郊外型集合住宅で展開する複合型サービスに求められる課題 -地域包括ケアシステム上の住民のニーズを明らかにする-
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(2) <共同研究者> 福田 千栄 (健和会みさと健和団地診療所 事務長) 宮本 洋二(同 所長) 佐々木 れい子(同 看護師長) 安達 智則(健和会医療福祉調査室 室長) 宮城 恵里子(健和会臨床看護学研究所 副所長) <研究協力者> 岩舘 豊(文京学院大学 人間学部コミュニケーション社会学科) 学生:秋葉 由加里・一ノ宮 拳太・内田 清菜・宇野 慶太・金子 こずえ 岸. 桃香・鈴木 明日香・藤後 希生・星野 優里佳・本田 涼. 森山 陽介・八坂 真奈美・山中 一成・吉岡 萌奈・河田 敦史 関. 真希・辻森 菜恵・茂市 聖監・吉川 恵蓮・若槻 怜奈. 森山 千賀子(白梅学園大学子ども学部 家族地域支援学科) 学生:櫻井 詩音乃・林 茉奈美 小川 孔美(埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉こども学科) 栗原 真史(一橋大学大学院社会学研究科修士課程) 鈴木 優子(地域ケア総合評価機構) 竹田 しのぶ(健和会みさと健和団地診療所 事務長) 健和友の会団地診療所支部役員の方々. 2.
(3) 目. 次. Ⅰ.研究概要 1.研究目的 2.研究方法 Ⅱ.複合型サービス聞き取り調査 1.サービス利用の概況 2.住宅と補助器具の活用状況 3.複合型サービスのニーズ Ⅲ.三郷団地住民聞き取り調査 1.住民の概況 2.普段の暮らしぶり 3.高齢者が抱えている課題および考えていること Ⅳ.三郷地域住民アンケート調査 1.住民の概況 2.普段の暮らしぶり 3.団地の課題や周辺状況の今後について Ⅴ.3つの調査から見える地域包括システム上の住民のニーズ 1.複合型サービスの展開を通して顕在化したニーズ 2.介護者の側面からみたニーズ 3.単身世帯のニーズとは Ⅵ.地域‘包括’ケアシステムは、郊外型団地に適合できているのだろうか 1.団地コミュニティ政策の是正の必要性 2.武蔵野市を通して厚労省の「地域包括ケアシステム」を点検する 3.団地活性化に不可欠の「ユーザーデモクラシー」創出 引用・参考文献. 3.
(4) Ⅰ.研究概要 1.研究目的 国は 2025 年を目途に地域包括ケアシステムの構築を推進している。高齢者の尊厳の保持 と自立生活の支援を目的とし、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の 最期まで続けることができるように目指すシステムである。中でも小規模多機能型居宅介 護と訪問看護を組み合わせた複合型サービス(注:2015 年 4 月から「看護小規模多機能型 居宅介護」と改称されたが、本報告では変更しない)は、複数のサービスを一体的に提供 するサービスで、利用者のニーズに応じた柔軟なサービス提供が可能とされており、医療 ニーズの高い要介護者への支援の充実を図るものとして期待が大きい。しかし、この複合 型サービスを提供する施設は、厚労省の調査 1)では 2013 年 82 ヵ所、2014 年 151 ヵ所であ り、まだ数少ない状況である。複合型サービスの開設予定を問われた回答では、 「開設を検 討したが開設の予定はない」 「検討しない」と答えた事業所も少なくない。その理由として、 看護職員や介護職員の人員確保が困難であること、事業採算の見通しの無さや開設資金の 調達の困難さなど財政面、さらに、開設場所の確保困難があげられており、ソフト面ハー ド面の双方からの整備はこれからと言える。 健和会では、2013 年 5 月、埼玉県三郷市の郊外型集合住宅(以下、三郷団地)地域に複 合型サービス(以下、A 事業所)を開設した。それは、この地域に診療所や訪問看護ステー ションを開き、長年在宅医療に携わってきた経緯があったからである。24 時間対応の訪問 も実施しており、医療処置のある利用者の自宅生活、在宅での看とりも可能にしている。1 年経過し明らかになっていることは、「訪問(看護)(介護)」 「泊り」の利用者が多く、 「通 い」が少ないという実態である。つまり、「通い」 「訪問(看護) (介護)」 「泊り」という柔 軟であるはずのサービスに偏りが生じているのである。 (図 1)その要因の一つに「移動手 段」の不足が考えられた。 主な利用者が住む三郷団地は、人口 16433 人、世帯数 8710(H27.5 現在)である。市内 の他の団地に比べ、単身世帯も多く 1 年に 1-2 名の孤立死が発生し、その介入が投げかけ られている地域でもある。この団地は、建設から 40 年が経過しており、住宅の構造的問題 (エレベーターがない、停止しない階がある、階段を昇降した先にエレベーターがある、 外付けエレベーター設置の制限等)があるが、既に立て替えない方針が決定しており、構 造上の課題を抱えながら、今後の高齢化への対応に迫られている。 地域包括ケアシステムが目的としている、高齢者が尊厳を保ちながら、住み慣れた地域 で「自分らしい暮らし」が自立してできるよう支援する上で、「移動の制限」は、大きな障 壁になる。また、先に述べたような複合型サービスを提供している事業所のサービスの偏 りはそこで働く職員体制にも影響を及ぼしており、安定的な事業所運営をしていく上で支 障をきたし始めている。 地域包括ケアシステムの構築を目指した街づくりの例もあるが、本取り組みは既存の郊 外型集合住宅におけるそのシステムを手さぐりで作りあげることに挑戦するものである。 4.
(5) 本研究では、この複合型サービスが郊外型集合住宅の住民にとり活用できるサービスに発 展させるための基礎資料として、住民の顕在的、潜在的ニーズを知ることである。. 通えない. 24 時間対応. 移動の制限. 一部加筆 図 1.複合型サービスの実態 2.研究方法 1)対象・方法 対象と方法は、以下の三段階で進めた。(図 2) 複合型サービス(泊 り・通い・訪問)の利 用者・介護者の聞き取 り調査:. 三郷団地住民への聞き 取り調査:. 三郷地域住民へのアン ケート調査. 図 2.対象と調査方法 (1)複合型サービスの利用者・介護者への聞き取り調査 A 事業所を利用している利用者・介護者を対象に、サービス利用の契機や利用状況、利用 者・介護者の変化、複合型サービスへの期待や要望等、住宅状況と補助器具の活用につい て聞き取り調査を行った。場所及び時間は対象者の希望に沿い、自宅或いは A 事業所で、 プライバシーが確保された空間で行った。時間は平均 40 分程であった。得られた結果は、 単純集計し、サービス利用の概況、住宅と補助器具の活用状況に整理し課題を検討した。 (2)三郷団地住民(以下、団地住民)への聞き取り調査 団地住民 30 名に対し、団地の居住状況や普段の暮らしぶり(健康状態、食生活、住生活、 外出状況、生き甲斐等)また、現在困っていること、将来的不安、それに対する個々の努 力・工夫等について聞き取りを行った。場所及び時間は、対象者の希望に合わせ、診療所 の一室或いは自宅でプライバシーが確保された空間で行った。平均 40 分程であった。結果 は単純集計、また、現在困っていることや将来的な不安、それに対する個々の努力・工夫 等については、内容を読み込み分類し統合し、ニーズを検討した。 (3)三郷地域住民へのアンケート調査 三郷団地住民の聞き取り調査や住民へのアンケート調査を取り組むに当たっては、地域 の健康作りで活動している住民団体である健和友の会団地診療所支部(以下、友の会)役 5.
(6) 員の方々(以下、役員会)と協議を重ね、共に取り組むことになった。役員会からは、三 郷団地のみに限らず周辺地域の住民の声も知りたい、住民の声を知ることは自分達の今後 の活動にも繋がるとの声があがり、アンケート調査項目については、住み続ける地域作り の課題も明らかにできるような内容も盛り込むことになった。アンケート調査の対象は、 友の会会員と、今後A事業所の利用者になる可能性が考えられるみさと健和団地診療所の 患者と、A 事業所の近隣施設である認知症デイ(以下、B)の利用者とした。 アンケート調査の発送は、対象別に手配り、手渡し、郵送とした。役員会は友の会分を 手配りし、B の利用者・家族には手渡しとし、それ以外は郵送とした。何れも返信用封筒を 同封し、郵送で診療所への返送とした。 アンケート調査は、単純集計し、住民の暮らしぶりとニーズを検討した。 (4)上記(1)から(3)の結果から、住民の顕在的・潜在的ニーズについて総合的に 検討した。 2)倫理的配慮 本研究は、健和会倫理審査委員会の承諾を得たのち、以下の手続きを踏んで行った。 (1)複合型サービスの利用者や介護者への聞き取り調査に際しては、口頭及び書面で研 究の主旨、参加・中断の自由、断っても不利益を被らない、情報を保護することを説明し、 同意を得た。 (2)団地住民の聞き取り調査に際しては、最初に役員会で主旨説明し承諾を得たのち、 聞き取り調査対象者を選出してもらった。聞き取り調査に際しては、改めて、口頭及び書 面で研究の主旨、参加・中断の自由、断っても不利益を被らない、情報を保護することを 説明し、同意を得た。 (3)アンケート調査に関しては、発送時に本調査の主旨説明、参加の自由、断っても不 利益を被らないこと、情報の保護をすること、返送を持って承諾とみなす旨の説明文書を 同封した。. 6.
(7) Ⅱ.複合型サービス聞き取り調査 1.サービス利用の概況 1)利用者と同居者・介護者の状況について 利用者と同居者及び介護者の状況については、表 1 に示した。利用者は女性が 9 名、男 性が 6 名であった。利用者の年代は 50 歳代から 90 歳近くまでで 70 歳代以降が大半を占め ていた。介護者は 11 名で、50 代から 70 代であり、家族関係は子供、夫婦が主であった。 ②世帯構成は、単身世帯は 2 例のみであった。子供が近隣に住み、普段は独居であっても 週末に寝泊まりする、或いは毎日様子を見にくる、泊りに来て介護する例もあった。また、 利用者も同居者も高齢であり、介護力がない、など多彩な形態となっていた。 表 1.利用者と同居者・介護者の有無と状況 事例. 利用者. 番号. 同居者の有無と状況. 介護者の有無と状況. 1. 男性. 80 歳代. 無し. 無し. 2. 女性. 80 歳代. 無し. 無し. 3. 男性. 90 歳近く. 無し. (週末のみ息子). 4. 女性. 90 歳近く. 長女夫婦. 長女. 5. 女性. 90 歳近く. 無し. 長女が泊る. 6. 女性. 80 歳代. 夫. 7. 男性. 50 歳代. 妻・子供 2 人. 妻. 50 歳代. 8. 女性. 70 歳代. 夫. 夫. 60 歳代. 9. 女性. 80 歳代. 息子夫婦・孫. 息子の妻. 10. 女性. 50 歳代. 夫. 夫. 11. 女性. 80 歳代後半. 夫. 12. 男性. 70 歳代. 妻. 妻. 70 歳代. 13. 女性. 70 歳代. 夫・娘. 夫. 70 歳代. 14. 男性. 70 歳代. 妻・息子. 妻. 60 歳代. 15. 男性. 80 歳代. 妻・息子. 妻. 70 歳代. 80 歳代. 80 歳代後半. 60 歳代. 近隣に住む娘. 50 歳代. 50 歳代. 50 歳代. 無し. 2)サービス利用の契機. サービス利用の契機について表 2 に示した。サービスの紹介先は、ケアマネジャー(以 下、ケアマネ) 、訪問看護師と続き、病院の MSW、地域包括センター、訪問介護事業所で あった。ほとんどの例で、医療処置や健康問題を抱えていていた。 ケアマネや訪問看護師、訪問介護事業所は、元々在宅療養中の利用者や介護者に関わっ ており、状況の変化からサービスを紹介しており、病院の MSW、包括支援センターは、病 院から退院時に在宅調整でサービスの導入をしていた。. 7.
(8) 表 2.サービス利用の契機 事例. サービスの. 番号. 紹介元. 1. 訪問看護師. 2. 訪問看護師. 3. 訪問看護師. 4 5 6 7. 病. 院. 介護者は高齢の夫。元々パーキンソン病の既往があり、腰椎圧迫骨折 で手術を受けた。夫が倒れてはとケアマネが訪問看護を依頼した。 高齢者世帯で、夫が元々寝たきりの妻の介護をし、訪問看護を受けて いた。妻が他界し独居になったので、訪問看護師に勧められた。 心臓弁膜症と腎臓病の既往あり、元々デイや訪問リハを利用。不整脈 の為往診が始まり、ケアマネが A に訪問看護を依頼した。 脳梗塞で麻痺、高次脳機能障害が残り、直接自宅に帰るのは困難な状. MSW. 態であった。在宅調整で A を利用することになった。. 包括支援セ. 脳梗塞の既往があり、ケアセンターのデイに通っていた。肺炎で入院. ンター. し、退院時に A を紹介された。 市内のデイサービスに通い始め 2 週間後に肺炎になり、A の関連病院. ケアマネ. に入院、退院時に A を紹介された。. 訪問介護事. 糖尿病、腎障害で腎瘻管理・インシュリン注等の医療処置がある。事. 業所. 元訪問介護を受けていた。訪問介護事業所から A を紹介された。. 8. ケアマネ. 9. ケアマネ. 10. の. 利用の経緯. 病. 院. MSW. 11. ケアマネ. 12. ケアマネ. 13. ケアマネ. 14. ケアマネ. 15. ケアマネ. 難病で気管瘻と胃瘻管理があり、市内のケアセンターの訪問看護を受 けていたが嫌だった。ケアマネから A を紹介された。 高血圧と軽い認知症あり。息子の妻が介護をしていたが、手術をする ことになり介護が大変だろうとケアマネが A を紹介した。 の. くも膜下出血後、後遺症が残り 2 年ぶりに自宅に帰ることになった。 気管瘻、胃瘻留置しており病院の MSW から A を勧められた。 脳梗塞の既往があり、数年前から認知症デイを利用していた。高齢世 帯の生活は限界に近く、ケアマネから A を紹介された。 夫を看取った後、独居になった。歯の手術を受け退院したが、創傷処 置もあり一人で暮らすことは困難だと A を紹介された。 脳梗塞で後遺症が残り、近くのデイに通い、医療処置があり訪問看護 を受けていた。多人数の対応は合わないようで、A を紹介された。 進行性核上性麻痺による嚥下障害のため、経管栄養となり訪問看護が 開始になった。ケアマネが変更になり、A を紹介された。 アルツハイマー型認知症があり、認知症デイに通っていたが、多発が んのため疼痛コントロールをしており A を紹介された。. 8.
(9) 3)サービスの利用状況について 各利用者のサービス利用状況は、表 3 に示した。それぞれの状況を考慮されていた。 (1)最も利用されているのは、通いで、訪問看護と続き、訪問介護、泊りであった。通 いのみを利用しているのは 2 例で、それ以外は複数の組み合わせであった。 (2)通いだけの利用の事例 3 は、同居してはいないが泊りこみで介護する子供がおり、 事例 7 は、介護者も 50 歳代で現在就労中ではなく、比較的介護力があるケースであった。 (3)泊りは、事例 5 や 15 のような定期的な活用と、事例 9 や 10 のように不定期な場合 があった。 (4)最もサービスが入っている事例 11 は高齢者世帯である。90 歳近くの夫が寝たきりの 妻を介護できる状況ではないため、通いに通う 5 日間は、朝夕の訪問介護、通いに来ない 日は泊り 2 泊で 1 週間を過ごしていた。 (5)高齢者の単身世帯である事例 1 は、通いと訪問介護を利用し何とか生活していた。 (6)訪問看護で実施されていた内容は、報告された調査 1)に比べても、様々な瘻孔管理や 複数の医療処置であり、より複雑なケースであった。 (7)通いで実施されているケアの特徴的なこととして、入浴があった。事例 13 以外は自 宅での入浴はしていなかった。過去に自宅浴室の手すりや段差解消などの住宅改修をして いても、現在は利用者や介護者の状況で不可能になっていた。その為、通いでは入浴は欠 かせないものになっていた。. 9.
(10) 表 3.サービスの利用状況 事例 番号. 通い. 1. 2 回/週. 2. 3 回/週. 3. 5 回/週. 4. 3 回/週. 5. 4 回/週. 6. 3 回/週. 7. 隔日. 8. 5 回/週. 9. 4 回/週. 10. 泊り. 訪問介護. 訪問看護. 種類の合計 2. 1 回/月 土日. サービスの. 毎日. 3 1. 1 回/週 1 泊/週. 3. 1-2/週 1 回/週. 2. 1 回/週. 3 1. 2 回/週. 2. 2 泊/介護者不在時. 1 回/週. 3. 5 回/週. 過去 1 泊のみ. 1 回/月. 2. 11. 5 回/週. 2 泊/週. 2 回/日+2 回/月. 1-2 回/月. 4. 12. 3 回/週. 2 回/月. 1 回/週. 3. 13. 2 回/週. 14. 3 回/週. 15. 3 回/週. 2 回/月・(2 泊/回). 5 回/月(2 泊/回). 2 回/週. 3. 1 回/週. 2 1-2 回/月. 3. 10.
(11) 4)サービスを利用しての利用者・介護者の変化 先に紹介したサービス利用の契機が様々であったように、その変化も多様であった。表 4 に示した。 (1)通いは、イヤから生き甲斐の獲得に繋がった例 最も変化が大きかったのは、寝たきりで意欲も低下していた利用者が、シルバーカーで 移動できるようになった事例 9 である。元々出不精(介護者の弁)で、最初は嫌がってい た通いで、料理をする楽しみを体験し、疲れるけど行くと言うようになった。今では生き 甲斐となった。そして、泊りも利用できるようになり、介護者が遠方の実家を訪問するこ とができるようになった。また、事例 9 の介護者は、縮小していた仕事を元のように増や そうかと考えていけるようになった。その一方、介護度が下がりこのサービスが利用でき なくなるのではないかとの新たな不安も生じていた。 (2)利用者の心身状況の改善がみられた例 サービスを開始後、予定外の入院をしなくなった例が、6 事例(1.4.5.8.9.10)であった。 そのうち訪問看護を利用しているのは 4 例であった。 また、元気になったと言う実感や、楽しみ、安心する、食欲がでてきた、動きが活発に なってきた等があった。 利用者の身体の動きが活発になることは、喜ばしいことである半面、介護者にとっては、 目が離せない状況となり、今までの介護スタイルの変更に迫られていた(事例 4.5.12) 。 (3)仕事を中断することなく介護を続けられている例 自宅で介護することになった事例 10 の介護者は、早期退職ではあったが、辞めることな く仕事を継続できた。A では、介護者の仕事の状況に合わせたサービス時間の調整をし、仕 事と両立できるように支えた。医療処置やケアが多いが、訪問看護があるので助かると言 っており、自分でペースを掴み、趣味の時間も持てるようになっている。 (4)介護の継続や仕事へ前向きな姿勢になった事例 介護者の中には介護の開始によって仕事を辞めたものも 2 例あった。仕事を辞め介護中 心の生活になった事例 4 のようにサービスを始めて介護が継続できそうと、介護への自信 をうかがわせる例やなるべく外に出ようと考えている事例 12 など、介護を継続する為に自 ら行動をおこそうとしている介護者もいた。 また、事例 5 のように仕事を継続している介護者もいたが、仕事探しを考えている事例 7 や、仕事の日数を増やそうかと考えている事例 9 の介護者など、サービスの利用は、就労 世代の介護者へ時間確保での後押しになっていると考えられた。 (5)今までにないサービスの効果 サービスの連絡先が A だけの一ヶ所になり、煩雑さが減ったこと、夜でも電話できてく れる、安心だと複数の利用者や介護者から述べられた(事例 1.5.8.12) 。また、いざという 時に泊りができるので便利と、このサービスの多様性に期待していた。. 11.
(12) 表 4.サービスを利用しての利用者・介護者の変化 事例 番号 1. 利用者の感じていること・変化. 介護者の感じていること・変化. 通うのが楽しみ。 通い始めて入院をしていない。 市の緊急サービスは A に連絡すれば活用 しなくて済む。. 2. 食欲がでてきた。 よく(世話)してもらっている。 手がかかるから来ないでと言われるので はないかと心配。. 3. 昔働いた地域の人も来るので楽しい。 息子たちも独りでおけないと言っている。 ここ(A)は安心。. 4. 5. 皆と会って話をするのが楽しみ、毎日でも. 一時は買い物で少し遠くまで行けたが、近頃は. 行きたい。. 目が離せない。. 動きが活発になった。. 介護を始め仕事を辞めた。. 予定外に受診することが無くなった。. 介護が続けられそう。. 元気になり、動きが活発になった。. 2 時間の留守ができなくなった。. 利用後入院していない。. 妹の協力を得て何とか仕事は継続しているが、 自分の時間は持てない。 介護サービスの連絡先が一ヶ所でできるよう になった。. 6. 方言の為、自分から話したがらなかったが. 仕事を辞めた。. 半年通い顔見知りもできて楽しくなった。 外に連れ出してほしい。 7. 手続きの為の時間が持てる。 休職中だが、仕事探しを考えている。 いざと言う時に泊りもあるので便利。. 8. 生命が危ぶまれる時期があったが、この間. 通いの間に買い物に行く。. は肺炎も起こさず経過している。. 納期に追われない仕事を継続、 夜も電話で来てくれるので安心。. 12.
(13) 9. (当初は嫌と言っていたが)料理ができる から楽しい、疲れるけど行く。. 気分的にも楽に。 仕事の日数を増やそうかと考えている。. 月に 1 回の泊りも利用するようになった。 泊りを利用し、実家に行けるようになった。. 10. 寝たきりから伝え歩きができるようにな. 介護度が下がりこのサービスが利用できなく. った。. なるのではないか心配。. 退院後は肺炎の発症もなく入院はしてい. 仕事を中断することなく早期退職まで継続で. ない。. きた。. 調子がいい時はドライブしたり、「買い物. 丁度いい時間で介護ができている。. したい」と言ったりする。. 訪問看護があるので助かる。 趣味活動に参加する機会もある。 階段昇降機を使えるので自由に散歩できる。. 11. (夫から見て)慣れたみたいだ。. 泊りになると洗濯物が多くなるので、洗濯回数 が増える。 助かっている。 横になったり畑仕事したりして過ごす。. 12. (妻から見て)通いに行くのは嫌がる様子は. 目が離せなくなり以前のように外出できなく. ない。. なった。. 少し動きが良くなってきた。. なるべく外出の機会を作ろうとしている。A は. 尿路感染を起こし秋から冬にかけ毎月入. 電話すればすぐ来てくれるので安心。. 院した。 13. 通いに来ると気が晴れるしここにいると. 介護で疲れて昼間は寝ている。以前は鈴虫を飼. 安心、利用できるだけでもいいと思う。. っていたが今はしていない。. 2 泊だと 1 週間も家を空けた気分になる。 土日はグランドゴルフにでかけている。 14. 利用した日は「楽しかった」と言う。泊り. 隣の市に住む親の介護が 1 回/週できるように. たくはない。利用後は、状態の変化、臨時. なった。できないと諦めていた。. の往診はない。. 親族や友人が介護生活を支えてくれ、外の空気 を吸うようにしている。 スタッフは辛抱強く、優しくしてくれる。 このサービスがあって、介護を続けられる。年 をとるので今後の不安があったが、今は安心。. 15. 認知症デイよりも今がいい。. 今はゆっくり買い物に行ける。他の用事も済ま. スタッフは家庭的で親切、楽しみで通え. せることができるようになった。. る。. 泊りがあるので助かる。(嫁に、下着に近い恰. 利用後の臨時受診はない。. 好やトイレに何回もいくような姿を見せたく ない). 13.
(14) 5)複合型サービスへの期待や要望等 (1)訪問看護ステーションが隣接しているメリットと可能性 難病で在宅療養を開始し、医療処置が増えてきた介護者は、 「こういうサービスがないと ころの人は大変だろうと思う」と言い、2 年間の入院生活の後、複数の医療処置を抱え自宅 へ戻った例では、 「このサービスが無ければ自宅へ帰れなかった」と口にした。これらには、 訪問看護が携わっており、複合型サービスの大きな成果と言える。特に A では、訪問看護 ステーションが隣接しているため、自宅に訪問しない時でも通いに来た時に訪問看護師が 存在しているという好条件がある。 難病を介護する介護者からは、利用者の家で暮らしたい思いを優先しているが、今後難 病が進行したら、どこで世話になったらいいのかとの不安も聞かれた。介護者も高齢に向 かい介護力が低下することが予測されるこのようなケースを、どこまでこのサービスでフ ォローできるのかは、課題が発生した段階で解決を迫られながら見えてくると思われる。 (2)サービス量拡大の希望 今利用している通いや泊りを、あと一回増やしてほしいとの希望が複数聞かれ、利用者 にとって快適な場になっていると推察された。 (3)リハビリテーションの拡大 50 代の介護者からは、同世代の利用者へのリハビリテーションをもっとして欲しいとの 意見が聞かれた。それは、脳梗塞の後遺症で障害を背負ったが、まだ若く改善の可能性を 捨ててはいない思いの表れと受け取れた。 (4)月単位の契約上の規制 このサービスは月単位の契約であるため、入院した場合には、入院費用も支払うことに なり、経済的に大変である。日割計算という方法はないのかとの意見があった。. 14.
(15) 2.住宅と補助器具の活用状況 利用者達の自宅は、A から車で片道 30 分程の範囲であり、該当の団地に居住しているの は 5 名であり、他は別の公営団地、マンション、一軒家等であった。玄関までに段差のな い住居はほとんどなく、利用者のほとんどが杖や車椅子での移動であることから、手すり の設置や段差解消機などの補助器具が活用されていた。エレベーター(以下、EV)のない 2 階に住む利用者宅は、階段昇降機(図 3-①②)を設置していた。しかし、EV が停止しな い階は、介助で 5 段昇るか降りるかの方法しかなく、「人の力」で賄っている現状である。 利用者の送迎には、居住地との距離の他、移動介助に係る方法と時間が加味されることに なる。 ほとんどの利用者が車椅子やベッド、マットレス等を中心にレンタルをしている。それ にプラスする段差解消機や階段昇降機等は、経済的に余裕のある利用者でないとレンタル できていない。事例 10 のように購入した例は珍しく、高齢者が障害を持った利用者が多い A の場合には、事業所として常備する以外になく、その負担は少なくない。 移動手段に伴って生じる課題は、サービスに影響を及ぼす可能性は大きい。. 図 3.階段に設置された階段昇降機 ①踊り場から 1 階へ ②折返し部. 15.
(16) 3.複合型サービスのニーズ 以上の結果から、明らかになった「多様な住民ニーズ」と、サービスを左右する視点から 「経済的に左右される補助器具の活用」の 2 点を以下に述べる。 1)多様な住民ニーズ 利用者や介護者の年代、世帯時類型等からそのニーズは様々であり、利用者と介護者の 側面から図 3 のように整理した。 (1)利用者の側面 ①複数の医療処置があっても在宅で暮らしを可能にしていた。 ②健康管理がなされ、心身状態が改善していた。 ③補助器具の活用で QOL が向上していた。 ④楽しみや生き甲斐の創出、自己の拡大に繋がっていた。 ⑤高齢者の単身世帯や高齢者世帯の孤立を防いでいた。 ⑥地方からの呼寄せ高齢者に対する言葉の問題がある。 (2)介護者の側面 ①複数の介護パターンを可能にしている(週末介護、夜間介護) ②遠方の実家に通う時間の確保ができ、ダブル介護を可能にしている。 ③仕事の継続、或いは仕事の時間の拡大ができた。 ④趣味の時間を創出できるようになった。 ⑤介護継続の意欲に繋がった。. 利用者. 介護者. 医療処置. 複数の介護パターン. 心身状態の改善. ダブル介護. QOLの向上. 仕事の継続・仕事の拡大. 楽しみ・生きがいの創出. 趣味の時間の創出. 孤立の防止. 介護継続の意欲. 呼寄せ高齢者への対応. 図 4. 利用者・介護者の側面からみたニーズ 2)経済的に左右される補助器具の活用 補助器具は必要ならば全てレンタルできるというわけではなく、利用者の経済的側面に 左右される。その一例として、階段昇降機の活用により移動の制限がなく自由に家から外 出できるようになり、QOL が高められた例を紹介した。しかし、階段昇降機のレンタル料 16.
(17) は、1 年以上支払えば、購入した方が安価と言うくらい高額になっていた。階段昇降機が介 護保険の対象となれば、その利用者枠は広がる可能性が出てくると考えられる。現状では、 移動の為の補助器具は、利用者がレンタルしていなければ複合型サービスの事業所が負担 しており、経済的な負担を招いている。これは A だけに限らないことである。2) さらに、EV が停止しない階に居住している利用者の送迎には、時間やスタッフへの負担 が大きくのしかかっていた。車いすを抱えて、或いは何とか身体を支えて階段を昇降する という方法は、移送の安全性という観点から見ても非常にリスクが高い。また、現状では、 利用者の身体の状態が変化したからと言って、簡単には変更ができない。身体の変化に伴 い、柔軟に変更できる機器の充実をはかることと、利用できる制度の構築が必要である。 補助器具が効果的に使えることは、送迎の時間短縮や移送時の負担軽減、利用者の安全、 安楽を確保することを意味する。それは、サービスの利用制限を少なくすることにも繋が る。 建物の改修は即座にはできず、団地住民の高齢化も進む中、何らかの打開策が必要とな る。補助器具が有効に活用できるようなシステムは、その課題を解決するのに大いに期待 できるものではないだろうか。. 17.
(18) Ⅲ.団地住民聞き取り調査 1.住民の概況 1)対象者の状況について 対象者は、男性 7 名で、女性は 23 名と圧倒的に多かった。年齢層は 64 歳以下から 85 歳 -89 歳で、最も多かったのは 70 歳から 74 歳が 14 名で約半数を占めていた。. 世帯構成については、以下の表 5 に示す通り、単身世帯(独居)が 18 世帯と半数以上で、 二人以上が 12 世帯であった。そのうち、夫婦のみは 7 名、子供と一緒は 2 名、夫婦と子供 と同居しているのは 3 名であった。 一方、同居はしていないが、近隣に子供が住んでいるのは 14 世帯と約半数を占め、独居 で 9 世帯、二人以上では 5 世帯であった。同居までは至らないが、必要時に訪問できる遠 すぎない距離にいることが伺えた。 表 5.世帯構成. 世帯. 単身(独居). 18. 二人以上. 12. (二人以上の内訳) 配偶者. 7. 子供. 2. 配偶者・子供. 3. 近隣に子供が住んでいる人. 14. 単身(独居). 9. 二人以上. 5. 18.
(19) 2)団地の居住状況(表 6) 対象者の出身地は、関東以外が 16 名、関東地方が 13 名、県内 1 名であった。また、関 東地方に居住している年数は全員が 10 年以上であった。団地の居住年数は、1 年未満から 30 年以上でばらつきがあったが、30 年以上が最も多く 14 名と半数近くを占めており、既 に定住の場所と言えそうである。 入居したきっかけは、多様であり、中でも、子供の誕生や就学年齢になったこと、配偶 者の仕事の関係、結婚などライフイベントによるものが多かった。また、配偶者との別離 で単身になった、定年になったことを契機に子供の近くに住み始めたものも複数おり、老 後に備えてのことと受け取れた。 表 6.団地の居住状況. 名. 出身地 県内. 1. 関東地方. 13. 関東以外. 16. 団地の居住年数 1 年未満. 1. 1-5 年. 1. 6-10 年. 5. 11-15 年. 3. 16-20 年. 2. 21-25 年. 1. 26-30 年. 4. 30 年以上. 14. 団地に入居したきっかけ 子供の誕生. 6. 子供の近くへ(単身に、定年後). 5. 子供が就学年齢になった. 2. 子供の為にも転勤族を辞めたい. 1. 配偶者の仕事の関係. 3. 結婚. 2. 家賃が安かった. 2. アパートより団地が便利. 1. 知人が住んでいた. 1. 病気になった. 1. 手狭になった. 1. 19.
(20) 2.普段の暮らしぶり 1)就業状況 現在、就業しているのは 10 名で、その頻度は週に 4 日以上が 4 名、3 日以内が 3 名、 不定期 2 名、毎日 1 名の順であった。一方、就業していないのは 12 名で、不明が 8 名であ った。 2)健康状態(表 7) 健康状態は、日常的に内服している薬(重複回答)を目安とした。最も多かったのは高 血圧が 13 名で、次いで、糖尿病 3 名、高脂血症と便秘が 2 名であった。他に、骨粗鬆症、 膠原病、橋本病、悪性リンパ腫、ラクナ梗塞、アレルギー、花粉症、胃薬、安定剤等があ った。生活習慣病の中でも高血圧のリスクが高いこと、また様々な疾患を持ちながら生活 していた。 表 7.内服状況(重複回答). 名. 高血圧. 13. 糖尿病. 3. 高脂血症. 2. 便秘. 2. 骨粗鬆症. 1. 膠原病. 1. 橋本病. 1. 悪性リンパ腫. 1. ラクナ梗塞. 1. 花粉症. 1. アレルギー. 1. 胃薬. 1. 安定剤. 1. 20.
(21) 3)食生活について 食べる時間や食生活で気をつけていること、食事時の状況を類推するために誰と食事を しているかを聞いた。 (表 8) 食べる時間は 28 名がほぼ決まった時間にと答え、不規則なこともある 1 名、だいたい不 規則は 1 名であった。そして、気をつけていること(重複回答)では、野菜を定期的に・ 多めに 10 名、塩分を控える 8 名、脂分を控える 4 名、量を調整している、薄味にしている、 ほとんど手作り、バランス良く、が 3 名の順であった。他にも、アルコールを飲まない、 蛋白質を多めに、安心な肉を食べる、地元の米を食べるなど、様々なことがあがっていた。 前項の健康状態が反映しているためか、特に、生活習慣病予防のための食事への配慮が見 えた。 そして、昨夕は誰と食事をしたかとの問いでは、一人が 17 名、同居者 10 名、その他(知 人、友人等)3 名であった。独居者が必ずしも一人の食卓ではなく、同居者がいても絶えず 一緒に夕食を囲むというわけではなかった。 表 8. 食生活. 名. 食べる時間 ほぼ決まった時間に食べている. 28. 不規則なこともある. 1. だいたい不規則. 1. 気をつけていること(複数回答) 野菜を定期的に・多めに. 10. 塩分を控える. 8. 脂分を控える. 4. 薄味にしている. 3. 量を控える. 3. ほとんど手作り. 3. バランス良く. 3. アルコールはのまない. 2. 蛋白質を多めに(小豆・納豆等). 2. 肉より魚を食べる. 2. 安心な肉を食べる. 1. 糖分を控える. 1. 地元の米を食べる. 1. 昨夕の食事は誰と食べたか 一人. 17. 同居者. 10. その他(知人、友人). 3 21.
(22) 4)住生活 住生活については、居室内の移動の状況と、その構造や身体の動きが大きく影響するお 風呂の利用について聞いた。 居室内の移動に不便を感じている人は 2 名で、部屋の片づけや拭き掃除ができないこ とがその理由になっていた。一方、既に高齢者用住宅に改修している 2 名を含め、現段階 では、不便なく移動できている人は 28 名であった。不便は感じていなくても、転ばないよ うに気をつけている、躓くので敷物(絨毯、カーペット類)は敷かないなど、工夫されて いた。 お風呂を利用する時不便なことは表 9 に示した。浴槽も含め浴室を高齢者用に改修し た 5 名も含め 25 名は不便なく浴槽を利用していた。5 名は不便を感じており、浴槽をまた ぐ時に転ばないように注意する、浴槽の縁に手をかけてまたぐ、手すりにつかまって入る、 段差に注意しているなど、転倒しないように工夫しており、既にシャワーチェア(浴室用 椅子)を購入している人もいた。一方、古い構造のままで浴槽が深く、掃除が大変だとい う声や、倒れた時が怖いのでガスを切ってから入ると、用心している姿もあった。何れも、 今後に課題を残していた。 表 9.お風呂を利用する時不便なこと. 名. 無し. 25. 有り. 5. 工夫・注意していること 浴槽をまたぐ時に転ばないように注意する. 1. 浴槽の縁に手をかけてまたぐ. 1. 手すりにつかまってはいる. 1. 段差があるので気をつける. 1. シャワーチェアを購入している. 1. 浴槽が深く掃除が大変. 1. 倒れた時が怖いのでガスを切ってから入る. 1. 22.
(23) 5)外出状況について 外出については、外出手段やその頻度、出かける時に不便なことについて聞いた(表 10) 。 外出手段(複数回答)では、杖を持っている人も含め徒歩 25 名、自転車 14 名、電車 9 名、自家用 6 名、バス 2 名であった。ほとんど自由に動ける人が大半であり、手軽な自転 車を利用している人が多かった。バスの利用が少ない理由にはバス停が近くにないこと、 本数があまりないことがあった。また、外出の頻度は、ほぼ毎日が 23 名で、4-5 日/週と 2-3 日/週がそれぞれ 1 名であり、多くが外出していた。 出かける時に不便を感じていないのは 21 名で、不便を感じている人が 9 名いた。そのう ち 5 名が、上層階(4 階・5 階)なので昇降が大変、荷物があると手すりを使えない、足が 痛む時には杖が必要と、何れもエレベーターがないことにより生じている不便さがあった。 さらに、階段が狭い、駐輪場が狭いと構造上の問題もあがっていた。 表 10. 外出状況. 名. 外出手段(複数回答) 徒歩. 25. 自転車. 14. 自家用車. 6. 電車. 9. バス. 2. 外出頻度 1日/週. 0. 2-3 日/週. 1. 4-5 日/週. 1. ほぼ毎日. 23. 不明. 5. 出かける時に不便なこと 無し. 21. 有り. 9. 具体的な内容 EV がない上層階で昇降が大変. 5. 荷物があると手すりを使えない. 1. 足が痛む時は杖が必要. 1. 階段が狭い. 1. 駐輪場が狭い. 1. ちょっとした段差に躓く. 1 23.
(24) 6)活動(役割・楽しみ・生きがい)について 普段の活動については、定期的に出かけるところや役割を持っているか、楽しみや生き がいについて聞いた。 (表 11) (1)役割を持ち定期的に出かけるところ(複数回答)がある人は 15 名で、ない人は 2 名 であった。最も多かったのは社会活動で、地域住民の活動に 14 名、複合型サービスや通所 等のボランティア活動が 11 名、団地の自治会活動 2 名の順で、他に市の母子愛育班、医療 懇談会等であった。 定期的に出かけるところとして、定例の企画への参加があり、市主催のシルバー元気塾 やタンポポの会、友の会が主催する企画へそれぞれ 4 名が参加していた。長年の趣味であ る社交ダンスや詩吟、新たに通い始めた本格的な絵画教室、楽しく習って発表会をするフ ラダンスや歌声サークルなど、幅広く多彩であった。 表 11.定期的に出かけるところや役割について(複数回答). 名. 無し. 2. 有り. 15. 社会活動 友の会活動. 14. ボランティア活動. 11. 団地の自治会活動. 2. 市の母子愛育班. 1. 医療懇談会. 1. 企画への参加 シルバー元気塾. 4. タンポポの会. 4. 友の会企画. 4. 趣味や習い事 吹き矢. 3. フラダンス. 2. 以下、一名ずつ ウクレレ・歌声サークル・カラオケ・ハーモニカ エステ・フィットネス教室・バレーボール・競馬場 書道・絵画教室・詩吟・社交ダンス. 24.
(25) (2)楽しみや生き甲斐については表 12 に示した。楽しみや生きがいが無いと答える人は なく、最も多かったのは、知人・友人・周りの人とのお茶や食事、旅行など交流の機会 10 名であった。続いて、社会活動 7 名、子供・孫の成長、ふれあい 6 名、仕事 2 名であった。 フラダンス、映画・演劇鑑賞をはじめとした趣味に生きがいを感じている人も少なくなか った。 表 12. 楽しみ・生き甲斐について. 名. 0. 無し 有り 知人・友人・周りの人との交流(お茶・食事・旅行等). 10. ボランティア活動. 1. 仕事. 2. 社会活動(介護予防プロジェクトの立ち上げ、友の会活動). 7. 子供・孫の成長、ふれあい. 6. 帰省. 1. 趣味 フラダンス. 2. 映画・演劇観賞. 2. マラソン. 1. 旅行. 1. 社交ダンス. 1. ピアノ. 1. カラオケ. 1. うたごえ. 1. 吹き矢. 1. 縫物. 1. 競馬. 1. 25.
(26) 3.高齢者が抱えている課題および考えていること 1)高齢化、孤立化、孤独死等の現状をどのようにとらえているのか 超高齢社会の現実の受け止め方は、多様であるが、確実に、高齢者が多くなっているこ とを実感していた。 「老人ばかり、杖の人は多くなった。一人の人も多くなった。」 (78 歳、女性、夫を亡くし関西独居を続けていたが、子どもの近くに住みたいと思い探して もらい居住。団地歴 10 年). 「孤独死はちょくちょくありますね。気づいた時は、警察、自治会に連絡してお願いする。自 治会に入って居ない人もいる。」 (73 歳、女性、独居、夫が他界し大変になったので東京から引っ越し、団地歴約 27 年). また、高齢者が多くなっている現実は、実感しながらも、自治会等への参加、また、ご 近所との付き合い方や接し方、他者との交流の必要性の感じ方、声をかけようとする気持 ち、周囲の状況を知ろうとする意欲等は異なる。 団地内でも、また、市でも、また、必要性を感じた個人が、人と人とが触れ合い、知り 合う契機づくりはしているが、その機会が生かされていない。また、 「機会」をつくること にしても、それが、適切な時期、内容なのか、回数として適切かどうか検討の余地がある。 一方、人が生きることは「支え合い」に他ならないのであるから、一つひとつの機会を 大切にしてほしいと願っており、働きかけても響かない、言葉が伝わっていかないことに、 頭を悩ませ、もどかしさを感じている。 自分自身の存在を知ってほしい、あるいは、知らせなければという思いを持つことは、 仕事に従事している間は難しく、一方、実際に、介護の必要に迫られ、生命に向き合うこ とで、他者と繋がることの意識は高まるようだ。. 「向かいに外人さん夫婦が住んでいる、子供二人で4人家族。挨拶はする。下の階にも外 人さんがいて、知り合いのよう。周囲の状況はわからない。自治会に入っていないので、団 地管理事務所にはいかない。」 (78 歳、女性、団地歴 10 年) 「階段の人とは何かつながりを持ちたいと思いますが、前ほど知らない。分譲の方で、掃除 は、1 年に 1 回するだけ。」 (62 歳、女性、夫と同居、みさと団地とさつき平団地 34 年). 26.
(27) 「最近5階に若い方が越されてきましたが、挨拶もないですね。日曜日には、芝刈りの協働 作業があるのですが、全然出てきません。階段上には10件あるが、私と二人だけです出 てくるのは。市内一斉のグリーンデーにも二人しか出てきませんでした。 でも、私は、できることは少ないけれど、顔を見せているだけでも違うかなと思い参加して います。親睦を兼ねて、顔見せを兼ねて出てほしいな、出なくちゃいけないなと思っていま す。団地に40年以上住んでおり、やはり総会などもありますけど、窓の外を見て時間があ る方でも、総会には出てこない方も多く、住民としての協力や自覚が欲しい。」 「回覧板もドアにかけておくのではなく、必ず、一声かけて、顔を見て手渡す形にしてもらえ ればなあと思っている。これは、皆さん思っているけれど、それを(わずらわしい)と思う方 もいらっしゃって。でも、人が生きていくというのは、やはり支え合いでしょう。団地で、入居 者の登録を提出する機会がありましたが、それにも登録しない方が結構おられる。 催しに参加されない方に、書類をお届けすることがあるが、集合住宅のところのポストに は、名前が書かれておらず、玄関のところまで行っても表札にも何も書かれていない。だ から、私の階段のところの方には、シールをつくり、皆さんに貼ってもらうようにしました。 昨年から、棟ごとの親睦を深めるために、顔見せする機会をということで、去年から行って いるが、結局集まりが悪く、結局5~6人しか集まらなかったが、今年も行う方向性となって いる。このような会号に是非出てほしい。」(77 歳、女性、独居、団地歴 40 年). 「仕事をしているときは、朝早く、夜遅く帰る生活なので、自身の生活の場に目も行き届か なかったし、関心もなかった。その後、夫を介護していたとき、地震が来たら8階でエレベー ターも止まるし、夫を下まで下ろせないな。とか、誰かに助けを求めても、それぞれ、抱え ている家族で大変だろうし、地震が来たら、そこで、断念するしかないと思っていた。 今、私たちがここで生きているということを示すために、夫が生きている間は、今はもう隠 す時代ではないから、夫の車いすを連れて、避難訓練に出ていた。」 (64 歳、女性、独居、団地歴 26 年). 団地に長い間居住していれば、長きにわたる友人に恵まれ、孤独ではないかといえば、 そうではない。ご近所が、あまり入れ替わりがない場合は、日常的に声を掛け合うなどの 関係性が保たれており、お互いの健康状態や生存を確認しあうための「鍵預け」も可能に している。一方で、子育て時代の親同士の仲の継続は、難しいようである。 また、昔は、 「生協」等で購入した品を「分け合う」 、作りすぎたお惣菜を「分け合う」、 「ともにいただく」 、ちょっとお部屋にあがって「お茶をする」という文化があったが今は ほとんどなくなっていることが、関係性を希薄なものにしている。 27.
(28) 「前から住んでいる人たちは顔見知りでわかり、挨拶はするけど、独り暮らしとかはわから ない。前は自治会もあったけど、年寄りばかりでやる人がいなくなった。だから、余計わから ない。」(81 歳、女性、息子と同居、団地歴 20 年) 「隣近所に長く住んでいる人が 3 軒、その他も長い。お互いに気遣う関係ができている。独 りの人もいるので声を掛け合っている。タンポポの会で送迎をしたりしているので、それでも わかる。」(70 歳、女性、夫と次女と同居、団地歴 40 年) 「周辺は、顔見知り気遣いあっている。顔をみなくなったら、気にかけると思う。昔は引っ越 しの時には挨拶があったがいまどきは珍しいことになった。先日は、入居してきた人があい さつに来た、自治会の役員と聞いてきたのかもしれない。」 (54 歳、女性、同居夫・息子、団地歴 28 年) 「向かい(隣)の家にも鍵は預けています。いい方ですので。なので、血圧が高いときには、 1~2時間後、ちょっとのぞいてみてくださいと言える関係性であり、また、息子にも隣の方 の電話番号を知ってもらっていて、私と連絡がとれなくなったときには、隣のお家に連絡を して、部屋をのぞいてもらえるようにしている。 また、この団地の階段続きの方には、電話番号を教えてありますし、なので、救急車に運 ばれて助けてもらう必要もないのかなと思って。」(77 歳、女性、独居、団地歴 40 年). 「両隣や周辺は挨拶をするし、ものをあげたりもらったりする中である。虐待や孤立は、あま りきかない。知っている人をみかけなくなったら、連絡し合えると思う。」 (71 歳、女性、同居夫、団地歴 10 年). 「子育て時代はあったが、今は、家にあがって『お茶』とかない。前に住んでいる人と年に 2 回、市の掃除の時よくおしゃべりする程度、階段沿いの住民で話す人は 10 軒のうち4軒」 (62 歳、女性、夫と娘同居、団地歴 30 年半) 「子供がいる時は顔見知りが多かった。全体が 2-3 年前から半分くらいずつ入れ替わって いる感じ。挨拶をする程度。昔からの知り合いとか、困っている人がいれば、助けようという 気はあるけど、知らないひとも多いから。町会が無く、回覧版も回らないようになったから、 余計わからなくなった。地域包括センターとか知らない。」 (75 歳、女性、夫と同居、団地歴 20 年). 28.
(29) 「子供が就学前から団地に入ったので、小学校の PTA のグループがあり、顔見知り。家の 鍵を預けている知り合いもいる。」 (70 歳、女性、団地歴 35 年) 「昔は生協で購入したものを、あなたはこれお肉ね、あなたは卵などというように分け合う 生活があった。小学生の親、中学生の親としての付き合いがあり、カレー多くつくったの で、食べにこないなどという関係性もあったけれど、子どもが大きくなるにつれて、親とも会 わなくなる。 今、考えてみると、子どもを通して自分の団地にどのような方がいらっしゃるのか把握して いたが、今、昔からの人は2件しかない。お引越ししてきても挨拶ない世の中だし・・。」 (68 歳、女性、夫、長女と同居、団地歴 39 年). 「これから高齢者が増えると思うが、昼食ぐらい皆と共に食べるべきなのでは、一人は寂し い。友の会新聞、チラシ袋詰めをして配達協力員なので 38 件に配るが、なるべく行きたく ない。会費 500 円だが、集めに行く際、留守が多かったり、手持ちがないと断れる等が悩 み。」(74 歳、女性、独居、団地歴 37 年) このような状況のなか、何か困ったことが起こったらどこに相談するのかという問いに は、地域包括支援センターをはじめ、警察や、身近にいるケアマネジャー、UR、団地管理 事務所を答えている。また、日常的に自身が活動しているボランティアグループや、よく 知っている地域資源を挙げることも多い。 一方で、それぞれの資源がどこまでしてくれるのか、責任ある対応をしてくれるのか不 安を感じ、また、これまでに個人情報の保護を重視しすぎたことから、気づきや支援、孤 独死の発見が遅れる場合があり、不安、不信を募らせている。また地域にある各資源とも っと有意義な連携ができればいいと憤りを感じている場合もある。 「市役所まで行かなくても、友の会や、困った人を見はるボランティアや、警察、地域包括 センターなどに相談する。困った人を地域包括センターに連れていったこともある。」 (70 歳、女性、夫と次女同居、団地歴 40 年) 「何かあったら、UR や、管理事務所に。地域包括があるから、ケアマネさんに声をかける と思う。」(54 歳、女性、同居夫・息子人、団地歴 28 年) 「市役所まではいかなくて、包括に相談するようにしている、そうするように少しは広がっ ているようだ。でもどの程度のことをするのか、情報がわからない。」 (71 歳、女性、同居夫、団地歴 10 年). 29.
(30) 「市役所はすぐには対応できない。UR の関係でもすぐには対応できないね。UR にあの 人見ないというと警察を呼んで鍵を開けてもらって亡くなっていた。あるいは包括から行く んでしょうね。個人情報があるから診療所からはあの人最近と言ってくれれば、友の会は ........................ 動くけど、それは言えないでしょう。具合が悪いは、診療所しかわからないけど、言えない ........................................ と言うからね。あの人最近見ないというのも個人情報になるんですかね。噂話をしてれば .................................... .... いいんだよね。今回の亡くなった方は、月 1 回は友の会の人が行っていて、UR のコール ......................................... センターからも繋がらないのでおかしいねといって、診療所も3ヶ月来ないから連絡しよう .............. .. ......................... と思っていたそうです。それで UR に言って、警察に行ったら連絡先がわかった。もう少し ....... . .. 早くわかれば・・・。友の会の人はうろちょろしているんだからね」 (73 歳、女性、独居、団地歴約 40 年). 傍点筆者. 「市役所は税金を納めてと電話がかかってくる。(何かあったとき)UR は行ったことはな .......................... い。自治会か、UR でしょうね。診療所は教えてもらえないからね。不便な時代。兄弟の部 ...................... .......... 屋はでも教えられないでは、がんじがらめ。UR でも教えないでしょう」 (70 歳、男性、妻同居、団地歴約 40 年) 傍点筆者. 「1 か月以上経ってからの発見、発見が遅い。鍵を開ける体制が整っていない。連携をと らなければ直らない。UR と警察」 「病院など 1 か月ごとに来ていた人に対して、数か月経ってから連絡するなど対応が遅 い。UR や警察が対応できる」(68 歳、男性、独居、団地歴約 27 年). 2)地域の再開発の影響から考えていること 三郷市は、東京都心から 20 ㎞圏内に位置し、大型団地や高速道路を結ぶインターチェン ジや武蔵野線が整備され、田園型の社会から多様な機能を持つ都市へと変化している。 平成 17 年 8 月には、 「つくばエクスプレス・三郷中央駅」が誕生している。4) また、武蔵野線の「新三郷」駅付近にあった貨車の操車場が輸送体系の変更により使用 されなくなった武蔵野操車場跡地の再開発プロジェクトにより、2008(平成 20)年に地名 も「新三郷ららシティ」に改められ、大規模なショッピング施設が誕生した5)。「新三郷」 駅前に建つ「ららぽーと新三郷」をはじめ、 「IKEA 新三郷」や「コストコホールセール新 三郷倉庫店」などが集まり、近隣エリアからの買い物客も集まるショッピングセンターエ リアになっている。 古くからこの地域にある大規模集合住宅、みさと団地(昭和48年入居開始)や民間開 発のさつき平(昭和 61 年入居開始)は、市内外の大規模商業施設の立地の影響を受け、買 い物をする内容の選択肢が広がる、他の地域に行かなくてもすべてがそろうなどのメリッ トもある一方、歩いて行ける範囲の商業が成り立たなくなり空洞化する、地域以外の車の 30.
(31) 流入から渋滞が起こり、交通状態の悪化によりバスが定時に走れなくなることから、高齢 者の足となるバスが使用できなくなるなど、当然のことながら大きな影響を受けている。 また、高齢者にとって、歩ける環境はとても重要だが、買い物をすると荷物が重くなる、 歩ける距離より移動範囲が広くなり便利ということから、自転車を使用する高齢者も多い。 そのため、自転車に乗りやすい環境づくりが切実に求められていた。 三郷市の平成 22 年度から平成 26 年度にかけての「都市再生整備計画目標」にも、公共 施設の老朽化対応やバリアフリー対応、駅前商業の空洞化への懸念、地域間のアクセス路 整備の推進等が掲げられていた6)が、上記をふまえ、今後より一層、多世代の共存が可能 となる地域づくりを目指す必要がある。 「にぎやかなところが好きなのでよかった。他に行かなくても買い物が全てできる。ユニクロ や家具等もあるので、毎日でかける。(中略)本屋があることも助かる。半日時間を過ごす 時もあり、子供に本を送る時もある。」 (70 歳、女性、夫と次女同居、団地歴 40 年). 「車が多くなった。特に休日は、渋滞するからバスも動かなくなり、昼から夕方にかけては、 みさと駅止まりになった。また、三郷駅から乗り換えるのに、昔はお金がかからなかったの に、今は三郷駅始発になりお金がかかるようになった。バスが来ない時は歩く時もある。吉 川方面からのバス、市役所へのバスも少なくなり不便になった人たちもいる。ヨーカドーや 本屋にはいくが他はあまり行かない。」 (54 歳、女性、同居夫・息子、団地歴 28 年). 「車が多くなって危険になったし、静かだったところがうるさくなった。休日にバスが運行しな い時間帯ができて不便になった。ヨーカドーは近いのでよく利用する。」 (71 歳、女性、同居夫、団地歴 10 年) 「バス停が近くでバスが増えたと思ったが、ららぽーとの影響で不便になった。本数も減り、 土日は運行しない時間帯がある。吉川南方面のバスも減った。」 (81 歳、女性、息子同居、団地歴 20 年). 「車が多くなった。土日にバスは乗れない。高速が近いし、ららぽーとに行く人の車で一杯 になるから。ゴールデンは道路を渡らないといけないけど、お年寄りは危なくて渡れない。 横断歩道があっても、車が横断歩道にまで入っているので渡れない。脇道も車が入ってい くから。」(81 歳、女性、息子同居、団地歴 20 年). 31.
(32) 「地元住民より他の地域の人の方が多くなった。道路が混む。大型施設の設置は、あまり 良いと思っていない。」 「大型の施設に遠くの人が来ることは発展につながる」 (68 歳、男性、独居、団地歴約 27 年) 「三郷は自転車道がよくない、危ないところがいっぱいある。自転車の安全な道路を整えて ほしい。車優先で車のことばっかりしているので、自転車に力をいれてほしい。自転車の道 がきちんと整理されれば、両隣の駅まで行けてしまうのに。」 (77 歳、女性、独居、団地歴 40 年). 3)地域包括ケアシステムにおける高齢者の課題 (1)表出できる課題と奥深く内在する課題 孤独死はしたくない、認知症にはなりたくない、今のうちに行けるところに行きたい、 様々な思いを抱え、高齢者は、自身の身体状況および家計等と相談しながら、自分ででき る範囲の活動を行っている。そして、その活動から得られる関係性もある。 だが、そのように培った関係性のなかで「話すことができる内容」は、各自がそれぞれ 範囲を定め、人との距離をある一定に保つことで関係性を育んでいる。 例えば、夫婦関係の不和についてまでは他者に話せるが、40 歳を過ぎる子どもがこれま でに一度も定職に就いたことがなく、精神の状態にも特有の症状があるが、受診等ができ ていない。そのわが子を 70 歳過ぎる親がアルバイトをし続け、生活を支え、毎食の準備を し、身の回りの世話をし続けなければならない状態であることは、 「誰にも話すことができ ない事柄」となっている。. 親として私の子育ての仕方が悪かった、甘やかしすぎた、あ. るいは、あの時、もっと適切な時期に病院を受診させていればというように、すべて自身 の責任、親としての非として詫びながら、 「よそ様にお話するには恥ずかしいこと」として、 その家庭内だけでしかわからない問題、課題として封じ込められている。 専門的な視点からこの家族をみるとき、適切な治療機関への受診とともに、子どもへの 就労支援等の助言等も必要と考えられる。また、親のそのような思いを共有し、支えるた めの支援も必要だろう。彼らはまだ自分たちで自立して生きている。よって、今は支援の 必要がないという意見もあるかもしれない。しかし、いざという時に、支援がすぐに届く 状態にしておくことは重要である。 地域で活動し、多様な形で懸命に貢献しようとする高齢者にも、何か抱えている課題は ないか、ともに考えることを必要としていないかどうか、時には視線と心を向ける必要が ある。. 32.
(33) (2)私はいつまで生きるのか、生きるべきなのか。死ぬまでに何をしておくべきか。 高齢者の主な関心事項として「認知症にはなりたくない」 「人の世話にならないようにで きるだけ頑張る」 「とにかく歩けていること、元気でいたい」の思いが、インタビューから 切実に伝わってきた。と、同時に「いつまで生きるのか」 「いつまで生きるべきなのか」 「死 ぬまでになにをしておくべきか」等も課題となっている。 今年度の介護保険制度の改正に伴い、特別養護老人ホームへの入所資格が、今後は介護 の必要性の高い「養介護 3」以上に限定されている7)。このことから、公的な「介護老人福 祉施設」としての特別養護老人ホームは、現在でもすでに、全国待機者が 40 万以上いるこ とで知られており、高齢者にとっては入れない場所としてとらえられている。そのため、 近くにある有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等を、元気で動ける うちに見学し、自分にとってこの施設やサービスはどうか確かめておこうとしている。だ が、見学を重ね、料金的なことまで相談し、自身の年金額および貯蓄額をあわせて模索す るうちに、早い段階からの入所は難しく、すぐに料金的に不足するのではと考え、入所時 期をできるだけ遅くしたほうがいいと考えている。 また、先のことを考えると不安になり、物欲もなくなってはきているが、普通の年金額 では不足なため貯金を切り崩す生活のなか、食費を切り詰める場合もあり、将来の入居等 を考えると自由になるお金はあまりないと判断していることが多い。 「とにかく健康でなければ生活が続けられないので、健康維持が大切。 施設はお金がないと入れないから、入っている期間をできるだけ縮められるようにしない と。 知り合いには、90 まで元気で独りで生きられるようにしなさいと言われている。85ではなく て。団地のなかで、85 歳すぎて一人で頑張っていらっしゃる人はいっぱいいるって。特別 病気しなければ、だから 90 歳まではいけるわよ という話をしてるの。 それで、90 過ぎたら、そう長くは生きない。数年だと言われているの。 90 過ぎるとぽつぽつと人が消えていくって言われているの。そうなんだって。施設なんかも そうなんだって。だからそれほどお金を持っていなくても90歳すぎたら、100 歳まで生きる 人はそうはいないから、少しくらい(施設の料金が)高くても生きたって数年だから大丈夫よ と言われた。 その年までなるたけ元気でいけたらいいね。その近くまでは一人で生きていけたらなと思 っています。その先はそうところにお世話になりたいと思っている。 介護付き高齢者住宅なら安心。一人では倒れてもわからないから。 夏だったら腐っちゃうわね。だから、すぐに見つけてもらうためには、そういうところに入れ ばすぐに見つけてもらえるから、そこが安心だと思って。」 (77 歳、女性、独居、団地歴 40 年). 33.
(34) また、高齢者となると、時間もたくさんあり、お友達とどこかに行くこともきっと大き な生きがいや楽しみになるかと思っていたが、移動のこと、約束の時間、荷物の重さ、女 性にとってはいつもいる夫の存在、孫の世話等で、必ずしも若いころに描いていた楽しみ とは異なっている。 「どこかにお友達と一緒に行くということもしていたが、一緒に行く友達も決まってきてしま い、何時にどこに集まるなどという決まり事が多いツアーや、帰りにメロン 1 個のお土産が つくと、帰りの荷物が重たいなど、うんざりしてきてしまって、もうあまり行かなくなった。」 「昔は歳をとると、映画館のチケットも安くなると思うとウキウキしていたが、実際にその年 になるとあまり嬉しくないのが現状。」 「主人が家にいるようになること、孫をみててと言われるようになることなどを通して、なか なか外に出づらくなる。夫は『行ってきていいよ』とは言ってくれるが、夫ひとりを残してで かけると淋しがる。置いていかれてしまったという気持ちになるようだ。」 (68 歳、女性、夫、長女同居、団地歴 39 年). 親思いの孝行な子どもがいると、おはよう、おやすみなさいのメールを毎日必ずしたり、 いつでも親がどうしているか状態を確認したり、連絡がとれるように、子どもから「携帯」 を持たされるという状態にもなっている。また、まだ福祉機器が必要ではない段階から、 子どもから「車いす」をプレゼントされたりする場合もある。福祉機器がその時の症状に 合わせて「レンタル」できる商品であることなどを知らず、また、年を追うごとに、さら に改良された福祉機器が開発され、本当に必要とするときには、もっといい商品が出てい るかもしれないという考えに及ばず、このような結果となっていると考えられる。いわゆ る、現在の介護保険制度のあり方が、親を支える子ども世代に理解されていない結果とい える。地域包括ケアシステムの構築にあたり、世帯間の制度理解の差をなくしていくこと も必要だといえよう。 「いざという時にできるだけ迷惑をかけないようにするためには」 「自分はどのように最 期を迎えるべきか」については、誰かの意見を聞く、誰かの意見に惑わされるのではなく、 自分自身で考えること、準備すること、そして、地域にある社会資源を包括的にとらえ、 関わる専門職、支援者ともに考えていくことが、よりいっそう大切なことになっていくと 思われる。. 34.
(35) 「市のほうで冷蔵庫に入れる「緊急キット」を配布しているが、私は何か緊急なことがあった ときの、対応メモを用意している。 お寺とか、通っている病院、延命治療はどうしますか、お墓はどこにするのか、私はすでに 戒名もつけてある。おおげさなことはしなくて、埋葬してくれればいいと、子どもが一人なの で、大変なことがないようにと思ってできるだけのことをしている。」 「消防署の方が言うのは、救急車を呼ぶということは、これからも生命を続けたいということ である。最近、高齢の方で、救急で運んで生命をつなげても意味がない場合が多い、半身 不随となって介護する家族が大変なだけなのにな。これだけあちこち呼ばれて助けても、そ う思う事例が多いとのこと。息を助けても意味があるかどうかという意見を沢山聴くと、この まま大騒ぎして運ばれるよりも、息子と朝晩連絡をとりあっていて、息子が気づいてくれると か・・。 救急車で運ばれ一命をとりとめても、あちこち動かなくなり、介護が必要となることで、子ど もの生活が大変になることも可哀想なので。」(77 歳、女性、独居、団地歴 40 年). 35.
(36) Ⅳ.三郷地域住民アンケート調査 アンケートの発送は、2,486 通でそのうち宛先不明で戻ってきたものが 144 通であり 2,342 通を発送数とした。返送数は 761 通で、回収率は約 32.5%であった。 1.住民の概況 1)対象者の状況について (1)対象者の性別と世帯構成について 対象者は、男性 277 名(36%) 、女性 476 名(63%) 、不明 8 名(1%)であり、女性が 60% 以上を占めていた。. 世帯構成は、一世代世帯(夫婦のみ、兄弟姉妹のみ)が、333 名(44%)で最も多く、次 いで単身世帯(独居)213 名(28%) 、二世代世帯(親子等)179 名(24%)、三世代世帯(親、 子、孫など)15 名(2%)であった。一世代世帯と単身世帯が約 70%を占めていた。. 36.
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