比較的標準化 されているため,個 人の仕事 上の 目標 は,職 務 をよ り完全 な形で遂行す ること,そ して上位のランクの職務 に就 き,質 の高い仕事,高 い地位 と報酬 を得 ることにおかれる。 具体的な報酬の金額 をは じめ待遇 は,世 間相場 を反映 した ものでなければな らない。ただこのタイプでは,個 人の能力による業績の格差が比較的生 じに く いので,業 績主義が適合す る範囲はか ぎられている。 したがって報酬制度 とし ては,欧 米型の職務給に近い ものになる。 また,能 力 を表す基準 として,さ ま ざまな資格制度 を用いることができる。 マ クロ的には,職 種別の労働市場が形成 され,労 使関係の面においては職種 別組合が重要 な役割 を担 うことになる。 V イ ンフラ型組織の構想 この ように,間 接統合 は複数のタイプに分類す ることができるが,仕 事が媒 体 となって組織 と個人が統合 され るとい う基本的な枠組みは共通す る。 したが っていずれのタイプで も,個 人は専 門の仕事の遂行 をとお して 自己の 目的 を追 求す るこ とが可能 である。 それではつ ぎに,こ の ような統合 を行 ううえで有効 な組織形態について考 え て み た い。 そ こ で必 要 とされ るの は,「 経 済 人 モ デ ル 」 を前 提 に した機 械 的 組 織 ,官 僚

(18)

制 組織 では な く,ま た 「組織 人 モデル」 を前提 とした直接統合 で用 い られ る有 機 的組 織 で もない。 企業 内プ ロフェ ッシ ョナ ルには,純 粋 な官僚 制組織 (機械 的組 織 )も ,有 機 的組織 も,そ の ままでは適合 しないのであ る。 まず官僚制組織は,個 人の権利や 自由を制度的に保障す る立憲的な側面が備 わってい るとい う″点で評価 で きるが,が ん じが らめの規則や権限の序列,命 令 への絶対的服従 というような負の側面 を合わせ もつ。一方有機的組織は,組 織 と個 人の 目的 ・利害が一致 している場合 には双方に とって合理的であるが,両 者の 目的 ・利害が必ず しも一致せず,個 人が組織に対 して限定的 ・手段的に関 与 しようとす る場合 には問題がある。 前節で述べ たように,間 接統合の具体的なプロセスは複数のタイプに分かれ るが,共 通 して求め られ るのはつ ぎの ような特徴 を備 えた組織である。 なお, ここでは紙幅の関係 もあ り,要 点だけ を列挙 してお くに とどめ る。 1.組 織に対 して高度の コ ミッ トメン トが要求 されないこと。 2.意 思決定 への参加が限定 されていること。すなわち, 自分の仕事に関係す る範囲での発 言力は維持 されているが,組 織全体 に関わる意思決定への参加 は強制 されない こ とが重要 である。 3.リ ー ダー シップは 「委任型」に近い ものであること。 4.移 動の障壁が低 く,労 働市場 など外部の環境に対 してオープンであること。 5.専 門 とす る仕事への従事,な らびに仕事 を行 ううえで必要 な権限 ・自律性 な どが立憲的に保障 されていること。 6.仕 事 を支援す るハー ド面 (施設,設 備 な ど),な らびにソフ ト面 (情報,最 終責任の担保 など)の 条件が提供 され る こと。 7.組 織 目的 を達成す るうえで不可欠なコーディネー ションが行 われて いること。 問接 統合 では,個 人 は組織 に参加 しなが らも専 門の仕事 を とお して 自己の 日 的 を追求 で きるこ と,仕 事 の成果 を とお して組織 の利益 に貢献 で きるこ とが必 要 であ る。仕事 の主体 は原則 として個 人 であ り,個 人 の仕事 の調整 は,主 に専 門家社会や市場 とい う外部 の誘 導 メカニ ズムに委 ね られ る。 したが って組織構 1 3 ) 大 田 ( 1 9 9 6 a ) 。 1 4 ) H e r s e y = B l a n c h a r d ( 1 9 7 7 ) .

(19)

組織と個人の新統合システム :試論 121 造 は それ だけ シンプ ル に な り,個 人の活動 を支援 して組織 の利益 に結 びつけ る 機 能 が 中心 にな る。 す なわ ち一種 の インフラス トラクチ ャー としての役割 が求 め られ るわけであ り,こ の ような組織形態 を 「インフラ型組織」 と呼ぶ ことが で きよう。 この ような組織はあ くまで も理念型であるため,現 実にその ままの形で遍在 す るわけではない。 しか し,専 門職の比重が高い企業,あ るいは特定の部署に おいてはこれに近 い組織形態 をみ ることはで きる。た とえば,コ ンサルティン グ会社,シ ステムハ ウス,大 手 メー カーなどの研究所 (とりわけ基礎研究所や 中央研究所),建設会社 の設計部 門,ア パ レル産業のデザイン部門,出 版社の編 集部,な どがあげ られ る。 さらに,歩 合制や短期契約 などの勤務形態にまで範 囲 を広げれば,い くつかの業種 ・職種 において, よ り理念型に近 い形で存在 し ている。 もちろん これ らの組織 が非専 門職組織 に属 す る以上,組 織 の 日標 は必ず しも 個 々 人 の 目標 の延長線上 にあ るわけではない。 したが って,そ こには一定 の求 心 力が必要 であ り,組 織 に対 して強 くコ ミッ トす るメンバーが いなければ な ら ない。組織 の 目標 を見定 め,広 い視 野か ら組織 の蛇取 りをす る戦略 ス タ ッフで あ る。 ただ,量 的お よび機能 的 な中心がプ ロフェ ッシ ョナルに よって 占め られ

るようになると,基 幹部分はインフラ型組織のような形態へと変容するのでは

なかろうか。

V I 結 企業内プロフェッショナルは,絶 対数の うえで もまた社会および組織のなか で 占め る比重において もます ます増大 しつつある。 さらに,こ こに掲げたよう な職種以外 で もプ ロフェッショナル化の趨勢はみ られる。 た とえば,こ れ まで 典型的 な 「組織人」に属す ると考 えられて きた一般事務職 なども,プ ロフェッ シ ョナル志向の強いことが明 らかになっている。 1 5 ) 太 田 ( 1 9 9 4 ) 。

(20)

したが って今後条件次第では,組 織 と仕事 に対 してプロフェッショナル・モ デルの ような関わ り方 をす る人々がいっそ う増加す ることが予想 される。そう なると,暗 黙の うちに組織人モデルを前提に していた従来の統合のシステムで は対応で きない領域が拡大す る。経営の視点か らも,ま た個の尊重 とい う理念 に照 らして も,新 しいパ ラダイムに基づ いた統合のシステムを構築 しなければ ならない。間接統合の枠組み とそこか ら導 き出されるマネジメン ト,な らびに インフラ型組織の構想は,新 たなシステムづ くりの試みである。 主要参考文献 C a r r ―S a u n d e r s , A . M . a n d W i l s o n , P . A . T ルタP 線 わ俗 , O X f O r d U n i v e r s i t y P r e s s , 1 9 33. Etzlont,A.拘 滋物 θ智物 ″α肋 %,Prentice‐Hall,1964(渡 瀬浩訳 『現代組織論』至誠堂, 1967).

Greenwood,E.Attributes of a Profession.勧 cガα″″b力 ,Vol.2,No.3,pp.45-55,1957. H a l l , R . H . P r o f e s s i o n a l i z a t i o n a n d B u r e a u c r a t i z a t i o n . A 物夕″∽% S οt t θ″″ σα″R 夕υガ多υ,

Vol.33)No.1,pp.92‐104,1968.

Hersey,P.and Blanchard,K.H.財 α%客 夕物夕%サゲ θ留2%″α″θ%冴 B施 クわ/,Prentice‐Hall, 1977(山 本成二 ・水野基 ・成 田攻訳 『行動科学の展開』 日本生産性本部,1978). March,J.G.and Simon,H.A.θ 客物 ″α肋 容 .John wiley&Sons,1958。 (土屋守章訳

『オーガニゼー ションズ』ダイヤモン ド社,1977).

Malos, S.B.and Campion, WI.A.An Options‐ Based巾 Iodel of Careerヽ4obility in Profes‐ sional Service Firms.ム切扱夕″リゲ肋物物廷マ物夕%サ貿タクル切,Vol.20,No.3,pp.611‐644,1995. 村上篤男 「知 的生産 と組織的協働 一経営 コンサルテ ィング企業の比較分析一」『六 甲台論集』

第40巻第 4号 , 117頁 ,1994。

大 田肇 『プ ロフェ ッショナル と組織』同文舘,1993。

Ohta, H.Indirect lntegration of the Organization and the lndividual. 『法経論叢』Vol.11, No.2,pp.69-95,1994. 大 田肇 『日本企業 と個 人』 白桃書房,1994。 大 田肇 「問接的統合 と企業業績」『彦根論叢』 第295号,4355頁 ,1995。 大 田肇 「有機的組織 と官僚御j組織 :ど ち らが 人間的か」『組 織科 学』第29巻第 3号 ,15-24頁, 1996(a)。 大 田肇 『個 人尊重の組織論』 中央公論社,1996(b)。

Reich,R.B.助 夕陶 カ ゲ 煎妨θ俗,Alfred A.Knopf,1991(中 谷巌訳 『ザ ・ワー ク ・オブ ・ネー ションズ』 ダイヤモン ド社,1991).

(21)

組織 と個 人の新統合 システム :試 論 123 組織J好 学社,1971).

Wilensky,H.L.The Professionalization of Everyone?密んタム物夕″∽物スク″物α′ゲSθびわね抑与 Vol.70,No.2,pp.137‐158,1964.

(22)

An Essay on a New lntegration System

of the Organization and the lndividual

Hajime Ohta

This article discusses a new system of integration between the organization and the individual, focusing on professionalization. The new system is based on a model that explains the patterns of professional individuals'contributions to both their work and the organization.Considering the model, ``indirect integration"‐ which can be classified into four types based on the sort of work per‐ formed by the professionals‐ is a more effective theoretical frame― work than``direct integration".As both bureaucracy and the or‐ ganic system of the organization may hinder the goals of profes‐ sional indiviuals, organization rnust be equipped with the following c h a r a c t e r i s t i c s : 1 ) n o n ‐t o t a l i n v o l v e m e n t o f p r o f e s s i o n a l s w i t h i n the organization, 2)rules that secure through constitutional prin‐ ciples the autonomy and specialization of professionals,and 3)a policy to provide rneans of support to assist professionals in achiev― ing their、vork.Such organization can be called an``infrastructural organization'l and iS part Of the new integration system.

参照

関連したドキュメント

るのが判例であるから、裁判上、組織再編の条件(対価)の不当を争うことは

 ラディカルな組織変革の研究では、伝統的に業績の悪化・危機あるいはトップの交代が組

音節の外側に解放されることがない】)。ところがこ

この 文書 はコンピューターによって 英語 から 自動的 に 翻訳 されているため、 言語 が 不明瞭 になる 可能性 があります。.. このドキュメントは、 元 のドキュメントに 比 べて

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

ここで融合とは,バンカーが伝統的なエリートである土地貴族のライフスタ

る、というのが、この時期のアマルフィ交易の基本的な枠組みになっていた(8)。

実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる