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原子力 放射線部会部会報第 18 号 2016 年 6 月 17 日発行 原子力 放射線部会 ~ 住民目線のリスクコミュニケーション ~ 巻頭言 科学と安全と安心の悩ましい関係 東京大学大学院理学系研究科教授早野龍五東京

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東京大学大学院 理学系研究科 教授 早野 龍五 東京で物理学を教え、ジュネーブの CERN 研究 所の実験室に通って反物質の研究をする、そんな 生活を続けて 20 年近くなります。 反物質は、役に立たないけれども夢がある研究。 しかし、お金がかかります。ノーベル賞を授賞さ れた小柴昌俊先生の言葉を借りると、私も「国民 の血税で夢を見させて頂いている」一人ですから、 どうすればこの研究を支えて下さる方々に恩返し できるか、いつも気にかけていました。 2011 年 3 月、福島原発事故があったことを知 り、当初は自分が状況を理解したいという気持ち から、グラフや地図を交えたツイートを始めたと ころ、数日でフォロアー数がそれ以前の 3000 弱 から 15 万強に急増しました。私のツイートを、 首都圏から逃げるべきかどうかの判断材料にして おられた方も少なからずおられました。自分が社 会に恩返しする時だと感じました。 ソーシャルメディアは、新聞やテレビのような 伝統的なメディアと異なり、瞬時にフィードバッ クがありますし、世の中にどんな不安や誤解があ るかを知ることができます。たとえば、給食一食 分丸ごとの放射能検査は、ツイッター上で内部被 ばくへの不安が強いことを見て、私が国に提案し、 事業化されたものです。 しかし、何と言ってもソーシャルメディアの力 は、人を結びつけることにあります。私にとって の転換点の一つは、2011 年に福島で内部被ばく検 査で苦労しておられたお医者さん方とつながった こと、そして二つ目は、2012 年春の私のツイート 「万惣が閉店するのでホットケーキを食べに来た」 が糸井重里さんの目に留まったことがきっかけで、 「知ろうとすること。」という本が生まれたことで した。 現在、福島県内には 50 台以上の内部被ばく検 査装置(ホールボディーカウンター:WBC)があり ますが、2011 年当時の台数は、片手で数えられる ほどでした。お医者さんは必ずしも放射線測定の 専門家ではない。一方、私には放射線測定の技術 と知識があった。両者がソーシャルメディア上で 出会い、2012 年末までに 3 万人ほどの体内放射 性セシウム量を実測し、論文にまとめました。私 にとっては初めての医学論文になりました。 結果は、2012 年の段階で、すでに 99% の方々 (子どもは 100%)が WBC の検出限界未満、すなわ ち 1964 年の日本人の体内放射性セシウム量(大 気圏内核実験由来)よりも低いというものでした。 http://www.engineer.or.jp/c_dpt/nucrad/

原子力・放射線部会

~住民目線のリスクコミュニケーション~

巻頭言『科学と安全と安心の悩ましい関係』

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この結果は、海外の専門家からも驚きを持って注 目され、国連科学委員会 UNSCEAR の報告書にも採 録されました。 コープふくしまによる生協組合員の陰膳検査 で、放射性セシウムの摂取量が天然放射性物質の カリウム 40 よりもはるかに低いことが示された こと、1000 万袋以上の福島県産米の全量全袋検査 で基準値超えがほとんど出ないこと(2012 年産米 で超過は 71 袋、2013 は 28、2014 は 2、2015 は 0)など、その後多くの測定によって、福島の内部 被ばくが極めて低いことは繰り返し示されていま す。 それでも、内部被ばくについての不安は根強い ものがあります。通常の WBC は 2 分間立って測定 する構造のため、立ち続けることが困難な小さな お子さんの測定は行っていなかったのですが、親 御さんからは、是非測って欲しいという希望が多 く寄せられていました。やはり、他人の数値をい くら見ても駄目だということなのでしょうね。 そこで、子ども専用の WBC、BABYSCAN の開発を 始めました。これは、高精度の測定装置であるこ とはもちろん、不安を持ったご家族が測定に来ら れるわけですから、デザインは極めて大事な要素 です。そこで、工業デザイナーの山中俊治さんに 開発チームへの参加をお願いし、開発がスタート したのが 2013 年の春のことです。 デザインのおかげで、BABYSCAN は、検査に来 られた方々とスタッフの会話を促す、コミュニ ケーション・ツールとしての役目を果たせるよう になりました。 2013 年の秋に 1 号機を納入、2014 年夏までに 3 台が福島県内で稼働し、これまでに約 5000 人が 検査を受けました。大人用の WBC よりも約一桁低 い検出限界を実現しているにもかかわらず、放射 性セシウム検出者は皆無です。 ところが、福島の農作物や食品の検査、WBC 測 定などの結果が、人々の安心につながっているか というと、必ずしもそうではない、ということを、 私たちは BABYSCAN の検診を通じて知ることにな りました。 BABYSCAN で検査を受けたご家族には、摂取して いる食品のことなどを問診票に記入していただい ているのですが、南相馬では多くの方が、1)水道 水は口にしない、2)福島産米は食べない、3)福島 産野菜は食べない、と答えておられます。1,2,3 す べてを忌避された方は約 60% です。郡山市やいわ き市などでも、その割合は約 50% に達します。こ れと対照的なのは三春町で、1,2,3 すべてを忌避 された方は 4% でした。この大きな違いの原因を 解明することは、今後の課題の一つです。 福島県内に住んでおられる方の多くは、米の全 量全袋検査が行われていることや、内部被ばくが 低いということは、ニュースで見聞きしておられ ると思います。しかし、それら、科学的に示され た安全の根拠となるデータは、必ずしも人々の安 心とは直結していない。 行政や専門家への信頼が失われた状態で、科学 的事実のみを語っても人々の納得は得られないと いう厳しい状況ですが、科学的事実の究明という 科学者の本分は果たさなければなりません。その 上で、人々の納得を得るにはどうすれば良いか。 皆様はどのようにお考えでしょう?まだまだ手探 りが続く、事故後5年後の春です。 <プロフィール> 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 教授 博士(理学) 原子物理学(特に反物質) 最近の著書に、福島原発事故後の取り組みを糸 井重里氏との対談形式で綴った「知ろうとするこ と。」(新潮文庫)がある。 主な経歴 1979. 3 東京大学大学院理学系研究科修了 1979. 4 東京大学理学部助手 1982.11 高エネルギー物理学研究所助教授 1986. 4 東京大学理学部物理助教授 1997. 1 東京大学大学院理学系研究科教授

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まえがき 震災から5度目の春が来ました。長い避難生活 を余儀なく強いられるだけでなく、復興の見通し を得にくい将来、不安な気持ちについては、科学 的な説明だけでは、納得できないものがあります。 部会報第 18 号では、今後10 年の部会活動方針か ら【第1の柱】「安全文化醸成に資する活動」、特 に“住民目線のコミュニケーション”に焦点を当 てて構成しました。安心した時をひとりでも多く の人が過ごせるよう、伝わる・伝えるためにでき ること事はなにか、何を伝えていくべきかを改め て考え、前号に引き続き、学び直す姿勢で臨んだ 部会活動事例とその状況を、共感した技術士から のメッセージと共にお伝えしていきます。 CONTENTS ・巻頭言 P.1~2 ・部会長からのメッセージ P.3~4 ・日本技術士会理事からの話題 P.4~5 ・<第 1 の柱> 部会活動事例 P.5~8 ・<第 2 の柱> 取組み事例 P.9~12 ・会員,例会参加者からの声 P.12~14 ・S 幹事(案件と募集,就任挨拶) P.14~15 ・部会 HP 紹介 P.16 ・活動の実績と予定 P.17 部会長からのメッセージ

コミュニケーションとはなんでしょうか?

部会長 佐々木 聡 最近は、美術鑑賞がブーム のようです。確かに、10 年ほ ど前は、人があふれかえる展 覧会は稀で、静かに鑑賞できる企画がほとんどで した。しかし、最近は、熱心な鑑賞者が明らかに 増えました。商業的にも成り立つようになり、テー マを被せながら複数の企画が次々と連携し、期待 を背景に次の企画が充実する。これまで名前の知 らなかった作家の企画であっても、目の肥えた鑑 賞者が訪れる。明らかに美術に対する私たちの感 覚は鍛えられた感があります。 一方で、美術館らしからぬ小さなトラブルやス タッフの対応に首をひねる場面を目にする機会も 増えた気がします。一日数千人の来場者、待ち時 間数時間の展覧会では、本来の学芸員や学芸員補 のほかに、イベント対応のスタッフが急増しまし た。安全に人の流れを捌くには致し方ないとも言 えますが、でも、一日数万人の来場者が訪れるテー マパークのスタッフに不快な思いを感じることは まずありません。相手の心象を左右するのはなん でしょうか。 私たちが原子力・放射線に関する知識を語る時 の姿勢を考えてみましょう。 私が就職した頃、原子力・放射線情報を伝える ことは広報(public relations)でした。役所に出 向した際、研究成果を記者発表する仕事を幾度か 経験しましたが、我々に求められたことは、研究 者の説明を一般向けに解りやすく翻訳することで した。 所属元に戻って数年後、事業所内で起きた事故 対応後の改革のために英国から専門家を呼び、少 人数で議論をする機会を得ました。そこで渉外 今後 10 年の活動方針(2014 年全体会議承認) 以下4つを部会活動の柱に掲げました。 第 1 の柱 安全文化醸成に資する活動 第 2 の柱 技術士の認知度向上と技術士数増 に向けた活動 第 3 の柱 部会員の技術士活動の支援 第 4 の柱 広報活動 (詳細を会報最終ページに掲載しました。)

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(external affairs)担当の方が、情報伝達は一方 向ではなく、対話により相手の要望を聞くことが 重要と語っていたことが印象的でした。当時リス クコミュニケーションという言葉は聞きませんで したが、私の原点になりました。 ところが、何時頃からか原子力の分野でPA (public acceptance)という言葉を聞くようにな りました。情報を伝える目的が、賛成して受け入 れてもらうことになってしまった。私たちの問題 点はまさにここにあると思われます。 私も含め、多くの専門家には多かれ少なかれ PA の考え方が浸み込んでいると思います。原子力に 長年携わってきた人には、信念も自負もある。東 電福島原発事故後の発電所外での支援に赴いた人 は、こうあるべきとの思いを強く持ち、放射線影 響に関する正しい知識を伝えたいという欲求が強 く起こったはずです。私もそうでした。 しかし、正しい知識を伝えようとする姿勢、自 分の結論に導こうと説得する姿勢は、不快感・不 信感を与えて決してうまくいきません。最近は、 コミュニケーションのテクニックを学ぶ機会も増 え、傾聴、相槌を行う相談員も増えましたが、テ クニックだけのコミュニケーションもすぐに見破 られてしまいます。 事故を引き起こした私たちの痛恨の学びは、放 射線影響に関する正しい知識を知っていれば避け られた不幸が多数あったことへの反省であり、被 災者の尊厳を傷つけずに済んだかもしれないとい う反省です。でも、間違ってはいけないのは、正 しい知識は手段であって目的ではありません。知 らないことで、本人の生活や判断を誤った方向に 進ませないために、選択するための手段を提供す ることだけなのです。 さらには、相手の方の問題の本質は、放射線影 響に対する不安ですらないかも知れません。そん なとき、私たちが原子力・放射線の正しい知識を 伝えることを目的と考えてしまうと、自ずと理解 や共感を期待してしまい、不幸な結果に終わりま す。言葉や態度の裏にある懸念や不満や不信を掻 き分けて、問題の本質を知ろうと努力すること。 それはもしかしたら、相手の方も認識していない かもしれず、ゆっくりと一緒に考えていかねばな りません。見返りを求めず、知識を持つ者の義務 と考えて対話を行えば、驕りが消え、原子力に携 わってきたものの反省が伝わるかも?知れません。 大きな美術館には、学芸員とは別にボランティ アスタッフによるギャラリーツアーが開かれると ころがあります。ご自身でテーマを掘り下げ、自 分の言葉で説明する姿からは、この人は絵が好き な人だなあと感じ、絵を見に来ている人への配慮 が伝わってきます。老舗の美術館のスタッフから も同じ感覚が伝わってきます。 自分のためではなく、真に相手に寄り添ったコ ミュニケーション。日本人の得意とする「お・も・ て・な・し」に通じるのであれば、我々にできな いはずはありません。 日本技術士会理事からの話題

理事となって一年

部会相談役 桑江 良明 早いもので、昨年6月に 理事となって間もなく1年 が経とうとしています。し かし、何か「理事」に相応しいことが出来たかと いうと、恥ずかしながら未だ「模索中」であり、 「理事」として胸を張ってご報告出来る成果・実 績はありません。その理由を含めこの一年を自分 なりに振返ってみます。 1.「原子力・放射線部会」の代表ではない? ご存知のとおり、理事選挙(正確には「候補者 選出選挙」)では、各候補者は各部会/地域本部の

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推薦を受けて立候補します。しかし、総会で承認 された後、「理事」就任以降は「(部会/地域本部) 代表」の肩書はありません。 そのことの意味をどれだけ意識するかは、各理 事本人の考え方次第なのですが、私の場合、やは り、過去 10 年以上の原子力・放射線部会での活動 を背景に、「部会代表」との意識が強かったため、 自分自身の気持ちの整理と切り換えに少し時間が かかりました。 2.改めて「倫理」と向き合うことに (1)「倫理委員会」を希望 理事になるといずれかの常設委員会に属するこ とになります。そして、通常、2 期目の理事がそ の委員会の委員長に、1 期目の理事が副委員長に 就任します。私は、倫理委員会を希望し当委員会 の副委員長を仰せつかることになりました。結果 的に林前理事(現監事)の後を受けた格好になり ましたが、これは、上記「1.」からも明らかなと おり同一部会で引き継ぐ必要はなく、あくまでも 私自身の意思によるものです。私の技術士会活動 の原点はやはり「技術者倫理」であるとの思いか らです。 (2)「倫理教育検討 WG」の活動 倫理委員会では副委員長のほかに、新設の「倫 理教育検討 WG」の主査も仰せつかることになりま した。本 WG の構成は、倫理委員と登録グループ「技 術者倫理研究会」メンバーが半々を占め、大学等 で技術者倫理関係の講義経験をお持ちの方が多く 含まれています。WG の設置は前体制(~H26 年度) で既に決まっており、その設置趣旨に則り実質的 には昨年秋から活動を開始しました。 WG に与えられた主なミッションは、「技術士が大 学等で技術者倫理の講義を行う場合に参考となる 標準教材を作成すること」です。言うまでもなく 「技術者倫理」に関しては一人一人が独自のお考 えをお持ちで、「正解」を示すことなど出来ません。 それを踏まえたうえで、WG ではこれまで、「技術 士として学生や若年技術者に最低限伝えるべきこ とは何か」、「(前体制からの申し送りで)整合を図 るべきとされる日本工学教育協会の『学習・教育 目標』の位置づけは何か」、「技術士会内で共通認 識を得るためにはどのような考え方・成果物を示 せば良いか」等々、改めて根本に立ち返った議論 を重ねてきました。ようやく助走期間が終わった といった感じです。正直言って“難しいことに首 を突っ込んでしまった”という気持ちもあります が、やりがいは感じています。 3.原子力・放射線部会員として 「理事」が部会の代表ではないことは上記のと おりですが、部会活動がそのベースにあることに 変わりはありません。 一部会員として、1 月の「安全文化に関する講演 と意見交換」の企画に続き、5 月から「安全文化 フォーラムディスカッション」を新たに立ち上げ ました。部会員の皆様の積極的な参加をお願いし ます。(部会 HP「安全文化と技術者倫理を学び直 す取り組み」参照) 次回以降、具体的な成果・実績のご報告が出来 るよう、目の前の任務に取組んでいきたいと思い ます。 <第1の柱> 部会活動事例(1)

住民目線のリスクコミュニケーションを考える

当部会では、東日本大震災における福島第一原 発事故を踏まえ、活動方針の柱の一つとして「3.11 事故の反省・教訓を風化させない働きかけ」、具体 的には原子力・放射線部門の技術士が「住民目線 のリスクコミュニケーションを考える」への取り 組みを掲げました※。原子力・放射線に対する不 広報担当からのお知らせ: 科学技術社会論研究 第 12 号(「福島原発事 故に対する省察」の特集号)で、桑江理事の 記事「原子力技術者は倫理を持ち得るか」が 掲載されました。

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信感が根強く残る中、信頼や理解を得ている活動 にはこのように「住民目線」が共通して深く関わっ ており、この経験を共有したいとの思いから進め てきた活動の一部を紹介します。 ※原子力・放射線部会の過去 10 年を振り返って の今後 10 年の活動方針について 活動事例1(2015 年 3 月) 福島支援を経験する会員や放射線防護の第一人 者の方からの御講演を踏まえた意見交換会を実施 しました(第 44 回技術士の夕べ⇒詳細はこちら、 会員の方はこちら)。 これを受けて「専門家」としての、また「人」 としての「技術士」は今後どのような活動を行っ ていくべきかを考えました。この中では、個人が 自らの問題意識に置き換えて言葉や行動に移すた めには経験の有無が一つの壁であることが分かり、 疑似体験を中心とした活動を企画しました。 活動事例2(2016 年 3 月) 被災者とのコミュニケーションで苦労した技術 士は、信頼回復の担い手は「個人」であること、 専門知を一方向で伝えるのではなく、相手の話を 聞き、共に考える姿勢(我々はそれを「住民目線」 というキーワードで表現しています)の大切さを 認識し、ほぼ同じような解に到達しています。逆 に、経験のない者の中には、リスクコミュニケー ションを広報と考えている場合も多く、両者の溝 は、これまでの体験談などの講演形式の CPD では、 埋めることができませんでした。住民目線のリス クコミュニケーションとはなにかを考えることを 目的とし、第 49 回技術士の夕べが行われました。 従来の「技術士の夕べ」と異なり、参加者を3班 に分け、グループで討議・検討した後、ロールプ レイ(疑似体験)を行いました。ロールプレイは、 東京在住の女性(50 代)が放射線影響に関する事 項について、家族が心配という相談を受けた想定 で行いました。グループ討議の内容を踏まえ、ど うすれば相談者に寄り添っていけるのか、どうす れば相手に伝わるのか、自分が理解している事を 言葉にして話ができるのか、個々人が対応を考え ながら、ロールプレイを進めました。同じグルー プ内の人の対応からも学ぶこともできる活動とな りました。 参加者の声から、認識の変化があったことが認 められ、さらに発展させようと考えた方も多かっ たようです。それらの対応の変化等については、 講師からも講評を頂いており、さらに高めるため 助言を受けて、実のある企画となりました。 詳しい報告は、部会 HP に近日アップされる予定 ですので、そちらもぜひご覧ください。

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<第1の柱> 部会活動事例(2)

北関東地区見学と報告会

部会幹事 西村丹子 当部会は、茨城県支部、JAEA技術士会、神 峰技術士会、東北本部福島県支部、防災支援委員 会との共催、協力のもと、北関東地区報告会及び 見学会を 2016 年 1 月 29 日に開催しました。通算 9回目となる本会合は、講演、施設見学、各技術 士会の活動報告の3部で構成され、北関東地区に 所属する技術士を中心に 23 名が参加しました。 講演と施設見学では、㈱千代田テクノル様に協 力頂き、個人線量計の製造・メンテナンス施設見 学の他、Dシャトルの震災当時の働きと福島在住 の人々にこれからも期待される役割と効果などに ついて御講演頂き、住民が望む支援とは何か、事 例の御紹介と共に、参加者で考え、意見仕合い、 学ぶ一助を得る機会となりました。 Dシャトルを使った高校生による調査結果の海 外発表や学会誌、学校HPでの紹介とそのデータ の蓄積は、メディアで公表される代表地点での空 間線量データと異なり、現在だけでなく、未来に 向けての生活や行動への反映に大きく貢献する データとなることを十分に感じました。 (1)講演 ㈱千代田テクノルの狩野好延氏、大口裕之氏、 柳田弘氏から3つのご講演を頂きました。 狩野氏からは「ガラスバッジによるモニタリン グサービス」と題して、放射線作業従事者の個人 被ばく線量を測定するためのガラスバッジの構造 や測定原理のご説明を、大口氏からは「福島に対 する取り組み」において、住民用個人線量計の特 長と福島県内外における個人被ばく線量測定結果 のご紹介を、また柳田氏からは「トレーサビリティ と計測器校正の必要」において、測定機器の校正 の重要性や信頼性に係るご講演を頂きました。 (2)施設見学 ㈱千代田テクノルの大洗大貫台事業所ラディ エーションモニタリングセンタでは、ガラスバッ ジによる線量測定サービスに関する作業工程を、 また同社大洗研究所では、校正に使用する各種放 射線照射装置を見学しました。 ㈱千代田テクノル ラディエーションモニタリングセンタにて Dシャトル: 住民自身の個々の生活や活動と連動して外 部被ばくを確認、PC にてデータ管理できる 小型・軽量積算線量計、外観は万歩計の様。 被ばく量の大小で、自分の明日からの行動 計画にフィードバックでき、安心と自信を 持った行動を促せるきっかけとなった機 材。震災当時、個人全員に渡る数の線量計 が無く、また電子線量計は 18 才以上が対象 で、住民に合った線量計の開発、製作が課 題だったことが誕生の背景にある。

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(3)各技術士会活動報告 当部会長の佐々木聡氏、茨城県支部副支部長の 大脇隆志氏、JAEA技術士会の芳中一行氏、神 峰技術士会副幹事長代理の久恒眞一氏、JANS I技術士会会長の富永研司氏より、今年度の活動 が報告されました。 <第1の柱> 部会活動事例(3)

部会協力の本部 CPD 講座等と情報発信

企画担当 副部会長 井口 幸弘 技術士法第47条の2により 「技術士は、常に、その業務 に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、 その他その資質の向上を図るよう努めなければな らない。」ことが定められており、この責務を果た すことを支援するため、日本技術士会では、CPD (継続研鑽)を推進しています。当部会でも、発 足以来、この一環として、講演会の開催、見学会、 教材の作成等に取り組んできています。 技術士会本部の CPD 支援活動としては、CPD 中 央講座(テーマを持った数件で合計 4 時間程度の 講演会)、CPD ミニ講座(1テーマ、約 2 時間、 1講師による講演)等があります。 今年は東京電力福島第一発電所事故から 5 年と いう節目でもあり、1 月 13 日には、日本原子力研 究開発機構、楢葉遠隔技術開発センター、モック アップ試験施設部長、川妻伸二氏より「原子力ロ ボットと東電福島原発事故」との題したミニ講座 が、3 月 12 日には中央講座として、「東電福島原 発サイト内の現状と課題、リスクと戦略プランの 背景を理解する」と題して岡本孝司東京大学教授 より基調講演が、大西有三関西大学特任教授より 「汚染水の問題とその対策の状況を理解する」、 鈴木俊一東京大学特任教授より、「廃炉に向けた 燃料デブリの取り出しに関する課題を理解する」 と題して合計 3 名の専門家によるが講演会が開催 されました。なお、当部会もテーマの設定や講師 の選定等に積極的に協力しています。 これらの講演会では、我々部会員だけでなく、 他部門の技術士も含めて、大変多数の参加者があ り、積極的な質問や意見が出されて議論が交わさ れており、単に最新の技術的な知見を得られるだ けでなく、部門間の交流にも大いに役立っている ものと自負できます。 また本年は、本部の講演会だけでなく、部会主 催の講演会や、5 月に予定している福島第一発電 所の見学会についても、講演内容や見解等をまと め、月刊『技術士』に計画的記事を投稿し、技術 士を主な対象として情報発信を行っていくことを 部会として決定しています。 具体的には、8月号で全体構想を示した記事を 掲載することを皮切りに、7 回程度のシリーズ記 事を予定しております。 さらには、これらの記事の情報源を部会として 整理し、部会HPを活用して、解説・情報発信を 図っていく予定です。 これらの活動は、部会の活動方針である「技術 士の認知度向上と技術士増に向けた活動」、「広 報活動」、「安全文化醸成に資する活動(3.11 事 故の反省を風化させない働き)」にも直結するも のであり、時宜にかなったものと考えられます。 部会員の皆さまの積極的な参画、ご協力を是非 お願いいたします。

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<第2の柱> 取組み事例(1)

一次試験合格者の集い

総務担当 副部会長 亀山 雅司 一次試験合格者歓迎は1月の例会のあと、 20:00-21:00 に実施しており、今年は7名の方に 参加頂きました。 大変短い時間ですが、参加頂いた皆様にできる だけ多くのものを持って帰って頂きたいと考え、 2点に重点をおいています。まず、試験に効く情 報とそのありかです。原子力学会の HP に試験解説 があること、2月に試験講習会があること、試験 講習会では昨年技術士に合格したばかりの講師か ら最新の受験情報を個別に聴くことができること などです。歓迎会では、今年は勉強の仕方、業務 履歴の書き方、博士と技術士の論文の書き方の違 いなどのご質問がありました。業務履歴は「机上 業務でも該当しますか?」「転勤で業務内容が変 わってしまいました」など聴いて初めて分かるご 質問と思います(大丈夫、記載できます)。来場し たから分かった、来てよかったという声を頂いて います。 もう一つは技術士合格に向けた安心と繋がりで す。会が始まるとできるだけ受容的な流れを形成 した後(私はラポールと呼んでいます)、最初にお 名前、お仕事を共有頂いています。皆さん、様々 な動機、背景、環境のもとで前に進んでいこうと されています。仲間の状況を共有することで、自 分の目標をブレなく安心感を持って目指して頂け ればと思います。これから二次を受験される皆様 は「どうやれば合格できるか」ではなく「いつ合 格できるか」です。技術士会で皆様と再会できま すこと、楽しみにお待ちしています! ※一次合格者の皆様は技術士会準会員として活動 に参加頂くことも可能です。 <第2の柱> 取組み事例(2)

第6回技術士制度・受験講習会報告

第 6 回技術士制度・試験講習会(主催:日本原子 力学会主催、共催:日本保健物理学会)が 2016 年 2 月 6 日(土)に行われ、45 名が参加しました。例 年の約 2 倍の参加者に、「技術士」への関心の高さ が伺えました。 本講習会には、先輩技術士として部会員が多数、 協力しました。今年度は、例年よりも多くの参加 があり、合格に向けた熱い意思の中、講習会が進 められました。 初めに、体験談等を含めた学習法等の講義が行 われました。質疑応答後、志望する専門ごとに個 別相談会が行われ、さらに詳細な、質疑応答が行 われました。 講習では、諸先輩が学習に使用した資料、参考 にした HP の紹介、モチベーションの維持等の紹介 等が実施されました。質疑応答では、各ブース、 遅くまで質疑が行われ、より丁寧な指導が行われ る様子が見られました。 また、受講者同士でよい刺激を受けた人も見受 けられました。今後の試験対策に役立ててもらい、 合格通知が参加者全員に届いてほしいと願ってや みません。詳細は、日本原子力学会 HP内報告をご 覧ください。 (講習会の様子)

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講師から寄せられた感想・メッセージ 講師として協力された技術士(原子力・放射線 部門)の方から感想・メッセージを頂きました。 講習会に参加して 小宮 雅男(講師) 思いもかけず、講習会へ の協力のメールをいただき ました。技術士の資格を 取って 5 年たちますが、部会、CPD への参加もほ とんどしておりませんでしたので、わたくしにで きることなのかが気になりましたが、ご協力する のは「個別質問、相談コーナー」とのことなので、 何かお役に立てればと、お手伝いすることにいた しました。 わたしの出番は、資格取得の体験談、効率の良 い学習法等のプレゼンテーションの後でしたので、 最近資格を取られた方々の鮮度の良いご説明など を感心して拝聴いたしました。当日は、用意され た部屋が満室になるほど技術士志望の方が来られ、 一言で表すと講習生、講師共に「熱い」講習会で あったように思います。 わたくしの担当のコーナー「放射線利用」にも 相談者が来られましたが、一次試験を通り、実務 経験をこれから積む方でしたが、技術士を目指す 熱意が十分感じられ、こちらも逆に更なる研鑽を 促されるような雰囲気でした。質疑応答で、技術 士資格取得のメリットに関する質問があった場合、 原子力・放射線分野が、いまひとつ、社会的認知 がされていないので、どのように回答するかが気 がかりでしたが、相談者の熱意は、彼らが仲間入 りすればそれも霧消するとの思いを抱かせる講習 会でした。 講習会を通じて考えたこと 溝口 真樹(講師) 講師の立場での参加でし たが、私自身、他の技術士 の方々からのお話を聞くこ とができ大変勉強になりました。恥ずかしながら 私自身は初参加でしたが、本講習では技術士の 方々から試験対策や体験談など生の声を聞けると いう点、また、質問、相談などのコーナーも設け られ、そこで技術士の方々にいろいろな相談でき る点で有効性を感じました。私自身が技術士を目 指していた時は勉強方法だけでなく様々な疑問や 不安がありましたが、相談できる相手がいません でした。このような疑問や不安が少しでも解消で きる機会があるという点に大きな意義があると思 いました。 発表に関して私は「記述試験の心構え・体験談」 を担当し、勉強方法、情報収集のアプローチの仕 方、それと私自身が実践した心構えを中心に話を させて頂きました。が、他の技術士の方々の発表 と比較し、少々精神論的な話が多かったように思 え、もう少し具体的な試験対策の話の方が良かっ たのではないかと発表後に反省しました。そのよ うな私の話を熱心に聞いて頂いた受講者の方々に 感謝します。私の話の中から少しでも参考となっ たものがあれば幸いです。私も受講者の方々に負 けぬよう引き続き自己研鑽していきます。 最後にこのような貴重な場にお誘い頂きありが とうございました。

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<第2の柱> 取組み事例(3)

平成 27 年度合格新技術士講習会

平成 27 年度原子力・放射線部門合格者を対象に した講習会が4月 15 日(金)13 時~17 時、葺手第 2ビル(神谷町)で行われ、二次試験合格者 19 名の うち 7 名、総監合格者 5 名のうち 1 名が合格者と して参加されました。 今年度は、昨年度一次試験合格者として参加し ていた二次合格者、二次合格者として参加してい た総合技術管理部門合格者が 2 年連続合格者とし て出席。これは昨年度「参加してよかったから、 また合格者として参加したい!」いう気持ちが今 年度の合格につながったのではないかと推測して います。この講習会が技術士試験合格までのモチ ベーションになりえるのではないか、今年度の参 加者がまた来年度も出席するといったような喜ば しい現象が生じるのではないかと期待しています。 参加後のアンケートでは、「合格がゴールではな く、スタート。講習会に参加し、気持ちが引き締 まった。」「技術士会・部会を通じ、広い分野での 交流ができることを期待している。」といった感想 が寄せられました。 講習会後の懇親会ではサプライズスイーツも登 場し、祝賀ムードに花を添えました。先輩技術士 との親睦を深めるだけでなく、同じ部門の技術士 として、意見交換もおこなわれてとても充実した 懇親会となりました。 <第2の柱> 取組み事例(4)

各機関の技術士受験者増の取組み

【第三弾】TPSC技術士連絡会

各機関で実施されている技術士受験者数および 技術士数増の取組みを紹介していきます。神峰技 術士会(部会報第 16 号)、JAEA技術士会(同) 第 17 号)に引き続き、今回は三例目の事例紹介と なります。 1.はじめに 会員 天田 佳孝 TPSC(東芝プラントシステ ム㈱)技術士連絡会の私の所 属部門では、平成 22 年(2010 年)度より技術戦略の一環と して技術士取得を目指し、業 務の関係上、原子力施設のエンジニアリングや施 工、試験関係等に照準を合わせたセミナーを開催 してきた。受講者の半数以上は原子力・放射線部 門で受験しているが、原子力施設のエンジニアリ ングは電気電子・機械・建設等、多岐にわたってい るため、各選択科目の受験者がお互いに情報を共 有できる形で実施してきた。 2.一次試験への取り組み 技術系新入社員(JABEE 認定課程修了者を除く) には技術士一次試験の受験を義務付けている。ま た原子力関連部門では、新入社員とは別に業務経 験を持つ一般従業員に対しても技術士取得を推奨 し受験申し込みのフォローから、受験に向けて一 次試験専用のセミナーを科目ごとに開催してきた。 セミナーの内容としては、合格者の体験談発表、 科目別に過去問題の解説及び模擬試験を実施して いる。 3.二次試験への取り組み 二次試験受験可能者(受験者リストを作成しピ

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ンポイントで案内、召集)に対し、受験申込のフォ ローから、二次試験専用にセミナーを概ね1回/ 月で開催してきた。セミナーの内容としては受験 申込書記載要領から過去問の解説及び論文作成指 導(添削実施)等を実施してきた。例えば、短い 時間にアレンジした記述模擬試験で実訓練を行い、 回答回収の後、次回にその良かったところと、そ うでなかったところの総括を、参加者の情報共有 で行うことなどである。特に相互啓発として受講 者に対して毎年良い刺激となり、合格者の体験談 とその勉強方法、モチベーションの維持方法等大 いに参考になっている。 4.受講者から講師へ 所属部門では、一次試験を十数名、二次試験で は複数名輩出できるよう努めてきた。私は、最初 セミナーの受講者側でスタートし、技術士になっ てからは講師側に回わったが、自分の経験上、特 に二次試験においては、論文添削の重要性を説明 し、大勢の受験者の論文を添削してきた。この経 験をもとに近年では、技術士増の部会他活動にも 参加させて頂いている。 5.さいごに 私が受講者側だった時も講師(先輩技術士2名) の方から交互に添削戴き修正しました。論文を修 正するたびに何度もコメントを受け、当時は少々 受け入れ難かったのですが、修正するにつれ最初 の論文より数段良くなっていくのを実感出来、合 格できた一番の要因だと今でも思っています。 我々の活動が各職場や団体において参考にな り、原子力・放射線部門全体の技術士増につなが ることを願っています。

会員,例会参加者の声

新入会員の方や例会に数多く参加頂いた方 を中心に、今回は4名(2名は新入会員)の方 に御意見を頂きました。“次回は自分が”と思 われた読者の方からの積極的な御意見、お待ち しております。 齊藤 勇 私はこれまで主に各種放射線検出器の開発 やシステム設計、評価などを行ってきました。 ある日、上司の勧めで技術士の資格を知り受 験しましたが、全くの実力不足で当初は何度 やっても合格せず、周りのご指導頂いた方々が 呆れ果てた頃にようやく指導頂いた結果が自 分の身に着いてきたのか、この度放射線防護に て合格させて頂き、本年度より本会員となりま した。 時代の流れを考えると、今後原子力・放射線 部門の技術士はこの分野に関連するリスクコ ミュニケーションが強く求められます。その為 に専門とする事項だけでなく、原子力・放射線 部門としてのマクロな視点と見解が求められ ることになります。 しかし原子力・放射線部門は原子炉システム の設計及び建設から放射線防護まで多岐に渡 り、一人ですべてを深く網羅するには限界があ ります。その解決の一つとして、この部会を通 じて多くの方とお会いして自分も含めたお互 いの技術の交流ができればと思います。 この度は晴れて技術士となりましたが今後 与えられた課題を解決するために、何度試験に 落ちてもしつこく試験勉強をしていた頃を忘 れずに継続研鑽をしていきたいと思います。 新入会員

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竹内 知輝 この度、原子力・放射線部門の技術士となり ました竹内知輝と申します。現在はウラン加工 施設で生産技術に関する業務と新規制基準対 応の業務に携わっています。 これまで試験合格は一つの目標でしたが、合 格はゴールではなく、重要なのは技術士として 今後何を成すかです。合格後しばらくは喜びに 浮かれていましたが、そろそろ気を引締め直し、 継続研鑚に励んで公益に繋がる成果を出せる 様努力して参ります。 原子力に対しては賛否両論ありますが、私は 原子力の安全向上と利用推進は必ず公益に繋 がると信じています。 原子力の将来がどうなるのかまだはっきり とは見通せない状況ですが、それを明るいもの とするために微力ながら貢献していきたいと 思います。 「安全文化醸成活動に思う」 網野 真樹 私は現在、所属部署で品質・環境・安全等に 係るISOの運用の業務を担当していますが、 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災による直後の 福島第一原子力発電所事故以降、当方が所属す る部署も、その後大きく変化した原子力規制、 関連法規(新規制基準等)への対応に、追われ ているような状況がこの5年間は続いている 感じです。安全等につきましては、会社として、 社長の陣頭指揮のもと「安全と健康を守ること は全てに優先する」を基本理念として掲げ、全 社的な安全衛生活動を展開しております。これ までの活動を大幅に見直すきっかけは、2015 年 1 月 9 日に三重県四日市の工場で起きた爆発火 災事故の発生です。この事故の反省と教訓から、 安全管理体制の再構築と拡充が図られている ところです。また、事故を風化させないために 同日は、社内で「安全誓いの日」に制定されて います。当部署でも安全活動のPDCAサイク ルを回すために、昨年から本格的に安全文化醸 成活動を展開し始めました。独自の取り組みと しては、安全とともに健康に関する意識向上活 動も併せて実施している点です。例えば、毎朝 のラジオ体操にて、同僚のその日の動きを観察 し、体調等に関して気付いたことを述べるなど の工夫に取り組んでいます。「健全な魂は健全 な肉体に宿る」のことわざどおり、健康で働き やすい日々の職場環境づくりが安全文化醸成 の基盤につながると考えています。 各務 正比古 日本原子力発電の敦賀発 電所に勤務しております各 務正比古(かかみまさひこ) と申します。会員ではあり ませんが、例会に参加させ ていただいているご縁で、 一言述べさせていただきます。 私が例会に参加する目的は情報の収集です。敦 賀発電所は長期停止中であり所員の士気の維持向 上が重要です。私は原子力保安の監督者として、 所員と積極的なコミュニケーションを図ることで 対応しています。こちらから話しかけることを きっかけに、相手の話す将来の心配事や日常の不 満を傾聴し、お互いの意見を交わす中で、共に頑 張ってこの難局を乗り越えようという連帯感が生 まれる、という図式を描きつつ悪戦苦闘していま す。ただ、コミュニケーションといっても何か話 のネタが必要です。それを入手するのにうってつ けの場所が例会です。会員の方には分からないで しょうが、私にとって例会は様々な情報の宝庫で す。これをもとに考えれば話題を広げることがで き、大変重宝しています。 新入会員 会員 例会参加者 (二次試験合格者)

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ただ、例会では説明が大半で質疑や議論が少な いところから、会員が互いに切磋琢磨する場所に なっているかどうかを危惧しています。是非貴重 な場を有効活用してください。 私は東京以外の勤務地として、発電所のある福 井県敦賀市と使用済燃料中間貯蔵施設建設地の青 森県むつ市に住み、仕事関係で住民の方々とコ ミュニケーションしましたが、うまく行かないこ とも多くありました。 自分の説明方法を改善すべく、自分なりにリス クコミュニケーションを勉強しましたが、万能の ものはなく、相手に合わせて一つ一つ手作りして お話するしかありませんでした。結局、その原因 として自分があまりに彼らのことを知らなさ過ぎ ることに思い至りました。 考えてみれば、住民の方々も千差万別であり、 大別しても好意的な方、批判的な方、(特に原子力 を考えることもなく、状況次第でどちらにもすぐ なれる)大多数の無党派とあり、職業や経歴によ り更にバリエーションが増えます。それをまとめ て説明しようというのだから無理な話だったと今 にして思います。 まずは、少しでも住民の方々、一人一人との お付き合いを深め、私という人間を知ってもらう ところから始めようと思います。 決して学問ではない、現場での具体的対応につ いての意見交換が狙いです。事業者のみならず、 規制者、メーカー、研究機関に属する技術士が対 等な立場で議論し、安全文化に対する意識を高め ることは、例えばここで得られたこと、感じたこ とを各地域や組織内に持ち帰り、そこでリーダー として模範を見せることは広く社会に貢献する大 きな一歩になると考えます。

S幹事案件と募集

役員の職務を特別に補佐する部会員をS幹事* と称し、部会組織の一部として昨年度に設置、現 在 12 名の方に、主に部会 10 周年で掲げた今後 10 年の部会活動方針を踏まえた新プロジェクトに協 力頂いています。 至近で進める案件(下表参照)に協力頂ける方、 また部会全体の活動に役立ちたいとお感じの方、 例会への参加だけではなく役員と一歩近い位置で 部会活動に参加したいと胸の内に秘めている皆様 からの積極的な応募、お待ちしています!(応募 案内と案件の詳細、申込みフォーム:→こちら) 至近で進めるプロジェクト(PJ)例 1F 事故収束状況 一般向け解説 PJ (No.004) 発表されている事故収束工程に対し、クリチ カルを逸脱するリスクの高い問題は何か、現 行の技術でできることとできないことの課 題は何か、専門外の技術者が理解できるレベ ルで解説する。具体的には月刊「技術士」へ シリーズで投稿する。執筆内容(自身もしく は推薦の場合は調査・調整する)、解説プロ ジェクトチーム及び役員会等にてチェック フォロー、スケジュールに沿って本部広報委 員会へ投稿。 原子力・放射線に 関わる時事問題 の一般向け解説 PJ (No.005) 原子力事故に対する情報が氾濫する中、技術 士として信頼できる情報の選別、その根拠な どについて、高校生が理解できるレベルでH Pに掲載する。①情報収集とそのまとめ、② 勉強会の実施。 首都圏外の学部 及び大学院への 技術士制度、活動 の認知向上 PJ (No.009) 首都圏の大学(学部、大学院)については原 子力学会主催の説明会が定着しつつあるが、 首都圏外を含めた講師派遣を行う。 資料(説明キット)をもとに、各技術士にと りまとめ頂き、近隣大学へ同説明会を実践。 1F 事故要因に関 わる文献調査・部 会員意見発信 PJ (No.011) 公開された東京電力㈱福島第一原子力発電 所元所長の事故調ヒアリング内容の部会員 個々の意見発信(感想表現)可能な場をもう けると共に、情報集約による部会ポテンシャ ルを内外に示す。具体的には、部会報,部会 HP などでの発表を行う。 *S 幹事(S:special、support、senior、相談役…) という名は当部会特有の俗称となります。(詳細は 会報第 17 号P.10 を参照ください。)

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S幹事就任

乗物 丈巳

きっかけは、技術士制度・試 験講習会でした。第 4 回から参 加させていただいておりました が、取り纏めをされていた前任 者の職場の異動に伴い、引き継ぎの打診と、併せ てS幹事の説明を受けました。私は技術で社会に 貢献したいという思いのもと部会に入会していま した。しかしながら、これまで部会活動に参加す ることがあまりできておりませんでしたので、こ れを機会と考えてご推薦をいただき拝命するに至 りました。 さて私が思う S 幹事の魅力ですが、①役員活動 が身近になり、刺激を受け触発されること、②自 己の経験を生かして技術士のすそ野を広げる一翼 を担えること、③役員会の出席など定常的な義務 がないため、業務に支障なく対応できること、で す。また就任以来、自己の技術力と倫理感を高め るよい研鑽の機会をたくさんいただいております。 S 幹事の S は、Special、Support、Senior など さまざまです(S 幹事についての詳しい説明は、 部会報第 17 号を見てください)。部会活動に参画 したいがこれまで機会がなかったと思っている 方々など、是非一度、S 幹事について考えてみて いただければ幸いです。

山田 基幸

みなさんはじめまして、この 度 S 幹事になりました山田基幸 と申します。私は 2004 年の一次 (原子力放射線部門第一回)、 2005 年の二次試験を経て技術 士登録しました。当時、技術士のことは何故か知っ ていましたが、部門の新設とその趣旨を聞き、技 術者倫理を備えた誠実で社会と共生する技術者の 証として必携の資格だと考え受験しました。実は その後しばらくして、数年前に実家で本棚の整理 をしていますと、棚奥から技術士の資格取得を勧 める古い本が出てきました。すっかり忘れていま したが 30 年程前にコンサルタントエンジニアに 憧れて本を買ったことを思い出し、このことで技 術士を知っていたのかと納得できましたが、同時 に、様々な分野により貢献したいと考えるように もなりました。そういったことや東京での勤務に 異動したこともあり、部会活動に協力したいと応 募した次第です。どの程度貢献できるか不安でも ありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

曽佐 豊

このたび S 幹事に認定してい ただきました曽佐と申します。 原子力・放射線部会の活動にお 役に立てるよう出来る限りの協 力をいたしたいと思いますので、 よろしくお願いします。 これまでの経験としましては、原子力プラント メーカで高速増殖炉、沸騰水型原子炉の原子炉機 器設計に 33 年従事した後、原子力安全・保安院、 原子力規制庁で原子力保安検査官、高経年化技術 評価等に従事してきました。 部会の活動につきましては、一昨年 3 月末に退 職後、技術士会の行事等に参加させていただいた 経験しかありませんが、原子力発電に関しての経 験等を生かしまして、「福島第一原子力事故事象の 理解から終息への道筋調査」プロジェクト等に貢 献したいと考えています。

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部会HPの紹介

部会が運営するホームページには、多くの有用 な情報が掲載されており、具体例とその活用方法 を紹介します。今回は、過去に実施してきた講演 会他情報のアーカイブについてです。 部会例会(技術士の夕べ)や見学会には毎回多 くの方に参加頂いていますが、参加された方はも とより、興味を持たれながらも仕事の都合や開催 場所との関係から参加を見送れた方もおられるこ とでしょう。そういった会員の皆様には、会員コー ナー「講演会・見学会等」(→こちら)をお薦めし ます。 講演者から提供頂いた説明資料、会員向け実施 報告、参加者の感想、また本部との連携による Pe-CPD(ビデオ録画)の視聴が可能です。いずれ も会員限定で許可された範囲の情報となりますが、 終了した講演会の内容を把握したい場合や、参加 したけど聴き逃したところを再確認したい場合な どに活用できます。 (これらの閲覧には技術士会 会員番号とパスワードが必要 となりますので御確認下さい。) 会員コーナー 講演会・見学会等 講演資料 会員用報告 感想・意見 Pe-CPD 収録 (リンク)

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2015年度下期 活動実績

(1)役員会 ・2015 年 11 月 20 日 第 5 回役員会 ・2016 年 1 月 15 日 第 6 回役員会 ・2016 年 3 月 4 日 第 7 回役員会 (2)継続技術研鑽 ①技術士の夕べ ・第 47 回技術士の夕べ(詳細はこちら) 日時:2015 年 11 月 20 日(金) 講演:原子力技術の信頼性を回復するには 講師:藤田 玲子氏 ・第 48 回技術士の夕べ (詳細はこちら、会員の方はこちら) 日時:2016 年 1 月 25 日(金) 意見交換会:安全文化に関する意見交換 (畑孝也氏、桑江良明氏、雨夜隆之氏、渡辺文隆氏) ・第 49 回 技術士の夕べ 日時:2016 年 3 月 4 日(金) 意見交換会:住民目線のリスクコミュニケー ションを考える②(事例研究) 講師:大場恭子氏 ②見学会 ・北関東地区 見学と報告会(会員の方はこちら) 日時:2016 年 1 月 29 日(金) 場所:㈱千代田テクノル大洗大貫台事業所、 ラディエーションモニタリングセンタ、 大洗研究所 (3)部会員の投稿 ・「高速増殖原型炉もんじゅ見学報告」、月刊「技 術士」、【CPD 行事から】、2015 年 10 月号、 横堀 仁(記事はこちら) ・「福島第一原子力発電所事故に関する放射線防護上の 課題と提言」、月刊「技術士」、【CPD 行事から】、 2015 年 11 月号、山外 功太郎(記事はこちら)

2016年度上期 活動予定

・2016 年 6 月 24 日 全体会議 特別講演:「レジリエンスエンジニアリングの視 点から見た東日本大震災時の原子力 発電所の対応と教訓」 講師:北村正晴氏(東北大名誉教授) ・2016 年 7 月 22 日 第 50 回技術士の夕べ 講演:「東電福島第一発電所廃炉に伴う廃棄物の 処理処分の課題、研究開発の状況(仮題)」 講師:宮本泰明氏(日本原子力開発機構 福島研 究開発部門 廃炉国際共同研究センター) ・2016 年 9 月 16 日 第 51 回技術士の夕べ 講演:「福島支援活動の経験と技術者・研究者の あるべき姿(仮題)」 講師:中西友子氏 (原子力委員会 委員) 以降の活動予定は、 原子力・放射線部会のホーム 行事案内 CPD/行事案内 を適時ご確認ください。 ・月刊技術士 共通技術 掲載予定

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<編集後記> 東日本大震災から5年目の春を迎えました。今 年4月には熊本での大地震もあり、改めて防災に 対する備えを忘れてはいけないと思い知らされま した。 復興への道のりは容易ではありません。建物、 道路が整い一部生活など落ち着いて見えることが あっても心の中の平穏はまだまだ遠い道のりだと 思っています。自分の心の中にあるものを言葉に することは、とても大変な事です。感情をあらわ す言葉がぴったり見つかることも稀ではないで しょうか。また言葉にすることができても、相手 がどのように思うのか、理解してもらえるのかと いう新たな問題も発生します。住民目線のコミュ ニケーションは、一方通行では成り立ちません。 今年も夏になるとあの畑ではきっとひまわりが 咲くのでしょう。背筋を伸ばして天を向くには、 地面にしっかり根付く必要がありますし、根付い ても水が、足りないと萎れてしまいます。肥料は 知識や情報、水は内側から支えやる活力だと考え ると、寄り添い、何が必要か耳を傾け、その上、 様子を見て本当に必要な事は何かを求める事が住 民と同じ目線に立ったコミュニケーションの第一 歩ではないでしょうか。花の種類だけでなく同じ 花でも状況によって必要として いる事は違います。少しでも気 持ちよく心の花が咲きますよう に。できればさらに次世代の種 を育むことができますように。 (おわり)

参照

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学識経験者 品川 明 (しながわ あきら) 学習院女子大学 環境教育センター 教授 学識経験者 柳井 重人 (やない しげと) 千葉大学大学院

会長 各務 茂夫 (東京大学教授 産学協創推進本部イノベーション推進部長) 専務理事 牧原 宙哉(東京大学 法学部 4年). 副会長

一高 龍司 主な担当科目 現 職 税法.

○東京理科大学橘川座長

司会 森本 郁代(関西学院大学法学部教授/手話言語研究センター副長). 第二部「手話言語に楽しく触れ合ってみましょう」

原子炉本体 原子炉圧力容器周囲のコンクリート壁, 原子炉格納容器外周の壁 放射線遮蔽機能 放射線障害の防止に影響する有意な損

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :

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