「ヒ ッ ト 商 品」
竹 は じ め に 「ヒット商品」 を理解する概念的枠組みを考えることが本稿の目的である。 「ヒット商品」 をつ くることは,競 争優位の源泉であった り (恩蔵(1998)), それだけでなく話題性がもたらす組織活力の提供であったり (嶋口 ・石井 (1989)), ブラン ド確立のための重要なプロセスの一部であった り (恩蔵(1995)),実に いろいろな理由から魅惑的な研究テーマのひとつとなっていた。ところが, も ちろんその定義によるのだが,こ れまでアカデミックに 「ヒット商品」を理解 しようとした研究はほとんどない。そこでは 「ヒット商品」は消費者の選択行 動の結果であった り,優 れた製品開発の成果 として理解 されてきたといっても 過言ではない。そこには,そ ういった活動 をすれば,な ぜ 「ヒット商品」にな るのか,に ついては理論的な説明があまりない。たとえば,開 発段階を短縮化 するとヒット率が高い (恩蔵(1998),第8章など)と いう実証的な発見がある が,そ こでも開発速度が高いとなぜ ヒット率が高 くなるのかについての理論的 な説明は示 されていない。 先行研究の知見から 「ヒット商品」化する論理を推察すれば,そ の問題につ いては製品開発論が扱えそうである。 もうすこし詳 しい内容については後述す るが,た とえば,マ ーケティング論のテキス トでは,消 費者行動の理解→情報 のフィー ドバ ック→製品開発 (プロセス)→ 市場導入,と いう枠組みで理解さ れてきた。すなわち,ヒ ット商品をつ くるということは消費者の欲 しいものを つ くるということであ り,そ れは消費者の 「本当に欲 しいもの」についての情 報を巧 くくみ取る技術の開発 を意味 した。そ してそれを,製 品機能に 「巧 く」 配分 し,そ れを組織的に 「巧 く」管理 し,「巧 く」市場導入することで実現 さ 明 正 本寸120 彦 根論叢 第 316号 れ る と想定 して きたので あ る。 この論 理 を使 って,あ る製 品が 「ヒ ッ ト商 品」 となる理 由については,も っ ぱ らジャーナ リス テ イックに検討 されて きた。水 口(1994)は,現 代 のマーケテ イ ングで成功 を収 め るため には,既 存 の 4P(製 品,価 格 ,流 通 ,販 売促 進 に関 す る意思 決定)だ けで は役不足 であ るこ とを強調す る。 4Pだ けで な く,営 業, コミュニケーシ ョン,ロ ジスティックス,マ ネジメン ト,生 活 とい う多岐にわ たる局面で,既 存 のマーケテイングが変更すべ き活動の問題点 と企業の取 り組 みを紹介 している。商品開発 には,当 然,消 費者ニーズの 「真」の理解 (たと えば,顧 客がプロになっているか ら 「真」 にエーズにあった ものを提供 しなけ ればな らないなどとい う)が 必要で,革 新的な商品の開発 (開発投資 を押 さえ ているか ら,特 許 申請 も商標登録 も減 っている とい う)が なされなければなら ない。それにはマーケテイングを中心 に した経営の再構築が必要になるとい う (2-68ベ エジ)。そ こで強調 されるのは,つ まる ところ消費者ニーズの理解 と (革新的)技 術 のマ ッチ させれるか どうか,そ れが新 しいマーケテイングと なる とい う論理 を立てるわけである。 そ こでは 「ヒッ ト商品」 は製品開発の成果 (あるいは成果変数)と して理解 されていることが特徴である。製品開発の 目的は市場での成果 を高めることな のは,問 答無用の前提 なのである (Grilen=Hauser(1996))。 しか し,な ぜ よく売れたのか (さしあたって 「ヒッ ト商品」 となったのか と 考 えて よい)を 問 えば,そ れ らの答 えでは問題が残 る。 なぜ ,そ れが(そうす れ↓到「ヒ ッ ト商品」になるのか,と い う問題 には充分説得で きる答 えがあ ま り ないか らである。それを考察す るのが本稿のテーマであるが,そ れは,革 新的 な (よい)製 品の定義 も消費者のニーズ も製品の市場導入に先立 って難 しいこ とがある し,一 義的にも難 しい し,そ れは時代 によって違っているか らである。 その くせ,時 代 によって支配的な 「よい製品」が存在 していることが多い。 そ こで,既 存の 「ヒッ ト商品」 に関する分析枠組み を考察することが本稿の 目的 となる。それは,な ぜ 「ヒット商品」が生 まれるのか,と いうことである。 ただ し,そ こに至るまでにはい くつかのステ ップ内ミ必 要である。本稿のアプロー
チ の特徴 は,マ クロ レベ ルでの議論 をす る こ とであ る。 「ヒ ッ ト商 品」 の分析 ではないが,Gronhaug=Dholakiよ(1987)は供給 システムというコンセプ トを使 っ て,消 費者が直面するマクロの取引供給 システムの類型 をおこなつている。消 費者か ら考察すれば,彼 らが参加する取引供給 システムは,市 場だけではない のである。同様 に,マ クロの消費者の視点か らの 「ヒッ ト商品」 を検討すれば, 既存 の研究 を補完する視点が提供で きることが期待 される。消費者が直面する 問題解決の タイプを検討すれば,い くつかの 「ヒッ ト商品」 を分類で きるだろ う。 ここでは充分 にで きなかったが,そ こに製品開発活動 を対応づけることが で きるならば,組 織統合 と消費者ニーズの適合が市場成果 を達成するとい う論 理 について理論的な枠組み を提供で きるか もしれない。 本稿 は次 の構成 になる。最初 に,「ヒッ ト商品」のつ くり方 を考 える研究の 努力 を展望す ることか ら始める (I.ヒッ ト商品」論 の特徴)。製品開発論や消 費者行動論の一部がそれにあたるだろう。そこか ら,既 存研究では 「ヒッ ト商 品」 をある種の成果変数 と考 えて きたことが理解で きるだろう。次 に 「ヒッ ト 商品」の定義 を検討す る (工.「ヒッ ト商品」の定義)。そこではそれを操作的 に定義することの困難 さが理解で きるだろう。む しろ,特 定の製品ブラン ドレ ベルでの 「ヒッ ト商品」 よりもある集計 レベルでは 「ヒッ ト商品」が検討 しや すい ことがわかるだろ う。「ヒッ ト商品」論で語 られるそれは,個 別のブラン ドであることもあるのだが,多 くはある種のカテゴリーであることがわかる。 掃 除機 とか洗濯機 などである。それを受けて,消 費者か ら 「ヒッ ト商品」 を考 察 した場合,ど の ような枠組み を提示で きるのか を検討す る (田.マクロレベ ルでの 「ヒツ ト商品」)。ここでは特 に,マ クロマーケテイングの成果 を援用す ることでその問題 に接近する。マクロな 「ヒッ ト商品」 を考 えるにはどの よう な分析枠組みが提案で きるのか を,考 察する。おわ りに,こ こでの知見 を要約 し,今 後の展望 を検討する。
彦根論叢 第 316号 I「 ヒット商品」論の特徴 これまで製品開発論では 「ヒット商品」を成果変数 と考えてきた。そこでは, なぜ「ヒット商品」になるのかという問題に対 しては,機 能的な適合を前提にし ていることが多かった。それらの中で 「ヒット商品」へのアプローチが可能と 考えられるのは,製 品開発論 とミクロの消費者行動論である。前者は 「競争力 の高い製品をつ くる方法」 を提示する。具体的にヒット商品の作 り方を提示す るわけではないが,議 論を解釈すれば 「よい製品を作れば市場での成果が高い」 ということが基本的な命題 となるだろう。 しか し,な ぜ よい製品ならば市場の 成果が高いのか,と いうことは不間であるか前提 となっていると後者 も 「消費 者の製品属性に対する評価が高い製品が市場での成果が高い」 という基本的な 命題 を提示するが,そ の属性 をなぜ評価するのか,に ついては消費者各人の主 観的な理由であって,無 用の問いとなっている。製品開発論では 「ヒット商品」 とは,製 品開発戦略の成果であ り,消 費者行動論では消費者各人の主観的な属 性評価が集中する結果 と考えられるのである。 それらアカデミックな研究で 「ヒツト商品」を直接扱 うことがほとんどない。 前述のようにそれにはジヤーナリステイツクな考察がなされてきた。そこで, ここではそれらの知見に基づいて特徴 と問題点を探つていこう。 もっとも 「ヒット商品」論 という研究領域があるわけではないが,こ こでは 「その製品は,ど うしてヒットしたのか」 という類いの著作をさしあたってそ のように考えておこう。それらの説明では,「ヒット商品」は 「技術のイノベー ションをおこしたこと」 と 「市場のエーズをうまく汲み取って適合 したこと」 1)も う少 し付言するならば,ヒ ット商品の議論には集計 レベルの議論 と成果変数の問題を 議論 しなければならない。本稿はそれを議論することを目的 としているが,第 1に,製 品 開発論は分析単位 をどちらか といえば,企 業や産業においていることが多い。そこでは, 個別の製品が ヒット商品 となるのか どうかをあまり問題 としない。何 よりも,そ れを「占 う」ことはほとんど不毛である し,そ れが仮 にあたつたとして もその分析は定式化で きる ような 「科学」ではないことである。第 2に ,製 品開発論の成果変数はもっぱら 「競争力」 にあるからである。ひとつの製品が 「ヒツト商品」になっても,そ れが企業の競争力を反 映 しているということを保証 しない,と いう考えがそこには含 まれる。
が結 局 強調 され る (栗原(1989))。すべ て の主 張 は,つ きつ めれ ばそ こへ 到達 す る。 それらの議論の問題点は, 4つ ある。第 1に は,ど のようにすれば製品や技 術のイノベーションがおこせるのか,を 理論的に説明 しないことである。多 く の場合,優 れた社長やリーダーによるマネジメントの巧さ,あ るいは取 り組み の熱意や斬新な発想, ときには偶然などがそれを可能にしたという。第 2に は, どのようにすれば市場のエーズをうまく汲み取ることができるのかについての 説明を提供 しないことである。明らかに事後的に観察されたことを,事 前に予 想可能であった, とのように説明する。第 3に は,技 術 とニーズはなぜ適合す るのか, という理論的説明がないことである。明示的に議論 されることはない が,機 能的な要請を前提にしていることが多い。すなわち 「必要だから」であ る。仮にここで 「必要性」や 「消費者効用」の存在を前提にしても,問 題があ る。それが第 4で あるが,技 術 とニーズの適合が,「ヒット商品」を保証 しな いことである。なぜ,技 術 とニーズが適合すれば 「ヒット商品」になるのか説 明 しない。 しか し,必 要だというだけで,「ヒット商品」 というある意味での マスは保証 されない。「それ」 を必要な人々は,果 たしてどれほどいるんだろ う。 本稿での問題意識に関連する問題点は, 2と 3で ある。ここでは,そ れぞれ を検討 して,「ヒット商品」分析のための枠組みを探ることにしよう。 (1)ニ ーズの発見 ①ニーズの発見はどのように可能になるのか 典型的なマーケティングのテキス トは規範的な製品開発プロセスを次のよう に教える。その流れは,市 場機会の発見→製品デザイン→テス ト・経済性分析 →市場導入,で ある。マーケティングに対する巷間のイメージは決 してこのあ た りから遠 くはない。この考え方の背後には,消 費者はニーズを持ってお り, それを何 らかの調査によって顕在化 させ,そ れに合わせるような製品を開発す れば,そ れはヒット商品となる,と いう思考の流れがある。概念的に図示すれ ば次のようになる (図1)。
アイデ アの創 出 アイデ ア ・ス ク リーエ ング コ ンセ プ ト開発 とテス ト マ ーケテ イング戦略 開発 市場 テス ト 彦根論叢 第 316号 図 1 マ ー ケ テ イ ン グ テ キス トに よる製品開発 プロセス (出所 :コ トラー(1980),387ベ ー ジ) (出所 :アーバン他(198の,58ページ) このプロセスにしたがって,タ ーゲット顧客層や製品用途を明確にし,そ れ に対応 したマーケテイングミックスを組み合わせることができれば,そ のター ゲット先の市場での成功する確率が高 くなる,つ まり 「ヒット商品」 となる, というわけである。製品開発研究のい くつかは,そ のステップの内容を,つ ま り, 何 をどうすれば, よ い活動 となるのか, を 検討 してきた。コ トラーをはじ めとする一般的なマーケテイングのテキス トはそういった議論が中心になって 市 場機 会 の発 見 市場 の定義 アイデ イアの創出 製 品 デ ザ イ ン パ ーセプシ ョンマ ップ 製品ポジシ ョニ ング コンセプ トの需要予測 製品技術化 とマーケテ イング ・ミックス テ ス ト 広告/ 製 品テス ト プ リテス トマーケテ イング による予測 テス ト ・マーケテ イング 跡 画 追 計 の 売 後 発 売
入
紗 鱗
導 製 製 場 新 新 市 ライ フサ イ クル ・マ ネ ジ メ ン ト 市場反応 テス ト 競争的防御 成熟期 における革新 製品ポー トフォリオマネジメン トいる。製品開発論 に限れば,Urban et al。(1987),Thomas(1993)などがそれに あたるだろう。 そ こで,こ ういったマーケテイングのテキス トに したがえば,顧 客ニーズの 発見 は優れたマーケテ イング ・リサニチや消費者調査で実現 されるはずである。 消費者の行動 を理解 しようとする研究 には,消 費者行動論があるが,中 で も多 属性態度理論が代表的である。その議論 に したがえば,消 費者は製品を属性の 束 と想定 して,そ の属性 ごとに主観的な得点 を与 えてゆ く。各属性 に何 らかの ウェイ トをおいて数値化 し,そ れ らを合計 して,最 も高い合計点 をえた製品が 選択 される とい うわけである (中西編(1984))。 もっともそこでは,明 示的に 「ヒット商品」がなぜ選択 されたのかを扱かう ことはあまりないが,論 理的には次のような説明が可能になるだろう。すなわ ち,「ヒット商品」 となる製品とは,多 くの消費者がその製品の属性 に最 も高 い得点を与えた製品である, と。 となると,そ の理論にしたがえば,「ヒット 商品」 を作 り出すためには,消 費者の属性の評価関数などを推定することが重 要な作業 となるだろう。ここでの議論にしたがえば,ユ ーズは,消 費者の属性 評価を推定できれば,発 見できるのである。 ②ニーズ発見の問題″点 │ このように,消 費者行動論では経験的に行動を推定 しようとする点に特徴が ある。すなわち,選 択行動の結果生 じたある実現値に理由をつける作業をおこ なうのである。 しか し,そ の議論に問題点が指摘 されていないわけではない。 ここでの重要な問題は,多 くの選択がおこったから 「ヒット商品」になるので あって,「ヒット商品」の成立以前に,優 れた属性 とは何かを決定できるわけ 2 ) ではないことである。 2)理 屈 としてはそれはで きないわけでは, もちろん,な い。た とえば,自 動車のブラン ド 選択 で 「燃費」 などは重要 な属性 のひ とつであることが多い。 この場合 に優れた属性 とは 「低燃費」であるこ と,具 体的には 「10モー ド燃費で21.0キロ以上」 などといった場合は, 絶対 的 に優 れた属性 であ る と仮定 して も,現 実的には納得 はい くだろ う。 しか し,そ れが 理論的に優れた属性であるとい うことは保証 されるわけではない。属性 の「優劣」はあ くま で相対的であ り,評 価 は主観的になされるのである。
彦根論叢 第 316号 その典型 は,ユ ーズ を前提 に していることにあ らわれる。石原(1985)や石井 (1994)は消費者のエーズの独立 した存在 をそ もそ も批判的に検討 している。彼 らの議論 に したがえば,わ れわれが存在 を想定 しているエーズがなぜ発生する のか,と い うことを検討すれば,そ れは機能的に説明 されるわけではないこと が理解 されるとい うのである。た とえば,わ れわれはなぜ コカコーラを飲むの か, といえば,そ れは「喉が渇いたか ら」であるとい う機能的な説明が可能であ る。 しか し,コ カコーラのエーズは,そ の昔か らあったわけではない。そ もそ もコカコーラが この世 に登場 した ときには,そ れは薬だったのである し,喉 が 渇いた ときに飲 む ものはその昔 は水やお茶 だったのである。仮 にコカコーラの 属性が評価 されたに して も,で はなぜその属性 を評価するのか,と い うことに ついては,説 明がないのである。 この点 に関 して,新 倉(1995)は属性 の存在 をアプ リオ リに仮定す ることが問 働 題 である と指摘する。特 に,全 体包括主義の立場か らの批判 を紹介する。すな わち,属 性 (つま り要素への還元)の 集計が,そ の製品の全体の意味 を再構成 で きるのか,と い う批判である。製品は属性の束か どうかは,な かなか一義的 には決めに くいのである。 (2)技 術 とニーズの適合 ①技術 とニーズはなぜ適合するのか 「ヒット商品」の理由を解説する際に最 も多いのが,ニ ーズとシーズの適合 である。特に,消 費者ニーズを発見 し,そ れを満たす技術 を画期的なイノベー ションで克服 して,実 現 したことが 「ヒット商品」につながった,と いう見解 3)彼 に よれば次の 3つ の理 由か ら,属 性 の存在 をアプリオ リに仮定す ることは難 しい とい う。第 1に は,消 費者のブラン ド選択 における準拠基準の一時的な設定である。消費者は, 無数の選択肢 を評価す るのではな く,一 時的な基準 をもとに選択 をする,と い うのである。 第 2に は,曖 昧 な対象のアイデ ンテ ィフィケイシ ョンの存在である。アイデ ンティフィケ イシ ョンとは,対 象 を明確 に識別 していることであるが,多 くの差別的な製品を市場 に投 入 される現代 では,そ ういつた明確 なアイデ ンティフィケーシ ョンをする消費者は少 ない, とい う。第 3に は,消 費者が製品に意味 を付与す ることである。消費者は,意 味付 け した 内部情報 として知識 を保有 してい るが,そ れによつて製品に独 自の意味 を付与す るのであ る。 これ らは属性 の評価が変動す ることを示唆 している。
は決 して少 な くない。極論 す れば,な ぜ 「ヒッ ト商 品」 になったのか,と い う ことに対する説明は,そ れらのマッチングが前提であって理由を問われること はなく,む しろ発見 しづ らいニーズを発見 した努力とニーズを満たす技術を開 発 した努力の評価に尽 きるいってもよい。 仮に,理 由が間われるにしても,多 くの場合は,機 能的な説明となることが 多い。経済学の消費者行動論では 「効用」の存在がそれを説明するし,マ ーケ ティング論では 「ニーズ」の存在であった。つまり,あ る製品のもたらす機能 が,消 費者の効用を高めた リニーズを満たした りするのである。そこでの議論 に従えば,技 術 とニーズは,機 能的にマッチするのだ。 ②技術 とニーズ適合の問題″点 しか し,こ の機能的な説明にはい くつかの問題がある。第 1に は,技 術選択 の問題であ り,第 2に は 「ヒット商品」プロセスヘの論理がないことである。 前者については,あ るエーズを満たす技術的方法は,い くらでも存在 している ことが問題である。 というのは,た とえばここからどこかへ移動 したいときに, それを満たす技術はい くらでも考えられる。電車,バ ス,自 動車,タ クシーを はじめ,レ ンタカーもその代番技術に入るだろう。うまくいけばヒッチハイク も可能である。それでも,そ の中のどれかだけが,「ヒット商品」になるのだ。 選択以前にどれが「ヒット商品」になるのかは,不 確実なのであるとそしてそれ は第2の問題に関連する。つまり,技 術 とニーズが適合 しただけでは,「ヒット 商品」 となるのかどうかを保証 しないことである。今われわれのまわ りで観察 可能な技術 とニーズの適合 を考えても,そ れらのどれだけが 「ヒット商品」 と 化 してぃるのかと問えば,そ れは疑問ばか りであると技術 とニーズが適合 した 4)こ の点を問題点 とする主張はい くつかある。Abemathy et al,(1985)は,ニ ーズを理解す るためには技術の提供が重要であることを強調する。消費者はその技術で解決できる問題 を,技 術 を提供 されて初めて理解できることが多い,と いう。その場合,事 前の調査はほ とんど無用である。Dosi(1982)は,ユ ーズを満たす技術 は無数にあれど,な ぜある技術が ある時に実現するのか,理 論的に説明できないことを問題点 としている。 5)ど んな関係でもよく,た とえば,紙 と鈴筆で充分である。 ものを書 きたいというニーズ があつたときに,そ れを満たす技術,鈴 筆は適合 しているが,そ れは 「ヒット商品」となっ ているか といえば,当 然疑間である。
128 彦 根論叢 第 316号 だけでは,Fヒ ット商品」 というある意味での量を保証するわけではないのだ。 「ヒット商品」 といった場合,売 上にしろ,利 益にしろ,普 及のレベルにしろ, ある程度の量が不可欠であろう。 「ヒット商品」の定義 ここまで,「ヒット商品」の理由を代表的な先行研究の論理にしたがって検 討 してきた。そこにはい くつか問題点が存在するが,本 稿の問題意識に特に関 連するのは,「ヒット商品」の定義 と,技 術 とニーズの適合が 「ヒット商品」 を保証 しないことである。すなわち,既 存の研究では 「ヒット商品」の理由を, ニーズと技術の適合に求めることが多いが,第 1の 問題は 「ニーズの仮走」で あ り,第 2に は 「適合からヒウトヘの理由」力Sないことであった。 すなわち,な ぜそのエーズがそんなに多 くの人々の間に発生 し, しかもその エーズになぜ,特 定的なその技術が適合するのか,と いう問題がここでは不問 であった。それを考察する前に,ま ず「ヒット商品」の定義を考察 しよう。それ によって今問題になった 「ある程度の量」の問題を何 とか処理できるかもしれ ないからである。 (1)過 去の 「ヒット商品」の考察 通常,「ヒット商品」 といつた場合,普 通の消費者であるわれわれが想定する のは,よ く売れている製品である。そういうた認識にもとづいて,毎 年年末に なると多 くのメデイアで 「今年の 「ヒット商品」」であるとか 「ヒット商品」 の番付などが発表されるも表 1は, 日経 トレンディが1987年から1996年にわたっ て掲載 した 「ヒット商品」番付の一覧である。ここでまず理解できるのは,そ れが 「ブランド」 レベルの製品であるケースは10年間で45件であるが,そ れ以 0 外 は実 は 「ヒッ ト商品」ではな くある種 のカテゴリーを示 している ( 表1 ) 。 6 ) 網 掛 け したブラン ドレベルの ヒッ ト商品 とい うのは, 恣 意的に決定 されている。 しか し, われわれの議論 に有利 なようには決定 していない。た とえば, 1 9 9 1 年の 「ウォー リーを探 せ」 などは, ブ ラン ドとい うにはあ ま りに多 くの製品が出ている。絵本 に始 ま り, キ ヤラ クター商品などがそれにあたる。 しか し, そ れで もこれをブラン ドとしての ヒッ トに合め ている。それで もわれわれの議論 は変わ りない。
表 1 日 経 トレンデ ィが提供 す る過去 1 0 年間の 「ヒツ ト商 品」番付 1992左卜 (7) 19934卜 (5) 1994玄再 (9) 1995盗F (6) 1996f卜 (8) 大型ゲームセンター
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ーを数えたもの。網掛けがここで考えたレランドレベル
たとえば,イ ンターネットは1996年度の 「ヒット商品」横綱である。われわ れにしても,ウ ィンドウズ95の酔狂的なブームがインターネットというマーケッ トが存在するという幻想 を生み出 したことは充分承知 してお り,で あるからイ ンターネットは 「ヒット商品」だと定義することにやぶさかではない。電子メー ルも,ワ ール ドワイ ドウェブ上における,ネ ットスケープコミュニケーターや 1987年 (8) 1988年 (4) 1989至F (2) 1990盗F (5) 1991至手 (1) 自動製パ ン機 餡鶴鞠鞘 盤1議努端1髄呼臀戦│ 水族館 啓義1鞠翻撃1結霧啓
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衛星放送 海外 ミュージカル &1撤鵡, テ イラ ミス 軽1詫え躍│ミ 1諦1 3 0 彦 根論叢 第 3 1 6 号 マイクロソフ トインターネットエクスプローラによるホームベージの閲覧 もファ イル転送 もそこで実現する。 しか し,そ れで儲けたという話は, 日本では寡聞 にしてきかない。そもそも,イ ンターネットは購買できる製品やサービスでは ない。それはコンピュータを相互接続するTCP/1Pという技術 と,相 互接続 し た後にいろいろな通信プロ トコルを使つて実現するサービスの総称である。通 常家庭でこの相互接続に参加する場合は,電 話回線を使ってプロバイダーとい われる接続業者にまずつなぐことから始まるのであるから,厳 密にいえば,こ の場合の 「ヒット商品」はプロバイダー (インターネット接続サービス提供業 者) と いうことになる。 (2)カ テゴリーの 「ヒッ ト商品」 ここで理解できることは,実 は 「ヒット商品」 とは決 してブランドレベルの 議論では必ず しもない,と いうことである。市場や消費者からみればよく見か けるものがそれにあたると考えて差 し支えないだろう。一方,一 旦企業の側に たてば,そ の定義はいささか問題があることがわかる。時間を考えると短期で 売れなくても,長 期的に売れていけばそれは企業にとっては 「ヒット商品」で ある。高度に普及 していなくても,企 業に利益 をもたらすものは 「ヒット商品」 と考えて差 し支えない。消費者 と企業側で,定 義が異なることがあるのだ。こ れが実は,「ヒット商品」の分析 を困難にしているのである。 そもそ も,企 業が製品開発をおこなうのは,「ヒット商品」 を作るだけでは なく,技 術的な挑戦であつた り,他 社 との競合関係であった り,取 引先への製 7 ) 品ラインの構成 を考えてのことであった りと, そ れは一義ではない。それが 「ヒット商品」の評価 を困難にすることになるのだ。結局, 製 品開発の目的と の適合度の程度を,企 業側での評価尺度 とするしかない。そうなれば,製 品開 の Urban et al.(1987)を参照 されたい。大田(1994)は製品開発成果には2つあることを実証的 に示 した。ひとつは有効性であ り, もうひとつは効果である。有効性 とは,開 発の生産性 の指標であ り,リ エアな開発体制が適 している。効果は,開 発 した製品が市場でどれだけ 売れたのか,と いう財務 レベルの指標である。それを高めるには,常 時情報をフイー ドバ ッ クする開発体制が適 している。実際のところ,こ のように製品開発成果は複合的な尺度で あると考えた方がいいだろう。 しか し,な ぜそれらになるのかについては,説 明はない。
「ヒット商品」 131 発は 「ヒット商品」 を作ることだけではなくなることになる。時間を評価すれ ば,デ ッドラインを走めるにあたって,そ れを理論的に導出することは難 しい だろうし,売 り上げを評価するなら,一 体 どれだけ儲ければ 「ヒット商品」 と なるのか,理 論的に定義することは難 しい。 もっとも消費者側にしても,そ う いった定義の問題は存在する。一体 どれだけの人々が認識すれば 「ヒット商品」 なのか,ど れだけ購買すれば 「ヒット商品」なのか,理 論的に定義できないの である。 田 マ クロレベルでの消費者行動 「ヒット商品」 を,一 義的に定義することは非常に難 しい。さしあたって市 場でよく売れて,企 業へ利益貢献をしたものと考えるならば,短 期的によく売 れる製品だけでなく長期的にはよく売れた製品も 「ヒット商品」 と考えられる だろう。このように 「ヒット商品」力湖J定尺度を複数持つと考えられるならば, それは製品戦略 といった企業におけるある種の目標 と市場での成果の関係で理 解するしかあ りえなくなる。そうなれば,わ れわれが一般的にいだいているい たるところで観察可能なという意味での 「ヒット商品」でなくなることも充分 あ りえることになる。たとえば,競 合製品に対する追随製品を開発する場合に は,そ の目標は売上 というよりむしろどれほど短期間で市場導入できるのか, という方が優先するかもしれないからだ。 本稿では,そ こで 「ヒット商品」を消費者側から考える枠組みを検討する。 消費者にとって一般的な 「ヒット商品」 とは,必 ず しも特定的な製品 (ブラン ド)で あることはない。むしろ,先 にみた 「ヒット商品番付」などから考えら れるのは,そ れがある種の製品カテゴリーを占めていることがある,と いうこ とである。古 くは,い わゆる三種の神器 (洗濯機,冷 蔵庫,掃 除機),新 三種 の新器 (テレビ,洗 濯機,冷 蔵庫)あ るいは3C(カ ラーテレビ,ク ーラー, カー)が その代表である。先行研究では,こ れらの製品が高度に普及する理由 を考察する理論が不充分である。ここでは,そ れを補完する枠組みをFirat(1986) にしたがって検討する。 というのは,Firat(1986)は,マ クロの分析によって,
132 彦 根論叢 第 316号 それが可能 となることを強調するか らである。 (1)消 費者が直面 している問題解決手段の提供 システム Firat(1986)は,次 の例 を検討す る。 自動車 はアメ リカで高度 に普及 している のであるが,そ れを購買する (製品選択する)理 由はさまざまである。機能的 に説明 されて もよい し,趣 味で購買 して も心理学的に購買 してもよい。 しか し, それではそれ らが高度 に普及す ることが充分説明される,と いうわけではない ことはすでに考察 した とお りである。 そ こで,彼 は分析 レベルを少 しあげて,自 動車のかわ りに機能代替する製品 ・サービスヘの予算の配分 を,妨 げるあるいは逆に促進する構造が存在すると 指摘 す るのであ る。彼 はそれ を 「消費 に際 して利用可能 となる代替財 の構造 (Structure of Available Alternatives for Consumption)」と呼ぶが,そ れがあ る製品群 には特 に強 く作用する,と い うのである。 このコンセプ トについては 後述す る。 彼 は,カ ナダのモ ン トリオールか らテキサスのグラスヘ引 っ越 しした家族 を 例 に議論 をす る。モ ン トリオールでは効率的な公共交通機関があるので,こ の 家族 は 自動車 を保有す る必要はなかった。 ところが,ダ ラスヘ引っ越 ししたと たん,大 都市のほ とん どの地域へつながっている公共交通機関がないことに気 づいただけでな く,タ クシーす らつかまえられないのである。この家族 に残 っ ている選択 は制限 された ものになるはずである。すなわち,彼 らは自動車 を保 有す るか,孤 立す るか しかないのである。 こういった事態は,そ の家族が直面 す る選択の状況 をね じれた ものにす るだろう。彼 らの選択 は基本的に,ど のブ ラン ドあるいは どの タイプの 自動車 を買 うのか, とい うことに限 られるのであ る。 この問題は,ま ず次のように考えることがで きるだろう。Gronhaug=Dholakia (1986)は,消 費者が直面す る問題 を解決す る手段 を提供するマ クロのシステム を取引供給 システム と呼んで 4つ に類型 している。それ らは,供 給の安定性 ・ 可視性 と営利性の 2次 元で類型可能 となる (表2)。 ここで,市 場 とは消費者がお金 を払 って (営利性が高い),問 題解決の手段
表2 消 費者が直面 している問題 を解決する手段のマクロな提供 システム 提供 の安定性 ・可視性 高 い 低 い 営利性 高 い 市 場 ア ンダーグラ ン ド 低 い 公共サ ー ビス 社会的 ネ ッ トワー ク の提供 を受 ける (提供の安定性が高い)と いう通常の買い物 を考えればよい。 た とえば,移 動する, とい う問題解決では,自 動車,レ ンタカー,タ クシーな どが ここにはいる。公共サービスは,公 共部門が提供するサービス とそのまま 考 えてよい。市バスや市営地下鉄 と考 えられる。それに支払 う対価が,通 常あ ま り高 くない,と い う意味で営利性 は低い。アンダーグラン ドは,一 方,提 供 される問題解決手段 については対価が支払われるが,そ の売買が公 に知れ渡る ことがあま りない (可視性が低い)か ,安 定 して提供 しない (制度 として確立 していないか,あ る理由か らで きない)場 合 をい う。移動手段 をとれば,自 タ クなどを考 えることがで きるだろう。社会的ネ ッ トワークは,対 価 も支払 うこ とがあ ま りな く,問 題解決が安定 して提供 されるか どうか も保証 されない, と い う場合である。移動手段 で考えれば,隣 近所で便乗 させて貰 う, といった場 合であろ う。 おそ らく,提 供側 にとっては,営 利性 と安定性が高い とい うことで提供手段 の改良が連続 され,手 段の多様性が保証 されるという点で,市 場 にシフ トして いるのが,近 年の大 きな動 きだろう。消費者 にとっても,社 会的ネッ トワーク に頼 ると,後 が高 くつ くとい う事情が働 きだ しているのだろう。安定 した問題 解決手段の提供 とそれを促進する影響力の構造が,消 費者 を市場 に直面 させ る のである。 ただ しこの議論 の問題点 は,いったい どの問題解決の手段が ヒッ ト商品 とな るのかは説明 しないことである。問題解決手段 はある特定の問題 について も複 数存在す ることが多 いが,その うちの どれかだけが ヒッ ト商品 とな りえるので 8 ) ある。
彦根論叢 第 316号 ( 2 ) 消 費に際 して利用可能 となる代替財の構造 モ ン トリオールか らグラスヘの引越 しの話 は,個 別消費者の選択が,社 会構 造 にどの ように制限 されているのかをよ く示 している。消費者の視点か ら考 え る と,選 択決定 における重要な構造が 「消費 に際 して利用可能 となる代替財の 構造 ( 以下では,消 費可能 な代番財 の構造 とす る)」である。それは,消 費者 が問題解決す る際 に,機 能 についてみれば代替可能な製品はい くらで も存在 し ているが,そ れ らの提供 を制限するようなメカニズム,を 意味 している。単 な る製品の利用可能性 とい う意味ではない。「構造」 とい う用語 には,消 費が本U 用可能 となる関係 と重要性,可 視性,補 完性,優 位性 とい う意味が含 まれてい る。 このコンセプ トにしたがうと, 問 題は次のようになるだろう。どんな製品が 生産され社会的に利用可能 となるのか。なぜそ してどうやつてその製品が生産 され, 利 用可能 となったのか。 どの消費者がそれらを生産する決定に参加 し, 9 ) どの程度参加するのか,な どである。すなわち,消 費可能な代替財の構造が, 8)こ の点 については,Iansiti(1997)が技術選択 とアプ リケー シ ヨンコンテ クス トの重要性 と して議論 している。特定の技術 であつて も,複 数の問題解決が可能である。それが ビジ ネスの成果 を保証す るのは特定のアプ リケーシ ヨンコンテクス トに適合 した場合 だ とい う わけである。 9)伝 統的な政治経済パ ラダイムでは,そ れ らに対す る回答 は,イ ノベー ターの企業家精神 にお く。 この視点 はマーケテ イングで も通常受 け入れ られている。正 しいアンテナを持 っ た企業家 は,市 場 のエーズ を感 じ,そ してそのエーズ を満たす製品を提供するのである。 ところが,資 本主義経済市場では,資 本 を投資す ることで企業家は リスクをとり,こ の リ ス クを正当化す るような報酬 を期待するのである。 したがって,企 業家 にとっては,ニ ー ズ を感 じるだけでは全然駄 日で,こ のニーズに隠れている有効需要 (購買力)が なければ な らないのであ る。 この ように,市 場経済で満足 されるようなニーズは購買力 を持 った消 費者のユーズ なのであ る。パ レー ト最適の考 え方が この事実 を指摘 している。 これは,す べ ての消費者がすべての満足 を満たせ るわけではない,と い うことを意味 している。 とい うのは,消 費が可能 な代替財の構造の下では,い くつかのニーズを満たす製品は不十分 な 有効需要のため に利用可能 とはな らないか らである。資源 は購買力 によつて,ユ ーズの背 後 に押 しや られ る選好 を持 つた配分 になる。ニーズが独立であると仮定す ると,伝統的政治 経済が考 える ように,この結論 は大 したイ ンプ リケー シ ヨンを提供 しない。しか し,消 費可 能 な代 替財 の構造が存在 す るな らば,個別消費者 のニーズの知覚 に影響する (すなわち,消 費単位 のエーズ と消費行動 が相互依存 的であ る)だ ろ う し,その とき,非 常 に高度 な購買 力 を持 った消費者 に よる消費選択が購買力の低 い消費者の選択 に影響す ることがわか るだ ろ う。
「ヒット商品」 1 3 5 消費者問題解決のために選択する製品 (群)を 特徴づける傾向に影響するので ある。 ( 3 ) 消 費パ ターン ここまでの議論では,消 費可能な代替財の構造が,消 費者をある支配的な消 費行動に向かわせそうである。Firat(1986)は厳密にはそのような定義をしてい ないが,消 費者が問題解決する際に選択する製品(群)が観察できる傾向のこと 1 0 ) を消費パ ターンと呼んだ。製品の選択 には,い ろいろなレベルが存在 してお り, そ こには例 えば,消 費様式の選択がある。 自動車 と公共交通機関の間の選択 は それにあたる。次の レベルには,製 品形態の選択がある。小型 トラックと乗用 車の選択 である とか ファミリーカー とスポーッカーの選択がそれである。別の レベルには,ブ ラン ド選択がある。 シボ レーかフォー ドの選択がそれである。 これまでの 「ヒッ ト商品」論 はこの レベルで議論 して きた。 消費者の情報処理理論か ら考察すれば,そ れ らの選択 は秩序づけられている か もしれない。 しか しここでは,選 択の中には個別 にお こなわれるよりも,社 会的にお こなわれている ものがあって,ひ どく制約 されている場合があるか も しれないことを強調する。ある製品にはこの制約が強 くあ らわれて くるのであ る。それが高度 に普及する製品に共通の要因なのである。 消費パ ターンは次の図の ように4つ の次元 を持つ (表3)。 表3 消 費パ ター ンの次元 次 元 範 囲 社会的関係 イ固房U 集 合 利用可能領域 私 的 公 的 参加 の レベル 疎 外 共 同 人間の活動 受 動 青旨塵カ 101消費パ ター ンとは,こ こでは 2つ の意味で使 われる。一つは,社 会 において支配的 となっ ている社会経済的秩序 に一致す る生活の方法,と い う意味である。第 2の 意味 としては,先 の意味の 自然 な拡張 になるが,あ る社会 における消費の大衆化が消費パ ター ンに順応す るこ とである。支配的な社会経済的秩序 と消費の大衆化が進むことによって対応関係が この消費 パ ター ンを支配的にす るのである。
1 3 6 彦 根論叢 第 316号 4 つ の次元 は, 社 会 的関係 , 利 用領域 , 参 加 の レベ ル, そ れ に人間活動 であ る。社 会 的関係 は, 消 費 をす る間 に他 の消費者 ともつ 関係 であ り, 集 合 的消費 か ら個 別 的消費 の範 囲 を持 つ。個 別 に消費 をす る とい うのは, 他 の消費者 と関 係 が ないか,最 低 限の場合 をい う。TVみ なが ら一人でダイエングで食事 とい うのが例 になる。お隣 さん とピクニ ックにいつて料理す る計画 を して,一 緒 に 電車 に乗 るとい うのは集合の例 になる。 利用可能性 の領域 は社会 を構成するメ ンバーにとつての製品の利用可能性 を 意味す る。 これは私的か ら公共消費 までの範囲をとる。例 えば,一 つの家計が 私 的に自動車 を保有す る と,他 の人は利用で きない。それに対 して,公 共交通 機 関や電話 ボ ックスは多 くの人が (公共的に)利 用可能 になる。個別消費 と私 的消費の違いは,例 えば,電 話ボ ックスは公的であるがそこでの消費 はふつ う 個別 にお こなわれる, とい う形で注意すればいいのだろう。 参加 の レベルは,製 品の開発 や生産 に消費者が関わるレベルをい う。疎外 的 消費か ら相助作用 (共同)消 費の範囲をとる。消費者が直接消費す るもの・コ トの計画,開 発,製 造 に関わるとき,共 同 となる。共同的消費の例 としては, 住人が 0か ら住居 を設計 し,建 設す ることになる。疎外型消費 は,消 費のルー ルがイ固別消費者の参加 な く,開 発 され導入 される場合である。 これは,市 場で 製品が製造 される場合である。例 えば,消 費者がテ レビゲーム機械を買うとき, その消費者 は疎外型消費 に巻 き込 まれているのである。 とい うのは,ゲ ームの ルールやゲームの技術 と同 じように,そ の機械が消費者の参加 な く開発 された か らである。 最後 に,人 間活動の次元 は,消 費者が実際の消費 を行 っている間に関わる物 理的活動の レベル と定義 される。受動的消費か ら積極的消費の範囲をとる。受 動 的消費の例 は,テ レビをみた り,洗 濯機や食器洗い機 を使 っているときであ る。積極的消費はスポーツに参加 した り,趣 味の活動 を行 っているときである。 消費パ ター ンの例か ら,ア メリカ市場や経済の先進的な国々で高度 に普及 し た製品が 「個別 一私的―疎外 一受動」 的消費パ ター ンに向かっていることが認 め られる。先進的市場経済における支配的な生活がそ ういった消費パ ター ンを
「ヒット商品」 1 3 7 表 しているか らであ り,そ ういった社会ではそれを支持する製品が普及するよ うになるのであると この議論 に したがえば 「ヒッ ト商品」の理解は,既 存のそれ らとは決定的に 異 なることがわかるだろう。すなわち,「ヒッ ト商品」とは,多 くの消費者が主 要 な問題解決手段 として選択 した ものであるがすそれは他 に選択する製品が制 限 されている (消費可能 な代替財の構造)だ けでな く,そ の問題解決を使 うこ とによってさらにその問題解決様式 を強化する技術 として再考可能 となる,こ とである。 したがつて,な ぜ,ニ ーズがその技術 を選択する (ヒット商品化す る)の か,と 問われればそれは消費パ ターンがそのようになっているか らだ, これが理由となるのである。 お わ り に (1)本 稿 の要約 本稿 はマクロマーケテ ィングの知見 を援用することで 「ヒッ ト商品」の分析 枠組みについて考察 して きた。 ここで明 らかに したかったことは 「ヒット商品」 はマ クロの消費構造 を生み出す ダイナ ミックスの中で理解で きそうだというこ とである。作業は 2つ に分かれたb第 1に ブラン ドレベルの ヒッ ト商品は定義 困難であることである。通常の ヒッ ト商品論 は,優 れた製品開発活動 と消費者 のエーズの適合が,そ れを生み出すことを主張するが,そ こには説明不足 な点 があることを指摘 した。その点 を,製 品開発論 と消費者行動論 にもどって考察 した。 しか し,そ もそ もそれ らは 「ヒッ ト商品」 を考察する枠組みにはなって いないのである。第 2に ,そ こで消費者にとっての「ヒッ ト商品」を検討するこ とでこの問題 に接近 した。時代 に支配的な消費パ ターンの存在 を,消 費可能な 11)Firat=Dholakia(1998,p.164)は,専門家 (歴史学者,女性問題研究者,批評家などから なる)パ ネルを組織化 して 3つ の時代 に消費パ ター ンを支配する製品群 を識別 している。 19世紀半ばまで,19世 紀半 ばか ら第 2次 世界大戦前の消費パ ターンとそれ以降である。19 世紀 には,集 合的一公 的―参加的―能動的な消費パ ター ンが識別 された。その代表的な製 品は,ハ ン ドメイ ド衣料 ,共 同キ ッチ ン,伝 説である。19世紀半ばか ら第 2次 世界大戦 ま では,バ ス,映 画館 ,ス トTブ /オーブ ン,ラ ジオである。最後は,テ レビセ ッ ト,電 子 レンジ,自 動車,既 製服である。
彦根論叢 第 316号 代替財の構造 とい うコンセプ トによつて検討 した。本稿の最大の課題,な ぜニー ズがその技術 を選択 し,ヒ ット商品化するのか,と 問われればそれは支配的な 消費パ ターンがその ようになるように構造化 されているか らだ,こ れである。 (2)「 ヒッ ト商品」研 究へのインプ リケーシ ョン ブランドレベルのヒット商品を検討するには,こ の枠組みを適応することは 難 しい。 しか し,特 定の製品がなぜ ヒット商品となるのか,に ついて理解 した いという意気込みはそ してその努力を認めるにやぶさかではないが,先 行研究 がこれまで充分な成果を上げたのか,と いえばそれはそれで疑わしい。たとえ ば, ドライビールがヒット商品となったとき,そ れは消費者の辛回のニーズに 合ったのだ,と 機能的に説明されるわけである。では,後 発の手ロビールはな ぜ ダメだったのか,と いえばそれは後発だからだ,と いう。それは,決 して納 得のい く説明であるわけではない。 そういつた特定のブランドがヒットする理由を考える予知可能性やそれが売 れるかどうかを予測 したい誘惑に駆 られることは理解できないではないが (星 野(1991)はその代表であろう),そ れが成功 しているとは言い難い。むしろ, それよりも消費者がその製品を選択する社会的な構造 (ここでは消費が利用可 能 となる代替財の構造を考えた)を 理解することが,も しかすると消費の トレ ンドを検討する上で,貢 献することになるかもしれない。消費者が買いたいの かそうでないのかはわからないが,消 費にあたってそれが選択肢の中にすでに 入つているという状態を構造的につ くりだす,こ のことこそが消費者からみた 通常の意味での 「ヒット商品」の感覚に非常に近い理解が可能となる枠組みを 提供すると考えられるだろう。 (3)実 践上のインプリケーション 消費可能な代替財の構造が,わ れわれの消費パ ターンに影響することが理解 されたが,こ れは実践上のマーケテイング戦略にどのように応用可能になるの か,が 最後の問題である。まず,何 よりも消費パターンが 「個別一私的一疎外一 受動」に向かっていることを理解することである。たとえば,電 話についてい
え,ゴ「電話ボ ックス」が公的な消費パ タ‐ ンであることを示 したが,携 帯電話 は公的な部分 を私的に変容 させ たわけである。支配的な消費パ ターンに したが う問題解決手段 の提供 ,こ れこそが理解すべ き焦点 となることだろう。 もちろ ん,そ れに向かわせ る消費可能な代替財の構造が どの ように作 り出 されている 1 2 ) のかを識別することが並行 した作業になるだろう。 ただし,支 配的な消費パ ターンにしたがうことだけが 「ヒット商品」の焦点 になるわけではないう。むしろ,個 別企業にしてみればそのパターンにしたが いながらも,あ るレベルでは 「共同」 させたり 「集合」させたり,巧 みに使い 分けてい くことが重要になるはずである。こういったマーケテイング戦略につ いては稿 を改めたい。 12)Firat(1986)の提供す る消費可能 な代替財 の構造 は次 の ようになっている。 図 消 費可能な代替財の構造 社会政治構造 権力の価値 選好構造 購買力 有効需要 ニーズ知覚 ニーズ優先 順位 消費可能な 代番財の構 造 生産手段 と 生産力
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Analytical Framework for understanding
the Blockbusters.
Masaaki TakeIIlura
By 1995, 83.6% of all households in」 apan Owned automobiles. The prOpor― tion of ownership in the same year for televislon set 、 vas 99.2%. For refrigerators, it was 98。10/0, and for washing machines, it 、vas 99.5%.
Why have these products become so diffused among househ01ds, and so univёrsally purchased and consumed in advanced market econonlies? Why is there no interest within marketing and consumer behavior disciplines in explaining this phenomenon? What are the forces behind the growing
universality of consumpti6n of certain products in」 apan?
The theoretical frame、vork presented briefly in this essay、vas developed to try and ans、 ver such questions. The large proportions of ownership reproduced above may be sufficient reason to believe that such products are indispensable in human lifeo Such large proportions may partially explain the reason、vhy, in the model of marketing, the need for a certain product is taken for granted and features/brand choice process is studied.
This essay 、 vill provide the reason 、 vhy this is so may provide an understanding of consumption and society, 、 vhich may then enhance our explanations of the phenOmena that marketing scholars have been studying for so long. Consumption pattern and the structure of available alternatives for consumption are core concepts in this essay.